(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249564
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】フライアッシュの品質評価方法、コンクリート用フライアッシュ、およびフライアッシュ混合セメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20171211BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20171211BHJP
C04B 7/26 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
G01N33/38
C04B18/08 Z
C04B7/26
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-70333(P2014-70333)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190949(P2015-190949A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】扇 嘉史
(72)【発明者】
【氏名】岸森 智佳
(72)【発明者】
【氏名】細川 佳史
(72)【発明者】
【氏名】平尾 宙
【審査官】
草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−007397(JP,A)
【文献】
特開2007−039273(JP,A)
【文献】
特開2004−210557(JP,A)
【文献】
特開2010−195659(JP,A)
【文献】
特開2008−254963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
C04B 7/26
C04B 18/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライアッシュ粒子の周囲長に対する該フライアッシュ粒子の包絡周囲長の比に基づき、該フライアッシュを用いたコンクリートの流動性を評価する、フライアッシュの品質評価方法。
【請求項2】
前記フライアッシュ粒子の周囲長に対する該フライアッシュ粒子の包絡周囲長の比が、0.8未満であるフライアッシュ粒子の含有割合に基づき、該フライアッシュを用いたコンクリートの流動性を評価する、請求項1に記載のフライアッシュの品質評価方法。
【請求項3】
(A)フライアッシュ粒子の包絡周囲長および周囲長の計測工程、および(B)フライアッシュの品質判定工程を少なくとも含む、請求項1または2に記載のフライアッシュの品質評価方法。
【請求項4】
フライアッシュ粒子の周囲長に対する該フライアッシュ粒子の包絡周囲長の比が、0.8未満であるフライアッシュ粒子の含有割合が、個数割合で1.4%以上、および体積割合で10.2体積%以上である、コンクリート用フライアッシュ。
【請求項5】
セメントと、フライアッシュ粒子の周囲長に対する該フライアッシュ粒子の包絡周囲長の比が、0.8未満であるフライアッシュ粒子の含有割合が、個数割合で1.4%以上、および体積割合で10.2体積%以上であるフライアッシュとを混合する、フライアッシュ混合セメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用混和材やセメント用混合材として用いるフライアッシュの品質を評価する方法、特にコンクリートの流動性に及ぼすフライアッシュの影響を評価する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート用フライアッシュの品質規格であるJIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」は、強熱減量、粉末度、フロー値、および各種コンクリート用混和剤との相性に大きく影響する未燃炭素量を代替する指標として強熱減量等を基に、フライアッシュを4つの品質に区分している。そして、該JISの「解説」において、標準的なフライアッシュはII種に位置付けられている。
【0003】
元来、フライアッシュは球状の微粒子であるため、コンクリートに用いるとボールベアリング作用により、コンクリートの流動性が改善して単位水量の低減効果があるとされていた。しかし、II種の規格を満足する標準的なフライアッシュでも、コンクリートでは良好な流動性を生じさせない場合があることから、コンクリートの流動性を管理するためのフライアッシュの品質管理項目が求められている。
【0004】
かかる状況から、特許文献1では、コンクリート用混和剤の量を、少なくとも3種類以上変化させてなる試験ペーストを用いてフロー試験を実施し、該試験結果から流動性を評価するフライアッシュの品質評価方法が提案されている。しかし、前記品質評価方法はコンクリートの試し練りを、混和剤使用量を指標にペーストで代替するものであり、フライアッシュの品質管理項目を提供しているものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−194113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コンクリートの流動性を低下させないフライアッシュを簡便に判定することができる、フライアッシュの品質評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者はフライアッシュの品質評価方法について鋭意検討した結果、フライアッシュ粒子の周囲長に対する該フライアッシュ粒子の包絡周囲長の比(包絡周囲長/周囲長の比であり、以下「周囲長包絡度」という。)を用いれば、コンクリートの流動性を低下させないフライアッシュを簡便に判定できることを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の構成を有するフライアッシュの品質評価方法等である。
【0008】
[1]周囲長包絡度に基づき、該フライアッシュを用いたコンクリートの流動性を評価する、フライアッシュの品質評価方法。
[2]周囲長包絡度が0.8未満であるフライアッシュ粒子の含有割合に基づき、該フライアッシュを用いたコンクリートの流動性を評価する、前記[1]に記載のフライアッシュの品質評価方法。
[3](A)フライアッシュ粒子の包絡周囲長および周囲長の計測工程、および(B)フライアッシュの品質判定工程を少なくとも含む、前記[1]または[2]に記載のフライアッシュの品質評価方法。
[4]
フライアッシュ粒子の周囲長に対する該フライアッシュ粒子の包絡周囲長の比が、0.8未満であるフライアッシュ粒子の含有割合が、個数割合で1.4%以上、および体積割合で10.2体積%以上である、コンクリート用フライアッシュ。
[5]セメントと、
フライアッシュ粒子の周囲長に対する該フライアッシュ粒子の包絡周囲長の比が、0.8未満であるフライアッシュ粒子の含有割合が、個数割合で1.4%以上、および体積割合で10.2体積%以上であるフライアッシュとを混合する、フライアッシュ混合セメントの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフライアッシュの品質評価方法は、コンクリートの流動性を低下させないフライアッシュを簡便に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】粒子の模式図(凹部を有する5角の粒子)を用いて包絡周囲長(破線)と周囲長(実線)を説明する図である。
【
図2】フライアッシュ粒子の光学顕微鏡の画像を示す図である。
【
図3】フライアッシュ粒子の投影面積(x軸)および周囲長包絡度(y軸)の座標面を用いて、フライアッシュAの粒子の分布状態を示す図である。
【
図4】前記座標面を用いて、フライアッシュDの粒子の分布状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、前記のとおり、フライアッシュ粒子の周囲長包絡度に基づき、該フライアッシュを用いたコンクリートの流動性を評価するフライアッシュの品質評価方法等であり、好ましくは下記(A)工程および(B)工程を少なくとも含む方法である。以下、本発明について各工程に分けて詳細に説明する。
【0012】
1.フライアッシュの品質評価方法
(A)フライアッシュ粒子の包絡周囲長および周囲長等の計測工程
評価対象のフライアッシュ粒子を分散させたプレパラートを光学顕微鏡に載置して、個々のフライアッシュ粒子の包絡周囲長と周囲長を計測する。
ここで前記周囲長とは、
図1に示す実線で表わされた、粒子の周りを囲む線の長さであり、前記包絡周囲長とは、
図1に示
す破線で表わされた仮想の輪ゴムを粒子に巻き付けた状態で作られる、凸部を結んでいった包絡線(仮想の線)の長さである。そして、周囲長包絡度が1となる粒子は、凹部の無い粒子(例えば、球や楕円体)を意味する。
また、前記計測は、例えば、画像式粒度分布測定装置を用いて行なうことができる。さらに、該測定装置に乾式分級装置を付設して用いれば、フライアッシュ粒子の分散状態が良好になり、フライアッシュ粒子の1粒1粒が分散した状態の静止画像が得られ好ましい。
また、評価に使用する粒子数は5000粒以上、好ましくは10000粒以上、特に好ましくは20000粒以上である。
【0013】
(B)フライアッシュの品質判定工程
該工程は前記計測した包絡周囲長および周囲長に基づき、個々のフライアッシュ粒子の周囲長包絡度の値を求め、該周囲長包絡度を基準にして、後掲の
図3や
図4に示す座標面上のフライアッシュ粒子の分布から該フライアッシュを使用したコンクリートの流動性を判定する工程である。
具体的には、周囲長包絡度の基準値を0.8に定め、該値が0.8未満となるフライアッシュ粒子の含有割合により、該フライアッシュを使用したコンクリートの流動性を評価する。後掲の表
4では、前記含有割合が個数割合である場合は1.4%以上、体積割合である場合は10.2体積%以上のフライアッシュが、流動性が高いと評価することができる。
【0014】
2.コンクリート用フライアッシュおよびフライアッシュ混合セメントの製造方法
本発明のコンクリート用フライアッシュと、本発明のフライアッシュ混合セメントの製造方法において用いるフライアッシュは、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のフライアッシュの品質評価方法を用いて選択されたフライアッシュである。なお、本発明のフライアッシュ混合セメントの製造方法において、フライアッシュとセメントを混合する方法は特に制限されず、通常のフライアッシュセメントの製造方法が使用できる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料
表1に示す、銘柄の異なるフライアッシュA〜D(JIS A 6201のII種に相当するもの)を使用した。
【0016】
【表1】
【0017】
また、下記(1)〜(6)に示すコンクリートの材料を使用した。
(1)普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)水(千葉県佐倉市上水道)
(3)細骨材:桜川市産砕砂 表乾密度 2.58g/cm
3、吸水率1.97%
(4)粗骨材:桜川市産砕石 表乾密度 2.65g/cm
3、吸水率0.67%
(5)AE減水剤:BASFジャパン社製ポゾリスNo.70
(6)AE剤:BASFジャパン社製 マスターエア785
【0018】
2.フライアッシュA〜Dを混合したコンクリートの流動性の測定
表1に示すフライアッシュと普通ポルトランドセメントを、表2に示す割合で混合してフライアッシュセメントを試製した。次に、表2に示す配合に従いコンクリートを作製し、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」に準拠して、混練直後、混練後30分および60分経過した時点で、該コンクリートのスランプを測定し、該コンクリートの流動性を評価した。その結果を表3に示す。
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
3.フライアッシュA〜Dの品質評価
(A)フライアッシュ粒子の包絡周囲長および周囲長等の計測
フライアッシュA〜Dを用い、乾式分級装置を使用して一粒一粒が分散した状態で、光学顕微鏡像を撮影してその画像を解析した。なお、該画像の取得および解析にはマルバーン社製の「Morphologi G3」を使用した。
なお、前記の測定条件および測定項目は以下のとおりである。
測定倍率:×20と×50を使用した。
測定粒子数:フライアッシュ1種類当たり50000粒を測定した。
測定項目:周囲長、包絡周囲長、および球相当体積
【0022】
(B)フライアッシュの品質判定
表4に示すように、前記周囲長包絡度が0.8未満であるフライアッシュ粒子の含有割合が個数割合では1.4%以上の場合において、また体積割合では10.2体積%以上の場合において、該フライアッシュを用いたコンクリートの流動性は良好である。
【0023】
【表4】