特許第6249521号(P6249521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249521
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】光ファイバ融着接続装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   G02B6/255
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-13809(P2014-13809)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-141302(P2015-141302A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】SEIオプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明尾 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】上甲 和文
(72)【発明者】
【氏名】宮森 誠
(72)【発明者】
【氏名】本間 敏彦
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−164933(JP,A)
【文献】 特開2001−013355(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/021185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B6/24
G02B6/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面同士を突き合わせた少なくとも一対の光ファイバの突き合わせ箇所を加熱して融着させる融着接続作業が行われる第一の加熱装置と、
前記光ファイバの融着接続箇所に被せた熱収縮性樹脂を加熱収縮させる補強作業が行われる第二の加熱装置と、
前記第一の加熱装置及び前記第二の加熱装置を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第二の加熱装置での加熱中に前記第一の加熱装置の加熱が開始されると前記第二の加熱装置の加熱を停止させ、前記第一の加熱装置の加熱が終了すると前記第二の加熱装置の加熱を再開させ、少なくとも前記第二の加熱装置での加熱の中断時間に余熱を考慮した、予め実験で求めた係数を掛け合わせて算出した加算時間に基づいて、
前記第二の加熱装置での加熱の再開後における加熱条件を設定する光ファイバ融着接続装置。
【請求項2】
端面同士を突き合わせた少なくとも一対の光ファイバの突き合わせ箇所を加熱して融着させる融着接続作業が行われる第一の加熱装置と、
前記光ファイバの融着接続箇所に被せた熱収縮性樹脂を加熱収縮させる補強作業が行われる第二の加熱装置と、
前記第一の加熱装置及び前記第二の加熱装置を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第二の加熱装置での加熱中に前記第一の加熱装置の加熱が開始されると前記第二の加熱装置の加熱を停止させ、前記第一の加熱装置の加熱が終了すると前記第二の加熱装置の加熱を再開させ、少なくとも前記第二の加熱装置における加熱中断中の温度変化に余熱を考慮した、予め実験で求めた係数を掛け合わせて算出した加算時間に基づいて、前記第二の加熱装置での加熱の再開後における加熱条件を設定する光ファイバ融着接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端面同士を突き合わせた光ファイバを融着して接続し、その融着接続箇所を熱収縮性樹脂によって補強する光ファイバ融着接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、融着装置において、光ファイバの端面を突き合わせて、その突き合わせ箇所を放電融着し、その後、補強装置において、融着接続箇所に被せた熱収縮性樹脂を熱収縮させて補強することが行われている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−164933号公報
【特許文献2】実開平4−24705号公報
【特許文献3】特許第3293594号公報
【特許文献4】実開平2−73602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用できる電源容量や電力の上限値が決まっている融着接続装置では、設定された電源容量や電力の範囲内で放電融着のための放電と熱収縮性樹脂を加熱して収縮させるための補強とを同時に実施することが困難である。このような融着接続装置では、例えば、特許文献1に記載されているように、予め設定された所定時間で熱収縮性樹脂を加熱する補強作業中に放電融着が行われる場合、放電中は補強装置による加熱を中断している。そして、実質的に熱収縮性樹脂の加熱時間を、昇温後中断前の期間と中断後冷却前の期間の合計とし、この合計した加熱時間が予め設定された所定時間となるようにしている。
【0005】
このように、補強作業中に放電融着が行われた場合では、補強作業中に放電融着が行われなかった場合よりも加熱中断時間の分だけ補強作業時間が長くなってしまう。また、単純に加熱中断時間を除いた加熱時間の合計が所定時間となるように加熱すると、加熱中断時間中における余熱の影響で熱収縮性樹脂の加熱量が必要以上に多くなり、補強部分の信頼性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、補強作業が中断されても、補強作業時間が不要に長くなることを防ぎつつ、補強部分の高い信頼性を確保することが可能な光ファイバ融着接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる光ファイバ融着接続装置は、
端面同士を突き合わせた少なくとも一対の光ファイバの突き合わせ箇所を加熱して融着させる融着接続作業が行われる第一の加熱装置と、
前記光ファイバの融着接続箇所に被せた熱収縮性樹脂を加熱収縮させる補強作業が行われる第二の加熱装置と、
前記第一の加熱装置及び前記第二の加熱装置を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第二の加熱装置での加熱中に前記第一の加熱装置の加熱が開始されると前記第二の加熱装置の加熱を停止させ、前記第一の加熱装置の加熱が終了すると前記第二の加熱装置の加熱を再開させ、少なくとも前記第二の加熱装置での加熱の中断時間に基づいて、前記第二の加熱装置での加熱の再開後における加熱条件を設定する。
【0008】
また、本発明にかかる光ファイバ融着接続装置は、
端面同士を突き合わせた少なくとも一対の光ファイバの突き合わせ箇所を加熱して融着させる融着接続作業が行われる第一の加熱装置と、
前記光ファイバの融着接続箇所に被せた熱収縮性樹脂を加熱収縮させる補強作業が行われる第二の加熱装置と、
前記第一の加熱装置及び前記第二の加熱装置を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第二の加熱装置での加熱中に前記第一の加熱装置の加熱が開始されると前記第二の加熱装置の加熱を停止させ、前記第一の加熱装置の加熱が終了すると前記第二の加熱装置の加熱を再開させ、少なくとも前記第二の加熱装置における加熱中断中の温度変化に基づいて、前記第二の加熱装置での加熱の再開後における加熱条件を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補強作業が中断されても、補強作業時間が不要に長くなることを防ぎつつ、補強部分の高い信頼性を確保することが可能な光ファイバ融着接続装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る光ファイバ融着接続装置の構成を示す概略ブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る光ファイバ融着接続装置の第二の加熱装置での加熱温度特性を示すグラフである。
図3】参考例に係る制御を説明する第二の加熱装置での加熱温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈本発明の実施形態の概要〉
最初に本発明の実施形態の概要を説明する。
本発明にかかる光ファイバ融着接続装置の一実施形態は、
(1)端面同士を突き合わせた少なくとも一対の光ファイバの突き合わせ箇所を加熱して融着させる融着接続作業が行われる第一の加熱装置と、
前記光ファイバの融着接続箇所に被せた熱収縮性樹脂を加熱収縮させる補強作業が行われる第二の加熱装置と、
前記第一の加熱装置及び前記第二の加熱装置を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第二の加熱装置での加熱中に前記第一の加熱装置の加熱が開始されると前記第二の加熱装置の加熱を停止させ、前記第一の加熱装置の加熱が終了すると前記第二の加熱装置の加熱を再開させ、少なくとも前記第二の加熱装置での加熱の中断時間に基づいて、前記第二の加熱装置での加熱の再開後における加熱条件を設定する。
(1)の構成によれば、第一の加熱装置が加熱することで停止させた第二の加熱装置での加熱の中断時間に基づいて、第二の加熱装置での加熱再開後における加熱条件を、加熱中断中における余熱を考慮して設定することができる。これにより、例えば、加熱再開後における加熱時間を熱収縮性樹脂の収縮に必要な加熱量とすることで、補強作業時間が不要に長くなることを防ぐことができる。また、熱収縮性樹脂の過剰な加熱もなくすことができ、補強箇所の信頼性を高めることができる。また、例えば、加熱再開後における加熱温度を調整して熱収縮性樹脂の収縮に必要な加熱量とすることができる。この場合も、補強作業時間が不要に長くなることを防ぐことができ、また、熱収縮性樹脂の過剰な加熱をなくして補強箇所の信頼性を高めることができる。
【0012】
また、本発明にかかる光ファイバ融着接続装置の一実施形態は、
(2)端面同士を突き合わせた少なくとも一対の光ファイバの突き合わせ箇所を加熱して融着させる融着接続作業が行われる第一の加熱装置と、
前記光ファイバの融着接続箇所に被せた熱収縮性樹脂を加熱収縮させる補強作業が行われる第二の加熱装置と、
前記第一の加熱装置及び前記第二の加熱装置を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第二の加熱装置での加熱中に前記第一の加熱装置の加熱が開始されると前記第二の加熱装置の加熱を停止させ、前記第一の加熱装置の加熱が終了すると前記第二の加熱装置の加熱を再開させ、少なくとも前記第二の加熱装置における加熱中断中の温度変化に基づいて、前記第二の加熱装置での加熱の再開後における加熱条件を設定する。
(2)の構成によれば、第一の加熱装置が加熱することで停止させた第二の加熱装置での加熱中断中の温度変化に基づいて、第二の加熱装置での加熱再開後における加熱条件を、加熱中断中における余熱を考慮して設定することができる。これにより、例えば、加熱再開後における加熱時間を熱収縮性樹脂の収縮に必要な加熱量とすることで、補強作業時間が不要に長くなることを防ぐことができる。また、熱収縮性樹脂の過剰な加熱もなくすことができ、補強箇所の信頼性を高めることができる。また、例えば、加熱再開後における加熱温度を調整して熱収縮性樹脂の収縮に必要な加熱量とすることができる。この場合も、補強作業時間が不要に長くなることを防ぎ、また、熱収縮性樹脂の過剰な加熱をなくして補強箇所の信頼性を高めることができる。
【0013】
〈本発明の実施形態の詳細〉
以下、本発明に係る光ファイバ融着接続装置の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバ融着接続装置11の構成を示す概略ブロック図である。
図1に示すように、本実施例に係る融着接続装置11は、第一の加熱装置12と、第二の加熱装置13と、CPU(制御部の一例)14とを備えている。また、融着接続装置11は、電源ユニット1、画像メモリ3、カメラ4、温調付インターフェース回路5、モータ及びセンサ6、放電回路7を備えている。
【0015】
第一の加熱装置12は、放電電極8を有しており、第一の加熱装置12では、端面同士を突き合わせた光ファイバFの突き合わせ箇所をアーク放電によって加熱して融着させる融着接続作業が行われる。
【0016】
第二の加熱装置13は、ヒータ9及びサーミスタ10を有しており、第二の加熱装置13では、光ファイバFの融着接続箇所に被せた熱収縮性樹脂を加熱収縮させる補強作業が行われる。
【0017】
第一の加熱装置12及び第二の加熱装置13は、CPU14及び温調付インターフェース回路5により融着接続作業及び補強作業が制御される。
【0018】
電源ユニット1はCPU14の制御の下で、温調付インターフェース回路5を介してヒータ9に電力を供給し、温調付インターフェース回路5および放電回路7を介して第一の加熱装置12の一対の放電電極8に電力を供給する。一対の放電電極8は間隔をあけて配置され、放電電極8の中心同士を結ぶ線の近傍に、融着接続すべき光ファイバFが配置される。第一の加熱装置12では、互いに突き合わされた光ファイバF同士が放電電極8に生じるアーク放電によって加熱されて融着接続される。
【0019】
光ファイバFの下方にはカメラ4が配置されている。カメラ4には画像メモリ3が接続されており、拡大された光ファイバFの画像データが記憶される。このカメラ4としてはCCDカメラ、画像メモリ3としてはフレームメモリを使用できる。
【0020】
ヒータ9は融着接続された光ファイバFの融着接続箇所を保護するため、外周を覆うように被せたチューブ状の熱収縮性樹脂を加熱し、融着接続箇所を熱収縮性樹脂で固定する。サーミスタ10は、このヒータ9の加熱温度を測定し、この測定値に基づき、温調付インターフェース回路5がヒータ9に供給する電力量を調節する。また、温調付インターフェース回路5は、モータ及びセンサ6、放電回路7に接続され、CPU14による制御を可能にしている。
【0021】
次に、本実施例に係る光ファイバ融着接続装置11における光ファイバFの融着接続作業及び融着接続箇所の補強作業について説明する。
【0022】
(融着接続作業)
第一の加熱装置12に光ファイバFを配置させ、光ファイバFの端面同士を突き合わせる。そして、光ファイバ融着接続装置11の融着開始スイッチ(図示略)を押下する。すると、第一の加熱装置12の放電電極8へ給電され、放電電極8でアーク放電が発生し、光ファイバFの端面同士が融着接続される。融着接続作業の時間は、例えば60秒から90秒程度であり、この融着接続作業中における放電電極8での放電時間は、例えば7秒程度である。
【0023】
(補強作業)
融着接続させた光ファイバFを第一の加熱装置12から取り出し、予め一方の光ファイバFに装着しておいたチューブ状の熱収縮性樹脂を移動させて光ファイバFの融着接続箇所及びこの融着接続箇所に沿わせた補強材を覆うように被せる。そして、第二の加熱装置13へ、熱収縮性樹脂を被せた光ファイバFの融着接続箇所をセットし、補強開始スイッチ(図示略)を押下する。すると、第二の加熱装置13のヒータ9へ給電され、ヒータ9が予め定められた所定加熱温度(例えば、230℃)に昇温する。熱収縮性樹脂が十分に収縮される所定の補強加熱時間(例えば、18秒)の経過後、第二の加熱装置13のヒータ9への給電が終了して冷却され、補強作業の終了となる。この補強作業によって、熱収縮性樹脂が熱収縮して光ファイバFの融着接続箇所及び補強材の外周に密着する。これにより、補強材が沿わされた光ファイバFの融着接続箇所が熱収縮性樹脂によって覆われて補強される。
【0024】
ところで、光ファイバFの接続を連続して行う場合、補強作業中に次の光ファイバFの融着接続作業が行われる場合がある。この場合、CPU14は、使用できる電源容量や電力の上限値が決まっている電源ユニット1の電力を第一の加熱装置12へ優先して給電して放電融着を行い、放電電極8での放電中は第二の加熱装置13のヒータ9での加熱を中断する。
【0025】
次に、補強作業中に融着接続作業の放電が行われた場合におけるCPU14による第二の加熱装置13の制御例を説明する。
【0026】
図2は、本発明の実施形態に係る光ファイバ融着接続装置11の第二の加熱装置13での加熱温度特性を示すグラフである。
図2に示すように、第二の加熱装置13のヒータ9は、補強開始スイッチが押下されて給電されることで昇温し、所定加熱温度T1に達し(図2中t1)、この所定加熱温度T1が維持される。
【0027】
所定加熱温度T1での加熱中に融着開始スイッチが押下され、第一の加熱装置12の放電電極8でのアーク放電による光ファイバFの融着接続が開始(放電処理ON)されると(図2中t2)、第二の加熱装置13のヒータ9への給電が停止されて加熱が中断される。
【0028】
その後、第一の加熱装置12での光ファイバFの融着接続が終了(放電処理OFF)されると(図2中t3)、第二の加熱装置13のヒータ9へ給電されて加熱が再開される。これにより、ヒータ9は、加熱中断で温度T2に低下した状態から所定加熱温度T1に昇温し(図2中t4)、この所定加熱温度T1を維持し、熱収縮性樹脂の熱収縮後に第二の加熱装置13のヒータ9への給電が終了する(図中t6)。
【0029】
ここで、第二の加熱装置13の所定加熱温度T1に加熱されたヒータ9は、給電が停止されて加熱が中断されても急激に降温することなく高温状態を維持する。このため、熱収縮性樹脂は、加熱中断中のヒータ9の余熱によって熱収縮が進行することとなる。
【0030】
図3は、参考例に係る制御を説明する第二の加熱装置13での加熱温度特性を示すグラフである。
図3に示すように、参考例に係る制御は、第二の加熱装置13のヒータ9の加熱が停止された加熱中断時間(t3−t2)の間、熱収縮性樹脂の熱収縮に必要なヒータ9の加熱時間である補強加熱時間のカウントを停止させるものである。この参考例に係る制御では、加熱中断時間(t3−t2)でのヒータ9の余熱を考慮せず、加熱中断時間(t3−t2)をそのまま再開後加熱時間(t6’−t3)として設定している。換言すると、加熱中断前の中断前加熱時間(t2−t1)と加熱再開後の再開後加熱時間(t6’−t3)との合計が補強加熱時間となるように、再開後加熱時間(t6’−t3)を設定している。
【0031】
この参考例に係る制御では、補強作業中に放電融着が行われなかった場合よりも加熱中断時間(t3−t2)だけ補強作業時間が長くなってしまう。また、単純に加熱中断時間を除いた加熱時間の合計が補強加熱時間となるように加熱しているので、加熱中断時間中におけるヒータ9の余熱の影響で熱収縮性樹脂の加熱量が必要以上に多くなり、補強部分の信頼性が低下してしまう。
【0032】
これに対して、本実施形態に係る光ファイバ融着接続装置11では、補強作業中に放電融着が行われても、CPU14が、加熱中断時間(t3−t2)を、補強加熱時間の一部としてカウントし続ける。そして、加熱中断中におけるヒータ9の余熱を考慮し、第二の加熱装置13での加熱再開後の加熱条件のうちの再開後加熱時間(t6−t3)を、カウントした加熱中断時間(t3−t2)に基づいて設定する。
【0033】
具体的には、再開後加熱時間(t6−t3)を、以下のように設定する。補強加熱時間から加熱中断前の中断前加熱時間(t2−t1)及び加熱中断時間(t3−t2)を減算した残加熱時間(t5−t3)を求める。この残加熱時間(t5−t3)に、加熱中断時間(t3−t2)に基づいて求めた加算時間(t6−t5)を加算した合計時間を、再開後加熱時間(t6−t3)として設定する。
とする。
【0034】
加算時間(t6−t5)は、加熱中断時間(t3−t2)に、予め実験等で求めた係数(例えば0.8などの1より小さい係数)を掛け合わせて算出する。この係数は、加熱中断中における余熱を考慮して設定される。なお、加算時間(t6−t5)は、加熱中断時間と余熱を考慮した加算時間との関係を示すテーブル予め実験で求めておき、このテーブルと加熱中断時間(t3−t2)とから求めても良い。
【0035】
このように、本実施形態に係る光ファイバ融着接続装置11では、第一の加熱装置12が加熱することで停止させた第二の加熱装置13での加熱中断時間に基づいて、第二の加熱装置13での加熱の再開後における加熱条件を、加熱中断中における余熱を考慮して設定している。これにより、例えば、加熱再開後における再開後加熱時間を熱収縮性樹脂の収縮に必要な加熱量とすることで、補強作業時間が不要に長くなることを防ぐことができる。また、不要な電力消費も抑えることができる。また、熱収縮性樹脂の過剰な加熱もなくすことができ、補強箇所の信頼性を高めることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る光ファイバ融着接続装置11では、消費電力を抑えることができるので、バッテリで作動させる場合における一回の充電あたりの融着接続作業回数及び補強作業回数を増やすことができる。
【0037】
なお、第二の加熱装置13での加熱再開後における加熱条件の設定の仕方としては、上記の例に限らず、例えば、加熱再開後における再開後加熱温度を高く調整して熱収縮性樹脂の収縮に必要な加熱量としても良い。また、再開後加熱時間と再開後加熱温度の両方を再設定する構成であってもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、第二の加熱装置13における加熱中断時間に基づいて、加熱再開後における加熱条件を設定したが、加熱再開後における加熱条件は、第二の加熱装置13における加熱中断中の温度変化、または第二の加熱装置13における加熱中断時間と加熱中断中の温度変化の両方に基づいて設定しても良い。
【0039】
次に、第二の加熱装置13での加熱再開後における加熱条件を、第二の加熱装置13における加熱中断中の温度変化に基づいて設定する場合について説明する。
【0040】
CPU14は、加熱中断中におけるヒータ9の温度を計測する。そして、加熱中断中におけるヒータ9の余熱を考慮し、第二の加熱装置13での加熱再開後の加熱条件のうちの再開後加熱時間(t6−t3)を、第二の加熱装置13における加熱中断中の温度変化(T1−T2)に基づいて設定する。
【0041】
具体的には、再開後加熱時間(t6−t3)を、以下のように設定する。補強加熱時間から加熱中断前の中断前加熱時間(t2−t1)及び加熱中断時間(t3−t2)を減算した残加熱時間(t5−t3)を求める。この残加熱時間(t5−t3)に、加熱中断中の温度変化(T1−T2)から求めた加算時間(t6−t5)を加算した合計時間を、再開後加熱時間(t6−t3)として設定する。
【0042】
加算時間(t6−t5)は、加熱中断中の温度変化(T1−T2)に、予め実験等で求めた係数を掛け合わせて算出する。この係数は、加熱中断中における余熱を考慮して設定される。なお、加算時間(t6−t5)は、加熱中断中の温度変化と余熱を考慮した加算時間との関係を示すテーブル予め実験で求めておき、このテーブルと温度変化(T1−T2)とから求めても良い。
【0043】
このように、第二の加熱装置13での加熱再開後における加熱条件を、第二の加熱装置13における加熱中断中の温度変化に基づいて設定する制御の場合も、例えば、加熱再開後における再開後加熱時間(t6−t3)を熱収縮性樹脂の収縮に必要な加熱量とすることで、補強作業時間が不要に長くなることを防ぐことができる。また、不要な電力消費も抑えることができる。また、熱収縮性樹脂の過剰な加熱もなくすことができ、補強箇所の信頼性を高めることができる。
【0044】
この制御の場合も、加熱条件の設定の仕方としては、例えば、加熱再開後における再開後加熱温度を高く調整して熱収縮性樹脂の収縮に必要な加熱量としても良い。また、再開後加熱時間と再開後加熱温度の両方を再設定する構成であってもよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、第二の加熱装置13が一つのヒータ9を備える光ファイバ融着接続装置11を例示して説明したが、第二の加熱装置13は、熱収縮性樹脂の長手方向の中央を加熱する中央のヒータと、熱収縮性樹脂の長手方向の両側を加熱する両側のヒータとを有し、これらの中央のヒータと両側のヒータの加熱を独立して制御するものでも良い。このような第二の加熱装置13では、両側のヒータよりも中央のヒータを先に加熱することで、熱収縮性樹脂を、長手方向の中央側から両端側へ向かって順に収縮させて光ファイバFの融着接続箇所へ空隙なく密着させることができる。そして、本発明は、中央と両側とにヒータを有する第二の加熱装置13を備えた光ファイバ融着接続装置にも適用可能である。
【0046】
また、加熱中断中におけるヒータ9の余熱は、補強作業中における放電処理のタイミングによって変動する。したがって、第二の加熱装置13での加熱再開後における加熱条件の設定は、補強作業中における放電処理の開始タイミングを考慮しても良い。この場合、加熱再開後における熱収縮性樹脂の収縮に必要な加熱量をさらに高精度に設定することができる。
【0047】
なお、上記の実施形態における第一の加熱装置12での具体的な放電時間、第二の加熱装置13での具体的な加熱温度及び加熱時間は一例であり、第一の加熱装置12での放電時間、第二の加熱装置13での加熱温度及び加熱時間は様々な条件によって設定される。
【符号の説明】
【0048】
11:光ファイバ融着接続装置、12:第一の加熱装置、13:第二の加熱装置、14:CPU(制御部)、F:光ファイバ
図1
図2
図3