(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6249386
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】間伐材等の伐倒補助装置
(51)【国際特許分類】
A01G 23/099 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
A01G23/099
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-153062(P2017-153062)
(22)【出願日】2017年8月8日
【審査請求日】2017年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-222801(P2016-222801)
(32)【優先日】2016年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516343893
【氏名又は名称】株式会社藤興業
(74)【代理人】
【識別番号】100110537
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 繁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−254732(JP,A)
【文献】
特開昭48−84393(JP,A)
【文献】
国際公開第02/13597(WO,A1)
【文献】
特開2008−253713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 23/099
B27B 17/00
B27B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線又は十字線を発光するラインレーザー発生器及び該ラインレーザー発生器に取り付けて伐倒する立木に前記ラインレーザー発生器を固定する取付部材と、チェーンソー及び該チェーンソーの鋸刃本体に付けたガイド用ラインとなる目印と、からなり、前記ラインレーザー発生器から照射されるラインレーザー光を前記鋸刃本体に付けた目印に合わせて伐倒方向に受け口を形成することを特徴とする間伐材等の伐倒補助装置。
【請求項2】
前記ラインレーザー発生器に発光方向可変部材を取り付け、前記発光方向可変部材を上下方向に回転することにより、レーザー光の角度調整が可能となり、立木の傾きを調べたり、伐倒する立木の伐倒方向を決めたりできることを特徴とする請求項1記載の間伐材等の伐倒補助装置。
【請求項3】
前記チェーンソーの鋸刃本体の目印は、直線または複数点でチェーンソーのガイド用ラインとなっていることを特徴とする請求項1記載の間伐材等の伐倒補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間伐材等の伐倒の際に、立木の傾きを調べたり、伐倒方向を決めるのにラインレーザーを利用し、重要な受け口の作成作業を正しく行えるように補助する間伐材等の伐倒補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
間伐材等の伐倒作業では、伐倒方向を決める受け口の作成作業は、非常に重要な作業である。伐倒作業を行う際に、現状では受け口を作った後に、その方向が正しく作成されているかどうかを確認するための簡単な治具が存在する。作業者等の自作によるものがほとんどで、直尺やT定規のようなもので、レーザーポインター等を使って作った受け口の奥に定規等を合わせて方向を確認するだけのものである。伐倒作業では想定した伐倒方向に正しく倒れないなどして作業者がけがを負ったり、場合によっては死亡事故にあったりするケースが多く発生している。
【0003】
最近チェーンソーメーカーSTIHL社がレーザーポインターをチェーンソーの取手部分に取り付けて受け口の作成作業をサポートする商品を販売している。取手に付けたレーザーポインターを地面等の目印に常に合わせながらチェーンソーを操作することで伐倒方向に向けた受け口を作る作業を補助するというものである。
このレーザーポインターは、手に持った状態のチェーンソーに取り付けているため、チェーンソーとともに動き、常に地面と鋸刃の部分を交互に見ながら作業をすることになり作業性がいいとは云えなかった。
【0004】
他方、ラインレーザーを利用し、ゴルフのパッテイング練習を行うにあたって構えた時や、ストロークをした時にパターのフェースが正しい方向を向いているかを確認することができるパッテイング練習補助器が知られている(特許文献1を参照)。
この公知技術は、ラインレーザー投光器をパターヘッドのすぐ上に、またバッテリーケースをグリップに取り付け、ラインレーザー光の方向によりフェース面のパッテイング方向を確認するパッテイング練習補助器である。
【0005】
本出願人は、立木に受け口を作る作業を正しく行えるようにするため、上記ラインレーザーを用い、ラインレーザーを立木に取り付けて使用することで、点で指示するより線で指示するほうが、伐倒方向が分かりやすく受け口を作る作業を視覚的に明確にサポートすることができる点に着目した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−253713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、立木の傾きを調べたり、伐倒方向を決めるのにラインレーザーを使用することで、受け口の作成作業を容易にサポートする間伐材等の伐倒補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の間伐材等の伐倒補助装置は、直線又は十字線を発光するラインレーザー発生器及び該ラインレーザー発生器を伐倒する木に固定する取付部材と、チェーンソー及び該チェーンソーの鋸刃本体に付けた目印と、から構成される。
前記ラインレーザー発生器は、伐倒する木の伐倒方向を決め、この伐倒方向に合わせて前記取付部材を介して伐倒する木に固定する。
前記チェーンソーの鋸刃本体の目印は、直線および/または複数点でチェーンソーのガイド用ラインとなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の間伐材等の伐倒補助装置は、ラインレーザー発生器をチェーンソーではなく伐倒する木に固定し、受け口を作る部分とチェーンソーの鋸刃本体の両方にラインレーザー光を当てることで、チェーンソーの鋸刃から視線を外すことなく安全に作業を行うことができる。
また、チェーンソーの鋸刃本体に付けた直線および/または複数点の目印とラインレーザー光が一致するようにチェーンソーを保持すればよいだけなので作業性は大幅に向上できる。
ラインレーザー光は、直下のチェーンソーを照射するだけでなく上向きに変えるだけで伐倒方向を照射することができるため、伐倒した木がどの方向にどれくらいの距離まで倒れるかを明確に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】伐倒する木にラインレーザー発生器を取付けた状態の正面図である。
【
図3】ラインレーザー光とチェーンソーの直線の目印との関係を示す説明図である。
【
図4】ラインレーザー光とチェーンソーの複数点の目印との関係を示す説明図である。
【
図5】ラインレーザー発生器により伐倒方向を示す状態の正面図である。
【
図6】ラインレーザー発生器により立木の傾きを調べる状態の正面図である。
【
図7】ラインレーザー発生器により受け口を示す状態の正面図である。
【
図8】ラインレーザー発生器によりチェーンソーのガイドバーのラインに合わせた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の間伐材等の伐倒補助装置の一実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
本発明の間伐材等の伐倒補助装置は、
図2の正面図に示すように、直線又は十字線を発光するラインレーザー発生器4及び該ラインレーザー発生器4を伐倒する木に固定する取付部材(図示省略)と、
図3の説明図に示すチェーンソー6及び該チェーンソー6の鋸刃本体7に付けた目印8と、から構成される。
なお、ラインレーザーとは、レンズなどで恒常的にライン状の光を発生する場合と点状のレーザーを鏡等で走査してライン状に見せる場合の両方を包含する。
【0012】
間伐材等の伐倒作業では、伐倒方向を決める受け口の作成作業は、非常に重要な作業である。
図1の正面図に示すように、伐倒する木の伐倒方向1を決め、この伐倒方向1に合わせて受け口2を形成し、反対側に追い口3を形成して木を切り倒す作業を行う。
伐倒作業では、受け口2が正しく形成されていないと想定した伐倒方向1に正しく倒れないなどして作業者がけがを負ったり、場合によっては死亡事故にあったりするケースが多く発生している。
【0013】
図2に示すように、伐倒する木の伐倒方向1を決め、この伐倒方向1に合わせて前記取付部材(図示省略)を介して前記ラインレーザー発生器4を固定する。
前記ラインレーザー発生器4からのレーザー光5は、下向きにこれから作成する受け口2の部分とその延長線上に沿って照射される。
一方、
図3の説明図に示すように、チェーンソー6の鋸刃本体7には直線の目印8が施されており、この目印8がチェーンソー6を操作する方向に対するチェーンソー6のガイド用ラインとなっている。
また、
図4の説明図に示すように、チェーンソー6の鋸刃本体7には複数点の目印8が施されており、この目印8がチェーンソー6の鋸刃本体7の長手方向に対するチェーンソー6のガイド用ラインとなっている。
なお、
図3及び
図4に直線と複数点の目印8を別々に分けて説明しているが、両方の目印8をチェーンソー6の鋸刃本体7に付けてもよい。
【0014】
また、前記ラインレーザー発生器4は、
図5〜
図8の正面図に示すように、前記ラインレーザー発生器4に取り付けた発光方向可変部材9によりレーザー光5の角度調整が可能であり、角度をずらして立木の傾きや木の倒れる延長方向を指し示すことができるし、十字線レーザーとしてチェーンソー6の鋸刃本体7が正しく位置されているかを示すこともできる。
【0015】
次に、本発明の間伐材等の伐倒補助装置の操作動作を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図5に示すように、伐倒する木の伐倒方向1を決め、この伐倒方向1に合わせてラインレーザー発生器4を取付部材10により固定し、発光方向可変部材9のレーザー光5により伐倒方向1を示す。すなわち、前記ラインレーザー発生器4をチェーンソー6ではなく伐倒する木に前記取付部材10を介して固定し、前記ラインレーザー発生器4からのレーザー光5は、伐倒方向1を示す。
また、
図6に示すように、前記発光方向可変部材9を立木の頂上方向に向けて回転し、レーザー光5を立木に沿って照射し、立木の傾きを調べたりできる。
つぎに、
図7に示すように、前記発光方向可変部材9を地面方向に向けて回転し、レーザー光5をこれから作成する受け口2の部分とその延長線上に沿って照射する。
そして、
図8に示すように、前記チェーンソー6の鋸刃本体7に付けた直線および/または複数点の目印8とレーザー光5が一致するようにチェーンソー6を保持し、チェーンソー6の鋸刃から視線を外すことなく安全に受け口2を形成することができる。
【0016】
前記レーザー光5は、直下のチェーンソー6の鋸刃本体7を照射するだけでなく発光方向可変部材9の上下方向の向きを変えるだけで立木の傾きを調べることや伐倒方向1を照射することができるため、伐倒した木がどの方向にどれくらいの距離まで倒れるかを明確に視認することができる。
図3に示すように、前記ラインレーザー発生器4をチェーンソー6ではなく伐倒する木に固定し、チェーンソー6の鋸刃本体7に付けた直線の目印8とレーザー光5が一致するようにチェーンソー6を保持すればよいだけなので作業性は大幅に向上できる。
また、
図4に示すように、前記ラインレーザー発生器4を同様にチェーンソー6ではなく伐倒する木に固定し、チェーンソー6の鋸刃本体7に付けた複数点の目印8とレーザー光5が一致するようにチェーンソー6を保持すればよいだけなので作業性は大幅に向上できる。
【符号の説明】
【0017】
1 伐倒方向
2 受け口
3 追い口
4 ラインレーザー発生器
5 レーザー光
6 チェーンソー
7 鋸刃本体
8 直線および/または複数点の目印
【要約】 (修正有)
【課題】立木の傾きを調べたり、伐倒方向を決めるのにラインレーザーを使用することで、受け口の作成作業を容易にサポートする間伐材等の伐倒補助装置を提供する。
【解決手段】伐倒する木の伐倒方向を決め、ラインレーザー発生器をチェーンソー6ではなく伐採する立木に固定し、ラインレーザー発生器からのレーザー光5は、これから作成する受け口の部分とその延長線上に沿って照射される。チェーンソーの鋸刃本体7に付けた直線(または複数点)の目印8とレーザー光が一致するようにチェーンソーを保持し、受け口を形成する。受け口を作る部分とチェーンソーの目印の両方にレーザー光を当てることで、チェーンソーの鋸刃から視線を外すことなく安全に作業を行うことができる。
【選択図】
図3