(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態やその変更例を、適宜図面に基づいて説明する。
図1はネジ締め用の電動工具の一例である充電式のインパクトドライバ(回転打撃工具)1の右側面図であり、
図2はインパクトドライバ1の後面図であり、
図3はインパクトドライバ1の中央縦断面図であり、
図4は
図3の本体部の拡大図であり、
図5は
図3(
図4)のA−A断面図であり、
図6は
図4のB−B断面図であり、
図7は
図4のC−C断面図であり、
図8は
図4のD−D断面図である。
インパクトドライバ1は、その外郭を形成するハウジング2を有している。尚、
図1において、右が前となる。
インパクトドライバ1は、中心軸を前後方向とする筒状の本体部4と、本体部4の下部から突出するように形成されたグリップ部6を有する。
グリップ部6は、使用者が把持する部分であり、グリップ部6の基端部には、使用者による指先で引く操作が可能であるトリガ形式のスイッチレバー8が設けられている。スイッチレバー8は、スイッチ本体部8aから突出している。
【0012】
インパクトドライバ1の本体部4には、後側から順に、モータ(ブラシレスDCモータ)10、遊星歯車機構12、スピンドル14、弾性体であるコイル状のスプリング15、ハンマ16、及びアンビル18が、同軸に収納されている。
モータ10は、インパクトドライバ1の駆動源であり、その回転が遊星歯車機構12により減速された後、スピンドル14に伝達される。そして、スピンドル14の回転力がハンマ16等によって回転打撃力に変換され、適宜スピンドル14とハンマ16の間に渡されるスプリング15の緩衝を受けつつ、アンビル18に伝えられる。アンビル18は、回転打撃力を受けて軸周りに回転する部分である。
【0013】
本体部4におけるハウジング2は、モータ10を収容するモータハウジング20と、モータハウジング20の前方に配置され、ハンマ16を収容するハンマケース22を含む。
モータハウジング20は、半割筒状の左モータハウジング20a及び右モータハウジング20bと、後面となる後モータハウジング20cを含む。左モータハウジング20a及び右モータハウジング20bの各後部の上下には、吸気口20e,20eが開けられており、これらの間の後方には、それぞれ後方からネジ3を受け入れるネジボス20fが設けられている。又、後モータハウジング20cの左右には、排気口20g,20g・・が開けられている。
ハンマケース22は、前部が後部に対して縮径された筒状であり、その後部の一部がモータハウジング20の前部内に入り込んだ状態で取り付けられる。
又、モータハウジング20とハンマケース22の内側には、軸受保持壁としての皿状で金属製のベアリングリテーナ24が、これらに挟まれた状態で(ハンマケース22に保持された状態で)取り付けられている。
図9にも示すベアリングリテーナ24は、中央に孔24aが開けられていると共にその孔24aの隣接部位がその外部に対して有底で低い六角柱状に窪んだ形状となっており、その窪み部24bが後へ窪む配置で、又その窪み部24bの底面が上下方向に沿う姿勢で設けられている。又、ベアリングリテーナ24の後端部(当該窪み部の後側)外縁には、これより前側に対して径方向外方へリング状に突出する外方突出リブ24cが設けられている。更に、モータハウジング20における、外方突出リブ24cの隣接位置(前側)には、モータハウジング20内面から内方へ突出する内方突出リブ20dが設けられている。ハンマケース22とベアリングリテーナ24によって、遊星歯車機構12と、ハンマケース22及びベアリングリテーナ24とが、外部からほぼ密閉された状態となる。
一方、グリップ部6におけるハウジング2は、グリップハウジング26となっている。グリップハウジング26は、モータハウジング20の下部に対して一体的に設けられている。グリップハウジング26は、それぞれ半割状である、左グリップハウジング26aと、右グリップハウジング26bを含む。左グリップハウジング26a及び右グリップハウジング26b、並びに左モータハウジング20a及び右モータハウジング20bは、ネジ3,3・・により合わせられている。
右グリップハウジング26bの上部であって、スイッチレバー8の後方には、モータ10の回転方向を切替えるスイッチである正逆切替レバー5が、本体部4とグリップ部6の境界領域において左右に貫通するように設けられている。又、スイッチレバー8の上側であって、正逆切替レバー5の前方には、前方を照射可能なライト7が設けられている。ライト7は、ここではLEDであり、スイッチレバー8と上下方向で重なるように設けられている。ライト7は、スイッチレバー8と上下方向で重なるように設けられているので、ライト7の照射方向に使用者の指等が位置せずに、ライト7の照射を妨げる事態の発生を防止し、ライト7点灯時の視認性を良好なものとすることができる。
グリップハウジング26の下端部は、その上部に対して主に前方へ広がる電池取り付け部26cとなっており、電池取り付け部26cの下方には、押しボタン28aにより着脱可能にバッテリ28が保持されている。バッテリ28は、ここでは14.4V(ボルト)のリチウムイオンバッテリである。
電池取り付け部26cの上部の前部には、表示スイッチ付き表示部26d(ここではLEDによる表示部である)が設けられている。又、電池取り付け部26cの上部の左右には、図示しないフックを取り付け可能であるフック用溝26eと、フックを始めとするネジを有する別部材を取り付け可能であるネジ穴26fが開けられている。尚、電池取り付け部26cの後部には、ストラップ26gが設けられている。又、電池取り付け部26cの内部には、回路基板51が収められている。回路基板51には、後述の各駆動コイル17に対応して設けられ、対応する駆動コイル17のスイッチングを行う、図示しない6個のスイッチング素子が搭載されている。
【0014】
モータ10は、ブラシレスDCモータであり、固定子鉄心9と、固定子鉄心9の前後に設けられる前絶縁部材11及び後絶縁部材13と、前絶縁部材11及び後絶縁部材13を介して固定子鉄心9にそれぞれ巻かれる複数(ここでは6個)の駆動コイル17,17・・と、を有するステータ19を備える。又、前絶縁部材11には、センサ基板31がネジ21,21で固定されている。センサ基板31の後面には、ここでは3個の磁気センサ31a,31a・・(
図8参照)が固定されている。更に、前絶縁部材11の前面周縁には、各駆動コイル17とセンサ基板31を電気的に接続する接点としてのコイル接続部11a,11a・・が、合計6個設けられている。
ステータ19の内部には、ロータ29が配置されている。ロータ29は、回転軸としてのロータ軸30と、ロータ軸30の周囲に配置された筒状の回転子鉄心23と、回転子鉄心23の外側に配置されており、筒状で周方向に極性を交互に変えた永久磁石25と、これらの前側(センサ基板31側)において放射状に配置された複数のセンサ用永久磁石27,27・・と、を有する。回転子鉄心23と、永久磁石25と、センサ用永久磁石27,27・・は、ロータアッセンブリ29aを構成する。ロータアッセンブリ29aは、スイッチ本体部8aの上方に配置されており、この配置によって、バランスが良く、握った際に使い易いインパクトドライバ1とすることができる。
ロータ軸30における回転子鉄心23の前側には、筒状の樹脂スリーブ35が設けられている。樹脂スリーブ35の前方には、ロータ軸30の前の軸受36が設けられている。又、軸受36の前方であって、ロータ軸30の前端部には、ピニオン37が固定されている。ロータ軸30の回転子鉄心23の後方には、金属製のインサートブッシュ39を介して冷却用のファン32が取り付けられている。インサートブッシュ39は圧入されており、ファン32のロータ軸30に対する固定力が高いものとなる。軸受36は、本体部4における上部のネジ3と、本体部4における下部(の中央)のネジ3の、それぞれの中心を結んだ直線上に配置されている。よって、ロータ軸30の振動を効果的に抑制することができる。
特に
図8に示すように、センサ基板31の周縁側部には、4個の貫通孔41,41・・が開けられており、センサ基板31の周縁上部には、周方向内側に入る1個の小凹部43が設けられている。一方、前絶縁部材11の前部には、各貫通孔41や凹部43の何れかに対応する5個の前方への小突起45,45・・が設けられている。そして、各貫通孔41及び凹部43には、対応する小突起45が入っている。又、センサ基板31の周縁側部には、周方向内側に入る2個の凹部47が設けられており、各凹部47には上述のネジ21,21が入る。
ファン32は、ロータ軸30隣接部(内側)がその外部(外側)に対して前方に膨出した形状(中央部に前方へ膨出する膨出部32aを有する形状)となっている。そして、ロータ軸30の後の軸受34が、その膨出部32aの後側(その外部の内側)に一部を入れた状態で、後モータハウジング20c内面に設置されている。後モータハウジング20cには、排気口20g,20g・・が配置されており、又排気口20g,20g・・は、ファン32の径方向外側に配置されている。よって、ファン32の風は、効率的に排出される。又、排気口20g,20g・・は、ネジボス20fに受け入れられる各ネジ3の上下に配置されている。よって、開口部である排気口20g,20g・・に隣接する部位であるネジボス20fやネジ3において後モータハウジング20cが取り付けられ、後モータハウジング20cの組み付け後の強度が向上する。
【0015】
又、主に
図7や
図9に示すように、ベアリングリテーナ24は、前絶縁部材11に係る2個のネジ21,21及び4個(最も上側のもの以外)の小突起45,45・・と、軸方向において重なる位置となるように(オーバーラップさせて)配置されている。このため、ネジ21,21や小突起45,45・・よりも前方にベアリングリテーナ24を配置させる場合に比べて、本体部4の前後方向の長さが短縮化される。
更に、ベアリングリテーナ24の前部外縁から前方へ突出する前方突出壁24dが設けられており、その外周面には、図示しない雄ネジ山が形成されている。一方、ハンマケース22の後端部の内周面には、図示しない雌ネジ溝が形成されている。そして、この雌ネジ溝に対して雄ネジ溝が噛み合うことにより、ベアリングリテーナ24がハンマケース22に固定される。尚、ベアリングリテーナ24の後部の窪み部24bは、六角柱状であるから、レンチ等の利用によりハンマケース22に対してベアリングリテーナ24を回転させ易く、雌ネジ溝に対して雄ネジ山を進行させ易く、よってハンマケース22にベアリングリテーナ24を取り付け易くなっている。
又、ロータ軸30の前の軸受36は、ベアリングリテーナ24の孔24aの後部に入る状態で設置されている。ベアリングリテーナ24の窪み部24bの後面(軸受36の外方)には、複数の凹み部49a,49a・・が周方向に並ぶ状態で形成されており、凹み部49a,49aの各間には、後方に立つ小壁状のリブ49bが形成されている。他方、ベアリングリテーナ24の窪み部24bの内側において、スピンドル14の後端部14aを受ける軸受40が設置されている。凹み部49a,49a・・は、軸受40の方向に位置している。この凹み部49a,49a・・、あるいはこれらとリブ49b,49b・・により、ベアリングリテーナ24の放熱が好適に行われる。尚、ベアリングリテーナ24は金属製であるため、更に放熱に適している。
加えて、ベアリングリテーナ24における軸受36よりも前方側の位置(窪み部24内の軸受36外側)には、前方へ突出する前方突出部24e,24e・・が、放射方向に沿うような筋状に複数形成されている。この前方突出部24e,24e・・によってもベアリングリテーナ24の放熱が好適に行われる。この前方突出部24e,24e・・は、軸受40の内径側に入っており、軸受40と軸方向においてオーバーラップしている。
【0016】
スピンドル14は、その後部であって後端部の前側において、中空の円盤状部14bを備えている。円盤状部14bは、スピンドル14の他の部分に対して、外方(上下左右)に突出しており、径が他の部分より長くなっている。
ベアリングリテーナ24における、円盤状部14bと対向する部分には、凹み部24f,24f・・が設けられている。各凹み部24fは、軸受40の外側まで延ばされている。これらの凹み部24f,24f・・により、ベアリングリテーナ24の放熱が好適に行われる。
【0017】
スピンドル14の円盤状部14b内には、遊星歯車機構12の一部が配置されている。
遊星歯車機構12は、内歯を有する内歯ギヤ42と、内歯ギヤ42に噛み合う外歯を有する複数の遊星歯車44,44・・と、各遊星歯車44の軸である各ピン46とを含む。
内歯ギヤ42は、後部における筒状の歯部42aに対して、これより前側の前部42bが内外径とも拡径するように形成されており、この拡径により、前部42b内周側において凹部42cが設けられる。
特に
図6に示されるように、前部42bには4個の凸部42d,42d・・が設けられており、ハンマケース22内側には対応する4個の凹部22c,22c・・が設けられていて、各凸部42dが、対応する凹部22cに入ることで、これらが互いに係合されている。このような係合における前後方向の長さを十分に確保するため、ハンマ16の最後退位置の外周側まで各凸部42dが達するように形成されている。
又、凹部42cは、径方向においてハンマ16外周部と同様の位置に配置されて、凹部42cにより、内歯ギヤ42におけるハンマ16と対向する位置が凹み、換言すれば、内歯ギヤ42の前部42b内径はハンマ16外径より大きく形成されて、前部42bはハンマ16と干渉しないように形成されている。内歯ギヤ42は、ベアリングリテーナ24の前部とハンマケース22の後端縁とが重なっている部位の内側において回転不能に取り付けられている。内歯ギヤ42の前面は、ハンマケース22の後端縁において後部が前部より僅かに拡径することで形成された段部22aに当たっており、内歯ギヤ42は、ハンマケース22と前方側で突き当たる。尚、歯部42aの外側であって、モータハウジング20の内側には、ベアリングリテーナ24の前方突出壁24dが入り込んでいる。
各遊星歯車44の大部分及び各ピン46は、スピンドル14の円盤状部14b内方に配置される。
各ピン46は、前端部がこれより後の部分に対して縮径するように形成されており、即ち小径部46aの後側に大径部46bが位置するようになっている。一方、スピンドル14の円盤状部14bの前面には、各ピン46の小径部46aに対応するピン孔14cが複数(ピン46の数だけ)設けられる。又、円盤状部14bの後面には、各ピン46の大径部46bの後端部に対応するピン孔14dが複数設けられる。そして、各ピン46は、小径部46aをピン孔14cに入れると共に、大径部46bの後端部をピン孔14dに入れた状態で、円盤状部14b内に設けられる。各ピン46は、小径部46aをピン孔14cに合わせることで、小径部46aと大径部46bの間の段差が円盤状部14b内面(ピン孔14cの内周縁)に当たるようになり、もってハンマ16側への移動が不能である状態となる。
各遊星歯車44は、対応するピン46の周りで回転可能である状態で、ピン46に周設される。各遊星歯車44は、外歯の一部が円盤状部14bから外方へ出るように配置されている。
【0018】
スピンドル14の内部であって、円盤状部14bの前後には、後面から前方への穴であるスピンドル穴が設けられている。当該スピンドル穴は、その前部である前方側穴14eと、その後方に設けられ、前方側穴14eよりも大径である後方側穴14fを有する。後方側穴14fが前方側穴14eよりも大径であるので、ピニオン37を遊星歯車44,44・・に噛み合わせるためこれらの穴に入れる際に、ピニオン37が後方側穴14fに当たり難くなる。又、前方側穴14eが後方側穴14fよりも小径であるので、スピンドル14に掛かるトルクに対し耐久性を好適に持たせられる。
スピンドル穴後部(前方側穴14eの後部及び後方側穴14f)内方には、モータ10のロータ軸30の先端部が入り、ロータ軸30先端部のピニオン37には、全ての遊星歯車44と共通して噛み合う歯が形成されている。後方側穴14fの径は、ロータ軸30の軸受36の外径より大きくなっている。
又、スピンドル14の円盤状部14bの前面外縁には、前後方向に沿う低いバネ受け突起部14gが、円盤状部14bと一体的に設けられている。
バネ受け突起部14gはリング状であり、スプリング15のリング状に形成された後端部が、バネ受け突起部14gの内側に配置されていて、バネ受け突起部14gはスプリング15を受けるバネ受けとなっている。そして、スプリング15の内側に、ピン孔14dが配置されており、スプリング15の後方に、ピン46の小径部46aが配置されている。
バネ受け突起部14gは、内歯ギヤ42の内側に入っており、前後方向においてバネ受け突起部14gやスプリング15(の後端部)と内歯ギヤ42がオーバーラップしている。
バネ受け突起部14gの前端よりも後方に、ピニオン37の前端が配置される。よって、ピニオン37を短く構成することができ、ピニオン37にかかる材料費を抑制することができる。又、内歯ギヤ42の前端よりも後方に、ピニオン37の前端が配置される。よって、ピニオン37を短く構成することができ、ピニオン37にかかる材料費を抑制することができる。
スピンドル14の後端部14aを受ける軸受40の内径は、ベアリングリテーナ24により保持される軸受36の外径より大きくなっている。又、軸受40の後面は、軸受36の前面より前にあり、軸受40と軸受30は前後方向において互いにずれた状態で配置されている。よって、スピンドル14から軸受40に伝わった力が、軸受36に伝わり難くなり、軸受36やベアリングリテーナ24が長寿命になる。
【0019】
一方、ハンマ16は、後面から前方へ筒状に窪む窪み16aを有しており、窪み16aには、スプリング15の前部が入っていて、窪み16aの底(前端)には、複数のボール50,50・・及びハンマワッシャ52を介して、スプリング15のリング状に形成された前端部が配置されている。
窪み16aの後端縁外側(開口部外側)には、これより前側における外側の面に対してより外側へ広がるバネ受け逃げ部16bが設けられている。バネ受け逃げ部16bとスピンドル14のバネ受け突起部14gは、筒状の本体部4の内外の方向(径方向)において同様の位置に配置されており、たとえハンマ16が後方に移動して円盤状部14b前側に隣接したとしても、バネ受け逃げ部16bがバネ受け突起部14gを避けることで、ハンマ16とスピンドル14が干渉しないようにされている。
又、窪み16aは、径方向においてピン孔14dやピン46の小径部46aと同様な位置に配置されており、たとえハンマ16が後方に移動して円盤状部14b前側に隣接したとしてもピン孔14dや小径部46aがハンマ16と干渉しない位置に配置されている。
尚、ハンマ16とスピンドル14の前部との間には、打撃時にハンマ16を主に前後方向に案内するボール54,54が介装されている。
【0020】
ハンマ16前側のアンビル18は、放射方向にそれぞれ延びる一対の延設部18a,18aを、後端部に有している。
延設部18a,18aの前側には、アンビル18を軸周りに回転自在且つ軸方向に変位不能に支持するアンビル軸受60が設けられている。アンビル軸受60は、ハンマケース22の前端部内壁に取り付けられる。
又、アンビル18の後部中央には、後面から前方への穴である後穴18bが開けられており、後穴18bには、回転打撃力を伝達可能な状態で、スピンドル14の前端部が入れられている。
他方、アンビル18の前部には、図示しないビット(先端工具)を受け入れるチャック部18cが設けられている。
アンビル18の延設部18a,18aの外縁とハンマケース22の前内壁との間には、アンビル18を受ける、合成樹脂(ナイロン)製のアンビルワッシャ62が配置されている。リング状のアンビルワッシャ62の内壁のすぐ内側には、ハンマケース22の前内壁から前方へリング状に突出するワッシャ保持部22bが設けられており、アンビルワッシャ62はワッシャ保持部22bへ圧入又は保持されている。
アンビル18の後面よりも後方において、スイッチレバー8の前端が配置されている。よって、打撃を受ける部分と使用者が操作するスイッチレバー8との位置関係を適切なものとして扱い易いインパクトドライバ1とすることができる。
【0021】
このようなインパクトドライバ1の動作例を説明する。
作業者がグリップ部6(グリップハウジング26)を把持してスイッチレバー8を引くと、スイッチ本体部8aにおける切替によりバッテリ28からモータ10への給電がなされ、ロータ軸30が回転する。
ロータ軸30の回転により、ファン32が回転し、吸気口20e,20eから排気口20g,20g・・への空気の流れが形成される。この際、空気の流れによって、まず固定子鉄心9の外周が冷却される。次いで、センサ基板31の全面が冷却される。続いて、回転子鉄心23、各駆動コイル17及び固定子鉄心9の内周が冷却される。
又、ロータ軸30の回転力は、内歯ギヤ42内を自転しながら走る遊星ギア44,44・・により減速されたうえで、ピン46,46・・を介し、スピンドル14に伝わる。
スピンドル14は、アンビル18を回転させると共に、アンビル18において所定閾値以上のトルクを受けた場合にハンマ16を前後に揺動(打撃)するように案内する。打撃時には、スプリング15による緩衝作用がハンマ16(やスピンドル14)に働く。
【0022】
以上のインパクトドライバ1では、次にそれぞれ挙げるような単独のそれぞれの構成あるいはその組合せにより、モータハウジング20の後端からアンビル18の前端までの長さ(以下「本体部4の前後長さ」という)を短くすることができる。結果、本体部4の前後方向の長さを従前(129mm)よりも短く(それぞれの採用する構成の組合せにより、128mm以下、125mm以下、あるいは120mm以下に)することが可能となる。尚、
図1〜4で表したインパクトドライバ1における本体部4の前後長さは、119.7mmである。
即ち、スピンドル14の円盤状部14bに、係合部としてのピン孔14cを設けると共に、ピン孔14cに係合する被係合部としての小径部46aを有し、遊星歯車44を保持するピン46を設け、ピン孔14c及び小径部46aにより、ピン46がハンマ16側へと移動不能になる。この構成により、従来のワッシャ102を別途ピン46の前に設けなかったとしても、ピン46のハンマ16側への移動を抑制することができ、ワッシャ102の省略を可能として、部品点数の削減を図ることができ、又その分本体部4の前後長さを短くすることができる。
更に、ピン46は、遊星歯車44を保持する大径部46bと、大径部46bよりも小径な小径部46aとを有し、ピン孔14cは、小径部46aが嵌合する凹部である。この構成により、本体部4の前後長さの短縮化等のためにワッシャ102を省略したとしても、ピン46の移動抑制をシンプルに実現することができる。
【0023】
加えて、スピンドル14にスプリング15を保持するためのバネ受け突起部14gを設け、ハンマ16のバネ受け突起部14gと対向する位置を窪み16aのバネ受け逃げ部16bにより凹ませた。この構成により、スプリング15を充分に保持することができ、スプリング15とバネ受け突起部14gの干渉を防止してこれらを保護することができる。
又、モータ10のロータ軸30を保持可能な軸受36を設け、軸受36を保持し、ハンマケース22に保持される軸受保持壁としてのベアリングリテーナ24を設け、モータハウジング20に第1の凸部としての内方突出リブ20dを設け、ベアリングリテーナ24に第2の凸部としての外方突出リブ24cを設け、内方突出リブ20dの後方に外方突出リブ24cを配置し、外方突出リブ24cを、ベアリングリテーナ24の後部であって、軸受36の径方向外側に配置した。この構成により、外方突出リブ24cの後方に軸受36を配置する場合に比べてベアリングリテーナ24の前後長さを短縮化でき、もって本体部4の前後長さの短縮化を図ることができる。又、内方突出リブ20dに接触する外方突出リブ24cは依然として設けられるため、本体部4の前後長さを短縮化しても強度を維持することができる。
更に、遊星歯車44と噛み合う内歯ギヤ42を設け、内歯ギヤ42を、ハンマケース22と前方側で突き当たるように構成し、ベアリングリテーナ24に、内歯ギヤ42を回転不能に設け、内歯ギヤ42におけるハンマ16と対向する位置を凹ませた(内歯ギヤ42に凹部42cを設けた)。この構成により、ハンマ16につき、内歯ギヤ42に干渉することなく、前後方向において内歯ギヤ42とオーバーラップする位置(ハンマ16後端部が内歯ギヤ42の前部42b内側に入る位置)まで移動可能とすることができ、内歯ギヤ42に凹部42cを設けない場合と比べ、ハンマ16の移動距離を維持しながら内歯ギヤ42とハンマ16の前後間隔を狭めることができ、その分本体部4の前後長さを短縮化できる。
又更に、ハンマケース22の前部に、アンビル18を保持するための軸受60を配置し、アンビル18とハンマケース22の間にアンビルワッシャ62を配置し、ハンマケース22からアンビル18側に延びるように突起部としてのワッシャ保持部22bを設け、ワッシャ保持部22bをアンビルワッシャ62の内径側に配置した。この構成により、軸受60に突起部を設けなくてもアンビルワッシャ62を取り付けることができ、ワッシャ保持部22bの取り付け長さ(圧入長さ)を十分に確保しながら軸受60の前後長さを短縮化でき、もって本体部4の前後長さを短縮化できる。
加えて、ベアリングリテーナ24の外方突出リブ24cの内部に凹み部49a,49a・・を設けた。この構成によって、ハンマ16の前後動や回転により誘起され、ベアリングリテーナ24から受ける、径方向への回転衝撃や軸方向への軸衝撃を、効果的に緩衝することができる。
【0024】
尚、モータハウジング20は、後面となる後モータハウジング20cを含んでおり、後モータハウジング20cを他のモータハウジング20の部分(後部以外の部分)に対して独立させている。この構成により、モータハウジング20の内部空間の大きさを維持しながらモータハウジング20の後方への膨出を抑制することができ、本体部4の前後長さを短くすることができる。
又、ファン32を、径方向内側がその外側に対して前方に膨出した形状とし、ファン32に隣接する軸受34を、ファン32の膨出部32aの内側に入るように配置した。この構成により、平坦なファン32の後に軸受34を配置する場合に比べて軸受34をファン32に近付けることができ、もって本体部4の前後長さが短縮化される。
加えて、スピンドル穴14eの径を、ロータ軸30の軸受36の外径より大きくする。この構成により、スピンドル14や前後長さの短いベアリングリテーナ24の組み付け後においても、スピンドル穴14eのスペースを適宜利用することで軸受36付きのモータ10を組み付けることができ、本体部4の前後長さの短いインパクトドライバ1を容易に組み立てることができる。
又、特に
図4や
図5に示すように、左モータハウジング20aにはネジボス20fが設けられており、右モータハウジング20bにもネジボス20fが設けられている。各ネジボス20fは、前後方向に延びている。この2個のネジボス20f,20fに対して、合計2本のネジ3,3によって、後モータハウジング20cが固定されるようになっており、本体部4における前後方向の長さが短縮化される。更に、2本のネジ3,3に挟まれるように、軸受34,ファン32,後絶縁部材13,固定子鉄心9,ロータ軸30,永久磁石25が配置されており、このような構成によっても、本体部4における前後方向の長さを短縮化することができる。
【0025】
そして、これらの構成の適宜選択のうえでの採用により、モータ10と、モータ10を収容するモータハウジング20と、モータハウジング20と一体的に設けられるグリップハウジング26と、モータハウジング20の前方に配置されるハンマケース22と、モータ10により回転されるスピンドル14と、ハンマケース22の内部に収容され、スピンドル14により回転されるハンマ16と、ハンマケース22の内部に収容され、ハンマ16により打撃されるアンビル18と、を有するインパクトドライバ1であって、モータハウジング20の後端からアンビル18の前端までの長さ(本体部4の前後長さ)を、128(あるいは125,120)mm以下としたインパクトドライバ1を構成することができる。尚、本体部4の前後長さの実用的な下限は、115mm(あるいは110mm)である。
【0026】
又、本体部4の前後長さが短縮化されることにより、グリップハウジング26の上下長さが短くても本体部4を充分に支えることが可能となる。よって、グリップハウジング26の下方にバッテリ28が保持されたインパクトドライバ1にあって、バッテリ28の下端からモータハウジング20の上端までの長さを300(あるいは250,235)mm以下として構成することができる。尚、実用的な当該長さの下限は、230mm(あるいは200mm)である。
更に、インパクトドライバ1の重さ(バッテリを含む)は、好ましくは、2.0kg(キログラム)以下、更に好ましくは1.5kg以下、あるいは1.4kg以下に構成することが可能である。
又、このようなインパクトドライバ1では、少なくとも150Nm(ニュートンメートル)のトルクを出力可能であり、より好ましくは160Nm以上のトルクを出力可能としても良く、170Nm以上のトルクを出力可能に構成することも可能である。
尚、バッテリ28の後面よりも前方側に、電池取り付け部26cの後端及びモータハウジング20の後端が配置されている。又、電池取り付け部26cの後端よりも前方側に、モータハウジング20の後端が配置されている。よって、電池取り付け部26cの後端や、モータハウジング20の後端が、作業の邪魔になり難いように構成されている。
【0027】
このように、インパクトドライバ1の前後や上下の長さが短縮化されると、狭い場所等における衝突の発生や無理な姿勢での作業の可能性が低減された、取扱い易いインパクトドライバ1の提供が可能となる。
【0028】
尚、本発明は上記形態に限定されず、例えば次のような変更を適宜施すことができる。
遊星歯車機構とスピンドルの係合に関し、ピン小径部のピン孔への挿入に代えて、あるいはこれと共に、小突起の小孔への挿入や、爪同士の係止等とする。又、底のないピン孔に代えて、有底のピン穴とすることもできる。
スピンドルのバネ受けに関し、コイルスプリングの外径側が支持されることで保持されるものに代えて、コイルスプリングの内径側を保持されるものとしたり、コイルスプリングの外径側あるいは内径側に圧入されることで保持されるものとしたり、ネジを用いてコイルスプリングがスピンドルに螺着されることで保持されるものとしたり、コイルスプリングとスピンドルが溶接されることで保持されるものとしたり、これらの組合せとしたりする。
ハンマのバネ受け逃げ部を、後方への拡径形状以外の形状により形成する。
軸受保持壁としてのベアリングリテーナにおいて外歯ギヤを保持せず、外歯ギヤは別のハウジングで保持するようにする。
アンビルワッシャの取り付けにつき、圧入に代えて、爪とその係止部による係合や、溶接等とする。
実施例においては、電池取り付け部の内部に配置される回路基板上に6個のスイッチング素子を配置する構成とした。しかし、センサ基板上に6個のスイッチング素子を配置する構成とすることも可能である。又、ファンは、前絶縁部材よりも前方に配置し、センサ基板は、後絶縁部材の後方に配置させた状態で、後絶縁部材にネジ止めすることも可能である。
バッテリは、18V(最大20V),18V,25.2V,28V,36V等の18〜36Vの任意のリチウムイオンバッテリを用いても良いし、14.4V未満あるいは36Vを超える電圧のリチウムイオンバッテリを用いても良いし、他の種類のバッテリを用いても良い。
ロータアッセンブリにおける永久磁石及びセンサ用永久磁石は、一体で構成することにより、4個の板状の永久磁石にすることも可能である。
ハンマケースに代えてギアケースを採用し、ハンマ及びアンビルを省略して、更に例えば2段階の遊星歯車機構等の減速機構部を配置して、減速機構部の出力軸をギヤケースから前方へ突出させて、先端工具を保持する先端工具保持部を出力軸の前部に固定することにより、充電式のドライバドリル又は振動ドライバドリルとすることも可能である。
ハウジングの区分の数や外歯ギヤの設置数を増減したり、バネ受け突起部の位置をより内側にしたり、スイッチレバーのスイッチの形式を変更したりする等、各種部材の数や配置、材質、大きさ、形式等を適宜変更することができる。