特許第6249481号(P6249481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249481
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ウォータジャケットスペーサ
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/14 20060101AFI20171211BHJP
   F02F 1/10 20060101ALI20171211BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   F02F1/14 A
   F02F1/10 D
   F01P3/02 A
   F01P3/02 P
   F02F1/14 D
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-12033(P2014-12033)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-140657(P2015-140657A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100143926
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 公敏
(74)【代理人】
【識別番号】100149504
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 周子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 耕治
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−256661(JP,A)
【文献】 特開2009−243414(JP,A)
【文献】 特開2002−013440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/14
F02F 1/10
F01P 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックのウォータジャケットに挿入され、ウォータジャケット内の冷却水の流通容量を調整するウォータジャケットスペーサであって、
スペーサ本体と、ウォータジャケットのシリンダボア側内壁への冷却水の回り込みを抑制する整流手段とを含み、
前記整流手段は、前壁部、底壁部及び少なくとも左右側壁部の一方の側壁部を備え、上端が開口したポケット形状をなし、前記スペーサ本体におけるウォータジャケットの冷却水導入口側の面であって当該冷却水導入口より深さ方向下部に且つ前記冷却水導入口側へ突出するように設けられており、
前記ウォータジャケットスペーサと、前記ウォータジャケットの外側壁部又は内側壁部の少なくとも一方との間に、隙間が形成されるように組付けられることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
【請求項2】
請求項1に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、
前記整流手段が、前記冷却水導入口の近傍に設けられていることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、
前記整流手段における、前記ウォータジャケットの深さ方向に直交し、且つ前記スペーサ本体の冷却水導入口側の面に沿った幅方向長さが、前記冷却水導入口の同幅方向長さより大とされていることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、
前記整流手段は、その一部が前記冷却水導入口内に没入するよう形成されていることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、
前記スペーサ本体は、前記ウォータジャケットの深さ方向の略全体に及ぶように構成されていることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関におけるシリンダブロックのウォータジャケットに挿入されるウォータジャケットスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、特に、水冷式エンジンには、シリンダブロックにおけるシリンダボア回りにウォータジャケットが形成され、このウォータジャケットに冷却水(不凍液が混合された冷却水も含む)が流通され、エンジンの作動に伴い昇温するシリンダボア壁の冷却がなされる。このようなウォータジャケット内には、ウォータジャケットスペーサが挿入され、冷却水の流通容量を調整してシリンダボア壁の冷却の適正化がなされる(特許文献1,2参照)。このように、ウォータジャケットスペーサによってシリンダボア壁の冷却の適正化がなされるが、ウォータジャケットへの冷却水の導入口付近では、ウォータジャケットスペーサの背後(シリンダボア壁側)に回り込んだ冷却水によって、シリンダボア壁の下部が過冷却状態となることがある。このように、冷却水の導入口に対向するシリンダボア壁下部が過冷却されると、エンジンオイルの粘度が上昇したり、シリンダボア壁の変形が生じ、ピストンリングとシリンダライナーとの摺動抵抗が大きくなり、燃費の悪化に繋がる。そのため、特許文献1,2では、冷却水導入口付近(冷却水導入口に対向する部位)のシリンダボア壁の過冷却を防止するための構造が提案されている。
【0003】
特許文献1には、前記のような過冷却を防止するための構造として、シリンダボア壁とウォータジャケットスペーサとの間に水流を発生させないシール構造、シリンダボア壁とウォータジャケットスペーサとが直接密着した構造、シリンダボア壁に対してウォータジャケットスペーサを付勢し或いは押し付ける構造、さらには、冷却水導入口付近のシリンダボア壁の熱伝導率を低くする構造が開示されている。また、特許文献2には、ウォータジャケットスペーサにおける冷却水導入口付近にシリンダボア壁に沿って上下に延びる延長部を設け、さらには、この延長部から折れ曲がって延びる庇を設けて冷却水のシリンダボア壁側への回り込みを抑制する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−256661号公報
【特許文献2】特開2007−263120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された前記構造のうち、シール構造、密着構造、付勢或いは押付け構造の場合、振動や経時的なへたり等によって、これらの構造が安定的に維持できなくなる懸念があり、前記過冷却の防止機能も経時的に持続し難くなることが予想される。また、冷却水導入口付近のシリンダボア壁の熱伝導率を低くする構造の場合、シリンダブロック自体に熱伝導率を低くする処置を施す必要があり、現実的に可能かどうか定かではない。さらに、特許文献2に開示された冷却水の回り込みを抑制する構造の場合、延長部や庇だけでは、充分な冷却水の回り込み抑制機能が発揮されるとは考え難い。
【0006】
本発明は、前記実情に鑑みなされたもので、簡単な構造でありながら冷却水導入口付近のシリンダボア壁の過冷却を効果的に抑制することができるウォータジャケットスペーサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るウォータジャケットスペーサは、シリンダブロックのウォータジャケットに挿入され、ウォータジャケット内の冷却水の流通容量を調整するウォータジャケットスペーサであって、スペーサ本体と、ウォータジャケットのシリンダボア側内壁への冷却水の回り込みを抑制する整流手段とを含み、前記整流手段は、前壁部、底壁部及び少なくとも左右側壁部の一方の側壁部を備え、上端が開口したポケット形状をなし、前記スペーサ本体におけるウォータジャケットの冷却水導入口側の面であって当該冷却水導入口より深さ方向下部に且つ前記冷却水導入口側へ突出するように設けられており、前記ウォータジャケットスペーサと、前記ウォータジャケットの外側壁部又は内側壁部の少なくとも一方との間に、隙間が形成されるように組付けられることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るウォータジャケットスペーサによれば、冷却水導入口からウォータジャケット内に流入した冷却水は、スペーサ本体の冷却水導入口側の面に当たった後、一部がポケット形状の整流手段に入り、その後整流手段から流出してスペーサ本体に沿ってウォータジャケット内の深さ方向上方に向かって拡散するように流通する。従って、スペーサ本体の下端縁からシリンダボア壁側に回り込む冷却水の量が少なくなり、冷却水導入口に対向するシリンダボア壁下部の過冷却の抑制が効果的になされる。また本発明に係るウォータジャケットスペーサによれば、上記構成のポケット形状の整流手段によって、ウォータジャケットの深さ方向下方へ流れる冷却水の水流の向きを変えるため、前記スペーサ本体の下端縁からシリンダボア壁側への冷却水の回り込みがより効果的に抑制される。
【0010】
本発明に係るウォータジャケットスペーサにおいて、前記整流手段が、前記冷却水導入の近傍に設けられているものとしても良い。
これによれば、冷却水導入口からウォータジャケット内に流入する冷却水が、そのまま、スペーサ本体に沿って深さ方向下部に流通することが抑制され、スペーサ本体の下端縁から、シリンダボア壁側へ回り込む冷却水の量がより少なくなる。これによって、冷却水導入口に対向するシリンダボア壁下部の過冷却の抑制がより効果的になされる。
【0011】
本発明に係るウォータジャケットスペーサにおいて、前記整流手段における、前記ウォータジャケットの深さ方向に直交し、且つ前記スペーサ本体の冷却水導入口側の面に沿った幅方向長さが、前記冷却水導入口の同幅方向長さより大とされているものとしても良い。
これによれば、冷却水導入口から流入し、ウォータジャケットの深さ方向下方へ流れる冷却水が整流手段により流路変更する量が多くなり、前記冷却水の回り込み及びシリンダボア壁下部の過冷却抑制がより効果的になされる。
【0012】
本発明に係るウォータジャケットスペーサにおいて、前記整流手段は、その一部が前記冷却水導入口内に没入するよう形成されているものとしても良い。
これによれば、冷却水導入口からウォータジャケット内に流入しようとする冷却水が、ウォータジャケット内に拡散する前に、整流手段により上方へ流路変更する量が多くなり、前記冷却水の回り込み及びシリンダボア壁下部の過冷却抑制がより効果的になされる。
【0013】
本発明に係るウォータジャケットスペーサにおいて、前記スペーサ本体は、前記ウォータジャケットの深さ方向の略全体に及ぶように構成されているものとしても良い。
これによれば、ウォータジャケットスペーサがウォータジャケットの深さ方向の所定の位置に安定的に保持される。また、スペーサ本体の下端縁からスペーサ本体のシリンダボア壁側への冷却水の回り込み量をより少なくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のウォータジャケットスペーサによれば、簡単な構造でありながら冷却水導入口付近のシリンダボア壁の過冷却を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るウォータジャケットスペーサが適用される自動車用エンジンにおけるシリンダブロックの一例を概略的に示す平面図である。
図2】本発明に係るウォータジャケットスペーサの別形態を示す図1と同様図である。
図3】本発明に係るウォータジャケットスペーサの第一の実施形態であって、図1におけるA−A線矢視部又は図2におけるA´−A´線矢視部の拡大断面図である。
図4】(a)は図3におけるB−B線矢視断面図であり、(b)は(a)におけるC線に沿ったウォータジャケットスペーサの矢視図である。
図5】(a)は同実施形態の第1の変形例を示す図4(a)と同様図であり、(b)は(a)のD−D線矢視断面図である。
図6図5(a)におけるE線に沿ったウォータジャケットスペーサの矢視図である。
図7】同実施形態の第2の変形例を示す図4(a)と同様図である。
図8】(a)は図7におけるF線に沿ったウォータジャケットスペーサの矢視図であり、(b)はその変形例を示す同様図である。
図9】(a)(b)は同実施形態に共通する別例を示す図5(b)と同様図である。
図10】(a)は本発明に係るウォータジャケットスペーサの第二の実施形態を示す図4(a)と同様図であり、(b)は(a)のG−G線矢視断面図である。
図11】(a)は同実施形態の第1の変形例を示す図4(a)と同様図であり、(b)は(a)のH−H線矢視断面図であり、(c)は(a)のJ線に沿ったウォータジャケットスペーサの矢視図である。
図12図11に示す例の変形例を示し(a)は図11(a)と同様図であり、(b)は(a)のK−K線矢視断面図であり、(c)は(a)のL線に沿ったウォータジャケットスペーサの矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るウォータジャケットスペーサが適用される自動車用エンジンのシリンダブロックの一例を概略的に示している。また、図2は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの別形態を示している。図1に示すウォータジャケットスペーサは、ウォータジャケット内に部分的に挿入される部分スペーサであって、冷却水導入口に対向するように位置付けられている。また、図2に示すウォータジャケットスペーサは、環状のウォータジャケットの全体形状に沿うよう形成され、ウォータジャケットの全体に挿入される。図3は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第一の実施形態であって、図1におけるA−A線矢視部又は図2におけるA´−A´線矢視部の拡大断面図である。以下では、図1及び図2に示すウォータジャケットスペーサに共通する実施形態として説明する。
【0017】
図1図2及び図3に示すシリンダブロック1は、3気筒の自動車用エンジン(内燃機関)100を構成するものであり、3個のシリンダボア2…が直列的に配列されている。1a…はシリンダヘッド(不図示)をシリンダブロック1に合体締結させるためのボルト(不図示)用挿通孔である。シリンダボア2の内面にはシリンダライナー3が嵌合一体とされ、このシリンダライナー3内に軸方向(矢印a方向)に沿って往復摺動可能にピストン4が収納されている。ピストン4の周体にはシリンダライナー3の内面に接する複数のピストンリング41…が嵌装され、エンジンオイル(不図示)を介してピストン4がピストンリング41と共にシリンダライナー3の内面を円滑に摺動するようになされている。3個のシリンダボア2…の回りには、オープンデッキタイプのウォータジャケット5が一連に形成され、シリンダブロック1には、このウォータジャケット5に通じる冷却水(不凍液も含む)導入口6と冷却水排出口7とが設けられている。冷却水排出口7は不図示のラジエータに配管接続され、ラジエータのアウトレット側は、ウォータポンプ(不図示)を介して冷却水導入口6に配管接続される。これによって、ウォータジャケット5とラジエータとの間で冷却水が循環するように構成される。冷却水導入口6には、前記循環用の配管8を接続するためのソケット9がフランジ部9aを介し、不図示のボルトによって装着される。冷却水排出口7にも同様のソケットが装着されるが、図示を省略する。
なお、シリンダヘッドにもウォータジャケットが設けられる場合は、シリンダブロック1のウォータジャケット5と、シリンダヘッドのウォータジャケットとが連通するよう構成される。この場合は、シリンダブロック1には前記冷却水排出口7がなくても良く、シリンダヘッドに冷却水排出口が設けられ、これにラジエータに通じる配管が接続される。また、以下において、上及び下なる用語は、図1及び図2の紙面手前側、即ち、ウォータジャケット5の開口部側を上とし、図1及び図2の紙面奥側、即ち、ウォータジャケット5の開口部とは反対側(底部側)を下として用いている。図3おいては、矢印aに沿った紙面上側を上、矢印aに沿った紙面下側を下とする。矢印aは、ウォータジャケット5の深さ方向に相当し、以下では深さ方向aと言う。
【0018】
ウォータジャケット5は、底部5aと、外側壁部5bと、シリンダボア2側の内側壁部(シリンダボア壁)5cとにより、上端が開口するオープンデッキタイプに構成される。その上端開口部5dは、シリンダブロック1と不図示のシリンダヘッドとの間に介在されるシリンダヘッドガスケット10によって封止される。ウォータジャケット5には、その上端開口部5dよりウォータジャケットスペーサ11が挿入される。図1に示すウォータジャケットスペーサ11は、ウォータジャケット5内の冷却水導入口6に対向する位置に挿入される非環状の部分スペーサである。また、図2に示すウォータジャケットスペーサ11は、ウォータジャケット5の形状に沿った環状のスペーサである。両ウォータジャケットスペーサ11は、いずれも樹脂成型体からなるスペーサ本体12と、スペーサ本体12におけるウォータジャケット5の冷却水導入口6側に向く面12aであって冷却水導入口6の下部近傍に位置するように設けられるポケット形状の整流手段13とからなる。スペーサ本体12と整流手段13とは同じ樹脂による一体の成型体からなる。図例では、スペーサ本体12は、ウォータジャケット5の上端開口部5dから底部5aに亘る深さ方向aの略全体に及ぶように構成されているが、少なくともスペーサ本体12の上端が冷却水導入口6の上端縁より上の位置にあれば良い。
【0019】
本実施形態のウォータジャケットスペーサ11について、図4(a)(b)をも参照してさらに詳細に説明する。図4(a)(b)に示すウォータジャケットスペーサ11は部分スペーサであることを示しているが、以下では、図2に示す環状スペーサにも共通するものとして説明する。当該ウォータジャケットスペーサ11を構成するポケット形状の整流手段13は、冷却水導入口6の下部近傍に位置するように設けられ、前壁部13a、底壁部13b及び左右の側壁部13c,13dを備え、上端が開口する箱形形状に形成されている。そして、整流手段13のウォータジャケット5の深さ方向aに直交し、且つスペーサ本体12の冷却水導入口6側の面(以下、外側面と言う)12aに沿った幅方向長さdが、冷却水導入口6の同幅方向長さd1より大とされている。また、この整流手段13の上端開口部は、底壁部13bより前記幅方向に広がるように形成されている。図4(b)における2点鎖線は、冷却水導入口6のウォータジャケット5側の開口縁部の形状を示している。さらに具体的には、整流手段13を構成する底壁部13bは、外側面12aから外側面12a及び深さ方向aに直交するよう延出されている。側壁部13c,13dは、外側面12aに略直交するとともに、それぞれ、底壁部13bの左右端部から起立している。前壁部13aは、底壁部13b及び側壁部13c,13dに連結されるとともに、外側面12aに対向するよう配置されている。側壁部13c,13dは、底壁部13bに向かうにつれてその対向幅が前記幅方向に狭くなるように傾斜している。図例では、前壁部13a及び側壁部13c,13dの上端縁は、冷却水導入口6のウォータジャケット5側の開口縁部における下辺部の下部近傍に位置している方が望ましいが、当該下辺部と同位置又は若干上方に突出していても良い。また、図例では、前壁部13aは、底壁部13bに対して直立しているが、整流手段13の上端開口部が広がるように斜めに起立したものでも良い。
【0020】
前記のような構成のウォータジャケットスペーサ11が挿入されたシリンダブロック1において、冷却水が、循環用配管8からソケット9及び冷却水導入口6を経て、矢印bに示すように、ウォータジャケット5内に導入される。ウォータジャケット5内に導入された冷却水は、スペーサ本体12の外側面12aに当たり、当該外側面12aに沿ってウォータジャケット5内を拡散する。このようにウォータジャケット5内を拡散する冷却水によって、シリンダボア壁5cの温度上昇が抑えられる。特に、深さ方向aの上方、或は、側方に向かう冷却水が、スペーサ本体12の背面側に回り込み、燃焼室側のシリンダボア壁5cの冷却がなされる。また、冷却水の一部は、矢印b1に示すように、スペーサ本体12の外側面12aに当たるとともに整流手段13のポケット空所内に流入し、その後整流手段13から流出してスペーサ本体12に沿ってウォータジャケット内の深さ方向aの上方に向かって拡散するように流通する。従って、スペーサ本体12の下端縁12bからシリンダボア壁5c側に回り込む冷却水の量が少なくなり、冷却水導入口6に対向するシリンダボア壁5cの下部の過冷却の抑制が効果的になされる。
【0021】
本実施形態では、整流手段13の幅方向長さdが、冷却水導入口6の同幅方向長さd1より大とされているから、冷却水導入口6から下方に向かおうとする冷却水の大半が整流手段13に流入して矢印b1のように流通し、前記回り込みの抑制がより効果的になされる。このようにウォータジャケット5の深さ方向aの下方へ流れる冷却水のうちの整流手段13により流路変更する量が多くなり、冷却水はウォータジャケット5内に拡散して流通し、排出口7から排出されてラジエータに向け給送される。冷却水がウォータジャケット5内を流通する間、冷却が必要なシリンダブロック1の上部(シリンダヘッドに近い側、即ち、燃焼室側)のシリンダボア壁5cが適度に冷却され、下部のシリンダボア壁5cの過冷却が抑制される。従って、シリンダライナー3の変形等を来さず、ピストン4の円滑な上下動がなされる。また、スペーサ本体12は、ウォータジャケット5の深さ方向aの略全体に及ぶように構成されているから、ウォータジャケットスペーサ11がウォータジャケット5の深さ方向aの所定の位置に安定的に保持される。また、スペーサ本体12の下端縁12bからスペーサ本体12のシリンダボア壁5c側への冷却水の回り込み量をより少なくすることができる。
【0022】
図5(a)(b)及び図6は、前記実施形態の第1の変形例を示す。以下において、図3図4に示す例と共通する部分には同一の符合を付し、一部についてはその説明を省略する。
図5(a)(b)及び図6に示す例では、ポケット形状の整流手段13が、前記例と同様に、前壁部13a、底壁部13b及び左右の側壁部13c,13dを備え、上端が開口する箱形形状に形成されている。しかし、前壁部13a、底壁部13b及び左右の側壁部13c,13dが全て曲面形状をなすように形成されている点で、図3及び図4に示す例と異なる。この例でも、整流手段13が、前記例と同様に機能し、冷却水導入口6から下方に向かおうとする冷却水の大半が整流手段13に流入して矢印b1のように流通し、スペーサ本体12の下端縁12bからシリンダボア壁5c側に回り込む冷却水の量が抑えられる。また、各壁部13a,13b,13c,13dが曲面形状をなすことにより、整流手段13に流入して冷却水の前記流路変更を伴った流通が円滑になされる。
【0023】
図7及び図8(a)(b)は、前記実施形態の第2の変形例を示す。この例では、冷却水の循環用配管8がシリンダブロック1の外側部に沿うように配設され、図示を省略するソケット9(図1〜3参照)を介して冷却水導入口6に接続されている。冷却水導入口6は、その流れ中心がシリンダブロック1に対して平面視して斜めに形成されている。即ち、冷却水の流入方向も矢印bのように冷却水導入口6の流れ中心に倣って斜めになるように形成されている。そして、ポケット形状の整流手段13は、前壁部13a、底壁部13b及び右側壁部13dを備えるが、左側壁部13c(図3,4参照)がなしとされている。図8(b)の例では、前壁部13aの上辺部に切欠部13aaが形成されており、冷却水導入口6が、この切欠部13aaの上部近傍に位置するように整流手段13が構成されている。これらの例では、斜めに導入される冷却水の一部が、整流手段13に流入するが、流入した冷却水の大半は、矢印b1に示すように、前壁部13a、底壁部13b及び右側壁部13dによって、整流手段13から流出してスペーサ本体12に沿ってウォータジャケット内の深さ方向aの上方に向かって拡散するように流通する。従って、スペーサ本体12の下端縁12bからシリンダボア壁5c側に回り込む冷却水の量が少なくなり、冷却水導入口6に対向するシリンダボア壁5cの下部の過冷却の抑制が効果的になされる。この例の場合、冷却水が斜めに導入されるため、左側壁部13cがなくても、前記と同様に冷却水の整流機能が発揮されるが、図3及び図4に示す例のように左右の側壁部13c,13dがあれば、より効果的な整流機能が得られる。なお、図例では、左側壁部13cをなしとしているが、冷却水導入口6の流れ中心の向きによっては、左側壁部13cに代えて右側壁部13dをなしとしても良い。
【0024】
図9(a)(b)は、第一の実施形態に共通する別例を示す。これらの例では、冷却水導入口6が、エンジンブロック1の上端部に形成された切欠凹部6aとシリンダヘッドガスケット10とにより構成されている。そして、ウォータジャケットスペーサ11を構成するポケット形状の整流手段13は、図3及び図4に示す例と同様に、冷却水導入口6の下部近傍に位置するように設けられ、前壁部13a、底壁部13b及び左右の側壁部13c,13dを備え、上端が開口する箱形形状に形成されている。但し、左側壁部13cは、図面上表れていないが、図7に示す例のように、冷却水導入口6が平面視して斜めに形成されている場合は、左側壁部13cをなしとすることも可能である。
【0025】
図9(a)の例では、スペーサ本体12が、ウォータジャケット5の上端開口部5dから底部5a(図3参照)に亘る深さ方向aの略全体に及ぶように構成されている。また、図9(b)の例では、スペーサ本体12が、ウォータジャケット5の上方部にのみ位置するように構成されている。これらの例において、冷却水導入口6からウォータジャケット5内に導入された冷却水は、スペーサ本体12の外側面12aに当たり、当該外側面12aに沿ってウォータジャケット5内を拡散し、矢印bで示すように、スペーサ本体12の上端縁12cから、スペーサ本体12の背面側に回り込む。これによって、燃焼室側のシリンダボア壁5cの冷却が効率的になされる。また、冷却水の一部は、矢印b1に示すように、スペーサ本体12の外側面12aに当たるとともに整流手段13のポケット空所内に流入し、その後整流手段13から流出してスペーサ本体12に沿ってウォータジャケット5内の深さ方向aの上方に向かって拡散するように流通する。従って、ウォータジャケット5の下方に向かう冷却水の量が少なくなり、冷却水導入口6に対向するシリンダボア壁5cの下部の過冷却の抑制が効果的になされる。
この例における整流手段13を、図5図8に示す例の整流手段13に代替することはもとより可能である。
【0026】
図10は本発明に係るウォータジャケットスペーサの第二の実施形態を示し、図11は同実施形態の変形例を示す。図12図11に示す例の変形例を示す。これらの例は、整流手段13の一部が冷却水導入口6の一部に没入されている点で共通する。
図10(a)(b)に示す例において、シリンダブロック1の上端部に段差形状の切欠凹部6b,6cが形成され、この切欠凹部6b,6cとシリンダヘッドガスケット10とにより冷却水導入口6が構成されている。切欠凹部6b,6cのうち、切欠凹部6cがウォータジャケット5側に位置し、切欠凹部6bより低く形成されている。本実施形態のウォータジャケットスペーサ11も、前記例と同様に樹脂成型体からなるスペーサ本体12と、スペーサ本体12に一体に形成されたポケット形状の整流手段13とからなる。整流手段13は、スペーサ本体12におけるウォータジャケット5の冷却水導入口6側に向く面12aであって、冷却水導入口6より深さ方向aの下部近傍(冷却水導入口6の下半部)に位置するように設けられる。そして、整流手段13は、前壁部13a、底壁部13b及び左右の側壁部13c,13dを備え、上端が開口する箱形形状に形成され、先側の一部が、冷却水導入口6、具体的には冷却水導入口6を構成する切欠凹部6cに没入するように構成されている。
【0027】
このような構成のウォータジャケットスペーサ11が挿入されたシリンダブロック1において、冷却水が、冷却水導入口6から、矢印bに示すように、ウォータジャケット5内に導入される。ウォータジャケット5内に導入された冷却水は、スペーサ本体12の外側面12aに当たり、当該外側面12aに沿ってウォータジャケット5内を拡散し、スペーサ本体12の上端縁12cから、スペーサ本体12の背面側に回り込む。これによって、燃焼室側のシリンダボア壁5cの冷却が効率的になされる。また、冷却水の一部は、矢印b1に示すように、スペーサ本体12の外側面12aに当たるとともに整流手段13のポケット空所内に流入し、その後整流手段13から流出してスペーサ本体12に沿ってウォータジャケット内の深さ方向aの上方に向かって拡散するように流通する。特に、整流手段13が、その一部が冷却水導入口6に没入するように形成されているから、ポケット空所が大きく確保され、整流手段13への冷却水の流入量が多くなり、また、ウォータジャケット5内に流入する前に整流手段13に流入するから、前記整流機能がより効果的に発揮される。
その他の構成は、前記各例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
図11(a)(b)(c)に示す例では、冷却水の循環用配管8がシリンダブロック1の外側部に沿うように配設され、シリンダブロック1における冷却水導入口6の形成部位が外側に張出すように形成されている。冷却水導入口6はシリンダブロック1の上端部に形成された切欠凹部6dとシリンダヘッドガスケット10とにより冷却水導入口6が構成されている。循環用配管8は、図示を省略するソケット9(図1図3参照)を介して冷却水導入口6に接続されている。冷却水導入口6を構成する切欠部凹部6dは循環用配管8との接続部において、当該循環用配管8より低く段差状に形成されている。本実施形態のウォータジャケットスペーサ11も、前記例と同様に樹脂成型体からなるスペーサ本体12と、スペーサ本体12に一体に形成されたポケット形状の整流手段13とからなる。整流手段13は、スペーサ本体12におけるウォータジャケット5の冷却水導入口6側に向く面12aであって冷却水導入口6より深さ方向aの下部近傍(冷却水導入口6の下半部)に位置するように設けられる。そして、整流手段13は、前壁部13a、底壁部13b及び左右の側壁部13c,13dを備え、上端が開口する箱形形状に形成され、先側の一部が、冷却水導入口6、具体的には切欠凹部6dに没入するように構成されている。
【0029】
このような構成のウォータジャケットスペーサ11が挿入されたシリンダブロック1において、冷却水が、冷却水導入口6から、矢印bに示すように、ウォータジャケット5内に導入される。ウォータジャケット5内に導入された冷却水は、スペーサ本体12の外側面12aに当たり、当該外側面12aに沿ってウォータジャケット5内を拡散し、スペーサ本体12の上端縁12cから、スペーサ本体12の背面側に回り込む。これによって、燃焼室側のシリンダボア壁5cの冷却が効率的になされる。また、冷却水の一部は、矢印b1に示すように、整流手段13のポケット空所内に流入し、その後整流手段13から流出してスペーサ本体12に沿ってウォータジャケット内の深さ方向aの上方に向かって拡散するように流通する。特に、整流手段13が、その一部が冷却水導入口6に没入するように形成されているから、図10に示す例と同様にポケット空所が大きく確保され、整流手段13への冷却水の流入量が多くなり、また、ウォータジャケット5内に流入する前に整流手段13に流入するから、整流手段13の前記機能がより効果的に発揮される。
【0030】
図12(a)(b)(c)に示す例は、図11に示す例の変形例であって、整流手段13を構成する左側壁部13c(図11参照)がなしとされ、その他の構成は図11に示す例と同様である。この例では、左側壁部13cがないことにより、循環用配管8からの冷却水が整流手段13に流入し易く、整流手段13の前記機能がより効果的に発揮される。
その他の構成は図11に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。また、図11及び図12の例において、整流手段13の前壁部13aに、図8bに示すような切欠部13aaを形成しても良い。
【0031】
なお、本発明のウォータジャケットスペーサが適用される内燃機関として3気筒の自動車用のエンジン100を例に採ったが、他の気筒数の自動車用のエンジン、或いは、自動車用以外の内燃機関にも適用されることは言うまでもない。さらに、シリンダブロック1における冷却水導入口6の設置位置は、図1の例に限定されず、ウォータジャケット5の周方向のいずれの位置であっても良い。その高さ位置(深さ位置)も、図例のような底部側、上部側に限らず中央部のいずれでも良く、内燃機関の仕様によって適宜定められる。さらに、エンジンの仕様によっては、ウォータジャケット5における深さ方向aの下部のシリンダボア壁5cが過冷却し易い場合と、下部から中央部にかけて過冷却し易い場合とがあり、従って、整流手段13を設ける位置は、このエンジン仕様によって適宜定められる。また、図例では冷却水導入口6の断面形状を方形にしているが、これに限らず、円形、楕円形、その他の形状であっても良い。
また、前記実施形態では、整流手段13が、スペーサ本体12と一体の樹脂成型体からなる例について述べたが、樹脂製に限らず、金属板等によりスペーサ本体12に一体に形成されたものであっても良い。さらに、整流手段13の形状も、図例のものに限定されず、ポケット形状をなすものであれば、他の形状のものであっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 シリンダブロック
2 シリンダボア
5 ウォータジャケット
5c シリンダボア壁(シリンダボア側内壁)
6 冷却水導入口
11 ウォータジャケットスペーサ
12 スペーサ本体
13 整流手段
13a 前壁部
13b 底壁部
13c 左側壁部
13d 右側壁部
a 深さ方向
d 整粒手段の幅方向長さ
d1 冷却水導入口の幅方向長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12