(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリウレタン(a)が、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアナト基を有するポリウレタンにヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるポリウレタン(a1)、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるヒドロキシル基を有するポリウレタンにイソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるポリウレタン(a2)のいずれかである請求項1に記載の放熱性絶縁接着剤組成物。
前記ポリウレタン樹脂組成物(A)が、ポリウレタン(a)を10〜40質量%及び重合性単量体(b)を60〜90質量%含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の放熱性絶縁接着剤組成物。
前記熱重合開始剤(C)の含有量が、ポリウレタン樹脂組成物(A)100質量部に対し0.1〜5質量部である、請求項1〜6のいずれかに記載の放熱性絶縁接着剤組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高性能化、小型化及び高密度化に伴い部品から発生する熱量が増大してきている。そこで、電子部品の放熱対策が、電子部品及び該電子部品を搭載した電気製品の性能を維持する上で非常に重要な技術となってきている。電子部品の放熱対策は、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を電子部品の発熱体に取り付けることにより、放熱させる方法が取られている。そして、発熱体と放熱体との間には、効率よく熱を伝える目的で金属間の隙間を埋めるための放熱材料が使われることが多くなっている。
【0003】
この放熱材料としては、その形状から、シート状成形物及びペースト状組成物がある。シート状成形物としては、例えば、放熱フィラーを含有したシリコーン系、又はアクリル系の放熱シートがあり、ペースト状組成物としては、例えば、放熱フィラーを含有したシリコーングリース、加熱によってゲル化またはエラストマー化する放熱ゲル、又は加熱によって硬化する放熱性接着剤がある。
【0004】
この中で放熱性接着剤は、高い熱伝導性を有するとともに、様々な環境下又は応力下で接着力を有することが必要である。ポリマー材料中に放熱フィラーを高密度に充填すればするほど放熱材料の放熱性が向上するが、ポリマー材料中に放熱フィラーを高密度に充填すればするほど、放熱材料そのものが脆くなったり、被着体との接着力が悪くなる問題があった。
【0005】
この様な問題に対して、優れた熱伝導性を有し、発熱部材及び放熱部材に対して優れた接着性を有する電気的絶縁性のシリコーン系熱伝導性接着剤が開示されている。(特許文献1)
【0006】
しかしながら、シリコーン樹脂は、耐熱、耐久性には優れるものの、低分子シロキサンを含有することから接点障害が問題視されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[放熱性絶縁接着剤組成物]
本発明の放熱性絶縁接着剤組成物は、ポリウレタン樹脂組成物(A)と、熱伝導性フィラー(B)と、熱重合開始剤(C)とを含む。ポリウレタン樹脂組成物(A)は、(メタ)アクリロイル基およびポリオキシアルキレン骨格を有するポリウレタン(a)及び重合性単量体(b)を含有し、前記重合性単量体(b)は多官能(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸および/またはβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレートとを少なくとも含む。無機フィラー(B)の含有量はポリウレタン樹脂組成物(A)100質量部に対し250〜700質量部である。
【0012】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリロイル基」とは、化学式「CH
2=CH−CO−」で表される基又は化学式「CH
2=C(CH
3)−CO−」で表される基を意味し、「イソシアナト基」とは、化学式「−N=C=O」で表される基を意味する。
【0013】
より好ましくは、(メタ)アクリロイル基およびポリオキシアルキレン骨格を有するポリウレタン(a)を10〜40質量%、重合性単量体(b)を60〜90質量%含有するポリウレタン樹脂組成物(A)を100質量部と、無機フィラー(B)を250〜700質量部と、熱重合開始剤(C)を0.1〜5.0質量部とを含む。
【0014】
<ポリウレタン樹脂組成物(A)>
本発明のポリウレタン樹脂組成物(A)は、(メタ)アクリロイル基およびポリオキシアルキレン骨格を有するポリウレタン(a)及び重合性単量体(b)を含み、前記重合性単量体(b)は多官能(メタ)アクリレートを必須とし、さらに(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレートの少なくとも一種とを含む。ポリウレタン樹脂組成物(A)に対して、ポリウレタン(a)及び重合性単量体(b)の合計含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、場合によっては100質量%であってもよい。
【0015】
ポリウレタン(a)及び重合性単量体(b)の合計含有量を80質量%以上とすることにより、放熱性絶縁接着剤組成物を硬化させた放熱性絶縁接着剤の接着強度を高く維持することができる。
【0016】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物(A)は、接着強度、電気絶縁性の機能に影響を及ぼさない程度に、ポリウレタン(a)及び重合性単量体(b)以外の他のポリマーを含んでよい。
【0017】
他のポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴムなどの、共役ジエン重合体;ブチルゴム;スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などの、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物などの、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物;アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−イソプレン共重合ゴムなどの、シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水素添加物などの、シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素添加物;シアン化ビニル−芳香族ビニル−共役ジエン共重合体;シアン化ビニル化合物−芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物;シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体とポリ(ハロゲン化ビニル)との混合物;ポリエピクロロヒドリンゴム、ポリエピブロモヒドリンゴムなどの、ポリエピハロヒドリンゴム;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどの、ポリアルキレンオキシド;エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM);シリコーンゴム;シリコーン樹脂;フッ素ゴム;フッ素樹脂;ポリエチレン;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などの、エチレン−α−オレフィン共重合体;ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−オクテンなどの、α−オレフィン重合体;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ臭化ビニル樹脂などの、ポリハロゲン化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ臭化ビニリデン樹脂などの、ポリハロゲン化ビニリデン樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12などの、ポリアミド;ポリウレタン;ポリエステル;ポリ酢酸ビニル;ポリ(エチレン−ビニルアルコール)などを用いてもよい。
【0018】
(ポリウレタン(a))
本発明のポリウレタン(a)の製造に用いられるポリオキシアルキレンポリオールは、炭素数2〜4のアルキレン鎖を有するポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。好ましいポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシブチレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。これらのポリオキシアルキレンポリオールは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合することにより得られるものであるが、本発明で用いられるポリオキシアルキレンポリオールとしては、1種のアルキレンオキサイド等を付加重合させた重合体だけでなく、2種以上のアルキレンオキサイド等を付加共重合させて得られる共重合体を用いてもよい。
【0019】
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、通常、500〜5,000であり、800〜4,000であることが好ましく、1000〜3,000であることがより好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が500以上であって5,000以下であることにより、ポリウレタン中のウレタン結合が所望の量で確保されることから放熱性絶縁接着剤組成物を硬化させた放熱性絶縁接着剤の接着強度を高くできる。
【0020】
本発明のポリウレタン(a)の製造に用いられるポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、イソシアナト基を2個含んだ化合物が好ましい。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート及びその水素添加物、キシリレンジイソシアネート及びその水素添加物、ジフェニルメタンジイソシアネート及びその水素添加物、1,5−ナフチレンジイソシアネート及びその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられ、これらを二種以上併用してもよい。中でも、反応性の制御に優れている点から、イソホロンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネート及びその水素添加物が好ましい。
【0021】
〔ポリウレタン(a)の第一の合成方法〕
次に、ポリウレタン(a)の第一の合成方法、すなわち、ポリウレタン(a1)の合成方法について、説明する。
【0022】
まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートを、イソシアナト基量がヒドロキシル基量より多くなる割合で反応させて、「イソシアナト基を有するポリウレタン」を合成する。
【0023】
このとき、ヒドロキシル基量に対するイソシアナト基量の比を調整することで、イソシアナト基を有するポリウレタンの分子量を調整することが可能である。具体的には、ヒドロキシル基量に対するイソシアナト基量の比が小さい程、イソシアナト基を有するポリウレタンの分子量は大きくなり、ヒドロキシル基量に対するイソシアナト基量の比が大きい程、イソシアナト基を有するポリウレタン化合物の分子量は小さくなる。具体的には、ポリオキシアルキレンポリオールのヒドロキシル基1モルに対して、ポリイソシシアネートのイソシアナト基量が1.03〜1.35モルであることが好ましく、1.05〜1.1モルであることがより好ましい。
【0024】
次に、イソシアナト基を有するポリウレタンと、ヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて、ポリウレタン(a1)を合成する。
ヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;1,3−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の各種ポリオール由来の(メタ)アクリロイル基を有するモノオール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、イソシアナト基との反応性、熱硬化性に優れる点で、2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
【0025】
イソシアナト基を有するポリウレタンと、ヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させる際に、アルキルアルコールを添加して、イソシアナト基を有するポリウレタンと反応させることで、ポリウレタン(a1)への(メタ)アクリロイル基の導入量を調整することができる。
【0026】
ポリウレタン(a)への(メタ)アクリロイル基の導入量は、通常、イソシアナト基に対して、50〜100mol%であり、70〜100mol%であることが好ましく、90〜100mol%であることがより好ましい。(メタ)アクリロイル基の導入量が、イソシアナト基に対して、50mol%以上100mol%以下であることで、放熱性絶縁接着剤組成物を硬化させた放熱性絶縁接着剤の接着強度が発現される。
【0027】
アルキルアルコールとしては、特に限定されないが、直鎖型、分岐型、脂環型のアルキルアルコール等が挙げられ、具体例としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0028】
〔ポリウレタン(a)の第二の合成方法〕
次に、ポリウレタン(a)の第二の合成方法、すなわちポリウレタン(a2)の合成方法について、説明する。
【0029】
まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートを、ヒドロキシル基量がイソシアナト基量より多くなる割合で反応させて、「ヒドロキシル基を有するポリウレタン」を合成する。
【0030】
このとき、イソシアナト基量に対するヒドロキシル基量の比を調整することで、ヒドロキシル基を有するポリウレタンの分子量を調整することが可能である。具体的には、イソシアナト基量に対するヒドロキシル基量の比が小さい程、ヒドロキシル基を有するポリウレタンの分子量は大きくなり、イソシアナト基量に対するヒドロキシル基量の比が大きい程、ヒドロキシル基を有するポリウレタン化合物の分子量は小さくなる。具体的には、ポリオキシアルキレンポリオールのヒドロキシル基1モルに対して、ポリイソシシアネートのイソシアナト基量が0.83〜0.97モルであることが好ましく、0.90〜0.95モルであることがより好ましい。
【0031】
次に、ヒドロキシル基を有するポリウレタンと、イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて、ポリウレタン(a2)を合成する。
このとき、イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物の量を調整することで、ポリウレタン(a2)への(メタ)アクリロイル基の導入量を調整することができる。
【0032】
ポリウレタン(a2)への(メタ)アクリロイル基の導入量は、通常、ヒドロキシル基に対して、50〜100mol%であり、70〜100mol%であることが好ましく、90〜100mol%であることがより好ましい。(メタ)アクリロイル基の導入量が、ヒドロキシル基に対して、50mol%以上100mol%以下であることで、放熱性絶縁接着剤組成物を硬化させた放熱性絶縁接着剤の接着強度が発現される。
【0033】
イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ヒドロキシル基との反応性、熱硬化性に優れる点から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。
【0034】
イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物として使用できる市販品は、例えば、昭和電工株式会社製の「カレンズMOI(登録商標)」、「カレンズAOI(登録商標)」などが例示できる。
【0035】
ポリウレタン(a)の合成において、ヒドロキシル基とイソシアナト基の反応は、イソシアナト基に不活性な有機溶媒の存在下で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキサノエート、ジオクチルスズジラウレート等のウレタン化触媒を用いて、通常、30〜100℃で1〜5時間程度継続して行われる。
ウレタン化触媒の使用量は、通常、反応物の総質量に対して、50〜500質量ppmである。
【0036】
本発明のポリウレタン(a)の重量平均分子量としては、10,000〜300,000であることが好ましく、より好ましくは20,000〜200,000であり、さらに好ましくは30,000〜100,000である。ポリウレタン(a)の重量平均分子量が10,000以上であって300,000以下であることにより、放熱性絶縁接着剤組成物を硬化させた放熱性絶縁接着剤の接着強度が高く維持され、かつ、取り扱いが容易で作業性も向上する。
【0037】
なお、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー:商品名「Shodex GPC−101」(昭和電工株式会社製、「Shodex」は登録商標である)を用いて測定される、ポリスチレン換算の分子量である。
【0038】
ポリウレタン樹脂組成物(A)中のポリウレタン(a)の含有量は、10〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜35質量%である。ポリウレタン樹脂組成物(A)中のポリウレタン(a)の含有量が10質量%以上であって40質量%以下であることにより、熱伝導性フィラーの分散性が良好となり作業性に優れ、さらに放熱性絶縁接着剤組成物を硬化させた放熱性絶縁接着剤の接着強度が高く維持される。
【0039】
(重合性単量体(b))
本発明のポリウレタン樹脂組成物(A)中に用いられる重合性単量体(b)は、多官能(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸および/またはβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレートを含む。多官能(メタ)アクリレートは(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上有する化合物であり、ポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましい。これらは、特に限定されないが、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、α,ω−ジ(メタ)アクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジアクリロキシエチルフォスフェート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を例示できる。重合性単量体(b)には、(メタ)アクリル酸およびβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート(2−カルボキシエチル(メタ)アクリレートともいう)は、少なくとも一種を含めばよい。また、重合性単量体(b)には他の重合性単量体を含んでいても良い。これら重合体としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;2−スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有(メタ)アクリレート;オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフッ化アルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等の(メタ)アクリルアミド;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0040】
重合性単量体(b)は、放熱性絶縁接着剤の密着性と接着強度の観点から、多官能(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸および/またはβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレートとを含み、さらにアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの含有量としては、ポリウレタン樹脂組成物(A)中、1〜10質量%であることが好ましい。(メタ)アクリル酸および/またはβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレートの含有量の合計としては、ポリウレタン樹脂組成物(A)中、1〜10質量%であることが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの含有量、(メタ)アクリル酸および/またはβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレートの含有量の合計が、ポリウレタン樹脂組成物(A)中、それぞれ1〜10質量%であることにより、密着性を十分に確保することができ、かつ、得られる放熱性絶縁接着剤組成物を硬化させた際の接着強度も良好になる。
【0041】
本発明のポリウレタン樹脂組成物(A)中に用いられる重合性単量体(b)の含有量は、60〜90質量%あることが好ましく、より好ましくは65〜85質量%である。放熱性絶縁接着剤組成物中の重合性単量体(b)の含有量が60質量%以上であって90質量%以下であることにより、放熱性絶縁接着剤組成物を硬化させた際の接着強度も良好になる。
【0042】
<無機フィラー(B)>
本発明の無機フィラー(B)としては、熱伝導性の比較的高いものが好ましい。具体的には、特に限定されないが、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、二酸化チタン等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素、水酸化アルミニウム、さらにはアルミニウムなどの金属粉等が挙げられる。これらを単独あるいは数種類を組み合わせて使用することができる。中でも、取扱い易さの点で酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0043】
本発明の無機フィラー(B)の含有量としては、放熱性絶縁接着剤組成物中のポリウレタン樹脂組成物(A)100質量部に対して250〜700質量部であり、300〜650質量部であることが好ましい。無機フィラー(B)の含有量が250質量部以上であって700質量部以下であることにより、充分な熱伝導性が得られ、放熱性絶縁接着剤組成物の粘度が高くなりすぎることが抑制される。
【0044】
無機フィラー(B)の粒子径については、累積質量50%粒子径(D50)が1〜50μmであることが好ましい。より好ましくは、3〜30μmである。累積質量50%粒子径(D50)が1μm以上であって50μm以下であることにより、放熱性絶縁接着剤組成物の粘度が高くなりすぎず、放熱性絶縁接着剤組成物の塗膜表面の凹凸が大きくなることが抑制される。
【0045】
ここで、「累積質量50%粒子径(D50)」は、たとえば、株式会社島津製作所製の商品名「SALD−200V ER」のレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、レーザ回折式粒度分布測定により得られる。
【0046】
<熱重合開始剤(C)>
本発明には、金属間の様な暗部の硬化が可能な熱重合開始剤(C)が使用される。熱重合開始剤(C)としては、特に限定されないが、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル等の有機過酸化物やアゾ系化合物が挙げられる。有機過酸化物の具体例としては、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチル パーオキシネオデカノエート等が挙げられ、アゾ系化合物の具体例としてはアゾイソブチロニトリル等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。放熱性絶縁接着剤組成物の熱硬化性や、硬化させた際の接着強度の観点からは、1,1,3,3−テトラメチルブチル パーオキシ−2−エチルヘキサノエートまたはt-ブチル パーオキシネオデカノエートが好ましい。
【0047】
放熱性絶縁接着剤組成物中の熱重合開始剤(C)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物(A)100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜4質量部であることがより好ましく、0.5〜2質量部であることがさらに好ましい。放熱性絶縁接着剤組成物中の熱重合開始剤(C)の含有量が、ポリウレタン樹脂組成物(A)100質量部に対し0.1質量部以上であって5質量部以下であることにより、放熱性絶縁接着剤組成物の硬化性が低下することを抑制することができ、かつ、放熱性絶縁接着剤組成物を硬化させた際の接着強度が低下することを抑制することができる。
【0048】
本発明の放熱性絶縁接着剤組成物は、基材への密着性を向上させるために、ポリウレタン(a)とは異なる樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0049】
樹脂としては、特に限定されないが、ロジン、ロジンのエステル化物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体、α−ピネン−フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)、芳香族系(C9系)等の石油樹脂;スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0050】
本発明の放熱性絶縁接着剤組成物は、必要に応じて、添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0051】
添加剤としては、特に限定されないが、分散剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、ベンゾトリアゾール系等の光安定剤、リン酸エステル系及びその他の難燃剤、界面活性剤等の帯電防止剤等が挙げられる。
【0052】
本発明の放熱性絶縁接着剤組成物の硬化方法としては、特に限定されないが、本発明の放熱性絶縁接着剤組成物を例えば金属基材に塗布した後、もう一方の金属基材を貼り合せ、加熱硬化させる方法等が挙げられる。硬化温度は、使用する熱重合開始剤によるが、50〜150℃であることが好ましい。硬化時間は、使用する熱重合開始剤の種類や、放熱性絶縁接着剤組成物の塗布厚にもよるが、5〜120分であることが好ましい。
【0053】
本発明の放熱性絶縁接着剤組成物を基材上に塗布する方法としては、特に限定されないが、ハケ塗り、バーコート、エアースプレー、スピンコート、ディスペンス等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、実施例により限定されない。なお、部は、質量部を意味する。
以下に記載の合成例にしたがって、ポリウレタン(A−1)〜(A−3)を合成した。
【0055】
<ポリウレタン(A−1)の合成>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート及び水酸基価が56mgKOH/gのヒドロキシル基を末端に有するポリプロピレングリコールである商品名「D−2000」(三井化学ファイン株式会社製、数平均分子量:2000)を、前者が15モル、後者が14モルの割合で仕込んだ後、前記イソホロンジイソシアネート及びD−2000に対し、ジオクチルスズジラウレート100wtppmを加え、70℃まで昇温して4時間反応させ、イソシアナト基を末端に有するポリウレタンを得た。次に、得られたポリウレタン1モルに対して、2−ヒドロキシエチルアクリレート2モルを加えた後、70℃まで昇温して2時間反応させ、重量平均分子量が70000のアクリロイル基を末端に有するポリウレタン(A−1)を得た。このとき、IRスペクトルにより、イソシアナト基由来の吸収ピークが消失したことを確認した後、反応を終了した。
【0056】
<ポリウレタン(A−2)、(A−3)の合成>
表1に記載の組成及び反応温度で反応を行う以外は、ポリウレタン(A−1)と同様にして、ポリウレタン(A−2)、(A−3)の合成を行った。
【0057】
【表1】
【0058】
<重量平均分子量>
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(商品名:「Shodex GPC−101」(昭和電工株式会社製)、「Shodex」は登録商標である)を用いて、以下の条件で、重量平均分子量を測定した。
カラム:LF−804(昭和電工株式会社製)
カラムの温度:40℃
試料:0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/min
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI検出器
【0059】
実施例1〜7比較例1〜5
表2〜4に示す組成でポリウレタン樹脂組成物(A)、熱伝導性フィラー(B)、及び熱重合開始剤(C)を配合し、室温下でディスパーを用いて混合することで均一な放熱性絶縁接着剤組成物を調製した。
【0060】
(熱伝導率の測定)
調製した放熱性絶縁接着剤組成物を、アプリケーターを用い、膜厚が200μmとなるように剥離PETフィルム(200mm×200mm×100μm)に塗布した後、さらに上面に剥離PETフィルム(200mm×200mm×100μm)を被せ、80℃で30分オーブン中で加熱硬化させることにより、膜厚が約200μmの放熱性絶縁接着剤組成物の硬化物を得た。
【0061】
熱伝導率計測器(京都電子工業株式会社製,迅速熱伝導率計,QTM−500)を用い、上で得られた硬化物について、23℃雰囲気下で非定常熱線比較法により熱伝導率の測定を行った。結果を表2〜4に示す。
【0062】
(接着強度の測定)
調製した放熱性絶縁接着剤組成物をアルミ板(100mm×25mm×1mm)表面に塗布した後、もう一つのアルミ板を貼り合わせ、接着後の接着剤層の厚さが0.2mmとなるよう圧締した。貼り合わせ面積は12.5mm×25mmとなるようにした。貼り合わせたアルミ板を80℃で60分オーブン中で加熱し、試験体とした。
得られた試験体について、JISK6850に従い、試験速度2.5mm/分、23℃における引張せん断接着強さを測定した。
【0063】
(体積抵抗率の測定)
調製した放熱性絶縁接着剤組成物を、アプリケーターを用い、膜厚が200μmとなるように剥離PETフィルム(200mm×200mm×100μm)に塗布した後、さらに上面に剥離PETフィルム(200mm×200mm×100μm)を被せ、80℃で60分オーブン中で加熱硬化させることにより、膜厚が約200μmの放熱性絶縁接着剤組成物の硬化物を得た。
【0064】
抵抗率計(三菱化学株式会社製、ハイレスタ−UP)を用い、上で得られた放熱性絶縁接着剤組成物の硬化物について、体積抵抗率の測定を行った。結果を表2〜4に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】