(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれが上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれが上記サイドウォールの端から半径方向略内向きに延びる一対のクリンチと、それぞれが上記クリンチよりも軸方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれが上記ビードからこのカーカスに沿って半径方向略外向きに延びる一対のストリップとを備えており、
上記ビードが、コアと、このコアから半径方向外向きに延びる第一エイペックスと、軸方向においてこの第一エイペックスよりも外側に位置する第二エイペックスとを備えており、
上記カーカスがカーカスプライを備えており、
上記カーカスプライが上記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返されており、この折り返しによりこのカーカスプライには主部と折り返し部とが形成されており、
上記ストリップの半径方向内側端が上記主部と上記折り返し部との間に位置しており、
上記第二エイペックスが上記折り返し部と上記クリンチとの間に位置しており、
半径方向において、上記ストリップの外側端の位置がこのタイヤの最大幅を示す位置と一致している、又は、このストリップの外側端がこのタイヤの最大幅を示す位置よりも内側に位置しており、
半径方向において、上記第二エイペックスの外側端が上記ストリップの外側端よりも内側に位置しており、
上記第二エイペックスが架橋ゴムからなり、この第二エイペックスの複素弾性率が60MPa以上70MPa以下である、空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0019】
このタイヤ2は、トレッド4、貫通部6、サイドウォール8、クリンチ10、ビード12、カーカス14、ベルト16、エッジバンド18、インナーライナー20、チェーファー22及びストリップ24を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0020】
図1において、符号Pbはこのタイヤ2の内面上の点である。このタイヤ2では、この点Pbにおいて、この内面のプロファイルで表される軸方向幅が最大を示す。このタイヤ2では、最大幅はこの点Pbにおける左右の側面(サイドウォール8の外面)間の軸方向長さで表される。言い換えれば、この点Pbはこのタイヤ2の最大幅を示す位置である。
【0021】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面26を形成する。トレッド4には、溝28が刻まれている。この溝28により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、ベース層30とキャップ層32とを有している。キャップ層32は、ベース層30の半径方向外側に位置している。キャップ層32は、ベース層30に積層されている。ベース層30は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層30の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層32は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0022】
貫通部6は、トレッド4を貫通している。貫通部6の一端は、トレッド面26に露出している。貫通部6の他端は、ベルト16と接触している。貫通部6は、周方向に延在している。換言すれば、貫通部6は環状である。タイヤ2が、環状ではなく、周方向において互いに離間した複数の貫通部6を備えてもよい。貫通部6は、導電性の架橋ゴムからなる。
【0023】
サイドウォール8は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール8の半径方向外側端は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール8の半径方向内側端は、クリンチ10と接合されている。このサイドウォール8は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール8は、カーカス14の損傷を防止する。
【0024】
クリンチ10は、サイドウォール8の半径方向略内側に位置している。クリンチ10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。クリンチ10は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ10は、リムのフランジと当接する。
【0025】
ビード12は、クリンチ10の軸方向内側に位置している。ビード12は、コア34と、第一エイペックス36と、第二エイペックス38とを備えている。コア34はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。第一エイペックス36は、コア34から半径方向外向きに延びている。第一エイペックス36は、半径方向外向きに先細りである。第二エイペックス38は、軸方向において第一エイペックス36よりも外側に位置している。第二エイペックス38は、クリンチ10とカーカス14との間において、第一エイペックス36から半径方向外向きに延びている。このタイヤ2では、第二エイペックス38の外側端40は半径方向において第一エイペックス36の外側端42よりも外側に位置している。この第二エイペックス38の外側端40が半径方向において第一エイペックス36の外側端42よりも内側に位置していてもよい。
【0026】
このタイヤ2では、第一エイペックス36はゴム組成物が架橋されることによって成形されている。つまり第一エイペックス36は架橋ゴムである。このゴム組成物の好ましい基材ゴムは、ジエン系ゴムである。ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)及びポリクロロプレン(CR)が挙げられる。2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0027】
好ましくは、第一エイペックス36のゴム組成物は、硫黄を含む。硫黄により、ゴム分子同士が架橋される。硫黄と共に、又は硫黄に代えて、他の架橋剤が用いられてもよい。電子線によって架橋がなされてもよい。
【0028】
好ましくは、第一エイペックス36のゴム組成物は、硫黄と共に加硫促進剤を含む。スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が、用いられうる。
【0029】
第一エイペックス36のゴム組成物は、補強材を含む。典型的な補強材は、カーボンブラックである。FEF、GPF、HAF、ISAF、SAF等が用いられうる。第一エイペックス36の強度の観点から、カーボンブラックの量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましい。第一エイペックス36の軟質の観点から、カーボンブラックの量は50質量部以下が好ましい。カーボンブラックと共に、又はカーボンブラックに代えて、シリカが用いられてもよい。この場合、乾式シリカ及び湿式シリカが用いられうる。
【0030】
第一エイペックス36のゴム組成物は、軟化剤を含む。好ましい軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルが例示される。第一エイペックス36の軟質の観点から、軟化剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましい。第一エイペックス36の強度の観点から、軟化剤の量は40質量部以下が好ましい。
【0031】
第一エイペックス36のゴム組成物には、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、架橋助剤等が、必要に応じ添加される。
【0032】
このタイヤ2では、第二エイペックス38はゴム組成物が架橋されることによって成形されている。このゴム組成物の好ましい基材ゴムは、ジエン系ゴムである。ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)及びポリクロロプレン(CR)が挙げられる。2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0033】
好ましくは、第二エイペックス38のゴム組成物は、硫黄を含む。硫黄により、ゴム分子同士が架橋される。硫黄と共に、又は硫黄に代えて、他の架橋剤が用いられてもよい。電子線によって架橋がなされてもよい。
【0034】
好ましくは、第二エイペックス38のゴム組成物は、硫黄と共に加硫促進剤を含む。スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が、用いられうる。
【0035】
第二エイペックス38のゴム組成物は、補強材を含む。典型的な補強材は、カーボンブラックである。FEF、GPF、HAF、ISAF、SAF等が用いられうる。第二エイペックス38の強度の観点から、カーボンブラックの量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましい。第二エイペックス38の軟質の観点から、カーボンブラックの量は50質量部以下が好ましい。カーボンブラックと共に、又はカーボンブラックに代えて、シリカが用いられてもよい。この場合、乾式シリカ及び湿式シリカが用いられうる。
【0036】
第二エイペックス38のゴム組成物は、軟化剤を含む。好ましい軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルが例示される。第二エイペックス38の軟質の観点から、軟化剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましい。第二エイペックス38の強度の観点から、軟化剤の量は40質量部以下が好ましい。
【0037】
第二エイペックス38のゴム組成物には、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、架橋助剤等が、必要に応じ添加される。
【0038】
カーカス14は、カーカスプライ44からなる。カーカスプライ44は、両側のビード12の間に架け渡されている。カーカスプライ44は、トレッド4及びサイドウォール8の内側に沿っている。カーカスプライ44は、コア34の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ44には、主部46と折り返し部48とが形成されている。このタイヤ2では、折り返し部48の端50は、半径方向において、最大幅を示す位置Pbよりも内側に位置している。折り返し部48の端50は、半径方向において、クリンチ10の外側端52よりも内側に位置している。この折り返し部48の端50は、半径方向において、第二エイペックス38の内側端54とその外側端40との間に位置している。このカーカス14は、いわゆる「ローターンアップ構造」を有する。
【0039】
カーカスプライ44は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス14が、2枚以上のカーカスプライ44から形成されてもよい。質量への影響の観点から、このカーカス14は1枚のカーカスプライ44から形成されるのが好ましい。
【0040】
ベルト16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト16は、カーカス14と積層されている。ベルト16は、カーカス14を補強する。ベルト16は、内側層56及び外側層58からなる。
図1から明らかなように、軸方向において、内側層56の幅は外側層58の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層56及び外側層58のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層56のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層58のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト16の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト16が、3以上の層を備えてもよい。
【0041】
エッジバンド18は、ベルト16の半径方向外側であって、かつベルト16の端の近傍に位置している。図示されていないが、このエッジバンド18は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンドは、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト16の端が拘束されるので、ベルト16のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0042】
インナーライナー20は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー20は、カーカス14の内面に接合されている。インナーライナー20は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー20の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0043】
チェーファー22は、ビード12の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー22がリムと当接する。この当接により、ビード12の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー22は布とこの布に含浸したゴムとからなる。チェーファー22がクリンチ10と一体とされてもよい。この場合、チェーファー22の材質はクリンチ10の材質と同じとなる。
【0044】
ストリップ24は、軸方向においてカーカスプライ44の主部46の外側に位置している。ストリップ24は、ビード12から主部46に沿って半径方向略外向きに延びている。ストリップ24の外側端60は、半径方向において、クリンチ10の外側端52よりも外側に位置している。ストリップ24の内側端62は、半径方向において、第二エイペックス38の外側端40よりも内側に位置している。
【0045】
このタイヤ2では、ストリップ24はゴム組成物が架橋されることによって成形されている。このゴム組成物の好ましい基材ゴムは、ジエン系ゴムである。ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)及びポリクロロプレン(CR)が挙げられる。2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0046】
好ましくは、ストリップ24のゴム組成物は、硫黄を含む。硫黄により、ゴム分子同士が架橋される。硫黄と共に、又は硫黄に代えて、他の架橋剤が用いられてもよい。電子線によって架橋がなされてもよい。
【0047】
好ましくは、ストリップ24のゴム組成物は、硫黄と共に加硫促進剤を含む。スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が、用いられうる。
【0048】
ストリップ24のゴム組成物は、補強材を含む。典型的な補強材は、カーボンブラックである。FEF、GPF、HAF、ISAF、SAF等が用いられうる。ストリップ24の強度の観点から、カーボンブラックの量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましい。ストリップ24の軟質の観点から、カーボンブラックの量は50質量部以下が好ましい。カーボンブラックと共に、又はカーボンブラックに代えて、シリカが用いられてもよい。この場合、乾式シリカ及び湿式シリカが用いられうる。
【0049】
ストリップ24のゴム組成物は、軟化剤を含む。好ましい軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルが例示される。ストリップ24の軟質の観点から、軟化剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましい。ストリップ24の強度の観点から、軟化剤の量は40質量部以下が好ましい。
【0050】
ストリップ24のゴム組成物には、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、架橋助剤等が、必要に応じ添加される。
【0051】
図2には、
図1に示されたタイヤ2の一部が示されている。この
図2には、このタイヤ2のビード12の部分が示されている。この
図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
【0052】
このタイヤ2では、カーカスプライ44の折り返し部48とクリンチ10との間に第二エイペックス38が位置している。このタイヤ2では、折り返し部48は従来タイヤにおける折り返し部よりも軸方向内側に配置される。この配置は、折り返し部48への歪みの集中を抑えうる。ルースの発生が抑えられるので、このタイヤ2は耐久性に優れる。
【0053】
このタイヤ2では、ストリップ24の内側端62はカーカスプライ44の主部46とその折り返し部48との間に位置している。前述の通り、このストリップ24はビード12から主部46に沿って半径方向略外向きに延びている。このタイヤ2では、このストリップ24の外側端60の位置は半径方向において最大幅を示す位置Pbと一致している、又は、このストリップ24の外側端60はこの最大幅を示す位置Pbよりも内側に位置している。このストリップ24は、第二エイペックス38とともに、タイヤ2の面内捻り剛性に寄与する。このタイヤ2では、第二エイペックス38の外側端40は半径方向においてストリップ24の外側端60よりも内側に位置している。このため、このタイヤ2では、ストリップ24及び第二エイペックス38が面内捻り剛性に適度に寄与する。このタイヤ2では、このストリップ24及び第二エイペックス38により、操縦安定性が適切に維持される。しかもこのストリップ24及び第二エイペックス38は、タイヤ2の特異な変形を抑える。このストリップ24及び第二エイペックス38は、タイヤ2の耐久性にも寄与する。したがって、本発明によれば、操縦安定性を損なうことなく、耐久性の向上が達成された空気入りタイヤ2が得られる。
【0054】
前述の通りこのタイヤ2では、ストリップ24が、その外側端60の位置が半径方向において最大幅を示す位置Pbと一致するように、又は、この外側端60がこの最大幅を示す位置Pbよりも内側に位置するように配置されている。この配置は、ストリップ24による転がり抵抗への影響を抑えうる。転がり抵抗が適切に調節されているので、このタイヤ2は車輌の低燃費化に貢献しうる。
【0055】
このタイヤ2では、半径方向において、第一エイペックス36の外側端42は第二エイペックス38の外側端40よりも内側に位置しているのが好ましい。これにより、小さな第一エイペックス36が得られる。小さな第一エイペックス36は、カーカスプライ44に適正な輪郭(ケースラインとも称される。)を付与する。詳細には、このタイヤ2の周方向に対して垂直な断面におけるカーカスプライ44の輪郭が単一の円弧に近づいていく。この輪郭は、歪みの集中を抑えうる。小さな第一エイペックス36は、耐久性の向上に寄与しうる。しかもこのタイヤ2では、サイドウォール8の部分全体が適正に撓む。このタイヤ2では、サイドウォール8の部分が全体として効果的に剛性に寄与する。このような撓みは、タイヤ2の操縦安定性に寄与する。
【0056】
小さな第一エイペックス36は、ビード12の部分のボリューム低減に寄与する。小さなボリュームは、ビード12の部分を柔構造とする。柔構造は、タイヤ2の縦剛性に影響する。縦剛性の低減は振動を抑制するので、このタイヤ2では、ノイズが低減される。特に、小さな第一エイペックス36は、80から100Hzのノイズの低減に寄与する。このタイヤ2は、静粛性に優れる。しかも小さな第一エイペックス36は、タイヤ2の質量を低減する。小さな質量は、タイヤ2の転がり抵抗を抑えうる。小さな転がり抵抗を有するタイヤ2は、車輌の低燃費化に寄与する。
【0057】
このタイヤ2では、第二エイペックス38の複素弾性率E2は60MPa以上70MPa以下である。この弾性率E2が60MPa以上に設定されることにより、第二エイペックス38が面内捻り剛性に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この弾性率E2が70MPa以下に設定されることにより、第二エイペックス38による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が適切に維持される。
【0058】
このタイヤ2では、第二エイペックス38の損失正接T2は0.18以下が好ましい。この損失正接T2が0.18以下に設定されることにより、第二エイペックス38における発熱が抑えられる。この第二エイペックス38は、耐久性に寄与する。小さな発熱はタイヤ2の転がり抵抗を抑えうるので、このタイヤ2は車輌の低燃費化に寄与する。この観点から、この損失正接T2は0.14以下がより好ましい。損失正接T2は小さいほど好ましいので、この損失正接T2の下限は設定されない。
【0059】
本発明では、第二エイペックス38の複素弾性率E2及び損失正接T2は「JIS K 6394」の規定に準拠して測定される。測定条件は、以下の通りである。なお、後述する第一エイペックス36の複素弾性率E1及び損失正接T1並びにストリップ24の複素弾性率Es及び損失正接Tsも、複素弾性率E2及び損失正接T2と同様にして測定される。
粘弾性スペクトロメーター:岩本製作所の「VESF−3」
初期歪み:10%
動歪み:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0060】
このタイヤ2では、第一エイペックス36の複素弾性率E1は60MPa以上70MPa以下が好ましい。この弾性率E1が60MPa以上に設定されることにより、第一エイペックス36がタイヤ2の支持に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この弾性率E1が70MPa以下に設定されることにより、第一エイペックス36による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が適切に維持される。
【0061】
このタイヤ2では、第一エイペックス36の損失正接T1は0.18以下が好ましい。この損失正接T1が0.18以下に設定されることにより、第一エイペックス36における発熱が抑えられる。この第一エイペックス36は、耐久性に寄与する。小さな発熱はタイヤ2の転がり抵抗を抑えうるので、このタイヤ2は車輌の低燃費化に寄与する。この観点から、この損失正接T1は0.14以下がより好ましい。損失正接T1は小さいほど好ましいので、この損失正接T1の下限は設定されない。
【0062】
このタイヤ2では、ストリップ24の複素弾性率Esは60MPa以上70MPa以下が好ましい。この弾性率Esが60MPa以上に設定されることにより、ストリップ24が面内捻り剛性に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この弾性率Esが70MPa以下に設定されることにより、ストリップ24による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が適切に維持される。
【0063】
このタイヤ2では、ストリップ24の損失正接Tsは0.18以下が好ましい。この損失正接Tsが0.18以下に設定されることにより、ストリップ24における発熱が抑えられる。このストリップ24は、耐久性に寄与する。小さな発熱はタイヤ2の転がり抵抗を抑えうるので、このタイヤ2は車輌の低燃費化に寄与する。この観点から、この損失正接Tsは0.14以下がより好ましい。損失正接Tsは小さいほど好ましいので、この損失正接Tsの下限は設定されない。
【0064】
前述の通りこのタイヤ2では、第一エイペックス36は架橋ゴムからなる。第二エイペックス38は、架橋ゴムからなる。ストリップ24は、架橋ゴムからなる。生産性の観点から、第一エイペックス36は第二エイペックス38の架橋ゴムと同等の架橋ゴムからなるのが好ましい。同様の観点から、ストリップ24は第二エイペックス38の架橋ゴムと同等の架橋ゴムからなるのが好ましい。特に好ましくは、第一エイペックス36及びストリップ24が第二エイペックス38の架橋ゴムと同等の架橋ゴムからなる、つまり、第一エイペックス36、第二エイペックス38及びストリップ24が同じゴム組成物を架橋することによって成形されることである。
【0065】
図1において、両矢印L1は第一エイペックス36の長さである。この長さL1は、第一エイペックス36の底面の軸方向中心(
図1の符号Pc)からその外側端42までの長さで表される。両矢印L2は、第二エイペックス38の長さである。この長さL2は、第二エイペックス38の内側端54からその外側端40までの半径方向長さで表される。両矢印Lsは、ストリップ24の長さである。この長さLsは、ストリップ24の内側端62からその外側端60までの長さで表される。この長さLsは、ストリップ24に沿って計測される。両矢印t2は、第二エイペックス38の厚みである。両矢印tsは、ストリップ24の厚みである。この厚みt2及び厚みtsは、最大厚みで表される。
【0066】
このタイヤ2では、長さL1は5mm以上40mm以下が好ましい。この長さL1が5mm以上に設定されることにより、第一エイペックス36が横剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ2は操縦安定性に優れる。この長さL1が40mm以下に設定されることにより、適正な輪郭を有するカーカス14が得られる。このカーカス14は、タイヤ2の耐久性に寄与する。しかもこのカーカス14を有するタイヤ2では、サイドウォール8の部分全体が適正に撓む。サイドウォール8の部分が全体として効果的に剛性に寄与するので、このタイヤ2は操縦安定性に優れる。そして前述の通り小さな第一エイペックス36は、ノイズの低減に寄与する。この観点から、この長さL1は20mm以下がより好ましく、15mm以下がさらに好ましい。なお、この長さL1が5mmよりも小さいとタイヤ2を作りにくくなる恐れがあり、この場合、コストの上昇が懸念される。
【0067】
このタイヤ2では、長さL2は15mm以上40mm以下が好ましい。この長さL2が15mm以上に設定されることにより、第二エイペックス38が面内捻り剛性に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。このタイヤ2が嵌め合わされるリム(図示されず)のフランジよりも第二エイペックス38の外側端40が半径方向外側に位置することで、ビード12の倒れが効果的に防止される。通常リムのフランジの高さは20mmである。したがって、この長さL2は20mm以上がより好ましい。この長さL2が40mm以下に設定されることにより、このタイヤ2の生産コストが適切に維持される。この観点から、この長さL2は35mm以下がより好ましい。特に好ましい長さL2の範囲は、25mm以上30mm以下である。
【0068】
このタイヤ2では、長さLsは40mm以上70mm以下が好ましい。この長さLsが40mm以上に設定されることにより、ストリップ24が面内捻り剛性に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この長さLsは50m以上がより好ましい。この長さLsが70mm以下に設定されることにより、このストリップ24による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が適切に維持される。
【0069】
このタイヤ2では、厚みt2は1mm以上4mm以下が好ましい。この厚みt2が1mm以上に設定されることにより、第二エイペックス38が面内捻り剛性に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この厚みt2が4mm以下に設定されることにより、この第二エイペックス38のボリュームが適切に維持される。ビード12の部分における発熱が抑えられるので、折り返し部48の端50におけるルースの発生が効果的に防止される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。
【0070】
このタイヤ2では、厚みtsは0.5mm以上2mm以下が好ましい。この厚みtsが0.5mm以上に設定されることにより、ストリップ24が面内捻り剛性に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この厚みtsが2mm以下に設定されることにより、このストリップ24による質量への影響が抑えられる。このタイヤ2が適切な質量を有するので、転がり抵抗及びコストの上昇が抑えられる。
【0071】
図2において、実線BBLはビードベースラインである。ビードベースラインは、タイヤ2が装着されるリム(図示されず)のリム径(JATMA参照)を規定する線である。このビードベースラインは、軸方向に延びる。両矢印Hbは、ビードベースラインから最大幅を示す位置Pbまでの半径方向高さを表している。この高さHbは、本発明における基準高さである。両矢印Hssは、ビードベースラインからストリップ24の内側端62までの半径方向高さを表している。両矢印Hsuは、ビードベースラインからストリップ24の外側端60までの半径方向高さを表している。両矢印H2は、ビードベースラインから第二エイペックス38の外側端40までの半径方向高さを表している。両矢印Hcは、ビードベースラインから折り返し部48の端50までの半径方向高さを表している。このタイヤ2では、カーカス14がローターンアップ構造を有しているので、基準高さHbに対する高さHcの比は0.3から0.4の範囲にある。
【0072】
前述の通り、このタイヤ2では、ストリップ24の外側端60の位置は半径方向において最大幅を示す位置Pbと一致している、又は、このストリップ24の外側端60がこの最大幅を示す位置Pbよりも内側に位置している。したがって、基準高さHbに対する高さHsuの比は1以下である。これにより、ストリップ24による転がり抵抗への影響が抑えられる。十分な面内捻り剛性が得られるとの観点から、この比は0.7以上が好ましい。
【0073】
前述の通り、このタイヤ2では、カーカス14はローターンアップ構造を有しており、基準高さHbに対する高さHcの比は0.3から0.4の範囲にある。このタイヤ2では、基準高さHbに対する高さHssの比は0.3以下が好ましい。これにより、ストリップ24はその内側端62がカーカスプライ44の主部46と折り返し部48との間に位置するように配置される。このタイヤ2では、ストリップ24が面内捻り剛性に効果的に寄与する。生産コストが適切に維持されるとの観点から、この比は0.1以上が好ましい。
【0074】
このタイヤ2では、基準高さHbに対する高さH2の比は0.1以上0.6以下が好ましい。この比が0.1以上に設定されることにより、第二エイペックス38が面内捻り剛性に効果的に寄与する。この観点から、この比は0.2以上がより好ましい。この比が0.6以下に設定されることにより、生産コストが適切に維持される。この観点から、この比は0.5以下がより好ましい。
【0075】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。このタイヤ2が乗用車用である場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
【実施例】
【0076】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0077】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤを得た。このタイヤのサイズは、195/65R15とされた。第一エイペックス、第二エイペックス及びストリップは、同じゴム組成物を架橋することによって成形された。したがって、第一エイペックスの複素弾性率E1、第二エイペックスの複素弾性率E2及びストリップの複素弾性率Esは同等である。第一エイペックスの損失正接T1、第二エイペックスの損失正接T2及びストリップの損失正接Tsは同等である。
【0078】
[比較例1]
第二エイペックス及びストリップを設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
【0079】
[比較例2]
ストリップを設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
【0080】
[実施例2]
第一エイペックス、第二エイペックス及びストリップのためのゴム組成物を変えて、弾性率E1、弾性率E2及び弾性率Es、並びに、損失正接T1、損失正接T2及び損失正接Tsを下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
【0081】
[実施例3−7]
第一エイペックスの長さL1を下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例3−7のタイヤを得た。
【0082】
[実施例8]
第一エイペックス、第二エイペックス及びストリップのためのゴム組成物を変えて、損失正接T1、損失正接T2及び損失正接Tsを下記の表2の通りとするとともに、第一エイペックスの長さL1を下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8のタイヤを得た。
【0083】
[実施例9−13]
第二エイペックスの長さL2を下記の表3の通りとして基準高さHbに対する高さH2の比(H2/Hb)を変えた他は実施例1と同様にして、実施例9−13のタイヤを得た。
【0084】
[実施例14−16]
第二エイペックスの厚みt2を下記の表4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例14−16のタイヤを得た。
【0085】
[実施例17−20及び比較例3]
ストリップの長さL3を下記の表5の通りとして基準高さHbに対する高さHsuの比(Hsu/Hb)を変えた他は実施例1と同様にして、実施例17−20及び比較例3のタイヤを得た。
【0086】
[実施例21−24及び比較例4]
ストリップの長さL3を下記の表6の通りとして基準高さHbに対する高さHssの比(Hss/Hb)を変えた他は実施例1と同様にして、実施例21−24及び比較例4のタイヤを得た。
【0087】
[実施例25−28]
ストリップの厚みtsを下記の表7の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例25−28のタイヤを得た。
【0088】
[実施例29及び比較例5−6]
第一エイペックス、第二エイペックス及びストリップのためのゴム組成物を変えて、弾性率E1、弾性率E2及び弾性率Esを下記の表8の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例29及び比較例5−6のタイヤを得た。
【0089】
[面内捻り剛性及びコーナリングパワーの測定]
フラットベルト式タイヤ6分力測定装置を用い、下記の測定条件で面内捻り剛性及びコーナリングパワーを測定した。
使用リム:6.0JJ
内圧:210kPa
荷重:2.55kN
速度:80km/h
キャンバー角:0°
スリップ角:1.0°
比較例1のタイヤの面内捻り剛性及びコーナリングパワーを100としたときの指数が、下記の表1−8に示されている。数値が大きいほど、面内捻り剛性及びコーナリングパワーは大きい。
【0090】
[横剛性の評価]
下記の条件にて、タイヤの横バネ定数を測定した。
使用リム:6.0JJ
内圧:210kPa
荷重:4.24kN
比較例1のタイヤの横バネ定数を100としたときの指数が、下記の表1−8に示されている。数値が大きいほど、横剛性は大きい。
【0091】
[操縦安定性及び乗り心地]
タイヤを6.0JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が210kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が1800ccである乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性及び乗り心地を評価させた。操縦安定性に関する評価では、N(ニュートラル)付近、レーンチェンジ及びドライコースでの旋回(DRY旋回)における安定性が確認された。この結果が、指数として下記の表1−8に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0092】
[耐久性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を250kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、8.15kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、100km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤに損傷が確認されるまでの走行距離を、測定した。この結果が、比較例1を100とした指数として、下記の表1−8に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0093】
[コスト]
タイヤ1本を製作するのに要したコストを算出した。この結果が、比較例1を100とした指数として、下記の表1−8に示されている。数値が小さいほど、好ましい。
【0094】
[ノイズ]
タイヤをそのサイズが6.0JJであるリムに組み込み、このタイヤに内圧が210kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が1800ccである乗用車に装着した。この乗用車を、粗度の高いアスファルト製路面の上で、60km/hの速度で走行させた。この走行時の運転席における、100Hzバンドの騒音レベル(dB)を集音マイクで計測した。この計測値が、比較例1を100とした指数値で下記の表1−8に示されている。数値が小さいほど、ロードノイズが小さいことが示される。
【0095】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。
使用リム:6.0JJ(アルミニウム合金製)
内圧:210kPa
荷重:4.82kN
速度:80km/h
この結果が、比較例1を100とした指数として、下記の表1−8に示されている。数値が小さいほど好ましい。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
【表7】
【0103】
【表8】
【0104】
表1−8に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。