(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249475
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ゆで麺装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
A47J27/14 F
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-210373(P2013-210373)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2015-73621(P2015-73621A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】595046986
【氏名又は名称】株式会社富士工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100091410
【弁理士】
【氏名又は名称】澁谷 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真人
【審査官】
西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−031497(JP,A)
【文献】
特開2004−105211(JP,A)
【文献】
特開平11−155743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
そば等の麺をゆで上げるゆで麺装置であって、
ケースと、
このケースに支えられたゆで釜と、
火口部を有し、この火口部から噴き出る炎によって前記ゆで釜の底面部を加熱するように前記ケース内に配置された加熱器と、
前記加熱器により加熱された空気を排出する排気通路が設けられた排気構造と、を備え、
前記底面部には、前側壁部、両側壁部及び天井部を有する、下面開口の加熱室が構成されるように内側に向って膨出する膨出部が形成され、この膨出部の周囲には前記ゆで釜の周面部との間で溝が形成され、
前記ゆで釜の前記底面部は傾斜部を有し、前記膨出部は前記傾斜部の幅方向中間部に形成されていて、
前記加熱器の前記火口部は前記加熱室内に位置している、ことを特徴とするゆで麺装置。
【請求項2】
前記膨出部の前記天井部には熱伝達フィンが取り付けられ、前記両側壁部にはそれぞれ、前後方向に延びるように熱伝達フィンが取り付けられ、
前記加熱器の前記火口部は前記傾斜部の傾斜方向に沿って複数段配置され、この複数段の火口部は前記傾斜部と平行に傾斜して前記両側壁部に取り付けられた前記熱伝達フィンと同じ高さでならぶように設けられている、ことを特徴とする請求項1記載のゆで麺装置。
【請求項3】
前記ゆで釜は、ゆで釜本体と、このゆで釜本体に固定された前記膨出部と、を有している、ことを特徴とする請求項1又は2記載のゆで麺装置。
【請求項4】
前記ゆで釜に水を供給するための貯水部をさらに備え、
前記加熱室は後方開口を有し、前記排気通路は前記貯水部内を通過して延び、前記排気通路の入口は前記貯水部の前面で開口して前記加熱室の前記後方開口に接続され又は接近して臨んでいる、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のゆで麺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は業務用厨房に設置され、そばやうどんあるいはラーメンやパスタなどの麺類をゆでるために用いるゆで麺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そば店などの各種飲食店で生麺をゆでるために用いられるゆで麺装置は、例えばゆで釜内にゆで網を配置したものであり、生麺をゆで網に入れてゆで釜の湯でゆで上げ、ゆで上がった麺をゆで網の反転により取り出すように構成されている。生麺のゆで上げは、ゆで釜の底面部を加熱器で加熱してゆで釜内に大きな湯の対流を生じさせ、この対流に乗せてゆで釜内で生麺を回しながら効率的に行なわれる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−238173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のゆで麺装置では、加熱器により加熱された高温の空気がゆで釜の周面部の周囲にも回り込み、ゆで釜内の水(湯)を効率的に加熱することができるのであるが、ケースが、加熱された空気と接触して熱せられ、高温となるおそれがあるので、作業者が接触する可能性のあるケース部分にはケースの外面が高温となるのを防止するために、例えば広範囲で断熱材を配置する必要がある。したがって、特許文献1に記載されたような加熱構造は、装置構成が複雑となるので、小型や中型のゆで麺装置に適した構成のものとは言えない場合も有り得る。
【0005】
そこで本発明は、ケースの内側の構成を簡単なものにすることができるゆで麺装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明のゆで麺装置は、そば等の麺をゆで上げるゆで麺装置であって、ケースと、このケースに支えられた、例えばゆで網を収容するゆで釜と、火口部を有し、この火口部から噴き出る炎によって前記ゆで釜の底面部を加熱するように前記ケース内に配置された加熱器と、前記加熱器により加熱された空気を排出する排気通路が設けられた排気構造と、を備え、前記底面部には、下面開口の加熱室が構成されるように内側に膨出する膨出部が形成され、この膨出部の周囲には前記ゆで釜の周面部との間で溝が形成されているものである。加熱器は加熱室内を加熱するように配置され、より具体的には、加熱器の火口部(炎を噴き出す口の部分又は先端部)が加熱室内に位置するように配置される。加熱器による加熱は加熱室の天井部及び周壁部に伝達され、この天井部及び周壁部と接触しているゆで釜内の水(湯)を加熱する。膨出部の形成により広い範囲の被加熱部が確保され、ゆで釜内の水(湯)が効率的に加熱されることとなる。また、加熱器により直接加熱されるのは加熱室の内部なので、加熱器から高温の熱がケース側に伝達されるといったことは起こりにくい。特に、膨出部の端部から加熱空気を排気するように構成すれば、より具体的には、加熱室の周壁部のいずれかの個所(例えば後方個所)を開放しておき、排気通路の入口を加熱室の開口(例えば後方開口)に接続し又は接近して臨ませれば、ケース側が高温となることを効果的に抑制できる。溝は膨出部の全周にわたって構成される必要は必ずしもない。
【0007】
ゆで釜の底面部を傾斜させて傾斜部を形成し、この傾斜部を加熱することにより、傾斜部から上昇し、水平部(底面部の傾斜させていない部分)側に下降して傾斜部に戻る対流を生じさせる場合には、膨出部を傾斜部に形成しておくのが得策である。ここでは、加熱器の火口部を傾斜部の傾斜方向に沿って複数段配置し、この複数段の火口部を傾斜部と平行に傾斜してならぶように設けておき、傾斜部の加熱が効率的に行なわれるようにすることが好ましい。すなわち、火口部が傾斜部と同一の傾きで傾斜して連なるように構成する。
【0008】
熱伝達効率を高めるために加熱室内に熱伝達フィンを取り付けておくのが効果的である。熱伝達フィンは加熱室の天井部と周壁部とに設けておくのが効果的である。
【0009】
ゆで釜をゆで釜本体とこのゆで釜本体に固定される膨出部とから構成しておけば、ゆで麺装置の製造効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では使用時にケースが高温化するのを簡単な構成であるいはゆで釜の底面部側の新規な構造で避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】ゆで釜及びガスバーナの構成を示すための内部構造図である。
【
図4】ゆで釜のフィンボックス内を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
まず、
図1及び
図2を参照して本発明に係るゆで麺装置の外観形状を説明する。
【0014】
ゆで麺装置1は、下面4隅にそれぞれ支持脚3が設けられた直方体状のケース5を有し、このケース5の上面プレート部7から上端側が上方に突出するように、上方開口のステンレス製角型ゆで釜9がケース5に支えられ固定されていて、角型ゆで釜9の中間部から下側は上面プレート部7の下側のケース5内に収容されている(
図3参照)。ゆで釜9内にはゆで網11が配置されていて、このゆで網11は、網体13の上端に枠体15を取り付けたものであり、枠体15には手前に取っ手17が設けられ、一方の側部にガイド19が立ち上がるように固定されている。ゆで釜9の一方の側面部22上側(ゆで釜9は一対の側面部22、23を有するが、
図1の奥側の側面部22の上側)の前後方向両側には一対のブラケット24が固定され(一方のブラケット24のみ図示)、ゆで網11の枠体15はこのブラケット24に回転可能に支えられていて、取っ手17を握ってブラケット24位置を中心にゆで網11を
図2に示すように反転させることができように構成されている。ゆで網11を反転させると、ゆで網11内でゆでられたそば麺等はガイド19を通過して、例えば上げざる(図示せず)内に排出される。
【0015】
ケース5の前面プレート部25には主炎のぞき窓26及びガス無段階調整コック27が設けられ、さらに、ケース5の内側に形成された、排熱を利用して水を温める貯水部29(
図3参照)に水道水を給水するための給水バルブ31及びゆで釜9内の水を排出する排水カラン33が取り付けられている。貯水部29の湯をゆで釜9内に供給するには、ケース5の後側に設けられた中空の排気体35に取り付けられている給湯部37を使用する。なお、ケース5の底面プレート部にはガス供給口及び貯水部29内の水を排水する排水栓(図示せず)が設けられている。また、ケース5の上面プレート部7には排水口36(栓がされた状態)が設けられていて、ゆで釜9からあふれ出た湯をケース5内のホース38を介して排水できるように構成されている。
【0016】
次に、
図3、
図4、
図5及び
図6を参照してケース5内の内部構造を説明するが、図では内部配管等が適宜省略されている。また、
図3では、貯水部29の排気通路入口部分の拡大断面図も記載されている。
【0017】
ゆで釜9の底面部39は、概略的には、前側の短い水平部41と、後方に向かって傾斜して上昇する後側の長い傾斜部43と、を備え、傾斜部43の幅方向中間部は全長に渡って内側に膨らむように形成されてフィンボックス45(膨出部)を構成している。フィンボックス45は、前側壁部47、両側壁部49、51及び天井部53を有し、下側及び後方で開口して下側開口50及びゆで釜9の後面部52で開口する後方開口54を有する断面長方形部分であり、フィンボックス45の前側壁部47とゆで釜9の前面部55との間、フィンボックス45の一方の側壁部49とゆで釜9の一方の側面部22との間、そしてフィンボックス45の他方の側壁部51とゆで釜9の他方の側面部23との間にはそれぞれ、隙間(溝)57、59、61が形成されている。フィンボックス45内の加熱室63では天井部53に多数の銅製の短いフィン65が固定され、側壁部49、51にそれぞれ、前後方向に延びる銅製の長いフィン67、69が一本固定されていて、これらのフィン65、67、69によりゆで釜9内の水(湯)への良好な熱伝達が達成される。なお、フィン67、69は、後側ほど熱伝達効率が高くなるように後側に向って徐々に高さが高くなっている。
【0018】
ゆで釜9の下側にはガスバーナ71(加熱器)が配置されている。ガスバーナ71は、ガス供給基部73と、このガス供給基部73から立ち上がるバーナヘッド75、77、79と、を備え、ガス供給基部73は、ゆで釜9の底面部39の傾斜部43と同じ傾きで前後方向に延びる共通部81と、この共通部81の前後方向3個所から幅方向に延びる3本の分岐部83、85、87と、を有していて、前側の分岐部83からは幅方向に間隔を設けて3本のバーナヘッド75が上方に延び、中間の分岐部85からも幅方向に間隔を設けて3本のバーナヘッド77が上方に延び、後側の分岐部87からは幅方向に間隔を設けて2本のバーナヘッド79が上方に延びている。分岐部83、85、87は、分岐部83、85の間隔と分岐部85、87の間隔が等しくなるように、かつ、前側から後側にかけて徐々に配置位置が高くなるように設けられている。バーナヘッド75、77、79は同じ形状及び大きさを有していて、それぞれの先端の火口部91、93、95が、フィン65との間隔が等しくなるようにフィンボックス45内に入り込んで位置している。すなわち、3つの前側の火口部91が一番低い段を形成し、3つの中央の火口部93が中間の高さの段を形成し、2つの後方の火口部95が一番高い段を形成していて、火口部のこの3つの段の傾きはフィンボックス45の天井部53の傾きと等しくなっている。
【0019】
なお、
図4に示すように、フィンボックス45の下側開口50の前縁部及び両側縁部から下側に短く延びる遮断延長部97を設けてもよい。
【0020】
ガスバーナ71の点火によりフィンボックス45内が加熱され、フィン65、フィン67及び69により傾斜部43の水(湯)に効率的に熱が伝わると、ゆで釜9内に、傾斜部43から水面方向に上昇し、ゆで釜9の前面部55に沿って下降して傾斜部43に戻るような湯の対流(
図4の矢印参照)が生じることとなる。ここでは、ガスバーナ71の火口部91、93、95はフィンボックス45内に位置し、火口部91、93、95からの火炎によって加熱された高温の空気がケース5又はケース5の前面プレート部25や側面プレート部97、99に直接接触することはないので、ケース5内に断熱材を配置する必要がなかったり、必要があっても少量の断熱材で十分であったりする。
【0021】
貯水部29はケース5の内部後方に設けられている。貯水部29は、前側がゆで釜9の傾斜部43の下側に入り込む下側部101と、ゆで釜9の後壁部52及びケース5の後面プレート部103の間で上方に延びる中間部105と、この中間部105から上方に短く突出する上側部107とを一体的に有し、上側部107の上端部は俳気体35内に位置している。
【0022】
このような構成の貯水部29には排気通路109が形成されている。排気通路109は、貯水部29の中間部105の前面で開口する流入口111(入口)と、貯水部29の上側部107の上端で開口する流出口113(出口)とを有して貯水部29の中間部105及び上側部107を貫通していて、流入口111はフィンボックス45の後面開口54と同一の大きさ又はほぼ同一の大きさを有し、フィンボックス45の後面開口54と連なるように接近した状態で接続されている。したがって、流入口111から流入したフィンボックス45内の加熱空気は、貯水部29内の排気通路109を通過して排気体35の上端部の排気口115から排出される。排気通路109及び俳気体35は排気構造を構成している。貯水部29内の水(湯)は排気通路109から排気される加熱空気の排熱によって加熱される。
【0023】
また、
図7を参照してゆで釜9の製造方法を説明する。
【0024】
ゆで釜9は、底面部39に下面開口117が形成され、後面部52に切欠き状の後面開口119が形成されて連続した開口を有するゆで釜本体121と、下側及び後側が開口し、天部53にフィン65が固定され、側壁部49、51にフィン67、69が固定されたボックス体123を準備し、このボックス体123の下側開口50の縁部をゆで釜本体121の下面開口117に溶接して固定するとともに、ボックス体123の後側開口54の縁部をゆで釜本体121の後面開口119に溶接して固定することにより構成される。フィン67及びフィン69はそれぞれ、
図8に示すように、断面コ字状体125のそれぞれの側壁127に熱変形吸収用の溝129を形成したものであり、側壁127の間の基壁131をボックス体123(フィンが取り付けられる前のボックス体123)に溶接などにより固定する。
【0025】
図9を参照してフィンボックス45の変形例を説明する。
【0026】
フィン65を前後方向に連ねたものを幅方向に複数列固定することに代えて、V字状にフィン65を配列することができる。このように構成することにより、フィンボックス45内での加熱空気の滞留時間を長くすることができるが、フィン65やフィン67、69の形状は、熱伝達効率を考慮して様々なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のゆで麺装置は、例えばそば店などの狭い厨房に設置して効果的に利用できるものである。
【符号の説明】
【0028】
1 ゆで麺装置
9 ゆで釜
35 排気体(排気構造)
45 フィンボックス(膨出部)
57、59、61 隙間(溝)
63 加熱室
71 ガスバーナ
91、93、95 火口部
109 排気通路