(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上に記した各特許文献に記載の濃度測定法或いは濃度調整法には、以下のような課題が存在する。
【0014】
特許文献1では、処理チャンバーの上流側で流量計測してフィードバックをかけているに過ぎないので、依然として、計測混合比と実混合比とが同一であるか否かの課題は解決されていない。更に、ガスの混合状態を均一にするためには、混合位置から処理チャンバーへの導入位置までの供給ラインの長さを十分とる必要があるが、その場合は計測混合比と実混合比とを同一と見做すのは一層困難である。計測混合比と実混合比との同一性を担保するのに、混合位置と導入位置を可能な限り近づけることが考えられるが、その場合は、均一混合の保証が担保されにくくなるという課題が生ずる。前述の課題に加えこのような課題も解決しようとするとその機構が益々複雑となり一層の高度なコントロール技術を要することになる。加えて、特許文献1の構成では、流量計測なのでガス種の特定ができない。
【0015】
特許文献2の場合は、分圧測定なので、本件でいうところの精度の高い測定には不向きで、況してや微量オーダー領域での分圧測定となると測定誤差が大きくなることは否めない。
【0016】
特許文献3に開示の方法は、ガス混合室から反応室に供給される混合ガス中の各原料ガスの濃度を測定する第1の赤外線ガス分析手段と、前記反応室から排出された排出ガス中の各原料ガスの濃度を測定する第2の赤外線ガス分析手段と、前記第1および第2の赤外線ガス分析手段の測定結果から前記反応室内での各原料ガスの消費量を演算し、それぞれの演算値と予め決めた設計値との差分を制御量として、前記流量制御手段とガス供給源温度制御部と基板温度制御部との内のいずれか一つを個々に調整する構成であるため、反応室内壁面など成膜以外で消費される原料ガスが考慮されていないので、均一膜厚で均一成分の薄膜を形成するのは難しい。しかも、特許文献3には赤外線ガス分析手段の具体例が示されていないので、ナノオーダーレベルの均一膜厚で均一成分の薄膜を形成するとなると、有機金属化合物を所定の濃度で一定時間、処理チャンバーに供給するのに有機金属化合物の供給濃度を厳重に管理しなければならず、濃度測定の高い精度が要求されるが、この要求を満たすことは簡単ではない。
【0017】
特許文献4に記載の方法は、異なった波長の2つの単色光を青果物に照射して各単色光に関しての、複数の実測例の光透過率Ta,Tbの値とその例の実測の糖度Cの値とから特定式の係数を夫々決定し、その決定された各係数と計測される2つの単色光の光透過率 のデータを用いて戦記特定式から糖度を求めるものであるので、糖度計測される青果物の平均糖度が得られるに過ぎない。従って、表皮近くや芯近くに高い糖度を有する青果物の場合、食する部分によっては糖度が不十分であったりして商品価値を下げる青果物が出荷中に紛れ込んだりすることを避けるのが難しい場合がある。
【0018】
特許文献5、6の方法では、患者が緊張して測定患部に汗をかいたり、体温の上昇を招いたりして起こる測定誤差は避けられない。血糖測定器の測定法には、酵素電極法と酵素比色(比色定量)法がある。酵素電極法としては、グルコースオキシダーゼ(GOD)法、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)法がある。酵素比色(比色定量)法としては、ヘキソキナーゼ(HX)法、グルコースオキシダーゼ / ペルオキシダーゼ(GOD / POD)法がある。しかし、ヘマトクリット(一定量の血液中に含まれる赤血球の割合を調べる検査)値が20%〜約60%の間にある場合は、各器測定値の誤差は見られないが、極度の貧血患者や透析患者のようなヘマトクリット値が20%を下回る血液では高値に、逆に新生児や生理前の女性などのようなヘマトクリット値が55%を上回る多血症血では低値を示すという課題がある。従って、極度の貧血患者や透析患者に不適切である。更に、GOD法は、血液中の溶存酸素分圧が大きいほど血糖値は低く測定されるという課題がある。従って、GOD法は、呼吸管理のために酸素を使用している患者に対しては適切ではない。加えて、測定器の使い方や試験紙の取り付け方、血液の吸引・点着の手技の確認などが原因になって、正常な測定値が得られてない場合がある。
特許文献7に記載の方法は、ヘモグロビンによる呈色と糖化ヘモグロビンによる呈色とさらにはグルコースによる呈色とを異なる波長の光の反射でそれぞれ検出するという同じ測定原理で測定するものであるので、装置の簡略化、小型化が図れるという利点があるとするが、ヘモグロビン用、糖化ヘモグロビン用、グルコース用、の3種の呈色のための試薬と呈色作業を要し、しかも、採血の負担がある。
【0019】
又、日本酒の製造においては、湿度・温度・衛生面において厳重な管理がなされ、製造過程において、日本酒度・酸度・アミノ酸度は、頻繁に測定されるが、日本酒度・酸度・アミノ酸度を簡易な手段で極微量領域の濃度まで非破壊で正確且つ迅速に測定する方法は、未だに提供されてない。
【0020】
以上の説明から理解されるように、簡易な手段で極微量領域の濃度まで非破壊で正確且つ迅速に所定の化学成分の濃度を測定できる濃度測定方法は今日まで提供されていない。
又、別には、気体、液体、固体に拘らず、被測定物中の複数の化学成分の濃度を同一の測定系・同一条件で高精度にリアルタイムで測定できる濃度測定法もこれまで提供されてない。
更には、被測定対象中の化学成分の濃度を正確・迅速に且つナノオーダの極微量濃度域までリアルタイムで測定でき、様々な態様と形態において具現化され得る万能性を備える濃度測定方法もこれまで提供されてない。
又、更には、被測定対象中の複数の化学成分の濃度を簡単な構成で正確且つ迅速にリアルタイムで測定できる濃度測定方法もこれまで提供されてない。
【0021】
本発明は上記点に鑑み鋭意研究することでなされたものである。
その目的とするところの一つは、簡便な構成で化学成分の濃度を正確且つ迅速にリアルタイムで測定できる濃度測定方法を提供する事にある。
本発明の他の目的の一つは、簡便な構成で気体・液体・個体に拘らず、被測定対象中の化学成分の濃度を正確・迅速に且つナノオーダの極微量濃度域までリアルタイムで測定でき、様々な態様と形態において具現化され得る万能性を備える濃度測定方法を提供する事にある。
本発明の更に別な目的の一つは、非破壊・非接触で、化学成分の濃度を簡単な構成で且つ迅速・正確に極微量領域まで測定できる濃度測定方法を提供する事にある。
本発明のもう一つ別な目的の一つは、電気回路、電子素子等のシステムの構成要素の特性変動、環境変動に基づく測定誤差の排除が少なくとも実質的に可能な状態で化学成分の濃度を極微量領域まで測定できる濃度測定方法を提供する事にある。
本発明のもう一つの別な目的は、患者が緊張して測定患部に汗をかいたり、体温の上昇を招いたりして起こる測定誤差(検体/被測定対象の生理状況に基づく誤差:以後「生理誤差」と記載することもある)が少なくとも実質的にない状態で、血糖値を簡便な構成と方法で且つ非侵襲で測定出来る濃度測定方法を提供する事にある。
本発明の更に別な目的の一つは、被測定対象中の複数の化学成分の濃度を簡単な構成で正確且つ迅速にリアルタイムで測定できる濃度測定方法を提供する事にある。
本発明の更に別なもう一つの目的は、血糖値とヘモグロビンA1c値の両者を同一の構成と方法で簡便に測定できる濃度測定方法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第一の観点は 被測定対象中の所定の化学成分の濃度を光学的に測定する濃度測定方法において、
少なくとも、前記化学成分に対して吸収性がある第一の波長(λ1)の光(1)
と、前記化学成分に対し吸収性がないか実質的にないかもしくは前記第一の波長の光よりも吸収性が比較的低い第二の波長(λ2)の光(2)を発光手段から前記被測定対象に向けてタイムシャリング法によって照射し、
該照射によって生じる前記被測定対象を介してくる光を順次受光手段で受光し、
該受光によって生じる前記光(1)に基づく第一の受光信号(1)と前記光(2)に基づく第二の受光信号(2)とを差動信号形成手段に入力し、
該入力に応じて前記差動信号形成手段から出力される差動信号に基づく測定値と予め記憶手段に記憶されているデータとから前記所定の化学成分の濃度を導出する
と共に、
前記差動信号に応じたフィードバック信号を前記発光手段の発光量を制御する発光量制御手段又は/及び前記差動信号形成段にフィードバックすることを特徴とする濃度測定方法にある。
本発明の第二の観点は 被測定対象中の所定の化学成分の濃度を光学的に測定する濃度測定方法において、
少なくとも、前記化学成分に対して吸収性がある第一の波長の光と、前記化学成分に対し吸収性がないか実質的にないかもしくは前記第一の波長の光よりも吸収性が比較的低い第二の波長の光を一つの発光手段から前記被測定対象に向けてタイムシャリング法によって照射し、
該照射によって生じる前記被測定対象を介して時分割的にくる光を一つの受光手段で順次受光し、
該受光によって生じる前記第一の波長の光に基づく第一の受光信号と前記の波長の光に基づく第二の受光信号とを差動信号形成手段に入力し、
該入力に応じて前記差動信号形成手段から出力される出力信号に基づく測定値を予め記憶手段に記憶されているデータとから前記所定の化学成分の濃度を導出する
と共に
前記差動信号に応じたフィードバック信号に基づいて前記発光手段の発光量を制御することを特徴とする濃度測定方法にある。
本発明の第三の観点は被測定対象に対しての光吸収率が異なる少なくとも第一の波長の光と第二の波長の光とを前記被測定対象にそれぞれタイムシェアリング法で照射し、
各波長の光の該照射によって前記被測定対象を光学的に介してくる前記各波長の光を共通の受光センサで順次受光し、
該受光に応じて前記受光センサから出力する前記第一の波長の光に関する信号と第二の波長の光に関する信号の差動信号を形成し、
該差動信号に基づいて前記前記被測定対象における化学成分の濃度を導出する
と共に
前記差動信号に応じたフィードバック信号に基づいて前記一の波長の光と前記第二の波長の光の少なくとも何れか一方の光の発光時の光量を制御することを特徴とする濃度測定方法にある。
本発明の第四の観点は 被測定対象に対しての光吸収率が異なる第一の光と第二の光とをそれぞれ前記被測定対象にタイムシェアリング法で照射し、
前記被測定対象へ各光を照射することで前記被測定対象を光学的に介してくる各光を共通の受光センサで受光し、
該受光に応じて前記受光センサから出力する前記第一の光に係わる信号と第二の光に係わる信号に基づいて差動信号を形成し、
該差動信号に基づいて前記前記被測定対象における所期の化学成分の濃度を導出する、
と共に
前記差動信号に応じたフィードバック信号に基づいて前記一の波長の光と前記第二の波長の光の少なくとも何れか一方の光の発光時の光量を制御することを特徴とする濃度測定方法にある。
本発明の第五の観点は、被測定対象に対しての光吸収率が異なる、少なくとも、第一の波長の光と第二の波長の光とを前記被測定対象にそれぞれタイムシェアリング法で照射し、
各波長の光の該照射によって前記被測定対象を光学的に介してくる前記各波長の光を共通の受光センサで受光し、
該受光に応じて前記受光センサから出力する前記第一の波長の光に関する信号と第二の波長の光に関する信号の差動信号を形成し、
該差動信号に基づいて前記前記被測定対象における化学成分の濃度を導出する、
と共に
前記差動信号に応じたフィードバック信号に基づいて前記一の波長の光と前記第二の波長の光の少なくとも何れか一方の光の発光時の光量を制御することを特徴とする濃度測定方法にある。
本発明の第六の観点は被測定対象に対しての光吸収率が異なる少なくとも第一の光と第二の光とをそれぞれ前記被測定対象にタイムシェアリング法で照射し、
前記被測定対象へ各光を照射することで前記被測定対象を光学的に介してくる各光を共通の受光センサで受光し、
該受光に応じて前記受光センサから出力する前記第一の光に係わる信号と第二の光に係わる信号に基づいて差動信号を形成し、
該差動信号に基づいて前記前記被測定対象における所期の化学成分の濃度を導出する、
と共に
前記差動信号に応じたフィードバック信号に基づいて前記一の波長の光と前記第二の波長の光の少なくとも何れか一方の光の発光時の光量を制御することを特徴とする濃度測定方法にある。
本発明の第七の観点は、被測定対象中の所定の化学成分の濃度を光学的に測定する濃度測定方法において、少なくとも、前記化学成分に対して吸収性がある第一の波長の光と、前記化学成分に対し吸収性がないか実質的にないかもしくは前記第一の波長の光よりも吸収性が比較的低い第二の波長の光を一つの発光手段から前記被測定対象に向けてタイムシャリング法によって照射し、該照射によって生じる前記被測定対象からの光を一つの受光手段で受光し、該受光によって生じる前記第一の波長の光に基づく第一の受光信号と前記の波長の光に基づく第二の受光信号とを差動回路に入力し、該入力に応じて前記差動回路から出力される出力信号に基づく測定値を予め記憶手段に記憶されているデータに照合して前記所定の化学成分の濃度を導出することを特徴とする濃度測定方法にある。
【0023】
本発明の第八の観点は、被測定対象に対しての光吸収率が異なる少なくとも第一の波長の光と第二の波長の光とを前記被測定対象にそれぞれタイムシェアリング法で照射し、各波長の光の該照射によって前記被測定対象を光学的に介してくる前記各波長の光を共通の受光センサで受光し、該受光に応じて前記受光センサから出力する前記第一の波長の光に関する信号と第二の波長の光に関する信号の差動信号を形成し、該差動信号に基づいて前記前記被測定対象における化学成分の濃度被測定量を導出測定することを特徴とする濃度測定方法濃度測定方法にある。
【0024】
本発明の第九の観点は、被測定対象に対しての光吸収率が異なる少なくとも第一の光と第二の光とをそれぞれ前記被測定対象にタイムシェアリング法で照射し、前記被測定対象へ各光を照射することで前記被測定対象を光学的に介してくる各光を共通の受光センサで受光し、該受光に応じて前記受光センサから出力する前記第一の光に係わる信号と第二の光に係わる信号に基づいて差動信号を形成し、該差動信号に基づいて前記前記被測定対象における所期の化学成分の濃度を導出することを特徴とする濃度測定方法にある。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡易な手段で極微量領域の濃度まで非破壊で正確且つ迅速に所定の化学成分の濃度を測定できる。
又、別には、気体、液体、固体に拘らず、被測定物中の複数の化学成分の濃度を同一の測定系・同一条件で高精度にリアルタイムで測定できる。
更には、被測定対象中の化学成分の濃度を正確・迅速に且つナノオーダの極微量濃度域までリアルタイムで測定でき、様々な態様と形態において具現化され得る万能性を備えた濃度測定方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の濃度測定方法の原理を説明するためのタイミングチャートである。本発明においては、本発明の濃度測定方法を具現化するための濃度測定装置を起動させ、該装置が置かれている空間における背景光の絶対値の信号を、出力S20とS10の差として読みだす(絶対値出力X)。
次いで、第一の波長の光(Lλ1)を発する光源1からの光を受光センサで受光して、出力S30と出力S40の差としての差分出力信号(GΔ1)を読みだす(背景光と光源1の光の和として出力される)。
次に、第二の波長の光(Lλ2)を発する光源2からの光を同じ受光センサで受光して、出力S50と出力S60の差としての差分出力信号(GΔ2)を読みだす(背景光と光源2光の和として出力される)。
絶対値出力Xを利用して、温度変化等による被測定対象の吸光度の変化、光源の光量変化などが生じても測定データを校正することが出来る。
光源1,2による受光信号を差分出力信号として出力することで、回路系のノイズを除去することが出来るので、微弱な濃度であっても高精度で検出することができる。
【0028】
図1において、「↑」は、受光センサの出力タイミングを示すものである。出力タイミング「↑」は、原理的には、受光センサの出力の立ち上がり開始時点(t1)と立下り開始時点(t2)であるが、
図1においては、出力タイミング「↑」は、立ち上がり開始時点(t1)と立下り開始時点(t2)の間のタイミングとされている。その理由は、一度の測定が終了すると次の測定のために電子回路の一部がリセトされることにある。即ち、測定時間とリセット時間が回路のタイムラグが原因で重なることもあり得るので、その影響を確実に避けるために、出力タイミング「↑」は、立ち上がり開始時点(t1)と立下り開始時点(t2)の間のタイミングとされる。
【0029】
図2には、本発明の濃度測定方法を具現化する好適な実施形態例の一つである光学的濃度測定システム100の構成例のブロック図が示される。
光学的濃度測定システム100は、光源部101、集光光学部102、受光センサ部106、差動信号形成部108、信号格納/処理部110、表示部112、制御部113、操作部114で構成されている。
図2に示す光学的濃度測定システム100は、光学的ガス濃度測定サブシステム100−1と制御・操作サブシステム100−2から構成されている。
光学的ガス濃度測定サブシステム100−1は、光学的ガス濃度測定装置100−3備えている。
光学的濃度測定サブシステム100−1は、光源部101、集光光学部102、受光センサ部106、差動信号形成部108、信号格納/処理部110、表示部112を備える。制御・操作サブシステム100−2は、制御部113、操作部114で構成されている。
所望の化学成分の濃度を測定される被測定対象104は、集光光学部102と受光センサ部106の間の所定の位置に配される。
図2に示す光源部101は、第一の波長の光(Lλ1)を発する光源101aと、第二の波長の光(Lλ2)を発する光源101bとの2つの光源で構成されているが、本発明においては、これに限定される訳ではなく、第一の波長の光(Lλ1)と第二の波長の光(Lλ2)を発する単一光源であっても良い。
上述したような2種以上の異なる波長の光を照射可能な発光部は、1種の波長の光を照射可能な発光素子を2個以上有することができる。さらに、前記発光部は2種以上の異なる波長の光を照射可能な発光素子(多波長発光素子)を少なくとも1個有することが好ましい。これにより、装置内部に設置する発光素子の数を減らせるので、装置の小型化が可能になる
【0030】
2つの光源を採用する場合は、略同一の光軸上で照射出来るように2つの光源を出来るだけ接近させて配設するのが測定値の精度を高めるので望ましい。
単一光源で2つの波長の光(Lλ1、Lλ2)を照射する場合は、単一光源を採用する場合は、光(Lλ1)と光(Lλ2)とは、被測定対象104に照射される前に波長選択光学フィルター等の手段で選択的に分離される。
単一光源で2つの波長の光(Lλ1、Lλ2)を照射する場合は、分光フィルター等の光学的波長選択フィルターを使用して、照射タイミングに合わせて該当の波長の光が照射さるように装置の設計がなされる。
【0031】
第一の波長の光(Lλ1)と第二の波長の光(Lλ2)は、単一波長の光であっても良いが、LED等光源の入手し易さやコストを考慮すれば、波長にバンド幅をもつ多波長の光を採用するのが望ましい。その様な光は、中心波長(ピーク強度の波長)が、λ1若しくはλ2であることが望ましい。
【0032】
本発明において、光(Lλ1)は、濃度測定される化学成分に対して吸収性がある波長の光である。これに対して、光(Lλ2)は、該化学成分に対し吸収性がないか実質的にないか、若しくは、該化学成分に対する吸収性が該光(Lλ1)よりも比較的低い波長の光である。
本発明においては、光(Lλ2)としては、当該化学成分に対する吸収性がないか、光(Lλ1)の吸収性との差が大きい程、測定精度が向上するので、このような光(Lλ2)を採用することが好ましい。
同一の被測定対象で複数の化学成分の濃度を測定する場合は、光(Lλ1)は、測定される化学成分の数だけ用意される。即ち、N個の化学成分である場合は、光(Lλ1)は、n個の光(Lλ1n:nは正整数)が用意される。
光(Lλ1n:nは正整数)の中の該当の1つの光は、該当の一つの化学成分のみに対して吸収性を示し、他の化学成分のいずれに対しては吸収性を示さないか実質的に示さない波長もしくは波長域の光が選択される。例えば、グルコースとヘモグロビンを同一の被測定対象で測定する場合は、グルコースに吸収性を示すがヘモグロビンには吸収性を示さない光(Lλ11数)と、グルコースには吸収性を示さないがヘモグロビンには吸収性を示す光(Lλ12)が選択される。
光(Lλ2)は、何れの化学成分に対しても吸収性を示さないか実質的に吸収性を示さない光が選択される。
光源部の光源は、この条件の光を発光するものが選択されて使用されるのは言うまでもない。
【0033】
光(Lλ1)と光(Lλ2)とは、タイムシェアリング法に従って被測定対象104に照射される。
光(Lλ1)と光(Lλ2)は、被測定対象104に照射される際には、同一光軸若しくは実質的に同一な光軸上で照射されるのが好ましい。即ち、仮に、被測定対象104中に於いて、濃度測定の対象である化学成分が空間的・時間的に不均一分布であったり、斑分布であったりする場合でも、光(Lλ1)と光(Lλ2)の被測定対象104中を透過する位置が同一若しくは実質的に同一であると同時に測定時間が極めて短時間であるため、測定誤差の影響が極めて少なく高い精度で測定できる利点がある。
光(Lλ1)若しくは光(Lλ2)からなる照射光103は、被測定対象104に照射され、その結果、透過光105が被測定対象104の正反対側から出射する。
【0034】
透過光105は、受光センサ部106にある受光センサの受光面に入射される。
受光センサ部106は、この受光に応答して電気信号107を出力する。
信号107は、光(Lλ1)に基づく信号107aと、光(Lλ2)基づく信号107bの何れかの信号である。
信号107aと信号107b とは、設定された時間差で順次或いは同時に差動信号形成部108に入力される。
設定された時間差で入力される場合は、先に入力された方の信号は、場合によっては、差動信号を形成するためのタイミングに合わせて差動信号形成部108内の所定回路に所定時間ホールドされることもある。
信号107の入力に応じて差動信号形成部108から出力される差動出力信号109は、信号格納/処理部110に転送されて出力信号111を出力すべく格納/処理が施される。
出力信号111は表示部112に転送される。出力信号111を受信した表示部112は、測定した化学成分の濃度表示を表示部112の表示画面に出力信号111応じた値として表示する。
【0035】
以上の一連の流れは、操作部114からの指令に応じて制御部113によって制御される。
受光センサ部106を構成する受光センサは、フォトダイオードの様な単一素子でも良いし、所定数の受光画素が一次元配列したラインセンサ、二次元配列したエリアセンサでも良い。
測定すべき化学成分が被測定対象体104中で不均一である場合は、測定の位置依存性による誤差が測定精度を下げる可能性があるので、ラインセンサやエリアセンサを採用するのが好ましい。特に、被測定対象体104の光軸に垂直で透過光105が出射する出射面を覆う大きさの受光面を揺するエリアセンサの採用は、測定精度を一段と高める事が出来るので好ましい。
光(Lλ1)と光(Lλ2)とは、これまで単一波長の光で説明したが、本発明においては、これに必ずしも限定されることはなく、波長にバンド幅(波長域)を持たせても良い。即ち、本発明では、所定の波長域の光束を使用することも出来る。
【0036】
次に、
図3、
図4に基づいて、
図2のシステム100で実際に濃度測定する例を説明する。
図3は、本発明の濃度測定方法の好適な実施態様例の一つを説明するためのフローチャートである。
【0037】
操作部114の測定スタート用のボタンスイッチなどが押されると、濃度測定が開始される(ステップ201)。
ステップ202において、所定の位置に被測定対象である検体104が適切に設置されているかも含めて検体104の有無が判断される。検体104が適切に設置されていることが判断されると、ステップ202で、検体104中の測定すべき化学成分の濃度を測定するのに必要且つ適切な第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)が選択される。
第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)の選択は、第一の光(Lλ1)用の光源101aと第二の光(Lλ2)用の光源101bを光学的濃度測定システム100の所定位置に設置、或いは分光器で分光することで成される。
光源の設置による場合は、検体104中の測定すべき化学成分の吸収スペクトルから第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)の選択が予め出来るので、ステップ201の前に、ステップ203を配することが出来る。
【0038】
次いで、ステップ204で、測定すべき化学成分の濃度値を測定データに基づいて導出するための検量線の取得開始が実行される。
検量線の取得には、光学的濃度測定システム100の記憶部に予め記憶されている検量線のデータを読み出すことで実行される他、
図5で説明される様に、改めて検量線を作成することに依っても実行できる。
検量線の取得が完了したら、ステップ206で示されるように検体104の測定が開始される。
測定が開始されると、検体104には、所定の間隔のタイムシェアリングで、第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)が所定の時間、照射される。
検体104を透過してきた第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)は、受光センサ部106にセットされている受光センサで受光される(ステップ207)。
受光センサが、第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)の各透過光をタイムシェアリングで受光すると、受光の度に受光量に応じた大きさの出力信号が夫々出力される。この出力信号に応じて、「−log(1-ΔT)」が算出される(ステップ208)。
【0039】
次いで、ステップ209で、「−log(1-ΔT)」が検量線の範囲か否かが判定される。
「−log(1-ΔT)」が検量線の範囲であれば、検量線データを基に検体104中の目的とする化学成分の濃度が導出される(ステップ210)。
【0040】
次いで、ステップ209で、「−log(1-ΔT)」が検量線の範囲か否かが判定される。
「−log(1-ΔT)」が検量線の範囲であれば、検量線データを基に検体104中の目的とする化学成分の濃度が導出される(ステップ210)。
【0041】
図4は、
図3の例に於ける信号出力タイミングを説明するためのタイミングチャートである。即ち、
図4は、第一の光源101aの出力OUT1、第二の光源101bの出力OUT2、受光センサの出力OUT3、差動信号の出力OUT4およびガス濃度GCの時間応答を示すタイミングチャートである。
ここで、光源の出力とは、点灯時間に放射される光量で、指向性の高い光の場合は、受光センサで受光される光の光量に実質的に相当する。
本発明においては、
図7乃至
図9に記載される様に集光光学部102によって、光源101a、101bからの光を集光し、あるいは
図10に示す様に分岐型光ファイバ801を採用することが出来るので、光源101a、101bの放射面を集光光学部102の入射面に、或は分岐型光ファイバ801の入射面に近接若しくは接触させて、光源101a,101bを配設すれば、光源101a、101bの点灯時間に放射される光量は、受光センサで受光される光の光量に近似若しくは実質的に相当させることが出来る。
ガス濃度GCは、例えば、
図4に示す、T1乃至T4のタイミングで出力信号(差動信号出力OUT4)を検出し、該検出した出力信号値と予め取得されている検量線とから導出される、目的のガスの濃度の変化として測定できる。
図4には、時間と共に段階的に増加するガス濃度GCの様子が示されている。
第一の光源の出力OUT1と第二の光源の出力OUT2が、
図4に示す様なタイムミングで相互間の所定間隔と繰り返し間隔で同一軸上に出力されると、タイミングT1以前では、測定目的のガスが存在しないので、受光センサの出力OUT3は、同じ大きさのパルスS11、パルスS21として出力される。
タイミングT1とT2の期間、タイミングT2とT3との期間、タイミングT3とT4との期間では、パルスS12、S22,S13、S23,S14、S24が出力される。パスルS12,S13,S14の大きさはパルスS11と同じ大きさであるのに対して、パスルS22,S23,S24の大きさは、測定目的のガスの吸光の程度に応じて段階的に低くなっている。
即ち、第二の光源からの光が測定目的のガスに吸収され受光センサに受光される光量がガス濃度に応じて段階的に減少するため、パスルS22,S23,S24の大きさは、測定目的のガスの濃度の程度に応じて段階的に低くなる。
【0042】
図5により、ガス濃度の測定前にあらかじめ検量線を取得する方法の一例を説明する。
図5は、検量線を求めるためのフローチャートである。
検量線を得るには、検量線取得装置を利用する。
検量線の取得が開始される(ステップST1)と、ステップST2において、光学測定セルの準備ができたか否かが判断される。
光学測定セルの準備ができたら、ステップST3に移行する。ステップST3において、所定のキャリアガスが所定単位量でセル内に導入されているかが判断される。
所定のキャリアガスが所定単位量でセル内に導入されていると判断されると、ステップST4に移行する。
このキャリアガスについては省略し、セル内が所定の真空度になっているかの判断のステップに変えても良い。このセル内が所定の真空度になっているかの判断も省略することが出来る。
いずれにしても、ステップST4に移行する前までに、セル内をクリーニングしておくことがより正確な検量線を得るのに必要である。
ステップST4では、複数の濃度の測定対象のガスを順次セルに導入し、各濃度のガスの吸光度を測定する。
測定が完了したら、ステップST5に移行する。
ステップST5では、吸光度の測定データを基に検量線を作成する。
こうして作成された検量線の一例が
図6に示される。
図6は、ガス濃度GCと「−log(1-ΔT)」との関係の示したグラフである。
検量線が作成されたら、検体の濃度測定に移ることが出来る。
【0043】
次に、
図7乃至
図10に示される本発明に係る好適な実施形態例について説明する。
図7乃至
図10において、
図2と同様のものは、
図2と同じ符番を使用して示す。
図7は、本発明の濃度測定方法を具現化する光学的濃度測定システムの好適な実施形態例の一つの主要部100aを説明するための模式的構成説明図である。
図7は、透過光による濃度測定の例である。
主要部500においては、光源部は、第一の光(Lλ1)を発する第一の光源101aと第二の光(Lλ2)を発する第二の光源101bとから構成されている。
第一の光源101aから発せられた第一の光(Lλ1)は、集光光学部102で光軸上に集光されて照射光103aとして光軸上を通って被測定対象体104に照射される。照射光103aの中、被測定対象体104中で吸収し切れなかった量の光が透過光105aとして被測定対象体104から出射される。
透過光105aは、受光センサ部106の受光面に入射される。
透過光105aが、受光センサ部106で受光されると、透過光105aの光量に応じて光電変換された電気信号107が受光センサ部106から出力される。
受光センサ部106から出力された信号107は、差動信号形成回路で構成された差動信号形成部108に入力する。
第二の光源101bから発せられた第二の光(Lλ2)も第一の光(Lλ1)と同様に照射光103bとして光軸上を通って被測定対象体104に照射され、其れに応じて透過光105bが被測定対象体104から出射する。
第二の光(Lλ2)の場合は、被測定対象体104中に於いて吸収されないか、吸収されるとしても第一の光(Lλ1)に比べ吸収性が低いので、照射光103bと透過光105bに関しては、その光量は、同じか実質同じであるか、若しくは、その光量差が照射光103aと透過光105aとの光量差より少ない。
【0044】
図8は、本発明の濃度測定方法を具現化する光学的濃度測定システムの別な好適な実施形態例の主要部を説明するための模式的構成説明図である。
図7の例の場合が透過光による測定であるのに対して、
図8の場合は、反射光による測定である以外は、
図7の例と同じであるので詳述は省略する。
【0045】
図9は、本発明の濃度測定方法を具現化する光学的濃度測定システムのもう一つ別な好適な実施形態例の主要部を説明するための模式的構成説明図である。
図7の例の場合が透過光による測定であるのに対して、
図9の場合は、散乱光による測定である以外は、
図7の例と同じであるので詳述は省略する。
【0046】
図10は、本発明の濃度測定方法を具現化する光学的濃度測定システムの更にもう一つ別な好適な実施形態例の一つの主要部を説明するための模式的構成説明図である。
図10の場合は、
図7の例の場合の集光光学部102に分岐型光ファイバ801を採用している以外は、
図7と同様であるので詳述は省略する。
【0047】
図11には、本発明において採用される差動信号形成部の好適な一例を説明するための回路図が示される。
差動信号形成部900は、(電荷)積分アンプ902、サンプル/ホールド回路903、差動アンプ904で構成されている。
青果物等の濃度測定する対象である被測定対象体104に濃度測定用の所定の波長の光が照射されて生じる透過光、反射光或いは散乱光が、受光用のフォトダイオード901で受光されると、その受光量に応じた電気信号P1がフォトダイオード901から出力される。電気信号P1は積分アンプ902に入力される。
積分アンプ902は、検体107のガス濃度の微小な変化まで測定できるように高感度化するために設けてある。
積分アンプ902の出力信号は、サンプル/ホールド回路903に入力される。
サンプル/ホールドされたアナログ信号は差動アンプ904へ入力される。
【0048】
「本発明を具現化したガス濃度の測定例」
次に、本発明を具現化した例をガス濃度の測定例で説明する。
複数の異波長光を用い、該複数の光をタイムシェアリングで照射することで濃度を測定する濃度測定方法の好適な実施様態の一つを記述する。
以下では、主に、測定に透過光を用いるガス濃度測定例の好適な実施様態の一つを説明する。
測定に透過光を用いる代わりに、反射光を用いる場合や、散乱光を用いる場合でも本発明の範疇に入ることは、断るまでもなく当該技術分野においては当然のことである。
また、以下に説明する態様例が、ガス濃度の代わりに溶液の濃度や青果物の糖度などを測定する場合にも容易に展開できることも断るまでもない。
【0049】
本発明をガス濃度測定装置として具現化するには、該測定装置を、測定目的に適合することを前提に容易に入手可能な通常の光源と受光フォトダイオード、電子回路部品等で構成する事が出来るので、以下の説明では当該分野の技術者にとって自明のことは省略し、要点を簡略に記載することにする。
検体(被測定対象)は、例えば、ガス配管を流れるガスである。
ガス配管には、測定に使用する光(測定光hλ)が入射する入射面と前記ガス配管中を透過して外部へと出射する出射面が設けてある。
該入射面、該出射面は、測定光hλに対して透過率が「1」若しくはほぼ「1」である材料で構成される。
前記ガス配管中を流すガスは単一種のガスであっても複数の混合ガス種であっても目的のガス濃度は測定できる。
以下では、検体としてのガスの種類としては、単一種の場合、例えば、トリメチルガリウム(TMGa)である場合について記述する。
検体のガスの種類としては、その他、トリメチルインジウム(TMIn)や4四塩化チタン(TiCl
4)等も挙げられる。
トリメチルガリウム(TMGa)のガス濃度測定では、例えば、第一の光源101aとしては、中心光波長が500nmの光(Lλ1)を発光するLEDが採用され、その光強度は、1.0mW/cm
2/nmとされる。
第二の光源101bとしては、中心光波長が230nmの光(Lλ2)を発光するLEDが採用され、その光強度は1.0mW/cm
2/nmとされる。
【0050】
本発明においては、第一の光源101aから放射される光(Lλ1)103aと第二の光源101bから放射される光(Lλ2)103bが、それぞれ別の時刻に(タイムシェアリング)検体104を透過し、受光センサ部106の受光センサへ入射される。受光センサとしては、例えば、浜松ホトニクス社製のフォトダイオード(S1336-18BQ)を用いることができる。この場合の受光センサの受光感度は光波長500nmにおいて0.26A/Wであり、光波長230nmにおいて、0.13A/Wである。
受光センサ部106の出力信号107は、差動信号形成回路108に入力され、それに応じて差動信号形成回路108から出力信号109が出力される。
第一の光源101aは、検体104のガスの濃度に依存して吸光度が変化する光を放射する光源が、第二の光源101bは、検体104のガスの濃度に依存して吸光度が変化しない若しくは実質的に変化しない光を放射する光源が、それぞれ採用される。
【0051】
以上のガス濃度の測定例では、透過光を測定する
図7の場合について説明しているが、当然ながら
図8に示す反射光を用いる構成の場合や、
図9に示す散乱光を用いる構成の場合にも適用できることは改めて詳述するまでもない。
また、
図7に示す構成では、第一の光源101aの光路と第二の光源101bの光路は、集光光学部102がなければ、被測定対象104において異なっているが、同一光路に出来るだけ近くなるように、第一の光源101aと第二の光源101bとをできるだけ近接しては配するのが好ましい。
或は、集光光学部102の代わりに
図10に示すように分岐型光ファイバ801を採用すれば、実質的に同一光路とすることができるので好ましい。
【0052】
図11に、差動信号形成回路の好適な例の一つの構成を説明するための構成図を示す。
図11に示す差動信号形成回路900には、検体107のガス濃度の微小な変化まで測定できるように高感度化するために(電荷)積分アンプ902が設けてある。
(電荷)積分アンプ902の出力信号は、サンプル/ホールド回路903に入力される。
サンプル/ホールドされたアナログ信号はADC1301へ入力される。
ADC1301からは第一の光源に基づく光信号と第二の光源に基づく光信号とそれらの差動信号が出力される。
【0053】
図4が、第一の光源101aの出力OUT1、第二の光源101bの出力OUT2、受光センサの出力OUT3、差動信号の出力OUT4およびガス濃度GCの時間応答を示すタイミングチャートであることは、先述した通りである。
ここで、光源の出力とは、点灯時間に放射される光量で、指向性の高い光の場合は、受光センサで受光される光の光量に実質的に相当する。
本発明においては、
図7乃至
図9に記載される様に集光光学部102によって、光源101a、101bからの光を集光し、或いは、
図10に示す様に分岐型光ファイバ801を採用することが出来るので、光源101a、101bの放射面を集光光学部102の入射面に、或は分岐型光ファイバ801の入射面に近接若しくは接触させて、光源101a,101bを配設すれば、光源101a、101bの点灯時間に放射される光量は、受光センサで受光される光の光量に近似若しくは実質的に相当させることが出来る。
【0054】
一般的に、吸光度は下記の式で与えられる。
【0056】
ここで、「I
0」は入射光の強度を、「I」は透過光の強度を、「K」はガス濃度を示す。αは係数であり、検体104中の光路長および検体104中の濃度測定対象であるガスの吸光係数などで決まる値である。
また、「ΔT」は吸光度差を示す。本実施様態では第一の光源101aに対してαが実質的に0となるとともに、第二の光源101bに対してαが2.18×10-4/ppmとなるように前記光路長を設定した。第一の光源101aから放射される光(Lλ1)の透過光の強度を「I
1」とし、第二の光源101bから放射される光(Lλ2)の透過光の強度を「I
2」とすると、I1は、第一の光源の光波長に対してガス濃度に係らず透過率差が実質的に0であることを用いると、式(1)は式(2)のように変形できる。
【0058】
ここで、「X」は差動信号の出力値で、「I
2-I
1」と等しい。
本方式では、ガス濃度によって吸収率が変化する第一の光源101aの出力OUT1と、吸収率がガス濃度に応じて変化しない第二の光源101bの出力OUT2とを用いて検体104の吸光度を高精度に計測することが出来る。
そのためにガス濃度が既知のリファレンスサンプルを用いて、その都度、検量線を作成するための測定をする必要が無い。
ガス濃度計として測定系やガスの温度などが変化したとしても安定に吸収率の変化を測定することが出来る。
ガス濃度が「0」の場合の第一の光源101aに基づく積分アンプ902における積分電荷量(1)と第二の光源101bに基づく積分アンプ902における積分電荷量(2)とが等しく、若しくは実質的に等しい様にセットアップする。
【0059】
ここで本実施様態では、6.1×10
-9Cとなるように、第一の光源101aの出力時の積分時間(1)と第二の光源101bの出力時の積分時間(2)とを調整した。
本実施様態での積分時間(1)と積分時間(2)は、それぞれ4.0msec、2.0msecとした。
この時、ガス濃度に対する測定された吸光度の値と、計測した信号に重畳するノイズの標準偏差の3倍の値との関係を
図15に示す。
又、この電荷量を用いて測定を行った場合、ノイズの主成分はフォトンショットノイズであることが確認された。
【0060】
結果から、電荷量の値が6.1×10
-9Cであれば、信号電荷量の二乗根に比例するフォトンショットノイズの影響が相対的に小さいために、99%の信頼度で吸光度差ΔTを5×10
-5まで測定することが出来た。即ち、ガス濃度は0.1ppmの精度で測定することが出来た。
更に、本発明の実施様態では、温度が変化したとしても光波長の異なる2つの光に基づく信号の差から出力を得ているため、温度によって変化する透過率の変動分をキャンセルすることが出来る。そのため、仮に、測定中に温度変動があったとしても安定した感度を高精度に得ることが出来る。
【0061】
本発明においては、本発明を具現化した濃度測定機器に、Wi-Fi, Bluetooth(登録商標),NFCなどの近距離通信用の通信モジュール、或いは衛星通信用の通信モジュ−ルを組み込むことで、ネットワーク上の情報端末装置として機能させることが出来る。例えば、病院の入院患者が、測定時間になったら、もしくは、ナースステーションからの指示で、入院ベッドで血液中の糖度を本発明に係る非侵襲タイプの濃度測定器で測定し、その測定データをナースステーションにそのまま送信することが出来る。これにより、各患者の病室にまで出向いて測定していたのに対して看護師の労働負担を軽減することが出来る。
更には、例えば、自宅などで観察療養をしている糖尿病予備軍の人や血糖値が低い人や高かい人が、車の運転中に血糖値の異常事態が発生し意識が遠いて正常運転が出来ないか難しくなったりして事故を招く事態が起きる場合があるが、本発明に係る通信機能を有する非侵襲タイプの濃度測定器を着用して運転中測定動作させておけば、血糖値の異常を検知して即座に運転している自動車にその異常検知の信号を送信して、自動車を即時に自動停止させ、或いは道の脇にある安全地帯に自動誘導して停止せることもできる。その上で、持参のインシュリンを投与して正常を回復することもできる。
又、異常検知のデータを運転者の必要な個人データと共に掛かりつけか近くの病院に自動送信し、病院からの応急指示を仰ぐこともできる。
【0062】
本発明の具現化において、差動信号形成回路の好適な例の一つを
図11に示したが、本発明はこれに限定されることはなく、
図12乃至
図14に示す各差動信号形成回路も好適な例の一つとして採用される。
図12乃至
図14において、
図11に示す符番のものと同様の機能を果たすものには、
図11に示す符番と同じ符番を付してある。
図12の場合は、差動信号出力905用の回路の加えて、差動前信号出力1001用の回路が付加されている他は、
図11の場合と同じである。
【0063】
差動前信号出力1001用の回路を付加することで、
図11の場合に比べて、温度変化等による吸光度の絶対値の変動や、光源の光出力に時間的な変動が発生したとしても、それらの変動分を測定して較正することが出来る点で利点がある。
図13の場合は、
図12の場合に比べて、サンプル/ホールド回路(903a,903b)⇒差動アンプ(904a、904b)と信号が伝送される系統が2系統と、ADC1301が更に設けられている。
この構成により、
図12に比べて、積分アンプのオフセットを除去できる点で利点がある。
【0064】
図14は、
図13場合の例をより具体的に回路設計した例である。
積分アンプ902と同様の積分(蓄積)アンプ部1401と、1/10倍アンプ部1402が設けられ、各差動アンプ部(904a、904b)には、差動出力を有するためにそれぞれ2つの計装アンプが設けてある。
この様な構成とすることに依って、差動アンプのオフセットを除去できる点で利点がある。
【0065】
次に、本発明に係る濃度測定機能を備えた電子装置の好適な例の一実施形態を説明する。
図16,
図17は、本発明を携帯形端末装置に適用した場合の一実施形態を示す概略構成図である。
図16は概略外観図、
図17は、内分構成のブロック図である。
図16,
図17に示される携帯端末装置1701は、GPS(Global Positioning System)測位部1703、演算処理部1704、記憶装置1705、表示部1706、とで構成されている。
GPS測位を要しない装置の場合は、GPS測位部1703は省略される。
又、GPS測位部1703を備えて、加速度センサ1708、角速度センサ1709を省略することも出来る。
携帯端末装置1701の例としては、ナビゲーション機能を有する携帯電話機器、PDA(Personal Digital Assistants)、タブレット、モバイルPC等のモバイル電子機器や腕時計、電子機器機能を備えたスカウター・ネックレス・指輪・腕輪等の着用品が挙げられる。
携帯端末装置1701の例としては、更に他に、登山用の携帯気圧計・高度計、ストップウオッチなど挙げられる。
携帯端末装置1701は、送受信基地、送受信衛星、自動車に搭載されているNAVIシステム、ハンディNAVI機器、構内ネットワークシステムにつながっている送受信器、他の携帯端末装置などの送受信機能具備装置と相互通信することが出来る。
以後の説明では、送受信機能具備装置の例として送受信衛星1702の例で説明する。
【0066】
GPS測位部1703は,送受信衛星1702から送信される位置情報信号を受信して現在位置を測位する第1の現在位置演算部として機能する。
演算処理部1704は、歩数を検出する上下加速度センサ1708及び方位を検出する角速度センサ1709の検出信号が入力されて、これらに基づいて現在位置を自律測位すると共に、ナビゲーション処理を実行する。
演算処理部1704は、マイクロコンピュータ、CPU等で構成される。
記憶装置1705は、演算処理部1704で実行する処理プログラムを格納すると共に、演算処理で必要とする記憶テーブルを記憶するROM1705a、演算処理過程で必要とする演算結果等を記憶するRAM1705b及びナビゲーション処理終了時の現在位置情報を記憶する不揮発性メモリ1705cで構成される。
表示部1706は、演算処理部1704から出力されるナビゲーション画像情報を表示するもので、液晶表示器、有機EL表示器等で構成される。
時計部1707は、GPS測位部1703の作動時にこのGPS測位部1703から出力される年/月/日/時刻を表す現在時刻情報で補正される年/月/日/時刻を表示する。
演算処理部1704には、GPS測位部1703から出力される現在位置情報と、時計部1707から出力される年/月/日/時刻を表す現在時刻情報と、携帯端末装置701を保持するユーザーの腰位置に装着した加速度センサ1708から出力される加速度情報と、携帯端末装置1701に装着されたジャイロ等の角速度センサ1709から出力されるユーザーの歩行方向の方位に応じた角速度情報と、本発明に係る濃度測定部1701からの濃度測定情報と、が入力される。
濃度測定部1701は、
図7乃至
図10に示される光学的濃度測定システム或は該システムと同様の機能を備えた光学的濃度測定機器で構成され、携帯端末装置1701本体に着脱可能に装備されていても好いし、本体と一体的に構成されていても好い。
濃度測定部1701が本体に着脱可能に装備されている場合は、測定の際に、濃度測定部1701を本体から外して例えば身体に接触させて、例えば血液の糖度を測定することが出来る。
濃度測定部1701は本体から外されていても、濃度測定部1701と本体との間で通信出来る様に、濃度測定部1701と本体の両者に、Wi-Fi,Bluetooth(登録商標),NFCなどの近距離通信用の通信モジュールが設けられている。
携帯端末装置1701によれば、濃度測定データ、位置情報データ、記憶装置1705に記憶されている個人特定データ、を送信先に送信できる。例えば、自動車を運転中に血液中の糖度値に異常を来した場合は、異常を示す信号を車に伝送して車を自動停止させると同時にホームドクターや掛かりつけの医者がいる病院に、濃度測定データ、位置情報データ、及び個人特定データを伝送して、送信先の医者から適切な処置の指示を仰ぐことが出来、場合によっては、救急車の速やかな配車も可能である。
【0067】
演算処理部1704には、外部の無線通信機器と無線通信する通信部1711が接続されている。
ROM1705aには、地域別位置情報記憶テーブルが格納されている。
その他、ROM1705aには、自律測位演算を行う自律測位演算用プログラムと、GPS測位部1703で演算した現在位置情報及び自律測位用プログラムによる自律測位演算処理で演算した現在位置情報の何れかを選択する演算部選択処理プログラム、とが格納されている。
地域別位置情報記憶テーブルには、全国の都道府県名と、各都道府県の庁所在地名と、庁所在地の緯度(N)及び経度(E)とが記載されている。
演算処理部1704は、自律測位演算を行う自律測位演算用プログラムに従って自律測位演算処理を実行する。
【0068】
この自律測位演算処理は、演算部選択処理によって自律演算処理が選択されたときに起動され、初期状態で、前回のGPS測位部1703で測位した現在位置を初期位置として設定してから、所定のメインプログラムに対する所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行される。
即ち、先ず、角速度センサ9で検出した角速度θvを読込み、次いで、角速度θvを積分して方位θを算出してから次のステップに移行する。
移行したステップでは、加速度センサ1708で検出した上下加速度Gを読込んで、上下加速度Gの変化パターンから歩数Pを算出し、算出した歩数Pに予め設定した歩幅Wを乗算して移動距離Lを算出し、算出した方位θ及び移動距離Lに基づいて現在位置情報を更新し、更新した現在位置情報を地図情報に重ねて表示部1706に表示してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
更に、演算処理部1704は、演算部選択処理プログラムに従ってGPS測位部1703で測位した現在位置情報及び自律測位演算処理で測位した現在位置情報の何れかを選択する演算部選択処理を実行する。
この演算部選択処理では、携帯端末装置1701に電源が投入されてナビゲーション処理が選択されたときに実行開始され、を選択する演算部選択処理を実行する。
携帯端末装置1701の例としては、ナビゲーション機能を有する携帯電話機器、PDAPersonal Digital Assistants)、タブレット、モバイルPC等のモバイル電子機器や腕時計、モバイル電子機器や腕時計、電子機器機能を備えたスカウター・ネックレス・指輪・腕輪・等の着用品が挙げられる。
【0069】
これまでの例では、差動信号の形成は、差動回路、差動増幅回路等の電気回路(ハードウエア)を介して形成する場合を例示してきたが、本発明においては、これらに限定されるのではなく、デジタル演算処理のソフトウエアを採用して形成しても良い。
好適な実施態様の一例について
図18を用いて説明する。
図18に示す実施態様は、差動信号形成部1800、受光センサ部1801を備えている。
差動信号形成部1800は、積分回路部1802、アナログ−デジタル変換(A/D変換)部(ADC)1803、差動信号形成要素部1804を備えている。
受光センサ部1801には、測定用の受光センサとしてフォトダイオード1805が設けてある。積分回路部1802には、オペアンプ108、コンデンサC1、スイッチSW1が設けられてある。
図11の場合の差動信号形成部900の例は、アナログ信号を用いて差動信号905を形成するものであるが、
図18の例では、差動信号1809は、積分回路部1802から出力される信号807をアナログ−デジタル変換(A/D変換)後にデジタル演算処理を施して形成される。
フォトダイオード1805の出力端子は、オペアンプ1809の反転入力ピンと電気的に接続されている。
オペアンプ1806の非反転ピンは、接地されている。
積分回路部1802とADC1803との間は、スイッチSW2が必要に応じて設けられえ信号伝達路が形成されている。該信号伝達経路は、積分回路部1802とADC1803との間を電気的に接続することで形成することができる。
波長または波長帯域が異なる2つの光(第一の光と第二の光)が、被測定対象(検体)にタイムシェアリングによって順次照射されると、その照射に応じて被測定対象を介して来る第一の光と第二の光がタイムシェアリングによって、順次、フォトダイオード1805で受光される。
フォトダイオード1805は受光すると光電荷を発生し、該光電荷は、コンデンサC1に蓄積される。積分回路部1802からは、この蓄積電荷量に応じた大きさの電圧の信号1807が、スイッチSW2がONの場合に出力される。信号1807は、アナログ・デジタル変換手段(ADC)1803に入力されてデジタル信号化されて、信号1808としてADC1803から出力される。デジタル化された信号1808は、差動信号形成要素部1804に入力される。
第一の光に対応する信号1808aと第二の光に対応する信号1808bは、先に入力された方の信号は、後で入力される信号が少なくとも入力されるまで差動信号形成要素部1804内部に一時的に保存される。
測定目的とする第一の光と第二の光のそれぞれに対応する信号1808a、1808bが、差動信号形成要素部1804に順次入力されると、これらの信号1808a、1808bを基に差動信号形成要素部1804において差動信号形成処理が実施されて差動信号1809が差動信号形成要素部1804から出力される。
【0070】
ところで、
図7、8,9、10、の例の場合の様に、異なる波長の光を出射する光源として複数の光源を使用する場合は、光源毎に光量が独立的に時間変化することがある。
この光源毎に光量が時間変化することは、適切な光源を選択すればその時間変化がそれ程ではないので、濃度の測定への影響は一般にそれ程ではない。
しかし、光源の選択に手間暇がかかり製品のコスト上昇を招く。
又、ガス濃度の測定の場合などでは、測定光路中に配されたガス流路の受光窓内壁面、出光窓内壁面に堆積物が堆積したり或はそれぞれの内壁面が汚染されたりして透過光量に時間変化があると、同じガス濃度のガスをガス流路中に導入しても差分出力に時間変化が生じて仕舞い、正確な濃度測定が適わなくなる場合が生じる。
この様な懸念を払拭し、仮令、複数の光源の各光量が時間変動しても濃度測定へのその影響を排除し得る方法を以下に述べる。
【0071】
図19にその好適な実施態様の一例を示す。
図19の実施態様は、
図10の実施態様と類似しているが、マイコン1901を備えている点で、異なる。
従って、
図10と同じものは
図10と同じ符号を付して説明し、
図10と重複説明は省略することもある。
ガス濃度測定システム1900においては、差動信号形成部108から出力される信号109は、音声出力手段、表示手段などで構成される報知部1902に送信され、該報知部1902によって該信号109に基づいた情報が音声、表示などで外部に報知される。
差動信号形成部108と光源駆動部1903はマイコン1901によって制御される。
マイコン1901は、差動信号形成部108で形成される差動信号に応じて光源駆動部1903が光源1011a、1011bの発光量が適正になる様に光源駆動部1903を制御する。
この制御は、差動信号が形成される毎に行われ、光源部101には、光源駆動部1903より出力されるフィードバック(FB)信号1904が入力される。
このFB信号1904に応じて光源101a、101bの発光量が制御される。
この様にして光源101a、101bの発光量の時間変化が起きても瞬時に適正光量になる様に制御される。
又、測定セルを透過する光の透過量が不測事態(セルの受光窓、出光窓の汚染など)で変化しても、濃度測定を適正に行うことが出来る。
【0072】
図20乃至
図23を用いて、別の実施態様を示す。
図20の実施態様は、
図12の実施態様と類似しているが、ADC2001及びマイコン2002を備えている点で、異なる。
従って、
図12と同じものは
図12と同じ符号を付して説明し、
図12と重複説明は省略することもある。
濃度測定システム2000においては、差動アンプ904から出力する差動出力905は、スイッチSW5をオンすることで、ADC(Analog-Digital Convertor)2001に入力される。
ADC2001に入力された差動出力905は、ADC2001内でA/D変換される。その結果、ADC2001から出力2009が出力され、報知部20072に送信され、報知部2007で、出力2009に基づいた情報(例えば、ガス濃度値など)が報知される。
フォトダイオード901は、例えば、
図19に示す濃度想定セル部1900aを介してくる測定光を受光する。
マイコン2002は、差動出力905若しくは出力2009を基に、発光量調整、受光量の積分時間調整、スイッチSW1〜SW5のタイミング調整のために指令信号を発する。
光源の発光量調整をする場合は、マイコン2005は光源駆動006に指令信号を送信する。この指令信号を受けた光源駆動部2006は、該指令信号に応じて所定の発光量になる様に光源部(不図示)を制御する。
又、マイコン2005からの指令信号は、積分アンプ部2002に送信され、スイッチSW1のON・OFFタイミングを制御して、コンデンサC1の蓄積時間を調整することもある(受光量の積分時間調整)。
更には、マイコン2005からの指令信号を差動信号形成部2001に送信し、スイッチSW2〜SW5のON/OFFのタイミングを調整することで、濃度測定精度の最適化を図ることも出来る。
勿論、この際、マイコン2005からの指令信号を積分アンプ部2002に同時に送信してスイッチSW1のON・OFFタイミングを制御して、コンデンサC1の蓄積時間を調整すれば、濃度測定システム2000の全体最適化を図ることが出来、測定精度をより高められる。
【0073】
次に、
図20の光学的濃度測定シクテム2000で、濃度測定する手順の概略を説明する。
説明には理解し易くするために、便宜上、ガスの濃度測定を例にして説明する。
使用する光は、被濃度測定ガスに対して、吸光度に差のある2つの光を使用するが、一方は、被濃度測定対象ガスに吸収されない光で説明する。
【0074】
(1)光源の光量の調整
(1−1)所定のガスの濃度を測定するためのガス濃度測定セルに、使用する光の吸光が起こらないガス、例えばArやN2を導入する。
(1−2)タイムシェアリング法により、光波長λ1とλ2の光源の光量に基づく差分出力V0=Vp(λ2)-Vp(λ1)
を測定する。
ここでは、光源として光波長の異なるLEDを用いる。積分アンプ902の出力Vpは、Vp=(Ipd×tint)/C1の式で表らされる。ここで、IpdはPD電流を、tinitは積分アンプの積分時間を、C1は積分アンプのフィードバックがかかる容量を示す。
(1−3)異なる波長の光の差分出力が所定の値以下になるように、発光量若しくは光量積分量を調整する(これらを調光という)。
図20では、例えば、マイコン2005によりの指令信号を光源駆動部2006へ送信することで光源の発光量を所定の値に調整する。
ここで、所定の値とは、差動信号形成部2001の回路条件で決まる差分出力の最大範囲から、検体ガス(被濃度測定対象ガス)による最大出力差分の想定値を引いた値である
マイコン2005を用いて、差分出力905に応じて光源駆動部2006へフィードバック(FB)信号を送信することでフォトダイオード(PD)901を駆動する電圧(PD駆動電圧)を調整する。
或いは、差分出力905に応じて積分アンプ部2002へFB信号を送ることで積分アンプ902の積分時間、tint1およびtinit2を調整する。
又は、PD駆動電圧と積分アンプ902の積分時間の両方の調整を行っても良い。
(1−4)調光後の差動出力値V0をRAN(DRAM,ARAM)、ROMなどの半導体メモリやHDDなどの記憶手段に記憶させる。記憶させた差動出力値V0は、検体ガスの濃度を計測する際に必要時に読み出して濃度を演算するのに利用される。
(1−5)光量の調整は濃度計測の初期に実行されるが、その後の計測ごとに或いは間欠的に実行してもよい。
【0075】
(2)検体ガスの濃度計測例
(2−1)ガス濃度測定セルに検体ガスを導入する。
(2−2)本発明のタイムシェアリング濃度測定法により、差動出力V(t)を得る。
(2−3)V(t)からV0を引き算して検体ガスの濃度に応じた差分出力変化分Vc(t)を得る。
Vc(t)=V(t)-V0
(2−4)Vc(t)から吸光度を得る。
ガス濃度の測定手順の詳細フローが
図21に示される。
【0076】
次に、
図21乃至
図24に基づいて、
図20のシステム2000で実際に濃度測定する例を説明する。濃度測定セル部としては説明の便宜上
図19に示す濃度測定セル部1900aを用いる。光源部としては、説明の便宜上
図19に示す光源部101を用いる。
図21は、本発明の濃度測定方法の好適な実施態様例の一つを説明するためのフローチャートである。
図21は、
図3のフローチャートと類似しているので、
図3と同様の意味のステップの符番は、
図3の符番を使用して説明する。
【0077】
操作部114と同様の操作部の測定スタート用のボタンスイッチなどが押されると、濃度測定が開始される(ステップ201)。
ステップ202において、所定の位置に被測定対象(検体/濃度測定セル)104が適切に設置されているかも含めて検体104の有無が判断される。検体104が適切に設置されていることが判断されると、ステップ202で、検体104中の測定すべき化学成分の濃度を測定するのに必要且つ適切な第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)が選択される。
第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)の選択は、第一の光(Lλ1)用の光源101aと第二の光(Lλ2)用の光源101bを光学的濃度測定システム100の所定位置に設置、或いは分光器で分光することで成される。
光源の設置による場合は、検体104中の測定すべき化学成分の吸収スペクトルから第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)の選択が予め出来るので、ステップ201の前に、ステップ203を配することが出来る。
【0078】
次いで、ステップ204で、測定すべき化学成分の濃度値を測定データに基づいて導出するための検量線の取得開始が実行される。
検量線の取得には、光学的濃度測定システム100の記憶部に予め記憶されている検量線のデータを読み出すことで実行される他、
図5で説明される様に、改めて検量線を作成することに依っても実行できる。
検量線の取得が完了したら、ステップ206で示されるように検体104の測定が開始される。
測定が開始されると、検体104中にAr(アルゴン)等の非吸収性ガスの導入が開始される(ステップ2100)。その後、前述した様に光量の調整が開始される(ステップ2101)。光量の調整が完了したことが確認(ステップ2102)されてから次のステップ2103に移る。
光量の調整が完了したことが確認されると化学濃度を測定する対象のガス成分(被濃度測定ガス)を含む検体ガスを検体104中に導入することを開始する(ステップ2103)。
検体ガスが検体104中を少なくとも満した段階で、検体104には、所定の間隔のタイムシェアリングで、第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)が所定の時間、照射される(ステップ207の一部)。
検体104を透過してきた第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)は、
図1に示す受光センサ部106と同様の受光センサ部内にセットされている受光センサ(PD901)で受光される(ステップ207の一部)。
次いで、受光センサ(PD901)の出力が、測定範囲内かどうかが確認される(ステップ2104)。受光センサ(PD901)の出力が測定範囲内であることが確認されると、ステップ208に移行する。
受光センサ(PD901)の出力が測定範囲内でない場合(「NO」の場合)は、ステップ2100に戻って、ステップ2100以下のプロセスが実行される。
受光センサ(PD901)が、第一の光(Lλ1)と第二の光(Lλ2)の各透過光をタイムシェアリングで受光すると、受光の度に受光量に応じた大きさの出力信号が夫々出力される。この出力信号に応じて、「−log(1-ΔT)」が算出される(ステップ208)。
【0079】
次いで、ステップ209で、「−log(1-ΔT)」が検量線の範囲か否かが判定される。
「−log(1-ΔT)」が検量線の範囲であれば、検量線データを基に検体104中の目的とする化学成分の濃度が導出される(ステップ210)。
図22は、
図21に記載したフローチャートで示すガス濃度計測工程と光量調整、ガス導入のタイミングの一例を示すものである。
図23は、
図21記したフローチャートにおける光源の発光のON/OFF、積分アンプの出力Vpのタイミングチャートである。
図23に記載の記号等は、以下のとおりの意味である。
(a)ガス:非吸収ガス(Ar)、 光波長:λ2
(b)ガス:非吸収ガス(Ar)、 光波長:λ1
(c)ガス:検体ガス、 光波長:λ2
(d)ガス:検体ガス、 光波長:λ1
(e)ガス:検体ガス、 光波長:λ2
(f)ガス:検体ガス、 光波長:λ1
積分アンプ出力: Vp =(Ipd×tint)/C1
Ipd:PD電流、
tint:積分時間、
C1:積分アンプ部2002内の容量で、蓄積時間調整のフィードバックがかけられる。
本発明でいう光源の出力とは、点灯時間に放射される光量で、指向性の高い光の場合は、受光センサで受光される光の光量に実質的に相当する。
【0080】
以上、本発明の好適な実施態様の一つとして
図20乃至
図23を用いて説明したが、
図1乃至
図18で説明した内容の中の多くは、
図20乃至
図23を用いて説明した例においても適用できることは断わるまでもないことが理解される。
例えば、検量線を得るには、検量線取得装置を利用し、
図5に示すフローチャートに従って行うことが出来る。
図19乃至
図23を用いて説明した本発明の実施態様では、以下の効果が期待される。
(1)初期の差動出力がゼロでなくても、高精度にガス濃度が計測できる。
(2)差分出力をリアルタイムにモニターし、フィードバック制御を行うことで、 経時的にLED(光源)の特性や、光路の透過率が変化したとしても、高精度にガス濃度が計測できる。
以上の説明においては、被測定対象に照射される測定用の波長の異なる光は、2種で説明してきたが、本発明においては、これに限定されることはなく、3種以上でもよい。この点は、当業者ならば容易に理解される。
【0081】
以上説明した通り、本発明の濃度測定方法は、様々な態様と形態において具現化されるもので、万能性を備える。