特許第6249518号(P6249518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249518
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/00 20060101AFI20171211BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20171211BHJP
   B60C 9/02 20060101ALI20171211BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   B60C17/00 B
   B60C15/06 B
   B60C9/02 C
   B60C1/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-237662(P2013-237662)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2015-98198(P2015-98198A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(72)【発明者】
【氏名】湯川 直樹
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−137853(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/104196(WO,A1)
【文献】 特開2002−316519(JP,A)
【文献】 特開2011−240895(JP,A)
【文献】 特開2008−094116(JP,A)
【文献】 特開2011−121409(JP,A)
【文献】 特開2009−137447(JP,A)
【文献】 特開平10−193914(JP,A)
【文献】 特開2004−306823(JP,A)
【文献】 特開2007−210363(JP,A)
【文献】 特開2007−045333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールの端から半径方向略内向きに延びる一対のクリンチと、それぞれがクリンチよりも軸方向内側に位置する一対のビードと、トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがカーカスよりも軸方向内側に位置してトレッドとビードとの間に位置する一対の荷重支持層と、カーカス及び荷重支持層の内面に接合されるインナーライナーとを備えており、
このビードがコアとコアから半径方向外向きに延びる第一エイペックスと第一エイペックスの軸方向外側に位置して半径方向外向きに延びる第二エイペックスとを備えており、
このカーカスがカーカスプライからなっており、このカーカスプライがコアの周りを軸方向内側から外側に向かって折り返されており、この折り返しにより、カーカスプライには、主部と折り返し部とが形成されており、
この折り返し部が第一エイペックスと第二エイペックスとの間に積層されており、
ビードベースラインからの高さH1が17mmに位置するクリンチの外面上の点を点P1とし、この点P1においてインナーライナーの内面までの厚みが最小となる厚みをTsとし、厚みTsとなるインナーライナーの内面上の点を点P2とし、この点P1と点P2を結ぶ直線をL1とし、この直線L1上の点であって点P2からの距離が厚みTsの0.4倍となる点を点Cとし、コアの半径方向外端を通り軸方向に延びる直線L2と、折り返し部であってコアに接合された部分の軸方向外端を通り半径方向の延びる直線L3との交点を点Bとし、点Cと点Bを通る直線をL4としたときに、
この厚みTsが10mm以上17mm以下であり、
このコアから半径方向外向きに延びる折り返し部が主部の軸方向外面と直線L2と直線L1と直線L4とで囲まれる領域内を通り、
この荷重支持層の半径方向内端が直線L1より半径方向外側に位置する空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記第一エイペックスの半径方向先端を点Dとしたときに、
ビードベースラインから点Dまでの高さH2とタイヤ高さHtとの比H2/Htが0.15以上0.40以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
上記クリンチの架橋ゴムの複素弾性率Ecと上記第二エイペックスの架橋ゴムの複素弾性率Esとの比Ec/Esが、0.55以上1.25以下である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
上記第一エイペックス架橋ゴムの複素弾性率Efと上記第二エイペックスの架橋ゴムの複素弾性率Esとの比Ef/Esが、0.75以上1.28以下である請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
荷重支持層の架橋ゴムの複素弾性率Erが5.0MPa以上13.5MPa以下である請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。詳細には、本発明は、サイドウォールに荷重支持層を備えたランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サイドウォールの内側に荷重支持層を備えたランフラットタイヤが開発されている。この支持層には、高硬度な架橋ゴムが用いられている。このランフラットタイヤは、サイド補強タイプと称されている。このタイプのランフラットタイヤでは、パンクによって内圧が低下すると、支持層によって荷重が支えられる。この支持層は、パンク状態でのタイヤの撓みを抑制する。パンク状態で走行が継続されても、高硬度な架橋ゴムが、支持層での発熱を抑制する。このランフラットタイヤでは、パンク状態でも、ある程度の距離の走行が可能である。このランフラットタイヤが装着された自動車には、スペアタイヤの常備は不要である。このランフラットタイヤの採用により、不便な場所でのタイヤ交換が避けられうる。
【0003】
パンク状態にあるランフラットタイヤの走行が継続されると、支持層の変形と復元とが繰り返される。この繰り返しにより、ビードエイペックスとカーカスプライとの間で剥離や破損を生じることがある。ビードエイペックスとカーカスプライとの間でプライルースを生じることがある。
【0004】
特許文献1には、このカーカスプライの折り返し部がベルトとオーバーラップしたランフラットタイヤが開示されている。このカーカスは、いわゆる「超ハイターンアップ構造」を有する。折り返し部がベルトとオーバーラップしているので、プライルースの発生が抑制されている。このカーカスは、タイヤの耐久性の向上に寄与する。
【0005】
特許文献2には、ビードエイペックスの軸方向外側とカーカスプライとの間に、補強フィラー層を備えるタイヤが開示されている。このタイヤは、補強フィラー層を備えることで、プライルースの発生が抑制されている。この補強フィラー層も、タイヤの耐久性の向上に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−28300号公報
【特許文献2】特許第3312880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ランフラットタイヤは、荷重支持層を備えており、サイドウォールの剛性が大きい。ランフラットタイヤは、縦ばね定数が大きい。更に、特許文献1のタイヤは、いわゆる「超ハイターンアップ構造」のカーカスを備えている。このカーカスは、タイヤの縦ばね定数を更に大きくする。特許文献1のタイヤは、乗り心地に劣りやすい。
【0008】
特許文献2のタイヤでは、カーカスプライの折り返し部とベルトとがオーバーラップしていない。このタイヤは、特許文献1のタイヤに比べて、縦ばね定数を小さく出来る。この補強フィラー層は、乗り心地の低下を抑制しつつ、タイヤの耐久性を向上しうる。しかしながら、パンク状態にあるランフラットタイヤの走行では、ビードエイペックスの軸方向外側のカーカスプライに圧縮応力が発生する。このタイヤでも、ビードエイペックスの軸方向外側に積層されたカーカスプライで、圧縮応力による破損及び剥離が生じ得る。この補強フィラー層では、カーカスプライの破損及び剥離を十分に抑制し得ない。このタイヤは、耐久性の面で改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、耐久性に優れ、且つ乗り心地にも優れるランフラットタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールの端から半径方向略内向きに延びる一対のクリンチと、それぞれがクリンチよりも軸方向内側に位置する一対のビードと、トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがカーカスよりも軸方向内側に位置してトレッドとビードとの間に位置する一対の荷重支持層と、カーカス及び荷重支持層の内面に接合されるインナーライナーとを備えている。
このビードは、コアと、コアから半径方向外向きに延びる第一エイペックスと、第一エイペックスの軸方向外側に位置して半径方向外向きに延びる第二エイペックスとを備えている。このカーカスは、カーカスプライからなっている。このカーカスプライは、コアの周りを軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライには、主部と折り返し部とが形成されている。この折り返し部は、第一エイペックと第二エイペックスとの間に積層されている。
ビードベースラインからの高さH1が17mmに位置するクリンチの外面上の点を点P1とする。この点P1においてインナーライナーの内面までの厚みが最小となる厚みをTsとする。厚みTsとなるインナーライナーの内面上の点を点P2とする。この点P1と点P2とを結ぶ直線をL1とする。この直線L1上の点であって、点P2からの距離が厚みTsの0.4倍となる点を点Cとする。コアの半径方向外端を通り軸方向に延びる直線L2と、折り返し部であってコアに接合された部分の軸方向外端を通り半径方向の延びる直線L3との交点を点Bとする。点Cと点Bを通る直線をL4とする。このときに、この厚みTsが10mm以上17mm以下である。このコアから半径方向外向きに延びる折り返し部が主部の軸方向外面と直線L2と直線L1と直線L4とで囲まれる領域内を通っている。
【0011】
好ましくは、上記第一エイペックスの半径方向先端を点Dとしたときに、ビードベースラインから点Dまでの高さH2とタイヤ高さHtとの比H2/Htは、0.15以上0.40以下である。
【0012】
好ましくは、上記クリンチの架橋ゴムの複素弾性率Ecと上記第二エイペックスの架橋ゴムの複素弾性率Esとの比Ec/Esは、0.55以上1.25以下である。
【0013】
好ましくは、上記第一エイペックス架橋ゴムの複素弾性率Efと上記第二エイペックスの架橋ゴムの複素弾性率Esとの比Ef/Esは、0.75以上1.28以下である。
【0014】
好ましくは、荷重支持層の架橋ゴムの複素弾性率Erは、5.0MPa以上13.5MPa以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るランフラットタイヤは、耐久性に優れるとともに、乗り心地の低下が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤが示された断面図である。
図2図2は、図1のタイヤの部分拡大図である。
図3図3は、図1のタイヤの一部分が示された説明図である。
図4図4は、図1のタイヤの使用状態が示された説明図である。
図5図5は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図6図6は、本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、紙面と垂直な方向はタイヤ2の周方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、上下方向がタイヤ2の半径方向である。図1の一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。直線BLは、ビードベースラインを示す。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面CLに対して対称である。このビードベースラインBLは、タイヤ2が基づく規格で定められるビード径位置を通って、タイヤ2の軸方向に延びる直線である。
【0019】
このタイヤ2は、トレッド6、ウィング8、サイドウォール10、クリンチ12、ビード14、カーカス16、荷重支持層18、ベルト20、バンド22、インナーライナー24及びチェーファー26を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0020】
トレッド6は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド6は、路面と接地するトレッド面28を形成する。トレッド面28には、溝30が刻まれている。この溝30により、トレッドパターンが形成されている。トレッド6は、ベース層32とキャップ層34とを有している。キャップ層34は、ベース層32の半径方向外側に位置している。キャップ層34は、ベース層32に積層されている。ベース層32は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層32の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層34は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0021】
図1の両矢印Htは、タイヤ2の高さを示している。この高さHtは、ビードベースラインBLからトレッド面28の半径方向外端までの距離として測られる。この高さHtは、半径方向の直線距離として測られる。このタイヤ2では、べードベースラインBLから赤道面CLとトレッド面28との交点までの距離として測られる。
【0022】
ウィング8は、トレッド6とサイドウォール10との間に位置している。ウィング8は、トレッド6及びサイドウォール10のそれぞれと接合している。ウィング8は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。
【0023】
サイドウォール10は、トレッド6の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール10の半径方向外側端は、トレッド6及びウィング8と接合されている。このサイドウォール10の半径方向内側端は、クリンチ12と接合されている。このサイドウォール10は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール10は、軸方向においてカーカス16よりも外側に位置している。サイドウォール10は、カーカス16の損傷を防止する。
【0024】
クリンチ12は、サイドウォール10の半径方向略内側に位置している。クリンチ12は、軸方向において、ビード14及びカーカス16よりも外側に位置している。クリンチ12は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ12は、図示されないリムに組み込まれたときに、リムのフランジと当接する。
【0025】
ビード14は、サイドウォール10よりも半径方向内側に位置している。ビード14は、クリンチ12よりも軸方向内側に位置している。ビード14は、コア36と、第一エイペックス38と、第二エイペックス40とを備えている。
【0026】
このコア36は、リング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤー(典型的にはスチール製ワイヤー)を含む。コア36の断面では、非伸縮性ワイヤーが軸方向に略等間隔に複数本並べられ、半径方向にも略等間隔に複数本並べられている。これらの並べられた非伸縮性ワイヤーはコーティングゴムで被覆されいる。このコア36の断面形状は、略矩形である。このビード14は、ストランドビード構造を備えている。ここでいうストランドビード構造は、一本の非伸縮性ワイヤーが巻回されて形成されるコアを含む。言い換えると、このストランドビード構造は、いわゆるシングルワインディングビード構造を含む。コア36は、このストランドビード構造に限られず、所謂ケーブルビード構造であってもよい。
【0027】
図2に示す様に、このコア36は、軸方向外向きに面する軸方向外側面36aと、半径方向外向きに面する半径方向外側面36bと、軸方向内向きに面する軸方向内側面36cと、半径方向内向きに面する半径方向内側面36dとを備えている。この軸方向外側面36aと半径方向外側面36bとが略直交している。
【0028】
第一エイペックス38は、コア36から半径方向外向きに延びている。第一エイペックス38は、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス38は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0029】
第二エイペックス40は、第一エイペックス38とカーカス16との軸方向外側に位置している。第二エイペックス40は、カーカス16とクリンチ12との間に位置している。この第二エイペックス40は、クリンチ12に接合されている。第二エイペックス40は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。第二エイペックス40は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0030】
図1のカーカス16は、カーカスプライ42からなる。カーカスプライ42は、両側のビード14の間に架け渡されている。カーカスプライ42は、トレッド6及びサイドウォール10に沿っている。カーカスプライ42は、コア36の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ42には、主部44と折り返し部46とが形成されている。
【0031】
図2に示される様に、折り返し部46は、コア36の半径方向内側面36dから軸方向外側面36aに積層されて折り返されている。折り返し部46は、コア側部46a、エイペックス積層部46b及びプライ積層部46cを備えている。コア側部46aは、コア36の軸方向外側面36aに積層されている。エイペックス積層部46bは、コア側部46aに連続しており、半径方向外向きに延びている。エイペックス積層部46bは、第一エイペックス38と第二エイペックス40との間に積層されている。プライ積層部46cは、エイペックス積層部46bに連続しており、主部44に重ね合わされている。言い換えると、このタイヤ2では、この折り返し部46(エイペックス積層部46b)は、第一エイペックス38と第二エイペックス40との間に積層されている。折り返し部46の端部はプライ積層部46cであり、プライ積層部46cが主部44に積層されている。
【0032】
この折り返し部46は、コア側部46a及びエイペックス積層部46bを備え、プライ積層部46cを備えなくてもよい。折り返し部46の端部はエイペックス積層部46bであり、エイペックス積層部46bは、第一エイペックス38と第二エイペックス40との間に位置してもよい。エイペックス積層部46bは、第一エイペックス38とチェーファー26との間に位置してもよい。
【0033】
図示されていないが、カーカスプライ42は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス16は、ラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維及びポリケトン繊維が例示される。
【0034】
図1の荷重支持層18は、サイドウォール10の軸方向内側に位置している。この支持層18は、カーカス16よりも軸方向内側に位置している。この支持層18は、半径方向においてトレッド6とビード14との間に位置している。この支持層18は、カーカス16とインナーライナー24とに挟まれている。支持層18は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。この支持層18は、三日月に類似の形状を有する。支持層18は、高硬度な架橋ゴムからなる。タイヤ2がパンクしたとき、この支持層18が荷重を支える。この支持層18により、パンク状態であっても、タイヤ2はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ2は、ランフラットタイヤとも称されている。このタイヤ2は、サイド補強タイプである。このタイヤ2が、図1に示された支持層18の形状とは異なる形状を有する支持層を備えてもよい。
【0035】
カーカス16のうち、支持層18とオーバーラップしている部分は、インナーライナー24と離れている。換言すれば、支持層18の存在により、カーカス16は湾曲させられている。パンク状態のとき、支持層18には圧縮荷重がかかり、カーカス16のうち支持層18と近接している領域には引張り荷重がかかる。支持層18はゴム塊なので、圧縮荷重に十分に耐えうる。カーカス16はコードを備えており、引張り荷重に十分に耐えうる。支持層18とカーカス16のコードとにより、パンク状態でのタイヤ2の縦撓みが抑制される。縦撓みが抑制されたタイヤ2は、パンク状態での操縦安定性に優れる。
【0036】
支持層18の架橋ゴムの複素弾性率Erが大きいタイヤ2は、パンク状態での縦撓みが抑制される。この観点から、支持層18の複素弾性率Erは、好ましくは5.0MPa以上であり、更に好ましくは6.0MPa以上であり、特に好ましくは7.2MPa以上である。一方で、支持層18の架橋ゴムの複素弾性率Erが小さいタイヤ2は、通常状態での乗り心地に優れる。この観点から複素弾性率Erは、好ましくは13.5MPa以下であり、更に好ましくは12.0MPa以下であり、特に好ましくは10.5MPa以下である。
【0037】
ベルト20は、トレッド6の半径方向内側に位置している。ベルト20は、カーカス16と積層されている。ベルト20は、カーカス16を補強する。ベルト20は、内側層50及び外側層52からなる。内側層50の幅は、外側層52の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層50及び外側層52のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層50のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層52のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト20が、3以上の層を備えてもよい。
【0038】
バンド22は、フルバンド54と一対のエッジバンド56とからなる。バンド22は、ベルト20の半径方向外側に位置している。軸方向において、フルバンド54の幅はベルト20の幅と略同等である。エッジバンド56は、ベルト20の軸方向端部に位置している。エッジバンド56は、内側層50の軸方向端部と外側層52の軸方向端部との半径方向外側を覆っている。図示されていないが、フルバンド54とエッジバンド56とは、それぞれコードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。フルバンド54とエッジバンド56とは、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト20が拘束されるので、ベルト20のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0039】
ベルト20及びバンド22は、補強層を構成している。ベルト20のみから、補強層が構成されてもよい。バンド22のみから、補強層が構成されてもよい。
【0040】
インナーライナー24は、カーカス16及び支持層18の内面に接合されている。インナーライナー24は、架橋ゴムからなる。インナーライナー24には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー24は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0041】
チェーファー26は、ビード14の近傍に位置している。チェーファー26は、コア36の軸方向内側から半径方向内向きに延びて、ビートトウBtに至っている。チェーファー26は、ビードトウBtからコア36の半径方向内側を軸方向外向きに延びている。チェーファー26は、折り返し部46のコア側部46aに積層されている。更に、チェーファー26は、半径方向上方に延びるエイペックス積層部46bに積層されている。チェファー26の端は、エイペックス積層部46bの軸方向外側に位置している。このチェ−ファー26は、コア36周りに積層されたカーカスプライ42の折り返し部46を保護している。
【0042】
タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー26がリムと当接する。この当接により、ビード14の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー26は、布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー26が、クリンチ12と一体とされてもよい。この場合、チェーファー26の材質はクリンチ12の材質と同じとされる。
【0043】
このタイヤ2では、サイドウォール10及びクリンチ12からなる部分はサイド部58と称される。サイド部58は、トレッド6の端から半径方向略内向きに延びている。このサイド部58の軸方向内側に、ビード14が位置している。サイド部58はリブ60を備えている。これらのリブ60は、軸方向に突出して形成されている。
【0044】
このタイヤ2がリムに組み込まれたとき、リブ60がリムのフランジよりも軸方向外側に位置している。リブ60は、軸方向外向きに、フランジの端から突出している。リブ60は、リムのフランジの損傷を防止する。
【0045】
このタイヤ2のサイドフォール10の外面10aには、複数のディンプル62が形成されている。このタイヤ2のディンプル62は、周方向を長手方向にする略長方形の凹部形状として形成されている。このディンプル62が周方向及び半径方向に並べて形成されている。このディンプル62は、サイドウォール10の放熱に寄与する。このディンプル62は、長方形に限られず、円形であってもよいし他の多角形であってもよい。更には、ディンプル62に代えて、又はディンプル62と共にフィンが形成されてもよい。
【0046】
図2の両矢印H1は、ビードベースラインBLからタイヤ2のサイド部58(クリンチ12)の外面の点P1までの高さを示している。この高さH1は、半径方向の直線距離として測定される。この高さH1が17mmとなるサイド部58の外面上の点が、点P1とされている。
【0047】
図2の二点鎖線L1は、点P1と点P2とを通る直線である。両矢印Tsは、点P1から点P2までのタイヤ2の厚みを示している。この点P2は、厚みTsが最小値となる、インナーライナー24の内面上の点である。この厚みTsは、点P1における、タイヤ2の最小厚みを示している。
【0048】
図2の二点鎖線L2は、コア36の半径方向外端を通って軸方向の延びる直線である。二点鎖線L3は、折り返し部46のコア側部46aの軸方向外端を通って半径方向に延びる直線である。点Bは、この直線L2と直線L3との交点を示している。点Cは、直線L1上の点であって、点P2からTsの0.40倍の距離にある点を示している。二点鎖線L4は、点Bと点Cとを通る直線である。点Dは、第一エイペックス38の半径方向先端を示している。両矢印H2は、ビードベースラインBLから点Dまでの高さを示している。この高さH3は、第一エイペックス38の高さを示している。両矢印H3は、折り返し部46の高さを示している。この高さH3は、ビードベースラインBLから折り返し部46の半径方向外端までの距離である。この高さH2及び高さH3は、半径方向の直線距離として測られる。点Eは、直線L1と第二エイペックス40の軸方向内面との交点を示している。両矢印Teは、点P2から点Eまでの距離を示している。
【0049】
図3の斜線で示された領域Aは、主部44の軸方向外面44aと、直線L2と、直線L1と、直線L4とで囲まれる領域を示している。このタイヤ2では、折り返し部46のエイペックス積層部46bがこの領域A内を通り半径方向外向きに延びている。このエイペックス積層部46bは、軸方向内向きに凸な曲線状に湾曲して延びている。
【0050】
図4には、路面Gをパンク状態で走行するタイヤ2が示されている。支持層18の半径方向中央が大きく屈曲する。支持層18の半径方向中央において、軸方向内側は大きく圧縮変形する。軸方向外側は大きく伸張変形する。
【0051】
一方、ビード14では、第一エイペックス38の軸方向内側は大きく伸張変形する。第二エイペックス40の軸方向外側は大きく圧縮変形する。このタイヤ2では、折り返し部46は、第二エイペックス40の軸方向内側に積層されている。これにより、折り返し部46の破損及び剥離が抑制されている。
【0052】
特に、パンク状態で走行するタイヤ2では、図3の点P1の近傍に応力が集中する。この応力が集中する点P1の位置は、リムのフランジとの関係で定まる。点P1の高さH1は、タイヤサイズが変わっても大きく変わらない。このタイヤ2では、折り返し部46のエイペックス積層部46bは領域Aを通っている。このタイヤ2では、点P1の近傍において、折り返し部46は軸方向内側を通っている。これにより、集中する応力の影響が抑制されている。これにより、折り返し部46の破損及び剥離が抑制されている。更に、折り返し部46が領域Aを通ることで、大きく湾曲させられている。この折り返し部46の湾曲は、縦ばね定数の低減にも寄与している。
【0053】
これらの観点から、図2の点Cの位置は厚みTsの0.40倍の距離にされている。この観点から、点P1から点Eまでの距離Teと厚みTsとの比Te/Tsは、0.40倍以下であり、好ましくは0.33倍以下であり、更に好ましく0.25倍以下である。
【0054】
一方で、この距離Teが小さいタイヤ2では、第一エイペックス38が小さくなる。第一エイペックス38が小さいタイヤ2は、剛性が低下する。この観点から、比Te/Tsは、0より大きく、更に好ましくは、0.25倍以上であり、特に好ましくは0.33倍以上である。
【0055】
このタイヤ2では、厚みTsを厚くすることで、剛性が大きくなる。この剛性の向上は、耐久性の向上に寄与する。この観点から、厚みTsは、好ましくは10mm以上であり、更に好ましくは13mm以上である。一方で、この厚みTsが大きいタイヤ2は、縦ばね定数が大きくなり、乗り心地に劣る。また、厚みTsが大きいタイヤ2は、重量が大きくなる。これらの観点から、厚みTsは、好ましくは17mm以下であり、更に好ましくは15mm以下である。
【0056】
このビードベースラインから点Dまでの高さH2が大きいタイヤ2では、耐久性が向上する。一方で、第一エイペックス38の高さが高くなり、コア36と第一エイペックス38との貼り付けが容易でなくなる。高さH2が大きいタイヤ2は生産性が低下する。この観点から、比H2/Htは、好ましくは0.40以下である。一方で、高さH2が小さいタイヤ2でも、第一エイペックス38の貼り付けが容易でなくなる。この観点から、比H2/Htは、好ましくは0.15以上であり、更に好ましくは0.25以上である。
【0057】
このタイヤ2では、エイペックス40の軸方向外側にクリンチ12が接合されている。エイペックス40とクリンチ12とが接合されている。エイペックス40の架橋ゴムの複素弾性率Esとクリンチの架橋ゴムの複素弾性率Ecとが大きく異なると、エイペックス40とクリンチ12との境界を基点にして破損し易い。複素弾性率Esと複素弾性率Ecとの差が小さいタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から複素弾性率Ecと複素弾性率Esとの比Ec/Esは、好ましくは0.55以上であり、更に好ましくは0.75以上であり、特に好ましくは0.90以上である。同様の観点から、この比Ec/Emは、好ましくは1.25以下であり、更に好ましくは1.15以下であり、特に好ましくは1.10以下である。
【0058】
このタイヤ2では、第一エイペックス38と第二エイペックス40とが折り返し部46のエイペックス積層部46bを介して接合されている。このタイヤ2では、第一エイペックス38とエイペックス積層部46bと第二エイペックス40とが一体で変形させられる。第一エイペックス38の架橋ゴムの複素弾性率Efと第二エイペックスの架橋ゴムの複素弾性率Esとが大きく異なると、第一エイペックス38及び第二エイペックス40とエイペックス積層部46bとの間で、破損及び剥離が生じ易い。複素弾性率Efと複素弾性率Esとの差が小さいタイヤは、耐久性に優れる。この観点から比Ef/Esは、好ましくは0.75以上であり、更に好ましくは0.80以上であり、特に好ましくは0.90以上である。同様の観点から、比Ef/Esは、1.28以下であり、更に好ましくは1.20以下であり、特に好ましくは1.10以下である。
【0059】
このタイヤ2では、ディンプル62が形成されているので、サイドウォール10に大きな表面積が得られる。大きな表面積は、タイヤ2から大気への放熱を促進する。このディンプル62は、タイヤ2の周囲に乱流を発生させる。この乱流により、タイヤ2から大気への放熱がさらに促進される。このタイヤ2は、昇温しにくい。このタイヤ2では、熱に起因するゴム部材の破損及びゴム部材間の剥離が抑制されている。このディンプル62が形成されたタイヤ2は、特に耐久性に優れる。
【0060】
図4に示される様に、路面Gをパンク状態で走行するタイヤ2では、支持層18が変形を繰り返す。この変更の繰り返しにより、タイヤ2の温度が上昇する。このタイヤ2では、コードを備えるカーカス16が、支持層18の伸張変形を抑制する。このカーカス16は、支持層18の変形を抑制する。高温での伸張変形を抑制する観点から、カーカス16のコードは、レーヨン繊維、アラミド繊維又はポリケトン繊維からなることが好ましい。
【0061】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法は、図1に示されるように、タイヤ2から切り出された断面で測定される。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0062】
本発明において、複素弾性率は、「JIS K 6394」の規定に準拠して、測定される。測定条件は、以下の通りである。
粘弾性スペクトロメーター:岩本製作所の「VESF−3」
初期歪み:10%
動歪み:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0063】
図5には、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤ66が示されている。このタイヤ66は、タイヤ2のインナーライナー24に代えて、インナーライナー68を備えている。その他の構成は、タイヤ2と同様である。ここでは、タイヤ2と同様の構成について、その説明は省略される。タイヤ2と異なる構成について説明がされる。また、ここでは、タイヤ2と同様の構成については、同じ符号を用いて説明がされる。
【0064】
このインナーライナー68は、中央部70と一対の端部72とからなっている。中央部70は、一方の支持層18の内側面の半径方向外側と他方の支持層18の内側面の半径方向外側とに接合する。一対の端部72は、それぞれ支持層18の内側面の半径方向内側に接合されてチェーファー26に至る。中央部70と端部72とは、支持層18の内側面で不連続に分割されている。この分割されたインナーライナー68は、タイヤ2の軽量化と縦ばね定数の低減とに寄与する。このタイヤ66では、支持層18を備えているので、このインナーライナー68を用いても十分な空気遮蔽性を発揮する。
【0065】
図5の両矢印L1は、支持層18と中央部70との重ね代を示している。両矢印L2は、支持層18と端部72との重ね代を示している。この重ね代L1及び重ね代L2は、図5に示される断面において、支持層18の内側面に沿って測られる。この重ね代L1及びL2が十分な長さにされることで、インナーライナー68と支持層18とが一体化され、製造工数の増加が抑制されうる。この観点から、重ね代L1及びL2は、好ましくは5mm以上であり、更に好ましくは7mm以上である。一方で、前述の軽量化及び縦ばね定数の低減の観点から、この重ね代L1及びL2は、好ましくは20mm以下であり、更に好ましくは15mm以下である。
【0066】
また、図4に示されたタイヤ2と同様に、パンク状態で走行するタイヤ66でも、支持層18の半径方向中央において、軸方向内側は大きく圧縮変形する。この分割されたインナーライナー68は、この大きな圧縮変形の影響が軽減される。これにより、インナーライナー68の破損及び剥離が抑制される。この分割されたインナーライナー68は、タイヤ66の耐久性の向上にも寄与しうる。
【0067】
図6には、本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤ74の一部が示されている。ここでは、タイヤ2と同様の構成について、その説明は省略される。タイヤ2と異なる構成について説明がされる。また、ここでは、タイヤ2と同様の構成については、同じ符号を用いて説明がされる。
【0068】
このタイヤ74は、カーカス16に代えてカーカス76を備えている。このタイヤ74のその他の構成は、タイヤ2の構成と同様にされている。
【0069】
このカーカス76は、カーカスプライ78からなる。カーカスプライ78は、両側のビード14の間に架け渡されている。カーカスプライ78は、コア36の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ78には、主部80と折り返し部82とが形成されている。
【0070】
折り返し部82は、コア36の半径方向内側面36dから軸方向外側面36aに積層されて折り返されている。この折り返し部82は、コア側部82a、エイペックス積層部82b及びプライ積層部82cを備えている。コア側部82aは、コア36の軸方向外側面36aに積層されている。エイペックス積層部82bは、コア側部82aに連続しており、半径方向外向きに延びている。プライ積層部82cは、エイペックス積層部82bに連続しており、主部44に重ね合わされている。プライ積層部82cの端84は、ベルト22の半径方向内側に位置している。プライ積層部82cの端84は、主部44とベルト22の間に位置している。このカーカス76は、いわゆる「超ハイターンアップ構造」を有する。
【0071】
このタイヤ74では、エイペックス積層部82bは、領域A内(図3参照)を通っている。これにより、折り返し部82の破損及び剥離が抑制されている。更に、エイペックス積層部82bが領域Aを通ることで、大きく湾曲させられている。この折り返し部46の湾曲は、縦ばね定数の低減にも寄与している。このタイヤ74は、カーカス76を備えていながら、耐久性に優れ、且つ乗り心地にも優れる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0073】
[実施例1]
図1及び図2に示された基本構成を備えた実施例1の空気入りタイヤ(ランフラットタイヤ)を得た。このタイヤのサイズは、235/55R18であった。このタイヤのサイドウォールには、図1に示されたように、ディンプルが形成された。カーカスの折り返し部の半径方向高さH3は、15mmであった。折り返し部の半径方向外端は、第一エイペックスと第二エイペックスとの間に位置していた。折り返し部の半径方向外端は、第一エイペックスとチェーファーとの間に位置していた。図2に示された厚みTsと、比Te/Tsと、比H2/Htと、第一エイペックスの複素弾性率Efと、第二エイペックスの複素弾性率Esと、クリンチの複素弾性率Ecと、支持層(荷重支持層)の複素弾性率Erと、複素弾性率の比Ec/Esと、複素弾性率の比Ef/Esとは、表1に示された通りであった。このタイヤの評価には、リム幅の呼びが「7J」のリムが用いられた。
【0074】
[比較例1]
比較例1は、従来のランフラットタイヤである。図示されないが、このタイヤでは、カーカスプライの折り返し部は、エイペックスの軸方向外側に沿って巻き上げられていた。この折り返し部がベルトとオーバーラップした、いわゆる「超ハイターンアップ構造」を備えたタイヤであった。ディンプルを備えないことと、このカーカスとビードとチェーファーとが異なる他は、実施例1のタイヤと同様の構成を備えていた。
【0075】
[実施例2]
サイドウォールにディンプルを備えていない他は、実施例1と同様にして、タイヤが得られた。
【0076】
[実施例3]
サイドウォールにディンプルを備えていない他は、図5に示された基本構成を備えるタイヤが得られた。このタイヤは、分割されたインナーライナーを備える他は、実施例2のタイヤと同様の構成を備えていた。
【0077】
[実施例4−5及び比較例2]
比Te/Tsを下記の表2の通りとした他は実施例2と同様にして、タイヤが得られた。
【0078】
[実施例6−7及び比較例3−4]
厚みTsと比Te/Tsとを下記の表2の通りとした他は実施例2と同様にして、タイヤが得られた。
【0079】
[比較例5及び実施例8−10]
厚みTsと比H2/Htとを下記の表3の通りとした他は実施例2と同様にして、タイヤが得られた。
【0080】
[実施例11−14]
クリンチの複素弾性率Ecが下記の表4の通りとされた他は実施例2と同様にして、タイヤが得られた。
【0081】
[実施例15−18]
第二エイペックスの複素弾性率Esが下記の表5の通りとされた他は実施例2と同様にして、タイヤが得られた。
【0082】
[実施例19−22]
支持層の複素弾性率Erが下記の表6の通りとされた他は実施例2と同様にして、タイヤが得られた。
【0083】
[実施例23−26]
カーカスの折り返し部の半径方向高さH3が下記の表7の通りとされた他は実施例2と同様にして、タイヤが得られた。実施例24では、図6に示される様に、折り返し部の端部は、カーカスプライとベルトとの間に重ね合わされていた。
【0084】
[縦剛性の評価]
下記の条件にて、タイヤの縦バネ定数を測定した。
使用リム:標準リム
内圧:200kPa
荷重:JATMA最大負荷の80%
この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から6に示されている。数値が小さいほど、縦剛性が小さいことを表している。この数値が小さいほど、好ましい。
【0085】
[タイヤ質量の評価]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例1を基準値0とした指数値で下記の表1から7に示されている。数値が小さいほど、質量が小さいことが示されている。この数値が小さいほど、好ましい。
【0086】
[耐久性(ランフラット)の評価]
タイヤがパンクして内圧が低下した場合における、耐久性を以下のようにして評価した。タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填した。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、縦荷重5.2kNをタイヤに負荷した。その後、このタイヤの内圧を常圧としてパンク状態を再現し、このタイヤを80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤから異音がするまでの走行距離を、測定した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から6に示されている。この数値が大きいほど、好ましい。損傷形態の欄の「支持層」は荷重支持層の損傷を示している。同様に、「プライルース」はカーカスプライの剥離による損傷を、「界面」は異なるゴム部材間の境界の界面での損傷を示している。
【0087】
[生産性の評価]
タイヤを生産するのに要する時間を計測した。このタイヤを生産するのに要する時間から、タイヤ一本当たりの生産時間が算出された。タイヤ一本当たりの生産時間の逆数に基づいて、生産性を評価した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記表1から6に示されている。この値が大きいほど、生産性に優れることが示される。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
表1から7に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明されたタイヤは、種々の車両に適用されうる。
【符号の説明】
【0097】
2、66、74・・・タイヤ
6・・・トレッド
10・・・サイドウォール
12・・・クリンチ
14・・・ビード
16、76・・・カーカス
18・・・支持層
24、68・・・インナーライナー
26・・・チェーファー
36・・・コア
38・・・第一エイペックス
40・・・第二エイペックス
42、78・・・カーカスプライ
44、80・・・主部
46、82・・・折り返し部
62・・・ディンプル
70・・・中央部
72・・・端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6