特許第6249369号(P6249369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249369太陽電池モジュールの配線材、太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249369
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの配線材、太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20171211BHJP
【FI】
   H01L31/04 570
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-532655(P2014-532655)
(86)(22)【出願日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2012072078
(87)【国際公開番号】WO2014033884
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年7月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 司
(72)【発明者】
【氏名】神納 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】柳浦 聡生
(72)【発明者】
【氏名】住友 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】舟谷 友宏
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−147260(JP,A)
【文献】 特開2005−302902(JP,A)
【文献】 特開2009−081205(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/013625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の太陽電池の受光面に接触して接続される第1接触部と、前記第1接触部から前記一方の太陽電池に隣接する他方の太陽電池に向かって延び前記受光面から離間して前記受光面上方に向かって延びている曲線状の第1非接触部とを備え、前記第1接触部と前記第1非接触部が離間始点で接続され、前記第1接触部の前記受光面上方側に向いた面と前記第1非接触部の前記受光面上方側に向いた面とがなす第1の角度が鈍角である第1部分と、
前記他方の太陽電池の裏面に接触して接続される第2接触部と、前記第2接触部から前記一方の太陽電池外側に延び前記裏面から離間して前記裏面下方に向かって延びている曲線状の第2非接触部とを備え、前記第2接触部と前記第2非接触部が離間始点で接続され、前記第2接触部の前記裏面下方側に向いた面と前記第2非接触部の前記裏面下方側に向いた面とがなす第2の角度が鈍角である第2部分と、
記第1部分の前記第1非接触部との接続部および前記第2部分の前記第2非接触部との接続部がいずれも湾曲状であり、前記第1非接触部の湾曲の頂点から前記他方の太陽電池の前記裏面側に向かって延び前記第2非接触部の湾曲の頂点に接続される中間部分と、
を含む配線材であって、
前記中間部分は、前記第1部分との接続部から前記他方の太陽電池の前記裏面に向かって延びており、かつ、前記第2部分との接続部から前記一方の太陽電池の前記受光面に向かって延びており、
前記配線材の厚さが前記太陽電池の厚さよりも厚く、
前記第1非接触部について曲がり方の変曲点となる点の接線である第1接線と、前記中間部分について曲がり方の変曲点となる点の接線である中間接線と、前記第2非接触部について曲がり方の変曲点となる点の接線である第2接線と、について、
前記第1接線と前記中間接線とがなす第3の角度が鈍角であり、前記第2接線と前記中間接線とがなす第4の角度が鈍角である、太陽電池モジュールの配線材。
【請求項2】
請求項に記載の太陽電池モジュールの配線材において、
前記第1接線と前記中間接線とがなす前記第3の角度は、前記第1非接触部の変曲点と、前記第1接線と前記中間接線との交点と、前記中間部分の変曲点とがなす角度であり、
前記第2接線と前記中間接線とがなす前記第4の角度は、前記第2非接触部の変曲点と、前記第2接線と前記中間接線との交点と、前記中間部分の変曲点とがなす角度である、太陽電池モジュールの配線材。
【請求項3】
請求項に記載の太陽電池モジュールの配線材において、
前記第1非接触部、前記中間部分および前記第2非接触部は、直線形状を有さないように形成される、太陽電池モジュールの配線材。
【請求項4】
請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの配線材において、
前記第1非接触部の前記湾曲の頂点の位置は、前記一方の太陽電池の前記受光面の端部の位置に対応し、
前記第2非接触部の前記湾曲の頂点の位置は、前記他方の太陽電池の前記裏面の端部の位置に対応する、太陽電池モジュールの配線材。
【請求項5】
請求項1〜のうちいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの配線材と、
前記配線材によって接続される複数の太陽電池と、を備える太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの配線材と、太陽電池モジュール、及びこれを用いる太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池を複数の配線材で互いに接続して構成される。
【0003】
特許文献1には、太陽電池に電気的に接続される配線材が太陽電池の主面上に接触する接触部分と、接触部分に連なり太陽電池の主面の外側に延びる非接触部分とを有し、非接触部分が太陽電池の主面と側面との境界部分から離間するように配設される構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、互いに隣接する太陽電池セルが配線材であるインターコネクタによって接続される太陽電池モジュールにおいて、インターコネクタに凹凸部を設けることが述べられている。これによって、太陽電池モジュールの製造過程で太陽電池セルの半導体基板に大きな反りが生じるのを防止し、セル割れや電極剥がれが発生するのを防止できると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−81205号公報
【特許文献2】特開2005−302902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池に屈曲して接続される配線材に生じる応力を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池モジュールの配線材は、一方の太陽電池の受光面に接触して接続される第1接触部と第1接触部から前記一方の太陽電池に隣接する他方の太陽電池に向かって延び受光面から離間して受光面上方に向かって湾曲する第1非接触部を有する第1部分と、他方の太陽電池の裏面に接触して接続される第2接触部と第2接触部から前記一方の太陽電池外側に延び裏面から離間して裏面下方に向かって湾曲する第2非接触部を有する第2部分と、第1非接触部の湾曲の頂点から他方の太陽電池の裏面に向かって曲げられ第2非接触部の湾曲の頂点に接続される中間部分と、を含む配線材であって、配線材の厚さが太陽電池の厚さよりも厚い。
【0008】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、一方の太陽電池の受光面と他方の太陽電池の裏面を接続するように、一方の太陽電池の受光面に接触して接続される第1接触部と第1接触部から前記一方の太陽電池に隣接する他方の太陽電池に向かって延び受光面から離間して受光面上方に向かって湾曲する第1非接触部を有する第1部分と、他方の太陽電池の裏面に接触して接続される第2接触部と第2接触部から前記一方の太陽電池に向かって延び裏面から離間して裏面下方に向かって湾曲する第2非接触部を有する第2部分と、第1非接触部の湾曲の頂点から他方の太陽電池の裏面に向かって曲げられ第2非接触部の湾曲の頂点に接続される中間部分とを含むように、太陽電池の厚さよりも厚い配線材を成形し、配線材の第1接触部を一方の太陽電池の受光面に接続し、配線材の第2接触部を他方の太陽電池の裏面に接続し、太陽電池の受光面側に受光面側の封止材を配置し、太陽電池の裏面側に裏面側の封止材を配置し、受光面側の封止材の外側に受光面側の保護部材を配置し、裏面側の封止材の外側に裏面側の保護部材を配置する。
【発明の効果】
【0009】
太陽電池の端部で非接触部を設けて配線材を接続するので、配線材に生じる応力を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態における太陽電池モジュールの構成図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】実施の形態における太陽電池モジュールを製造する手順を示すフローチャートである。
図4】実施の形態における配線材の成形法と、比較のために他の3つの成形の例を示す図である。
図5図4の4つの成形法について、配線材が伸縮したときに配線材に生じる応力の大きさをシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる材質、厚さ、寸法等は説明のための例示であって、太陽電池モジュールの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において一または対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、太陽電池モジュール10の構造を示す断面図である。太陽電池モジュール10を構成する太陽電池11,12は、主面として、太陽電池11,12の外部からの光が主に入射する面である受光面と、受光面と反対側の面である裏面とを有するが、図1では、紙面の上側を受光面側、下側を裏面側とした。
【0013】
太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池11,12を複数の配線材13を用いて互いに直列接続したものである。図1では、直列接続の1つの単位として、一方の太陽電池11の受光面と他方の太陽電池12の裏面とを配線材13を用いて接続する部分について符号を付した。以下では、太陽電池11,12と配線材13に代表して説明を続ける。
【0014】
太陽電池11,12は、太陽光等の光を受光することで正孔および電子の光生成キャリアを生成する光電変換部を備える。光電変換部は、例えば、結晶性シリコン(c−Si)、ガリウム砒素(GaAs)、インジウム燐(InP)等の半導体材料の基板に設けられる。光電変換部の構造は、広義のpn接合である。例えば、n型単結晶シリコン基板と非晶質シリコンのヘテロ接合を用いることができる。この場合、受光面側または裏面側のうちの一方側の基板上に、i型非晶質シリコン層と、ボロン(B)等がドープされたp型非晶質シリコン層と、酸化インジウム(In23)の透光性導電酸化物で構成される透明導電膜(TCO)を積層し、他方側の基板上に、i型非晶質シリコン層と、燐(P)等がドープされたn型非晶質シリコン層と、透明導電膜を積層する構造とできる。
【0015】
光電変換部は、太陽光等の光を電気に変換する機能を有すれば、これ以外の構造であってもよい。例えば、p型多結晶シリコン基板と、その受光面側に形成されたn型拡散層と、その裏面側に形成されたアルミニウム金属膜とを備える構造であってもよい。
【0016】
透明導電膜の表面には導電ペースト等を用いて接続用電極が形成される。太陽電池11,12は、光電変換部、透明導電膜、接続用電極を含むもので、その厚さは、太陽電池モジュール10の仕様に応じて異なる。以下では、薄型の太陽電池11,12として、厚さが0.1〜0.2mmとして説明を続ける。この厚さは例示であって、これ以外の厚さであってもよい。
【0017】
配線材13は導電性部材であって、光電変換部の上の透明導電膜の表面に導電ペースト等を用いて形成された接続用電極に接着剤を介して接続される。配線材13としては、銅等の金属導電性材料で構成される薄板が用いられる。薄板に代えて撚り線状のものを用いることもできる。導電性材料としては、銅の他に、銀、アルミニウム、ニッケル、錫、金、あるいはこれらの合金を用いることができる。配線材13の厚さは太陽電池モジュール10の発電電力等の仕様によって設定されるが、太陽電池11,12が薄型になってもあまり薄くできないことが多い。以下では、配線材13の厚さを、0.1〜0.4mmの範囲で太陽電池11,12の厚さよりも厚いものとして説明を続ける。この厚さは例示であって、これ以外の厚さであってもよい。
【0018】
接着剤としては、アクリル系、柔軟性の高いポリウレタン系、あるいはエポキシ系等の熱硬化性樹脂接着剤、または半田を用いることができる。熱硬化性樹脂接着剤には、導電性粒子が含まれる。導電性粒子としては、ニッケル、銀、金コート付ニッケル、錫メッキ付銅等を用いることができる。接着剤として、絶縁性の樹脂接着剤を用いることもできる。この場合には、配線材13または接続用電極の互いに対向する面のいずれか一方または双方を凹凸化して、配線材13と接続用電極の間から樹脂を適当に排除して電気的接続を取るようにする。
【0019】
太陽電池11の受光面と太陽電池12の裏面を接続する配線材13は、図1の紙面に向かって略S字形状となるように成形される。
【0020】
略S字形状の右側の曲り部分は、配線材13の第1部分14である。第1部分14は、一方の太陽電池11の受光面に接触して接続される第1接触部15と、第1接触部15から隣接する太陽電池12に向かって外側に延び受光面から離間して受光面上方に向かって湾曲する第1非接触部16を有する。第1接触部15は、太陽電池11の接続用配線と電気的および機械的に接続される部分であり、第1非接触部16は、太陽電池11の受光面の上に配置されるが、接続用電極を含め太陽電池11とは少なくとも電気的に接続されない部分である。
【0021】
略S字形状の左側の曲り部分は、配線材13の第2部分17である。第2部分17は、一方の太陽電池11に隣接する他方の太陽電池12の裏面に接触して接続される第2接触部18と第2接触部18から隣接する太陽電池11に向かって外側に延び裏面から離間して裏面下方に向かって湾曲する第2非接触部19を有する。第2接触部18は、太陽電池12の接続用配線と電気的および機械的に接続される部分であり、第2非接触部19は、太陽電池12の裏面の上に配置されるが、接続用電極を含め太陽電池12とは少なくとも電気的に接続されない部分である。
【0022】
略S字形状の右側の曲り部分と左側の曲り部分を結ぶ部分は、配線材13の中間部分20である。中間部分20は、第1非接触部16の湾曲の頂点から他方の太陽電池12の裏面に向かって曲げられ第2非接触部19の湾曲の頂点に接続される部分である。
【0023】
配線材13の形状のさらに詳細については、図2を用いて後述する。このように成形された配線材13を用いて太陽電池11の受光面と太陽電池12の裏面が互いに接続され、同様な接続法で複数の太陽電池が互いに直列に接続される。複数の太陽電池が複数の配線材で接続されたものを太陽電池ストリングと呼ぶ。太陽電池モジュール10は、太陽電池ストリングを、受光面側の封止材21と裏面側の封止材22で挟み、その外側に受光面側の保護部材23と裏面側の保護部材24を配置し、端部をフレーム25,26で固定して構成される。
【0024】
受光面側の封止材21と裏面側の封止材22は、太陽電池11,12に対し、衝撃の緩衝材としての役割と、異物や水分の侵入を防ぐ機能等を有するシート状の部材である。これらの封止材21,22は、例えば、オレフィン系樹脂であるエチレンビニルアセテート(EVA)が用いられる。EVAの他に、EEA、PVB、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂を用いることもできる。なお、裏面側の封止材22に酸化チタン等の着色材を添加して白色等の着色層とすることもできる。
【0025】
図2は、配線材13の形状の詳細を示す拡大図である。図2は、太陽電池11,12および配線材13の、太陽電池11,12の直列接続方向の断面図である。ここでは、厚さの寸法関係として、太陽電池11,12の厚さをA、配線材13の厚さをB、配線材13の第1接触部15の上面における受光面側の封止材21の厚さをC、太陽電池11の裏面における裏面側の封止材22の厚さをDとする。このとき、受光面側の封止材21の厚さと+裏面側の封止材22の厚さの合計=EはA+B+C+Dで表わされる。薄型の太陽電池モジュール10においては、配線材13の上の封止材の厚さはCである。第1非接触部16の湾曲の頂点と第2非接触部19の湾曲の頂点は、この封止材の厚さCの範囲で留められる。
【0026】
受光面側の保護部材23は、外部から光を取り入れることができる透明な板体、フィルムである。受光面側の保護部材23としては、ガラス板、樹脂板、樹脂フィルム等の透光性を有する部材を用いることができる。裏面側の保護部材24は、受光面側の保護部材23と同じものを用いることができる。裏面側からの受光を必要としない構造の太陽電池モジュールの場合は、裏面側の保護部材24として、不透明な板体やフィルムを用いることができる。例えば、アルミ箔を内部に有する樹脂フィルム等の積層フィルムを用いることができる。
【0027】
図2において、第1接触部15と第1非接触部16の境界点は、第1非接触部16について一方の太陽電池11の受光面から離間し始める離間始点30である。この離間始点30を境に、第1接触部15では太陽電池11の接続用電極と配線材13が電気的および機械的に接続され、第1非接触部16では太陽電池11の受光面と配線材13が少なくとも機械的に接続されない。
【0028】
配線材13の長手方向において、第1非接触部16の湾曲の頂点31の位置は、太陽電池11の受光面の端部の位置に対応するように設定される。頂点31の高さ方向の位置は、受光面側の封止材21と受光面側の保護部材23の境界よりも太陽電池11の側とされる。このように、第1非接触部16の湾曲は、寸法Cの範囲内で行われる。
【0029】
同様に、第2接触部18と第2非接触部19の境界点は、第2非接触部19について他方の太陽電池12の裏面から離間し始める離間始点32である。離間始点30と同様に、離間始点32を境に、第2接触部18では太陽電池12の接続用電極と配線材13が電気的および機械的に接続され、第2非接触部19では太陽電池12の裏面と配線材13が少なくとも電気的に接続されない。接着材があるので、その限度で第2非接触部19が太陽電池12と機械的に接続されているのも同じである。
【0030】
同様に、配線材13の長手方向において、第2非接触部19の湾曲の頂点33の位置は、太陽電池12の裏面の端部の位置に対応するように設定され、頂点33の高さ方向の位置は、裏面側の封止材22と裏面側の保護部材24の境界よりも太陽電池12の側とされる。
【0031】
接線40は、第1非接触部16で曲がり方の変曲点となる点37における接線である。同様に、接線41は、第2非接触部19で曲がり方の変曲点38となる点における接線である。接線42は、中間部分20で曲がり方の変曲点となる点39における接線である。
【0032】
第1非接触部16の離間始点30と、第2非接触部19の離間始点32の間の距離寸法は、配線材13の成形範囲である。配線材13の成形範囲は、寸法A,B,C,Dと共に、接線40,41,42が以下の関係となるように設定される。すなわち、接線40が太陽電池11の受光面と平行な面となす角度θ1は、受光面よりも受光面側に持ち上がる方向をプラスとして、θ1>0とする。また、接線41が太陽電池12の裏面と平行な面となす角度θ2は、裏面より裏面側に持ち上がる方向をプラスとして、θ2>0とする。また、接線40と接線42とがなす角度θ3が鈍角となるようにする。具体的には、点37と、接線40と接線42との交点と、点39と、がなす角度θ3が鈍角となるようにする。また、接線41と接線42とがなす角度θ4が鈍角となるようにする。具体的には、点38と、接線41と接線42との交点と、点39と、がなす角度θ4が鈍角となるようにする。
【0033】
第1非接触部16、中間部分20、第2非接触部19は、直線形状を有さないように形成されることが好適である。具体的には、第1非接触部16は、離間始点30と点37とを結ぶ曲線と、点37と頂点31とを結ぶ曲線とを組み合わせて構成し、中間部分20は、頂点31と点39とを結ぶ曲線と、点39と頂点33とを結ぶ曲線とを組み合わせて構成し、第2非接触部19は、頂点33と点38とを結ぶ曲線と、点38と離間始点32とを結ぶ曲線とを組み合わせて構成する。このような構成とすることで、配線材13に生じる応力を分散させることができ、配線材13の断線を防ぐことができる。配線材に生じる応力については後述する。
【0034】
図3は、太陽電池モジュール10の製造の手順を示すフローチャートである。最初に、複数の太陽電池を形成する(S10)。これに平行して、配線材を準備する。この配線材は、図2で説明した成形がまだおこなわれる前の未成形配線材である(S11)。この未成形配線材を図2で説明した形状に成形する(S12)。すなわち、第1接触部15と第1非接触部16を有する第1部分14と、第2接触部18と第2非接触部19を有する第2部分17と、第1部分14と第2部分17とを結ぶ部分である中間部分20とを含む配線材13に成形する。
【0035】
そして、第1接触部15を一方の太陽電池11の受光面に接続し(S13)、第2接触部18を他方の太陽電池12の裏面に接続する(S14)。これを全部の太陽電池に繰り返して、太陽電池ストリングが形成される(S15)。
【0036】
その後、受光面側の保護部材23の上に、太陽電池ストリングを挟むように配置した受光面側の封止材21と裏面側の封止材22、裏面側の保護部材23を配置し(S16)、さらにその積層体に対して加熱・加圧処理を行い(S17)、端部をフレーム25,26で固定して太陽電池モジュール10が得られる(S18)。
【0037】
上記では、S12において、予め所定の形状に成形した複数の配線材13を準備するものとしたが、太陽電池ストリングを構成する太陽電池の数が少ない場合、太陽電池の平面寸法が大きい場合等において、未成形の配線材を用いて太陽電池に接続しながら、離間始点30、湾曲の頂点31、湾曲の頂点33、離間始点32を順次形成するものとしてもよい。
【0038】
上記構成の作用効果、特に、配線材の形状と配線材に生じる応力の関係について、有限要素法を用いたシミュレーション評価を行った結果を説明する。図4は、シミュレーションに用いた4つのモデルである。図4(c)が配線材13のモデルである。ここでは、配線材13の両側の拘束範囲の間の成形形状を図2で説明した内容とした。すなわち、第1非接触部16と第2非接触部19が形成され、3つの接線40,41,42が所定の角度関係に設定される。(d)は、拘束範囲を狭くした以外は(c)と同じである。
【0039】
図4(a),(b)は、第1非接触部16も第2非接触部19も設けず、また、第1非接触部16の湾曲、第2非接触部19の湾曲も設けず、直線的部分のみで成形した配線材の例である。ここでは、(c),(d)と異なり接線が2つであり、各接線の角度関係も(c),(d)と異なる。(b)は、両側の拘束部分の間の間隔を(c),(d)と同じとした。(a)は、(b)に比べ、両側の拘束部分の間の間隔をより狭くし、その間の屈曲をより強くしたものである。
【0040】
図5は、シミュレーションの結果を示す図である。シミュレーションは、温度変化によって配線材が伸縮するときに配線材に発生する応力の大きさを求めた。
【0041】
図5は、室温下の太陽電池モジュールにおいて配線材が伸縮状態にないとして、その状態から高温または低温となったときの配線材に生じる応力の変化をシミュレーションした結果を示す図である。
【0042】
シミュレーションでは、室温下の太陽電池モジュールにおける配線材の長手方向に沿ったひずみ量を0μmとし、温度が90℃と−40℃に変化したときの配線材に発生する応力の最大値を求めた。配線材の室温におけるひずみ量を0μmとして、ここから90℃に環境温度が変化すると、配線材のひずみ量は+αとなる。室温から−40℃に環境温度が変化すると、配線材のひずみ量は−αとなる。ひずみ量を示すαは、例えば0〜200μmとする。
【0043】
図5の横軸は、配線材のひずみ量で、室温に対応する0μmと、90℃に対応する+αと、−40℃に対応する−αを取った。縦軸は、シミュレーションにおいて配線材の最大応力値を相対的に示した。配線材において最大応力が発生するのは、第1部分と中間部分の境界と第1部分と中間部分の境界であった。図5で示す4つのデータは、図4の(a),(b),(c),(d)に対応する。
【0044】
図5の結果から、図4(c)の配線材13の成形形状が配線材に発生する応力が他の成形形状に比べ小さくなっていることが分かる。成形を直線部分のみで構成した図4(a),(b)は、(c)に比べ、最大応力の値が約1.5倍〜2倍の範囲で大きくなる。図4(d)の配線材は、(c)ほどではないが、(a),(b)に比べ、最大応力の値が小さくなる。
【0045】
このように、第1非接触部16、第2非接触部19を設け、3つの接線40,41,42を所定の角度関係とすることで、配線材に生じる応力を軽減することができる。配線材に生じる応力を軽減することは、薄型の太陽電池11,12を採用する場合に特に有効である。太陽電池11,12を薄くすると配線材の応力の影響を受けやすくなる。例えば、配線材の応力の影響により太陽電池11,12が割れる可能性が高くなる。配線材より薄い太陽電池11,12を採用する場合に3つの接線40,41,42を所定の角度関係となる配線材を用いることで、太陽電池11,12が割れる可能性を低くすることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 太陽電池モジュール、11,12 太陽電池、13 配線材、14 第1部分、15 第1接触部、16 第1非接触部、17 第2部分、18 第2接触部、19 第2非接触部、20 中間部分、21,22 封止材、23 (受光面側の)保護部材、24 (裏面側の)保護部材、25,26 フレーム、30,32 離間始点、31,33 (湾曲の)頂点、37,38,39 (曲がり方の変曲点となる)点、40,41,42 接線。
図1
図2
図3
図4
図5