(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記赤外線検出素子は、さらに前記第2上部配線の延在方向における前記赤外線検出部から離れた側の一方の端部と前記上部電極層とを電気的に絶縁する上部断線部を有する、
請求項1又は2に記載の赤外線検出素子。
前記赤外線検出素子は、さらに前記第1下部配線の延在方向における前記赤外線検出部から離れた側の一方の端部と前記下部電極層とを電気的に絶縁する下部断線部を有する、
請求項1〜5の何れか1項に記載の赤外線検出素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0014】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構造については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化している。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における赤外線検出素子25を模式的に示す上面図である。
図2は、
図1における赤外線検出素子25の2−2断面を模式的に示す断面図である。
図3は、実施の形態1における赤外線検出素子25の下部配線の配設を模式的に示す上面図である。
【0016】
赤外線検出素子25は、基板11と、赤外線検出部20と、第1支持部30Aと、第2支持部30Bと、第1外部引出部60Aと、第2外部引出部60Bとを備える。基板11は、凹部状に形成された空洞13を有する。赤外線検出部20は、入射された赤外線のエネルギーを電気的信号に変換して出力する。出力される電気信号は、第1外部引出部60A及び第2外部引出部60Bを介して、外部に取り出される。
【0017】
第1支持部30A及び第2支持部30Bは、基板11の枠部14に接続されており、赤外線検出部20を空洞13の上方に支持する。
【0018】
基板11の空洞13は、基板11の一主面の中央に設けられている。また、基板11は、空洞13を形成する枠部14を有する。基板11の枠部14は、空洞13の開口部の外周に設けられている。
【0019】
基板11の上には、絶縁性の中間層15が基板11の上に形成されている。中間層15は、基板11の主面と略平行に延在されており、第1支持部30Aと第2支持部30Bと赤外線検出部20とのそれぞれの一部を構成している。
【0020】
図4Aは、
図1における赤外線検出部20の4A−4A断面を模式的に示す断面図である。
【0021】
図4Aに示すように、赤外線検出部20には、下部電極層40と検出層16と上部電極層50とが設けられている。赤外線検出部20の中間層15は、赤外線検出部20の全体に設けられている。赤外線検出部20は、中間層15の少なくとも一部の上に、下部電極層40と検出層16と上部電極層50とが順に積層された積層構造を有している。また、赤外線検出部20の上層には、赤外線吸収層17が設けられる。
【0022】
赤外線検出素子25は、焦電効果を用いて赤外線を検知する。赤外線検出部20の検出層16には焦電体が用いられる。検出層16において、赤外線により焦電体の温度が上昇すると焦電体表面の分極が変化し、その結果、下部電極層40と上部電極層50とに電荷が生じる。赤外線検出素子25は、この電荷を電気信号として外部に取り出すことにより、赤外線を検知できる。
【0023】
焦電型の赤外線検出素子は、熱型赤外線検出素子の中では信号出力が高く、雑音出力が低いためS/N比が高い。また、焦電型の赤外線検出素子は、低コストで人体検知が可能である。そのため、焦電型の赤外線検出素子は、自動照明や機器の消費電力削減のための自動スイッチとして広く使用されている。
【0024】
なお、赤外線検出部20は、焦電体に限らず、サーモパイル、サーミスタ又はボロメータ等を用いることができる。
【0025】
空洞13の開口部に設けられる赤外線検出部20の平面視形状は、略矩形状である。しかしながら、赤外線検出部20は、矩形形状に限られない。赤外線検出部20は、例えば、丸形、多角形等であってもよい。
【0026】
赤外線検出部20は、第1支持部30A及び第2支持部30Bを介して、基板11の枠部14に接続されている。そして、赤外線検出部20は、空洞13によって基板11の表面から離間して配置されている。このように、赤外線検出部20は、基板11に対して接触しないように設けられている。そのため、赤外線検出素子25は、赤外線検出部20の熱が基板11に拡散することを抑制でき、基板11に対して熱絶縁性が高い構造となっている。
【0027】
第1支持部30A及び第2支持部30Bは、赤外線検出部20の中心に対して、互いに点対称な位置に配設されている。なお、第1支持部30A及び第2支持部30Bは、回転対称な位置又は線対称な位置に配設されていてもよい。
【0028】
第1支持部30A及び第2支持部30Bの平面視形状は、細長い直線形状である。しかしながら、第1支持部30A及び第2支持部30Bは、直線形状に限られない。第1支持部30A及び第2支持部30Bの形状は、例えば、L字型等の折り曲げられた形状であってもよい。
【0029】
また、第1支持部30A及び第2支持部30Bの他に、さらに他の支持部を設けてもよい。他の支持部は、赤外線検出部20の中心に対して、互いに対称な位置に配設されることが好ましい。なお、他の支持部には引出配線を設けないことが好ましい。これにより、赤外線検出部20の熱絶縁性を高めることができる。
【0030】
図2に示すように、仮想線1Cと仮想線2Cとの間が赤外線検出部20である。仮想線1Cと仮想線1Dとの間が第1支持部30Aである。仮想線2Cと仮想線2Dとの間が第2支持部30Bである。ここで、仮想線1Cは、第1支持部30A側における赤外線吸収層17の端面を通る線である。仮想線2Cは、第2支持部30B側における赤外線吸収層17の端面を通る線である。仮想線1Dは、第1支持部30A側における空洞13を形成する枠部14の端面を通る線である。仮想線2Dは、第2支持部30B側における空洞13を形成する枠部14の端面を通る線である。
【0031】
第1支持部30Aは、順に積層された導電性の第1下部配線70Aと、第1絶縁層16Aと、第1上部配線80Aとを備える。第1支持部30Aは、第1下部配線70Aと第1上部配線80Aとが第1絶縁層16Aを介して積層方向に対向する第1対向部35Aを有している。一方、第2支持部30Bは、順に積層された導電性の第2下部配線70Bと、第2絶縁層16Bと、第2上部配線80Bとを備える。第2支持部30Bは、第2下部配線70Bと第2上部配線80Bとが第2絶縁層16Bを介して積層方向に対向する第2対向部35Bを有している。
【0032】
図2に示すように、第1上部配線80Aと、上部電極層50と、第2上部配線80Bとは、同層に設けられる。第1絶縁層16Aと、検出層16と、第2絶縁層16Bとは、同層に設けられる。第1下部配線70Aと、下部電極層40と、第2下部配線70Bとは、同層に設けられる。
【0033】
また、第1下部配線70Aと、下部電極層40と、第2下部配線70Bとは、同じ材料で構成される。第1上部配線80Aと、上部電極層50と、第2上部配線80Bとは、同じ材料で構成される。第1絶縁層16Aと、検出層16と、第2絶縁層16Bとは、同じ材料で構成される。これにより、製造工程を簡略化できる。
【0034】
なお、第1下部配線70A及び第2下部配線70Bの材料は、下部電極層40の材料と異なっていてもよい。同様に、第1上部配線80A及び第2上部配線80Bの材料は、上部電極層50の材料と異なっていてもよい。第1絶縁層16A及び第2絶縁層16Bの材料は、検出層16の材料と異なっていてもよい。この場合、第1支持部30A及び第2支持部30Bの積層構造は、赤外線検出部20の中心に対し対称に設けられることが好ましい。
【0035】
つまり、第1上部配線80Aと第2上部配線80Bとは、同一の材料であることが好ましい。さらに、第1上部配線80Aと第2上部配線80Bとは、同一の断面積を有する配線であることが好ましい。第1上部配線80Aと、上部電極層50と、第2上部配線80Bとは、同層に設けられることが好ましい。また、第1下部配線70Aと第2下部配線70Bとは、同一の材料であることが好ましい。第1下部配線70Aと第2下部配線70Bは、同一の断面積を有する配線であることが好ましい。第1下部配線70Aと、下部電極層40と、第2下部配線70Bとは、同層に設けられることが好ましい。これにより第1支持部30Aと第2支持部30Bの応力バランスが取り易くなる。
【0036】
第1上部配線80Aと第2上部配線80Bとの一方が、上部引出配線である。第1下部配線70Aと第2下部配線70Bとの一方が、下部引出配線である。また、第1上部配線80Aと第2上部配線80Bとの他方が、上部ダミー配線である。第1下部配線70Aと第2下部配線70Bとの他方が、下部ダミー配線である。
【0037】
上部引出配線は、上部引出配線の延在方向の一方の端部が第1外部引出部60Aに接続され、他方の端部が上部電極層50に接続される。下部引出配線は、下部引出配線の延在方向の一方の端部が第2外部引出部60Bに接続され、他方の端部が下部電極層40に接続される。
【0038】
図1及び
図2においては、第1支持部30Aの第1上部配線80Aが上部引出配線である。つまり、上部電極層50は、第1上部配線80Aを介して、第1外部引出部60Aと接続される。また、第2下部配線70Bが下部引出配線である。つまり、下部電極層40は、第2下部配線70Bを介して第2外部引出部60Bと接続される。第1支持部30Aの第1下部配線70Aは、下部ダミー配線である。第2支持部30Bの第2上部配線80Bは、上部ダミー配線である。
【0039】
第1下部配線70Aにおいて、第1下部配線70Aの延在方向における赤外線検出部20から離れた側の一方の端部は、枠部14に設けられる。第2上部配線80Bにおいて、第2上部配線80Bの延在方向における赤外線検出部20から離れた側の一方の端部は、枠部14に設けられる。
【0040】
図1及び
図3に示すように、第1外部引出部60A及び第2外部引出部60Bは、引出配線幅より大きい辺を有する矩形状である。第1外部引出部60A及び第2外部引出部60Bは、赤外線検出部20からの電気信号を赤外線検出素子の外部に取り出すための接続端である。第1外部引出部60A及び第2外部引出部60Bは、例えば、赤外線検出部20から出力された電気信号を処理する信号処理回路に接続される。
【0041】
第1外部引出部60A及び第2外部引出部60Bは、第1上部配線80A又は第2下部配線70Bと同じ材料で構成される。第1外部引出部60Aは、第1支持部30A側の第1絶縁層16A上に形成される。第2外部引出部60Bは、第2下部配線70Bの上に形成される。
【0042】
図1及び
図3に示すように、下部ダミー配線と上部ダミー配線とにおいて、配線の延在方向における赤外線検出部20から離れた側の一方の端部は、非接続端90A、90Bである。つまり、下部ダミー配線の非接続端90A及び上部ダミー配線の非接続端90Bは、第1外部引出部60A及び第2外部引出部60Bのそれぞれに接続されないように設けられる。赤外線検出素子25は、非接続端90A、90Bを介して赤外線検出部20の電気信号の取り出しを行わない。
【0043】
図2に示すように、下部ダミー配線の非接続端90Aは、第1支持部30Aの積層方向において、第1外部引出部60Aと重ならないように第1外部引出部60Aと第1支持部30Aとの間に設けられている。また、上部ダミー配線の非接続端90Bは、第1支持部30Aの積層方向において、第2外部引出部60Bと重ならないように第2外部引出部60Bと第2支持部30Bとの間に設けられている。これによりダミー配線を短くでき、配線を簡素化することができる。また、下部ダミー配線と第1外部引出部60Aとの間の静電容量を小さくすることができる。そのため、赤外線検出部20周辺の受光量が小さい箇所において、静電容量の寄与を小さくできるため、赤外線検出素子25の応答性を向上できる。
【0044】
なお、第1下部配線70Aは、非接続端90Aを有さなくてもよい。この場合、第1下部配線70Aは、下部ダミー配線としてではなく、下部引出配線として機能する。第1下部配線70A及び第2下部配線70Bは、それぞれ第2外部引出部60Bに接続される。
【0045】
同様に、第2上部配線80Bは、非接続端90Bを有さなくてもよい。この場合、第2上部配線80Bは、上部ダミー配線としてではなく、上部引出配線として機能する。第1上部配線80A及び第2上部配線80Bは、それぞれ第1外部引出部60Aに接続される。なお、第1外部引出部60A及び第2外部引出部60Bは、それぞれ複数設けてもよい。この場合、第1上部配線80Aと第2上部配線80Bとは、それぞれ異なる第1外部引出部に接続することができる。また、下部引出配線も同様に、それぞれ異なる第2外部引出部に接続することができる。
【0046】
図4Bは、
図1における第1支持部30Aの4B−4B断面を模式的に示す断面図である。
図4Cは、
図1における第2支持部30Bの4C−4C断面を模式的に示す断面図である。4B−4B断面は、第1支持部30Aの延在方向と垂直な面である。4C−4C断面は、第2支持部30Bの延在方向と垂直な面である。
【0047】
図4Bに示すように、第1支持部30Aには、中間層15の上に、第1下部配線70A、第1絶縁層16A及び第1上部配線80Aが順次積層されている。第1下部配線70Aは、下部ダミー配線である。第1上部配線80Aは、上部引出配線である。
図4Cに示すように、第2支持部30Bには、中間層15の上に、第2下部配線70B、第2絶縁層16B、第2上部配線80Bが順次積層されている。第2下部配線70Bは、下部引出配線である。第2上部配線80Bは、上部ダミー配線である。
【0048】
図1〜
図3に示すように、第1対向部は、第1支持部30Aの延在方向の全体に渡って設けられる。
図4Bに示すように、第1対向部35Aは、第1支持部30Aの断面の一部に設けられる。また、第2対向部は、第2支持部30Bの延在方向に全体に渡って設けられる。
図4Cに示すように、第2対向部35Bは、第2支持部30Bの断面の一部に設けられる。このように、第1支持部30A及び第2支持部30Bは同じ積層構造を有する。これにより、第1支持部30Aと第2支持部30Bとのそれぞれにかかる応力のバランスを取ることができる。
【0049】
下部ダミー配線の一方の端部である非接続端90A、及び、上部ダミー配線の一方の端部である非接続端90Bは、基板11の枠部14に配設されている。また、下部ダミー配線の他方の端部が下部電極層40に接続される。上部ダミー配線の他方の端部は、上部電極層50に接続される。
【0050】
基板11の枠部14と接続される支持部30の根元は、比較的大きい応力が付加され易い。このとき、非接続端90A及び非接続端90Bを基板11の枠部14に配設することにより、支持部30の根元に上部配線と下部配線とが積層方向に設けられる。これにより、支持部30の根元を補強することができ、破損を抑制することができる。
【0051】
赤外線検出部20の上層に設けられる赤外線吸収層17は、赤外線を吸収する。赤外線吸収層17を設けることにより、赤外線検出の感度を向上できる。
図4Aに示すように、赤外線吸収層17は赤外線検出部20の上部全体を被覆している。赤外線吸収層17の構成材料は、SiO
2又は金属黒膜等を用いることができる。金属黒膜は、白金黒膜又は金黒膜と呼ばれる材料である。なお、支持部の上層に赤外線吸収層17又は保護膜が設けられてもよい。
【0052】
次に、赤外線検出素子25の構成材料について説明する。
【0053】
検出層16の焦電体の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とするペロブスカイト型酸化物強誘電体を用いることができる。ペロブスカイト型酸化物強誘電体としては、例えば、PZTを主成分としてLa、Ca、Sr、Nb、Mg、Mn、Zn又はAl等の元素をPZTの元素の一部と置換したものが挙げられる。
【0054】
PZTの組成は、例えば、正方晶系の組成Zr/Ti=30/70付近が望ましい。しかしながら、PZTの組成は、Zr/Ti=0/100〜70/30であればよい。例えば、PZTの組成は、正方晶系と菱面体晶系との相境界(モルフォトロピック相境界)付近の組成(Zr/Ti=53/47)、又は、PbTiO
3でもよい。
【0055】
PZTは、正方晶系の(001)面に配向したものが好ましい。これにより、赤外線の検出感度を高めることができる。
【0056】
他の焦電体の構成材料としては、PMN(化学式Pb(Mg
1/3Nb
2/3)O
3)又はPZN(化学式Pb(Zn
1/3Nb
2/3)O
3)などを用いることができる。
【0057】
基板11の構成材料は、例えば、Si等の半導体材料、ステンレス等の金属材料、MgO等の金属酸化物を用いることができる。
【0058】
基板11は、検出層16より線熱膨張係数が大きいものを用いることが好ましい。これにより、検出層16の成膜過程において熱収縮による圧縮応力を成膜する膜に付加することができる。この圧縮応力により検出層16は、分極軸である(001)方向へ選択的に配向するため、高い焦電係数γが得られる。
【0059】
基板11の材料は、具体的には鉄又はクロムを主成分とするステンレスを用いている。このようなステンレスは、例えば、SUS430である。SUS430の線熱膨張係数は10.5ppm/Kである。一方、PZTの線熱膨張係数は7.9ppm/Kである。したがって、基板11の線熱膨張係数は、検出層16の線熱膨張係数より大きい。
【0060】
検出層16よりも線熱膨張係数の大きい基板11の材料としては、ステンレスの他に、例えば、金属材料、単結晶材料、ガラス材料又はセラミック系材料がある。金属材料は、例えば、Ti、Al、Mg等である。単結晶材料は、MgO、CaF
2等である。ガラス材料は、ホウケイ酸ガラス等である。セラミック系材料は、TiO
2、ZrO
2等である。
【0061】
中間層15には、SiO
2等のシリコン酸化物を主成分とする絶縁性材料を用いている。また、中間層15として、SiNやシリコン窒化膜(SiON)等のシリコン窒化物、又は、HfO
2などを用いてもよい。
【0062】
下部電極層40は、ニッケル酸ランタン(LaNiO
3、以降「LNO」と記す)を主成分とする材料が好ましい。
【0063】
ペロブスカイト型構造を有するLNOは、金属的電気伝導性を有する酸化物である。室温での抵抗率は、およそ1×10
-3(Ω・cm)である。
【0064】
LNOを主成分とする材料としては、ニッケルの一部を他の金属で置換した材料等も含まれる。他の金属には、鉄、アルミニウム、マンガン及びコバルトからなる群から選択された少なくとも一種の金属が含まれる。
【0065】
なお、LNO系材料からなる下部電極層40は、スパッタリング法等の気相成長法、又は、水熱合成法等の種々の公知の成膜方法を用いて形成される。
【0066】
上部電極層50の材料には、Au、Ti、Al、Pt、Cr等の金属又はこれらのうち少なくとも1種を含む合金を用いることができる。上部電極層50は、これらの金属の単層で構成される。又は、上部電極層50は、これらの金属を含む複数の層が積層した積層体で構成されてもよい。上部電極層50は、例えば、TiとAuとが順次積層された積層体とすることができる。上部電極層50の膜厚は、5〜500nmの範囲が好ましい。
【0067】
次に、実施の形態1の赤外線検出素子25の製造方法について説明する。
【0068】
まず、空洞を形成していない基板11の上に、積層膜を形成する。積層膜は、中間層15、下部電極膜、検出膜、上部電極膜、赤外線吸収層17の順に基板11の上に積層された膜である。
【0069】
積層膜の製造方法は、基板11の上にシリコン酸化物前駆体溶液を塗布して、シリコン酸化物前駆膜を形成する。そして、シリコン酸化物前駆膜を加熱により緻密化して、シリコン酸化物の中間層15を形成する。続いて、中間層15の上にLNO前駆体溶液を塗布し、LNO前駆体膜を形成する。その後、LNO前駆体膜を急速加熱し結晶化させることにより、下部導電膜を形成する。
【0070】
次に、フォトリソグラフィ法などを用いて下部導電膜上に、下部電極層40、第1下部配線70A及び第2下部配線70Bに対応するマスクを形成する。そして、ドライエッチング法又はウェットエッチング法などを用いて、下部導電膜をパターニングした後、マスクを除去する。これにより、下部電極層40、第1下部配線70A及び第2下部配線70Bが形成される。つまり、下部電極層40、第1下部配線70A及び第2下部配線70Bは、同じ厚みを有し、同じ材料で構成され、かつ、同じ層に形成されている。
【0071】
さらに、下部電極層40、第1下部配線70A及び第2下部配線70Bを含む基板11の主面の上にPZT前駆体溶液を塗布し、PZT前駆体膜を形成する。そして、PZT前駆体膜を加熱し、PZT前駆体膜を結晶化させることにより、PZT膜を形成する。ここで、積層膜の検出膜は、PZT膜である。PZT膜をパターニングすることにより、検出層16、第1絶縁層16A及び第2絶縁層16Bが形成される。つまり、検出層16、第1絶縁層16A及び第2絶縁層16Bは、同じ厚みを有し、同じ材料で構成され、かつ、同じ層に形成されている。
【0072】
次に、検出層16、第1絶縁層16A及び第2絶縁層16Bの上にイオンスパッター等のドライプロセスにより上部導電膜を形成する。上部導電膜をパターニングすることにより、上部電極層50、第1上部配線80A、第2上部配線80B、第1外部引出部60A及び第2外部引出部60Bが形成される。つまり、上部電極層50、第1上部配線80A及び第2上部配線80Bは、同じ厚みを有し、同じ材料で構成され、かつ、同じ層に形成されている。
【0073】
次に、検出層の上に赤外線吸収層17をプラズマCVD法により形成する。このようにして積層膜は形成される。
【0074】
積層膜を形成した後、ウェットエッチングやドライエッチングのエッチング法を用いて、第1外部引出部及び第2外部引出部を露出させる。その後、開口部となる基板の一部を露出させた後、さらに中間層15の裏面が、基板11の表面から離間するまでウェットエッチングを行う。これにより、基板11の主面に空洞13が形成される。このようにして赤外線検出素子25を作製する。
【0075】
(実施の形態2)
実施の形態2の赤外線検出素子には、赤外線検出部又は支持部に断線部が設けられている。実施の形態2にかかる赤外線検出素子において、実施の形態1の赤外線検出素子と同一構成には同一符号を用い詳細な説明を省略する。
【0076】
上部断線部は、上部ダミー配線が設けられた支持部及び赤外線検出部の少なくとも何れかに設けられる。ここで、上部ダミー配線は、第1支持部及び第2支持部の何れかの支持部に設けられる。上部断線部により、上部ダミー配線の一方の端部と上部電極層とが電気的に絶縁される。同様に、下部断線部は、下部ダミー配線が設けられた支持部及び赤外線検出部の少なくとも何れかに設けられる。ここで、下部ダミー配線は、第1支持部及び第2支持部の何れかの支持部に設けられる。下部断線部により、下部ダミー配線の一方の端部と下部電極層とが電気的に絶縁される。
【0077】
図5は、実施の形態2における赤外線検出素子26を模式的に示す上面図である。
図6は、
図5における赤外線検出素子26の6−6断面を模式的に示す断面図である。
【0078】
図5及び
図6示すように、赤外線検出素子26において、第1支持部31Aに配置される第1上部配線81Aは、上部引出配線である。第1下部配線71Aは、下部ダミー配線である。第2支持部31Bに配置される第2上部配線81Bは、上部ダミー配線である。第2下部配線71Bは、下部引出配線である。
【0079】
赤外線検出素子26は、第2上部配線81Bの延在方向における赤外線検出部21から離れた側の一方の端部と上部電極層51とを電気的に絶縁する上部断線部101Bを有する。
【0080】
また、赤外線検出素子26は、第1下部配線71Aの延在方向における赤外線検出部21から離れた側の一方の端部と下部電極層41とを電気的に絶縁する下部断線部101Aを有する。
【0081】
上部断線部101Bは、第2支持部31Bに隣接する赤外線検出部21に設けられている。上部断線部101Bにより、上部ダミー配線の端部が上部電極層51と間隔(仮想線2Cと仮想線2Eとの間の間隔)を空けて配設される。ここで、仮想線2Eは、上部電極層51の第2支持部31B側の端面を通る線である。
【0082】
また、下部断線部101Aは、第1支持部31Aに隣接する赤外線検出部21に設けられている。下部断線部101Aにより、下部ダミー配線の端部が下部電極層41と間隔(仮想線1Cと仮想線1Eとの間の間隔)を空けて配設される。ここで、仮想線1Eは、上部電極層51の第1支持部31A側の端面を通る線である。
【0083】
上部ダミー配線及び下部ダミー配線の他方の端部は、それぞれ第2支持部31B及び第1支持部31Aの赤外線検出部21側の根元に設けられる。
【0084】
上部ダミー配線及び下部ダミー配線の一方の端部は、枠部14に設けられている。なお、上部ダミー配線及び下部ダミー配線の一方の端部は、枠部14に設けられていなくてもよい。
【0085】
上部断線部101Bおよび下部断線部101Aの少なくとも一方を設けることにより、赤外線検出部21で生じる熱が導電性のダミー配線を通じて基板11に拡散することを抑制することができる。これにより、赤外線検出素子26において、赤外線の検出感度を向上させることができる。
【0086】
また、上部断線部101Bと下部断線部101Aとにより、ダミー配線と、積層方向においてダミー配線と対向する配線との間に生じる静電容量は、赤外線検出部21の静電容量に寄与しない。そのため、赤外線検出部21周辺の受光量が小さい箇所において、静電容量の寄与を小さくできる。したがって、赤外線検出素子26における赤外線の検出感度を高めることができる。
【0087】
上部断線部101Bにおいて、上部電極層51と第2上部配線81B(上部ダミー配線)との間隔は、2μm〜10μmの範囲とすることが好ましい。下部断線部101Aにおいて、下部電極層41と第1下部配線71A(下部ダミー配線)との間隔は、2μm〜10μmの範囲とすることが好ましい。
【0088】
図7は、他の赤外線検出素子27を模式的に示す上面図である。
【0089】
第2支持部32Bにおいて、上部断線部102Bは、第2上部配線82Bの赤外線検出部20側の他方の端部に設けられる。第2上部配線82Bは、上部ダミー配線である。同様にして、第1支持部32Aにおいて、下部断線部(図示せず)は、第1下部配線の赤外線検出部20側の他方の端部に設けられる。第1支持部32Aは下部ダミー配線である。このように、上部ダミー配線及び下部ダミー配線は、上部断線部102B及び下部断線部により分断されている。
【0090】
また、上部断線部102Bは、第2上部配線82Bの途中に設けられてもよい。同様に、下部断線部は、第1下部配線の途中に設けられてもよい。
【0091】
図8は、さらに他の赤外線検出素子28を模式的に示す上面図である。
【0092】
上部断線部103Bは、赤外線検出部23に設けられる。さらに、上部ダミー配線は、赤外線検出部23まで延在されている。つまり、上部ダミー配線の他方の端部は、赤外線検出部23に設けられている。
【0093】
赤外線検出部23の第2支持部33B側には、上部電極層53の一部が切り欠かれた矩形状の上部切り欠き部105Bが設けられている。第2上部配線83Bは、赤外線検出部23まで延長されている。第2上部配線83Bは、上部ダミー配線である。つまり、上部ダミー配線は、第2支持部33Bから赤外線検出部23の上部切り欠き部105Bの一部に渡って配設される。上部切り欠き部105Bの一部において、下部引出配線、焦電体、上部ダミー配線が順次積層されている。
【0094】
上部断線部103Bと同様にして、下部断線部(図示せず)は、赤外線検出部23に設けられる。さらに、下部ダミー配線は、赤外線検出部23まで延在されている。つまり、下部ダミー配線の端部は、赤外線検出部23に設けられている。赤外線検出部23の第1支持部33A側には、下部電極層に下部切り欠き部(図示せず)が設けられている。第1下部配線である下部ダミー配線は、第1支持部33Aから赤外線検出部23の下部切り欠き部の一部に渡って配設される。下部切り欠き部の一部において下部ダミー配線、焦電体、上部引出配線が順次積層されている。
【0095】
このように、第2支持部33Bと赤外線検出部23との間の接続部において、第2上部配線83Bと下部配線とが積層方向に設けられている。そのため、第2支持部33Bの根元が配線層により補強され、根元の破損を抑制することができる。また、赤外線検出部23に上部断線部103Bを設けることにより、赤外線検出部23から基板11への熱拡散を抑制することができる。第1支持部33Aについても、第2支持部33Bと同様の効果を奏する。
【0096】
なお、上部ダミー配線及び下部ダミー配線を赤外線検出部に設ける場合において、上部切り欠き部及び下部切り欠き部は設けなくてもよい。
【0097】
(実施の形態3)
実施の形態1の赤外線検出素子25において、上部引出配線及び下部引出配線は、第1支持部30A及び第2支持部30Bにそれぞれ配設されている。これに対し、実施の形態3の赤外線検出素子は、上部引出配線と下部引出配線とが、第1支持部及び第2支持部のどちらか一方の同じ支持部に配設されたものである。
【0098】
図9は、実施の形態3における赤外線検出素子29を模式的に示す上面図である。
【0099】
第1外部引出部61Aと第2外部引出部61Bとは、第1支持部30A側の枠部14に設けられている。第1支持部30Aには、第1上部配線84A及び第1下部配線74Aが配設されている。第1上部配線84Aは、第1外部引出部61Aに接続される。第1下部配線74Aは、第2外部引出部61Bに接続される。つまり、第1支持部30Aにおいて、第1上部配線84Aは、上部引出配線である。第1下部配線74Aは、下部引出配線である。
【0100】
第2支持部30Bには、第2上部配線84B及び第2下部配線(図示せず)が配設されている。第2上部配線84Bは、上部ダミー配線である。第2下部配線は下部ダミー配線である。上部ダミー配線及び下部ダミー配線には、実施の形態2と同様に、
図9に示すように上部断線部104B、下部断線部(図示せず)を配設することが好ましい。この場合、上部断線部104Bと下部断線部は、積層方向において重なる。なお、上部断線部104Bと下部断線部は、上面視においてずれていてもよい。上部断線部104Bと下部断線部とをずらすことにより、第2支持部30Bの強度を上げることができる。
【0101】
(実施の形態4)
図10は、赤外線検出装置99の構成を示すブロック図である。
図10に示す赤外線検出装置99は、赤外線検出素子25を備える赤外線検出装置の一例であり、これに限定されない。
【0102】
光学系ブロック92は、入射される赤外線を集光するレンズや赤外線を選択的に透過するフィルタ等の光学部材93を有する。入射される赤外線96は、光学系ブロック92を介して赤外線センサ94に受光される。赤外線96は、人体等の対象物に照射した赤外線ビームの反射光、対象物の移動等により遮蔽される赤外線ビーム、人から放出された赤外線等である。
【0103】
赤外線センサ94は、赤外線検出素子25を有する。赤外線検出素子25は、単数であっても、複数であってもよい。複数の赤外線検出素子は、例えば、2次元マトリックス状に配列されている。また、複数の赤外線検出素子は、一列に配列されていてもよい。複数の赤外線検出素子を用いる場合は、それぞれの赤外線検出素子に対応させてレンズアレイを、光学部材93として用いてもよい。
【0104】
信号処理回路95は、赤外線検出素子の出力信号を増幅する増幅回路、アナログデジタル変換回路等を有する。信号処理回路95には、赤外線検出素子の出力信号が入力される。信号処理回路95は、赤外線検出素子の出力信号を処理することにより、物体検知信号、物体の移動信号や動作信号、画像信号、温度信号等を出力する。
【0105】
赤外線検出装置99は、入射光がチョッパなどによって変調されている場合には、チョッパを制御する制御回路、同調増幅回路を用いてもよい。また、赤外線検出装置99は、物体検出を示すランプ、画像信号等を表示するモニター、温度信号等を記録するメモリ等の記録媒体などを有していてもよい。
【0106】
以上、一つ又は複数の態様に係る赤外線検出素子及び赤外線検出装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。