特許第6249463号(P6249463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6249463
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】内視鏡ホルダー
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20171211BHJP
   A61B 1/31 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   A61B1/00 654
   A61B1/31
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-14787(P2017-14787)
(22)【出願日】2017年1月30日
【審査請求日】2017年9月26日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成27年度経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業(手術ロボット開発における位置決め技術の高度化(インテリジェントホルダーの開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】593203228
【氏名又は名称】株式会社和幸製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(73)【特許権者】
【識別番号】511188495
【氏名又は名称】さいたま商工会議所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢作 直久
(72)【発明者】
【氏名】和田 則仁
(72)【発明者】
【氏名】小川 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 暁
(72)【発明者】
【氏名】井上 譲
(72)【発明者】
【氏名】依田 満
【審査官】 荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−113697(JP,A)
【文献】 特開2008−154758(JP,A)
【文献】 特開2000−157485(JP,A)
【文献】 特開2001−149302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00− 1/32
A61B 90/50−90/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入された内視鏡を所定の挿入位置で固定して保持する内視鏡ホルダーであって、
一側面が開放された中空四角筒状の内部に内視鏡を収容する内視鏡収容部を備えるホルダー本体と、
該内視鏡収容部の長さ方向に延在する板状体からなり、該内視鏡収容部に収容された該内視鏡に当接されて該内視鏡を挟持する第1及び第2の把持部材と、
該第1及び第2の把持部材の間に配設され該第1及び第2の把持部材を互いに離間する方向に付勢する第1の弾性部材と、
該第1の弾性部材の付勢力に抗して該第1の把持部材を該第2の把持部材方向に押圧する押圧部材と、
該押圧部材による押圧状態を保持又は解除するスイッチング機構と、
該第1及び第2の把持部材の該内視鏡に当接する面に該内視鏡収容部の長さ方向に沿って回転自在に設けられたローラーと、
該第2の把持部材と該内視鏡収容部の内壁との間に配設され該第2の把持部材を該内視鏡収容部の長さ方向に対して揺動自在に支持する第2の弾性部材とを備えることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記第2の弾性部材は前記内視鏡収容部の長さ方向に沿って少なくとも2ヶ所に配設されることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の内視鏡ホルダーにおいて、該第1の把持部材と該押圧部材との間に配設され該第1の把持部材を該内視鏡収容部の長さ方向に対して揺動自在に支持する第3の弾性部材を備えることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記内視鏡収容部の内壁面に前記第1及び第2の把持部材が相互に近接することを規制する規制部材を備えることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記内視鏡収容部の開放された側面に対向する側面に沿って立設された複数の柱状部材を備える一方、前記第1及び第2の把持部材は該柱状部材が挿通される長孔部を備え、該長孔部は該柱状部材に対し少なくとも該内視鏡収容部の長さ方向に間隙を備えることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記ホルダー本体を任意の位置及び姿勢で支持するアームを備え、該ホルダー本体は該アームの先端部に一体的に固定され、又は該先端部に着脱自在に取り付けられることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項7】
請求項6記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記アームの基端部をベッドのフレーム若しくはレール部又は他の固定用部材に着脱自在に固定するアーム固定手段を有することを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の内視鏡ホルダーにおいて、前記内視鏡は上部消化管内視鏡又は下部内視鏡であることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体内に挿入された内視鏡を所定の挿入位置で固定して保持する内視鏡ホルダーとして、操作部の先端に開閉自在に設けられた1対の半円筒状のクリップと、該クリップの内面に長さ方向に延在する回転自在の複数のローラーとを備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
前記内視鏡は、体内に挿入されたときに所定の挿入位置で体内を観察し、又は所要の処置を行うことがあり、この場合には該挿入位置に固定されることが望まれる。そこで、前記従来の内視鏡ホルダーによれば、体内に挿入された内視鏡を前記1対の半円筒状のクリップで挟持して把持することにより、所定の挿入位置で固定して保持することができる。
【0004】
また、前記内視鏡は、前記挿入位置に固定された状態でその周囲を観察し、又は所要の処置を行うために回転することが望まれることがある。このとき、前記従来の内視鏡ホルダーによれば、前記クリップの内面に回転自在の複数のローラーを備えているので、前記挿入位置に固定された状態の前記内視鏡を該ローラーにより回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−198933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、前記内視鏡は、前記挿入位置に固定された状態で、先端部を腸壁や胃壁等に近接させるため、軸方向に対して揺動することが望まれる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、体内に挿入された内視鏡を所定の挿入位置で回転自在に固定して保持しつつ、該挿入位置に固定された状態の該内視鏡を揺動させることができ、しかも容易に内視鏡に装着することができる内視鏡ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の内視鏡ホルダーは、体内に挿入された内視鏡を所定の挿入位置で固定して保持する内視鏡ホルダーであって、一側面が開放された中空四角筒状の内部に内視鏡を収容する内視鏡収容部を備えるホルダー本体と、該内視鏡収容部の長さ方向に延在する板状体からなり、該内視鏡収容部に収容された該内視鏡に当接されて該内視鏡を挟持する第1及び第2の把持部材と、該第1及び第2の把持部材の間に配設され該第1及び第2の把持部材を互いに離間する方向に付勢する第1の弾性部材と、該第1の弾性部材の付勢力に抗して該第1の把持部材を該第2の把持部材方向に押圧する押圧部材と、該押圧部材による押圧状態を保持又は解除するスイッチング機構と、該第1及び第2の把持部材の該内視鏡に当接する面に該内視鏡収容部の長さ方向に沿って回転自在に設けられたローラーと、該第2の把持部材と該内視鏡収容部の内壁との間に配設され該第2の把持部材を該内視鏡収容部の長さ方向に対して揺動自在に支持する第2の弾性部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
例えば、内視鏡ホルダーが中空筒状体であって側面に開口部を有さないホルダー本体を備える場合、該内視鏡ホルダーを内視鏡に装着しようとするときには、長尺の該内視鏡をその先端から該ホルダー本体に挿通しなければならない。これに対して、本発明の内視鏡ホルダーは、ホルダー本体が一側面が開放された中空四角筒状であり、その内部に内視鏡を収容する内視鏡収容部を備える。そこで、本発明の内視鏡ホルダーによれば、前記ホルダー本体の開放された側面を該内視鏡の長さ方向の任意の部分に添わせ、該開放された側面から前記内視鏡収容部に該内視鏡を収容することにより、長尺の該内視鏡に容易に装着することができる。
【0010】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記ホルダー本体の前記内視鏡収容部内に、該内視鏡収容部の長さ方向に延在する板状体からなる第1及び第2の把持部材を備えており、該第1及び第2の把持部材の間には、該第1及び第2の把持部材を互いに離間する方向に付勢する第1の弾性部材が配設されている。そこで、前記第1の把持部材は、押圧部材により前記第1の弾性部材の付勢力に抗して前記第2の把持部材方向に押圧されることにより、前記内視鏡を該第2の把持部材との間に挟持する。前記押圧部材による押圧状態はスイッチング機構により保持され、この結果、本発明の内視鏡ホルダーは、前記内視鏡を前記第1及び第2の把持部材の間に保持することができ、体内に挿入された該内視鏡を所定の挿入位置で固定することができる。
【0011】
このとき、前記第1及び第2の把持部材は、前記内視鏡に当接する面に前記内視鏡収容部の長さ方向に沿ってローラーが設けられており、該ローラーは回転自在とされている。そこで、前記第1及び第2の把持部材の間に保持された前記内視鏡は、前記ローラーにより、体内の所定の挿入位置に固定されたまま回転することができる。
【0012】
また、このとき、前記第2の把持部材は前記内視鏡収容部の内壁との間に配設された第2の弾性部材により、前記内視鏡収容部の長さ方向に対して揺動自在に保持されている。従って、前記第1及び第2の把持部材の間に保持された前記内視鏡は、体内の所定の挿入位置に固定されたまま、前記内視鏡収容部の長さ方向、換言すれば該内視鏡の軸方向に対して揺動することができる。
【0013】
本発明の内視鏡ホルダーにおいて、前記第1の把持部材は、前記スイッチング機構により前記押圧部材による押圧状態が解除されると、前記第1の弾性部材の付勢力により原状に復帰することができる。
【0014】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記第1の把持部材と前記押圧部材との間に配設され前記第1の把持部材を前記内視鏡収容部の長さ方向に対して揺動自在に支持する第3の弾性部材を備えていることが好ましい。
【0015】
本発明の内視鏡ホルダーにおいて、前記第2の弾性部材は前記内視鏡収容部の長さ方向に沿って少なくとも2ヶ所に配設されることが好ましい。前記第2の弾性部材が前記内視鏡収容部の長さ方向に沿って少なくとも2ヶ所に配設されていることにより、前記第2の把持部材の揺動を安定に行うことができる。
【0016】
本発明の内視鏡ホルダーは、前記第3の弾性部材を備えていることにより、前記第1の把持部材も前記内視鏡収容部の長さ方向に対して揺動自在とされるので、前記第1及び第2の把持部材の間に保持された前記内視鏡を、より容易に、前記内視鏡収容部の長さ方向に対して揺動させることができる。
【0017】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記内視鏡収容部の内壁面に前記第1及び第2の把持部材が相互に近接することを規制する規制部材を備えることが好ましい。本発明の内視鏡ホルダーは、前記内視鏡収容部の内壁面に前記規制部材を備えることにより、前記内視鏡が前記第1及び第2の把持部材の間に過度に強固に把持されることを防止して、該内視鏡の損傷を防止することができる。
【0018】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記内視鏡収容部の開放された側面に対向する側面に沿って立設された複数の柱状部材を備える一方、前記第1及び第2の把持部材は該柱状部材が挿通される長孔部を備え、該長孔部は該柱状部材に対し少なくとも該内視鏡収容部の長さ方向に間隙を備えることが好ましい。
【0019】
前記第1及び第2の把持部材は前記長孔部を備え、該長孔部に前記柱状部材が挿通されているので、前記押圧部材により押圧され、或いは押圧が解除されたときには、該柱状部材に沿って移動することができる。
【0020】
一方、前記第1及び第2の把持部材が前記のように揺動する際には、前記柱状部材との干渉により該揺動が妨げられることが懸念される。しかし、本発明の内視鏡ホルダーでは、前記長孔部は前記柱状部材に対し少なくとも前記挿通孔の長さ方向に間隙を備えているので、前記第1及び第2の把持部材が揺動したときにも、該柱状部材が該第1及び第2の把持部材に干渉することを避けることができる。
【0021】
また、本発明の内視鏡ホルダーは、前記ホルダー本体を任意の位置及び姿勢で支持するアームを備え、該ホルダー本体は該アームの先端部に一体的に固定され、又は該先端部に着脱自在に取り付けられていることが好ましい。本発明の内視鏡ホルダーは、前記アームを備えることにより、種々の治療又は検査等の状況に応じて、前記ホルダー本体を任意の位置及び姿勢で支持することができる。
【0022】
前記アームを備える場合、本発明の内視鏡ホルダーは、該アームの基端部をベッドのフレーム若しくはレール部又は他の固定用部材に着脱自在に固定するアーム固定手段を備えることが好ましい。本発明の内視鏡ホルダーは、前記アーム固定手段を備えることにより、ベッド等に前記アームを固定し、該アームで前記ホルダー本体をベッド上の空間の任意の位置において任意の姿勢で保持することができる。従って、本発明の内視鏡ホルダーは、内視鏡を、ベッド上で手技が施される患者の様々な状況に応じた適切な位置及び姿勢で保持することができる。
【0023】
また、本発明の内視鏡ホルダーにおいて、前記内視鏡は、上部消化管内視鏡であってもよく、下部(大腸)内視鏡であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の内視鏡ホルダーの構成を示す斜視図。
図2図1に示す本発明の内視鏡ホルダーの開口部方向から見た側面図。
図3】Aは図2のA−A線断面図、Bは図2のB−B線断面図。
図4図3のIV−IV線断面図。
図5図4に示す把持部材の平面図。
図6】Aは図1の内視鏡ホルダーを、アームを用いて下部(大腸)内視鏡に使用する状態を示す斜視図、BはAに示す患者の足方向から見た側面図。
図7図1に示すホルダー本体がアームの先端部に一体的に固定された状態を示す側面図。
図8】Aは図1に示すホルダー本体がアームの先端部に着脱自在に取り付けられた状態を示す正面図、BはAの側面図。
図9】アームの基端部がレール付きベッドにクランプで固定された状態を示す側面図。
図10図9に示すクランプの正面図。
図11】アームの基端部がベッドフレームにクランプで固定された状態を示す側面図。
図12図11に示すクランプの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の内視鏡ホルダー1は、中空四角筒状体からなるホルダー本体2を備え、ホルダー本体2は該中空四角筒状体の一側面に開口部3を備えている。そして、ホルダー本体2は該中空四角筒状体の内部に、開口部3から挿入される内視鏡Eが収容される内視鏡収容部4を備えている。
【0027】
本実施形態の内視鏡ホルダー1は、図2図4に示すように、内視鏡収容部4の内部にその長さ方向に延在する板状体からなる第1及び第2の把持部材5a,5bと、開口部3に対向する側面2aに沿って立設された3本の柱状部材6a,6b,6cとを備えている。第1及び第2の把持部材5a,5bは、図3に示すように、断面視円弧状面7とその両端に連設された平板状面8とを備え、円弧状面7により内視鏡Eに当接されるようになっており、円弧状面7には内視鏡収容部4の長さ方向に沿って1対のローラー9が回転自在に設けられている。
【0028】
平板状面8には、長孔部10が設けられており、柱状部材6a,6b,6cは長孔部10に挿通されている。この結果、第1及び第2の把持部材5a,5bは、柱状部材6a,6b,6cに沿って移動可能とされている。
【0029】
また、第1及び第2の把持部材5a,5bの間には、第1及び第2の把持部材5a,5bを互いに離間する方向に付勢する第1の弾性部材としてのスプリング11が柱状部材6bを軸として配設されている。
【0030】
第2の把持部材5bは、ホルダー本体2の底部内壁面との間に配設された第2の弾性部材としてのスプリング12により、内視鏡収容部4の長さ方向に対して揺動自在に保持されている。図4に示すように、本実施形態では、スプリング12は内視鏡収容部4の長さ方向に沿って2ヶ所に設けられているが、1ヶ所でもよく、3ヶ所以上に設けられていてもよい。
【0031】
一方、第1の把持部材5aは、ホルダー本体2の天面を貫通して設けられた押圧部材13に第3の弾性部材としてのスプリング14を介して、内視鏡収容部4の長さ方向に対して揺動自在に接続されている。スプリング14は押圧部材13に内蔵されている。ここで、第1の把持部材5aは、押圧部材13によりスプリング11の付勢力に抗して第2の把持部材5b方向に押圧されるようになっている。尚、スプリング14は、必須のものではなく、無くてもよい。
【0032】
押圧部材13は、例えば、側面に設けられたラック15を、スイッチング機構としてのレバー16に設けられた歯止め17に係止させるラチェット機構により、第1の把持部材5aを第2の把持部材5b方向に押圧する押圧状態を保持することができる。レバー16はスプリング18により押圧部材13方向に付勢されている。前記ラチェット機構では、押圧部材13が押下されるとラック15が歯止め17を押すので、歯止め17が押圧部材13から離間する方向に退避し、ラック15が歯止め17を通過すると再び歯止め17が押圧部材13方向に移動してラック15に係止される。
【0033】
また、レバー16は、図1に矢示するように、スプリング18の付勢力に抗して押圧部材13から離間する方向に操作することにより、歯止め17によるラック15の係止を解除することができ、これにより第1の把持部材5aの前記押圧状態を解除することができる。
【0034】
本実施形態では、押圧部材13と前記スイッチング機構とを前記ラチェット機構により構成しているが、所謂2段ノック機構(例えば特開平9−99691号公報参照)、ハートカム機構(例えば特開2014−11068号公報参照)等により構成してもよい。
【0035】
長孔部10は、図5に第2の把持部材5bを例として示すように、円弧状面7の一方の側部の平板状面8に設けられている。長孔部10は、その両端に柱状部材6a,6cが挿通される一方、中央部に橋絡部19を備えている。橋絡部19は丸孔部19aを備え、丸孔部19aに柱状部材6bが挿通される一方、スプリング11の端部が橋絡部19に係止されている。また、長孔部10は柱状部材6a,6cの周囲に間隙を備えており、丸孔部19aは柱状部材6bの周囲に間隙を備えている。
【0036】
また、ホルダー本体2は、側面2aの内面の第1及び第2の把持部材5a,5bの間に、第1及び第2の把持部材5a,5bの近接を規制する規制部材として、上下1対のストッパー20が突設されている。ストッパー20を設けることにより、内視鏡Eが第1及び第2の把持部材5a,5bの間に過度に強固に把持されることを防止して、内視鏡Eの損傷を防止することができる。
【0037】
また、内視鏡ホルダー1は、図6に、内視鏡Eが下部(大腸)内視鏡である場合を例として示すように、ホルダー本体2を支持するアーム21を備えている。アーム21は、内視鏡Eを支持したホルダー本体2を任意の位置及び姿勢で確実に保持するために、複数の関節22を備え、患者Pが側臥するベッド23に対し、アーム固定手段24により固定される。
【0038】
ホルダー本体2は、図7に示すように、アーム21の先端部に一体的に固定されていてもよく、図8に示すように、アーム21の先端部に着脱自在に取り付けられてもよい。ホルダー本体2をアーム21の先端部に着脱自在に取り付けるための手段としては、捩じりばね25によりクランプ力を付与するクランプ26を用いることができる。
【0039】
アーム固定手段24としては、例えば図9及び図10に示すように、ベッド23のレール部27にアーム21の基端部を固定するクランプ31を用いることができる。クランプ31は、アーム21の基端部に蝶ねじ32により螺着される固定部33と、固定部33に螺合する蝶ねじ34により固定部33方向に締め付けられる可動部35とを備える。レール部27に対するクランプ31の固定は、レール部27の下部に当接された固定部33に対し、レール部27の上側に配置された可動部35を蝶ねじ34により締め付け、レール部27を固定部33と可動部35とにより挟持することにより行うことができる。
【0040】
また、アーム固定手段24として、図11及び図12に示すように、ベッド23のフレーム28にアーム21の基端部を固定するC型クランプ36を用いることもできる。C型クランプ36は、アーム21の基端部に蝶ねじ37により螺着される固定部38と、固定部38の両端部から固定部38に対して垂直方向に突出する爪部39a,39bと、爪部39bに螺合する蝶ねじ40により爪部39a方向に締め付けられる座金部41とを備える。フレーム28に対するC型クランプ36の固定は、フレーム28の上面に当接された爪部39aに対し、フレーム28の下側に配置された爪部39bに螺合された蝶ねじ40により座金部41を締め付け、フレーム28を爪部39aと座金部41とにより挟持することにより行うことができる。
【0041】
アーム固定手段24は、上述のようにアーム21をベッド23のレール部27又はフレーム28に固定するものに限らず、テーブルや机などの他の固定用部材に固定するものであってもよい。
【0042】
尚、図6図12においては、アーム21により支持されたホルダー本体2に内視鏡Eとして下部(大腸)内視鏡を装着して用いる場合について説明しているが、本実施形態の内視鏡ホルダー1はホルダー本体2に内視鏡Eとして上部消化管内視鏡を装着して用いることもできる。
【0043】
次に、本実施形態の内視鏡ホルダー1の作動について説明する。
【0044】
本実施形態の内視鏡ホルダー1は、図1に示すように、ホルダー本体2の開口部3を内視鏡Eの長さ方向の任意の部分に添わせ、内視鏡Eを矢示方向に移動させて開口部3から内視鏡収容部4に収容することにより、内視鏡Eに装着する。
【0045】
次に、押圧部材13を押下すると、第1及び第2の把持部材5a,5bが柱状部材6a,6b,6cに案内されて下方に移動し、第1の把持部材5aがスプリング11の付勢力に抗して第2の把持部材5b方向に押圧される。このとき、前述のように、押圧部材13のラック15がレバー16の歯止め17に係止されることにより、第1の把持部材5aが第2の把持部材5b方向に押圧された押圧状態が保持され、内視鏡Eが第1及び第2の把持部材5a,5bの間に挟持されて保持される。この結果、内視鏡ホルダー1により、体内に挿入された内視鏡Eが所定の挿入位置で固定される。
【0046】
このとき、内視鏡ホルダー1では、押圧部材13のラック15がレバー16の歯止め17に係止されるラチェット機構を備えており、第1の把持部材5aを段階的に第2の把持部材5bに近接させることができる。この結果、内視鏡Eの直径の大小に拘わらず、内視鏡Eを第1及び第2の把持部材5a,5bの間に確実に保持することができる。
【0047】
また、内視鏡ホルダー1では、第1及び第2の把持部材5a,5bの円弧状面7にローラー9が回転自在に設けられているので、内視鏡Eは所定の挿入位置で固定されたまま回転することができる。
【0048】
また、内視鏡ホルダー1では、第1の把持部材5aは押圧部材13との間に配設されたスプリング14により内視鏡収容部4の長さ方向に対して揺動自在に保持され、第2の把持部材5bは内視鏡収容部4の底面の内壁との間に配設されたスプリング12により内視鏡収容部4の長さ方向に対して揺動自在に保持されている。そこで、内視鏡Eは、体内の所定の挿入位置に固定されたまま、その軸方向に対して揺動することができる。
【0049】
このとき、内視鏡ホルダー1では、柱状部材6a,6cが第1及び第2の把持部材5a,5bに備えられた長孔部10に挿通されており、柱状部材6bが長孔部10の橋絡部19に設けられた丸孔部19aに挿通されているが、長孔部10は柱状部材6a,6cの周囲に間隙を備えており、丸孔部19aは柱状部材6bの周囲に間隙を備えている。従って、第1及び第2の把持部材5a,5bが揺動したときにも、柱状部材6a,6b,6cは第1及び第2の把持部材5a,5bに干渉することを避けることができ、第1及び第2の把持部材5a,5bの揺動を円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1…内視鏡ホルダー、 2…ホルダー本体、 3…開口部(開放された一側面)、 4…内視鏡収容部、 5a…第1の把持部材、 5b…第2の把持部材、 6a,6b,6c…柱状部材、 9…ローラー、 10…長孔部、 11…スプリング(第1の弾性部材)、 12…スプリング(第2の弾性部材)、 13…押圧部材、 14…スプリング(第3の弾性部材)、 16…レバー(スイッチング機構)、 21…アーム、 31,36…クランプ。
【要約】      (修正有)
【課題】内視鏡を所定の挿入位置で回転自在に固定して保持しつつ、揺動させることができ、しかも容易に内視鏡に装着できる内視鏡ホルダーを提供する。
【解決手段】内視鏡ホルダー1は、一側面が開放された中空四角筒状の内部に内視鏡Eを収容する内視鏡収容部4を備えるホルダー本体2と、内視鏡収容部4に収容された内視鏡Eを挟持する把持部材5a,5bと、把持部材5a,5bを互いに離間する方向に付勢する第1の弾性部材と、把持部材5aを把持部材5b方向に押圧する押圧部材13と、押圧状態を保持又は解除するスイッチング機構と、把持部材5a,5bに設けられたローラー9と、把持部材5bを揺動自在に支持する第2の弾性部材12とを備える。
【選択図】図3
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図12