特許第6249597号(P6249597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6249597-全回転チュービング装置用油圧ユニット 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249597
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】全回転チュービング装置用油圧ユニット
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20171211BHJP
   F15B 21/04 20060101ALI20171211BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20171211BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   E02F9/22 Z
   F15B21/04 A
   E02F9/00 M
   E02F9/22 R
   E02F9/26 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-266988(P2012-266988)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-114545(P2014-114545A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】栗本 真司
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−160373(JP,A)
【文献】 特開平10−008491(JP,A)
【文献】 特開2006−144292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42−3/43,3/84−3/85,9/00−9/18,9/20−9/22、9/24−9/28
F15B 20/00−21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで可変容量油圧ポンプを駆動し、該可変容量油圧ポンプで昇圧した作動油を、ケーシングチューブを回転させながら圧入する全回転チュービング装置に設けられた油圧アクチュエータの駆動源として供給する油圧ユニットにおいて、
該油圧ユニットを制御する油圧ユニット制御器は、
前記エンジンの冷却水の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出温度があらかじめ設定された第1設定温度以上になったときに、前記エンジンの負荷を軽減する低負荷運転を行うよう促す第1温度上昇警報を発令する第1警報発生手段と、
前記温度検出手段の検出温度が、前記第1設定温度より高い温度に設定された第2設定温度以上になったときに、前記第1温度上昇警報より強い警報である、前記ケーシングチューブの回転が停止しないように前記可変容量油圧ポンプの吐出圧力を変えずに吐出量を最小流量まで低減して前記エンジンの負荷を軽減する低負荷運転を行うよう促す第2温度上昇警報を発令する第2警報発生手段とを備え、
前記第2温度上昇警報が発令される前に、必ず前記第1温度上昇警報が発令される
ことを特徴とする全回転チュービング装置用油圧ユニット。
【請求項2】
前記作動油の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出温度があらかじめ設定された作動油の設定温度以上になったときに作動油の温度上昇警報を発令する警報発生手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の全回転チュービング装置用油圧ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンで油圧ポンプを駆動して昇圧した作動油(圧油)を全回転チュービング装置の駆動源として供給するのに適した油圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場で使用される各種作業装置、例えば、走行手段を備えたクレーンや杭打機、パワーショベル(油圧ショベル)などは、油圧モータや油圧シリンダなどの油圧アクチュエータの駆動源として、エンジンで油圧ポンプを駆動する油圧ユニットを搭載しており、走行手段を持たない全回転チュービング装置などは、別に形成されたエンジン駆動式の油圧ユニットから油圧ホースを介して作動油の供給を受けるように形成されている。
【0003】
このような油圧ユニットにおける安全装置として、エンジン冷却水の温度や作動油の温度を監視し、これらの温度が上昇したときに、油圧ポンプの吐出量を低減することにより、エンジンのオーバーヒートを回避したり、油圧回路に設けられている各種機器を保護したりする安全装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−248666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載された安全装置は、該特許文献1に例示されているような油圧シリンダに作動油を供給する油圧ユニットには十分な効果を発揮することができ、また、クレーン用のウインチを作動させる油圧モータにおいても十分な効果を期待することができる。しかし、大口径のケーシングチューブを回転させながら圧入する全回転チュービング装置では、ケーシングチューブの回転抵抗や回転反力が大きく、さらに、ケーシングチューブの口径や圧入深度、地中の土砂の状態によって変化するため、エンジン冷却水の温度上昇によって単純に油圧ポンプの吐出量を低減すると、ケーシングチューブの回転を継続できなくなることがあった。
【0006】
特に、エンジンが高負荷によってオーバーヒートするような状況は、ケーシングチューブの回転抵抗が大きく、大量の作動油を油圧モータに連続供給してケーシングチューブを回転させている状況であるから、このような状況でケーシングチューブの回転が停止してしまうと、ケーシングチューブに地中の土砂が張り付いて回転抵抗がより大きくなり、再起動が非常に困難になるおそれがあった。また、作動油の温度が上昇すると、油圧ポンプなどに油膜切れが発生して運転を継続できなくなるおそれがあった。
【0007】
そこで本発明は、ケーシングチューブの回転圧入のような高負荷の運転を必要とする作業を、エンジンのオーバーヒートや作動油の温度上昇を効果的に防止して作業を安全に継続することができる制御機能を備えた全回転チュービング装置用油圧ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の全回転チュービング装置用油圧ユニットは、エンジンで可変容量油圧ポンプを駆動し、該可変容量油圧ポンプで昇圧した作動油を、ケーシングチューブを回転させながら圧入する全回転チュービング装置に設けられた油圧アクチュエータの駆動源として供給する油圧ユニットにおいて、該油圧ユニットを制御する油圧ユニット制御器は、前記エンジンの冷却水の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出温度があらかじめ設定された第1設定温度以上になったときに、前記エンジンの負荷を軽減する低負荷運転を行うよう促す第1温度上昇警報を発令する第1警報発生手段と、前記温度検出手段の検出温度が、前記第1設定温度より高い温度に設定された第2設定温度以上になったときに、前記第1温度上昇警報より強い警報である、前記ケーシングチューブの回転が停止しないように前記可変容量油圧ポンプの吐出圧力を変えずに吐出量を最小流量まで低減して前記エンジンの負荷を軽減する低負荷運転を行うよう促す第2温度上昇警報を発令する第2警報発生手段とを備え、前記第2温度上昇警報が発令される前に、必ず前記第1温度上昇警報が発令されることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の全回転チュービング装置用油圧ユニットは、前記作動油の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出温度があらかじめ設定された作動油の設定温度以上になったときに作動油の温度上昇警報を発令する警報発生手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油圧ユニットによれば、冷却水の温度が、第2設定温度に比べて低く設定された第1設定温度以上になったときに、第1温度上昇警報を発して温度上昇時に対応した運転を行うようにオペレータに促すので、オペレータが作動油供給先の状況を確認しながら可変容量油圧ポンプの吐出量を低減するなどの低負荷運転を行うことにより、エンジンの負荷を軽減させて冷却水の温度を低下させることができ、オーバーヒートによるエンジンの停止を回避して運転を継続することができる。
【0011】
また、第1温度上昇警報で低負荷運転を行っても冷却水や作動油の温度が上昇して第2設定温度以上になったときには、前記第1温度上昇警報とは異なる第2温度上昇警報を発令し、より低負荷となる運転を行うように強く促し、温度の上昇をより確実に抑えるようにすることで運転を継続できるようにする。これにより、ケーシングチューブを回転圧入する全回転チュービング装置のように、作業の中断が好ましくない用途に対して作動油を確実に連続して供給することができ、ケーシングチューブの圧入作業など等の施工を安全に継続して行うことができる。さらに、作動油の温度上昇を検出して警報を発令することにより、作動油温度の上昇による油膜切れの発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の全回転チュービング装置用油圧ユニットの一形態例を示す説明図である。
図2】運転時の冷却水及び作動油の温度上昇を監視する手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本形態例に示す全回転チュービング装置用油圧ユニットは、駆動源となるエンジン11と、該エンジン11により駆動される可変容量油圧ポンプ12と、該可変容量油圧ポンプ12で昇圧した作動油を、制御弁13やリリーフ弁14を介して油圧モータや油圧シリンダなどの油圧アクチュエータに供給する油圧回路15とを備えるとともに、前記エンジンを制御するエンジン制御器(エンジン作業機)16と、前記可変容量油圧ポンプ12や制御弁13などを制御する油圧ユニット制御器17とを備えている。
【0014】
また、エンジン11には、エンジン制御器16に冷却水の温度を表示するための水温センサ18が設けられるとともに、冷却水の温度に応じて油圧ユニット制御器17を作動させるための温度検出手段となる水温スイッチ19が設けられている。さらに、可変容量油圧ポンプ12の吐出経路12aには、昇圧された作動油の温度に応じて油圧ユニット制御器17を作動させるための温度検出手段となる油温スイッチ20が設けられている。
【0015】
油圧ユニット制御器17は、オペレータの操作によって可変容量油圧ポンプ12や制御弁13を制御し、圧力、流量及び方向を制御して油圧アクチュエータに作動油を供給する機能に加えて、前記水温スイッチ19及び油温スイッチ20からの信号によって運転時の冷却水及び作動油の温度上昇を監視し、冷却水や作動油の温度上昇によってエンジンなどが停止することを防止するための温度制御部を備えている。
【0016】
この温度制御部は、図2に示す手順で運転中の冷却水の温度や作動油の温度の監視(オーバーヒートの監視)を行い、冷却水や作動油の温度が上昇したときに所定の警報を発することでオペレータに温度上昇を告知し、低負荷運転を行うように促すことにより、冷却水や作動油の温度上昇によって油圧ユニットが停止することを防止する。
【0017】
まず、エンジンの冷却水の温度監視は、ステップ51からスタートし、ステップ52で水温スイッチ19で検出したエンジンの冷却水の温度が、冷却水の第1設定温度、例えば100℃以上に上昇したか否かを判断し、冷却水の温度が100℃以上に上昇していない場合は、最初のステップ51に戻ってそのまま作業を継続する。ステップ52で冷却水の温度が100℃以上に上昇したと判断したときは、ステップ53に進み、第1警報発生手段が作動して第1温度上昇警報、例えば、ブザーを鳴動させたり、警告ランプを点灯させたりしてオペレータに温度上昇警報を告知し、低負荷運転を行うように促す。第1温度上昇警報発令中は、ステップ54でオペレータが、油圧ユニットから作動油を供給している油圧アクチュエータ、例えば、全回転チュービング装置におけるケーシングチューブ回転圧入用の油圧モータの状態を確認し、可変容量油圧ポンプ12の吐出圧力を一定に保ったまま吐出量を低減してエンジンの負荷を軽減する低負荷運転を行い、油圧モータによるケーシングチューブの回転トルクを一定に保ったまま回転数を低くして作業を継続する。
【0018】
低負荷運転中は、第1温度上昇警報が継続しており、次のステップ55で冷却水の温度が100℃未満に低下したか否かを判断し、冷却水の温度が100℃未満に低下した場合には、第1温度上昇警報を停止して最初のステップ51に戻って通常の作業を再開する。冷却水の温度が100℃未満に低下していない場合は、ステップ55からステップ56に進み、エンジンコントローラで監視を行って水温センサ18で検出した冷却水の温度が第2設定温度、例えば105℃以上に上昇したか否かを判断する。冷却水の温度が105℃以上に上昇していない場合は、ステップ54に戻って前記低負荷運転を継続し、必要に応じて可変容量油圧ポンプ12の吐出量を更に低減する。
【0019】
ステップ56で冷却水の温度が105℃以上に上昇したと判断したときは、ステップ57に進んで第2警報発生手段を作動させる。前記第1温度上昇警報より強い警報である第2温度上昇警報を発令する。第1温度上昇警報より強い第2温度上昇警報は、例えば、黄色に対して赤色、ブザー音量の大小など、適宜な組み合わせを選択することができる。第2温度上昇警報が発令された場合、オペレータは、ケーシングチューブの回転状態を確認しながら、ケーシングチューブの回転が停止しない程度まで可変容量油圧ポンプ12の吐出圧力、すなわち出力トルクを低減し、エンジンの負荷を軽減する低負荷運転を行う。このステップ57における低負荷運転中も、前記ステップ54と同様に、ステップ55及びステップ56での冷却水の温度の判断を繰り返し行い、ステップ55で冷却水の温度が100℃未満に低下したと判断したときに、全ての警報を解除してステップ51に戻り、通常の作業状態に復帰する。
【0020】
このように、冷却水の温度上昇に応じて警報を発令し、オペレータに低負荷運転を行うように促し、オペレータが作業を中断しない程度に、可変容量油圧ポンプ12の吐出圧力や吐出流量を調節することにより、エンジンがオーバーヒートを起こして突然停止することがなくなり、作業を安全に継続することができる。
【0021】
また、作動油の温度監視は、ステップ61からスタートし、ステップ62で油温スイッチ20で検出した作動油の温度が、作動油の設定温度、例えば80℃以上に上昇したか否かを判断し、作動油の温度が80℃以上に上昇していない場合は、最初のステップ61に戻る。ステップ62で作動油の温度が80℃以上に上昇したと判断したときは、ステップ63に進み、前記冷却水の温度監視と同様の警報発生手段が作動して作動油の温度上昇警報を発令してオペレータに温度上昇警報を告知し、低負荷運転を行うように促す。この温度上昇警報発令中は、ステップ64でオペレータが、前記同様に、可変容量油圧ポンプ12の吐出圧力や吐出量を調節して低負荷運転を行い、作動油の流量を低減することによって作動油の温度低下を図る。このように、作動油の温度を監視し、温度が上昇したときに低負荷運転を行うようにすることにより、作動油の温度上昇による油膜切れなどの発生を未然に回避することができ、作業を安全に継続することができる。
【0022】
なお、図2の手順では、第2設定温度における判断をエンジンコントローラに設けられている水温センサを利用して行ったが、設定が異なる複数の水温スイッチを使用して判断基準にすることもできる。また、作動油の温度上昇を監視しない手順を採用することもできる。
【符号の説明】
【0023】
11…エンジン、12…可変容量油圧ポンプ、12a…吐出経路、13…制御弁、14…リリーフ弁、15…油圧回路、16…エンジン制御器、17…油圧ユニット制御器、18…水温センサ、19…水温スイッチ、20…油温スイッチ
図1
図2