特許第6249552号(P6249552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249552
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ピロー包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20171211BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   B65D83/08 B
   A47K7/00 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-204831(P2013-204831)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67336(P2015-67336A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】591254958
【氏名又は名称】株式会社タイキ
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】中村 興司
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−051585(JP,A)
【文献】 特開平09−002547(JP,A)
【文献】 特開平08−318977(JP,A)
【文献】 実開平07−006182(JP,U)
【文献】 特開2011−184106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D83/00
B65D83/08−83/76
A47K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が含浸され、積み重ねてなるウエットシートを収納し、ピロー包装体を構成するピロー包装袋の一面に開口部を設け、該開口部に開閉可能な蓋を備えた蓋ユニットを該ピロー包装体の内側から接着又は溶着によって固定してなるピロー包装体であって、該蓋ユニットの、該開口部と接して該ピロー包装体の内側に固定される場所に2重以上の環状の凸部を設けてなるピロー包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化粧料や薬液等を含浸させたウエットシートを収納した蓋付きのピロー包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエットシート等のシート状物を包装するために、例えば液状化粧料や薬剤等をウエットシートに含浸させて、さらにそのウエットシートを個別包装し、使用時にはその包装を開封して内部のウエットシートを取り出せるようにすることが知られている。このようなウエットシートを使用するに際しては、複数の個別包装されたウエットシートを1つの袋に詰め、使用時には該袋から1個ずつ取り出し、個別包装を開封して使用していたが、このようなウエットシートは個別包装により細菌の繁殖や汚れの付着を防止できるものの、使用時に1枚ずつその包装を開封する必要があり使用性に優れないものであった。
さらに、ウエットシートを袋から取り出す操作性は満足できるものではなく、しかも個別包装により多くの包装袋がごみとして出されていた。
さらに、ウエットティッシュや体拭きシートのような比較的面積が大きい複数のウエットシートを、ポップアップ可能となるように折り畳んで積み重ね、プラスチック製容器に収納したり、ピロー包装袋に包装したりするウエットシート類が多用されている。ティッシュペーパーのように箱や袋に入れて、箱上面の開口部や袋の一面の開口部より順次引き出して使用することも行われている。しかし、ウエットシートを開口部から順次取り出せるようにするためには特殊な折り方が必要となり、製造工程を複雑なものとしていた。
【0003】
一方、小面積のウエットシート類(例えば、ポイントケア用のパッド類、ポイントマスク類)については、一枚ごとに個包装し、重層して密閉可能な容器内に収納する技術も多用されている。
この複数の小面積のウエットシートを積み重ねて箱や袋に入れる例としては、特許文献1に記載されているように、化粧料を含浸させたパッドを重ねて容器に収納し、その上部開口部より順にパッドを取り出して使用するようにした例や、特許文献2に記載されているように、化粧料を含浸させたパッドを重ねて入れてなる容器であって、各パッドが一部を重ねた状態で積層されてなり、その重ね合わせ部において容器上部の蓋付き開口部より取り出すようにした例が知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載されているような、個別包装されていないパッドを容器内に重ね合わせて収納し、これを上部の取出し口より1枚ずつ取り出し使用する手段は、パッドの折り方に起因して、一旦容器から取り出したパットを両手で拡げてから使用しなくてはならない。
さらに、特許文献1に記載の技術によると、ウエットシート同士が付着しやすいために一枚ずつ分離して取り出すには、操作性が必ずしも十分ではなかった。これを解消するべく、特許文献2では、隣接するシートの位置を互いにずらしながら積層する方法が提案されたが、シート元来の面積に比べ大きな容器が必要となり、コスト、及び廃棄物量低減の観点で好ましいものではなかった。
【0005】
また、特許文献3には、ピロー包装体であって、その開口部の内側に蓋ユニット部品を設け、その蓋ユニット部品の蓋体を開けて、内部に収納された複数のウエットティッシュから1枚ずつを取り出すようにした包装体も記載されている。
このような包装体のときには、何度も蓋体の開閉を行うことになり、使用中に蓋ユニットとピロー包装体との密着性が悪化することがあった。
さらにこのような包装体を製造する際に、それらの間にウエットシートに含浸されている液体が存在しやすくなり、その場合には、直接ピロー包装体と蓋ユニットとを密着させることが困難になることがあった。
そして、これらの結果、ピロー包装体に対する蓋ユニットの固定が十分になされなくなり、生じた隙間からピロー包装体の液体が漏れる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5046640号公報
【特許文献2】米国特許第7007801号公報
【特許文献3】特開平8−318977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ピロー包装袋に設けた蓋体を何度も開閉する場合には、ピロー包装袋と蓋ユニット部を確実に一体化させて、使用中に蓋ユニットとピロー包装袋との密着性が悪化することを防止する。
また、ピロー包装袋内にウエットシートと挿入した後に蓋ユニットとピロー包装袋とを一体化させる場合に、それらの間にウエットシートに含浸されている液体が存在しても、直接ピロー包装袋と蓋ユニットとを確実に密着させる。
そして、これらの結果、ピロー包装袋に対して蓋ユニットを確実に固定し、ピロー包装袋との間に隙間を生じた隙間からピロー包装体内の液体が漏れることを防止する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ウエットシートを収納する特定の包装体を採用することにより上記の課題を解決するものであり、具体的には以下の手段を採用する。
液体が含浸され、積み重ねてなるウエットシートを収納し、該ピロー包装体を構成する袋の一面に開口部を設け、該開口部に開閉可能な蓋を備えた蓋ユニットを接着又は溶着によって固定してなるピロー包装体であって、該蓋ユニットの、該開口部と接して固定される場所に凸部を設けてなるピロー包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウエットシートが収納され、蓋ユニットが固定されてなるピロー包装体は、該蓋ユニットと袋(以下、「ピロー包装体を構成する袋」を示す。)の開口部内側とが、高い密着強度で確実に密着されているので、使用時の意図しない衝撃等によって、蓋ユニットと袋が固定された部分が剥がれることがなく、開口部からウエットシートに含浸されている液体が漏出しない。
また、蓋ユニットを袋の開口部内側に加圧しながら接着又は溶着により固定する際に、該蓋ユニットと袋が重なる区域全体ではなく、該蓋ユニットに設けた凸部と袋の開口部周辺の、該凸部に対応する部分のみが加圧されて密着されるので、より強い力で該蓋部材と袋の開口部を固定できる。さらにこのような固定にあたり、仮に袋の開口部周辺であって、該凸部が密着する部分が液体で濡れている場合であっても、加圧されて密着する際に、その液体は加圧される力によってその周囲に移動させられるので、密着強度を低下させることがない。
さらに蓋ユニットに設けた該凹凸によって、蓋ユニット自体がねじれや折れ等の力に対して強度を有することになるので、得られた包装体の強度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ピロー包装体の態様の図
図2】蓋ユニットの図
図3】蓋ユニットとピロー包装袋との接続部の図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ピロー包装体を構成する袋の一面に開口部を設け、該開口部内側に蓋ユニットを設けてなるウエットシート収納容器において、該開口部への該蓋ユニットの取り付け構造に特徴を有する発明である。
なお本明細書において、ピロー包装体はウエットシートが収納され、蓋ユニットが設けられてなるものを意味し、ピロー包装袋はウエットシートが収納されていないか、または蓋ユニットが設けられていない袋状のものを指す。
【0012】
なお、本発明のピロー包装体に収納されるウエットシートは、任意の折り方により折った上で、ピロー包装袋に収納され、取り出したウエットシートを展開しやすい折り方が好ましい。このウエットシートは、トレー内に収納された後にピロー包装袋にさらに収納されても良く、またトレー内に収納されることなくピロー包装袋に収納されても良い。
【0013】
また、本発明におけるウエットシートの形状は、例えば顔面形状、円形、楕円形、勾玉形、多角形等任意の形状のものでよい。
折り畳まれたウエットシートの方が、指で摘んで引き上げた際に自然と折り畳み部が拡がり、展開させることができるので好ましいが、必ずしも折り畳まれていなくてもよい。
【0014】
ウエットシートを構成する材料に関しても特に限定されず、紙、樹脂シート、金属シート、有機化合物又は無機化合物からなる織布、不織布等の折り曲げることができるウエットシートを構成するものであれば特に限定されない。
本発明においてピロー包装体に収納されるウエットシートは、吸液性シートを基本素材とし、ニット、織物、不繊布のような繊維シート類、紙又は発泡体等を使用できる。発泡体シートの中では、ポリウレタン発泡体、NBR発泡体等の吸液性や保液性に優れたスポンジシートも使用可能であるが、経済性、皮膚に対する安全性からすれば、木綿、パルプ、レーヨンのような天然系繊維を主材とする繊維シートが好ましい。またその製造方法としては編み機や樹脂成形機、各種不織布形成法などを用いる公知の方法を用いることができる。
【0015】
他に、繊維シートや発泡体シートと樹脂フィルムとのラミネートシートのような積層体を使用することもできる。薄い合成樹脂フィルムを片側に積層したシートを基材とすると、ウエット状態であっても、フィルムの撥水性により分離性をさらに向上できるので好ましい。
そして、本発明におけるウエットシートは、折り曲げることが可能な程度の柔軟性を有し、折り端部を引っ張ることにより破れる等の破損を生じないことが必要である。
【0016】
本発明において、ウエットシートに含浸される液体としては、水、化粧水等の化粧料、薬液、洗浄剤等、特に限定されるものではなく、シート材料及びピロー包装袋を腐食しない液体であることが必要である。
含浸される化粧料及び薬剤、洗浄剤としては、公知の任意のものを使用することが可能である。例えば基礎化粧品としての洗顔科、化粧水、乳液等や、メーキャップ化粧品としての白粉、ファンデーション、頬紅類、芳香化粧品、美白剤、抗酸化剤、しわ防止剤、保湿剤、日焼け止め剤、てんか粉類、除毛剤、抗菌剤、殺菌剤、ニキビ治療剤など任意の各種化粧料や、各種薬剤、界面活性剤溶液等を対象とする。
【0017】
化粧料及び薬剤、洗浄剤などの液体の含浸量は、ウエットシート基材重量の30〜500重量%が好ましい範囲である。30重量%以下の含浸量では、使用時の塗布量が少なく化粧料等の液体の効率的な塗布効果が得られず、500重量%を超える含浸量ではウエットシートの保液能力以上となって、過剰の含浸液が垂れてピロー包装体底部に溜まりやすくなる。
【0018】
また、ピロー包装体を構成する袋の材料のフィルムとしては、ピロー包装体の袋体とすることができ、かつ湿潤したウエットシートを気密に収納することが可能な公知の材料を採用することができる。その材料としては、複数の樹脂層からなる積層フィルム、アルミニウム等の金属層を有する積層フィルム等が挙げられる。
【0019】
本発明のピロー包装体の製造方法としては、従来の製造方法を採用することができる。図示はしないが、本発明のピロー包装体を製造する方法を、開口部に蓋ユニットを設け、ピロー包装体とする工程として示す。
まず、予め蓋ユニットの蓋部材が開閉できる大きさの開口部を設けたシートを準備する。通常はこのシートは長尺であり一定間隔を通して該開口部が設けられている。
この長尺シートを送り出しながら、別に準備した蓋ユニットを該長尺シートのピロー包装体の内側となるべき面の側に、該開口部に蓋部材が正確に位置するように置く。
このとき、蓋ユニットの蓋部材の周囲の蓋基板の該長尺シートと接する側の面に、該蓋部材を取り囲むように環状の凸部を設けておく、この環状の凸部は1重の環状でも良く2重以上の環状であっても良い。より好ましくは3重以上であり、このときには、長尺シートとの固定がより強くなり、かつ、仮に長尺シートの表面がウエットシートに由来する液体で濡れていても、固定時においてこの液体を該凸部により固定部から確実に排除しながら固定することができる。
【0020】
続いて、長尺シート上に置いた蓋部材に対し、該蓋部材の蓋基板側とその反対側の該長尺シート側から長尺シートと蓋基板を圧着させることができる。このときに、長尺シート側及び/又は蓋基板側を加熱させて両者を溶着させることができる。また、予め長尺シート及び/又は蓋基板の互いに接する面にホットメルト接着剤を塗布しておき、これを加熱して両者を固定させてもよい。
【0021】
長尺シート上に蓋部材を固定させた後に、その蓋部材上に複数の積層されたウエットシートを置く。その状態にて長尺シートの両側部を上方に折り曲げ、該ウエットシート上に被せるように曲げた状態とする。
この状態にて該両側部を互いに重ね、その重ねた部分を溶着又はホットメルト接着剤等の接着剤にて固定して合掌部を形成する。その後長尺シートを切断し、個別のピロー包装体とする。
【0022】
このようにして得られた本発明のピロー包装体は、例えば図1に示すようにして使用される。
図1は、ピロー包装体1において、ピロー包装体の合掌部とは反対の面に設けた開口部2が設けられ、かつその開口部2に蓋ユニット3が設けられ、かつ該蓋ユニットの蓋部材4が開けられて取り出し穴5が開口された状態を示す。
本発明のピロー包装体1の不使用時には、ウエットシートに浸透している化粧水等の液体が蒸発して、次回に使用することが困難になることを防止するために、蓋ユニット3の蓋部材4と蓋ユニット基板6とが気密に嵌合する。この結果、不使用時には、ウエットシートは気密に保持される。
そして、再度ウエットシートを使用する際には、蓋部材4を開けて指によりウエットシートを取り出すことができる。
【0023】
図1に示す例は蓋ユニット基板6に設けた取り出し穴5の形状を円形とした例であるが、くびれた部分を有するひょうたん形等としてもよい。この場合においては、ウエットシートを取り出す際に、該くびれた部分においてウエットシートに対して引き上げる方向とは直角方向に押圧を与えることができるので、折られたウエットシートをより確実に展開させることが可能となる。
【0024】
また、取り出し穴5の形状を三角形としてもよい。この場合においては、ウエットシートを取り出す際に、該三角形の辺にウエットシートを当てながら上方に引き上げることにより、その引き上げる方向とは直角方向に押圧を与えることができるので、折られたウエットシートをより確実に展開させることが可能となる。
【0025】
図2(a)〜(c)に本発明にて使用する蓋ユニット3を示す。図2(a)にて正面図で示す蓋ユニット基板6の周縁部に設けた3本の線状の凸部7は、例えば側面図で示す図2(b)の円で囲んだ部分に相当し、これを拡大した図2(c)をみると、該周縁部を囲む凸部7の奥に曲がった凸部7がある。
この凸部7は蓋ユニット基板6と同じ材料から形成されていても良く、違う材料から形成されていても良い。いずれにしても凸部7が形成されることによって、蓋ユニット3はねじりや曲げの力に対して剛性を備えることができるので、ひいては、ピロー包装体の機械的強度が向上する。
【0026】
図3は、本発明において、ピロー包装体1用の袋(以下単に「袋」という。)の開口部に固定された、蓋部材4と蓋ユニット基板6を有する蓋ユニット3を示す図であり、蓋ユニット基板6に設けられた凸部7が袋の内部側の面に固定されている図である。
この図のように固定させる際には、蓋ユニット基板6と袋とを、図示しない接着剤又は溶着による固定手段を採用する。
いずれの固定手段を採用する場合においても、図示しない加圧手段によって蓋ユニット基板6と袋とを強い力で圧着させる。圧着時に蓋ユニット基板6と袋とは凸部7において圧着されるので、この圧着点において極めて強い力で両者は互いに押しつけられることになる。そのため、蓋ユニット3を強い力で袋の開口部に固定させることができる。
また、このように蓋ユニット基板6と袋とが、広い面積の範囲で重なるものの、その重なる範囲全体が圧着されないので、圧着時に蓋ユニット基板6と袋との間に薬液等の液体が存在下としても、凸部7と袋とが互いに押しつけられることにより、凸部7と袋との間の液体は凸部7の周囲に押しやられるので、確実に凸部7と袋は圧着されて、蓋ユニット3を確実にピロー包装体1の開口部2に固定させることができる。
【符号の説明】
【0027】
1;ピロー包装体
2;開口部
3;蓋ユニット
4;蓋部材
5;取り出し穴
6;蓋ユニット基板
7;凸部
図1
図2
図3