特許第6249480号(P6249480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249480時計用部品、ムーブメント、時計、および時計用部品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249480
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】時計用部品、ムーブメント、時計、および時計用部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 13/02 20060101AFI20171211BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20171211BHJP
   C25D 1/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G04B13/02 Z
   G04B17/06 Z
   C25D1/00 341
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-9657(P2014-9657)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-137934(P2015-137934A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】村住 拓也
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−290427(JP,A)
【文献】 特開2011−059081(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02502877(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 13/02
C25D 1/00
G04B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車であって、
他の部品との当接部分を含む第一部材と、
前記第一部材を除く第二部材と、を有し、
前記第二部材は、セラミックス材料により形成され、
前記第一部材は、電鋳法を用いて金属材料により形成され
前記第一部材は、
前記歯車の中心部に配置された軸打込み部と、
前記歯車の周縁部に配置された歯部と、
を有し、
前記第二部材は、前記軸打込み部と前記歯部との間に設けられ、前記軸打込み部と前記歯部とを連結する中間部であり、
前記中間部は、
前記軸打込み部の外周に沿った内側円環部と、
前記歯部の内周に沿った外側円環部と、
前記内側円環部と前記外側円環部とを連結するアーム部と、
を備え、
前記中間部は、前記歯車の回転軸に垂直な断面において、外周および内周のうち少なくとも一方の形状が非円形状であり、前記外周および前記内周のうち前記少なくとも一方に凹部が設けられ、
前記凹部は、前記アーム部の中心を通る径方向の延長線上に形成されている、
ことを特徴とする時計用部品。
【請求項2】
請求項に記載の時計用部品において、
前記軸打込み部および前記歯部のうち少なくとも一方は、前記歯車の回転軸方向から見て前記中間部と重なるように形成されている、ことを特徴とする時計用部品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の時計用部品において、
前記歯車は、前記軸打込み部と前記歯部とを連結するスポークを有し、
前記スポークは、電鋳法により前記軸打込み部および前記歯部と一体的に形成されている、ことを特徴とする時計用部品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の時計用部品において、
前記中間部は、光透過性を有するセラミックス材料で形成されている、ことを特徴とする時計用部品。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の時計用部品を備えたことを特徴とするムーブメント。
【請求項6】
請求項に記載のムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
【請求項7】
他の部品との当接部分を含んで形成された第一部材と、
前記第一部材を除く部分に配置された第二部材と、を備えた時計用部品の製造方法であって、
導電膜が形成された基板の表面に、電鋳型およびセラミックス材料で形成された前記第二部材を互いに接触させた状態で配置する工程と、
前記電鋳型および前記第二部材から露出した前記導電膜の表面に、電鋳法により金属材料で前記第一部材を形成する工程と、を備える時計用部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用部品、ムーブメント、時計、および時計用部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型の精密機械の1つである機械式時計には、歯車やレバー等の小型の時計用部品が多く搭載されている。これらの時計用部品には、例えば歯車のように、他部品と係合するように配置されるものがある。このような他部品と係合する時計用部品においては、外形を精度良く作製する必要があり、さらに当接箇所において欠けや割れを防ぐために機械的強度を高める必要がある。
【0003】
従来、上記のような時計用部品は、圧延材料の抜き打ち加工等の機械加工によって主に製造されていたが、近年では電鋳法を用いて製造する方法が採用されている。電鋳法による作製では、時計用部品は機械加工と同様に金属材料により形成されるため、他部品との当接箇所における欠けや割れに対する機械的強度が確保できる。また、抜き打ち加工等の機械加工に比べて機械公差を小さくすることができ、さらには複雑な外形形状であっても精度良く作製することができる。(例えば、特許文献1および特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−290427号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1916567号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では上記のような時計用部品は、装飾性を高めるために光透過性を有するセラミックス材料(例えば、ルビー等)による作製が試みられている。このような構成にすることで、従来金属材料により形成されていた歯車等の配置箇所において、これまで観察者側からは目視できなかった部品やその駆動の様子を確認できるようになるため、装飾性の高い機械式時計を提供することが可能となる。
【0006】
しかしながら、上述のセラミックス材料は一般的に曲げ強度が金属材料に比べて低いため、摺動部や係合部などの他の部品との当接箇所においては、他の部品から負荷が加わることで容易に欠けや割れが生じるため、機械的強度を維持することが難しい。
【0007】
そこで本発明は、機械的強度を維持しつつ装飾性の高い時計用部品、ムーブメント、時計、および時計用部品の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の時計用部品は、歯車であって、他の部品との当接部分を含む第一部材と、前記第一部材を除く第二部材と、を有し、前記第二部材は、セラミックス材料により形成され、前記第一部材は、電鋳法を用いて金属材料により形成され、前記第一部材は、前記歯車の中心部に配置された軸打込み部と、前記歯車の周縁部に配置された歯部と、を有し、前記第二部材は、前記軸打込み部と前記歯部との間に設けられ、前記軸打込み部と前記歯部とを連結する中間部であり、前記中間部は、前記軸打込み部の外周に沿った内側円環部と、前記歯部の内周に沿った外側円環部と、前記内側円環部と前記外側円環部とを連結するアーム部と、を備え、前記中間部は、前記歯車の回転軸に垂直な断面において、外周および内周のうち少なくとも一方の形状が非円形状であり、前記外周および前記内周のうち前記少なくとも一方に凹部が設けられ、前記凹部は、前記アーム部の中心を通る径方向の延長線上に形成されている、ことを特徴とする。
本発明によれば、第二部材は、セラミックス材料により形成され、第一部材は、電鋳法を用いて金属材料により形成されている。他の部品との当接部分である第一部材を金属材料により形成するため、機械的強度を維持することができる。さらに、当接部分を除く部分である第二部材をセラミックス材料により形成するため、装飾性を高めることができる。したがって、時計用部品の機械的強度を維持しつつ装飾性を高めることができる。
【0009】
また、他の部品との当接部分である歯車の軸打込み部および歯部は金属材料で形成され、それ以外の歯車の大部分を占める中間部はセラミックス材料で形成されるため、歯車の機械的強度を維持しつつ装飾性を高めることができる。
また、歯車に対する回転方向の外力印加時に、中間部と軸打込み部および歯部のうち少なくとも一方との接触面において、滑りによる相対位置のずれが生じることがない。したがって、歯車が空回りすることを阻止できる。
【0010】
上記の時計用部品において、前記時計用部品は歯車であり、前記軸打込み部および前記歯部のうち少なくとも一方は、前記歯車の回転軸方向から見て前記中間部と重なるように形成されている、ことが望ましい。
この構成によれば、軸打込み部および歯部のうち中間部と重なりを有する部分において、軸打込み部および歯部から中間部が分離して歯車の回転軸方向に抜けることを阻止できる。
【0012】
上記の時計用部品において、前記時計用部品は歯車であり、前記歯車は、前記軸打込み部と前記歯部とを連結するスポークを有し、前記スポークは、電鋳法により前記軸打込み部および前記歯部と一体的に形成されている、ことが望ましい。
この構成によれば、歯車は、軸打込み部と歯部とを連結するスポークを有しているので、軸打込み部と歯部との相対位置にずれが生じることがなく、歯車の空回りを阻止することができる。また、歯車の回転に対する機械的強度を向上させることができる。さらに、スポークを配置することで、歯車の装飾性をより高めることができる。
【0014】
上記の時計用部品において、前記第二部材は、光透過性を有するセラミックス材料で形成されていることが望ましい。
この構成によれば、時計用部品の第二部材は光透過性を有するので、時計用部品の装飾性をより高めることができる。
【0015】
本発明のムーブメントは、上記の時計用部品を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、機械的強度を維持しつつ装飾性の高いムーブメントを提供できる。
【0016】
本発明の時計は、上記のムーブメントを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、機械的強度を維持しつつ装飾性の高い時計を提供できる。
【0017】
本発明の時計用部品の製造方法は、他の部品との当接部分を含んで形成された第一部材と、前記第一部材を除く部分に配置された第二部材と、を備えた時計用部品の製造方法であって、導電膜が形成された基板の表面に、電鋳型およびセラミックス材料で形成された前記第二部材を互いに接触させた状態で配置する工程と、前記電鋳型および前記第二部材から露出した前記導電膜の表面に、電鋳法により金属材料で前記第一部材を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、第二部材がセラミックス材料により形成され、第一部材が電鋳法を用いて金属材料により形成されるので、機械的強度を維持しつつ装飾性の高い時計用部品を製造できる。また、電鋳型および第二部材から露出した導電膜の表面に、電鋳法により金属材料で第一部材を形成するので、複雑な形状の第一部材でも、簡単かつ精度良く形成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の時計用部品によれば、第二部材は、セラミックス材料により形成され、第一部材は、電鋳法を用いて金属材料により形成されている。他の部品との当接部分を金属材料により形成するため、機械的強度を維持することができる。他の部品との当接部分である第一部材を金属材料により形成するため、機械的強度を維持することができる。さらに、当接部分を除く部分である第二部材をセラミックス材料により形成するため、装飾性を高めることができる。したがって、時計用部品の機械的強度を維持しつつ装飾性を高めることができる。
【0019】
本発明の時計用部品の製造方法によれば、第二部材がセラミックス材料により形成され、第一部材が電鋳法を用いて金属材料により形成されるので、機械的強度を維持しつつ装飾性の高い時計用部品を製造できる。また、電鋳型および第二部材から露出した導電膜の表面に、電鋳法により金属材料で第一部材を形成するので、複雑な形状の第一部材でも、簡単かつ精度良く形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る時計用部品の説明図であり、図2のI−I線における断面図である。
図2図1のII−II線における断面図である。
図3】第1実施形態の第1変形例に係る時計用部品の説明図であり、図2のI−I線に相当する部分における断面図である。
図4】第1実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図5】第1実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図6】第1実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図7】第1実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図8】第1実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図9】第1実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図10】電鋳装置の構成を示す模式図である。
図11】電鋳装置の構成を示す模式図である。
図12】第2実施形態に係る時計用部品の説明図であり、図13のXII−XII線における断面図である。
図13図12のXIII−XIII線における断面図である。
図14】第2実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図15】第2実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図16】第2実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図17】第2実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図18】第2実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図19】第2実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図20】第2実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図21】第2実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図22】第2実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図23】第3実施形態の時計用部品の平面図である。
図24図23のXXIV−XXIV線における断面図である。
図25】第3実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図26】第3実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図27】第3実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図28】第3実施形態の時計用部品の製造方法を説明する工程図である。
図29】第4実施形態に係る時計用部品の説明図であり、図30のXXIX−XXIX線における断面図である。
図30図29のXXX−XXX線における断面図である。
図31】時計の外観図である。
図32】ムーブメント表側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態、時計用部品)
最初に、第1実施形態の時計用部品について説明する。
図1は、第1実施形態の時計用部品の説明図であり、図2のI−I線における断面図である。図2は、図1のII−II線における断面図である。本実施形態では、時計用部品として、歯車10aを例に挙げて説明する。
【0022】
図1および図2に示すように、歯車10aは、中心部に配置された軸打込み部11と、周縁部に配置された歯部13と、軸打込み部11と歯部13との間に設けられ、軸打込み部11と歯部13とを連結する中間部15と、を備えている。
【0023】
図1および図2に示すように、歯車10aは、中心部に配置された軸打込み部11と、周縁部に配置された歯部13と、を備えている。
軸打込み部11は、歯車10aの回転軸と一致する中心軸を有するリング状に形成されており、中心軸に沿って貫通孔17を有している。この貫通孔17には歯車10aを回転させる軸が圧入される。
歯部13は、歯車10aの回転軸と一致する中心軸を有するリング状に形成されている。歯車10aの外周には、歯車10aの径方向の外側に向かって先細りする歯が形成されている。これにより、隣接する歯車と噛み合うようになっている。なお、軸打込み部11および歯部13(以下、「歯部13等」という場合がある。)は、回転軸方向については一様な形状を有する。
【0024】
歯部13等は、電鋳法を用いて金属材料により形成されている。金属材料としては、一例としてニッケルやニッケル‐鉄合金、ニッケル‐コバルト合金などが用いられる。歯部13等は、後述する電鋳法によって中間部15と一体に形成されている。
【0025】
歯車10aは、軸打込み部11と歯部13との間に設けられ、軸打込み部11と歯部13とを連結する中間部15を備えている。
中間部15は、軸打込み部11の外周に沿った内側円環部15aと、歯部13の内周に沿った外側円環部15bと、内側円環部15aと外側円環部15bとを連結するアーム部15cとが一体的に形成されている。なお、中間部15は回転軸方向については一様な形状を有する。
アーム部15cは、歯車10aの周方向に沿って略等角度間隔に複数本(本実施形態では5本)形成されている。各アーム部15cに挟まれた領域には、貫通部19が設けられている。なお本実施形態の中間部15は、略等角度間隔に形成されたアーム部15cおよび貫通部19を有するが、この形状に限られない。例えば中間部15は本実施形態のような貫通部19を有さず、中心に円形の貫通孔を有する一様な厚さで形成された円板状の形状であってもよい。
【0026】
中間部15は、光透過性を有するセラミックス材料により形成されている。セラミックス材料としては、一例としてルビーやサファイア、ジルコニアなどが用いられる。
【0027】
このように、本実施形態の歯車10aは、歯部13等が、電鋳法を用いて金属材料により形成され、中間部15が、光透過性を有するセラミックス材料により形成されていることを特徴とする。
一般に、金属材料はセラミックス材料に比べて、曲げ強度や引張強度、延性、限界ひずみが高く、脆性が低い性質を有する。本実施形態の歯車10aは、他の部品との当接部分である歯部13等が金属材料により形成されているため、機械的強度を維持することができる。さらに、それ以外の大部分を占める中間部15が、光透過性を有するセラミックス材料により形成されているため、装飾性を高めることができる。したがって歯車10aの機械的強度を維持しつつ装飾性を高めることができる。
【0028】
(第1実施形態の第1変形例、時計用部品)
図3は、第1実施形態の第1変形例に係る時計用部品の説明図であり、図2のI−I線に相当する部分における断面図である。本変形例では、時計用部品として、歯車10bを例に挙げて説明する。
【0029】
図1に示す第1実施形態では、歯車10aの中間部15の外周形状および内周形状が円形状であったが、図3に示す本変形例では、歯車10bの中間部25の外周形状および内周形状が非円形状である点で異なっている。なお、図1および2に示す第1実施形態の歯車10aと同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0030】
中間部25は、歯車10bの回転軸に垂直な断面において、外周部に凹部25aが設けられ、内周部に凹部25bが設けられている。外周部の凹部25aは、半円弧状の形状を有し、アーム部25cの中心を通る径方向の延長線と中間部25の外周部との交差部に形成されている。内周部の凹部25bは、凹部25aと同様に半円弧状の形状を有し、アーム部25cの中心を通る径方向の延長線と中間部25の内周部との交差部に形成されている。上記の中間部25の外周部または内周部とアーム部25cの延長線との交差部は、外周部または内周部における他の箇所に比べて、中間部25を構成するセラミックス材料が広面積に配置されている。したがって、中間部25の強度を低下させることなく凹部25a,25bを形成することができる。
【0031】
歯部23の内周部には、中間部25の凹部25aに嵌合する凸部23aが形成されている。なお、後述する電鋳法によって歯部23が中間部25と一体に形成されるので、歯部23の凸部23aは中間部25の凹部25aを埋めるように形成される。
軸打込み部21の外周部には、中間部25の凹部25bに嵌合する凸部21aが形成されている。なお、歯部23と同様に、後述する電鋳法によって軸打込み部21が中間部25と一体に形成されるので、軸打込み部21の凸部21aは中間部25の凹部25bを埋めるように形成される。
本変形例において、凹部25aおよび凹部25b、並びに、凸部21aおよび凸部23aの形状は、半円弧状に限定されず、例えば矩形状や三角状の形状であってもよい。また、中間部25に凸部が形成され、それに合わせて軸打込み部21や歯部23に凹部が形成されてもよい。
【0032】
このように、本実施形態の本変形例における歯車10bの中間部25は、歯車10bの回転軸に垂直な断面において、外周形状および内周形状が非円形状である。
本変形例によれば、歯車10bに対する回転方向の外力印加時に、中間部25と軸打込み部21および歯部23との接触面において、滑りによる相対位置のずれが生じることがない。したがって、歯車10bが空回りすることを阻止できる。
【0033】
(第1実施形態、時計用部品の製造方法)
次に第1実施形態の時計用部品の製造方法について説明する。
図4〜9は、第1実施形態の歯車10aの製造方法を説明する工程図であって、図1のII−II線に相当する部分における断面図である。
本実施形態の歯車10aの製造方法は、導電膜33が形成された基板31の表面に、電鋳型39aおよびセラミックス材料で形成された中間部15(第二部材)を配置する工程と、電鋳型39aおよび中間部15から露出した導電膜33の表面に、電鋳法により金属材料で軸打込み部11および歯部13(第一部材)を形成する工程と、を備えている。
【0034】
まず、図4に示す導電膜33が形成された基板31の表面に、電鋳型39aおよびセラミックス材料で形成された中間部15を配置する。
具体的には、図4に示すように、シリコンやガラスなどの基板31の表面に、電鋳電極として導電膜33を形成する。導電膜33は、例えば金、銀、銅、ニッケルなどで構成されている。導電膜33の形成は、スパッタリングや蒸着、無電解めっきなどの方法により行うことができる。
次に図5に示すように、基板31上に中間部15を配置した状態で、電鋳型材料層としてレジスト層39を形成する。レジスト層39の層厚は、中間部15の厚さ以上となるように形成する。本実施形態では、レジスト層39として、ネガ型のフォトレジストが用いられる。
そして図6に示すように、所定のフォトマスク45を配置してレジスト層39を露光する。このとき、フォトマスク45の遮光パターン45aの形状および寸法は、平面視における軸打込み部11および歯部13の形状および寸法に対応している。そしてレジスト層39の現像を行うことで、図7に示すように、レジスト層39の感光部分により電鋳型39aが形成される。そして、この電鋳型39aと、中間部15と、基板31の表面に形成された導電膜33とによって、成形型41が形成される。
なお、本実施形態では基板31上に中間部15を配置した状態でレジスト層39を形成し、電鋳型39aと中間部15とを有する成形型41を形成したが、これに限られることはない。例えば、基板31上に中間部15を配置しない状態でレジスト層39を形成し、所定のフォトマスクを配置して露光および現像を行った後、基板31上に中間部15を配置して成形型41を形成してもよい。この場合、遮光パターンの形状および寸法は、平面視における歯車10aの形状および寸法に等しくなっている。
【0035】
次に、図7に示す電鋳型39aおよび中間部15から露出した導電膜33の表面に、電鋳法により金属材料で軸打込み部11および歯部13を形成する。
【0036】
図10および11は、歯部13等を形成するための電鋳装置50の構成を示す模式図である。
図10に示すように、電鋳装置50は、電鋳槽51と、電極53と、電気配線55と、電源部57とを有する。電鋳槽51には、電鋳液59が貯液されている。電極53は、電鋳液59に浸漬されている。電極53は、歯部13等と同一の金属材料を用いて形成されている。電気配線55は、第一配線55a及び第二配線55bを有している。第一配線55aは、電極53と電源部57の陽極側とを接続している。第二配線55bは、成形型41の導電膜33と電源部57の陰極側とを接続している。この構成より、電源部57の陽極側には電極53が接続され、陰極側には成形型41の導電膜33が接続される。電鋳液59は、電鋳材料に応じて選択される。例えばニッケルからなる電鋳部材を形成する場合には、スルファミン酸浴、ワット浴や硫酸浴等が用いられる。スルファミン酸浴を用いてニッケル電鋳を行う場合には、例えば電鋳槽51の中に電鋳液59としてスルファミン酸ニッケル水和塩を主成分とするスルファミン酸を入れる。
【0037】
電鋳装置50に成形型41をセットし、電源部57を作動させて、電極53と導電膜33との間に電圧を印加する。この動作により、電極53を構成するニッケルがイオン化して電鋳液59を移動し、電鋳液59内にて成形型41の導電膜33上に金属として析出する。所定時間が経過すると、図11に示すように、ニッケルが成長し、空間部43に歯部13等が形成される。本実施形態では、空間部43が埋まると共に、空間部43から少しはみ出す程度に歯部13等が成長したら、歯部13等の形成を終了する。
【0038】
次に図8に示すように、歯部13等と中間部15との上面の高さが面一状態になるように研磨を行う。具体的には、歯部13等が形成された成形型41を電鋳槽51から取り出した後、歯部13等が所望の厚み寸法となるように成形型41ごと研磨を行う。本実施形態では、成形型41の表面上に形成された歯部13等が除去されるように研磨を行い、歯部13等の上面と電鋳型39aの上面および中間部15の上面とが面一状態となるようにする。これにより、歯部13等が形成される。
【0039】
そして図9に示すように、電鋳型39aを溶解等によって除去し、歯車10aを基板31から剥離することで、図10に示すように、歯車10aが取り出される。歯車10aの取り出し方法としては、上記のような溶解に限られず、物理的な方法を用いてもよい。
【0040】
このように、本実施形態の歯車10aの製造方法は、導電膜33が形成された基板31の表面に、電鋳型39aおよびセラミックス材料で形成された中間部15を配置する工程と、電鋳型39aおよび中間部15から露出した導電膜33の表面に、電鋳法により金属材料で軸打込み部11および歯部13を形成する工程と、を備えている。
本実施形態の時計用部品の製造方法によれば、中間部がセラミックス材料により形成され、軸打込み部および歯部が電鋳法を用いて金属材料により形成されるので、機械的強度を維持しつつ装飾性の高い歯車を製造できる。また、電鋳型および中間部から露出した導電膜の表面に、電鋳法により金属材料で軸打込み部および歯部を形成するので、複雑な形状の軸打込み部および歯部でも、簡単かつ精度良く形成できる。
【0041】
(第2実施形態、時計用部品)
次に第2実施形態の時計用部品について説明する。
図12は、第2実施形態の時計用部品の説明図であり、図13のXII−XII線における断面図である。図13図12のXIII−XIII線における断面図である。本実施形態では、第1実施形態と同様に時計用部品として、歯車200を例に挙げて説明する。図1に示す第1実施形態では、軸打込み部11および歯部13が、歯車10aの回転軸方向から見て中間部15と重ならないように形成されているが、図12に示す第2実施形態では、軸打込み部201および歯部203が、歯車200の回転軸方向から見て中間部205と重なるように形成されている点で異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0042】
図12および13に示すように、本実施形態の歯車200は、軸打込み部201および歯部203が、歯車200の回転軸方向から見て中間部205と重なるように形成されている。
軸打込み部201は、中間部205の径方向の内側から回転軸方向の両側に向かって伸び、さらに中間部205の両面に沿って径方向の外側に向かって伸びている。これにより軸打込み部201は、中間部205の第一面205aと接触する第一接触部201aと、第二面205bと接触する第二接触部201bとを有している。第一接触部201aおよび第二接触部201bは、中間部205の内周に沿って全周に亘って形成されている。第一接触部201aおよび第二接触部201bは、歯車200の回転軸方向から見て、中間部205と重なるように形成されている。
歯部203は、中間部205の径方向の外側から回転軸方向の両側に向かって伸び、さらに中間部205の両面に沿って径方向の内側に向かって伸びている。これにより歯部203は、中間部205の第一面205aと接触する第一接触部203aと、第二面205bと接触する第二接触部203bを有している。第一接触部203aおよび第二接触部203bは、中間部205の外周に沿って全周に亘って形成されている。第一接触部203aおよび第二接触部203bは、歯車200の回転軸方向から見て、中間部205と重なるように形成されている。
【0043】
このように、本実施形態の歯車200は、軸打込み部201および歯部203が、歯車200の回転軸方向から見て中間部205と重なるように形成されていることを特徴とする。
本実施形態によれば、歯車200に回転軸方向の力が作用した場合でも、軸打込み部201と中間部205との回転軸方向における相対移動が、第一接触部201aおよび第二接触部201bによって規制される。同様に、歯部203と中間部205との回転軸方向における相対移動が、第一接触部203aおよび第二接触部203bによって規制される。したがって、軸打込み部201および歯部203から中間部205が分離して歯車200の回転軸方向に抜けることを阻止できる。
なお、本実施形態では、軸打込み部201と歯部203の両方が中間部205の第一面205aおよび第二面205bに接触しているが、接触部分を有するのは軸打込み部201と歯部203のいずれか一方であってもよい。また、軸打込み部201と歯部203が接触するのは、第一面205aまたは第二面205bのいずれか一面であってもよい。さらに、歯車200の回転軸方向から見た接触部分の形状は、周方向に沿って断続的な形状であってもよい。このとき、接触部分は周上3か所以上であることが望ましい。
【0044】
(第2実施形態、時計用部品の製造方法)
次に、第2実施形態の時計用部品の製造方法について説明する。
図14〜22は、第2実施形態の歯車200の製造方法を説明する工程図であって、図12のXIII−XIII線に相当する部分における断面図である。なお、以下には、軸打込み部201および歯部203に関する説明を「歯部203等」を用いて説明するが、軸打込み部201に関しても同様の工程を経ることとする。
【0045】
まず、図14に示す導電膜213が形成された基板211の表面に、第一レジスト層219を形成する。本実施形態では、第一レジスト層219として、ネガ型のフォトレジストが用いられる。
【0046】
そして所定のフォトマスク227を用いて露光および現像を行うことで、図15に示すように、第一レジスト層219の感光部分により第一電鋳型219aが形成される。なお、第一電鋳型219aと、基板211の表面に形成された導電膜213とによって、第一成形型223が形成される。
【0047】
さらに図16に示すように、第一成形型223に対して電鋳法を用いて金属材料を成長させて、歯部203等の第一半部203cを形成する。その後、第一成形型223を形成する第一電鋳型219aを溶解等によって除去し、図17に示す第一半部203cが配置された基板211を形成する。
【0048】
次に、図18に示すように、第一半部203c上に中間部205を配置した状態で、第二レジスト層221を形成する。このとき、第一半部203cの中心軸と、中間部205の中心軸が略一致するように中間部205を配置する。第二レジスト層221は、第一半部203c上に配置した中間部205を完全に覆うように形成する。本実施形態では、第二レジスト層221として、第一レジスト層219と同様に、ネガ型のフォトレジストが用いられる。
【0049】
ここで、図19に示す所定のフォトマスク227を用いて露光を行う。このとき、上部から見てフォトマスク227の遮光パターン227aが第一半部201cおよび203cの形状と重なるようにフォトマスク227を配置する。
【0050】
そして、第二レジスト層221の現像を行うことで、図20に示すように第二レジスト層221の感光部分により第二電鋳型221aが形成される。なお、第二電鋳型221aと、中間部205と、基板211の上に形成された第一半部203cとによって、第二成形型225が形成される。
【0051】
このように形成される第二成形型225に対して電鋳法を用いて金属材料を成長させ、図21に示すように、第一半部203cおよび中間部205と一体に、歯部203等の第二半部203dを形成する。こうして、第一半部203cおよび第二半部203dにより、第一接触部および第二接触部を備えた歯部203等が形成される。
【0052】
その後は、第1実施形態と同様に、図22に示す歯車200を第二成形型225および基板211から取り出す。
【0053】
このように、本実施形態の時計用部品の製造方法によれば、回転軸方向から見て軸打込み部および歯部が中間部と重なるように形成された歯車を、簡単かつ精度良く形成することができる。
【0054】
(第3実施形態、時計用部品)
次に第3実施形態の時計用部品について説明する。
図23は、第3実施形態の時計用部品の平面図であり、図24図23のXXIV−XXIV線における断面図である。なお、図23は平面図であるが、わかりやすくするために便宜上ハッチングを付している。本実施形態では、第1実施形態と同様に、時計用部品として歯車300を例に挙げて説明する。図1に示す第1実施形態では、軸打込み部11および歯部13が、それぞれ独立して形成されているが、図23に示す第3実施形態では、軸打込み部301および歯部303が、スポーク305を介して一体的に形成されている点で異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0055】
図23および24に示すように、本実施形態の歯車300は、軸打込み部301と歯部303とを連結するスポーク305を有している。
スポーク305は、軸打込み部301から歯部303に向かって先細るように形成されている。スポーク305は複数本(本実施形態では10本)が形成され、歯車300の周方向に略等角度間隔に配置されている。歯車300の回転軸方向におけるスポーク305の厚さは、軸打込み部301および歯部303(以下、「歯部303等」という場合がある。)の厚さより薄く形成されている。
中間部307は、円板状に形成され、中央に円形の貫通孔を有している。なお中間部307の形状は、図1の第1実施形態における歯車10aの中間部15と同様に貫通部を有してもよい。歯車300の回転軸方向における中間部307の厚さは、歯部303等の厚さより薄く形成されている。
そして、歯車300の回転軸方向における一方側に中間部307が配置され、他方側にスポーク305が配置されている。すなわち、スポーク305と中間部307とが回転軸方向に重なって形成されている。これにより、スポーク305と中間部307を合わせた厚さが、歯部303等と同じ厚さになっている。
【0056】
このように、歯車300は、軸打込み部301と歯部303とを連結するスポーク305を有することを特徴とする。
本実施形態によれば、歯車300は、軸打込み部301と歯部303とを連結するスポーク305を有しているので、軸打込み部301と歯部303との相対位置にずれが生じることがなく、歯車300の空回りを阻止することができる。また、歯車300の回転に対する機械的強度を向上させることができる。さらに、スポーク305を配置することで、歯車300の装飾性をより高めることができる。
【0057】
(第3実施形態、時計用部品の製造方法)
次に、第3実施形態の時計用部品の製造方法について説明する。
図25〜28は、第3実施形態の歯車300の製造方法を説明する工程図であって、図23のXXIV−XXIV線に相当する部分における断面図である。スポーク305は、電鋳法により軸打込み部301および歯部303と一体的に形成されている。
【0058】
まず、第1実施形態の歯車10aの製造方法と同様に、図25に示す導電膜313が形成された基板311上に中間部307を配置した状態で、レジスト層319を形成する。このとき、レジスト層319の層厚は、図23および24に示す歯車300の完成時の厚さ以上となるように形成する。
【0059】
次に、所定のフォトマスク325を用いて露光および現像を行うことで、図26に示すように、レジスト層319の感光部分により電鋳型319aが形成される。なお、電鋳型319aと、基板311の表面に形成された導電膜313と、中間部307とによって、成形型321が形成される。
【0060】
成形型321の形成が完了した後、図27に示すように、電鋳法により金属材料を成長させ、軸打込み部301と、歯部303と、スポーク305を中間部307と一体に形成する。
【0061】
その後は、第1実施形態と同様に、図28に示す歯車300を成形型321および基板311から取り出す。
【0062】
このように、本実施形態の時計用部品の製造方法によれば、スポークと中間部とが回転軸方向に重なって形成される歯車を、簡単かつ精度良く形成することができる。
【0063】
(第4実施形態、時計用部品)
次に第4実施形態の時計用部品について説明する。
図29は、第4実施形態の時計用部品の説明図であり、図30のXXIX−XXIX線における断面図である。図30図29のXXX−XXX線における断面図である。本実施形態では、時計用部品として、てんぷ400を例に挙げて説明する。
【0064】
図29および30に示すように、本実施形態におけるてんぷ400は、てん真嵌合部401と、てん輪403と、てん真嵌合部401とてん輪403との間に設けられ、てん真嵌合部401とてん輪403とを連結する中間部405と、を備える。
【0065】
図29および30に示すように、てんぷ400は、中心部に配置されたてん真嵌合部401と、周縁部に配置されたてん輪403と、を備えている。
てん真嵌合部401は、てんぷ400の回転軸と一致する中心軸を有するリング状に形成されており、中心軸に沿って貫通孔407を有する。貫通孔407の内部には、てん真(不図示)が嵌合されるようになっている。
てん輪403は、てんぷ400の回転軸と一致する中心軸を有するリング状に形成されている。てん輪403には、バランス調整のためにチラネジ(不図示)が螺合される。なお、てん真嵌合部401とてん輪403(以下、「てん輪403等」という場合がある。)は、回転軸方向については一様な形状を有する。
てん輪403等は、電鋳法を用いて金属材料により形成されている。金属材料としては、第1実施形態の歯車10aと同様に、一例としてニッケルやニッケル‐鉄合金、ニッケル‐コバルト合金などが用いられる。てん真嵌合部401およびてん輪403は、電鋳法によって中間部405と一体に形成されている。
【0066】
また、てんぷ400は、てん真嵌合部401とてん輪403との間に設けられ、てん真嵌合部401とてん輪403とを連結する中間部405を有している。
中間部405は、てん真嵌合部401の外周に沿った内側円環部405aと、てん輪403の内周に沿った外側円環部405bと、内側円環部405aと外側円環部405bとを連結するアーム部405cとが一体的に形成されている。なお、中間部405は回転軸方向については一様な形状を有する。
アーム部405cは、てんぷ400の周方向に沿って略等角度間隔に複数本(本実施形態では4本)形成されている。各アーム部405cに挟まれた領域には、貫通部409が設けられている。なお本実施形態の中間部405は、略等角度間隔に形成されたアーム部405cおよび貫通部409を有するが、この形状に限られない。例えば中間部405は本実施形態のような貫通部409を有さず、中心に円形の貫通孔を有する一様な厚さで形成された円板状の形状であってもよい。
【0067】
中間部405は、光透過性を有するセラミックス材料で形成されている。セラミックス材料としては、一例としてルビーやサファイア、ジルコニアなどが用いられる。
【0068】
このように、本実施形態のてんぷ400は、てん真嵌合部401とてん輪403が電鋳法を用いて金属材料により形成され、中間部405が、光透過性を有するセラミックス材料で形成されていることを特徴とする。
本実施形態のてんぷ400は、他の部品との当接部分であるてん輪403等が金属材料により形成されているため、機械的強度を維持することができる。さらにそれ以外の中間部405が、光透過性を有するセラミックス材料により形成されているため、装飾性を高めることができる。したがって、てんぷの機械的強度を維持しつつ、装飾性を高めることができる。
【0069】
(時計、ムーブメント)
次に、機械式の腕時計(請求項の「時計」に相当。)およびこの腕時計に組み込まれたムーブメント(請求項の「ムーブメント」に相当。)について説明する。
【0070】
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側、すなわち文字板と反対の側をムーブメントの「表側」と称する。
【0071】
図31は、実施形態に係る時計1の外観図である。
図31に示すように、本実施形態の時計1のコンプリートは、図示しないケース裏蓋、およびガラス2からなる時計ケース3内に、ムーブメント100と、時に関する情報を示す目盛り等を有する文字板4と、時を示す時針5、分を示す分針6および秒を示す秒針7を含む指針と、を備えている。文字板4には、日付を表す数字を明示させる日窓4aが開口している。これにより、時計1は、時刻に加え、日付を表示することが可能とされている。
【0072】
図32は、ムーブメント100の表側の平面図である。なお、図32では、図面を見やすくするため、ムーブメント100を構成する時計用部品のうち一部の図示を省略しているとともに、各時計用部品を簡略化して図示している。
【0073】
図32に示すように、ムーブメント100は、このムーブメント100の基板を構成する地板102を有している。地板102の巻真案内穴102aには、巻真110が回転可能に組み込まれている。
【0074】
香箱車120は、地板102および香箱受160に対して回転可能に支持されている。また、二番車124、三番車126、四番車128およびがんぎ車130は、地板102および輪列受162に対してそれぞれ回転可能に支持されている。これら香箱車120、二番車124、三番車126および四番車128は、表輪列を構成する。この二番車124、三番車126、および四番車128のうち少なくとも一つに、前述した実施形態の歯車が採用されている。
【0075】
表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置は、がんぎ車130、アンクル142およびてんぷ140により構成されている。
がんぎ車130の外周には歯が形成されている。アンクル142は、地板102とアンクル受(不図示)との間で回転可能に支持されており、一対のつめ石を備えている。アンクル142の一方のつめ石が、がんぎ車130の歯に係合した状態で、がんぎ車130は一時的に停止している。
てんぷ140は、てんぷ受(不図示)と地板102との間において回転可能に支持されており、一定周期で往復回転することにより、がんぎ車130の歯に、アンクル142の一方のつめ石および他方のつめ石を、交互に係合および解除させている。これにより、がんぎ車130を一定速度で脱進させている。このてんぷ140に、前述した実施形態のてんぷが採用されている。
【0076】
上記構成によれば、前述した実施形態の歯車およびてんぷを備えているので、機械的強度を維持しつつ装飾性の高いムーブメントおよび時計を提供することができる。
【0077】
なお、この発明は上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態においては、時計用部品の一例として、歯車やてんぷの構成を例に挙げて説明したが、時計用部品はがんぎ車やアンクルなどであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…時計 10a、10b、200、300…歯車(時計用部品) 11、201、301…軸打込み部(第一部材) 13、203、203…歯部(第一部材) 15、25、205、307、405…中間部(第二部材) 31、211、311…基板 33、213、313…導電膜 39a、219a、221a、319a…電鋳型 100…ムーブメント 305…スポーク 400…てんぷ(時計用部品) 401…てん真嵌合部(第一部材) 403…てん輪(第一部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30
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図32