(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1に示す列車1は、軌道2に沿って移動する移動体である。列車1は、例えば、300km/h以上の高速で走行する鉄道車両を編成した新幹線列車などである。列車1は、この列車1の先頭車両の前部を構成する先頭部1aと、この列車1の後尾車両の後部を構成する後尾部1bとを備えている。列車1は、長い流線形の先頭部1a及び後尾部1bを備えており、空気抵抗及び微気圧波の低減を図るために先頭部1a及び後尾部1bが所定の形状に形成されている。
【0020】
軌道2は、列車1が走行する通路(移動経路)である。軌道2は、
図1に示すように、二本の本線で構成された複線であり、上り本線となる線路2aと、下り本線となる線路2bとを備えている。構造物3は、列車1が通過する固定構造物である。構造物3は、例えば、山腹などの地中を貫通して列車1を通過させるトンネルなどの固定構造物である。構造物3は、列車1が突入及び退出する出入口となる構造物出入口(トンネル坑口)3aなどを備えている。
【0021】
圧力変動測定装置4は、列車1が通過するときに発生する圧力変動p
A,p
Bを測定する手段である。圧力変動測定装置4は、構造物3内(トンネル区間)以外の明かり区間の軌道2に1つ設置されている。圧力変動測定装置4は、列車1が通過点Pを通過するときに発生する圧力変動を測定する圧力センサ(圧力計)又はマイクロホンなどである。圧力変動測定装置4は、軌道2から所定の距離だけ離してこの軌道2の近くに配置されている。圧力変動測定装置4は、列車1が通過点Pを通過するときに発生する圧力変動(列車通過時圧力変動)p
A,p
Bに応じた圧力変動信号(圧力変動情報)を長さ補正装置5に出力する。
【0022】
長さ補正装置5は、列車1の長さL
0を補正する装置である。長さ補正装置5は、実際の列車1の長さL
0を空気力学的長さL
aに補正するとともに、この空気力学的長さL
aに基づいて列車1の速度を演算する。長さ補正装置5は、
図1に示すように、信号処理部6と、圧力変動情報記憶部7と、圧力変動波形生成部8と、圧力変動波形情報記憶部9と、長さ補正部10と、補正情報記憶部11と、補正情報入力部12と、補正長さ情報記憶部13と、速度演算部14と、速度情報記憶部15と、プログラム記憶部16と、表示部17と、制御部18などを備えている。長さ補正装置5は、例えば、パーソナルコンピュータなどによって構成されており長さ補正プログラムに従って所定の処理を実行する。
【0023】
信号処理部6は、圧力変動測定装置4の出力信号を処理する手段である。信号処理部6は、圧力変動測定装置4が出力する圧力変動信号を増幅する増幅回路と、増幅後のアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器などを備えている。信号処理部6は、A/D変換後の圧力変動信号(圧力変動情報)を制御部18に出力する。
【0024】
圧力変動情報記憶部7は、信号処理部6が出力する圧力変動情報を記憶する手段である。圧力変動情報記憶部7は、例えば、
図1に示すように、列車1が通過点Pを通過するときに発生する圧力変動p
A,p
Bを圧力変動情報として記憶するメモリである。
【0025】
圧力変動波形生成部8は、圧力変動測定装置4が出力する圧力変動信号に基づいて圧力変動波形W
A,W
Bを生成する手段である。圧力変動波形生成部8は、
図2に示すように、圧力変動測定装置4が出力する圧力変動信号に基づいて、圧力の時間変化を表す圧力変動波形W
A,W
Bを生成する。ここで、
図2に示す縦軸は、圧力であり、横軸は時間である。圧力変動波形生成部8は、例えば、
図2に示すように、列車1の先頭部1aが通過点Pを通過したときに発生する圧力変動p
Aの圧力変動波形(プラスマイナスの波形)W
Aと、列車1の後尾部1bが通過点Pを通過したときに発生する圧力変動p
Bの圧力変動波形(プラスマイナスの波形)W
Bとを生成する。圧力変動波形生成部8は、生成後の圧力変動波形W
A,W
Bを圧力変動波形信号(圧力変動波形情報)として制御部18に出力する。
【0026】
図1に示す圧力変動波形情報記憶部9は、圧力変動波形生成部8が出力する圧力変動波形情報を記憶する手段である。圧力変動波形情報記憶部9は、例えば、
図1に示すように、列車1が通過点Pを通過するときに発生する圧力変動波形W
A,W
Bを圧力変動波形情報として記憶するメモリである。
【0027】
図1に示す長さ補正部10は、列車1の先頭部1aの断面積変化率の重心G
nと、この列車1の後尾部1bの断面積変化率の重心G
tとに基づいて、この列車1の長さL
0を補正する手段である。長さ補正部10は、列車1の先頭部1aの断面積変化率の重心G
nと、この列車1の後尾部1bの断面積変化率の重心G
tとの間の距離を、この列車1の空気力学的長さL
aとして補正する。長さ補正部10は、音響学的な解析に基づいて列車1の空気力学的長さL
aを演算する。
【0028】
ここで、
図3(A)に示す長さL
0は、実際の列車1の長さであり、列車1の先頭部1aの先端から後尾部1bの先端までの距離である。
図3(B)に示す空気力学的長さL
aは、長さ補正部10による補正後の列車1の長さである。空気力学的長さL
aは、
図3(B)に示すように、列車1の先頭部1aの周りの圧力場がゼロとなる点から、後尾部1bの周りの圧力場がゼロとなる点までの間の距離であり、
図3(B)に示すように列車1を直方体の矩形列車としたときにこの矩形列車の先頭部の先端から後尾部の先端までの距離である。
図3(A)に示す先頭部1aの排除長さΔL
nは、長い流線形の先頭部1aの先端から圧力変動p
A=0となる点までの距離である。後尾部1bの排除長さΔL
bは、長い流線形の後尾部1bの先端から圧力変動p
B=0となる点までの距離である。
【0029】
圧力変動波形W
Aは、実際の列車1の先頭部1aが通過点Pを通過したときに発生するこの列車1の周囲の圧力場であり、圧力変動波形W
Bは、実際の列車1の後尾部1bが通過点Pを通過したときに発生するこの列車1の周囲の圧力場である。ここで、
図3(C)に示す縦軸は、圧力であり、横軸は時間である。
図3(C)に示すように、列車1の先頭部1aの前方領域では、列車1の先頭部1aの付近で流れがよどむため、圧力変動波形W
Aのように圧力が大気圧に対して高くなる。列車1の先頭部1aの後方領域では、列車1によって排除された流体が加速して流れるため、圧力変動波形W
Bのように負圧となる。十分に長い列車1の側面では、流れが一様になり、圧力が大気圧まで回復する。列車1の後尾部1bでは、圧力変動波形W
Bに示すように圧力変動波形W
Aとは対称の圧力場が形成される。
【0030】
図3に示す座標系の原点を地表面上におき、時刻t=0に列車1の先頭部1aは座標原点にあるとする。
図3に示す列車1は、一定の速度Uでx軸の負の方向に(x
2,x
3)=(0,0)の位置を走行する。列車1は、x軸(x
2,x
3)=(0,0)に沿って、x
1=−∞からx
1=∞まで一定の速度Uで移動する。簡単のため、非粘性流れと圧力変動が小さいことを仮定する。列車1の速度が音速に比べて小さいとし、通過時の圧力変動pは数1に示すラプラス方程式に従うとする。
【0032】
ここで、数1に示すρ
0は、大気密度であり、qは湧き出し強さ分布である。列車1の先頭部1aを線音源分布で置き換えるとすると、線音源の強さは以下の数2に示すようになる。
【0034】
ここで、数2に示すAは列車1の先頭部1a及び後尾部1bの断面積分布であり、δはデルタ関数である。列車1の走行位置付近の地形を平面で近似すると、地面の影響を考慮したグリーン関数は、以下の数3及び数4によって与えられる。
【0037】
ここで、数3に示すxは、観測点位置ベクトルである。また、グリーン関数は、以下に示す数5を満たす。
【0039】
列車1の通過時の圧力変動pは、数2及び数3を用いて以下の数6に示すようになる。
【0041】
ここで、r
m 2=x
22+x
32であり、線路中心から観測点の離れを表す。列車固定座標系x
t=x
1+Ut、y
t=y
1+Utに座標変換を行うと、x
t=0は列車1の先頭部1aの先端を表し、数6は以下に示す数7に変形できる。
【0043】
x
t=0にある列車1の断面積A
0の矩形先頭部の場合には、以下の数8を数7に代入すると、矩形先頭部による通過時の圧力変動p
snbは、以下の数9に示す通りであり、r
mの値によらずp
snb(0,r
m)=0が成り立つ。
【0046】
数9は、一様な流れ中に置かれた点湧き出しによる圧力場を表している。このように、従来から用いられている点湧き出しモデルが列車形状を矩形近似していることに対応する。列車1の後尾部1bについても同様であるから、矩形列車の長さL
snbについては、
図3に示すように実際の列車長さと空気力学的長さL
aは等しい(L
0,
snb=L
a)。
【0047】
長い流線形の先頭部1a及び後尾部1bを有する列車1の場合であって、この先頭部1aが長さlであるときに、数7においてp(ΔL,r
m)=0とすると、以下の数10が得られる。
【0049】
ここで、数10に示す排除長さΔLは、長い流線形の先頭部1a及び後尾部1bを有する列車1であるときに、この先頭部1a又は後尾部1bの先端からp=0となる点までの距離である。排除長さΔLは、r
mの関数である。先頭部1a及び後尾部1bについても同様であり、長い流線形の先頭部1a及び後尾部1bについて以下の数11が成り立つ。
【0051】
数10及び
図11よりΔL=ΔL(r
m)>0であることから、列車1の空気力学的長さL
aは、実際の列車1の長さL
0よりも短くなる。遠方場((x
1−y
1)
2≪r
m2)においては、(x
1−y
1)
2+r
m2〜r
m2であり、以下の数12が成り立つ。
【0053】
数12の右辺は、列車1の先頭部1a及び後尾部1bの断面積変化率分布の重心を表している。ここで、
図3に示す重心G
nは、列車1の先頭部1aの断面積変化率の重心であり、重心G
tは列車1の後尾部1bの断面積変化率の重心である。空気力学的長さL
aは、列車1の先頭部1a及び後尾部1bの断面積変化率の重心G
n,G
t間の距離である。重心距離l
g,nは、列車1の先頭部1aの先端から断面積変化率の重心G
nまでの距離であり、重心距離l
g,tは列車1の後尾部1bの先端から断面積変化率の重心G
tまでの距離である。観測点が遠方の場合には、以下の数13が成り立つ。
【0055】
図1に示す長さ補正部10は、補正情報記憶部11が記憶する補正情報に基づいて、列車1の空気力学的長さL
aを数13によって演算する。長さ補正部10は、演算後の空気力学的長さL
aを補正長さ信号(補正長さ情報)として制御部18に出力する。
【0056】
補正情報記憶部11は、列車1の長さL
0の補正に必要な情報を補正情報として記憶する手段である。補正情報記憶部11は、列車1の長さL
0に関する列車長さ情報、及び重心距離l
g,n,l
g,tに関する重心距離情報などの補正情報を記憶する。補正情報記憶部11は、例えば、補正情報入力部12が出力する補正情報を記憶するメモリである。
【0057】
補正情報入力部12は、列車1の長さL
0の補正に必要な情報が入力する手段である。補正情報入力部12は、例えば、キーボードなどの入力装置又はマウスなどの補助入力装置を作業者が操作して、列車長さ情報及び重心距離情報などの補正情報を入力したときに、この補正情報を長さ補正装置5に入力させるインタフェース(I/F)回路などである。
【0058】
補正長さ情報記憶部13は、長さ補正部10による補正後の列車1の空気力学的長さL
aを補正長さ情報として記憶する手段である。補正長さ情報記憶部13は、例えば、長さ補正部10が出力する補正長さ情報を記憶するメモリである。
【0059】
速度演算部14は、長さ補正部10による補正後の列車1の空気力学的長さL
aに基づいて、この列車1の速度U
aを演算する手段である。速度演算部14は、圧力変動波形情報記憶部9が記憶する圧力変動波形情報と、補正長さ情報記憶部13が記憶する補正長さ情報とに基づいて、列車1の速度U
aを演算する。速度演算部14は、
図2及び
図5(C)に示すように、列車1の先頭部1aが通過点Pを通過するときに発生する圧力変動波形W
Aがゼロとなる時刻t
Aと、この列車1の後尾部1bが通過点Pを通過するときに発生する圧力変動波形W
Bがゼロとなる時刻t
Bとの時間差ΔTと、空気力学的長さL
aとに基づいて、この列車1の速度U
aを演算する。速度演算部14は、圧力変動p
Bがゼロとなる時刻t
Bから圧力変動p
Aのゼロとなる時刻t
Aを減算して時間差ΔTを演算し、
図3(B)に示す列車1の空気力学的長さL
aをこの時間差ΔTによって除算して列車1の速度U
aを演算する。速度演算部14は、以下の数14によって列車1の速度U
aを演算し、演算後の列車1の速度U
aを速度信号(速度情報)として制御部18に出力する。
【0061】
速度情報記憶部15は、列車1の速度U
aを速度情報として記憶する手段である。速度情報記憶部15は、例えば、速度演算部14が出力する速度情報を記憶するメモリなどである。
【0062】
プログラム記憶部16は、列車1の長さL
0を補正するための長さ補正プログラムを記憶する手段である。プログラム記憶部16は、例えば、長さ補正プログラムを記録する情報記録媒体又は長さ補正プログラムを送信する電気通信回線などから読み込まれたこの長さ補正プログラムを記憶するメモリである。
【0063】
表示部17は、長さ補正装置5に関する種々の情報を表示する手段である。表示部17は、例えば、圧力変動波形生成部8が生成する圧力変動波形W
A,W
Bを表示したり、長さ補正部10が補正した列車1の空気力学的長さL
aを表示したり、速度演算部14が演算した列車1の速度U
aを表示したりする液晶画面などを有する表示装置である。
【0064】
制御部18は、長さ補正装置5の種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御部18は、プログラム記憶部16から長さ補正プログラムを読み出して一連の長さ補正処理を実行する。制御部18は、例えば、信号処理部6が出力する圧力変動情報を圧力変動情報記憶部7に出力したり、圧力変動情報記憶部7に圧力変動情報の記憶を指令したり、圧力変動情報記憶部7から圧力変動情報を読み出して圧力変動波形生成部8に出力したり、圧力変動波形生成部8に圧力変動波形W
A,W
Bの生成を指令したり、圧力変動波形生成部8が出力する圧力変動波形情報を圧力変動波形情報記憶部9に出力したり、圧力変動波形情報記憶部9に圧力変動波形情報の記憶を指令したり、圧力変動波形情報記憶部9から圧力変動波形情報を読み出して速度演算部14に出力したり、列車1の長さL
0の補正を長さ補正部10に指令したり、長さ補正部10が出力する補正長さ情報を速度演算部14に出力したり、補正情報記憶部11から補正情報を読み出して長さ補正部10に出力したり、補正情報入力部12が出力する補正情報を補正情報記憶部11に出力したり、補正情報記憶部11に補正情報の記憶を指令したり、長さ補正部10が出力する補正長さ情報を補正長さ情報記憶部13に出力したり、補正長さ情報の記憶を補正長さ情報記憶部13に指令したり、補正長さ情報記憶部13から補正長さ情報を読み出して速度演算部14又は表示部17に出力したり、速度演算部14に列車1の速度U
aの演算を指令したり、速度演算部14が出力する速度情報を速度情報記憶部15に出力したり、速度情報記憶部15から速度情報を読み出して表示部17に出力したり、プログラム記憶部16から長さ補正プログラムを読み出したり、表示部17に種々の情報の表示を指令したりなどする。制御部18には、信号処理部6、圧力変動情報記憶部7、圧力変動波形生成部8、圧力変動波形情報記憶部9、長さ補正部10、補正情報記憶部11、補正情報入力部12、補正長さ情報記憶部13、速度演算部14、速度情報記憶部15、プログラム記憶部16及び表示部17などが相互に通信可能なようにバスなどの通信手段によって接続されている。
【0065】
次に、この発明の実施形態に係る移動体の長さ補正装置の動作を説明する。
以下では、
図1に示す制御部18の動作を中心に説明する。
図5に示すステップ(以下、Sという)100において、長さ補正プログラムを制御部18が読み込む。
図1に示す長さ補正装置5の電源がONするとプログラム記憶部16から長さ補正プログラムを制御部18が読み出して、一連の長さ補正処理を制御部18が実行する。
【0066】
S110において、圧力変動情報の記憶を圧力変動情報記憶部7に制御部18が指令する。
図1及び
図2に示すように、列車1が通過点Pを通過したときに発生する圧力変動p
A,p
Bを圧力変動測定装置4が測定して、この圧力変動p
A,p
Bに応じた圧力変動信号を圧力変動測定装置4が長さ補正装置5の信号処理部6に出力する。その結果、圧力変動測定装置4が出力する圧力変動信号を信号処理部6が処理し、この圧力変動信号を信号処理部6が制御部18に出力する。この圧力変動信号を制御部18が圧力変動情報記憶部7に出力し、圧力変動情報記憶部7に圧力変動情報の記憶を制御部18が指令すると、圧力変動情報記憶部7が圧力変動情報を記憶する。
【0067】
S120において、圧力変動波形W
A,W
Bの生成を圧力変動波形生成部8に制御部18が指令する。圧力変動情報記憶部7から圧力変動情報を制御部18が読み出して、この圧力変動情報を圧力変動波形生成部8に制御部18が出力する。圧力変動波形W
A,W
Bの生成を圧力変動波形生成部8に制御部18が指令すると、
図2及び
図3(C)に示すような圧力変動波形W
A,W
Bを圧力変動波形生成部8が生成し、圧力変動波形情報を圧力変動波形生成部8が制御部18に出力する。
【0068】
S130において、圧力変動波形情報の記憶を圧力変動波形情報記憶部9に制御部18が指令する。圧力変動波形情報を制御部18が圧力変動波形情報記憶部9に出力し、圧力変動波形情報記憶部9に圧力変動波形情報の記憶を制御部18が指令すると、圧力変動波形情報記憶部9が圧力変動波形情報を記憶する。
【0069】
S140において、列車1の長さL
0の補正を長さ補正部10に制御部18が指令する。補正情報記憶部11から補正情報を制御部18が読み込み、この補正情報を長さ補正部10に制御部18が出力し、列車1の長さL
0の補正を長さ補正部10に制御部18が指令する。その結果、
図4に示す列車1の長さL
0から重心距離l
g,n,l
g,tを減算して、数13に基づいて空気力学的長さL
aを長さ補正部10が演算し、この空気力学的長さL
aを補正長さ情報として長さ補正部10が制御部18に出力する。
【0070】
S150において、補正長さ情報の記憶を補正長さ情報記憶部13に制御部18が指令する。補正長さ情報を制御部18が補正長さ情報記憶部13に出力し、補正長さ情報記憶部13に補正長さ情報の記憶を制御部18が指令すると、補正長さ情報記憶部13が補正長さ情報を記憶する。
【0071】
S160において、列車1の速度U
aの演算を速度演算部14に制御部18が指令する。補正長さ情報記憶部13から補正長さ情報を制御部18が読み出して、この補正長さ情報を速度演算部14に制御部18が出力する。また、圧力変動波形情報記憶部9から圧力変動波形情報を制御部18が読み出して、この圧力変動波形情報を速度演算部14に制御部18が出力する。列車1の長さL
0の補正を長さ補正部10に制御部18が指令すると、
図2及び
図3(C)に示す圧力変動波形W
A,W
Bのゼロクロス点である時刻t
A,t
Bの時間差ΔTを速度演算部14が演算する。
図4に示す列車1の空気力学的長さL
aを時間差ΔTによって速度演算部14が除算し、数14に基づいて列車1の速度U
aを速度演算部14が演算し、この列車1の速度U
aを速度情報として速度演算部14が制御部18に出力する。
【0072】
S170において、速度情報の記憶を速度情報記憶部15に制御部18が指令する。速度情報を制御部18が速度情報記憶部15に出力し、速度情報記憶部15に速度情報の記憶を制御部18が指令すると、速度情報記憶部15が速度情報を記憶する。
【0073】
この発明の実施形態に係る移動体の長さ補正装置とその長さ補正プログラムには、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、列車1の先頭部1aの断面積変化率の重心G
nと、この列車1の後尾部1bの断面積変化率の重心G
tとに基づいて、この列車1の長さL
0を長さ補正部10が補正する。このため、音響理論に基づいて導出された列車1の空気力学的長さL
aを用いて、列車1の長さL
0を空気力学的に補正し、矩形列車モデルの長さを設定することができるとともに、この矩形列車モデルを用いた理論、実験及び数値解析の精度を向上させることができる。
【0074】
(2) この実施形態では、列車1の先頭部1aの断面積変化率の重心G
nと、この列車1の後尾部1bの断面積変化率の重心G
tとの間の距離を、この列車1の空気力学的長さL
aとして長さ補正部10が補正する。このため、列車1の長さL
0を空気力学的長さL
aに簡単に設定することができ、直方体の簡単な構造の矩形列車モデルとして取り扱うことによって解析や計測手法の精度を向上させることができる。また、実際の列車1の先頭部1a及び後尾部1bの形状が秘密扱いである場合に、比較的入手が容易な先頭部1a及び後尾部1bの重心G
n,G
t間の距離のみを入手して、理論、実験及び数値解析の精度を向上させることができる。
【0075】
(3) この実施形態では、長さ補正部10による補正後の列車1の空気力学的長さL
aに基づいて、この列車1の速度U
aを速度演算部14が演算する。このため、列車1の速度U
aを簡易に短時間で演算することができるとともに、列車1の速度U
aを高精度で測定することができる。
【0076】
(4) この実施形態では、列車1の先頭部1aが通過点Pを通過するときに発生する圧力変動p
Aがゼロとなる時刻t
Aと、この列車1の後尾部1bがこの通過点Pを通過するときに発生する圧力変動p
Bがゼロとなる時刻t
Bとの時間差ΔTと、空気力学的長さL
aとに基づいて、この列車1の速度U
aを速度演算部14が演算する。このため、例えば、一つの圧力センサによって計測された列車1の通過時の圧力変動p
A,p
Bに基づいて、列車1の速度U
aを簡単に測定することができる。また、低周波レベル計のような高価な圧力センサを複数設置する必要がなくなって、列車1の速度U
aを低コストで測定することができる。
【実施例】
【0077】
次に、この発明の実施例を説明する。
図1〜
図4に示す長さ補正装置5による列車の空気力学的長さL
aを調べるために模型試験を実施した。模型試験には、公益財団法人鉄道総合技術研究所内のトンネル微気圧の模型試験装置を使用した。このトンネル微気圧の模型試験装置は、実際のトンネルを模擬したトンネル模型内に、実際の鉄道車両を模擬した列車模型を通過させたときに発生するトンネル微気圧波を測定する装置である。このトンネル微気圧の模型試験装置は、一対の回転体の間で列車模型を加速しながら発射させる発射装置と、この発射装置から発射された列車模型をガイドするガイドワイヤ(ピアノ線)と、トンネル模型を通過した列車模型を制動させる制動装置と、トンネル模型を通過する列車模型の速度を検出する速度センサと、トンネル模型を列車模型が通過したときに発生するトンネル微気圧波を検出するマイクロホンなどを備えている。
【0078】
模型試験では、列車模型の通過時の圧力変動波形を計測し、
図1〜
図4に示す長さ補正装置5によって空気力学的長さL
a及び速度U
aを演算し、数14によって算出される算出速度U
calの測定結果と、実際の列車模型の参照速度U
refの測定結果とを比較した。模型試験では、低周波音レベル計(リオン株式会社製Xn-12A)によって列車模型の通過時の圧力変動を計測し、この模型列車の参照速度U
refを速度計測装置(2台のサーチコイルを用いた速度算出方法)によって計測した。模型試験は、観測点距離が実際の現場で12.5mに相当し、列車長さが実物換算で151mに相当し、先頭部及び後尾部が実物換算で15.7mに相当する条件で実施した。
【0079】
図6に示す縦軸は、算出速度U
cal (km/h)であり、参照速度U
ref(km/h)である。実線は、算出速度U
cal=参照速度U
refの直線である。
図6に示す「■補正なし」は、実際の列車模型の長さL
0に基づいて算出したときの測定結果である。「■補正なし」は、以下の数15に示すように、
図2及び
図3(C)に示す圧力変動波形W
A,W
Bがゼロとなる時刻t
A,t
Bの時間差ΔTで実際の列車模型の長さL
0を除算したときの速度U
0を算出速度U
calとした。
【0080】
【数15】
【0081】
図6に示す「◆断面積分布重心補正」は、従来の移動体の速度測定装置による断面積分布の重心距離l
cに基づいて算出したときの測定結果である。「◆断面積分布重心補正」は、実際の列車模型の先頭部及び後尾部の断面積分布の重心距離l
cを数14に示す重心距離l
g,n,l
g,tと置き換えて、実際の列車模型の長さL
0から減算し、
図2及び
図3(C)に示す圧力変動波形W
A,W
Bがゼロとなる時刻t
A,t
Bの時間差ΔTで除算したときの速度U
aを算出速度U
calとした。
【0082】
【数16】
【0083】
ここで、数16に示すl
0は列車模型の先頭部の長さであり、Aは列車模型の先頭部の断面積分布であり、A
0は列車模型の断面積である。
【0084】
図6に示す「▲断面積変化率重心補正」は、
図1に示す長さ補正装置5による断面積変化率の重心距離l
cに基づいて算出したときの測定結果である。「▲断面積変化率重心補正」は、以下の数17に示すように、実際の列車模型の先頭部及び後尾部の断面積変化率分布の重心距離l
cを数14に示す重心距離l
g,n,l
g,tと置き換え、実際の列車模型の長さL
0から減算して空気力学的長さL
aを算出し、
図2及び
図3(C)に示す圧力変動波形W
A,W
Bがゼロとなる時刻t
A,t
Bの時間差ΔTでこの空気力学的長さL
aを除算したときの速度U
aを算出速度U
calとした。
【0085】
【数17】
【0086】
図6に示すように、「▲断面積変化率重心補正」の場合には、実際の列車模型の長さL
0を補正して算出した算出速度U
calは、実際の列車模型の速度(参照速度)U
refと略一致することが確認された。一方、「■補正なし」の場合には、実際の列車模型の長さL
0により算出した算出速度U
calは、実際の列車模型の速度(参照速度)U
refと一致せず、実際の列車模型の速度(参照速度)U
refに対して過大評価となることが確認された。また、「◆断面積分布重心補正」の場合には、実際の列車模型の長さL
0を補正して算出した算出速度U
calは、実際の列車模型の速度(参照速度)U
refと一致せず、実際の列車模型の速度(参照速度)U
refに対して過小評価となることが確認された。その結果、
図1に示す長さ補正装置5によって実際の列車1の長さL
0よりも短い空気力学的長さL
aを演算し、列車1の速度U
aを正確に測定可能であることが確認された。
【0087】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
この実施形態では、移動体として列車1を例に挙げて説明したがこれに限定するものではない。例えば、高速で走行する磁気浮上式鉄道、自動車、航空機又は飛翔体などの移動体についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、軌道2が複線である場合を例に挙げて説明したが、軌道2が単線又は複々線である場合についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、構造物3としてトンネルを例に挙げて説明したが、トンネル微気圧波を低減するためにトンネル坑口を覆うトンネル緩衝工、軌道2上に架け渡した跨線橋、軌道2上の駅本屋を配置した橋上駅などの構造物についてもこの発明を適用することができる。