特許第6249489号(P6249489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249489
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】質量分析計及び質量分析方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/04 20060101AFI20171211BHJP
   H01J 49/26 20060101ALI20171211BHJP
   H01J 49/10 20060101ALI20171211BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01J49/04
   H01J49/26
   H01J49/10
   G01N27/62 G
   G01N27/62 E
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-539405(P2014-539405)
(86)(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公表番号】特表2014-532966(P2014-532966A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】GB2012052733
(87)【国際公開番号】WO2013064836
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月20日
(31)【優先権主張番号】1118889.3
(32)【優先日】2011年11月2日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/556,484
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504142097
【氏名又は名称】マイクロマス ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ジェフリー マーク
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, マーティン レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ワイルドグース, ジェイソン リー
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−082648(JP,A)
【文献】 特開平10−255715(JP,A)
【文献】 特表2009−532822(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0176295(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/081445(WO,A1)
【文献】 特開2006−329710(JP,A)
【文献】 特開平01−292247(JP,A)
【文献】 VINCENT S PAGNOTTI,ANALYTICAL CHEMISTRY,2011年 6月 1日,V83 N11,P3981-3985
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60−27/70
G01N 27/92
H01J 40/00−49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルチャネル溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスを具備する、質量分析計であって、
前記デュアルチャネルは、独立したチューブヒーター内に配置され、且つ/又は前記デュアルチャネルは、独立したヒーターによって、単独に加熱される、質量分析計。
【請求項2】
前記溶媒支援入口イオン化インターフェイスが電圧をインターフェイスに印加する必要なく、被検物をイオン化するために配置及び適合される、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
第一の物質を前記質量分析計に導入するための第一のキャピラリー又は流体供給デバイスが、第一の前記デュアルチャネル内に収容され、第二の物質を前記質量分析計に導入するための第二の分離キャピラリー又は流体供給デバイスが、第二の前記デュアルチャネル内に収容される、請求項1又は2に記載の質量分析計。
【請求項4】
前記第一の物質が被検物を含み、任意選択で前記第二の物質が標準物質、校正用物質、ロックマス用物質又は試薬を含む、請求項3に記載の質量分析計。
【請求項5】
動作モードにおいて前記第一の物質及び前記第二の物質が同時、非同時又は非連続的に前記デュアルチャネルに導入される、請求項3又は4に記載の質量分析計。
【請求項6】
使用中、前記インターフェイスの第一端部が大気圧に維持され、且つ/又は前記インターフェイスの第二端部が圧力100mbar未満に維持され、任意選択で前記インターフェイスの前記第二端部が真空チェンバー内に収容される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項7】
前記真空チェンバー内にRFイオンガイドを更に含み、使用中、イオンが擬ポテンシャルによって前記RFイオンガイド内に放射状に閉じ込められる、請求項6に記載の質量分析計。
【請求項8】
前記RFイオンガイドが少なくとも第一のイオンガイド経路及び独立した第二のイオンガイド経路を具備し、任意選択で前記RFイオンガイドに入るイオンが、前記第一のイオンガイド経路又は前記第二のイオンガイド経路のいずれかに導かれる、請求項7に記載の質量分析計。
【請求項9】
前記第一のイオンガイド経路に導かれたイオンが、第一の質量分析装置によって質量分析され、前記第二のイオンガイド経路に導かれたイオンが、第二の異なる質量分析装置によって質量分析される、請求項8に記載の質量分析計。
【請求項10】
前記第一のイオンガイド経路及び前記第二のイオンガイド経路が前記RFイオンガイドの下流部において接合又は合流する、請求項8又は9のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項11】
イオンが前記RFイオンガイド内でフラグメント化されるか又は反応するように、前記RFイオンガイドが動作モードで操作される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項12】
前記デュアルチャネルから発生した被検物が、脱溶媒及び/又はイオン化を支援するために、衝撃面に導かれる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項13】
前記独立したチューブヒーターが互いに隔置される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項14】
デュアルチャネル溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスを介してイオンを質量分析計の真空チェンバーに導入することと、
前記デュアルチャネルが、独立したチューブヒーター内に配置され、且つ/又は前記デュアルチャネルが、独立したヒーターによって、単独に加熱されることと、
を含む、質量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2011年11月7日出願の米国仮特許出願第61/556,484号、2011年11月2日出願の英国特許出願第1118889.3号の優先権及び利益を主張する。本明細書の全内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、質量分析計及び質量分析方法に関する。好ましい実施形態は、溶媒支援入口イオン化(「SAII」)に関する。
【0003】
溶媒支援入口イオン化は、Charles McEwen及びSarah Trimpinによって開発されたイオン化技術であり、Analytical Chemistry「入口イオン化、小分子及び巨大分子の液体クロマトグラフィー/質量分析のための新規な高感度アプローチ」(Vincent S. Pagnottiら、2011年9月7日)に記載されている。
【0004】
SAIIでは、溶媒中に溶解されることが多い被検物が、石英ガラス又は金属製溶媒導管から、加熱させた金属チャネルに直接導入される。被検物は、入口に入る前に液体クロマトグラフィーシステムを通過することもあり得る。金属チャネルの一方の端部は、他方の端部より高い圧力で保持される。一般に、金属チャネルは、大気圧から第一の減圧領域までの領域にかけて、質量分析計の入口を形成する。有利な点は、被検物をイオン化するために、電圧もレーザーも不要である点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
質量分析計の改良されたインターフェイスを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、デュアルチャネル溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスを具備する質量分析計が提供される。
【0007】
語句「デュアルチャネル」は、SAIIインターフェイスが2つ以上のチャネルを具備する実施形態を含むことを意図するものであることを理解するべきである。
【0008】
溶媒支援入口イオン化インターフェイスは、好ましくは、電圧をインターフェイスに印加する必要なく、被検物をイオン化するために配置及び適合される。
【0009】
第一の物質を質量分析計に導入するための第一のキャピラリー又は流体供給デバイスは、好ましくは、第一のデュアルチャネル内に収容され、第二の物質を質量分析計に導入するための第二の分離キャピラリー又は流体供給デバイスは、好ましくは、第二のデュアルチャネル内に収容される。
【0010】
第一及び/又は第二のチャネルは、好ましくは、金属、ガラス、石英、金属皮膜ガラス又は導電ガラスを含む。
【0011】
第一の物質は、好ましくは、被検物を含む。
【0012】
第二の物質は、好ましくは、標準物質、校正用物質、ロックマス用物質又は試薬を含む。
【0013】
第一の物質は、(i)ポンプ、(ii)液体クロマトグラフィー(「LC」)デバイス、(iii)キャピラリーゾーン電気泳動(「「CZE」)デバイス、(iv)超臨界流体(「SCF」)クロマトグラフィーデバイス又は(v)ガスクロマトグラフィー(「GC」)デバイスのいずれか1つを介して、好ましくは、第一のキャピラリー又はチャネルに導入され、且つ/又は第二の物質は、好ましくは、第二のキャピラリー又はチャネルに導入される。
【0014】
任意の動作モードでは、第一の物質及び第二の物質は、同時にデュアルチャネルに導入されてもよい。
【0015】
代替動作モードでは、第一の物質及び第二の物質は、非同時に又は非連続的にデュアルチャネルに導入されてもよい。
【0016】
インターフェイスの第一端部は、好ましくは、大気圧に維持され、且つ/又は、インターフェイスの第二端部は、好ましくは、100mbar未満の圧力に維持圧力に維持される。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、インターフェイスの第一端部は、圧力xに維持され、インターフェイスの第二端部は、好ましくは、0.1xより低い、0.01xより低い、0.001x低い又は0.0001x未満の圧力に維持される。一実施形態によれば、相対的圧力は、第一端部及び第二端部は、少なくともx10、x100、x1000又はx10,000である。
【0018】
インターフェイスの第二端部は、好ましくは、真空チェンバー内に収容される。
【0019】
質量分析計は、好ましくは、真空チェンバー内にRFイオンガイドを更に含み、使用中、イオンが、好ましくは、擬ポテンシャルによって、RFイオンガイド内に放射状に閉じ込められる。
【0020】
RFイオンガイドは、好ましくは、第一のイオンガイド経路及び任意で独立した任意のイオンガイド経路を含む。
【0021】
RFイオンガイドに入るイオンは、好ましくは、第一のイオンガイド経路又は第二のイオンガイド経路のいずれかに導かれる。
【0022】
一実施形態によれば、質量分析計は、好ましくは、イオン伝達モードからイオン減衰モードに切り替えることができるデバイスを更に含み、これによってイオンが第一のイオンガイド経路及び/又は第二のイオンガイド経路に沿って通過する又は出るのが阻止、或いは実質的に低減される。
【0023】
第一のイオンガイド経路に導かれたイオンは、第一の質量分析装置によって質量分析されてもよく、第二のイオンガイド経路に導かれたイオンは、第二の異なる質量分析装置によって質量分析されてもよい。
【0024】
第一のイオンガイド経路及び第二のイオンガイド経路又はRFイオンガイドの下流部において、接合又は合流してもよい。
【0025】
RFイオンガイドは、使用中、各電極内に提供された又は各電極によって画成された開口部からイオンが伝達される複数の電極を含むイオンファンネル又はイオントンネルイオンガイドを含み得る。
【0026】
RFイオンガイドは、イオンがRFイオンガイド内でフラグメント化する又は反応するような動作モードで操作することもあり得る。
【0027】
イオンは、イオンガイド内で電子移動解離(「ETD」)、陽子移動反応(「PTR」)又は気相水素−重水素交換(「HDx」)を実施するように配置されてもよい。
【0028】
デュアルチャネルインターフェイスから発生する被検物は、脱溶媒及び/又はイオン化を支援するために、衝撃面に導かれてもよい。
【0029】
デュアルチャネルは、一般的なヒーターによって加熱されてもよく、且つ/又は同一のチューブヒーター内に配置されてもよい。
【0030】
別の実施形態によれば、デュアルチャネルは、独立したチューブヒーター内に配置されても、且つ/又はデュアルチャネルが、独立したヒーターによって別々に加熱されてもよい。
【0031】
チューブヒーターは、好ましくは、互いに隔置される。
【0032】
本発明の別の態様によれば、デュアルチャネル溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスを介してイオンを質量分析計の真空チェンバーに導入することを含む、質量分析方法が提供される。
【0033】
本発明の一態様によれば、
第一の真空チャンバーと、
第一のイオン入口と、
第一の真空チェンバー又はその後の下流真空チェンバーに導入する溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスと、
を具備する質量分析計が提供され、大気圧イオン源からのイオンは、使用中、第一のイオン入口を通って第一の真空チェンバーに伝達される。
【0034】
大気圧イオン源は、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源又は衝撃スプレーイオン化イオン源を含み得る。
【0035】
溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスは、好ましくは、大気圧領域と第一の真空チェンバーとの間で伝達が行われるシングルチャネル又はデュアルチャネル溶媒支援入口イオン化インターフェイスを具備する。
【0036】
第一の物質を質量分析計に導入するための第一のキャピラリー又は流体供給デバイスは、好ましくは、シングルチャネル又はデュアルチャネル溶媒支援入口イオン化インターフェイス内に収容される。
【0037】
第一の物質は、好ましくは、標準物質、校正用物質、ロックマス用物質、試薬又は被検物を含む。
【0038】
一実施形態によれば、シングルチャネル又はデュアルチャネルSAIIインターフェイスは、1つ以上の大気圧イオン源の内部校正又はマスロックを行うために使用できる。溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスは、好ましくは、第一の真空チェンバーを有する大気圧領域に連結するシングルチャネル又はデュアルチャネルを具備する。第一の物質を質量分析計に導入するための第一のキャピラリー又は流体供給デバイスは、好ましくは、インターフェイスのチャネル内に収容される。
【0039】
質量分析計は、好ましくは、更に真空チェンバーの下流にインターフェイスが提供される1つ以上のRFイオンガイドを具備する。1つ以上のRFイオンガイドは、好ましくは、溶媒支援入口イオン化インターフェイスによって又は溶媒支援入口イオン化インターフェイス内で発生されるイオンとは別に、イオンが大気圧イオン源によって発生され続けるために動作モードに配置及び適合される。1つ以上のRFイオンガイドは、少なくとも第一のイオンガイド経路及び独立した第二のイオンガイド経路を含み得る。1つ以上のRFイオンガイドに入るイオンは、第一のイオンガイド経路又は第二のイオンガイド経路のいずれかに導かれてもよい。第一及び第二のイオンガイド経路は、RFイオンガイドの下流部において合流又は接合してもよい。
【0040】
質量分析計は、イオン伝達モードからイオン減衰モードに切り替えることができるデバイスを更に含むことができ、これによってイオンが第一及び/又は第二のイオンガイド経路に沿って通過する又は出るのが阻止、或いは実質的に低減される。イオンガイド経路に導かれたイオンは、第一の質量分析装置によって質量分析され、第二のイオンガイド経路に導かれたイオンは、第二の質量分析装置によって質量分析されてもよい。
【0041】
本発明の一態様によれば、
大気圧イオン源、第一の真空チェンバー及び第一のイオン入口を提供すること、
第一のイオン入口を介して大気圧イオン源から第一真空チェンバーへイオンを伝達することと、
第一の真空チェンバー又はその後の下流真空チェンバーに導入する溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスを提供することと、
を含む質量分析方法が提供される。
【0042】
本発明の一態様によれば、被検物キャピラリー及び独立した標準物質キャピラリーがインターフェイス内に挿入されるシングルチャネル溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスを具備する質量分析計が提供される。
【0043】
本発明の一態様によれば、シングルチャネル溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスを提供することを含む質量分析方法が提供され、この方法は、
インターフェイス内に収容された被検物キャピラリーを介してインターフェイス内に被検物を導入することと、
インターフェイス内に収容された独立した標準物質キャピラリーを介して標準物質をインターフェイスに導入することと、
を更に含む。
【0044】
語句「デュアルチャネル」は、SAIIインターフェイスが2つ以上のチャネルを具備する実施形態を含むことを意図するものであることを理解するべきである。
【0045】
好ましい実施形態は、2つ以上の独立した入口チューブをSAIIインターフェイス中に導入する方法に関する。これにより、校正用標準物質を被検物として同時に導入し、イオン化することができる。
【0046】
用語「溶媒支援入口イオン化」インターフェイスは、被検物が電位差が典型的に2.5〜4kVであるエレクトロスプレーイオン化インターフェイスを含むものとして構成されるべきではないものと理解されるべきである。
【0047】
好ましい実施形態は、2つ以上の加熱された金属又はガラス入口チャネルを具備するインターフェイスを具備する。チャネルは、同一のチューブ内で異なるチャネルであってもよく、又はチャネルは同一若しくは異なるヒーター要素によって加熱させた異なるチューブ内に提供されてもよい。
【0048】
好ましい実施形態は、公知のSAII装置の改善を提供する。
【0049】
好ましい実施形態は、特に、SAIIインターフェイスへの校正用標準物質(ロックマス)の独立した導入に関する。理解されるとおり、本概念は、シングルSAIIチャネルがエレクトロスプレーイオン源などの大気圧イオン源と併せて使用される状況にも適用することもできる。したがって、SAIIチャネルは、独立した大気圧イオン源用の校正用標準物質又は「ロックマス」として使用できる。
【0050】
好ましい実施形態によれば、別の標準物質をSAIIインターフェイスに導入することができ、このため、標準物質と分析溶液とを混合させ、双方を同一の溶媒導管を通って導入させる必要がなくなる。
【0051】
公知のインターフェイスに比較して、好ましい実施形態は、多数の試料を同時にSAIIインターフェイス内に導入させることができる2つ以上のチャンネルを具備する。
【0052】
一実施形態によれば、質量分析計は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザー脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝撃(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化イオン源、(xviii)サーモスプレーイオン源、(xix)大気圧サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、(xx)グロー放電(「GD」)イオン源、及び(xxi)衝撃スプレーイオン化イオン源からなる群から選択される1つ以上のイオン源を含む。
【0053】
質量分析計は、更に1つ以上の連続又はパルスイオン源を含むことができる。質量分析計は、更にインターフェイス下流に配置された1つ以上のイオンガイドを含むことができる。質量分析計は、インターフェイスの上流及び/又は下流に配置された1つ以上のイオン移動度分離デバイス及び/若しくは1つ以上の電界非対称イオン移動度分光計デバイスを具備し得る。
【0054】
質量分析計は、更に、インターフェイスの下流に配置された1つ以上のイオントラップ又はイオントラップ領域を含み得る。質量分析計は、更にインターフェイスの下流に配置された1つ以上の衝突、フラグメント化又は反応セルを具備することができ、1つ以上の衝突、フラグメント化又は反応セルは、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメント化デバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメント化デバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメント化デバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメント化デバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメント化デバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメント化デバイス、(vii)レーザー誘起解離フラグメント化デバイス、(viii)赤外線誘起解離装置、(ix)紫外線誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマーインターフェイスフラグメント化デバイス、(xi)インソースフラグメントデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメント化デバイス、(xiii)熱源又は温度源フラグメント化デバイス、(xiv)電界誘起フラグメント化デバイス、(xv)磁場誘起フラグメント化デバイス、(xvi)酵素消化又は酵素分解フラグメント化デバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメント化デバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメント化デバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメント化デバイス、(xx)イオン−準安定性イオン反応フラグメント化デバイス、(xxi)イオン−準安定性分子反応フラグメント化デバイス、(xxii)イオン−準安定性原子反応フラグメント化デバイス、(xxiii)付加イオン又はプロダクトイオンを形成するためにイオンを反応させるイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)付加イオン又はプロダクトイオンを形成するためにイオンを反応させるイオン−分子反応デバイス、(xxv)付加イオン又はプロダクトイオンを形成するためにイオンを反応させるイオン−原子反応デバイス、(xxvi)付加イオン又はプロダクトイオンを形成するためにイオンを反応させるイオン−準安定性イオン反応デバイス、(xxvii)付加イオン又はプロダクトイオンを形成するためにイオンを反応させるイオン−準安定性分子反応デバイス、(xxviii)付加イオン又はプロダクトイオンを形成するためにイオンを反応させるイオン−準安定性原子反応デバイス、(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメント化デバイス、からなる群から選択される。
【0055】
質量分析計は、好ましくは、更に、(i)四重極質量分析装置、(ii)二次元又はリニア四重極質量分析装置、(iii)ポール又は三次元四重極質量分析装置、(iv)ペニングトラップ型質量分析装置、(v)イオントラップ型質量分析装置、(vi)磁場型質量分析装置、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析装置、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析装置、(ix)静電又は直交質量分析装置、(x)フーリエ変換静電又は直交質量分析装置、(xi)フーリエ変換質量分析装置、(xii)飛行時間質量分析装置、(xiii)直交加速型飛行時間質量分析装置、及び(xiv)リニア加速型飛行時間質量分析装置、からなる群から選択される質量分析装置を具備する。
【0056】
質量分析計は、更に、インターフェイスの下流に配置された1つ以上のエネルギー分析装置又は静電気エネルギー分析装置を具備してもよい。質量分析計は、好ましくは、更にインターフェイスの下流に配置された1つ以上のイオン検出器を具備する。
【0057】
質量分析計は、インターフェイスの下流に配置された1つ以上のマスフィルターを更に含んでもよく、1つ以上のマスフィルターは(i)四重極マスフィルター、(ii)二次元又はリニア四重極イオントラップ、(iii)ポール又は三次元四重極イオントラップ、(iv)ペニングイオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁場型マスフィルター、(vii)飛行時間マスフィルター、及び(viii)ウィーンフィルターからなる群から選択される。
【0058】
一実施形態によれば、質量分析計は、更にCトラップ及び静電質量分析器を具備してもよく、第一の動作モードでは、イオンはCトラップに伝達され、次いで、静電質量分析装置に投入され、第二の動作モードでは、イオンはCトラップ、次いで、衝突セル又は電子移動解離及び/又は陽子移動反応デバイスに伝達され、少なくともいくつかのイオンがフラグメントイオンにフラグメント化され、また、静電質量分析装置に投入される前に、次いでフラグメントイオンがCトラップに伝達される。
【0059】
質量分析計は、イオンが使用中伝達され、電極の間隔がイオン経路の長さに沿って増長される開口部を有する複数の電極を具備する積層リング型イオンガイドを更に含んでもよい。イオンガイドの上流部における電極内の開口部は、第一の直径を有してもよく、イオンガイドの下流部における電極内の開口部は、第一の直径よりも小さい第二の直径を有してもよい。AC又はRF電圧の逆位相は、好ましくは、一連の電極に印加される。
【0060】
溶媒支援入口イオン化技術の更なる利点は、非常に効率よくイオンを質量分析計へ移動させることであり、これは大気圧から質量分析計の第一の真空段階への比較的少ないガスフローによって得られる。SAIIに使用される加熱キャピラリーの伝導性は、例えば、エレクトロスプレーイオン源など、大気圧イオン源と共に使用されるサンプリングオリフィスの伝導性より非常に低くてもよいが、依然として、高イオン伝達が得られる。
【0061】
このような低い伝導性により、大気圧から質量分析計の低圧力領域まで、複数の入口オリフィスが必要である場合に導入されるいかなる特別な真空排気要件も最低限に低減される。これは、各源がほぼ同じ効果を得るために、大気圧からさらに低い圧力への伝導性がサンプリングオリフィス数に正比例して上昇する、複数のサンプリングオリフィス及び複数の大気圧イオン源を有するシングル質量分析計を使用した場合と対照的である。
【0062】
例示のみを目的として、本発明の様々な実施形態及び他の配置を、以下に挙げる添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】公知の溶媒支援入口(「SAII」)イオン化を示す図である。
図2】独立した第一及び第二のキャピラリーをSAIIインターフェイスのシングルチャネルに導入させる本発明のあまり好ましくない実施形態を示す図である。
図3】2つのチャネルを有するSAIIインターフェイスを具備し、第一及び第二のキャピラリーが異なるチャネル内に設置された、本発明の好ましい実施形態を示す図である。
図4図3に示したデュアルチャネルSAIIインターフェイスの端部を示す図である。
図5】SAIIインターフェイスが分離した2つのチャネルを具備する本発明の別の実施形態を示す図である。
図6】デュアルチャネルSAIIインターフェイスがイオンをRFイオンガイド内の異なるイオン経路に導かれた本発明の更なる実施形態を示す図である。
図7】シングルチャネルSAIIインターフェイスが、従来のエレクトロスプレーイオン源及びインターフェイスと共に提供される実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
まず、公知の溶媒支援入口イオン化(「SAII」)インターフェイスの配置について説明する。
【0065】
図1は、公知のシングルチャネルSAIIインターフェイスの構成の概略図である。インターフェイスの構成は、シングルチャンネル1を具備し、ヒーター2によって所望の温度まで加熱する。ヒーターは、チャネル1を450℃まで加熱できる。シングルチャネル1の入口端部は、大気圧である。シングルチャネル1の出口端部は、質量分析計の第一の排気領域3であり、圧力は、大気中より低い。第一の排気領域3内の圧力は、1〜10mbarの範囲内である。
【0066】
被検物及び溶媒を含む溶液は、シリンジポンプ又は液体クロマトグラフィー源(図示せず)に連結される溶媒入口キャピラリー4を介してシングルチャネル1に導入される。入口キャピラリー4の端部は、キャピラリー4から出た溶媒が、出現したときに揮発するように、注意してシングルチャネル1内に設置される。帯電液滴は、脱溶媒し、加熱させたチャネル1を通過して、低圧力領域3に進むときに、存在する表面と衝突し続ける。イオン化法には、液滴の荷電、脱溶媒及び可能であればイオン分子の反応並びに表面の相互作用を含む。
【0067】
この技術は、簡素且つ感受性が高く、エレクトロスプレーイオン化とほぼ同じ特性を有する一価から多価のイオン範囲を生み出すことが明らかになっている。
【0068】
RFイオンガイド5は、低圧力領域3に位置される。これには、溶媒支援入口イオン化インターフェイスの操作を必要としないが、本領域3内においてイオンを効率的に移動させることができる。
【0069】
オリフィス又はスキマー6は、第一の排気領域3を第二の排気領域7から分離する。第二の排気領域7は、差動排気され、第一の排気領域3より低い圧力に維持される。第二の排気領域7の圧力は、典型的に、10−2〜10−3mbarである。差動排気の更なる段階が、この領域に続いてもよい。
【0070】
飛行時間質量分析装置との関連において、分析的実行中、内部標準物質又はロックマスを導入させることが明らかになっている。これにより、質量の変動を修正することができる。こうした変動は、周辺温度の変化によって、発生し得る。
【0071】
従来、内部校正用の標準物質又はロックマスは、被検物の分析中に導入され、標準物質と被検物とを混合し、同一のチャネル1を介して、同一のキャピラリー4を使用して双方ともを導入することによって得られる必要がある。しかし、かかる方法は、電荷の競合により信号を制御でき、且つ/又は、分析イオンを標準物質から分解できず、このため、標準物質との相互作用が考えられ、問題がある。更に、標準物質は、本法に適合しない被検物に対して異なる溶媒が必要とされ得る。
【0072】
本発明の様々な実施形態はこれらの問題に対処し、更に詳細を提示する。
【0073】
まず、あまり好ましくない本発明の実施形態を図に参照として示す。図2は、本発明のあまり好ましくない実施形態による、標準物質及び被検物を導入する方法を示す。図2のインターフェイスは、シングルチャネル1を有する。本実施形態において、個々の被検物及び標準物質入口キャピラリー4a,4bが提供される。キャピラリー4a,4bは、同一の加熱させたチャネル1に導入される。この場合、標準物質及び被検物のフローは、チャネル1内で揮発後のみ混合される。このことは、被検物及び標準物質に対して異なる溶媒を使用できるという利点を有する。しかし、被検物及び標準物質イオンは分離することができないため、干渉が発生し得る。さらに、おそらく異なる流速及び溶媒を有する2つのキャピラリー4a,4bを含む場合は、チャネル温度及び/又はチャネル内のキャピラリーの位置を最適化し、標準物質及び被検物の双方に対して最善の感度及び安定性を付与するのは困難であり得る。それにもかかわらず、図2に示す実施形態は、図1に関連して上述のとおり、依然として先行技術より優れたいくつかの利点を提供する。
【0074】
図3に本発明の特に好ましい実施形態を示す。好ましい実施形態によれば、デュアルチャネルインターフェイスは、2つ(以上)の別個のチャネルを有するチューブ8を具備して提供される。チューブ8は、好ましくは、ヒーター要素2で加熱される。被検物キャピラリー4a及び標準物質キャピラリー4bは、好ましくは、別のチャネル内に別々に配置され、安定性及び感度を最適化できる。
【0075】
2つのチャネルがあるため、適切な動作圧が真空ハウジング3内で維持されるように組み合わせたチューブの伝導性が過度にならない点に注意しなければならない。他の実施形態では、インターフェイスが3つ以上のチャンネルを具備することが企図されている。
【0076】
図4は、図3に示すデュアルチャネルチューブの端部を示す図であり、チューブ8及び外側にヒーター2を示す。
【0077】
図5は、本発明の別の実施形態を示す。本実施形態によれば、2つのチャネル8a,8bが物理的に互いに離れて提供され、別個のヒーター2a,2bによって別々に加熱されてよい。これにより、2つの入口の最適化においてさらに柔軟性が得られる。例えば、被検物フロー4aからの被検物の流速は、標準物質フロー4bからの標準物質の流速と大きく異なってもよく、チャネル内において異なる温度及び/又は位置が必要となり得る。
【0078】
図2〜5の実施形態においては、RFイオンガイドに代えて、例えば、RF密閉イオンファンネルなど、別の種類のイオンガイドを設けてもよい。かかるイオンファンネルは、それぞれが使用中、イオンがそこから移動する開口部を有する(或いは開口部を画成する)複数の要素を具備してもよい。要素は、最も大きい開口部に入る口部を有し、最も小さい開口部に出口を有するイオンファンネルが形成されるように、徐々に小さくなる開口部を有し得る。或いは、RFイオンガイドに代えて、例えば、並列イオン光軸を有するが互いに放射状にオフセットされる2列の積層リング型電極を具備する結合型イオンガイドを設けてもよく、積層リングは、半径寸法に沿ってイオン移動用経路を提供するために設置される。
【0079】
図6は、本発明の更なる実施形態を示す。本実施形態によれば、デュアルチャネル入口が提供される。しかし、この場合、標準物質からSAIIによって形成されたイオンは、1つのRFイオンガイドに導かれ、被検物イオンは、他方のRFイオンガイドに導かれる。差動排気装置6の上流で互いに接合する2つのイオンガイドを示す。本実施形態により、オリフィス6を通過する前に共に混合される各ガイド内でイオン集団となる。しかし、イオン集団は分離された状態が維持され、異なる質量分析装置に導かれ得る場合もあり得る。
【0080】
異なる入口チャネルの外側端部を異なるイオンガイドへ導くことも含む図6に関して上述した実施形態の態様は、示された実施形態に限定されないこと、及び図3〜5及び図7の実施形態(後述する)にも同様に適用され得ることは理解されよう。
【0081】
また、図6に関して上述のとおり、個々の下流デバイスを使用することによって、イオンが2つの異なるチャネルから分離しないようにする原理は、他の減圧下又は大気圧イオン源(エレクトロスプレーイオン化など)及びにSAIIよって形成されるイオンにも同様に適用できる。しかし、SAIIチャネルを有する利点は、より容易にイオンの流れを分離させ、これにより被検物の流れ間のクロストークを最低限に抑える点である。
【0082】
図6の実施形態では、別のイオンガイド内でのDC偏向電圧の適切な適用又はRF電圧の変化により、標準物質又は被検物質のいずれか又は双方からのイオンが質量分析装置に向かって通過しないようにすることができる。
【0083】
この方法では、質量ドリフトを修正できるように、標準物質からのイオンが定期的に質量分析装置に入っていくことができる動作モードが企図される。標準物質からのイオンが通過できる場合、被検物イオンが質量分析装置に到達できないようにすることができる。この方法では、不十分な質量測定となり得る被検物と標準物質との干渉の可能性がない。
【0084】
上述のとおり、2つのチャネルからのイオン集団を第一の排気領域3を超えて分離させることができ、異なる質量分析装置に向かって導くことができる点に留意すべきである。
【0085】
図7は、本発明の更なる実施形態を示す。本実施形態によれば、大気圧イオン源45、例えば、エレクトロスプレーイオン源が、SAIIインターフェイスと組み合わせて提供される。質量分析計においてイオン入口46は、イオンが大気圧イオン源45から質量分析計の第一の真空チェンバー30に伝達されるために提供される。入口キャピラリー40は、溶媒液が出現したときに揮発されるように加熱させたSAIIチャネルに導入される。図7に示すように、SAIIインターフェイスは、シングルSAIIチャネルを具備する。SAIIインターフェイスがデュアルチャネルSAIIインターフェイスを具備することができる他のあまり好ましくない実施形態が考慮される。
【0086】
上記と同様に、RFイオンガイド50は、好ましくは、イオンを質量分析計の第一の真空チェンバー30から第二の真空チェンバー70へと誘導するために、第一の真空チェンバー30及びイオン入口46の下流及びSAIIチャネル内に提供される。オリフィス又はスキマー60は、第一の真空チェンバーと第二の真空チェンバー70との間に提供されてもよい。
【0087】
本実施形態において、標準物質を質量分析計へと導入するために、SAIIチャネルを使用できる。SAIIチャネルは、エレクトロスプレーイオン源45用の校正用標準物質又は「ロックマス」として使用できる。
【0088】
図7を参照して記載した実施形態は、別のタイプのイオン源、特に、大気圧エレクトロスプレーイオン源45と共に使用したときのSAIIの使用の例を示す。SAIIインターフェイスの使用により、別の大気圧源を標準物質として使用し(又は更なる被検物)、チャネルには、特別の真空排気要件が課されるため、システムの真空排気要件が低減される。
【0089】
また、RFイオンガイドが第一の真空チェンバー30内に提供される更なる実施形態も考慮される。
【0090】
上述の実施形態はいずれも、脱溶媒及び/又は入口イオン化を支援するために、適切な形状及び位置の衝撃面(図示せず)がチャネルの下流に提供され得る。
【0091】
シングル又はデュアルSAIIインターフェイスを形成するチャンネルは、金属、ガラス又は石英から作製されてもよい。金属被覆ガラス又は導電ガラスが使用されてもよい。
【0092】
1つ以上のチャネルは、例えば抵抗ヒーターによって、抵抗加熱され得る。
【0093】
2つ以上の複数のチャネルが一実施形態では、複数の被検物フローが多重化され得る。例えば、個々の被検物物質は、別の入口チャネルに導入し得る。
【0094】
別の実施形態において、RFイオンガイド5,50は、反応チェンバー又は衝突若しくはフラグメント化デバイスを形成し得る。例えば、ETD試薬イオンは、1つのチャネルを介して導入され、被検物イオンは別のチャネルを介して導入され得る。次いで、イオンは、RF密閉反応槽の下流において、引き続き反応させてよい。気相水素−重水素交換(「HDx」)も、同じ方法で達成し得る。
【0095】
物質(例えば、被検物)は、1つ以上の分離方法によって、同時に又は順次、入口チャネルに送達させてもよい。例えば、液体クロマトグラフィー(「LC」)、キャピラリーゾーン電気泳動(「CZE」)、超臨界流体(「SCF」)クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィー(「GC」)などの手法を使用し得る。
【0096】
前述の分離技術を使用して、分離デバイスからの溶出剤が、異なる被検物が別の入口チャネルに導入されるように、分離後、2つ以上の入口チャネル間で分割されてもよい。例えば、分離デバイス(クロマトグラフなど)と入口チャネルとの間の移動ラインの長さを長くすることによって、別の被検物に対して、導入時間の遅延が得られる。
【0097】
次いで、他のチャネルからのイオンが質量分析装置から入らないようにしつつ、1つのチャネルからのイオンが監視され得る。第一のチャネルからの信号は、第二のチャネルからのイオンを分析するための質量分析計のデータ依存制御に使用できる。例えば、イオンの伝達は、各チャネルに導入される被検物間で交互に行うことができる。
【0098】
イオンが時間的に最も早く出現するチャネルに関連する信号が、これらのイオンが出現する前に、第二のチャンネルからのイオン用に予定されているMS−MSプレカーサーマスを決定するために使用されてもよい。例えば、空間電荷又は検出飽和効果を制御するための下流イオン伝達の制御など、その他のデータ依存機能及び組み合わせが考えられる。
【0099】
更なる実施形態では、他の大気圧イオン化技術をSAIIと組み合わせることができることを企図する。例えば、1つ以上の入口がSAIIインターフェイスであり、1つ以上の他のチャネル又は開口部が、例えば、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)、大気圧化学イオン化(「APCI」)又は大気圧光イオン化(「APPI」)など、異なる大気圧イオン化技術によって製造する又はこれらから発生するイオンを受け入れる複数の入口インターフェイスが提供され得る。例えば、SAIIは、別のAPIイオン化法に対して、簡素なロックマスインターフェイスとして使用することができる。
【0100】
また、独立した下流RFデバイスを使用した2つの異なるイオン化入口からのイオン分離原理は、減圧下イオン化技法(減圧下エレクトロスプレーなど)及びSAIIなどの大気圧イオン源によって形成されたイオンにも適用できる。しかし、SAIIの利点は、より容易にイオンの流れを分離させ、これにより被検物の流れ間のクロストークを最低限に抑える点にある。
【0101】
標準物質又は校正用物質及び/又は被検物物質の導入は、非連続であってよい。例えば、純粋な溶媒又はガスの量を、あらゆるLC送達システムの上流及びSAIIインターフェイスの下流に切り替え型迂回バルブを用いて、試料のフローに導入できる。これにより、試料フロー内に非連続性が生じる。気体が導入される場合、こうした非連続性は、インターフェイスに向かって移動する流体のカラムにおける間隙を示す。溶媒を導入した場合、非連続性は、被検物の分子が存在しない任意の領域を示す。
【0102】
この手法により、結果として、被検物イオン又は標準物質イオンが質量分析装置内の下流に同時に出現しないように被検物イオン又は標準物質イオンの出現を制御できる。こうして被検物の信号と校正用物質の信号との間での質量干渉の可能性を回避する。また、この方法を用いて、標準物質の任意の領域を標準物質及び被検物をいずれも同一のSAIIインターフェイスを介して非連続的に導入させることができる被検物のフローに導入することができる。これらの方法は、SAIIに限定するものではなく、標準物質をあらゆるAPIイオン源に導入するために使用され得る。
【0103】
好ましい実施形態は、SAIIに関するが、本発明の実施形態は、シングルチャネル又は複数チャネルのSAIIインターフェイスと組み合わせて、ESI及びAPI源を使用することも企図される。
【0104】
本発明を、好ましい実施形態を参照して記載したが、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更が行われてもよいことは、当業者によって理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7