特許第6249590号(P6249590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249590
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】軽量構造を有する基板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20171211BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20171211BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20171211BHJP
   G02B 7/182 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G02B5/08 A
   C03C15/00 D
   C03C19/00 A
   C03C19/00 Z
   G02B7/182
【請求項の数】31
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-8774(P2012-8774)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2012-162449(P2012-162449A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】10 2011 008 953.5
(32)【優先日】2011年1月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ザイベルト
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】ドクター.トーマス ヴェスターホフ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ライター
(72)【発明者】
【氏名】ドクター.ラルフ イェダムツィク
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−276429(JP,A)
【文献】 特開昭59−181302(JP,A)
【文献】 特開2010−049257(JP,A)
【文献】 特開2003−185811(JP,A)
【文献】 特開2009−212155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08
G02B 7/182
C03C 15/00
C03C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に凹部を有して、軽量構造を形成する、ミラー又はミラー支持体用のモノリシック基板であって、
前記凹部の範囲が網状構造によって定められ、かつそのように規定されたポケットの大部分が多角形状を有し、1つ又は複数の円環又は楕円環が前記基板の中心の周囲に配置され、内側及び外側の円軌道又は内側及び外側の楕円軌道によって、これらの各々の範囲がそれぞれ定められ、前記網状構造は前記軌道の一部を示し、前記基板は前記凹部の面に対向する前記基板の面に反射面を有し又は該基板の面に取り付け可能なミラーを有し、前記網状構造は前記基板の高さの70%より大きい高さを有することを特徴とする、ミラー又はミラー支持体用のモノリシック基板。
【請求項2】
ミラー又はミラー支持体として形成される、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記基板が、極めて小さい膨張係数を有する材料又はゼロ膨張材料を含み、かつ、該材料の膨張係数が、0℃〜50℃の温度範囲で、4×10−6−1未満である、請求項1又は2に記載の基板。
【請求項4】
ガラス又はガラスセラミック、セラミック、金属又は軽金属、特に、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス又はLASガラスセラミックの群から選択される材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板。
【請求項5】
前記凹部及び/又はポケットが、前記基板の片側に配置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板。
【請求項6】
前記多角形ポケットが、幾何学的に多角形の形状を有する形状を有し、これらの多角形の大部分の範囲が4つの角及び4つの辺によって規定され、これらの辺が同じ又は異なる長さを有していてもよく、これらの辺が、直線、円弧、又は閉じた卵形曲線の幾何学的形態を有し得る、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板。
【請求項7】
前記凹部が、中実材料に比べて、少なくとも70%より多く、前記基板の重量を低減させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板。
【請求項8】
前記凹部の範囲を定める前記網状構造が、0.5mm〜10mmの範囲の壁厚を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板。
【請求項9】
前記網状構造が種々の壁厚を有し、異なる網状構造が異なる壁厚を有し、かつ/又は単一の網状構造がその端部で異なる壁厚を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基板。
【請求項10】
支持点用に、凹部、ポケット、開口部又は穿孔を更に含み得る、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板。
【請求項11】
前記支持点の帯域における前記ポケットが、多角形状と異なる形状を有し得る、請求項10に記載の基板。
【請求項12】
前記支持点の領域ではない或る特定の領域に、薄肉部を有する、請求項10又は11に記載の基板。
【請求項13】
前記基板の表面及び/又は裏面が、凹形状、凸形状又は、放物面形状を有し得る、請求項1〜12のいずれか一項に記載の基板。
【請求項14】
柱形状、円柱形状、楕円形状、矩形形状、六角形状又は八角形状の形態を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の基板。
【請求項15】
50mmより大きい半径を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の基板。
【請求項16】
5mm〜500mmの高さを有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の基板。
【請求項17】
異なる環が同じ又は異なる壁厚を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の基板。
【請求項18】
2個〜20個の環を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の基板。
【請求項19】
複数の環が設けられる場合、より大きな壁厚を有する環が中心付近に配置され、より小さい壁厚を有する環が前記基板の外側部分に配置される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の基板。
【請求項20】
環が指定数のポケットを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の基板。
【請求項21】
前記ポケットが規則的配置を形成する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の基板。
【請求項22】
中央開口部を有する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の基板。
【請求項23】
前記基板の一次固有振動数が、100Hzより大きい、請求項1〜22のいずれか一項に記載の基板。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の基板を備える、ミラー。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の基板を備える、ミラー支持体。
【請求項26】
請求項24又は25に記載のミラー又はミラー支持体を備える、衛星。
【請求項27】
ミラーと請求項1〜23のいずれか一項に記載の基板とを備える、精密工作機械。
【請求項28】
ミラーと請求項1〜23のいずれか一項に記載の基板とを備える、座標測定機。
【請求項29】
概ね矩形のポケットを形成する凹部を片側に有する基板を、ガラス又はガラスセラミックから製造する方法であって、
ガラス又はガラスセラミックのプレートを準備する工程と、
凹部及び支持点を形成して前記プレートの裏面とする工程と、
を含み、
前記凹部の範囲が網状構造によって定められ、1つ又は複数の円環又は楕円環が前記基板の中心の周囲に配置され、内側及び外側の円軌道又は内側及び外側の楕円軌道によって、これらの各々の範囲が定められ、前記網状構造は前記軌道の一部を示し、前記基板は前記凹部の面に対向する前記基板の面に反射面を有し又は該基板の面に取り付け可能なミラーを有し、前記網状構造は前記基板の高さの70%より大きい高さを有する、基板を製造する方法。
【請求項30】
前記ガラス又はガラスセラミックのプレートの材料の少なくとも70%より多くを除去する、請求項29に記載の基板を製造する方法。
【請求項31】
前記凹部が、幾何学的に規定されていない切削刃を用いた機械加工、研削若しくはラッピング、及び/又は浸食製作プロセス、とりわけ、フッ化水素酸含有エッチング剤を用いたエッチング等の化学的プロセスによって作製される、請求項29に記載の基板を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはガラス又はガラスセラミックからなる、軽量構造を有するモノリシック基板に関し、また該基板を製造する方法に関する。その軽量構造に起因して、基板の重量が大幅に低減され得ると同時に、高い剛性が確保され得る。基板は好ましくは、ミラー又はミラー支持体として使用され、地球上及び/又は地球外で利用することができる。
【背景技術】
【0002】
熱膨張係数の小さい大型基板は、天文分野において、とりわけ大型ミラー望遠鏡に頻繁に利用されている。このような基板は多くの場合、ミラー等の光学素子を取り付けるためのミラー支持体として使用されるか、又は更には、適切な更なるプロセス処理工程後にミラーとして直接使用される。
【0003】
利用される基板は、例えば、円形、楕円形、六角形、又は更にはハニカム形状の外面形状を有する。基板は、約1000mm以上の直径を有し得る。高性能ミラー望遠鏡から、約6000mm以上の直径を有するミラー支持体が更に知られている。
【0004】
光学素子として使用される場合、基板は、高い剛性を有し、それゆえ、変形傾向又は幾何学的形状の変化傾向がごく低く、望ましくない光学作用が防止され、例えば、歪みが回避されることが重要である。
【0005】
幾何学的変化は、衛星における地球外環境、又は更には、昼夜の大きな温度変化を受ける地球上環境において起こり得る強くかつ/又は急速な温度の変動によって生じるおそれがある。
【0006】
この理由から、基板は多くの場合、ガラス又はガラスセラミックを含み、ガラスセラミックの場合、極めて小さい熱膨張係数を特徴とするいわゆるゼロ膨張材料を含み得る。このように、温度変化によって生じる基板の変形又はその幾何学的形状の変化を大幅になくすことが可能である。
【0007】
その上、たるみ(sagging)等の幾何学的形状の関連する変化が、基板の重い適切な重量に起因して更に起こるおそれがある。この理由から、基板の重量の低減が多くの場合望まれる。
【0008】
また、重量の低減は、より簡便かつより安い輸送の理由から、とりわけ地球外用途の場合に意図される必要がある。加えて、ミラー又はミラー支持体がより小さい重量を有する場合には、作動力又は再調整力が動かすべき基板の質量に直接相関するため、その調整が簡単になる。
【0009】
したがって、いわゆる軽量構造を有する基板が、開発されてきた。重量を低減するために、何らかの処理を施すことによって基板の体積の一部を除去する。この処理は多くの場合、基板の裏面で実行される。これにより、高い剛性を確保することができる適切な構造を形成することが可能となる。
【0010】
例えば、ハニカム構造又は管状構造の網状構造をもたらす、基板の裏面上の凹部が知られている。例えば、特許文献1が、剛性の増強のために凹部が基板の裏面に配置され、かつ支持領域における凹部にカバーが設けられている、軽量構造を有するミラー支持体を記載している。ここで、カバーは、凹部の形状を有していてもよく、凹部上又は凹部内に接着されていてもよい。
【0011】
特許文献1に示される実施形態により、重量の大幅な低減が達成され得ることが見出された。しかしながら、カバーの作製及び基板へのその接合が、更なるコストをもたらす。
【0012】
他の既知の軽量構造は多くの場合、複合材料からなり、更なる支持要素が利用される。
【0013】
例えば、特許文献2は、平行に配置される管状スペーサによって連結される、ミラー要素と支持要素とを含む、ゼロ膨張材料からなる複合構造物を示しており、この結合には接着剤が使用されている。
【0014】
特許文献3は、焼結セラミックストラットからなるハニカム形状支持構造が使用される材料の複合構造物を示している。
【0015】
異なる膨張係数は、材料中に局部応力をもたらす場合があり、これにより損傷が起きるおそれがあるため、種々の材料の使用は一般に好ましくない。その上、プロセス処理、及び接着剤等による幾つかの構成要素のその後の接合が、更なるコストを示唆する。接着剤又はグルーを使用する場合、とりわけ地球外用途における、長期間の安定性に注意を払わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009005400号
【特許文献2】国際公開第2006/034775号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0395257号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、一方で付加的な部材又は支持要素、例えば、スペーサ、ストラット、カバー等の組込みを排除し、他方で動的応力及び静的応力に対する略等価な機械的安定性を示す、基板用の軽量構造を提供することである。
【0018】
とりわけ、基板の撓みが確実に小さくなるとされる。同時に、軽量構造によって少なくとも約50%の重量の低減が達成されると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くほど単純なことに、本目的は、基板の少なくとも片側、好ましくは裏面に実質的に四角形又は四つ角を有する形状の(four-corner-shaped)軽量構造を設けることによって解決される。
【0020】
本発明は、好ましくは、極めて小さい膨張係数を有する材料又はゼロ膨張材料を含む基板に更に関する。好ましくは、利用される基板の熱膨張係数は、例えばホウケイ酸ガラスの場合、0℃〜50℃の温度範囲で、4×10−6−1未満の範囲である。
【0021】
より好ましくは、利用される材料の熱膨張係数は、例えば石英ガラスの場合、0℃〜50℃の温度範囲で、1×10−6−1未満の範囲である。
【0022】
最も好ましくは、利用される材料の熱膨張係数は、例えばガラスセラミックの場合、0℃〜50℃の温度範囲で、0.10×10−6−1未満の範囲である。
【0023】
また、最大2.7ケルビンの範囲の温度を有する地球外環境における使用に好適な材料が特に好ましい。
【0024】
特に、酸化リチウム、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素の主成分を有するLAS系のガラスセラミックが、本発明による基板に理想的な材料を構成し得る。このような材料を含む基板は、望遠鏡におけるミラー又はミラー支持体としての使用に非常に良く適する。
【0025】
本発明の意味において、基板がモノリシックブロックからなる場合、静的負荷及び動的負荷の下での機械的安定性の面において利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による基板10の一実施形態の裏面の概略図である。
図2】基板20がセンターホール21を有する特定の実施形態を示す図である。
図3】凹部が設けられる基板の裏面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
少なくとも片側、好ましくは裏面に、基板が、凹部及び1つ又は複数の支持点(bearing point)を有する。本発明に関して、支持点とは、支持手段又は固定手段に適合するのに好適な基板領域を指す。
【0028】
故に、支持点は、例えば柱(cylindrical)形状を有し得る、凹部、又は孔等のスルーホールであり得る。このように、基板は、好適な保持手段を用いて固定することができる。
【0029】
具体的な実施形態では、個々の支持点をグループ化して、いわゆる主要支持点としている。典型的な実施形態では、例えば3つの主要支持点が存在し、これらの各主要支持点が、3つの支持点から更に形成され得る。
【0030】
裏面の凹部に起因して、凹部の範囲を定めかつ軽量構造として機能する網状構造が形成される。既知のハニカム形状構造と比較して、凹部の実質的に四角形又は四つ角を有する形状の構造が、動的応力に対する剛性を有意に増大させることができることが見出された。
【0031】
本発明の意味において、軽量構造は、凹部の範囲が網状構造によって定められること、及びこの範囲の決定が多角形状を幾何学的に規定し、これらの多角形の大部分が4つの辺及び4つの角によって規定されることを意味する。しかしながら、これは、4つの辺が直線の幾何学的形態にあることを必ずしも示唆するものではない。むしろ、これらの辺は、円軌道又は任意の他の閉じた卵形曲線、例えば楕円軌道の一部を表していてもよく、これは基板の形状にとって有益である。
【0032】
例えば、柱状対称性の基板の場合、多角形の2つの対辺が、基板の半径に平行に、すなわち放射状に広がり得るのに対し、2つの他の対辺は、基板の中心を軸とした円軌道に沿って広がり得る。このような多角形は、本発明の意味において、凹部の四角形又は四つ角を有する形状の構造を形成する。この構造は、半台形(semi-trapezoidal)構造又は放射状の四つ角を有する構造と記載することができる。例えば、楕円形基板の場合、凹部の2つの対辺が、楕円軌道の一部を表し得る。
【0033】
非常に多くの凹部が、上記のように、多角形状、好ましくは四角形又は四つ角を有する形状の軽量構造を形成する。これは、これらの凹部の60%より多く、好ましくは80%より多くが、このような形状を有することを意味する。
【0034】
加えて、四つ角を有する形状と異なる形状をとる、凹部の他の幾何学的形状が本発明により可能であり、これは、特に基板が支持点又は主要支持点を有する場合に好適であることが判明した。例えば、これらの支持点又は主要支持点と隣接する凹部が、四つ角を有する形状と異なる幾何学的形態をとり得る。
【0035】
驚くべきことに、凹部のおかげで、既知のハニカム形状構造のものと略等価な重量の低減が達成され得る。本発明に関して、重量の低減は、本発明による凹部が設けられていない同様の外部幾何学的形状のモノリシックブロックと比較した、本発明による凹部が設けられている処理基板の重量のパーセンテージ変化を意味する。
【0036】
未処理基板、すなわちモノリシックブロックは、例えば、柱形状、円柱形状(circular cylindrical)、楕円形状、矩形形状、六角形状又は八角形状、好ましくはディスク又は支柱の形態を含む。本発明による軽量構造は、直角柱、例えば、楕円形の底面及び上面を有する直角柱の形態、又は直角円柱の形態、又は柱状対称形状のより大きな基板に特に有用である。
【0037】
基板は通常、約50mm以上の範囲の半径、又は楕円形の底面及び上面の場合、長半径長さを有する。基板の高さは、例えば、5mm〜500mmの範囲をとり得る。
【0038】
凹部は一般にポケットを指していてもよく、様々な方法で作製することができる。例として、幾何学的に規定されていない切削刃(geometrically undefined edges)を用いた材料の除去、例えば研削若しくはラッピング、又は他の既知の研磨製造プロセス、並びにエッチング等の化学的プロセスが、言及され得る。
【0039】
ガラス又はガラスセラミック等の基板材料の場合、機械的処理に続く、フッ化水素酸含有エッチング剤を用いたエッチングが、強度を増大させるのに有益であり得る。
【0040】
本発明による凹部のおかげで、約70%より多く、好ましくは80%より多く、最も好ましくは85%より多くの重量の低減を達成することができる。
【0041】
凹部によって形成されるポケットは、網状構造、好ましくは各ポケットにつき4つの網状構造によって囲まれている。網状構造は、0.5mm〜10mmの範囲の壁厚を有していてもよいが、1mm〜5mmの範囲の壁厚が好ましい。
【0042】
網状構造の高さは基板の高さに依存する。網状構造の占める高さは、基板の高さの50%より大きく、好ましくは70%より大きく、最も好ましくは80%より大きいことが見出された。網状構造が基板の高さの90%より大きい範囲の高さを有し得る軽量構造が、極めて高い剛度(stiffness)を伴って作製され得ることが、更に見出された。2つの網状構造間及び網状構造と基板の残りの領域との間の移行部は通常、プロセス処理による丸み(processing radii)を含む。
【0043】
柱状対称性の基板の場合、等しい長さのポケットの2つの対向する網状構造が、放射状に広がるのに対し、同様に互いに対向する2つの他の網状構造の各々は、中心を軸としたそれぞれの円軌道の一部を形成する。よって、これらの網状構造が円軌道に沿って延在するため、それらはわずかに湾曲している。
【0044】
柱状対称性の基板では、異なる直径の2つの円軌道が、内側及び外側の境界帯域を有する輪状又は円形の環を形成し得る。1つの円環において、等しい長さの放射状に広がる網状構造が、ポケットの側面境界を形成し得る。よって、複数の等しいサイズのポケットが、円環領域にわたって、対称的に配置される。円環の壁厚は、等しい長さの対向する網状構造の大きさ(length)に略対応する。
【0045】
同様に、楕円形基板の場合、同じ中心を有する2つの楕円軌道が、楕円環を形成することにより、内側及び外側の境界帯域が形成され得る。この幾何学的配置では、本発明による四角形又は四つ角を有する形状のポケットが同様に、楕円環内に配置され得る。一方で楕円環の内側及び外側各々の楕円軌道によって、また他方では環の内側及び外側の範囲を定める線の間に延在する直線形態の網状構造によって、ポケットの範囲が定められる。ポケットの網状構造は異なる長さを有していてもよい。
【0046】
支持点又は主要支持点の領域において、ポケットの形態が、四つ角を有する形状と異なっていてもよい。この配置は、例えば、支持点を囲む凹部がこれらの支持点の凹部と直接隣接する場合に、有益である。
【0047】
また、基板は、例えば、同様に四つ角を有する形状と異なるような、円形対称形態又は楕円形態を有し得る、中心に置かれた凹部又は中央凹部を有していてもよい。
【0048】
円環又は楕円環の異なる壁厚が、動的応力の下で高い安定性を確保するのに特に適することが、見出された。特に好適な配置では、中心から離れた領域における壁厚が、中心近傍におけるものよりも小さい。
【0049】
中心から外側に見た場合に、壁厚を変化させることも可能である。例えば、有益な実施形態では、より大きな壁厚を有する内環が中心近くに配置され、次により小さな壁厚を有する別の環、次に再びより大きな壁厚を有する円環、更に外向きに、壁厚が順に小さくなってゆく複数の円環が配置されることが、見出された。
【0050】
概して、このように、種々の壁厚を有する複数の円環が、互いに隣接して配置され得る。ここで、円環の数は、支持点の数及び位置、並びに基板の半径又はサイズに依存する。
【0051】
例えば、3つの主要支持点、及び50mm〜1500mmの範囲の半径を有する柱状対称性の基板は、種々の壁厚の2個〜20個の数の円環、好ましくは3個〜15個の数の円環、より好ましくは5個〜10個の数の円環を有することが有益であることが、見出された。
【0052】
1つの円環内のポケットの数が様々な値をとるものであってもよい。例えば、中心に近い円環よりも、中心から離れた円環に、より多くのポケットが設けられ得る。
【0053】
中心に近い円環には、4個〜40個の数のポケット、好ましくは6個〜30個の数のポケット、より好ましくは8個〜20個の数のポケット、中心から離れた円環には、10個〜100個の数のポケット、好ましくは14個〜90個の数のポケット、より好ましくは18個〜80個の数のポケットを有することが、極めて高い静的剛性及び動的剛性をもたらすことが、見出された。
【0054】
3つという主要支持点の数が有利であることが見出されており、これらの支持点は、基板の中心を軸とする共通する輪状線上に設けられ、相互に等間隔で配置されている。この輪状線が半径の外側半分に存在していることが好ましい。
【0055】
特定の実施形態では、基板が中央開口部を更に有する。この開口部の面積は、基板の全面積の50%までを占めていてもよい。
【0056】
別の特定の実施形態では、基板が、或る特定の領域において更に薄肉化され、この薄肉化は好ましくは裏面で達成される。薄肉化を行う領域は、支持点間にあることが好ましい。薄肉部(thinnings)は、例えば、薄肉部の中心を軸としてローカル座標系を配置し、薄肉部の除去に関する二次試行関数によって決定することができる。
【0057】
更なる厚みの低減を補償するために、厚みが低減される領域では網状構造の壁厚を厚くすることができる。すなわち、これらの領域における網状構造の壁厚が、薄肉化されていない領域における壁厚よりも厚くなる。
【0058】
異なる網状構造の壁厚が異なり得るだけでなく、単一の網状構造の壁厚も様々な値をとり得る。これは、支持点領域及び基板の辺縁領域において特に有益であり、例えば、支持点に近い網状構造部分が、遠端の網状構造よりも大きな壁厚を有する。
【0059】
本発明の変更形態では、基板の裏面、すなわち凹部の底部が、凸状又は放物面の形態を有する。これにより、基板の剛性の更なる増大が可能となる。
【0060】
同様に、凹部のない基板の表面が、凸状又は凹状の形態を有し得るため、網状構造は異なる高さを有すると考えられる。
【0061】
本発明の別の好ましい実施形態では、基板が100Hzより大きい固有振動数のみを有するように、基板の形状が計算される。これは、ミサイルの発射により低励起振動数が生じ、これにより更に基板の劣化がもたらされるおそれがあるため、地球外用途にとりわけ有益である。
【0062】
例として、本発明による軽量構造に基づき、ゼロ熱膨張を有するガラスセラミック材料の柱状対称性の基板を作製した。該基板は約600mmの半径を有し、約90%の重量の低減が達成され得る。この場合、約200mmの基板高さを用いて、1.1μmの最大変形及び10mm未満の範囲の単一のポケットの撓みが計算された。
【0063】
このような基板の固有振動数は、例えば、約311Hzの一次固有振動数及び約716Hzの二次固有振動数を伴う、300Hzより大きい範囲であり得る。
【0064】
更なる構成要素又は支持要素の適用は完全に省くことができる。その上、支持要素と基板との間の接合部を作製するための他の材料、例えば接着剤の使用を、回避することができる。
【0065】
本発明は、本発明による基板を備え、かつ凹部を設けた面と反対側の面に反射面を有するミラーに関する。このミラーは好ましくは直角柱の形態である。それは例えば、放物凹面ミラーとして形成され得る。
【0066】
さらに、本発明は、上記の基板を備え、かつ片側、好ましくは凹部が設けられていない面にミラーが取り付けられ得るミラー支持体に関する。
【0067】
さらに、本発明は、このようなミラー又はミラー支持体を備える衛星に関する。
【0068】
加えて、本発明はまた、天文分野を超える使用に関する。例えば、本発明はまた、半導体技術分野、例えば、軽量構造を有する本発明による基板を備えるリソグラフィ機器等に関連する。
【0069】
本発明はまた、工作機械工学、例えば、かかる基板を備えかつ幾何学的形状及び撓みのわずかな変化に関する極めて高い要件が課される精密工作機械等に関する。
【0070】
さらに、本発明はまた、高精度測定のための装置又は機械、例えば座標測定機に関する。
【実施例】
【0071】
ここで、好ましい実施形態に基づき、添付の図1図3を参照して、本発明を更に詳細に説明する。
【0072】
図1は、本発明による基板10の一実施形態の裏面の概略図である。この実施形態では、基板が柱状対称形態であり、約600mmの半径及び200mmの高さを有する。
【0073】
基板の裏面は、支持点、及び複数の四角形又は四つ角を有する形状のポケットを有する。具体的に、基板は、中央円形凹部15、及び同様に円形状を有する合計で3つの主要支持点11を有する。
【0074】
中央凹部を起点として、各々が特定数のポケット13を有する全部で6つの円環14が示される。例えば、最も外側の円環は合計で30個のポケットを有し、中央凹部に最も近い円環は合計で15個のポケットを有する。
【0075】
基板の表面(図示せず)は、平坦、凹状又は凸状であってもよく、反射面を有していてもよい。
【0076】
図2は、基板20がセンターホール21を有する特定の実施形態を示す。この例示的な実施形態では、センターホールが約160mmの半径を有する。
【0077】
図3は、凹部が設けられる基板の裏面の一部を示す。本発明の意味において、四角形又は四つ角を有する形状のポケット13は、等しい長さの2つの対向する網状構造30及び31、並びに同様に互いに対向する2つの網状構造32及び33によって、形成される。ここでは、2つの網状構造32及び33の各々が円軌道の一部を表す。
【0078】
網状構造は、1mm〜5mmで変化する壁厚を有する。表面の壁厚、すなわち凹部を有しない基板部分の厚みは、約8mmである。この場合、重量の低減は90%である。
図1
図2
図3