特許第6249461号(P6249461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249461
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】内視鏡ホルダー
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20171211BHJP
   A61B 1/31 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   A61B1/00 654
   A61B1/31
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-251858(P2016-251858)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2017-185202(P2017-185202A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年9月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-69938(P2016-69938)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成27年度経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業(手術ロボット開発における位置決め技術の高度化(インテリジェントホルダーの開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】593203228
【氏名又は名称】株式会社和幸製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(73)【特許権者】
【識別番号】511188495
【氏名又は名称】さいたま商工会議所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢作 直久
(72)【発明者】
【氏名】和田 則仁
(72)【発明者】
【氏名】小川 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 暁
(72)【発明者】
【氏名】井上 譲
(72)【発明者】
【氏名】依田 満
【審査官】 荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−113697(JP,A)
【文献】 特開2008−154758(JP,A)
【文献】 特開2000−157485(JP,A)
【文献】 特開2001−149302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00− 1/32
A61B 90/50−90/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入された内視鏡を所定の挿入位置で固定して保持する内視鏡ホルダーであって、
内視鏡が挿通される挿通孔を備える中空円筒状のホルダー本体と、
該挿通孔の長さ方向に延在する板状体からなり、該挿通孔に挿通された該内視鏡に当接されて該内視鏡を挟持する第1及び第2の把持部材と、
該第1及び第2の把持部材の間に配設され該第1及び第2の把持部材を互いに離間する方向に付勢する第1の弾性部材と、
該第1の弾性部材の付勢力に抗して該第1の把持部材を該第2の把持部材方向に押圧する押圧部材と、
該押圧部材による押圧状態を保持又は解除するスイッチング機構と、
該第1及び第2の把持部材の該内視鏡に当接する面に該挿通孔の長さ方向に沿って回転自在に設けられたローラーと、
該第2の把持部材と該挿通孔の内壁との間に配設され該第2の把持部材を該挿通孔の長さ方向に対して揺動自在に支持する第2の弾性部材とを備えることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡ホルダーにおいて、該第1の把持部材と該押圧部材との間に配設され該第1の把持部材を該挿通孔の長さ方向に対して揺動自在に支持する第3の弾性部材を備えることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項3】
請求項1又は2記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記第2の弾性部材は前記挿通孔の長さ方向に沿って少なくとも2ヶ所に配設されることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記挿通孔の内壁面に前記第1及び第2の把持部材が相互に近接することを規制する規制部材を備えることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記挿通孔の中心軸を挟んで該挿通孔内に少なくとも1対立設された柱状部材を備え、前記第1及び第2の把持部材は該柱状部材が挿通される孔部を備え、該孔部は該柱状部材に対し少なくとも該挿通孔の長さ方向に間隙を備えることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記ホルダー本体の先端の外周面に設けられ該ホルダー本体をマウスピースに着脱自在に固定する固定部材を備えることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記ホルダー本体を任意の位置及び姿勢で支持するアームを備え、該ホルダー本体は該アームの先端部に一体的に固定され、又は該先端部に着脱自在に取り付けられることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項8】
請求項7記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記アームの基端部をベッドのフレーム又はレール部若しくは他の固定用部材に着脱自在に固定するアーム固定手段を有することを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記内視鏡は大腸内視鏡であることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記挿通孔内に挿通される内視鏡と該挿通孔の内壁との間を密閉する脱気防止弁を有することを特徴する内視鏡ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体内に挿入された内視鏡を所定の挿入位置で固定して保持する内視鏡ホルダーとして、操作部の先端に開閉自在に設けられた1対の半円筒状のクリップと、該クリップの内面に長さ方向に延在する回転自在の複数のローラーとを備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
前記内視鏡は、体内に挿入されたときに所定の挿入位置で体内を観察し、又は所要の処置を行うことがあり、この場合には該挿入位置に固定されることが望まれる。そこで、前記従来の内視鏡ホルダーによれば、体内に挿入された内視鏡を前記1対の半円筒状のクリップで挟持して把持することにより、所定の挿入位置で固定して保持することができる。
【0004】
また、前記内視鏡は、前記挿入位置に固定された状態でその周囲を観察し、又は所要の処置を行うために回転することが望まれることがある。このとき、前記従来の内視鏡ホルダーによれば、前記クリップの内面に回転自在の複数のローラーを備えているので、前記挿入位置に固定された状態の前記内視鏡を該ローラーにより回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−198933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、前記内視鏡は、前記挿入位置に固定された状態で、先端部を腸壁や胃壁等に近接させるため、軸方向に対して揺動することが望まれる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、体内に挿入された内視鏡を所定の挿入位置で回転自在に固定して保持することができ、しかも該挿入位置に固定された状態の該内視鏡を揺動させることができる内視鏡ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の内視鏡ホルダーは、体内に挿入された内視鏡を所定の挿入位置で固定して保持する内視鏡ホルダーであって、内視鏡が挿通される挿通孔を備える中空円筒状のホルダー本体と、該挿通孔の長さ方向に延在する板状体からなり、該挿通孔に挿通された該内視鏡に当接されて該内視鏡を挟持する第1及び第2の把持部材と、該第1及び第2の把持部材の間に配設され該第1及び第2の把持部材を互いに離間する方向に付勢する第1の弾性部材と、該第1の弾性部材の付勢力に抗して該第1の把持部材を該第2の把持部材方向に押圧する押圧部材と、該押圧部材による押圧状態を保持又は解除するスイッチング機構と、該第1及び第2の把持部材の該内視鏡に当接する面に該挿通孔の長さ方向に沿って回転自在に設けられたローラーと、該第2の把持部材と該挿通孔の内壁との間に配設され該第2の把持部材を該挿通孔の長さ方向に対して揺動自在に支持する第2の弾性部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の内視鏡ホルダーは、中空円筒状のホルダー本体の挿通孔内に、該挿通孔の長さ方向に延在する板状体からなる第1及び第2の把持部材とを備えており、該第1及び第2の把持部材の間には、該第1及び第2の把持部材を互いに離間する方向に付勢する第1の弾性部材が配設されている。そこで、前記第1の把持部材は、押圧部材により前記第1の弾性部材の付勢力に抗して前記第2の把持部材方向に押圧されることにより、前記内視鏡を該第2の把持部材との間に挟持する。前記押圧部材による押圧状態はスイッチング機構により保持され、この結果、本発明の内視鏡ホルダーは、前記内視鏡を前記第1及び第2の把持部材の間に保持することができ、体内に挿入された該内視鏡を所定の挿入位置で固定することができる。
【0010】
このとき、前記第1及び第2の把持部材は、前記内視鏡に当接する面に前記挿通孔の長さ方向に沿ってローラーが設けられており、該ローラーは回転自在とされている。そこで、前記第1及び第2の把持部材の間に挟持された前記内視鏡は、前記ローラーにより、体内の所定の挿入位置に固定されたまま回転することができる。
【0011】
また、このとき、前記第2の把持部材は前記挿通孔の内壁との間に配設された第2の弾性部材により、前記挿通孔の長さ方向に対して揺動自在に保持されている。したがって、前記第1及び第2の把持部材の間に挟持された前記内視鏡は、体内の所定の挿入位置に固定されたまま、前記挿通孔の長さ方向、換言すれば該内視鏡の軸方向に対して前記第1及び第2の把持部材とともに揺動することができる。
【0012】
また、前記第1の把持部材は、前記スイッチング機構により前記押圧部材による押圧状態が解除されると、前記第1の弾性部材の付勢力により原状に復帰することができる。
【0013】
本発明の内視鏡ホルダーにおいて、前記第1の把持部材と前記押圧部材との間に配設され前記第1の把持部材を該挿通孔の長さ方向に対して揺動自在に支持する第3の弾性部材を備えてもよい。
【0014】
これによれば、前記第1の把持部材も、前記押圧部材との間に配設された第3の弾性部材により、前記挿通孔の長さ方向に対して揺動自在に保持されているので、前記第1及び第2の把持部材の間に挟持された前記内視鏡を、より容易に、前記挿通孔の長さ方向に対して前記第1及び第2の把持部材とともに揺動することができる。
【0015】
本発明の内視鏡ホルダーにおいて、前記第2の弾性部材は前記挿通孔の長さ方向に沿って少なくとも2ヶ所に配設されることが好ましい。前記第2の弾性部材が前記挿通孔の長さ方向に沿って少なくとも2ヶ所に配設されていることにより、前記第2の把持部材の揺動を安定に行うことができる。
【0016】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記挿通孔の内壁面に前記第1及び第2の把持部材が相互に近接することを規制する規制部材を備えることが好ましい。本発明の内視鏡ホルダーは、前記挿通孔の内壁面に前記規制部材を備えることにより、前記内視鏡が前記第1及び第2の把持部材の間に過度に強固に挟持されることを防止して、該内視鏡の損傷を防止することができる。
【0017】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記挿通孔の中心軸を挟んで該挿通孔内に少なくとも1対立設された柱状部材を備え、前記第1及び第2の把持部材は該柱状部材が挿通される孔部を備え、該孔部は該柱状部材に対し少なくとも該挿通孔の長さ方向に間隙を備えることが好ましい。
【0018】
前記第1及び第2の把持部材は前記孔部を備え、該孔部に前記柱状部材が挿通されているので、前記押圧部材により押圧され、或いは押圧が解除されたときには、該柱状部材に沿って移動することができる。
【0019】
一方、前記第1及び第2の把持部材が前記のように揺動する際には、前記柱状部材との干渉により該揺動が妨げられることが懸念される。しかし、本発明の内視鏡ホルダーでは、前記孔部は前記柱状部材に対し少なくとも前記挿通孔の長さ方向に間隙を備えているので、前記第1及び第2の把持部材が揺動したときにも、該柱状部材が該第1及び第2の把持部材に干渉することを避けることができる。
【0020】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記ホルダー本体の先端の外周面に設けられ該ホルダー本体をマウスピースに着脱自在に固定する固定部材を備えることが好ましい。本発明の内視鏡ホルダーは、前記固定部材により前記マウスピースに固定されることにより、該マウスピースを介して体内に挿入されている前記内視鏡を保持することができる。
【0021】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記ホルダー本体を任意の位置及び姿勢で支持するアームを備え、該ホルダー本体は該アームの先端部に一体的に固定され、又は該先端部に着脱自在に取り付けられてもよい。これによれば、内視鏡ホルダーをアームで任意の位置及び姿勢で支持することにより、種々の状況に応じた適切な位置及び姿勢で内視鏡を保持することができる。
【0022】
この場合、本発明の内視鏡ホルダーは、前記アームの基端部をベッドのフレーム又はレール部若しくは他の固定用部材に着脱自在に固定するアーム固定手段を有してもよい。これにより、ベッドなどにアームを固定し、アームでホルダー本体をベッド上の空間の任意の位置において任意の姿勢で保持することができる。これにより、内視鏡を、ベッド上で手技が施される患者の様々な状況に応じた適切な位置及び姿勢で保持することができる。
【0023】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、これによって保持される内視鏡が大腸内視鏡であってもよい。これによれば、大腸内視鏡を上記のように適切に保持ながら、ベッド上の患者に対して、大腸内視鏡による検査などを行うことができる。
【0024】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記挿通孔内に挿通される内視鏡と該挿通孔の内壁との間を密閉する脱気防止弁を有してもよい。これによれば、内視鏡が挿入される体内からの脱気を防止して、常に体内における内視鏡の視野を良好な状況に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の内視鏡ホルダーの構成を示す斜視図。
図2】Aは内視鏡ホルダーをマウスピースに固定する前の状態を示す側面図、Bは内視鏡ホルダーをマウスピースに固定した後の状態を示す側面図。
図3図2のIII−III線断面図。
図4図3のIV−IV線断面図。
図5図3に示す把持部材の平面図。
図6図3に示す把持部材が揺動したときの状態を示す模式的断面図。
図7】Aは図1の内視鏡ホルダーを、アームを用いて大腸内視鏡に使用する様子を示す斜視図、BはAのY方向に見た矢視図。
図8図1の内視鏡ホルダーのホルダー本体が一体的に固定されたアームの先端部を示す図。
図9】Aは図1の内視鏡ホルダーのホルダー本体が着脱自在に取り付けられたアームの先端部を示す正面図、Bはその下面図。
図10図7のアームの基端部をレール付きベッドにクランプで固定する方法を示す図。
図11図10のアームの基端部が固定されたクランプの正面図。
図12図7のアームの基端部をベッドフレームにクランプで固定する方法を示す図。
図13図12のアームの基端部が固定されたC型クランプの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の内視鏡ホルダー1は、内視鏡Eが挿通される挿通孔2を備える中空円筒状のホルダー本体3からなる。ホルダー本体3は、大径部3aと、大径部3aの先端から突出する小径部3bとからなり、挿通孔2は大径部3a及び小径部3bを貫通している。また、小径部3bの先端には1対の突起からなる固定部材4を備えている。
【0028】
内視鏡Eは、例えば図2Aに示すように、マウスピースPとマウスピースPに接続されたオーバーチューブTを介して体内の所定位置に挿入される。このとき、内視鏡ホルダー1は、挿通孔2に内視鏡Eが挿通された状態となっており、矢示するようにマウスピースP方向に移動させる。
【0029】
このようにすると、図2Bに示すように、ホルダー本体3の小径部3bの先端に設けられた1対の突起からなる固定部材4がマウスピースPに設けられた凹部5に嵌合され、内視鏡ホルダー1をマウスピースPに着脱自在に固定することができる。
【0030】
本実施形態の内視鏡ホルダー1は、図3及び図4に示すように、挿通孔2の内部に中心軸を挟んで立設された1対の柱状部材6a,6bと、挿通孔2の長さ方向に延在する板状体からなる第1及び第2の把持部材7a,7bとを備えている。第1及び第2の把持部材7a,7bは、図3に示すように、断面視円弧状面8とその両端に連設された平板状面9を備え、円弧状面8により内視鏡Eに当接されるようになっており、各円弧状面8には挿通孔2の長さ方向に沿って1対のローラー10が回転自在に設けられている。
【0031】
平板状面9には、孔部11が設けられており、柱状部材6a,6bは孔部11に挿通されている。この結果、第1及び第2の把持部材7a,7bは、柱状部材6a,6bに沿って移動可能とされている。
【0032】
尚、図5では、孔部11は挿通孔2の長さ方向に延在する長孔となっているが、孔部11は柱状部材6a,6bに対し少なくとも挿通孔2の長さ方向に間隙を備えていればよく、挿通孔2の全周に間隙を有する丸孔であってもよい。また、孔部11は、長孔の場合には、長さ方向の断面において第1及び第2の把持部材7a,7bの厚さ方向中央部で最も狭く、柱状部材6a,6bが挿通される間隙を有し、該中央部から表面に向かって次第に拡がる形状(X字状又は、上半分ではV字状、下半分ではΛ字状)を備えていてもよい。
【0033】
また、第1及び第2の把持部材7a,7bの間には、第1及び第2の把持部材7a,7bを互いに離間する方向に付勢する第1の弾性部材としてのスプリング12a,12bがそれぞれ柱状部材6a,6bを軸として配設されている。
【0034】
第1の把持部材7aは、ホルダー本体3の大径部3aの側壁を貫通して設けられた押圧部材13に第3の弾性部材としてのスプリング14を介して接続されている。スプリング14は押圧部材13に内蔵されている。ここで、第1の把持部材7aは、押圧部材13によりスプリング12a,12bの付勢力に抗して第2の把持部材7b方向に押圧されるようになっている。なお、スプリング14は、必須のものではなく、無くてもよい。
【0035】
一方、第2の把持部材7bは、ホルダー本体3の大径部3aの内壁面との間に配設された第2の弾性部材としてのスプリング15により保持されている。図4に示すように、本実施形態では、スプリング15は挿通孔2の長さ方向に沿って2ヶ所に設けられているが、1ヶ所でもよく、3ヶ所以上に設けられていてもよい。
【0036】
押圧部材13は、例えば、側面に設けられたラック16をスイッチング機構としてのレバー17に設けられた歯止め18に係止させるラチェット機構により、第1の把持部材7aを第2の把持部材7b方向に押圧する押圧状態を保持することができる。レバー17はスプリング19により押圧部材13方向に付勢されている。前記ラチェット機構では、押圧部材13が押下されるとラック16が歯止め18を押すので、歯止め18が押圧部材13から離間する方向に退避し、ラック16が歯止め18を通過すると再び歯止め18が押圧部材13方向に移動してラック16に係止される。
【0037】
また、レバー17は、図1に矢示するように、スプリング19の付勢力に抗して押圧部材13から離間する方向に操作することにより、歯止め18によるラック16の係止を解除することができ、これにより第1の把持部材7aの前記押圧状態を解除することができる。
【0038】
本実施形態では、押圧部材13と前記スイッチング機構とを前記ラチェット機構により構成しているが、所謂2段ノック機構(例えば特開平9−99691号公報参照)、ハートカム機構(例えば特開2014−11068号公報参照)等により構成してもよい。
【0039】
孔部11は、図5に第2の把持部材7bを例として示すように、円弧状面8の両側の平板状面9の前後に各2ヶ所、計4ヶ所設けられている。本実施形態では、前述の4ヶ所の孔部11に対し、柱状部材6a,6bは各平板状面9に各1本、計2本が対角線方向に設けられ、正面視したときに中心軸を挟んで1対となっている。しかし、柱状部材6a,6bは、4ヶ所の孔部11に各1本、計4本設けるようにしてもよい。
【0040】
尚、本実施形態の内視鏡ホルダー1は、ホルダー本体3の大径部3aの内壁面の第1及び第2の把持部材7a,7bの間に、第1及び第2の把持部材7a,7bの近接を規制する規制部材としてのストッパー20が突設されていてもよい。ストッパー20を設けることにより、内視鏡Eが第1及び第2の把持部材7a,7bの間に過度に強固に挟持されることを防止して、内視鏡Eの損傷を防止することができる。ストッパー20は挿通孔2の長さ方向に沿って所定の長さに延在していてもよく、挿通孔2の長さ方向に沿う要所に間欠的に設けられていてもよい。
【0041】
また、内視鏡ホルダー1は、内視鏡Eで観察する体内からの脱気を防止して観察視野を良好に維持するための脱気防止弁21を有してもよい。図4に示すように、脱気防止弁21は、たとえば、小径部3b後端部の径が大きくなる部分への段差を構成している面に対し、固定用の環状部材22との間に挟んで圧着又は溶着することにより固定することができる。
【0042】
脱気防止弁21は、挿通孔2に内視鏡Eが挿通されるときに脱気防止弁21中心部の開口穴を内視鏡Eが貫通するように構成され、貫通した内視鏡Eと挿通孔2との間を密閉する機能を有する。
【0043】
次に、本実施形態の内視鏡ホルダー1の作動について説明する。
【0044】
本実施形態の内視鏡ホルダー1は、例えば、マウスピースP及びオーバーチューブTを介して体内の所定位置に挿入された内視鏡Eが挿通孔2に挿入された状態で用いられる。このとき、内視鏡ホルダー1は、図2Bに示すように、固定部材4をマウスピースPに設けられた凹部5に嵌合することにより、マウスピースPに固定されて接続される。
【0045】
次に、図3及び図4に示す押圧部材13を押下すると、第1及び第2の把持部材7a,7bが柱状部材6a,6bに案内されて下方に移動し、第1の把持部材7aがスプリング12a,12bの付勢力に抗して第2の把持部材7b方向に押圧される。このとき、前述のように、押圧部材13のラック16がレバー17の歯止め18に係止されることにより、第1の把持部材7aが第2の把持部材7b方向に押圧された押圧状態が保持され、内視鏡Eが第1及び第2の把持部材7a,7bの間に挟持されて保持される。この結果、内視鏡ホルダー1により、体内に挿入された内視鏡Eが所定の挿入位置で固定される。
【0046】
このとき、内視鏡ホルダー1では、押圧部材13のラック16がレバー17の歯止め18に係止されるラチェット機構を備えており、第1の把持部材7aを段階的に第2の把持部材7bに近接させることができる。この結果、内視鏡Eの直径の大小に拘わらず、内視鏡Eを第1及び第2の把持部材7a,7bの間に確実に保持することができる。
【0047】
また、内視鏡ホルダー1では、第1及び第2の把持部材7a,7bの円弧状面8にローラー10が回転自在に設けられているので、内視鏡Eは所定の挿入位置で固定されたまま回転することができる。
【0048】
また、内視鏡ホルダー1では、第1の把持部材7aは押圧部材13との間に配設されたスプリング14により、第2の把持部材7bは大径部3aの内壁との間に配設されたスプリング15により、ともに挿通孔2の長さ方向に対して揺動自在に保持されている。そこで、内視鏡Eは、体内の所定の挿入位置に固定されたまま、その軸方向に対して第1及び第2の把持部材7a、7bとともに揺動することができる。
【0049】
このとき、内視鏡ホルダー1では、柱状部材6a,6bが第1及び第2の把持部材7a,7bに備えられた孔部11に挿通されている。従って、図6に第2の把持部材7bを例として示すように、第1及び第2の把持部材7a,7bが揺動したときにも柱状部材6a,6bが第1及び第2の把持部材7a,7bに干渉することを避けることができ、第1及び第2の把持部材7a,7bの揺動を円滑に行うことができる。
【0050】
尚、本実施形態では、内視鏡ホルダー1をマウスピースPに固定して接続するようにしているが、内視鏡ホルダー1は他の器具等に固定することができればよく、必ずしもマウスピースPに接続しなくてもよい。
【0051】
例えば、図7に示すように、内視鏡ホルダー1は、ホルダー本体3を支持するアーム23を備えてもよい。この場合、ホルダー本体3は、図8のように、アーム23の先端部に一体的に固定され、又は図9のように、アーム23の先端部に着脱自在に取り付けられてもよい。
【0052】
ホルダー本体3をアーム23の先端部に着脱自在に取り付けるための手段としては、例えば図9のように、捩じりばね24によりクランプ力を付与するクランプ25を用いることができる。アーム23としては、内視鏡を支持したホルダー本体3を任意の位置及び姿勢で確実に保持できる各種のアームを使用することができる。
【0053】
図7では、内視鏡ホルダー1を大腸内視鏡26に使用する様子が示されている。この場合、ホルダー本体3を支持するアーム23の基端部は、患者Hが側臥するベッド27に対し、アーム固定手段28により固定される。
【0054】
図10に示すように、ベッド27がレール付きベッド29である場合、アーム固定手段28としては、例えばアーム23の基端部をレール付きベッド29のレール部30に固定するクランプ31を用いることができる。クランプ31は、アーム23の基端部が固定された固定部32と、固定部32に先端側が螺合する蝶ねじ33と、蝶ねじ33によりクランプ方向に締め付けられる可動部34とを有する。
【0055】
レール部30に対するクランプ31の固定は、レール部30の上側に可動部34を配置し、下側に固定部32を配置して、これらを蝶ねじ33で上方から締め付けることにより行われる。
【0056】
ベッド27がベッドフレーム35を有する場合、アーム固定手段28としては、例えば図12及び図13で示されるようなアーム23の基端部が固定されたC型クランプ36を用いることができる。C型クランプ36は、ベッドフレーム35に対して、下側から蝶ねじ37で締め付けることにより固定される。
【0057】
なお、アーム固定手段28は、上記のようにアーム23をレール付きベッド29のレール部30やベッドフレーム35に固定するものに限らず、テーブルや机などの他の固定用部材に固定するものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…内視鏡ホルダー、 2…挿通孔、 3…ホルダー本体、 4…固定部材、 6a,6b…柱状部材、 7a…第1の把持部材、 7b…第2の把持部材、 10…ローラー、 11…孔部、 12a,12b…スプリング(第1の弾性部材)、 13…押圧部材、 14…スプリング(第3の弾性部材)、 15…スプリング(第2の弾性部材)、 17…レバー(スイッチング機構)、 21…脱気防止弁、 22…環状部材、 23…アーム、 24…捩じりばね、 25…クランプ、 26…大腸内視鏡、 27…ベッド、 28…アーム固定手段、 29…レール付きベッド、 30…レール部、 31…クランプ、 32…固定部、 33, 37…蝶ねじ、 34…可動部、 35…ベッドフレーム、 36…C型クランプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13