(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のサイクロトロンにおいて、各谷セクタの前記谷周囲縁部までの前記深遠部外周の前記距離Lapに前記磁束反転ヨークの厚さTvを掛けた積の、前記中心軸Zまでの前記周囲縁部の距離Lvの二乗に対する比率(Lap×Tv)/Lv2が3%未満である、ことを特徴とするサイクロトロン。
請求項1または2に記載のサイクロトロンにおいて、前記深遠部半径方向軸Larに沿って測定される前記谷周囲縁部(4vp)を分離して前記中心軸Zに至る距離Lvに対する、前記深遠部開口の直径2Raの比率2Ra/Lvが45〜60%の間に含まれる、ことを特徴とするサイクロトロン。
請求項1乃至3の何れか一項に記載のサイクロトロンにおいて、前記中心軸Zと前記深遠部開口断面の中心との間の距離Laに対する前記深遠部開口の直径2Raの比率2Ra/Laが、Laの値の少なくとも60%であり、前記深遠部開口の直径2Raは240〜300mmの間に含まれる、ことを特徴とするサイクロトロン。
請求項1乃至4の何れか一項に記載のサイクロトロンにおいて、前記平均谷ギャップ高さGvに前記磁束反転ヨーク厚さTvを掛けた積Gv×Tvの、前記中心軸Zまでの前記周囲縁部の距離Lvの二乗に対する比率(Gv×Tv)/Lv2が20%未満である、ことを特徴とするサイクロトロン。
請求項1乃至5の何れか一項に記載のサイクロトロンにおいて、前記谷ギャップ部分の前記平均谷ギャップ高さGvに対する前記山ギャップ部分の前記平均山ギャップ高さGhの高さの比率Gh/Gvが8〜20%の間に含まれる、ことを特徴とするサイクロトロン。
請求項1乃至9の何れか一項に記載のサイクロトロンにおいて、前記谷周囲縁部(4vp)の前記第1および第2の下側遠位端(3lde)が前記中心軸Zとともに谷方位角αvを形成し、その結果、前記谷方位角の正接tan(αv)に対する前記平均山ギャップ高さGhの比率Gh/tan(αv)が、30mm以下である、ことを特徴とするサイクロトロン。
請求項1乃至11の何れか一項に記載のサイクロトロンにおいて、N=4または8の山セクタ(3)および同じ数の谷セクタ(4)を含み、前記磁束反転ヨーク(6)が前記チャンバに面する内側表面と、前記チャンバから離れる方に面しかつ前記磁束反転ヨークの壁厚さによって前記内側表面から分離される外側表面とを含み、前記内側表面の前記中心軸Zに対して垂直な断面が、前記中心軸Zと同心の円形形状を有し、前記外側表面の前記中心軸Zに対して垂直な断面が、前記中心軸Zと同心の正方形内に内接される形状を有し、その縁部は4つの谷セクタの前記深遠部半径方向軸Larに対して垂直である、ことを特徴とするサイクロトロン。
請求項1乃至12の何れか一項に記載のサイクロトロンにおいて、前記基板(5)、磁極(2)および磁束反転ヨーク(6)が全て同じ材料からから作製され、前記基板(5)および前記磁束反転ヨーク(6)は部分的に、前記中心軸に沿って測定される同じ高さを有する、ことを特徴とするサイクロトロン。
請求項1乃至13の何れか一項に記載のサイクロトロンにおいて、前記第1および第2の磁極のそれぞれが、その全ての前記山セクタおよび谷セクタを含む単一モノブロック要素から作製される、ことを特徴とするサイクロトロン。
【背景技術】
【0002】
サイクロトロンは一種の円形粒子加速器であり、そこでは負または正に帯電した粒子が、サイクロトロンの中心から外側へ、螺旋状経路に沿って数MeVのエネルギーまで加速される。等時性サイクロトロンでは、粒子ビームが、螺旋状経路の各連続サイクルまたはサイクル部分を同時に流れる。別段の指示のない限り、用語「サイクロトロン」は、以下、等時性サイクロトロンに言及するために使用される。サイクロトロンは様々な分野で、例えば、核物理学において、陽子治療などの医療的処置において、または放射性薬理学において使用される。特に、サイクロトロンは、PET(positron emitting tomography(陽電子放出断層撮影))およびSPECT(スペクト)(single photon emission computed tomography(単一光子放射型コンピュータ断層撮影))画像形成に好適な短寿命陽電子放出同位元素を生成するために使用可能である。
【0003】
サイクロトロンはいくつかの要素を含み、それらには、入射システム、荷電粒子を加速するための高周波(RF)加速システム、加速された粒子を正確な経路に沿って案内するための磁気システム、そのようにして加速された粒子を収集するための取出しシステム、およびサイクロトロン内に真空を生成し維持するための真空システムが含まれる。
【0004】
粒子ビームは、相対的に低い初期速度で入射システムによってサイクロトロンの中心でまたはその近くでギャップに導入される。この粒子ビームは連続的におよび反復的にRF加速システムによって加速され、磁気システムによって発生される磁場によってギャップ内に含められた螺旋経路に沿って外に向かって案内される。粒子ビームはその目標エネルギーに達すると、取出し地点に設けられた取出しシステムによってサイクロトロンから取り出される。この取出しシステムは、例えば、グラファイトの薄いシートから構成された抜取機を含むことができる。例えば、抜取機を通過するH
−イオンは2つの電子を失い、陽性になる。その結果として、磁場のそれらの経路の曲率がそのサインを変化させ、そのようにして粒子ビームはターゲットに向かってサイクロトロンから放出される。当業者に周知の他の取出しシステムが存在する。
【0005】
磁気システムは磁場を生成し、磁場は、荷電粒子のビームを、それがその目標エネルギーに加速されるまで、螺旋経路に沿って案内かつ収束する(
図4および5参照)。以下、用語「粒子」、「荷電粒子」および「イオン」は、同義語として区別せずに使用される。磁場は、2つの磁極間に画定されたギャップ内に、これら磁極の周囲に巻かれた2つのソレノイド巻きコイルによって生成される。サイクロトロンの磁極は、中心軸の周囲に分散された交互に存在する山セクタと谷セクタに分割されることが多い。2つの磁極間のギャップは、山セクタにおいてより小さく、谷セクタにおいてより大きい。そのようにして強い磁場が山セクタ内のギャップ中に生成され、より弱い磁場が谷セクタ内のギャップ中に生成される。そのような方位磁場変化は、粒子ビームの半径方向および垂直方向の収束をもたらす。このため、そのようなサイクロトロンは時にセクタ収束型サイクロトロンと称される。いくつかの実施形態では、山セクタは、一切れのケーキと同様の円形セクタの形状を有し、中心軸に向かって実質的に半径方向に延在する第1および第2の側表面と、全体的に湾曲した周囲表面と、中心軸に隣接する中心表面と、ギャップの片側を画定する上表面とを有する。上表面は第1および第2の側縁部と、周囲縁部と、中心縁部とによって境界を定められる(
図1(b)および3参照)。
【0006】
ギャップ内の真空を維持するために、および磁極のギャップおよび対を取り囲む空間の中で磁場を制御しかつ含めるために、サイクロトロンはヨークも含む。ヨークは、磁束反転ヨークによって互いに分離される、中心軸Zに対して垂直な第1および第2の基板によって形成される。第1および第2の基板および磁束反転ヨークはチャンバを共に画定し、ここで磁束反転ヨークはサイクロトロンの外壁を形成し、コイルをサイクロトロン内に含めることによってコイルの外側の磁場を制御する。第1および第2の磁極はチャンバ内に含められる。第1および第2の基板には、チャンバを真空ポンプと流体連通するための開口が設けられる。
【0007】
磁束反転ヨークは、中心軸Zに対して垂直な中間面のレベルで接合される2つの部分から概ね形成され、その結果、サイクロトロンは、第1の基板および磁束反転ヨークの第1の部分を、第1の磁極と一緒に、第2の基板、磁束反転ヨークの第2の部分および第2の磁極から引き離すことによって開放することができる。磁束反転ヨークは、閉鎖するためにおよびギャップの外側で磁極によって生成された磁場をサイクロトロン内に含めるために、最小厚さTvを有する必要がある。
【0008】
サイクロトロンは数十トンの重さのある非常に重く巨大な装置である。これは言うまでもなくサイクロトロンの製造費および輸送費および取扱いに影響を及ぼす。標準型の共同一貫輸送コンテナは約2.4mの幅および同様の高さを有し、40’および45’のハイキューブコンテナなど、より大型のコンテナは約2.7mの高さに達する。標準型の共同一貫輸送コンテナに収めるために、サイクロトロンは、2.4m(または2.7m)未満のクレートの中に収まらなければならない。18MeV陽子を加速するのに好適なものなど、低エネルギーサイクロトロンの寸法は通常、標準型の共同一貫輸送コンテナのサイズを超え、約2mの直径のヨークおよびヨークの外側に配置された液圧システムを有する。サイクロトロンの重い重量と併せて非標準型コンテナの使用を必要とする高体積サイクロトロンは、サイクロトロンの費用および取扱いに悪影響を及ぼす。
【0009】
従って、より低い重量およびより低い寸法の等時性セクタ収束型サイクロトロンを提供し、製造費および輸送費を削減し、およびそのようなサイクロトロンの取扱い易さを向上させる必要性が当該技術分野に依然としてある。本発明はサイクロトロンの体積および重量を大幅に低減するための解決策を提案する。本発明のこのおよび他の利点は、本発明の詳細な記載の中により詳細に提示されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、付随する独立請求項の中で定義される。好ましい実施形態は従属項の中で定義される。
【0011】
本発明は、ギャップ内に含められた所与の経路を介して粒子ビームを加速するためのサイクロトロンであって、前記サイクロトロンが、
(a)ヨーク内に画定されたチャンバであって、前記ヨークは、中心軸Zに対して垂直でありかつサイクロトロンの側方外壁を画定する磁束反転ヨークによって互いに分離される第1および第2の基板によって形成される、チャンバと、
(b)チャンバ内に配置されかつ中心軸Zに対して垂直な中間面に対して互いに対向して対称に位置付けられ、および前記ギャップによって互いに分離された第1および第2の磁極とを含み、第1および第2の磁極のそれぞれが、
(c)上表面(3U)を有する少なくともN=3の山セクタと、底表面を含む同じ数の谷セクタとを含み、前記山セクタおよび谷セクタが中心軸Zの周囲に交互に分散され、その結果、第1および第2の磁極を分離するギャップが、2つの対向する山セクタの上表面の間に画定されかつ中心軸Zに沿って測定された平均ギャップ高さGhを有する山ギャップ部分と、2つの対向する谷セクタの底表面の間に画定されかつ中心軸Zに沿って測定された平均谷ギャップ高さGvを有する谷ギャップ部分とを含み、Gv>Ghであり、
(d)各谷セクタの底表面が谷周囲縁部によって画定され、前記谷周囲縁部は第1および第2の下側遠位端によって境界を定められ、および中心軸Zから最も遠くに配置された底表面の縁部として定義され、
(e)各谷セクタの底表面がさらに、ヨーク基板の厚さを貫いて延在しかつGhの少なくとも5倍の大きさの高さGaの深遠部ギャップ部分を画定する深遠部開口を含み、前記深遠部開口は深遠部外周によって画定される中心軸に対して垂直な断面を有し、深遠部外周は中心軸Zと垂直に交差する深遠部半径方向軸Larに沿って測定された最短距離Lapだけ谷周囲縁部から分離され、谷周囲縁部は深遠部半径方向軸Larに沿って測定された距離Lvだけ中心軸Zから分離され、
(f)磁束反転ヨークは、中心軸の周囲で角度位置により変化する壁厚さを有し、その最小壁厚さ値Tvは、各谷セクタの深遠部半径方向軸Larに沿って測定される、サイクロトロンにおいて、
各谷セクタの谷周囲縁部までの深遠部外周の距離Lapに磁束反転ヨークの厚さTvを掛けた積の、中心軸Zまでの周囲縁部の距離Lvの二乗に対する比率(Lap×Tv)/Lv
2が5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満であることを特徴とするサイクロトロンに関する。
【0012】
深遠部開口のサイズおよび位置は重要である。深遠部半径方向軸Larに沿って測定される谷周囲縁部(4vp)を分離して中心軸Zに至る距離Lvに対する、深遠部開口の直径2Raの比率2Ra/Lvは45〜60%の間、好ましくは48〜55%の間に含まれることが好ましい。中心軸Zと深遠部開口断面の中心との間の距離Laに対する深遠部開口の直径2Raの比率2Ra/Laが、Laの値の少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%であり、深遠部開口の直径2Raは好ましくは240〜300mmの間に含まれる。
【0013】
谷に面する磁束反転ヨークの厚さTvはまた、平均谷ギャップ高さおよび磁極のサイズに依存する。特に、平均谷ギャップ高さGvに磁束反転ヨーク厚さTvを掛けた積Gv×Tvの、中心軸Zまでの周囲縁部の距離Lvの二乗に対する比率(Gv×Tv)/Lv
2は20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満であることができる。
【0014】
深遠部開口に起因する向上された収束効果のために、最先端のサイクロトロンよりも浅い谷を使用可能であり、これはサイクロトロンの全体サイズおよび重量の点で有利である。例えば、谷ギャップ部分の平均谷ギャップ高さGvに対する山ギャップ部分の平均山ギャップ高さGhの高さの比率Gh/Gvは、8〜20%の間に含めることができる。付随して、粒子ビームの向上された収束により、これまで利用されてきたものよりも狭いギャップを実装可能である。特に、山ギャップ部分の平均山ギャップ高さGhに谷ギャップ部分の平均谷ギャップ高さGvを掛けた高さの積の、中心軸Zまでの周囲縁部の距離Lvの二乗に対する比率(Gh×Gv)/Lv
2は、5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満である。山ギャップ部分の平均山ギャップ高さGhは、20〜27mmの間、好ましくは22〜26mmの間に含めることができる。谷ギャップ部分の平均谷ギャップ高さGvは100〜500mmの間、好ましくは150〜400mmの間、好ましくは200〜250mmの間に含めることができる。
【0015】
全体的により広い谷を使用可能であり、その結果、例えば、谷周囲縁部(4vp)の第1および第2の下側遠位端(3lde)は中心軸Zとともに谷方位角αvを形成し、その結果、谷方位角の正接tan(αv)に対する平均山ギャップ高さGhの比率Gh/tan(αv)は、30mm以下、好ましくは27mm以下である。特に、谷方位角αvは35°超、好ましくは40°超、より好ましくは42°超であることができ、およびまた、50°以下、好ましくは46°以下、より好ましくは45°以下である。
【0016】
磁束反転ヨークは、チャンバに面する内側表面と、チャンバから離れる方に面しおよび磁束反転ヨークの壁厚さによって内側表面から分離される外側表面とを含む。N=4または8の山セクタおよび同じ数の谷セクタを含む本発明によるサイクロトロンの好ましい実施形態において、内側表面の中心軸Zに対して垂直な断面は、中心軸Zと同心の円形形状を有し、外側表面の中心軸Zに対して垂直な断面は、中心軸Zと同心の正方形内に内接される形状を有し、その縁部は4つの谷セクタの深遠部半径方向軸Larに対して垂直であり、そのコーナー部分は好ましくは切除される。
【0017】
基板、磁極および磁束反転ヨークが全て同じ材料からから作製され、基板および磁束反転ヨークのいくつかの部分が中心軸に沿って測定される同じ高さを有し、その結果、サイクロトロン構造の全ての主要要素が同じ材料バッチから作製できる場合、より費用効果的である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、等時性セクタ収束型サイクロトロンに関し、以下、上掲の背景技術の節で考察した種類のサイクロトロンと称される。本発明によるサイクロトロンは、荷電粒子を、サイクロトロンの中心領域から外方へ、螺旋状経路12に沿って、それらが数MeVのエネルギーで取り出されるまで加速する。例えば、そのようにして取り出された荷電粒子は、陽子、H
+、または重陽子、D
+であり得る。好ましくは、取り出された粒子によって送達されるエネルギーは、10〜26MeVの間、より好ましくは15〜21MeVの間、最も好ましくは18MeVである。そのようなエネルギーのサイクロトロンは、例えば、PET(positron emitting tomography(陽電子放出断層撮影))およびSPECT(スペクト)画像形成での使用に好適な短寿命陽電子放出同位元素を生成するために使用される。
【0021】
図1(a)に示されるように、本発明によるサイクロトロン1は、2つの基板5と、一緒にヨークを形成する磁束反転ヨーク6とによって画定されたチャンバを含む。
図1(a)および5に示されるように、磁束反転ヨークは、サイクロトロンの外壁を形成し、および、コイルの外側の磁場を、それをサイクロトロン内に含有することによって、制御する。磁場をサイクロトロン内に包含することは、磁束反転ヨーク6の最小厚さTvを決定し、それはギャップ7の外側の磁場の強度に依存する。
【0022】
サイクロトロンはさらに、第1および第2の磁極2を含み、それらは、チャンバ内に配置され、中心軸Zに対して垂直な中間面MPに対して対称に互いに向き合い、ギャップ7によって互いに分離される。ヨークおよび磁極は全て、磁性材料から、好ましくは低炭素(C)鋼から作製され、磁性システムの一部を形成する。磁性システムは、第1および第2の磁極の周囲に巻かれ、磁極と磁束反転ヨークとの間に含まれるチャンバの環状空間内に取り付けられる電気伝導性材料から作製された第1および第2コイル14によって完成される。
【0023】
図1(b)および4に示されるように、第1および第2の磁極2のそれぞれは、中心軸Zの周囲に半径方向に分散された少なくともN=3個の山セクタ3を含む(
図1(b)および4はN=4の好ましい実施形態を示す)。
図1(b)および3に示されるように、各山セクタ3(淡く陰影を付けられた領域として
図1(b)に示されている)は、山方位角αhにわたって延在する上表面3Uを有する。第1および第2磁極2のそれぞれはさらに、中心軸Zの周囲に半径方向に分散された同じ数Nの谷セクタ4(暗く陰影を付けられた領域として
図3に示されている)を含む。各谷セクタ4は2つの山セクタ3が側方に位置付けられ、谷方位角αvにわたって延在する底表面4Bを有し、その結果、αh+αv=360/Nである。
図1(b)および2に示されるように、谷セクタの底表面はさらに、ヨークの全厚さを貫いて延在する深遠部開口11を含む。そのような開口はチャンバを真空ポンプに流体接続するために必要とされる。続けてより詳細に考察されるように、そのような開口の存在は、サイクロトロンの全体寸法および重量を実質的に低減するために、本発明の利点と見なされている。
【0024】
第1磁極2の山セクタ3および谷セクタ4は、それぞれ、第2磁極2の対向する山セクタ3および谷セクタ4に面する。
図4に示される粒子ビームによって辿られる経路12は、第1および第2磁極を分離するギャップ7内に含まれる。第1および第2磁極間のギャップ7は従って、
・2つの対向山セクタ3の上表面3U間に画定され、かつ、2つの対向上表面3Uの領域にわたる山ギャップ部分の平均高さとして定義される平均ギャップ高さGhを有する山ギャップ部分7h、
・2つの対向谷セクタ4の底表面4B間に画定され、かつ、深遠部開口11を除く、谷ギャップ部分内の2つの対向底表面4Bの領域にわたる谷ギャップ部分の平均高さとして定義される平均ギャップ高さGvを有する谷ギャップ部分7v、
・谷セクタの2つの対向深遠部開口間に画定され、かつ、GvおよびGhよりもかなり大きな平均ギャップ高さGaを有する深遠部ギャップ部分7a、
を含む。
【0025】
平均山および谷ギャップ高さは、山セクタおよび谷セクタのそれぞれ上表面および下表面全体にわたるギャップ高さの平均として測定される。谷ギャップ高さの平均は、底表面の深遠部開口を無視する。
【0026】
図1(b)および3に示されるように、上表面3Uは、
・第1および第2の上側遠位端3udeによって境界を定められ、かつ、中心軸Zから最も遠くに位置する上表面の縁部として定義される上側周囲縁部3up、
・第1および第2の上側近位端3upeによって境界を定められ、かつ、中心軸から最も近くに位置する上表面の縁部として定義される上側中心縁部3uc、
・第1上側遠位端および第1上側近位端を接続する第1上側側縁部3ul、
・第2上側遠位端および第2上側近位端を接続する第2上側側縁部3ul、
によって画定される。
【0027】
分かりやすくするために、取出しチャネルは、
図1(b)および3に示される磁束反転ヨーク6の上縁部に示されていないことに注意されたい。本発明によるサイクロトロンの磁束反転ヨークが粒子ビームがサイクロトロンを出ることを可能にする取出しチャネルを含むことは明白であり、これは当業者に周知であり、ここでより詳細に記載する必要はない。
【0028】
山セクタ3はさらに、
・第1および第2の側表面3Lであって、それぞれ第1および第2の上側側縁部から、山セクタの両側に配置された対応する谷セクタの床表面まで横切るように延在し、その結果、側表面を隣接底表面と交差する縁部として第1および第2の下側側縁部3llを画定し、前記第1および第2の下側側縁部はそれぞれ中心軸から最も遠くに配置された下側遠位端3ldeを有する、第1および第2の側表面3L、
・上側周囲縁部から、第1および第2の下側側縁部の下側遠位端3ldeによって境界を定められるセグメントとして画定される下側周囲線3lpまで延在する周囲表面3P、
を含む(
図3参照)。
【0029】
山セクタの平均高さHhは、下側および上側側縁部の間で中心軸と平行に測定される平均距離である。
【0030】
同様に、谷部分4は、隣接する山部分の側表面3Lが両側に位置する底表面4Bによって画定される。谷部分の底表面は、従って、前記隣接する側表面の下側側縁部3llによって境界を定められ、および、前記下側側縁部の下側遠位端3ldeによって境界を定められるセグメントとして定義される谷周囲縁部4vpによって境界を定められる。谷周囲縁部4vpは、中心軸Zから最も遠くに配置された谷セクタの底表面の縁部として定義される。
【0031】
深遠部開口11は谷部分に配置され、そこでそれらは山ギャップ部分内の高い磁場を少なくとも中断する。先に記載したように、深遠部開口は、チャンバを真空ポンプに流体連通し、サイクロトロンの使用中、チャンバ内の十分な真空レベルを保証するために設けられる。本発明によれば、しかしながら、深遠部開口は、粒子ビーム経路12の最も外側のサイクルのレベルにおいて谷部分内の磁場を制御するさらなる機能を付与される(
図5参照)。このため、深遠部開口11を各谷の谷周囲縁部4vpのごく近くに配置することが必須である。各谷セクタの谷周囲縁部4vpまでの深遠部外周の距離Lapは、深遠部開口11の外周と、対応する谷セクタの谷周囲縁部4vpとの間で、中心軸Zに対し垂直であり、かつ、中心軸Zのそばを通過する深遠部半径方向軸Larに沿って測定される最短距離として定義される。深遠部外周は、中心軸に対して垂直でありかつ隣接する側表面3Lの下側遠位端3ldeを含む面にわたる深遠部開口の断面の外周として定義される。底表面4Bが深遠部開口を取り囲む領域において平坦である場合、深遠部外周は、単に底表面と開口との間に形成された深遠部開口の縁である。
【0032】
縁部の端部は、その縁部を画定するセグメントの境界を定める2つの末端のうちの1つとして定義される。近位端は中心軸Zの最も近くに配置された端部である。遠位端は中心軸Zの最も遠くに配置された端部である。端部は、2本以上の線が交わる地点として定義されるコーナー地点であり得る。コーナー地点はまた、曲線の接線がサインを変化する、または不連続性を示す地点としても定義され得る。
【0033】
縁部は2つの表面が交わる線セグメントである。縁部は、上で定義されたように2つの端部によって境界を定められ、および2つの交わる表面のそれぞれの片方の側を定める。機械加工工具の制限のために、ならびに応力集中の低減のために、2つの表面は所与の曲率半径Rで交わることが多く、これは、両方の表面と交差する縁部の幾何学的位置を正確に決定することを困難にする。この場合、縁部は、互いに交差するように推定される2つの表面と交差する幾何学的な線として、および無限の曲率(1/R)として定義される。上側縁部は山セクタの上表面3Uと交差する縁部であり、下側縁部は谷セクタの底表面4Bと交差する縁部である。
【0034】
周囲縁部は、中心軸Zから最も遠くに配置された地点を含む表面の縁部として定義される。最も遠い地点が2つの縁部によって共有されるコーナー地点である場合、周囲縁部はまた、中心軸Zまでの平均距離が最大である表面の縁部である。例えば、上側周囲縁部は、中心軸まで最も遠くに配置された地点を含む上表面の縁部である。山セクタが一切れのタルトと比較される場合、その周囲縁部はタルトの周囲のクラストであろう。
【0035】
同じように、中心縁部は、中心軸Zの最も近くに配置された地点を含む表面の縁部として定義される。例えば、上側中心縁部は、中心軸Zの最も近くに配置された地点を含む上表面の縁部である。
【0036】
側縁部は、中心縁部の近位端を周囲縁部の遠位端に接続する縁部として定義される。ゆえに、側縁部の近位端は、中心縁部と交差する前記側縁部の端部であり、前記側縁部の遠位端は、周囲縁部と交差する前記側縁部の端部である。
【0037】
サイクロトロンの設計に依存して、上側/下側中心縁部は様々な形状を有し得る。最も一般的な形状は、中心軸Zに対して有限長さ(0以外)の、凹状の線、しばしば円形であり、これは、互いに分離された、第1および第2の上側/下側近位端によって境界を定められる。この構造は、粒子ビームをギャップへ導入するための空間を空けるので有用である。第1の代替構造において、第1および第2の近位中心端部は、上表面3Uの頂点を形成する単一の近位中心地点に収束され、これは3つの縁部だけを含み、中心縁部はゼロの長さを有する。山セクタが一切れのタルトと再度比較される場合、一切れの鋭利な先端は中心縁部に対応し、従って単一地点に低減される。第2の代替構造において、第1から第2側縁部への移行部は、中心軸Zに対して湾曲した凸状であり得、これはコーナー地点のない滑らかな移行部をもたらす。この構造において、中心縁部はまた、接線がサインを変化する地点として定義される単一地点に低減される。通常、第1および第2の代替構造においてさえ、山セクタは中心軸まで完全に延在せず、中心軸を直接取り囲む領域は、粒子ビームの挿入を可能にするように除去される。
【0038】
好ましくは、
図3に示されるように、第1および第2の側表面3Lは面取りされ、それぞれ第1および第2の上側側縁部に面取り部を形成する。面取り部は、面取り部のない2つの表面によって形成されたであろう縁部を切除することによって得られた2つの表面間の中間表面として定義される。面取り部は2つの表面間の縁部に形成された角度を低減する。面取り部は応力集中を低減するために構造において使用されることが多い。サイクロトロンにおいて、しかしながら、山セクタの上表面のレベルにおける面取りされた側表面は、粒子ビームが山ギャップ部分7hに到達するとき、粒子ビームの収束を向上させる。
【0039】
図3に示されるように、山セクタの周囲側面3Pも同じく上側周囲縁部に面取りを形成可能であり、これにより周囲縁部の近くの磁場の均一性が改善される。
【0040】
本発明によるサイクロトロンは、N=3〜8の山セクタ3を好ましくは含む。より好ましくは、いくつかの図に示されるように、N=4である。偶数値Nの場合、山セクタ3および谷セクタ4は、中心軸の周囲に2nの対称性で分散され、ここでn=1〜N/2である。好ましくは、n=N/2であり、その結果、N個の山セクタの全てが互いに同一であり、N個の谷セクタの全てが互いに同一である。奇数値Nの場合、山セクタ3および谷セクタ4は、中心軸の周囲にNの対称性で分散される。好ましい実施形態において、全てのN=3〜8の場合、N個の山セクタ3は中心軸の周囲に均一に(すなわちNの対称性で)分散される。第1および第2の磁極2は、それらの各上表面3Uが、互いに向き合う状態で、および同軸である第1および第2の磁極2の各中心軸Zに対して垂直な中間面MPに対して対称に向き合う状態で配置される。
【0041】
山セクタの形状は、(しばしば上で考察されるように先端のない)一切れのタルトのようにくさび形であることが多く、その第1および第2の側表面3Lは周囲表面から中心軸Zに向かって(通常それに到達することなく)収束する。山方位角αhは、収束角度に一致し、それは中心軸Zにおけるまたはそれに隣接する側表面の(推定される)上側側縁部の交差地点のレベルで測定される。山方位角αhは好ましくは360°/2N±10°の間、より好ましくは360°/2N±5°の間、最も好ましくは360°/2N±2°の間に含まれる。
【0042】
中心軸Zのレベルで測定される谷方位角αvは好ましくは360°/2N±10°の間、より好ましくは360°/2N±5°の間、最も好ましくは360°/2N±2°の間に含まれる。谷方位角αvは山方位角αhに等しい場合がある。Nの対称性の程度の場合、αv=360°/N−αhであり、例えば、N=4の場合、αvはαhの相補角であり、αv=90°−αhである。
【0043】
中心軸と周囲縁部との間の最大距離Lhは、粒子が取り出される前に到達する必要のある目標エネルギー、および磁場の強度に非常に依存する。例えば、18MeV陽子サイクロトロンにおいて、最長距離Lhは、750mm未満、典型的には520〜550mmである。上側周囲縁部は、第1および第2の上側周囲端部間で測定される方位長さAhを有し、およそAh=Lh×αh[rad]であり得る。
【0044】
2つの磁極および各磁極の周囲に巻かれたソレノイド巻きコイル14は、(電)磁石を形成し、(電)磁石は、磁極間のギャップ内に磁場を生成し、磁場はサイクロトロンの中心領域を起点にして、
図4および5に示される螺旋経路12に沿って荷電粒子のビーム(=粒子ビーム)を、それが例えば18MeVの目標エネルギーに到達するまで、案内しかつその焦点を合わせる。上で考察されたように、磁極は、中心軸Zの周囲に分散される交互に存在する山セクタおよび谷セクタに分割される。その結果、太い矢印で
図5に示されるように、強い磁場Bが、山セクタ内の高さGhの山ギャップ部分7h内に生成され、細い矢印で
図5に示されるより弱い磁場が、谷セクタ内の>Ghである高さGvの谷ギャップ部分7v内に生成され、その結果、粒子ビームの垂直収束がもたらされる。2つの深遠部開口11間の>>Gv>Ghである高さGaの深遠部ギャップ部分7a内の磁場は、谷ギャップ部分7v内のものよりもさらに弱い。
【0045】
粒子ビームはサイクロトロン内に導入されると、磁場がより弱い、谷セクタ内に配置されるいわゆるディー(図示せず)によって生成される磁場によって加速される。加速粒子が、前の山ギャップ部分7h中のように、より速い速度で、磁場がより強い山ギャップ部分7hに進入するたびに、加速粒子は、軌道経路、前の山ギャップ部分中よりも大きな半径の実質的な円を形成しながら、磁場によって逸らされる。いったん粒子ビームがその目標エネルギーまで加速されると、粒子ビームは
図4に示されるように取出し地点PEと呼ばれる地点でサイクロトロンから取り出される。例えば、加速された陽子H
+は、加速されたH
−イオンのビームを、取出し地点PEの地点に配置されたグラファイトの薄いシートから構成された抜取機(stripper)に押し通すことによって取り出すことができる。抜取機を通過するH
−イオンは2つの電子を失い、陽のH
+になる。粒子荷電のサインを変えることによって磁場内のその経路の曲率はサインを変え、そのように粒子ビームはサイクロトロンの外へ目標(図示せず)に向かって出される。他の取出しシステムが当業者に知られており、使用される取出しシステムの種類および詳細は本発明に必須ではない。通常、取出し地点は、山ギャップ部分7hに配置される。サイクロトロンは、同一の山部分にいくつかの取出し地点を含むことができる。サイクロトロンの対称要件により、1つよりも多くの山セクタが取出し地点を含む。Nの対称性の程度の場合、N個全ての山セクタが、同じ数の取出し地点を含む。取出し地点は別々にまたは同時に2個ずつ使用可能である。
【0046】
本発明によるサイクロトロンの重量およびサイズは、多数の寸法を最適化することによって低減された。しかしながら本発明の要点は、谷セクタの谷周囲縁部4vpの近くに深遠部開口11を外方へ移動し、それにより、通常であれば中心軸Zのより近くよりも強く均一性がない、磁極の谷セクタの周囲の磁場の強度を低減することにある。特に、谷周囲縁部4vpまでの深遠部開口11の距離は、深遠部開口11の周囲または縁と、谷周囲縁部4vpとの間で、中心軸Zに垂直に交差する深遠部半径方向軸Larに沿って測定された最短距離Lapによって特徴付けることができる。本発明によるサイクロトロン中の最短距離Lapの値は典型的に50mm未満、好ましくは30mm未満、より好ましくは20mm未満である。正確に制御することが難しい谷周囲縁部における磁場の特異点を生成しないように、それは周囲縁部に近づきすぎるべきではない。従ってLapの値は好ましくは少なくとも1mm、好ましくは少なくとも5mmである。
【0047】
谷周囲縁部までの深遠部開口の最短距離Lapの低い値は、谷セクタに面する方位領域における磁極の周囲および外方における磁場の強度を著しく低減する。従って、深遠部半径方向軸Larに沿って測定される谷セクタに面する磁束反転ヨークの厚さTvは、それに応じて低減可能である。本発明によれば、最短距離Lapおよび谷セクタに面する磁束反転ヨークの厚さTvは、各谷セクタの谷周囲縁部までの深遠部外周の距離Lapに磁束反転ヨークの厚さTvを掛けた積の、深遠部半径方向軸Larに沿って測定された中心軸Zまでの周囲縁部の距離Lvの二乗に対する比率(Lap×Tv)/Lv
2が5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満になるように選択される。比較して、最先端の18MeVサイクロトロンは、8%〜11%のオーダーの比率(Lap×Tv)/Lv
2を有し得る。谷セクタに面する磁束反転ヨーク6の厚さの低減は、ヨークの重量および寸法をかなり低減する。
【0048】
大きな深遠部開口11は同じく有利である。深遠部開口は通常、半径Raの円形の断面を有する。上で定義されるようにLvが深遠部半径方向軸Larに沿って測定された中心軸Zと谷周囲縁部との間の距離である場合、深遠部開口11の直径2Raは好ましくは、値Lvの45〜60%の間、好ましくは48〜55%の間に含まれる。深遠部開口が単にチャンバ内の真空を生成する働きをする従来型サイクロトロンにおいて、約40%のオーダーのより小さな直径が一般に使用される。中心軸Zと、深遠部開口断面の中心との間の距離Laと比べると、深遠部直径2Raは、値Laの好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%である。18MeVサイクロトロンの場合、深遠部直径2Raは、240〜300mmの間に含めることができる。
【0049】
深遠部開口の断面が円形でない場合、Raの代わりに水力水深R
hydが使用され、R
hyd=4A/Pであり、ここでAおよびPは深遠部開口断面の面積および外周である。
【0050】
谷周囲縁部4vpの近くに深遠部開口11を配置することはまた、粒子ビームが深遠部ギャップ部分7aから山ギャップ部分7hに進入する際、粒子ビームにおける磁場の収束効果を増大する。その結果、低い方と高い方の側縁部の間の山高さHhを低減可能であり、および高度に収束された粒子ビームにより、山ギャップ部分の高さもまた低減可能である。例えば、谷ギャップ部分の平均谷ギャップ高さGvに対する山ギャップ部分の平均山ギャップ高さGhの高さの比率Gh/Gv(Gh/(2Hh+Gh)に等しい)は、8〜20%の間に含めることができる。従来型の深い谷のサイクロトロンでは、Gh/Gvの比率は5%以下のオーダーであり、かなりより高いHhを有する。これらすべての要素は、サイクロトロンのサイズおよび重量の大幅な低減に寄与する。
【0051】
本発明によるサイクロトロンの山ギャップ部分の平均山ギャップ高さGhは、20〜27mmの間、好ましくは22〜26mmの間に含めることができる。谷ギャップ部分の平均谷ギャップ高さGvは、100〜500mmの間、好ましくは150〜400mmの間、好ましくは200〜250mmの間に含めることができる。Gvの低い値により、サイクロトロンの全体重量は低減される、それというのも、一方では、山セクタがより少ない材料を必要とし、他方では、磁束反転ヨークが対応して、中心軸Zに平行に測定される低い寸法を有するためである。GhおよびGvの両方は、従来型のセクタ収束型サイクロトロンと比較して低い値を有する。例えば、山ギャップ部分の平均山ギャップ高さGhに谷ギャップ部分の平均谷ギャップ高さGvの高さを掛けた積Gh×Gvの、中心軸Zまでの周囲縁部の距離Lvの二乗に対する比率(Gh×Gv)/Lv
2は、5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満であることができる。対照的に、従来型のセクタ収束型サイクロトロンは、6〜8%のオーダーの比率(Gh×Gv)/Lv
2を有し得る。
【0052】
深遠部開口11が谷周囲縁部の近くに存在するので、深遠部半径方向軸Larに沿って測定された(すなわち谷セクタに面する部分の)磁束反転ヨークの厚さTvは、2つの対向する谷セクタの底表面4Bが低い値Gvによって分離されているにもかかわらず、低減することができる。短い距離Gvによって分離される2つの磁極の周囲で強い磁場が予想されるとき、従って厚い磁束反転ヨークを必要とするとき、弱い磁場だけが本発明によるサイクロトロンにおいて発生される、というのも、深遠部開口が谷周囲縁部のごく近くに配置されるためである。例えば、平均谷ギャップ高さGvに磁束反転ヨーク厚さTvを掛けた積Gv×Tvの、中心軸Zまでの周囲縁部の距離Lvの二乗に対する比率(Gv×Tv)/Lv
2は20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満であることができる。先行技術のセクタ収束型サイクロトロンは一般に40%を超える(Gv×Tv)/Lv
2の比率を有するが、それは50%のオーダーの場合さえある。
【0053】
図に示されるように、好ましい実施形態において、谷周囲縁部4vpの第1および第2の下側遠位端3ldeは、中心軸Zとともに谷方位角αvを形成し、それは、N=4の山セクタおよび谷セクタの場合、上で考察されるように山方位角αhと相補的である。例えば、N=4の場合、谷方位角αvは、35〜50°の間、好ましくは40〜46°の間、より好ましくは42〜45°の間に含めることができ、それに応じて、山方位角αhは、55〜40°の間、好ましくは50〜44°の間、より好ましくは48〜45°の間に含めることができる。谷方位角αvを増大することによって、山方位角αhは低減され、サイクロトロンの重量はそれに応じて低減される。上で考察したように、深遠部開口11の高い収束効果のおかげで、山ギャップ部分は山ギャップ部分高さGhの低い値を有することができる。大きな谷方位角αvと低い値のGhの組合せは、30mm以下、好ましくは27mm以下である比率Gh/tan(αv)によって特徴付けることができる。最先端のセクタ収束型サイクロトロンにおいて、比率Gh/tan(αv)は一般により高く、40〜50mmの間のオーダーであり得る。
【0054】
図1(b)に示されるように、N=4または8の山セクタ、好ましくはN=4の山セクタを含むサイクロトロンの好ましい実施形態において、磁束反転ヨーク6は、チャンバに面する内側表面と、チャンバから離れる方に面しかつ磁束反転ヨークの壁厚によって内側表面から分離される外側表面とを含む。内側表面の、中心軸Zに対して垂直な断面は、中心軸Zと同心の円形の形状を有し、外側表面の、中心軸Zに対して垂直な断面は、中心軸Zと同心の正方形内に内接される形状を有する。正方形の縁部は、4つの谷セクタの深遠部半径方向軸Larに対して垂直である。この形状は、4つの谷セクタに面する磁束反転ヨークの部分に磁束反転ヨークの最小厚さTvをもたらす。正方形のコーナー部分は、サイクロトロンを中間面MPのレベルで開放するために必要な装置(たとえば液圧式、電気式または空気圧式のもの)を収容するために好ましくは切除され、ひいてはサイクロトロンの外側寸法をさらに低減する。
【0055】
谷セクタの外方に発生するより低い磁場によって可能になる上に記載した形状をヨークが有するので、これまでよりも大幅に低い寸法および重量のサイクロトロンを製造可能である。例えば、本発明による18MeV空間節約型サイクロトロンは、これまでの世代の同様の18MeVサイクロトロンよりも約1/3の重さで製造された。前記の空間節約型サイクロトロンは、これまでの世代のサイクロトロンでは不可能だった標準型の共同一貫輸送コンテナ内に収まる寸法のクレートの中に梱包可能であり、従って輸送の費用および困難さを大幅に低減する。
【0056】
より均一な特性をもたらすサイクロトロンのより費用対効果に優れた製造のために、基板5、磁極2および磁束反転ヨーク6は、好ましくは全て同じ材料から作製される。それらは好ましくは全て単一の鋼片または単一の鋼片の要素から機械加工される(すなわち単一の連続鋳造作業から製造される)。基板5および磁束反転ヨーク6の少なくともいくつかの部分は、好ましくは、中心軸Zに沿って測定される同じ高さを有する。
【0057】
山セクタの上表面3Uは対応する磁束反転ヨーク部分の上表面よりも好ましくは低く、距離Gh/2だけオフセットされる。磁極2が平坦な基盤5の上に載置される場合、磁極の高さは、対応する磁束反転ヨーク部分の高さマイナスGh/2に等しいはずである。しかしながら、チャンバに面する第1および第2の基板の中心軸Zに対して垂直な内側表面は、第1および第2の磁極を収容するために窪みを時に含むことがある。この場合、窪みは好ましくはGh/2よりも深くなく、その結果、磁束反転ヨークと同じ高さの磁極を使用可能であり、およびその上表面が必要なレベルに到達できるようにする。
【0058】
サイクロトロンの取付けおよび再現性をさらに促進するために、第1および第2の磁極のそれぞれは、単一モノブロック要素から作製可能であり、単一モノブロック要素は前記モノブロックから機械加工された全ての山セクタおよび谷セクタを含む。これは、各山セクタを対応する基板上へそれらの最終位置に手動で配置することに頼るよりも、山および谷セクタの相対位置および高さを、機械加工の間、数値的に正確に制御できるという利点を有する。
【0059】
本発明によるサイクロトロンは、従来型サイクロトロンよりも空間節約型かつ軽量である。これは多数の最適化によって可能になるが、本発明の要旨は、深遠部開口を谷周囲縁部4vpのごく近くに配置することによる、谷部分の外側で発生する磁場の低減である。深遠部開口11は、チャンバを真空ポンプと流体連通するためだけに元来設計されるが、ここでは、一方で、粒子ビームが山ギャップ部分7hに進入するときに粒子ビームを強力に収束し、他方で、谷セクタの外側で発生する磁場の強度を大幅に低減する、というさらなる機能を有する。これらの2つの効果は、
・深遠部半径方向軸Larに沿って測定される谷セクタに面する磁束反転ヨークの厚さTvの低減を可能にし、従って、
図1(b)に示されるようなヨークの多角形外側表面を可能にし、
・磁束反転ヨークの高さの低減をもたらす山部分ギャップ高さGhの低減を可能にし、
・磁束反転ヨークの高さの低減を同じくもたらす山セクタ高さHhの低減を可能にする。
【0060】
これらの要素の全ては、サイクロトロンのサイズおよび重量の大幅な低減に寄与する。各例は、18MeVエネルギーの先行技術および発明的サイクロトロンに関して本明細書に提示された。同じ原理が異なるエネルギーのサイクロトロンのサイズおよび重量の低減に対して適用されることは明白である。