特許第6249411号(P6249411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249411
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】バスバー
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/20 20060101AFI20171211BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01M2/20 A
   H01M2/10 A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-199338(P2014-199338)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-72040(P2016-72040A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】草場 幸助
(72)【発明者】
【氏名】服部 猛
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸得
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 仁
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−164085(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/014398(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/073403(WO,A1)
【文献】 特開2003−162993(JP,A)
【文献】 特開2010−205509(JP,A)
【文献】 特開2004−227925(JP,A)
【文献】 特開2014−037018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20
H01M 2/12
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池(4)の電極(40)と接続されるとともに、該電池からの排出ガスを排出するガス流路(23)をアッパーケース(22)とともに区画するバスバー(3)であって、
板状の導電性金属よりなり、該電極と接続される導電部(30)と、
エラストマー又はゴム状弾性体よりなり、該導電部の表面に一体にもうけられ該アッパーケースとの間をシールするシール部(35)と、
を有することを特徴とするバスバー。
【請求項2】
前記シール部(35)は、前記導電部(30,31)の外周に形成される請求項1記載のバスバー。
【請求項3】
前記導電部(30)は、前記バスバー(3)の外部端子(32)を有し、
前記シール部(35)は、該外部端子(32)の表面を被覆する請求項1〜2のいずれか1項に記載のバスバー。
【請求項4】
前記バスバー(3)は、前記ガス流路(23)に前記排出ガスが流れる貫通孔(33)が開口し、
前記シール部(35)は、該貫通孔(33)を区画する前記導電部(30)と前記電池(4)との間にも介在する請求項1〜3のいずれか1項に記載のバスバー。
【請求項5】
前記エラストマーは、ゴム,熱可塑性ゴム架橋体,オレフィン系熱可塑性エラストマー,エステル系熱可塑性エラストマーより選択される請求項1〜4のいずれか1項に記載のバスバー。
【請求項6】
前記シール部(35)は、
前記導電部(30)の表面に位置する基部(36)と、
該基部(36)から突出するとともに、その先端が前記アッパーケース(22)と当接するリップ部(37)と、
を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のバスバー。
【請求項7】
前記リップ部(37)は、前記ガス流路(23)の内部と外部を結ぶ幅方向での長さが、基端部で長く、先端部で短い先細形状を有する請求項6記載のバスバー。
【請求項8】
前記リップ部(37)は、その先端(37A)の前記幅方向の位置と前記基端部の前記ガス流路側の端部(37B)との長さ(L1)が、該先端(37A)の該幅方向の位置と該基端部の前記ガス流路に背向する側の端部(37C)との長さ(L2)が、L1<L2の関係を満たす請求項7記載のバスバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーに関し、詳しくは、電池の電極に接続されるバスバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源や省エネルギーの観点から、繰り返し使用できるニッケル水素、ニッケルカドミウムやリチウムイオンなどの二次電池への需要が高まっている。中でもリチウムイオン二次電池は、軽量でありながら、起電力が高く、高エネルギー密度であるという特徴を有している。そのため、携帯電話やデジタルカメラ、ビデオカメラ、ノート型パソコンなどの様々な種類の携帯型電子機器や移動体通信機器の駆動用電源としての需要が拡大している。そして、自動車などの大電流が要求されるモータ駆動用の電源として、複数の電池を組み合わせてなる組電池の利用が進められている。
複数の電池から形成される組電池は、それぞれの電池を、直列及び/又は並列に接続して形成される。この組電池は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、複数の電池を筐体に収納し、接続体(配線基板)で電気的に接続した組電池を開示している。この組電池は、蓋体と配線基板との間に区画される排気室を介して、電池からの排出ガスを外部に排出する。そして、配線基板は、樹脂系の材料よりなる耐熱性部材と、耐熱性部材の電池と当接する表面に配された弾性部材と、の二層の積層構造を有し、弾性部材が電池と配線基板との間の気密性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4815026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された組電池は、配線基板の電池との当接面に弾性部材を配して筐体側に排出ガスが流れること(ガス漏れ)を防止することは記載しているが、排出ガスの圧力が高い場合には、ガス漏れが生じるおそれがあった。特に、排気室に流れ込んだ排出ガスが排気室の外部に漏れることについては、何らの記載もされていない。
更に、従来の組電池の配線基板では、耐熱性部材と弾性部材との積層構造となっており、コスト高となるという問題もあった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、電池から排出される排出ガスのガス流路(排気室)からのガス漏れが抑えられたバスバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
適用例1は、電池の電極と接続されるとともに、電池からの排出ガスを排出するガス流路をアッパーケースとともに区画するバスバーであって、
板状の導電性金属よりなり、電極と接続される導電部と、
エラストマー又はゴム状弾性体よりなり、導電部の表面に一体にもうけられアッパーケースとの間をシールするシール部と、
を有することを特徴とするバスバーである。
【0009】
適用例1に記載のバスバーは、電池の電極と接続されるバスバーが、電池からの排出ガスを排出するガス流路をアッパーケースとともに区画する。バスバーは、エラストマー又はゴム状弾性体よりなるシール部を有する。このバスバーに一体に形成されたシール部が、バスバーとアッパーケースとの間をシールすることで、ガス流路に電池からの排出ガスが流れ込んでも、ガス流路の外部(排出ガスの排出経路の外部)にガス漏れが生じなくなる。特に、エラストマー又はゴム状弾性体は、シール部自身の弾性変形を可能にするため、より高いシール性を確保できる。
【0010】
また、シール部がエラストマー又はゴム状弾性体よりなることから、ガス流路を流れる排出ガスの熱によりシール部が弾性変形を生じ、その結果として、バスバーとアッパーケースとの界面を被覆することとなり、ガス漏れが生じなくなる。
更に、シール部を形成するエラストマー又はゴム状弾性体は、導電部と一体に成形を行うことが容易にでき、コストの上昇を抑えることができる。
【0011】
[適用例2]
適用例1に記載のバスバーにおいて、シール部は、導電部の外周に形成される。
この構成によると、シール部が導電部の外周にもうけられることで、シール部が導電部のズレも抑えることができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1〜2のいずれかに記載のバスバーにおいて、導電部は、バスバーの外部端子を有し、シール部は、外部端子の表面を被覆する。
この構成によると、シール部が導電部の外部端子の表面も被覆することで、外部端子の界面でのガス漏れを抑えることができる。
【0013】
[適用例4]
適用例1〜3のいずれかに記載のバスバーにおいて、バスバーは、ガス流路に排出ガスが流れる貫通孔が開口し、シール部は、貫通孔を区画する導電部と電池との間にも介在する。
【0014】
この構成によると、シール部がバスバーとアッパーケースとの間のガス漏れだけでなく、バスバーの導電部と電池との間(電池からガス流路につながる貫通孔)でのガス漏れも抑えることができる。
【0015】
[適用例5]
適用例1〜4のいずれかに記載のバスバーにおいて、エラストマーは、ゴム,TPV(熱可塑性ゴム架橋体),TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー),TPC(エステル系熱可塑性エラストマー)より選択される。エラストマーが、これらの樹脂より選ばれることで、ガス漏れを抑えることができる。また、シール部の形成を容易に行うことができる。
【0016】
[適用例6]
適用例1〜5のいずれかに記載のバスバーにおいて、シール部は、導電部の表面に位置する基部と、基部から突出するとともに、その先端がアッパーケースと当接するリップ部と、を有する。
この構成によると、シール部のリップ部がバスバーとアッパーケースの界面を被覆するように変形することで、界面でのガス漏れを抑えることができる。
【0017】
[適用例7]
適用例6に記載のバスバーにおいて、リップ部は、ガス流路の内部と外部を結ぶ幅方向での長さが、基端部で長く、先端部で短い先細形状を有する。
この構成によると、リップ部は、突出する方向での幅が基端部で長くなって(リップ部の厚さが基端部で厚くなって)おり、基端部は先端と比較して変形しにくくなっている。すなわち、リップ部の先端部がアッパーケースに押しつけられた状態で基端部に排出ガスの圧力が加わっても、基端部が折れ曲がることが抑えられる。この結果、基端部が折れ曲がることで先端部がアッパーケースから剥離することが抑えられる。すなわち、ガス漏れを確実に抑えることができる。
【0018】
[適用例8]
適用例6〜7のいずれかに記載のバスバーにおいて、リップ部は、その先端の幅方向の位置と基端部のガス流路側の端部との長さ(L1)が、先端の幅方向の位置と基端部のガス流路に背向する側の端部との長さ(L2)が、L1<L2の関係を満たす。
【0019】
この構成によると、アッパーケースをバスバーに押しつけるように組み付けるときに、リップ部のガス流路の外部側の表面がアッパーケースの内表面に当接する。そして、この状態でアッパーケースの組み付けがすすめられると、リップ部がガス流路の内部側に向かって傾斜した状態で組付けが完了する。この状態は、リップ部のガス流路の外部側の表面がアッパーケースの内表面に、リップ部の弾性力で付勢された状態であり先端部がアッパーケースから剥離することが抑えられる。すなわち、ガス漏れを確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1の組電池の構成を模式的に示す概略断面図である。
図2】実施形態1の組電池のバスバーと電池の構成を模式的に示す斜視図である。
図3】実施形態1の組電池の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
図4】実施形態1の組電池のバスバーのリップ部の構成を模式的に示す拡大断面図である。
図5】実施形態1の組電池の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
図6】厚さが略一定のリップ部の構成を模式的に示す拡大断面図である。
図7】厚さが略一定のリップ部の変形を模式的に示す拡大断面図である。
図8】実施形態2の組電池のバスバーのリップ部の構成を模式的に示す拡大断面図である。
図9】実施形態3の組電池のバスバーのリップ部の構成を模式的に示す拡大断面図である。
図10】実施形態4の組電池のバスバーのリップ部の構成を模式的に示す拡大断面図である。
図11】実施形態5の組電池のバスバーのリップ部近傍の構成を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を組電池で具体化した実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、実施形態では、複数の電池を備える組電池に本発明を適用した例を示したが、一つの電池に適用した形態であってもよい。
【0022】
[実施形態1]
(組電池の構成)
本形態の組電池1は、図1に概略断面図で示したように、ロアーケース20及びアッパーケース22から形成される電池ケース2と、バスバー3と、複数の電池4と、を有する。そして、本形態の組電池1は、ロアーケース20とバスバー3とに区画された電池収納室21と、バスバー3とアッパーケース22とに区画されたガス流路23と、を有する。本形態の組電池1は、複数の電池4を並列に接続している。
【0023】
本形態では、複数の電池4を一列に並べた状態で組電池1を形成しているが、電池4の配列方法についてはこの形態に限定されるものでなく、複数の電池4を密な状態で配列しても良い。
【0024】
(電池)
組電池1を構成する電池4は、軸方向の両端の端面に電極(正極,負極)がもうけられた柱状(円柱形状)を備えている。電池4は、その種類が限定されるものではないが、本形態では非水電解質二次電池であるリチウムイオン二次電池が採用される。電池4(リチウムイオン二次電池)は、一方の電極40(本形態では正極。負極に排出ガスを排出する機構がある場合には、負極が該当する。)から、電池4の内部で発生した排出ガスが排出される。例えば、内部で発生した排出ガスを排出するベント機構を備えることで、電池4(リチウムイオン二次電池)内部で発生した排出ガスを排出する。
【0025】
(ロアーケース)
ロアーケース20は、複数の電池4を収納する略槽状を有する。ロアーケース20は、複数の電池4を、その電極端子がバスバー3の下面に当接した状態(電池4がバスバー3に付勢された状態)で収納する。本形態では、電池4の内部で発生した排出ガスが排出される一方の電極40(正極)がバスバー3の下面に当接する状態で収納される。
【0026】
ロアーケース20は、図示しない固定手段により複数の電池4をその位置のズレを抑えた状態で保持する(固定する)。この固定手段は、複数の電池4を所定の状態に保持できる手段であれば限定されるものではない。電池4が収納される所定の状態とは、図1に示されるように、槽状のロアーケース20の深さ方向に電池4の軸方向が伸びる状態をあげることができる。
【0027】
(バスバー)
バスバー3は、電池4の一方の電極40(正極)に接続される。バスバー3は、その下面に複数の電池4の一方の電極40(正極)が同時に当接する。なお、バスバー3の下面とは、各図(特に図3)での上下方向での下面であり、電池4との当接面を示す。以降、上下方向について、特に規定がない場合は、同様の方向が該当する。
【0028】
バスバー3は、電池4の一方の電極40(正極)に接続されるとともに電気伝導を担う導電部30と、導電部30(導電本体部31)の外周であって電池ケース2との当接部に全周に亘って形成されたシール部35と、を有する。
【0029】
導電部30は、板状の導電性金属よりなる。導電部30を形成する導電性金属は、本形態では銅を用いたが、その材質が限定されるものではない。例えば、銅(Cu系合金),鉄(Fe系合金),アルミニウム(Al系合金)等の導電性金属をあげることができる。導電部30を形成する導電性金属は、その表面にメッキ等の表面処理を施してもよい。本形態では、銅の表面にNiメッキを施している。
導電部30を形成する金属板の厚さは、限定されるものではない。導電部30(バスバー3)の形状を保持できる剛性を有する厚さとすることができる。
導電部30は、電池ケース2の形状と略一致する導電本体部31と、導電本体部31から電池ケース2の外部に突出する電極端子部32と、から形成される。
【0030】
導電本体部31は、図2図3に示したように、電池4から排出された排出ガスが通過する貫通孔33が厚さ方向に貫通して形成されている。図2は、バスバー3と電池4との接続を示す斜視図である。図3は、図1中のIII部の拡大断面図である。貫通孔33は、円柱状の電池4の外径よりもわずかに小さい径の内径の略円形の開口形状を備えている。貫通孔33は、外方から径方向内方(円心方向)に向かって伸びる接続体34がもうけられている。接続体34は、導電本体部31と一体に形成され、電池4の一方の電極40(正極)に当接して接続される。
【0031】
接続体34は、略円形の貫通孔33の径方向内方に向かって伸びるとともに、その先端部近傍が電池4の一方の電極40(正極)側に折り曲げられている。この折り曲げは、接続体34の下面(電池4との対向面)が、バスバー3の下面よりも下方(ロアーケース20側)に位置するようになされている。この折り曲げにより、接続体34が一方の電極40(正極)と当接できる。
【0032】
接続体34と一方の電極40(正極)との当接部は、電気的な接続が確保されている状態であれば固定が行われていても固定されていなくても、いずれでもよい。折り曲げられた接続体34自身の弾性により接続体34が一方の電極40(正極)に付勢された状態で当接していても、接続体34と一方の電極40(正極)とをハンダ付けや溶接で接合して当接していても、いずれでもよい。
【0033】
電極端子部32は、導電本体部31と一体に形成され、その先端が電池ケース2の外部に突出する。電極端子部32は、組電池1の電極端子(外部端子,正極端子)を形成する。
【0034】
シール部35は、導電部30(導電本体部31)の略外周に一体にもうけられ、アッパーケース22及びロアーケース20との間をシールする。シール部35は、図3に示したように、導電本体部31の端部の上面及び下面を同時に被覆するように形成される。
【0035】
シール部35は、導電本体部31の端部を被覆する基部36と、導電本体部31の上面側の基部36から突出するとともに、その先端がアッパーケース22と当接するリップ部37と、を有する。基部36は、導電本体部31の端部の上面を被覆する。基部36は、導電本体部31の端部の上面での表面が導電部30(導電本体部31)と平行に広がった形状をなすように形成されている。
【0036】
リップ部37は、図4に示したように、アッパーケース22が組み付けられていない状態では、ガス流路23の内部と外部を結ぶ幅方向での長さが、基端部で長く、先端部で短い先細形状に形成されている。なお、ガス流路23の内部と外部を結ぶ幅方向とは、図3の左右方向(リップ部37の厚さ方向)に相当する。
【0037】
より具体的には、その先端37Aの幅方向の位置と基端部のガス流路側の端部37Bとの長さ(L1)と、先端37Aの幅方向の位置と基端部のガス流路に背向する側の端部37Cとの長さ(L2)とが、L1<L2の関係を満たすように形成される。ここで、リップ部37が各端部37B,37CがR形状をなすように丸められた形状の場合には、リップ部37及び基部36の概略形状に沿った仮想線を引き、当該仮想線から各端部37B,37Cを求める。
【0038】
シール部35は、導電本体部31の下面の全面(貫通孔33及び接続体34を除く)を被覆する下面シール部38を有する。下面シール部38は、導電本体部31の端部を被覆する基部36と一体に、導電本体部31の下面全体を被覆するように形成されている。
【0039】
下面シール部38は、電池4がバスバー3に付勢された状態(組電池1が組み立てられた状態)では、電池4の一方の電極40(正極)である端面の周縁部が密着して当接して電池4と導電部30(導電本体部31)との間に介在して、電池4から排出される排出ガスが電池収納室21へ漏れ出すことを防止する。
【0040】
シール部35は、図5に示したように、電極端子部32の表面も被覆する。電極端子部32の被覆は、電極端子部32が電池ケース2を貫通する部分で上面及び下面を含む全周に亘って行われる。図5は、図1中のV部の拡大断面図である。
【0041】
シール部35は、エラストマー(又はゴム状弾性体)により形成される。エラストマー(又はゴム状弾性体)の具体的な材質は、限定されるものではない。例えば、熱可塑性エラストマー,ゴムをあげることができる。熱可塑性エラストマーは、JIS K6418に記載の熱可塑性エラストマーを採用でき、これらのうち、TPC,TPO,TPVが好ましい。ゴムとしては、EPDM,シリコーンゴム,FKM,ACMが好ましい。なお、本形態において、エラストマー(又はゴム状弾性体)は、これらのエラストマー(ゴム)より選択される1種又は2種以上から形成できる。本形態では、TPCが用いられる。
【0042】
TPCは、曲げ弾性率が20MPa〜1300MPa,降伏伸びが15%〜50%であることが好ましい。
【0043】
(アッパーケース)
アッパーケース22は、バスバー3との間でガス流路23を区画する。アッパーケース22は、ガス流路23を区画するために、上方側(電池4の軸方向であって、バスバー3から離反する方向)に凸となる蓋形状を有する。
【0044】
アッパーケース22は、バスバー3を介してロアーケース20との当接部(図示せず)を有する基板部220と、バスバー3との間に間隔を隔ててもうけられた天井部221と、基板部220と天井部221とを接続する傾斜した内周面をもつ傾斜部222と、を有する。
基板部220は、ロアーケース20との間で電池ケース2を形成可能な形状(ロアーケース20の略槽状の開口を塞ぐことができる外形形状)に形成されている。
【0045】
傾斜部222は、組電池1を形成したときに、シール部35のリップ部37が当接する位置に形成されている。また、傾斜部222の傾斜角については限定されるものではない。リップ部37が当接したときに、図3に示したようにシール可能な角度であればよい。
【0046】
アッパーケース22は、電池4から排出された排出ガスがガス流路23を通って排出されるガス排出口24が、天井部221に開口している。本形態はガス排出口24が、天井部221の中央部に開口しているが、この開口位置は限定されるものではない。例えば、傾斜部222に開口していてもよい。ガス排出口24が傾斜部222に開口する場合には、ガス漏れを防ぐために、傾斜部222とリップ部37との当接部よりも内方側であることが好ましい。
ガス排出口24の開口数についても限定されるものではない。すなわち、アッパーケース22は、複数のガス排出口が開口していてもよい。
【0047】
(組電池のその他の構成)
本形態の組電池1は、図示しない締結手段により、ロアーケース20及びアッパーケース22に、両ケース20,22が閉じる方向の応力が付与されている。両ケース20,22が閉じる方向の応力が付与されることで、アッパーケース22とバスバー3(シール部35)とが密着してガス漏れが抑えられる。
【0048】
電池ケース2は、その材質が限定されるものではなく、両ケース20,22が閉じる方向に付与された応力による損傷を生じない材質であればよい。例えば、硬質樹脂,金属等の材質をあげることができる。
【0049】
本形態の組電池1は、複数の電池4の他方の電極41(負極)も、図示しない負極バスバーで並列の状態で接続される。負極バスバーは、電池ケース2の外部に突出する組電池1の負極端子を有する。
【0050】
(本形態の作用効果)
本形態の組電池1において、シール部35のリップ部37は、図4に示したようにL1<L2の関係を満たすように形成されている。そして、アッパーケース22を組み付けると、最初に、リップ部37の外方側の表面37aが傾斜部222の内表面に当接する。
【0051】
そして、アッパーケース22を更にロアーケース20に近接させていくと、リップ部37の外方側の表面37aが傾斜部222の内表面にガイドされて、リップ部37が内方側に傾斜する。先端37Aが内方側に傾く(変形する)。
【0052】
アッパーケース22を更にロアーケース20に近接させて当接させると、図3に示したように、リップ部37の外方側の表面37aが傾斜部222の内表面に当接した状態で密着する。
【0053】
リップ部37は、先端部の厚さが薄く、基端部の厚さが厚くなっている。この形状によると、リップ部37の先端部は変形しやすく(傾斜しやすく)、基端部は変形しにくく(傾斜しにくく)なっている。このリップ部37の形状による作用により、リップ部37の外方側の表面37aが傾斜部222の内表面に押しつけられ、ガス流路23からのガス漏れを抑えることができる。
【0054】
また、ガス流路23に電池4から排出された排出ガスが充填したときに、排出ガスがリップ部37に対して外方側に向かう応力を付与する。この応力に対して、リップ部37の基端部が厚いことで、基端部での変形が抑えられる。その結果、リップ部37が内方側に折れ曲がることが抑えられ、ガス流路23からのガス漏れを抑えることができる。
【0055】
対して、図6に示したように、リップ部37の厚さが先端部と基端部とで略一定の場合には、基端部が薄いため、リップ部37の外方側の表面37aが傾斜部222の内表面に押しつけられる力が小さくなる。このリップ部37は、ガス流路23に電池4から排出された排出ガスが充填したときに、排出ガスがリップ部37の基端部に応力を付与する。このリップ部37は基端部が薄いため基端部で変形を生じやすく、図7に示したように、リップ部37が折れ曲がるように変形する。そうすると、リップ部37の外方側の表面37aと傾斜部222の内表面との間に隙間が生じ、ガス流路23からのガス漏れを抑えることが難しくなる。
【0056】
更に、リップ部37がL1<L2の関係を満たすことで、アッパーケース22を組み付けるときに、リップ部37が傾斜部222の内表面にガイドされて、リップ部37が内方側に傾斜するようになる。すなわち、リップ部37がL1<L2の関係を満たすことで、図3に示した状態で、ガス漏れを抑えることができる。
【0057】
以上に詳述したように、本形態の組電池1は、シール部35のリップ部37が所定の形状を有することで、ガス流路23からのガス漏れを確実に抑えることができる。
【0058】
本形態の組電池1は、シール部35がTPC(熱可塑性弾性樹脂)よりなる。TPCは、弾性変形が可能であり、より高い耐ガス漏れ性(シール性)を確保できる。また、ガス流路23に充填した排出ガスが高圧の場合、その圧力によりリップ部37が弾性変形を生じ、その結果として、バスバー3(導電部30)とアッパーケースとの界面をふさぐ(被覆する)こととなり、ガス漏れが生じなくなる。更に、TPCは、インサート成形(射出成形)が可能な樹脂(エラストマー)であり、導電部30と一体に成形を行うことが容易にでき、コストの上昇を抑えることができる。また、TPCは、インサート成形で成形を行うと、成形後に収縮する。この収縮により、シール部35と導電部30との密着性が向上する。
【0059】
本形態の組電池1では、シール部35が、導電部30(導電本体部31)の外周に全周にわたって形成されており、アッパーケース22との界面の全周に亘ってより高い耐ガス漏れ性(シール性)を確保できる。
【0060】
本形態の組電池1では、シール部35がTPCよりなることで、導電部30の外周の全周に亘って形成されても、シール部35の弾性が導電部30に加える応力が小さく、その結果としての導電部30の変形及び変形に伴うズレも抑えることができる。
【0061】
本形態の組電池1では、シール部35が導電部30の電極端子部32(組電池1の電極端子(正極端子))も被覆することで、電極端子部32の界面でのガス漏れを抑えることができる。
【0062】
本形態の組電池1では、シール部35(下面シール部38)が、電池4と導電部30(導電本体部31)との間に介在して、電池4から排出される排出ガスが電池収納室21へ漏れ出すことを防止する。
【0063】
[実施形態2]
本形態は、リップ部37の形状(厚さ方向の断面形状)が異なること以外は、実施形態1と同様な組電池である。本形態のリップ部37を、図8に示す。
図8に示したように、本形態におけるリップ部37は、基端部のガス流路側の端部37Bと先端37Aとの幅方向の位置が同じとなるように形成されている。すなわち、L1=0の状態で形成されている。
本形態でも、実施形態1と同様の効果が発揮される。
【0064】
[実施形態3]
本形態は、リップ部37の形状(厚さ方向の断面形状)が異なること以外は、実施形態1と同様な組電池である。本形態のリップ部37を、図9に示す。
図9に示したように、本形態におけるリップ部37は、基端部のガス流路側の端部37Bが、先端37Aよりも、幅方向の位置で外方側に位置するように形成されている。すなわち、L1<0の状態で形成されている。なお、L1の絶対値は、L2よりも小さい。
本形態でも、実施形態1と同様の効果が発揮される。
【0065】
[実施形態4]
本形態は、リップ部37の形状(厚さ方向の断面形状)が異なること以外は、実施形態2と同様な組電池である。本形態のリップ部37を、図10に示す。
図10に示したように、本形態におけるリップ部37は、厚さが2段の階段状に変化する。
本形態でも、実施形態2と同様の効果が発揮される。
【0066】
[実施形態5]
本形態は、導電本体部31の上面の全面(貫通孔33及び接続体34を除く)に上面シール部39を有すること以外は、実施形態1と同様な組電池である。本形態を、図3の時と同様に、リップ部37近傍の断面図で図11に示す。
【0067】
本形態では、導電部30(導電本体部31)に通孔を開口しておき、通孔の内部をTPCが充填している。通孔に充填したTPCは、上面シール部39と下面シール部38と一体に形成される。これにより、両シール部38,39と導電部30(導電本体部31)の密着性の低下が抑えられる。
その他、本形態では、実施形態1と同様の効果が発揮される。
【符号の説明】
【0068】
1:組電池
2:電池ケース
20:ロアーケース 21:電池収納室
22:アッパーケース 23:ガス流路
24:ガス排出口
3:バスバー
30:導電部 31:導電本体部
32:電極端子部 33:貫通孔
34:接続体
35:シール部 36:基部
37:リップ部 38:下面シール部
39:上面シール部
4:電池 40:一方の電極(正極)
41:他方の電極(負極)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11