特許第6249516号(P6249516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249516
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】トランスグルタミナーゼ活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/19 20060101AFI20171211BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171211BHJP
   A61P 17/12 20060101ALI20171211BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20171211BHJP
   A61K 8/9778 20170101ALI20171211BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   A61K36/19
   A61P43/00 111
   A61P43/00 105
   A61P17/12
   A61P17/16
   A61K8/9778
   A61Q19/00
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-178623(P2013-178623)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-62090(P2014-62090A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2016年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-188768(P2012-188768)
(32)【優先日】2012年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(72)【発明者】
【氏名】石川 准子
(72)【発明者】
【氏名】陳 施
(72)【発明者】
【氏名】光永 紫乃
(72)【発明者】
【氏名】菅井 由也
(72)【発明者】
【氏名】川崎 彰子
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101732194(CN,A)
【文献】 特開平07−118135(JP,A)
【文献】 特開2011−079755(JP,A)
【文献】 特開2004−091376(JP,A)
【文献】 特開2007−001914(JP,A)
【文献】 特開2009−067701(JP,A)
【文献】 特開2010−024190(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/099247(WO,A1)
【文献】 日本新薬株式会社、"「今月の花」2 月の花アダトーダ"、[online]、 2008、ハーブの館植物図鑑DB、[平成29年2月22日検索],、インターネット<URL : http://www.nippon-shinyaku.co.jp/herb/db/flower/2008/justicia_adhatoda.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 8/97
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キツネノマゴ(Justicia procumbens)の抽出物を有効成分とする、トランスグルタミナーゼ活性化剤。
【請求項2】
キツネノマゴ(Justicia procumbens)の抽出物を有効成分とする、セラミド産生促進剤。
【請求項3】
キツネノマゴ(Justicia procumbens)の抽出物を有効成分とする、表皮角化改善剤。
【請求項4】
キツネノマゴ(Justicia procumbens)の抽出物を有効成分とする、皮膚保湿機能改善剤。
【請求項5】
キツネノマゴ(Justicia procumbens)の抽出物を有効成分とする、皮膚バリア機能改善剤。
【請求項6】
キツネノマゴ(Justicia procumbens)の抽出物を有効成分とする、角層水分量増加剤。
【請求項7】
キツネノマゴ(Justicia procumbens)の抽出物を有効成分とする、角層水分量低下抑制剤。
【請求項8】
キツネノマゴ(Justicia procumbens)の抽出物を有効成分とする、肌荒れ予防又は改善剤。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスグルタミナーゼ活性化剤、及びセラミド産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
表皮の角質層は、体内の水分の蒸散や外界からの刺激や異物侵入を防ぐバリア機能を担っている。角質層は角質細胞と細胞間脂質から構成され、角質細胞はコーニファイドエンベロープ(cornified envelope)と呼ばれる細胞膜様構造体で包まれている。コーニファイドエンベロープは、安定な角質細胞構造の構築に寄与しており、皮膚のバリア機能維持にとって重要な構造である。コーニファイドエンベロープは、角層の基底層にあるケラチノサイトが角化するとともに、角化に必要なタンパク質であるインボルクリンやロリクリン等が合成され、次いでそれらのタンパク質がトランスグルタミナーゼの活性化により架橋されることで形成される。トランスグルタミナーゼの活性は、コーニファイドエンベロープの正常な形成と表皮の正常な角化、ひいては皮膚の保湿機能の維持・改善にとって重要である。この点について、トランスグルタミナーゼの活性化が、皮膚の正常な角化、バリア機能改善、及び肌荒れ改善につながることが報告されている(例えば、非特許文献1及び2、並びに特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、スフィンゴ脂質の一つであるセラミドは、生体全体の中では微量しか存在しない脂質である。しかし、皮膚の最も外側の層である角層中において、セラミドは脂質の約半分を占め、皮膚の保湿機構、バリア機構に重要な役割を果たしている。このセラミドは表皮細胞中において産生、分泌された後に角層の細胞間においてラメラ構造を構築することにより機能する。しかし、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、乾癬等の皮膚疾患においては、セラミドの健全な代謝が妨げられ、角層中のセラミド量が減少し、皮膚の保湿能の低下や表皮の角化不全、バリア能の低下等を引き起こしていることが数多く報告されている(非特許文献3参照)。セラミドの産生を促進する物質には、動物細胞の増殖抑制、分化誘導、アポトーシスを誘導するなどの効果が期待でき、ひいては炎症性疾患、悪性腫瘍など、細胞の増殖あるいは分化の異常に起因する疾患に対する治療効果が期待できると考えられている(非特許文献4参照)。さらに、セラミドには、骨吸収抑制作用、骨強化作用、歯槽骨減少抑制作用があり、骨粗鬆症、骨折、腰痛、リウマチなどの骨関節疾患の予防及び改善に有用であること(特許文献3参照)、歯周病の予防に効果があること(特許文献4参照)、セラミドには、毛髪のハリ、コシの付与及び感触改善作用があることも報告されている(特許文献5参照)。
このようにセラミドには種々の効能が期待できることもあり、セラミドの産出を促進しうる物質の探求が望まれている。
【0004】
一方、キツネノマゴ科(Acanthaceae)の植物は、250属2500種ほどからなり、そのうち、キツネノマゴ属(Justicia)植物は約300種あるとされている。その中でも、キツネノマゴ(Justicia procumbens)は、これまで関節痛や解熱等に適用される漢方として用いられ、同じキツネノマゴ属植物であるキダチキツネノマゴ(Justicia gendarussa)は、皮膚外用鎮痛剤や皮膚外用抗かゆみ剤の成分として知られている(例えば、特許文献6及び7参照)。また、同じキツネノマゴ科の異なる属の植物であるアダトダ・ウァシカ(Adhatoda vasica)は、セラミド産生促進作用を有することが知られている(例えば、特許文献8参照)。さらに、キツネノマゴの抽出物の生理活性としては、メラニン生成の抑制効果及びドーパオキシダーゼ活性の抑制効果を有すること等が知られている(例えば、特許文献9参照)。
しかし、キツネノマゴの抽出物がトランスグルタミナーゼを活性化し、セラミドの産生を促進し、皮膚のバリア機能や保湿機能の維持又は改善、肌荒れの予防又は改善に有用であることはこれまで知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−91376号公報
【特許文献2】特開2007−1914号公報
【特許文献3】特開2001−158736号公報
【特許文献4】特開2001−158735号公報
【特許文献5】特開平10−152421号公報
【特許文献6】特開2005−281206号公報
【特許文献7】特開2007−230977号公報
【特許文献8】特開2011−79755号公報
【特許文献9】国際公開2013/031403号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kalinin,A.,et al.,Journal of Cell Science,2001,vol.114,p.3069-3070
【非特許文献2】Rawlings,A.V.,et al.,Journal of Investigative Dermatology,2005,vol.124,p.1099-1110
【非特許文献3】Ishikawa,J.,et al.,Journal of Cosmetic Dermatology,2013,vol.12,p.3-11
【非特許文献4】David E.Modrak,et al.,Molecular Cancer Therapeutics,2006,vol.5(2),p.200-208
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、トランスグルタミナーゼを活性化し、皮膚のバリア機能や保湿機能の維持又は改善、肌荒れの予防又は改善に有用な、トランスグルタミナーゼ活性化剤の提供を課題とする。
さらに、本発明は、セラミドの産生を促進し、皮膚のバリア機能や保湿機能の維持又は改善、肌荒れの予防又は改善などに有用な、セラミド産生促進剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、キツネノマゴの抽出物が、トランスグルタミナーゼを活性化すること、セラミドの産生を促進すること、角層水分量を増加すること、角層水分量の低下を抑制すること、及び肌荒れを予防又は改善することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
本発明は、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、トランスグルタミナーゼ活性化剤に関する。
また、本発明は、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、セラミド産生促進剤に関する。
また、本発明は、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、表皮角化改善剤に関する。
また、本発明は、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、皮膚保湿機能改善剤に関する。
また、本発明は、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、皮膚バリア機能改善剤に関する。
また、本発明は、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、角層水分量増加剤に関する。
また、本発明は、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、角層水分量低下抑制剤に関する。
さらに、本発明は、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、肌荒れ予防又は改善剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤は、トランスグルタミナーゼを活性化し、皮膚のバリア機能や保湿機能の維持又は改善、肌荒れの予防又は改善に有用である。
本発明のセラミド産生促進剤は、セラミドの産生を促進し、皮膚のバリア機能や保湿機能の維持又は改善、肌荒れの予防又は改善などに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転、疾患、症状又は状態の悪化の防止又は遅延、あるいは疾患、症状又は状態の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
また、本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
また、本明細書において、「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、あるいは個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
さらに、本明細書において、「肌荒れ」とは、皮膚の保湿力が低下して皮膚の水分が奪われ、皮膚表面に落屑や皮膚のひび割れが認められる状態又は皮膚表面粗さが大きくなるような状態をいう。このような状態の皮膚を「あれ肌」又は「ドライスキン」ともいう。
【0012】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、角層水分量増加剤、及び角層水分量低下抑制剤は、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする。後述の実施例で実証するように、キツネノマゴの抽出物は、トランスグルタミナーゼ活性化効果、セラミドの産生促進効果、角層水分量増加効果、及び角層水分量低下抑制効果を有する。
また、本発明の表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤も、キツネノマゴの抽出物を有効成分とする。前述のように、トランスグルタミナーゼの活性化、セラミドの産生促進、角層水分量増加、及び角層水分量低下抑制は、表皮の角化改善や皮膚の保湿機能の改善、皮膚のバリア機能維持及び肌荒れの予防又は改善に非常に重要である。また、後述の実施例で実証するように、キツネノマゴの抽出物は、表皮の角化を改善し、皮膚の保湿機能を改善し、皮膚バリア機能を改善し、肌荒れを予防又は改善する。したがって、トランスグルタミナーゼ活性化効果、セラミドの産生促進効果、角層水分量増加効果、及び角層水分量低下抑制効果を有するキツネノマゴの抽出物を、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤の有効成分とすることができる。
また、前述のように、セラミドは細胞の増殖、分化、アポトーシス等の制御に関係する。そのため、セラミドの産生を促進するキツネノマゴの抽出物は、動物細胞の増殖抑制、分化誘導、アポトーシスの誘導等により、炎症性疾患、悪性腫瘍など、細胞の増殖あるいは分化の異常に起因する疾患を予防又は治療するための医薬品、医薬部外品等に有用である。また、キツネノマゴの抽出物は、骨粗鬆症、骨折、腰痛、リウマチなどの骨関節疾患の予防又は改善、歯周病の予防又は改善のための医薬品、医薬部外品等にも使用しうる。さらに、キツネノマゴの抽出物は、毛髪にハリ・コシを付与したり毛髪の感触を改善するための医薬部外品、化粧品等の用途にも有用である。
【0013】
本明細書における「キツネノマゴ」は、キツネノマゴ科キツネノマゴ属(Justicia)の一年草の植物である。
キツネノマゴ抽出物の製造には、キツネノマゴの任意の部分が使用可能であり、全草、根、塊根、根茎、幹、枝、茎、葉(葉身、葉柄等)、樹皮、樹液、樹脂、花(花弁、子房等)、果実(成熟果実、未熟果実等)、種子等を用いることができる。また、これらの部位を複数組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明に用いるキツネノマゴの抽出物は、キツネノマゴの全草の抽出物であることが好ましい。
【0014】
本発明に用いるキツネノマゴの抽出物は、植物抽出等に用いられる通常の抽出方法により得ることができる。抽出方法は適宜設定することができ、上記植物を常温又は加温下にて抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることが好ましい。
キツネノマゴの抽出物の調製には、キツネノマゴをそのまま又は乾燥粉砕して用いることができる。また、キツネノマゴの水蒸気蒸留物又は圧搾物を用いることもでき、これらは精油等より精製したものを用いることもでき、また市販品を利用することもできる。キツネノマゴ、又はその水蒸気蒸留物若しくは圧搾物は、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
キツネノマゴの抽出物の調製に用いる抽出溶媒は適宜選択することができ、植物成分の抽出に通常用いられるもの、例えば水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他オイル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、水、エタノール、又はエタノール水溶液が好ましく、エタノール水溶液がより好ましく、アルコール含有率が30体積%以上のエタノール水溶液がさらに好ましく、アルコール含有率が40体積%以上のエタノール水溶液が特に好ましい。また、抽出に際して酸やアルカリなどを添加し、抽出溶媒のpHを調整してもよい。
【0016】
抽出条件も通常の条件を適用でき、例えばキツネノマゴを0℃以上(好ましくは4℃以上)100℃以下(好ましくは80℃以下、より好ましくは40℃以下)で1分以上(好ましくは1時間以上、より好ましくは1日以上)50日以下(好ましくは30日以下)浸漬又は加熱還流すればよい。抽出効率を上げる為、併せて攪拌を行ったり、溶媒中でホモジナイズ処理を行ってもよい。用いる抽出溶媒の量は、キツネノマゴの重量(乾燥物換算)に対して1倍量以上(好ましくは5倍量以上)100倍量以下(好ましくは50倍量以下、より好ましくは40倍量以下)である。
【0017】
本発明において、キツネノマゴの抽出物をそのまま用いてもよいし、さらに適当な分離手段、例えばゲル濾過、クロマトグラフィー、精密蒸留等により活性の高い画分を分画して用いることもできる。また、得られたキツネノマゴの抽出物を希釈、濃縮又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、前記方法により得られた抽出物を、前記抽出溶媒とは異なる溶媒で転溶して用いることもできる。
本発明において抽出物とは、前記のような抽出方法で得られた各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液、その精製画分、その乾燥末又はその転溶液を含むものである。
【0018】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、肌荒れ抑制又は改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤の形態は適宜選択することができ、例えば、医薬組成物、化粧料組成物若しくは食品組成物とするか、又はこれらに含有させることができる。
【0019】
医薬組成物を調製する場合は、通常、前記有効成分と好ましくは薬学的に許容される担体を含む製剤として調製する。薬学的に許容される担体とは、一般的に、前記有効成分とは反応しない、不活性の、無毒の、固体又は液体の、増量剤、希釈剤又はカプセル化材料等をいい、例えば、水、エタノール、ポリオール類(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、及びポリエチレングリコール等)、適切なそれらの混合物、植物性油などの溶媒又は分散媒体などが挙げられる。
【0020】
医薬組成物は、経口により、非経口により、例えば、口腔内に、皮膚に、皮下に、粘膜に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、腹腔内に、膣内に、肺に、脳内に、眼に、及び鼻腔内に投与される。経口投与製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ペレット剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤及び吸入剤などが挙げられる。非経口投与製剤としては、坐剤、保持型浣腸剤、点滴剤、点眼剤、点鼻剤、ペッサリー剤、注射剤、口腔洗浄剤並びに軟膏、クリーム剤、ゲル剤、制御放出パッチ剤及び貼付剤などの皮膚外用剤などが挙げられる。医薬組成物は、徐放性皮下インプラントの形態で、又は標的送達系(例えば、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオン注入、ポリマーマトリックス、リポソーム及びミクロスフェア)の形態で、非経口で投与してもよい。
【0021】
医薬組成物はさらに医薬分野において慣用の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に応じて使用できる。長時間作用できるように徐放化するためには、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラチン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキストリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等が使用できる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラガント、乳糖等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類等が挙げられる。抗酸化剤としては、トコフェロール、没食子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸等が挙げられる。必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファート、銅クロロフィリンナトリウム等)を加えてもよい。
【0022】
化粧料組成物を調製する場合、その形態は適宜選択することができ、溶液、乳液、粉末、水−油二層系、水−油−粉末三層系、ゲル、タブレット等の固形、エアゾール、ミスト、カプセル及びシート等任意の形態とすることができる。また、化粧料組成物の製品形態も任意であり、例えば、洗顔料、メーク落とし、化粧水、美容液、パック、乳液、クリーム及びサンスクリーン等のスキンケア化粧料、ファンデーション、化粧下地、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、アイブロー、頬紅及びネイルエナメル等のメイクアップ化粧料、ヘアシャンプー、ヘアリンス、整髪料、染毛料及び育毛剤等の毛髪化粧料、石鹸、ボディソープ、デオドラント化粧料及び浴用剤等のボディ洗浄料、歯磨剤及び洗口剤等の口腔化粧料、香水等の芳香化粧料等が挙げられる。また、この化粧料は、日本の薬事法上、化粧品もしくは医薬部外品のどちらに属しても良い。
【0023】
化粧料組成物は、化粧品、医薬部外品及び医薬品等に慣用される他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて配合し、常法により製造することができる。
その他の化粧料組成物に配合可能な成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等)、美白剤(例えば、アスコルビン酸及びその誘導体、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等)、各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等)、血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等)、抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等)、抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)及び殺菌剤(例えば、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、チモール類、塩化ベンザルコニウム等)等が挙げられる。
【0024】
前記医薬組成物及び化粧料組成物は、口腔用組成物、外用組成物、内服組成物などの形態で適用することができ、皮膚外用組成物の形態で用いることが好ましい。
皮膚外用組成物の形態で使用する場合、キツネノマゴ抽出物の他に、通常の皮膚外用組成物に用いられる成分、例えば界面活性剤、油性物質、高分子化合物、防腐剤、各種の薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等を適宜配合できる。薬効成分としては、表皮角化改善剤や皮膚保湿機能改善剤の場合は、例えば、ビタミンD3、スフィンゴシン誘導体、オレアノール酸、クロフィブリン酸、オレイエタノールアミドが挙げられる。
【0025】
食品組成物を調製する場合、その形態は適宜選択することができ、飲料も包含される。一般食品の他に、表皮の角化改善又は皮膚の保湿機能やバリア機能改善・維持等、トランスグルタミナーゼの活性化、又はセラミドの産生促進により治療、予防又は改善しうる疾患又は状態の治療、予防又は改善等をコンセプトとしてその旨を表示した飲食品、すなわち、健康食品、機能性食品、病者用食品及び特定保健用食品なども包含される。健康食品、機能性食品、病者用食品及び特定保健用食品は、具体的には、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、流動食等の各種製剤形態として使用することができ、これら製剤のために使用することができる。製剤形態の食品組成物は、医薬製剤と同様に製造することができ、前記有効成分と、食品として許容できる担体、例えば適当な賦形剤(例えば、でん粉、加工でん粉、乳糖、ブドウ糖、水等)等とを混合した後、慣用の手段を用いて製造することができる。さらに、食品組成物は、スープ類、ジュース類、乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料などの液状食品組成物、プリン、ヨーグルトなどの半固形食品組成物、パン類、うどんなどの麺類、クッキー、チョコレート、キャンディ、ガム、せんべいなどの菓子類、ふりかけ、バター、ジャムなどのスプレッド類等の形態もとりうる。また、食品には、飼料も含まれる。
【0026】
食品組成物には、種々の食品添加物、例えば、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合してもよい。
【0027】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤の投与対象は、好ましくは温血脊椎動物であり、より好ましくは哺乳動物である。本明細書において哺乳動物は、例えば、ヒト、並びにサル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどの非ヒト哺乳動物が挙げられる。本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤は、ヒト、サルなどの霊長類、特にヒトへの投与に好適である。
本発明に用いる前記抽出物、並びに本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤は、表皮の角化不全の予防若しくは治療、皮膚の保湿、皮膚バリア機能の改善、角層水分量の増加、角層水分量の低下の抑制、又は肌荒れの予防若しくは改善を所望する対象者に適用することができる。前記抽出物又は剤は、必要な条件下(好ましくは、湿度が低く乾燥した条件下)で適用するのが好ましい。また、前記抽出物又は剤は、皮膚に適用するのが好ましい。
【0028】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤における前記有効成分の投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、投与又は摂取経路、投与又は摂取スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。例えば、前記有効成分の質量に基づき、1日あたり、体重1kgあたり、好ましくは0.001mg以上、1g以下、又は好ましくは0.001〜1mgである。また、前記有効成分は、1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取・投与され得る。
【0029】
本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤における前記有効成分の含有量は、上記投与量を達成するように適宜決定できる。例えば、本発明のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量の増加、角層水分量の低下の抑制、又は肌荒れ予防若しくは改善剤において、前記有効成分の含有量は、0.00001質量%以上が好ましく、0.0001質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、0.00001〜20質量%が好ましく、0.0001〜10質量%がより好ましく、0.0005〜5質量%がさらに好ましい。
【0030】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、肌荒れ予防又は改善剤、製造方法、方法及び使用を開示する。
【0031】
<1>キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、トランスグルタミナーゼ活性化剤。
<2>キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、セラミド産生促進剤。
<3>キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、表皮角化改善剤。
<4>キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、皮膚保湿機能改善剤。
<5>キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、皮膚バリア機能改善剤。
<6>キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、角層水分量増加剤。
<7>キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、角層水分量低下抑制剤。
<8>キツネノマゴの抽出物を有効成分とする、肌荒れ予防又は改善剤。
【0032】
<9>前記キツネノマゴの抽出物がキツネノマゴの全草の抽出物である、前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤。
<10>前記キツネノマゴの抽出物が、エタノール水溶液(好ましくは、アルコール含有率が30体積%以上(より好ましくは40体積%以上)のエタノール水溶液)を抽出溶媒としてキツネノマゴを抽出して得られた、前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤。
<11>前記有効成分の含有量が、0.00001質量%以上(好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上)20質量%以下(好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)である、前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載のトランスグルタミナーゼ活性化剤、セラミド産生促進剤、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤。
【0033】
<12>トランスグルタミナーゼ活性化剤、又はセラミド産生促進剤としての、キツネノマゴの抽出物の使用。
<13>トランスグルタミナーゼ活性化剤、又はセラミド産生促進剤の製造のための、キツネノマゴの抽出物の使用。
<14>キツネノマゴの抽出物を、トランスグルタミナーゼ活性化剤、又はセラミド産生促進剤として使用する方法。
<15>キツネノマゴの抽出物を用いる、トランスグルタミナーゼ活性化方法、又はセラミド産生促進方法。
<16>前記抽出物を表皮の角化不全の予防若しくは治療、皮膚の保湿、皮膚バリア機能の改善、又は肌荒れの予防若しくは改善を所望する対象者に適用する、前記<15>項記載の方法。
<17>前記抽出物の適用が必要な条件下(好ましくは、湿度が低く乾燥した条件下)で前記抽出物を適用する、前記<15>又は<16>項記載の方法。
<18>前記抽出物を皮膚に適用する、前記<15>〜<17>のいずれか1項記載の方法。
<19>前記キツネノマゴの抽出物がキツネノマゴの全草の抽出物である、前記<12>〜<18>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<20>前記キツネノマゴの抽出物が、エタノール水溶液(好ましくは、アルコール含有率が30体積%以上(より好ましくは40体積%以上)のエタノール水溶液)を抽出溶媒としてキツネノマゴを抽出して得られた、前記<12>〜<19>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<21>トランスグルタミナーゼ活性化剤、又はセラミド産生促進剤におけるキツネノマゴの抽出物の含有量が、0.00001質量%以上(好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上)20質量%以下(好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)である、前記<12>〜<20>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【0034】
<22>表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤としての、キツネノマゴの抽出物の使用。
<23>表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤の製造のための、キツネノマゴの抽出物の使用。
<24>キツネノマゴの抽出物を、表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤として使用する方法。
<25>キツネノマゴの抽出物を適用する、表皮角化改善方法、皮膚保湿機能改善方法、皮膚バリア機能改善方法、角層水分量増加方法、角層水分量低下抑制方法、又は肌荒れ予防若しくは改善方法。
<26>前記抽出物を表皮の角化不全の予防若しくは治療、皮膚の保湿、皮膚バリア機能の改善、角層水分量の増加、角層水分量の低下の抑制、又は肌荒れの予防若しくは改善を所望する対象者に適用する、前記<24>又は<25>項記載の方法。
<27>前記抽出物の適用が必要な条件下(好ましくは、湿度が低く乾燥した条件下)で前記抽出物を適用する、前記<24>〜<26>のいずれか1項記載の方法。
<28>前記抽出物を皮膚に適用する、前記<24>〜<27>のいずれか1項記載の方法。
<29>皮膚の表皮角化不全の予防若しくは治療方法、皮膚保湿機能改善方法、皮膚バリア機能改善方法、角層水分量増加方法、角層水分量低下抑制方法、又は肌荒れ予防若しくは改善方法のために用いる、キツネノマゴの抽出物。
<30>皮膚の表皮角化不全の予防若しくは治療薬、皮膚保湿機能改善薬、皮膚バリア機能改善薬、角層水分量増加薬、角層水分量低下抑制薬、又は肌荒れ予防若しくは改善薬の製造のための、キツネノマゴの抽出物の使用。
<31>皮膚の表皮角化不全、皮膚保湿機能、皮膚バリア機能、角層水分量、又は肌荒れの非治療的な処置方法のために用いる、キツネノマゴの抽出物の使用。
<32>キツネノマゴの抽出物を医薬組成物又は化粧料組成物の形態で適用する、前記<31>項記載の使用。
<33>キツネノマゴの抽出物を外用組成物の形態で適用する、前記<32>項記載の使用。
<34>キツネノマゴの抽出物を食品又は飲料の形態で適用する、前記<31>項記載の使用。
<35>前記キツネノマゴの抽出物がキツネノマゴの全草の抽出物である、前記<22>〜<34>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<36>前記キツネノマゴの抽出物が、エタノール水溶液(好ましくは、アルコール含有率が30体積%以上(より好ましくは40体積%以上)のエタノール水溶液)を抽出溶媒としてキツネノマゴを抽出して得られた、前記<22>〜<35>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<37>前記表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、又は肌荒れ予防若しくは改善剤における、キツネノマゴの抽出物の含有量が、0.00001質量%以上(好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上)20質量%以下(好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下)である、前記<22>〜<36>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
調製例1
キツネノマゴの全草(新和物産社製)80gに、50体積%エタノール水溶液800mLを加え、室温で7日間抽出を行った。その後、濾過して粗抽出液を得た後、濃縮乾固して抽出固形分6.6gを得た。この抽出固形分を蒸発残分1.0%(w/v)となるよう50体積%エタノール水溶液に溶解し、キツネノマゴの50体積%エタノール抽出物を調製した。
【0037】
調製例2
キツネノマゴの全草(新和物産社製)50gに、95体積%エタノール水溶液500mLを加え、室温で7日間抽出を行った。その後、濾過して粗抽出液を得た後、濃縮乾固して抽出固形分897mgを得た。この抽出固形分を蒸発残分1.0%(w/v)となるよう95体積%エタノール水溶液に溶解し、キツネノマゴの95体積%エタノール抽出物を調製した。
【0038】
試験例 トランスグルタミナーゼ活性の測定
12穴プレートにヒト表皮角化細胞株HEKn(KURABO社製)を4×104個/ウェルにて播種し、培養した。培地には、市販のクラボウ社製EpiLife-KG2を用いた。37℃、5%CO2条件下で一日培養後、増殖因子(BPE、EGF)を含まない培地に交換し、製造例1及び2で調製した固形分換算で1.0%(w/v)となったキツネノマゴ抽出物濃度を最終濃度が表1に示す値となるように、それぞれ添加した。また、キツネノマゴ抽出物のかわりに、コントロールとして抽出溶媒である50体積%エタノール水溶液又は95体積%エタノール水溶液を最終濃度0.1%(v/v)で、ポジティブ・コントロールとしてCaCl2を最終濃度1.5mMで、それぞれ添加した。なお、CaCl2には角化を促す作用が知られており、ポジティブ・コントロールとして用いた。これらはいずれも更に37℃で3日間培養した。
培養終了後、培養液を除去し、PBS(−)で2回洗浄し、150μLの抽出緩衝液(0.5mM EDTA、1%TritonX-100、Protease inhibitorsを含む10mM Tris-HCl buffer、pH7.4)でセルスクレーパーを用い細胞を回収し、超音波処理による細胞破砕液を得た。遠心分離操作(15,000rpm、10分)によって得られた上清をライセートとして評価に用いた。Transglutaminase Colorimetric Microassay Kit(商品名)によりメーカーの使用説明書に従って、酵素活性を測定した。たんぱく質濃度はBCA Protein Assay Kit(商品名、Thermo Scientific社製)を用いてメーカーの使用説明書に従って、定量した。
【0039】
評価結果を表1に示す。各抽出物サンプルのトランスグルタミナーゼ活性は、調製例1で得られた抽出物については50体積%エタノール水溶液を添加したコントロールのトランスグルタミナーゼ活性を1とした場合の相対値で、調製例2で得られた抽出物については95体積%エタノール水溶液を添加したコントロールのトランスグルタミナーゼ活性を1とした場合の相対値で、それぞれ示した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかなように、キツネノマゴ抽出物を添加した系ではトランスグルタミナーゼ活性がポジティブ・コントロールと同程度或いはそれ以上に大きく上昇していた。
さらに、トランスグルタミナーゼ活性は皮膚のバリア機能維持、保湿機能の維持又は改善、及び肌荒れの予防又は改善に関係し、トランスグルタミナーゼを活性化することで、表皮の角化不全の防止や皮膚の保湿機能の改善、及び肌荒れの予防又は改善などが可能となる。したがって、トランスグルタミナーゼ活性化効果を有するキツネノマゴの抽出物を表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤の有効成分とすることができる。
【0042】
試験例2 セラミド産生促進効果の検証
培養プレートを用い、培養液(商品名:EpiLife-KG2、KURABO社製)中にて、正常ヒト表皮角化細胞(商品名:NHEK(F)、KURABO社製)を37℃、5%CO2で培養した。
その後、培養液を上皮成長因子などの増殖因子を除いたEpiLife-KG2に換え、調製例2で調製したキツネノマゴ抽出物を、濃度が固形分換算で1w/v%となるように調整したものを、0.01%、0.05%、又は0.1%量添加した。また、キツネノマゴ抽出物のかわりに、コントロールとして抽出溶媒である50体積%エタノールを最終濃度0.1%v/vで、ポジティブ・コントロールとして下記に示すように調製したユーカリ(Eucalyptus globulus)抽出物を表2に示す最終濃度となるように、それぞれ添加した。なお、ユーカリ抽出物にはセラミドの産生を促す作用が知られており、ポジティブ・コントロールとして用いた。
3日間培養した後、各々の細胞を1wellごと回収した。
【0043】
回収した細胞からBligh and Dyer法により脂質を抽出した有機相をガラス管に移し、窒素乾固した後、クロロホルム、メタノールで再溶解し、脂質サンプルとした。
また、脂質を抽出した後の細胞に0.1N NaOH、1%SDS水溶液を加え、60℃で2時間加熱することにより、タンパク質を可溶化し、室温まで冷却した後2N HClを加えて中和し、タンパク量をBCA法により定量した。
【0044】
調製した脂質サンプルを薄膜クロマトグラフィー(TLC)でクロロホルム:メタノール:酢酸=190:9:1で2回水平展開した。硫酸銅液をスプレーで噴霧し、ホットプレートで焼き付けセラミドを検出し、セラミド量とした。なお、セラミド量は、50体積%エタノールを添加したときのセラミド量を1とし、相対値で示した。
結果を表2に示す。
【0045】
(参考例)
ユーカリノキ(Eucalyptus globules Labillardiere、新和物産社製)の葉40gを細切し、50体積%エタノール400mLを加え、室温・静置条件下で7日間抽出を行った。その後、濾過して、ユーカリ抽出物291mLを得た。得られた抽出物について蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は3.16%(w/v)であった。これを50体積%エタノール水溶液で希釈して、1.0%(w/v)抽出物を調製した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2から明らかなように、キツネノマゴ抽出物を添加した系ではコントロールの系に比べてセラミド産出量の上昇が認められた。したがって、キツネノマゴ抽出物を有効成分とする本発明のセラミド産生促進剤は、セラミド産生を促進することができることがわかる。
さらに、セラミドは皮膚のバリア機能維持、保湿機能の維持又は改善、及び肌荒れの予防又は改善に関係し、セラミドの産生を促進することで、表皮の角化不全の防止や皮膚の保湿機能の改善、及び肌荒れの予防又は改善などが可能となる。したがって、セラミドの産生促進効果を有するキツネノマゴの抽出物を表皮角化改善剤、皮膚保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、及び肌荒れ予防又は改善剤の有効成分とすることができる。
【0048】
試験例3
親和物産社より入手したハグロソウ(Lot.SB-3436)約5gをぬるま湯に浸し、植物の同定を専門家が検鏡により行った。その結果、花穂が含まれており、がく片は細く、白色透明な縁取りがあり、長毛の存在が確認された。これらの特徴から、Lot.SB-3436として入手した植物は、ハグロソウではなく、キツネノマゴであると同定された。
【0049】
Lot.SB-3436として入手したキツネノマゴ600gを細切し、99.5体積%エタノール水溶液6000mLを加え、室温・静置条件下で7日間抽出を行った。その後、濾過して、キツネノマゴ抽出物4504mLを得た。得られた抽出物4000mLにヘキサン2000mLを加え撹拌した後、さらに水6000mLを加えた。これを液液分配した後、下層8367mLを抜出した。得られた抽出液2500mLに1,3-ブチレングリコール1000mLを加え、エバポレータにて濃縮し、エタノール及び水を除去した。これに水1500mLを加えた後、5℃、4日間の条件で澱出しした。濾過により不溶物を除去した後、得られた濾液2403Lに40体積%1,3-ブチレングリコール水溶液を加え、抽出物3266mLを調製した。得られた抽出物について蒸発残分を算出したところ、蒸発残分は0.02%(w/v)であった。
【0050】
健常男女10名の左右頬部及び下腿外側部のそれぞれに、表3に示した処方のキツネノマゴ抽出物配合化粧水又はプラセボ化粧水を、1日2回、4週間連続して塗布した。4週間化粧水を塗布した後、これらの化粧水の塗布を中止した。
【0051】
【表3】
【0052】
化粧水塗布開始前(0W)、4週間の化粧水連続塗布後(4W)、及び化粧水の塗布中止1週間後(5W)の頬部及び下腿外側部の角層水分量及び皮膚表面粗さを下記の方法により測定し、皮膚の性状を評価した。
【0053】
(角層水分量の測定)
測定当日は測定部位を洗浄後、20℃、湿度40%に設定した環境下で20分間馴化した。
Corneometer CM825MP(商品名、Courage+Khazaka electronic GmbH社製)を用いて、1部位あたり5回キャパシタンスを測定し、5回の平均値を各被験者の前記測定部位のキャパシタンス値として、角層水分量を評価した。その結果を表4(頬部)及び表5(下腿外側部)に示す。なお、化粧水塗布開始前(0W)のキャパシタンス値を0としたときの、4週間の化粧水連続塗布後(4W)及び化粧水の塗布中止1週間後(5W)のキャパシタンス値の変化量の被験者10名の平均値を、その部位のΔキャパシタンス値とした。
【0054】
(皮膚表面粗さの測定)
測定当日は測定部位を洗浄後、20℃、湿度40%に設定した環境下で20分間馴化した。
Visioscan VC98(商品名、Courage+Khazaka electronic GmbH社製)を用いて、1部位あたり2画像を撮影し、付属の解析ソフトにより一定面積当たりのSELSパラメーター(SEr)を算出し、2画像の平均値を各被験者の前記測定部位のSEr値として、皮膚表面粗さを評価した。その結果を表6(頬部)及び表7(下腿外側部)に示す。なお、化粧水塗布開始前(0W)のSELSパラメーターを0としたときの、4週間の化粧水連続塗布後(4W)及び化粧水の塗布中止1週間後(5W)のSELSパラメーターの変化量の被験者10名の平均値を、その部位のΔSErとした。
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
表4から明らかなように、頬部において、5W時点でのΔキャパシタンス値で表される角層水分量の初期値(0W)からの変化量は、プラセボ化粧水塗布部よりもキツネノマゴ抽出物配合化粧水塗布部の方が大きかった。すなわち、表4の結果は、キツネノマゴ抽出物は角層水分量の増加作用を有することを示している。
【0060】
表5から明らかなように、下腿外側部において、4W及び5W時点での角層水分量の初期値からの変化量の値から、プラセボ化粧水塗布部よりもキツネノマゴ抽出物配合化粧水塗布部の方が水分の低下量が少ないことがわかる。すなわち、表5の結果は、キツネノマゴ抽出物は角層水分量の低下を抑制する作用を有することを示している。
【0061】
表6から明らかなように、頬部において、4W及び5W時点でのΔSErで示される皮膚表面粗さの初期値からの変化量の値から、プラセボ化粧水塗布部では皮膚表面の粗さが大きくなるのに対して、キツネノマゴ抽出物配合化粧水塗布部では皮膚表面の粗さが低下していることがわかる。すなわち、表6の結果は、キツネノマゴ抽出物は頬部において肌荒れを予防又は改善する作用を有することを示している。
【0062】
表7から明らかなように、下腿外側部において、4W及び5W時点でのΔSErで示される皮膚表面粗さの初期値からの変化量の値から、プラセボ化粧水塗布部では皮膚表面の粗さが大きくなるのに対して、キツネノマゴ抽出物配合化粧水塗布部では皮膚表面の粗さの発生が抑制されていることがわかる。すなわち、表7の結果は、キツネノマゴ抽出物は下腿外側部において肌荒れを予防又は改善する作用を有することを示している。
【0063】
以上のように、キツネノマゴ抽出物は、角層水分量の増加作用、角層水分量の低下を抑制する作用、及び肌荒れを予防又は改善する作用を有している。したがって、キツネノマゴの抽出物を表皮角化改善剤、皮膚の保湿機能改善剤、皮膚バリア機能改善剤、角層水分量増加剤、角層水分量低下抑制剤、及び肌荒れ予防又は改善剤の有効成分とすることができる。