特許第6249561号(P6249561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249561
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】PVパワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20171211BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20171211BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H02J3/38 130
   H02M7/48 R
   H02M7/48 M
   H02J7/35 K
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-20710(P2014-20710)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-149817(P2015-149817A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107847
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 聡
(72)【発明者】
【氏名】牧谷 敦
【審査官】 稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−112553(JP,A)
【文献】 特開平09−140153(JP,A)
【文献】 特開昭64−001480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池から入力される直流電圧を交流電圧に変換し、系統電源へ出力するインバータ回路と、
上記インバータ回路への入力電圧及び入力電流を検出するインバータ入力検出手段と、
上記インバータ回路の出力電圧及び出力電流を検出するインバータ出力検出手段と、
上記入力電圧及び参照電圧の差分に基づいて、上記インバータ回路のスイッチング動作を制御するインバータ制御手段と、
上記入力電圧及び上記入力電流に基づいて、上記太陽電池の出力電力が最大となるように、上記参照電圧を調整する動作点制御手段と、
上記出力電圧及び上記出力電流から得られる出力電力に基づいて、上記インバータ回路の運転状態が力行運転であるか否かを判別し、判別した上記運転状態を上記インバータ制御手段に通知する運転状態判別手段と、
上記インバータ回路の入力側から直流電力を受給して、上記インバータ制御手段、上記動作点制御手段及び上記運転状態判別手段へ直流電力を供給するとともに、上記入力電圧を停止判定閾値と比較した比較結果に基づいて、シャットダウン処理を行う電源制御手段とを備え、
上記インバータ制御手段は、上記シャットダウン処理が終了し、かつ、上記インバータ回路が力行運転を継続している期間が予め定められた時間に到達した場合に、上記インバータ回路を停止させることを特徴とするPVパワーコンディショナ。
【請求項2】
上記電源制御手段は、上記入力電圧が上記停止判定閾値に到達したときから、上記停止判定閾値を上回ることなく一定時間が経過した場合に、上記シャットダウン処理を開始することを特徴とする請求項1に記載のPVパワーコンディショナ。
【請求項3】
上記動作点制御手段は、上記停止判定閾値を下限値として、上記参照電圧の調整を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のPVパワーコンディショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PVパワーコンディショナに係り、さらに詳しくは、太陽電池から入力される直流電圧を交流電圧に変換して系統電源へ出力するPVパワーコンディショナの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を受光して電力に変換する太陽電池が、PV(Photo Voltaic)パワーコンディショナと呼ばれるインバータ装置を介し、系統電源に接続された連系システムが従来から知られている(例えば、特許文献1)。PVパワーコンディショナは、インバータ回路への入力電圧と参照電圧との差分が小さくなるように、インバータ回路のスイッチング動作を制御する。また、太陽電池の動作点を最適化するために、太陽電池の出力電力が最大となるように、上記参照電圧を調整する動作点制御が行われる。
【0003】
上述したPVパワーコンディショナでは、通常、入力電圧が予め定められた電圧閾値以下である場合に、直流電圧が不足していると判断し、インバータ回路を停止させるとともにインバータ回路を系統電源から解列させる処理が行われる。例えば、夕方における日射量の低下や気温の低下により、入力電圧が急速に低下して電圧閾値以下になれば、インバータ回路は直ちに停止する。また、制御回路へ直流電力を供給する電源装置は、インバータ回路が停止すれば、シャットダウン処理を行って電力供給を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−102631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のPVパワーコンディショナでは、インバータ回路の入力側に、バッファ用のコンデンサが設けられ、上記電源装置が、コンデンサに蓄積された直流電力を利用してシャットダウン処理を行っていた。このため、シャットダウン処理が終了するまでの時間を確保するために、十分な電気容量のコンデンサを用いる必要があり、製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0006】
また、入力電圧の低下によりインバータ回路が停止すれば、太陽電池から直流電力が取り出されなくなるので、入力電圧が一時的に上昇し、電圧閾値を超えることがある。この様な入力電圧の再上昇があれば、PVパワーコンディショナは、停止状態から再起動する。しかし、日射量が低下した状態では、インバータ回路の再稼動により、太陽電池から直流電力が取り出されるようになれば、入力電圧が再度低下する。このため、PVパワーコンディショナは、停止状態と稼動状態とを繰り返すというポンピング現象が発生してしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製造コストを増大させることなく、適切な停止制御を行うことができるPVパワーコンディショナを提供することを目的とする。特に、日射量の低下や気温の低下によって入力電圧が下がった場合に、シャットダウン処理が終了してからインバータ回路を停止させることができるPVパワーコンディショナを提供することを目的とする。また、ポンピング現象の発生を抑制することができるPVパワーコンディショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明によるPVパワーコンディショナは、太陽電池から入力される直流電圧を交流電圧に変換し、系統電源へ出力するインバータ回路と、上記インバータ回路への入力電圧及び入力電流を検出するインバータ入力検出手段と、上記インバータ回路の出力電圧及び出力電流を検出するインバータ出力検出手段と、上記入力電圧及び参照電圧の差分に基づいて、上記インバータ回路のスイッチング動作を制御するインバータ制御手段と、上記入力電圧及び上記入力電流に基づいて、上記太陽電池の出力電力が最大となるように、上記参照電圧を調整する動作点制御手段と、上記出力電圧及び上記出力電流から得られる出力電力に基づいて、上記インバータ回路の運転状態が力行運転であるか否かを判別し、判別した上記運転状態を上記インバータ制御手段に通知する運転状態判別手段と、上記インバータ回路の入力側から直流電力を受給して、上記インバータ制御手段、上記動作点制御手段及び上記運転状態判別手段へ直流電力を供給するとともに、上記入力電圧を停止判定閾値と比較した比較結果に基づいて、シャットダウン処理を行う電源制御手段とを備え、上記インバータ制御手段が、上記シャットダウン処理が終了し、かつ、上記インバータ回路が力行運転を継続している期間が予め定められた時間に到達した場合に、上記インバータ回路を停止させるように構成される。
【0009】
このPVパワーコンディショナでは、電源制御手段が入力電圧を停止判定閾値と比較した比較結果に基づいてシャットダウン処理を行うので、入力電圧が停止判定閾値以下になれば、シャットダウン処理を開始させることができる。また、インバータ制御手段は、シャットダウン処理が終了し、かつ、インバータ回路が力行運転を継続している期間が予め定められた時間に到達した場合に、インバータ回路を停止させる。このため、日射量の低下や気温の低下によって入力電圧が下がった場合に、シャットダウン処理が終了してからインバータ回路を停止させることができる。
【0010】
インバータ回路は、太陽電池の出力電力の低下により、インバータ回路の出力電力が正極性の状態から負極性の状態へ変化すれば、回生運転から力行運転へ移行する。電源制御手段は、その様な力行運転により系統電源からインバータ回路を介して供給される電力を利用してシャットダウン処理を行うことができる。このため、バッファ用のコンデンサについて、十分な電気容量を確保する必要がなく、製造コストが増大するのを抑制することができる。従って、製造コストを増大させることなく、適切な停止制御を行うことができる。さらに、力行運転が所定時間以上継続してからインバータ回路を停止させるので、ポンピング現象の発生を抑制することができる。
【0011】
第2の本発明によるPVパワーコンディショナは、上記構成に加え、上記電源制御手段が、上記入力電圧が上記停止判定閾値に到達したときから、上記停止判定閾値を上回ることなく一定時間が経過した場合に、上記シャットダウン処理を開始するように構成される。この様な構成によれば、入力電圧の一時的な上昇により、シャットダウン処理が中断されるのを抑制することができる。
【0012】
第3の本発明によるPVパワーコンディショナは、上記構成に加え、上記動作点制御手段が、上記停止判定閾値を下限値として、上記参照電圧の調整を行うように構成される。この様な構成によれば、太陽電池の出力電力の低下によって入力電圧が下がった場合であっても、インバータ回路の力行運転により、入力電圧が停止判定閾値よりも低下するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製造コストを増大させることなく、適切な停止制御を行うことができるPVパワーコンディショナを提供することができる。特に、日射量の低下や気温の低下によって入力電圧が下がった場合に、シャットダウン処理が終了してからインバータ回路を停止させることができるPVパワーコンディショナを提供することができる。また、本発明のPVパワーコンディショナによれば、ポンピング現象の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態によるPVパワーコンディショナ3を含む連系システム1の一構成例を示したシステム図である。
図2図1のインバータ制御部30の構成例を示したブロック図である。
図3図1のPVパワーコンディショナ3の動作の一例を模式的に示した説明図である。
図4図1のPVパワーコンディショナ3の動作の一例を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<連系システム1>
図1は、本発明の実施の形態によるPVパワーコンディショナ3を含む連系システム1の一構成例を示したシステム図である。この連系システム1は、太陽電池2、PVパワーコンディショナ3及び系統電源4により構成され、太陽電池2の発電電力がPVパワーコンディショナ3を介して系統電源4へ供給される。
【0016】
太陽電池2は、太陽光を受光して電力に変換する発電装置である。太陽電池2では、光起電力効果を利用して、太陽光のエネルギーが直流電力に直接に変換される。例えば、太陽電池2は、複数のセルを直列又は並列に接続した太陽光発電モジュール(photovoltaic module)からなる。
【0017】
系統電源4は、電力会社の電力網、すなわち、商用系統を介して供給される商用電源である。例えば、PVパワーコンディショナ3には、単相三線、交流電圧200Vの系統電源4が接続される。
【0018】
PVパワーコンディショナ3は、太陽電池2から入力される直流電圧を交流電圧に変換し、系統電源4へ出力するインバータ装置であり、その出力を系統電源4の波形と同期させる系統連系制御を行っている。また、PVパワーコンディショナ3は、系統電源4の停電及び復電を判断し、出力を停止又は再開させる系統保護制御を行っている。さらに、PVパワーコンディショナ3は、太陽電池2の動作点を制御し、発電電力を最大化させる動作点制御を行っている。
【0019】
<PVパワーコンディショナ3>
このPVパワーコンディショナ3は、インバータ回路10、インバータ入力検出部11、バッファ用コンデンサ12、電流計13,14、電圧計15、出力コンデンサ16、リレー回路17、MPPT制御部18、運転状態判別部19、電源制御部20、タイマー21,31、メモリ22及びインバータ制御部30により構成される。
【0020】
インバータ回路10は、太陽電池2から入力される直流電圧を交流電圧に変換し、系統電源4へ出力する。インバータ入力検出部11は、インバータ回路10への入力電圧V及び入力電流Iを検出する直流計測手段であり、入力電圧Vを計測する電圧計と、入力電流Iを計測する電流計とにより構成される。
【0021】
バッファ用コンデンサ12は、太陽電池2の出力電力Pの低下時に、直流電力をバックアップするための容量素子であり、インバータ入力検出部11とインバータ回路10との間に設けられている。例えば、バッファ用コンデンサ12には、電解コンデンサが用いられる。
【0022】
電流計13及び14は、インバータ回路10の出力電流I,Iをそれぞれ検出する交流電流計測手段である。電流計13は、インバータ回路10と出力コンデンサ16との間に配置され、電流計14は、出力コンデンサ16とリレー回路17との間に配置されている。電圧計15は、インバータ回路10の出力電圧Vを検出する交流電圧計測手段であり、リレー回路17と系統電源4との間に配置されている。電流計13,14及び電圧計15は、インバータ出力検出手段である。出力コンデンサ16は、出力波形を平滑化するための容量素子である。リレー回路17は、インバータ回路10を系統電源4から解列させるための継電器である。
【0023】
インバータ制御部30は、入力電圧V及び参照電圧Vrefの差分に基づいて、インバータ回路10のスイッチング動作を制御する。例えば、インバータ制御部30は、電圧誤差ΔV=(Vref−V)が小さくなるように、インバータ回路10のスイッチング動作を制御する。
【0024】
MPPT(Maximum Power Point Tracking:最大電力点追従)制御部18は、入力電圧V及び入力電流Iに基づいて、太陽電池2の出力電力Pが最大となるように、参照電圧Vrefを調整する動作点制御手段である。出力電力Pは、P=V×Iである。太陽電池2は、日射量や温度によって出力特性(V−I特性)が変化する。このため、MPPT(最大電力点追従)制御により、太陽電池2の出力電圧、すなわち、入力電圧Vを制御し、出力特性上における動作点を最適化すれば、出力電力Pを最大化することができる。
【0025】
MPPT制御部18では、山登り法を利用して、参照電圧Vrefの最適値が求められる。山登り法では、現在の入力電圧V及び出力電力PをVo,Poとし、参照電圧Vrefを一定量ΔVrefだけ変化させる。そして、インバータ制御の周期Tiよりも長い一定時間Tmが経過した後、再度、現在の出力電力Pを取得し、Poと比較することを繰り返すことにより、参照電圧Vrefの最適値が求められる。
【0026】
運転状態判別部19は、出力電圧V及び出力電流Iから得られる出力電力Pに基づいて、インバータ回路10の運転状態を判別し、判別した運転状態をインバータ制御部30へ通知する。運転状態は、出力電力Pの極性に基づいて判別される。具体的には、出力電力P2が正極性である場合、運転状態が回生運転であると判別される。一方、出力電力P2が負極性である場合には、運転状態が力行運転であると判別される。
【0027】
電源制御部20は、インバータ回路10の入力側から直流電力を受給して、インバータ制御部30、MPPT制御部18及び運転状態判別部19へ直流電力を供給する。電源制御部用の給電点は、バッファ用コンデンサ12とインバータ回路10との間に設けられている。
【0028】
また、電源制御部20は、入力電圧Vを停止判定閾値Vsthと比較した比較結果に基づいて、シャットダウン処理を行い、シャットダウン処理が終了すれば、終了したことをインバータ制御部30へ通知する。具体的には、その日の発電量、入力電圧Vや入力電流Iの変動履歴、MPPT制御やインバータ制御用の制御パラメータをメモリ22内に格納する処理がシャットダウン処理として行われる。メモリ22は、不揮発性の記憶装置である。
【0029】
従来のPVパワーコンディショナでは、インバータ回路10や系統電源4を保護するために、入力電圧Vに対する電圧閾値Vrthが直流不足電圧(DCUVR:DC Under Voltage Relay)として予め定められる。電圧閾値Vrthは、固定値である。また、MPPT制御部18では、電圧閾値Vrthよりも大きい値Vmを参照電圧Vrefの下限値として、参照電圧Vrefの調整が行われる。下限値Vmは、予め定められる。ここでは、停止判定閾値Vsthが参照電圧Vrefの下限値Vmに一致しているものとする。この場合、停止判定閾値Vsthは、直流不足電圧として予め定められた電圧閾値Vrth及び正の数αを用いて、Vsth=Vm=(Vrth+α)により表される。
【0030】
また、MPPT制御部18は、停止判定閾値Vsthを下限値として、参照電圧Vrefの調整を行う。この様に構成することにより、太陽電池2の出力電力Pの低下によって入力電圧Vが下がった場合であっても、インバータ回路10の力行運転により、入力電圧Vが停止判定閾値Vsthよりも低下するのを防止することができる。
【0031】
電源制御部20は、入力電圧Vが停止判定閾値Vsth=Vm以下になれば、シャットダウン処理を開始する。インバータ制御部30は、入力電圧Vが停止判定閾値Vsth=Vm以下になれば、タイマー31からの経過時間と、インバータ回路10の運転状態と、シャットダウン処理の終了通知とに基づいて、インバータ回路10を停止させる停止制御を行う。また、電源制御部20は、タイマー21からの経過時間に基づいて、入力電圧Vが停止判定閾値Vsth=Vmに到達したときから、入力電圧Vが停止判定閾値Vsth=Vmを上回ることなく、一定時間T2が経過した場合に、シャットダウン処理を開始する。
【0032】
<インバータ制御部30>
図2は、図1のインバータ制御部30の構成例を示したブロック図である。このインバータ制御部30は、減算器41,44、リミッタ42、参照電流生成部43、加算器45、PWM制御部46、停止判定部47及び論理ゲート48により構成される。
【0033】
減算器41は、入力電圧V及び参照電圧Vrefの減算処理を行い、入力電圧V及び参照電圧Vrefの差分、すなわち、電圧誤差ΔVをリミッタ42へ出力する。リミッタ42は、インバータ回路10の保護装置であり、入力電圧Vを予め定められた上限値Vupper及び下限値Vunderと比較し、その比較結果に基づいて、電圧誤差ΔVを参照電流生成部43へ出力する。上限値Vupperは、固定値である。下限値Vunderは、Vrthである。
【0034】
具体的には、入力電圧Vが下限値Vunder以上、かつ、上限値Vupper以下の範囲内であれば、電圧誤差ΔVがそのまま参照電流生成部43へ出力される。一方、入力電圧Vが下限値Vunder未満であるか、或いは、入力電圧Vが上限値Vupperを超えていれば、電圧誤差ΔVを遮断する。つまり、このリミッタ42は、下限値VunderをVrthとすることにより、入力電圧Vが停止判定閾値Vsth以下になった場合であっても、電圧誤差ΔVに基づくインバータ制御が働くようになっている。
【0035】
参照電流生成部43は、電圧誤差ΔVに基づいて、参照電流Irefを生成する。減算器44は、出力電流I及び参照電流Irefの減算処理を行い、出力電流I及び参照電流Irefの差分、すなわち、電流誤差ΔIを加算器45へ出力する。電流誤差ΔIは、ΔI=(Iref−I)である。加算器45は、電流誤差ΔI及び出力電圧Vを加算し、PWM制御部46へ出力する。
【0036】
PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御部46は、加算器45の出力に基づいて、PWM信号のデューティ比を調整する。例えば、PWM制御部46は、加算器45の出力が小さくなるように、PWM信号のデューティ比を調整する。このPWM信号は、インバータ回路10のスイッチング素子を駆動するためのパルス幅変調された駆動信号である。デューティ比は、パルス(矩形波)の繰り返し間隔に対するパルス幅の比率である。PWM制御部46では、一定の周期Tiで加算器45の出力をサンプリングし、PWM信号のデューティ比を更新する定電流制御が行われる。
【0037】
停止判定部47は、インバータ回路10の運転状態と、入力電圧Vが停止判定閾値Vsthに到達した時からの経過時間と、シャットダウン処理の終了通知とに基づいて、停止判定を行い、インバータ回路10を停止させるための制御信号を論理ゲート48へ出力する。この制御信号は、シャットダウン処理が終了し、かつ、インバータ回路10が力行運転を継続している期間が予め定められた時間T1に到達した場合に、出力される。
【0038】
論理ゲート48は、PWM制御部46からのPWM信号と、停止判定部47からの制御信号との論理積をインバータ回路10へ出力する演算回路である。停止判定部47から上記制御信号が出力されれば、PWM信号は遮断され、インバータ回路10のスイッチング動作は停止する。
【0039】
図3は、図1のPVパワーコンディショナ3の動作の一例を模式的に示した説明図であり、太陽電池2の出力電力Pと入力電圧Vとの関係を表す特性曲線A1〜A3が示されている。この図では、縦軸が出力電力Pであり、横軸が入力電圧Vである。特性曲線A1〜A3は、日射量や温度が異なる場合の特性曲線であり、いずれも上に凸の曲線からなる。
【0040】
特性曲線A2は、特性曲線A1よりも日射量や温度が低い場合の動作特性を示しており、その開放電圧Vk、最適動作点における入力電圧Vm及び出力電力Pは、特性曲線A1の開放電圧Vk、最適動作点における入力電圧Vm及び出力電力Pよりもそれぞれ低い。特性曲線A3は、特性曲線A2よりも日射量や温度がさらに低い場合の動作特性を示しており、その開放電圧Vk、最適動作点における入力電圧Vm及び出力電力Pは、特性曲線A2の開放電圧Vk、最適動作点における入力電圧Vm及び出力電力Pよりもそれぞれ低い。この様に、日射量や気温が低下すれば、最適動作点における入力電圧Vは、急速に低下する。
【0041】
PVパワーコンディショナ3によれば、日射量の低下や気温の低下によって入力電圧Vが下がった場合に、シャットダウン処理が終了してからインバータ回路10を停止させることができる。
【0042】
図4は、図1のPVパワーコンディショナ3の動作の一例を示したタイミングチャートである。この図には、日射量が、概ね一定の状態から徐々に低下し、時刻tにおいて0に到達し、その後、0の状態が維持される場合が示されている。出力電力Pは、日射量に応じて増減する。このため、出力電力Pは、概ね一定の状態から徐々に低下し、時刻tにおいて0に到達し、その後、0の状態が維持されている。
【0043】
入力電圧Vは、概ね一定の状態から徐々に低下し、時刻t(t<t)において停止判定閾値Vsthに到達し、その後、暫く停止判定閾値Vsthが維持されている。出力電力Pは、概ね一定の状態から徐々に低下し、時刻t(t<t<t)において0Wになり、その後、さらに低下して飽和している。
【0044】
時刻tまでの期間は、出力電力Pが正極性であり、インバータ回路10が回生運転状態であることがわかる。一方、時刻tからインバータ回路10が停止するまでの期間は、出力電力Pが負極性であり、インバータ回路10が力行運転状態であることがわかる。
【0045】
時刻t以降、入力電圧Vが暫く停止判定閾値Vsthに保持されるのは、インバータ制御部30が、電圧誤差ΔVに基づいて、インバータ回路10のスイッチング動作を制御するためである。タイマー31は、インバータ回路10が力行運転を開始したタイミングで、計時動作を開始する。電源制御部20は、入力電圧Vが停止判定閾値Vsthに到達したときから、入力電圧Vが停止判定閾値Vsthを上回ることなく一定時間T2が経過した場合に、シャットダウン処理を開始する。この例では、時刻t=(t+T2)においてシャットダウン処理が開始している。
【0046】
インバータ制御部30は、シャットダウン処理が終了し、かつ、インバータ回路10が力行運転を継続している期間が予め定められた時間T1に到達したタイミングで、インバータ回路10を停止させる。この例では、時刻tにおいてシャットダウン処理が終了し、時刻t=(t+T1)においてインバータ回路10が停止している。タイマー31は、インバータ回路10が停止したタイミングで計時動作を停止する。
【0047】
出力電力Pは、時刻tにおいて0Wになり、その後、0Wの状態が維持されている。入力電圧Vは、時刻t以降、徐々に低下して0に到達している。電源制御部20は、インバータ回路10が停止した後、時刻tにおいてインバータ制御部30、MPPT制御部18及び運転状態判別部19への電力供給を停止する。
【0048】
本実施の形態によれば、電源制御部20が入力電圧Vを停止判定閾値Vsthと比較した比較結果に基づいてシャットダウン処理を行うので、入力電圧Vが停止判定閾値Vsth以下になれば、シャットダウン処理を開始させることができる。また、インバータ制御部30は、シャットダウン処理が終了し、かつ、インバータ回路10が力行運転を継続している期間が予め定められた時間T1に到達した場合に、インバータ回路10を停止させる。このため、日射量の低下や気温の低下によって入力電圧Vが下がった場合に、シャットダウン処理が終了してからインバータ回路10を停止させることができる。
【0049】
また、電源制御部20は、インバータ回路10の力行運転により系統電源4からインバータ回路10を介して供給される電力を利用してシャットダウン処理を行うことができる。このため、バッファ用コンデンサ12について、十分な電気容量を確保する必要がなく、製造コストが増大するのを抑制することができる。従って、製造コストを増大させることなく、適切な停止制御を行うことができる。さらに、力行運転が所定時間T1以上継続してからインバータ回路10を停止させるので、ポンピング現象の発生を抑制することができる。
【0050】
さらに、電源制御部20は、入力電圧Vが停止判定閾値Vsthに到達したときから、停止判定閾値Vsthを上回ることなく一定時間T2が経過した場合に、シャットダウン処理を開始する。このため、入力電圧Vの一時的な上昇により、シャットダウン処理が中断されるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 連系システム
2 太陽電池
3 PVパワーコンディショナ
4 系統電源
10 インバータ回路
11 インバータ入力検出部
12 バッファ用コンデンサ
13,14 電流計
15 電圧計
18 MPPT制御部
19 運転状態判別部
20 電源制御部
21,31 タイマー
30 インバータ制御部
41,44 減算器
42 リミッタ
43 参照電流生成部
45 加算器
46 PWM制御部
47 停止判定部
48 論理ゲート
図1
図2
図3
図4