特許第6249393号(P6249393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249393
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】電子回路装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/00 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   H01L23/00 C
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-182780(P2013-182780)
(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公開番号】特開2015-50403(P2015-50403A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】荒川 良平
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−000279(JP,A)
【文献】 特開2006−172942(JP,A)
【文献】 特開2007−141529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00
H01L 23/552
H01L 23/60
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する箱形のケーシング内に、電子回路を構成する回路基板を、ケーシングの底面から浮かせた状態で保持すると共に、回路基板をケーシング内に保持させた状態で回路基板の上面に注入したポッティング用の樹脂が回路基板とケーシングの底面との間に流れ込むことを防止する堰き止め部を設け、注入された樹脂を硬化させた状態で回路基板とケーシングとの間に樹脂が充填されない未充填空間が形成されるようにした電子回路装置において、上記回路基板には外部のアースに接続されるアースが設けてあり、そのアースに連通し、回路基板の下面に形成されるアースパターンに対向するように、ケーシングの底面に外部と上記未充填空間とを連通する通気口を形成すると共に、上記回路基板の下面は絶縁性のレジンが被着されており、上記アースパターンの一部にレジンが被着されない検査用の接触部を形成し、その接触部を上記通気口に対向させたことを特徴とする電子回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板をケーシングに収納し樹脂でポッティングした電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路を構成する回路基板を外部からの水や静電気等から守るため、上方が開口した箱状のケーシング内に回路基板を収納し、その状態で樹脂をケーシング内に注入して回路基板を樹脂で封止するポッティングを行った電子回路装置が知られている。このような電子回路装置では、回路基板をケーシングの底面から浮かせ、樹脂を回路基板の上部および下部に充填して、回路基板を樹脂中に埋設している。
【0003】
しかしながら、このように回路基板を樹脂中に埋設する構成では、多量の樹脂を使用するため、樹脂を充填した後の電子回路装置が重くなるという不具合の他、多量の樹脂を使用するので樹脂のコストが高くなるという不具合も生じる。
【0004】
そこで、ケーシング内に回路基板をセットした状態で、回路基板の下方に樹脂が回り込まないように堰き止め部を設け、樹脂を充填した際に樹脂で回路基板の上面を覆い、回路基板の下方に樹脂の充填されない空間を残存させることにより、樹脂の使用量を削減したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−162742号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に示された構成では、回路基板の下方に残存する空間には空気が存在するが、樹脂を硬化する際にその空気が膨張すると、硬化前の樹脂を通って空気が抜けて樹脂に通気通路が形成されてしまうという不具合が生じる。また、樹脂の硬化後であっても外部の空気が温度変化によって膨張および収縮することにより空間内の圧力が変化して回路基板に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、ケーシングの底面にケーシング内部であるこの空間と外部とを連通する通気口を形成する必要がある。
【0007】
ところが、この通気口を通って外部から高電圧の静電気がケーシング内部に突入すると、その静電気が回路基板の下面に飛んで、回路基板上の電子回路を故障させるおそれが生じる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、静電気が通気口を通って回路基板に飛んでも電子回路が故障しない電子回路装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明による電子回路装置は、上方に開口する箱形のケーシング内に、電子回路を構成する回路基板を、ケーシングの底面から浮かせた状態で保持すると共に、回路基板をケーシング内に保持させた状態で回路基板の上面に注入したポッティング用の樹脂が回路基板とケーシングの底面との間に流れ込むことを防止する堰き止め部を設け、注入された樹脂を硬化させた状態で回路基板とケーシングとの間に樹脂が充填されない未充填空間が形成されるようにした電子回路装置において、上記回路基板には外部のアースに接続されるアースが設けてあり、そのアースに連通し、回路基板の下面に形成されるアースパターンに対向するように、ケーシングの底面に外部と上記未充填空間とを連通する通気口を形成すると共に、上記回路基板の下面は絶縁性のレジンが被着されており、上記アースパターンの一部にレジンが被着されない検査用の接触部を形成し、その接触部を上記通気口に対向させたことを特徴とする。
【0010】
通気口を通って静電気がケーシングの内部に突入した場合、静電気は回路基板の下面に向かって流れるが、その位置は通気口に対向する位置である。その通気口にアースパターンを対向させておけば、静電気はアースパターンに流れ、電子回路の他の部分に流れることなくアースへと逃がされる。
【0011】
そして、上記回路基板の下面に絶縁性のレジンが被着されている場合には、回路基板をケーシング内に収納する前に検査する必要があり、検査用のプローブが接触する接触部はレジンが被着されていない。そこで、このようにレジンが被着されていない接触部がアースパターンに設けられていれば、その接触部を上記通気口に対向させ
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、通気口を通って静電気がケーシング内に突入してもその静電気はアースパターンからアースへと逃がされるので、静電気が電子回路に悪影響を及ぼすおそれが回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
図2】ケーシングに回路基板を収納する状態を示す図
図3】回路基板の裏面のアースパターンを示す図
図4】通気口と接触部との位置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、1は本発明による電子回路装置の一例である。この電子回路装置1は樹脂製のケーシング3内に、電子部品が実装された回路基板2をセットし、その状態で樹脂Pを充填してさらにその樹脂Pを硬化させたものである。
【0015】
図2に示すように、回路基板2の上面には各種電子部品の他に外部からのハーネスが接続されるコネクタ21が実装されている。このコネクタ21には例えば6個の端子が設けられており、そのうちの1個の端子は外部のアースに接続される。
【0016】
ケーシング3は上方に開口する箱形に射出成形されている。このケーシング3の底板31の周囲には、ケーシング3の外壁より背の低い堰き止め部32が、外壁との間に隙間を生じるように形成されている。そして、その隙間は後述する樹脂溜まり33として機能する。
【0017】
また、底板31には円形に一段下がった樹脂よけ部34が形成され、さらに樹脂よけ部34には底板31を貫通する通気口35が設けられている。
【0018】
図3を合わせて参照して、回路基板2の下面には配線用の各種パタンが被着されている。上記コネクタ21のアース用の端子21aはそれら複数のパターンのうちのアースパターン22に半田付けされている。
【0019】
ところで、回路基板2の上面に各種電子部品やコネクタ21を実装したあとで回路基板2をフロー半田付け装置に通して回路基板2の下面の半田付けを行うが、その半田付けのあとで、絶縁のため、回路基板2の下面に絶縁塗料であるレジンを塗布して、各種パターンをレジンで被覆して外部に対して絶縁する処理が行われる。その際、アースパターン22の一部にレジンが塗布されない接触部23を残すようにした。
【0020】
この接触部23は回路基板2が完成したあと、ケーシング3内に収納する前に検査する際に、検査用のプローブを接触させる部分である。そのため、コネクタ21にハーネスが接続されると、接触部23はアースパターン22を介して外部のアースに対して電気的に接続されることになる。なお、この接触部23は端子21aに対して比較的近い位置に設けるようにした。
【0021】
上記ケーシング3の底板31に形成する通気口35は、回路基板2をケーシング3内に収納した状態で、接触部23に対応する位置に形成した。
【0022】
図4を参照して、回路基板2をケーシング3内に収納すると、回路基板2は環状の堰き止め部32の上端部に載置される。その状態で回路基板2の上面に未硬化の樹脂P(例えばウレタン樹脂)を流し込むと、樹脂Pは回路基板2の上面に沿って外側に流れ、ケーシング3の周壁との間から樹脂溜まり33内に流れ込む。
【0023】
樹脂溜まり33が樹脂Pで充満しても樹脂止め部32の上端と回路基板2の下面とが密着しているので、樹脂止め部32の内側には樹脂Pは流れ込まない。その状態で樹脂Pが硬化すると、回路基板2の下方に樹脂止め部32と底板31とで囲まれた、樹脂Pが充填されていない空間Sが形成される。なお、回路基板2に形成された細孔を通って若干ではあるが空間S内に樹脂が漏れ出ることがあるが、樹脂よけ部34が一段下がっているので、樹脂Pは樹脂よけ部34の外周縁で表面張力によって流れが止まり、樹脂Pが樹脂よけ部34内に流れ込むことはない。
【0024】
このように空間Sは外部に対して閉塞されるが、例外として通気口35を介して外部と連通することになる。外部に強力なプラスの静電気が発生すると、その静電気が通気口35を通って空間S内に突入することが考えられる。静電気が強力であると、突入した静電気はそのまま回路基板2に飛ぶが、その際、通気口35に接触部23が対向しているため、接触部23が最も近い位置に有り、さらに接触部23がアースに接続されているので、静電気は接触部23に飛ぶことになる。他の位置に静電気が飛ぶと回路基板上の電子部品を破損するおそれが生じるが、接触部23に静電気が飛べば,静電気の電荷は直ちにアース側に流れるので、回路基板2上の電子部品が破損されることが防止される。
【0025】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0026】
1 電子回路装置
2 回路基板
3 ケーシング
21 コネクタ
21a 端子
22 アースパターン
23 接触部
35 通気口
図1
図2
図3
図4