特許第6249600号(P6249600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249600
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20171211BHJP
   H01H 85/046 20060101ALI20171211BHJP
   H01H 85/11 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01H37/76 F
   H01H37/76 Q
   H01H85/046
   H01H85/11
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-281452(P2012-281452)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2013-229293(P2013-229293A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-76928(P2012-76928)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−057139(JP,A)
【文献】 特開2011−060762(JP,A)
【文献】 特開2009−301964(JP,A)
【文献】 実開昭62−107341(JP,U)
【文献】 特開2012−003878(JP,A)
【文献】 実開昭58−122350(JP,U)
【文献】 特開2002−184282(JP,A)
【文献】 特開2004−185960(JP,A)
【文献】 特開2011−222264(JP,A)
【文献】 特開平09−219138(JP,A)
【文献】 特開平09−161635(JP,A)
【文献】 特開2010−170801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00−85/62
H01H 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された発熱体と、
少なくとも上記発熱体を覆うように、上記絶縁基板に積層された絶縁部材と、
上記絶縁部材が積層された上記絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、
上記発熱体と重畳するように上記絶縁部材の上に積層され、上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極上記第1及び第2の電極との間でまたいで上記絶縁部材と直接密着しないように積層され、加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、少なくとも高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体からなり、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項2】
上記高融点金属層はPb含有ハンダよりも高い熱伝導度である請求項1記載の保護素子。
【請求項3】
上記可溶導体の両端において、上記第1及び第2の電極に接続される部分にハンダの溜まり部を有する請求項1又は2記載の保護素子。
【請求項4】
リフロー炉によって基板実装される保護素子であって、
上記低融点金属層の融点は、上記リフロー炉の温度よりも低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項5】
上記低融点金属層は、Pbフリーハンダからなり、上記高融点金属層は、Ag若しくはCu又はAg若しくはCuを主成分とする金属からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項6】
上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極に接続される位置において、上記可溶導体は、低融点金属にて接続されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項7】
上記可溶導体は、内層が高融点金属層であり、外層が低融点金属層の被覆構造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項8】
上記低融点金属層は、少なくとも一部の上記高融点金属層を貫通するように形成されていることを特徴とする請求項記載の保護素子。
【請求項9】
上記可溶導体は、内層が低融点金属層であり、外層が高融点金属層の被覆構造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項10】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された発熱体と、
少なくとも上記発熱体を覆うように、上記絶縁基板に積層された絶縁部材と、
上記絶縁部材が積層された上記絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、
上記発熱体と重畳するように上記絶縁部材の上に積層され、上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極から上記第1及び第2の電極にわたって積層され、加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、少なくとも高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体からなり、上層を該高融点金属層、下層を該低融点金属層の2層構造とし、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項11】
上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極の表面に、Ni/Auメッキ処理が施されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項12】
上記発熱体と上記絶縁基板の間に絶縁部材層を設けることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項13】
上記高融点金属層の体積よりも上記低融点金属層の体積の方が多いことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項14】
上記可溶導体は、内層が低融点金属層、外層が高融点金属層の被覆構造であり、内層となる上記低融点金属層の全面が上記高融点金属層によって被覆されている請求項1〜6のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項15】
上記可溶導体は、内層が低融点金属層、外層が高融点金属層の被覆構造であり、上記第1及び第2の電極上に、導電性ペーストを介して接続されている請求項1〜6又は請求項14のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項16】
上記可溶導体は、内層が低融点金属層、外層が高融点金属層の被覆構造であり、上記第1及び第2の電極上に、溶接されることにより接続されている請求項1〜6又は請求項14のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項17】
上記可溶導体は、内層が低融点金属層、外層が高融点金属層の被覆構造であり、内層となる低融点金属層の表面に上記高融点金属層が被覆され、該高融点金属層の表面に第2の低融点金属層が被覆されている請求項1〜6又は請求項14のいずれか1項記載の保護素子。
【請求項18】
上記可溶導体は、内層が低融点金属層、外層が高融点金属層の被覆構造であり、上記低融点金属層と上記高融点金属層との膜厚比が2.1:1〜100:1である請求項1〜6又は請求項14のいずれか1項記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続されたバッテリへの充電を停止し、バッテリの熱暴走を抑制する保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギ密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
【0003】
バッテリパックに内蔵されたFETスイッチを用いて出力のON/OFFを行うことにより、バッテリパックの過充電保護又は過放電保護動作を行う。しかしながら、何らかの原因でFETスイッチが短絡破壊した場合、雷サージ等が印加されて瞬間的な大電流が流れた場合、あるいはバッテリセルの寿命によって出力電圧が異常に低下したり、逆に過大異常電圧を出力した場合であっても、バッテリパックや電子機器は、発火等の事故から保護されなければならない。そこで、このような想定し得るいかなる異常状態において、バッテリセルの出力を安全に遮断するために、外部からの信号によって電流経路を遮断する機能を有するヒューズ素子からなる保護素子が用いられる。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池等向けの保護回路の保護素子として、特許文献1に記載されているように、保護素子内部に発熱体を有し、この発熱体によって電流経路上の可溶導体を溶断する構造が一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−003665号公報
【特許文献2】特開2004−185960号公報
【特許文献3】特開2012−003878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような保護素子においては、リフロー実装を用いた場合に、リフローの熱によって溶融しないように、一般的には、可溶導体には融点が300℃以上のPb入り高融点ハンダが用いられている。しかしながら、RoHS指令等においては、Pb含有ハンダの使用は、限定的に認められているに過ぎず、今後Pbフリー化の要求は、強まるものと考えられる。
【0007】
ここで、「ハンダ喰われ」や「溶食現象」は、電子部品等のAuメッキ、Agメッキが、溶融したハンダ内に溶けだす現象として以前からよく知られており、この現象を利用してPbフリーハンダ材に対応した保護素子が、特許文献2に記載されている。しかしながら、特許文献2に記載されているように、絶縁層に高融点金属層が密着配置された構造では、高融点金属層が低融点金属層の溶融により溶食現象を生じるのみであり、回路の遮断を完全にできない場合があるとの問題がある。また、可溶導体を確実に溶断させるのには、高融点金属層等にスリット及び膜厚段差等を形成するのが好ましいが、スリット及び膜厚段差形成のための工程が増加するとの問題がある(たとえば、特許文献3を参照)。
【0008】
そこで、本発明は、高融点金属層と低融点金属層との積層体を用いて、Pbフリー化を可能にした保護素子を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための手段として、本発明に係る保護素子は、絶縁基板と、絶縁基板に積層された発熱体と、少なくとも発熱体を覆うように、絶縁基板に積層された絶縁部材と、絶縁部材が積層された絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、発熱体と重畳するように絶縁部材の上に積層され、第1及び第2の電極の間の電流経路上で発熱体とに電気的に接続された発熱体引出電極と、発熱体引出電極第1及び第2の電極との間でまたいで絶縁部材と直接密着しないように積層され、加熱により、第1の電極と第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備える。そして、可溶導体は、高融点金属層と低融点金属層との積層体からなり、低融点金属層は、発熱体が発する熱により溶融することで、高融点金属層を浸食しながら、濡れ性が高い第1及び第2の電極並びに発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断される。
【0010】
低融点金属層は、Pbフリーハンダからなり、高融点金属層は、Ag又はCuを主成分とする金属からなることが好ましい。
【0011】
また、低融点金属層の体積を高融点金属層の体積よりも多くすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保護素子では、高融点金属層と低融点金属層との積層体からなる可溶導体を加熱することにより、発熱体が発する熱で低融点金属層が溶融して、高融点金属層を浸食しながら、濡れ性が高い第1及び第2の電極並びに発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されるので、確実に溶断させることができる。また、本発明の保護素子は、可溶導体を有することから通常の電流ヒューズとしても機能する事は明白であり、外部信号および過電流における電流経路遮断の両立を実現することができる。
【0013】
また、低融点金属層は、Pbフリーハンダからなり、高融点金属層は、Ag又はCuを主成分とする金属からなるので、Pbフリーに対応できる。
【0014】
低融点金属層の体積を高融点金属層の体積よりも多くしているので、効果的に高融点金属層の浸食作用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)は、本発明が適用された保護素子の平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図2】本発明が適用された保護素子の応用例を示すブロック図である。
図3】本発明が適用された保護素子の回路構成例を示す図である。
図4】公知例(特開2004−185960号公報)の保護素子の断面図である。
図5】本発明が適用された保護素子の動作を説明するための概念的な平面図である。(A)は、保護素子の動作開始前又は動作開始直後を示す平面図である。(B)は、加熱動作により、熱源近傍の低融点金属層が溶融して高融点金属層を浸食している様子を示す平面図である。(C)は、高融点金属層の浸食が進んだ状況を示す平面図である。(D)は、電極及び発熱体引出電極に低融点金属層が引き寄せられた状態を示す平面図である。
図6】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図7】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図8】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図9図8の変形例に係る保護素子の動作を説明するための概念的な平面図である。(A)は、保護素子の動作開始前又は動作開始直後を示す平面図である。(B)は、加熱動作により、熱源近傍の低融点金属層が溶融して高融点金属層を浸食している様子を示す平面図である。(C)は、高融点金属層の浸食が進んだ状況を示す平面図である。(D)は、電極及び発熱体引出電極に低融点金属層が引き寄せられた状態を示す平面図である。
図10】形状の異なる可溶導体を構成した例を示す斜視図である。(A)は、角型(方形)状に形成した例であり、(B)は、丸線状に形成した例を示す。
図11】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図12】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図13】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図14】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図15】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0017】
[保護素子の構成]
図1に示すように、本発明が適用された保護素子10は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)にそれぞれ接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。
【0018】
方形状の絶縁基板11は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、ヒューズ溶断時の温度に留意する必要がある。
【0019】
発熱体14は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru等からなる。これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板11上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成する。
【0020】
発熱体14を覆うように絶縁部材15が配置され、この絶縁部材15を介して発熱体14に対向するように発熱体引出電極16が配置される。発熱体14の熱を効率良く可溶導体に伝えるために、発熱体14と絶縁基板11の間に絶縁部材15を積層しても良い。
【0021】
発熱体引出電極16の一端は、発熱体電極18(P1)に接続される。また、発熱体14の他端は、他方の発熱体電極18(P2)に接続される。
【0022】
可溶導体13は、内層と外層とからなる積層構造体であり、好ましくは、内層として高融点金属層13a、外層として低融点金属層13bを有する。なお、後述するように、内層として低融点金属層13b、外層として高融点金属層13aを有するようにしてもよい。また、可溶導体13は、上層と下層の2層積層構造体としても良く、上層として高融点金属層13a、下層として低融点金属層13bを有するようにしてもよい。高融点金属層13aは、好ましくは、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、リフロー炉によって基板実装を行う場合においても溶融しない高い融点を有する。低融点金属層13bは、好ましくは、Snを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である(たとえば千住金属工業製、M705等)。低融点金属層13bの融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層13aと低融点金属層13bとを積層することによって、リフロー温度が低融点金属層13bの溶融温度を超えて、低融点金属が溶融した場合であっても、可溶導体13として溶断するに至らない。高融点金属層13aに低融点金属層13bをメッキ技術を用いて成膜することによって可溶導体13を形成してもよく、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いることによって高融点金属層13aに低融点金属層13bを積層した可溶導体13を形成することができる。また、逆の高融点金属層13aを外層とする場合も同様の成膜技術で形成することができる。なお、可溶導体13の発熱体引出電極16及び電極12(A1),12(A2)への接続は、低融点金属層13bを用いてハンダ接合することにより実現される。
【0023】
外層の低融点金属層13bの酸化防止のために、可溶導体13上のほぼ全面にフラックス17を塗布してもよい。
【0024】
このようにして構成された保護素子10の内部を保護するためにカバー部材を絶縁基板11上に載置してもよい。
【0025】
[保護素子の使用方法]
図2に示すように、上述した保護素子10は、リチウムイオン二次電池のバッテリパック内の回路に用いられる。
【0026】
たとえば、保護素子10は、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル21〜24からなるバッテリスタック25を有するバッテリパック20に組み込まれて使用される。
【0027】
バッテリパック20は、バッテリスタック25と、バッテリスタック25の充放電を制御する充放電制御回路30と、バッテリスタック25の異常時に充電を遮断する本発明が適用された保護素子10と、各バッテリセル21〜24の電圧を検出する検出回路26と、検出回路26の検出結果に応じて保護素子10の動作を制御する電流制御素子27とを備える。
【0028】
バッテリスタック25は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル21〜24が直列接続されたものであり、バッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bを介して、着脱可能に充電装置35に接続され、充電装置35からの充電電圧が印加される。充電装置35により充電されたバッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0029】
充放電制御回路30は、バッテリスタック25から充電装置35に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子31、32と、これらの電流制御素子31、32の動作を制御する制御部33とを備える。電流制御素子31、32は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ。)により構成され、制御部33によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック25の電流経路の導通と遮断とを制御する。制御部33は、充電装置35から電力供給を受けて動作し、検出回路26による検出結果に応じて、バッテリスタック25が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子31、32の動作を制御する。
【0030】
保護素子10は、たとえば、バッテリスタック25と充放電制御回路30との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子27によって制御される。
【0031】
検出回路26は、各バッテリセル21〜24と接続され、各バッテリセル21〜24の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路30の制御部33に供給する。また、検出回路26は、いずれか1つのバッテリセル21〜24が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子27を制御する制御信号を出力する。
【0032】
電流制御素子27は、たとえばFETにより構成され、検出回路26から出力される検出信号によって、バッテリセル21〜24の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子10を動作させて、バッテリスタック25の充放電電流経路を電流制御素子31、32のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0033】
以上のような構成からなるバッテリパック20において、保護素子10の構成について具体的に説明する。
【0034】
まず、本発明が適用された保護素子10は、たとえば図3に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子10は、発熱体引出電極16を介して直列接続された可溶導体13と、可溶導体13の接続点を介して通電して発熱させることによって可溶導体13を溶融する発熱体14とからなる回路構成である。また、保護素子10では、たとえば、可溶導体13が充放電電流経路上に直列接続され、発熱体14が電流制御素子27と接続される。保護素子10の2個の電極12のうち、一方は、A1に接続され、他方は、A2に接続される。また、発熱体引出電極16とこれに接続された発熱体電極18は、P1に接続され、他方の発熱体電極18は、P2に接続される。
【0035】
このような回路構成からなる保護素子10は、低背化とともにPbフリー化を実現しつつ、発熱体14の発熱により、電流経路上の可溶導体13を確実に溶断することができる。
【0036】
なお、本発明の保護素子は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0037】
[保護素子の動作]
まず、比較のために、公知例(特開2004−185960号公報)を従来の保護素子とし、その構成について説明する。
【0038】
図4に示すように、従来の保護素子40は、方形状の基板41上に下地の絶縁層としてガラス層41aが形成され、ガラス層41a上に、発熱体44が積層されている。発熱体44を覆うように絶縁部材45が形成され、絶縁部材45を介して発熱体44に対向するように高融点金属層43aが積層され、さらに低融点金属層43bが積層されている。高融点金属層43a及び低融点金属層43bの両端に電極42が、高融点金属層43aと低融点金属層43bとによってはさまれるようにして積層され接続されている。低融点金属層43b上には、フラックス47が塗布されている。
【0039】
このように、従来の保護素子40においては、高融点金属層43aの全体が絶縁部材45と直接密着して形成されている。この構造においては、発熱体44の発熱により低融点金属層43bが溶融して高融点金属層43aを浸食する作用のみによって回路遮断を行う。遮断状態が完全でなくても、可溶導体が高抵抗となった時点で発熱体44への通電が抑制されるために発熱が停止する。すなわち、完全に回路を遮断できないケースが起こりうる。
【0040】
図1に示すような本発明に係る保護素子10では、高融点金属層13a及び低融点金属層13bは、発熱体引出電極16と電極12との間でまたぐように接続される。このため、低融点金属層13bの溶融による高融点金属層の浸食作用に加え、接続された各電極12上での溶融した低融点金属層13bの表面張力による物理的引き込み作用により確実に可溶導体13を溶断させることが可能である。
【0041】
以下、本発明に係る保護素子10の動作について説明する。
【0042】
図5には、図1に示したような保護素子10の発熱体14に通電し、可溶導体13がどのようにふるまうのかを模式的に示す。
【0043】
図5(A)は、発熱体電極18(P2)と電極12(A1),(A2)の間に電圧が印加されるように電源をつないで、発熱体14に通電する前、及び通電を開始した当初の様子を示す図である。発熱体14の発する熱の温度が通常のリフロー温度(〜260℃)よりも高い温度(300℃以上)となるように、印加電圧に従い発熱体14の抵抗値を設定することが望ましい。
【0044】
図5(B)に示すように、発熱体14の直上にある可溶導体13の外層の低融点金属層13bが溶融を開始して、溶融した低融点金属が内層の高融点金属層13aに拡散し、溶食現象を生じて、高融点金属層13aが浸食され、消失する。破線の円内では、高融点金属層13aが消失して、溶融した低融点金属層13bと混じり合った状態となっている。
【0045】
図5(C)に示すように、発熱体14の温度がさらに上昇し、可溶導体13の外層の低融点金属層13bの溶融による高融点金属層13aの浸食領域が拡大する。この状態においては、高融点金属層13aの材料として高い熱伝導度の金属を採用することにより、電極12部を含めて高温となり、低融点金属層13b全体が溶融状態となる。その際、発熱体引出電極16上で高融点金属層13aが完全に浸食された状態になると、図5(D)に示すように、低融点金属層13b、すなわちハンダは、その濡れ性(表面張力)によって、発熱体引出電極16と、2つの電極12(A1),12(A2)のそれぞれに引き寄せられる。その結果、各電極間が遮断状態となる。
【0046】
[変形例1]
図6に示すように、本発明の1つの変形例の保護素子50は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。
【0047】
一般的な高融点ハンダ(Pb含有ハンダ)を用いた可溶導体の場合には、熱伝導度が低いので、保護素子の両端の電極部までは短時間で溶融温度に達しない。これに対して、本発明に係る保護素子のように、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属からなる高融点金属層を有する可溶導体の場合には熱伝導度が高いので、保護素子の両端の電極部においても、十分低融点金属層の溶融温度に到達するために、以下に述べるハンダ溜まり部を設けることによって、より安定した溶断特性を得ることが可能になる。
【0048】
可溶導体13は、内層と外層とからなる積層構造体であり、好ましくは、内層として高融点金属層13a、外層として低融点金属層13bを有する。あるいは、内層として低融点金属層13b、外層として高融点金属層13aを有するようにしてもよい。高融点金属層13aは、好ましくは、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、リフロー炉によって基板実装を行う場合においても溶融しない高い融点を有する。低融点金属層13bは、好ましくは、Snを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である(たとえば千住金属工業製、M705等)。融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。可溶導体13は、高融点金属層13aに低融点金属層13bをメッキ技術を用いて成膜することによって形成してもよく、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いることによって高融点金属層13aに低融点金属層13bを積層することによって形成してもよい。また、逆の高融点金属層13aを外層とする場合も同様の成膜技術で形成することができる。
【0049】
ここで、可溶導体13の両端において、電極12(A1),12(A2)に接続される部分に低融点金属層13bと同一の材料からなるハンダの溜まり部51を設ける。保護素子の動作時においては、低融点金属層13bは、溜まり部51も含めてすべて溶融状態となる。高融点金属層13aの浸食が可溶導体13全体で起こることによって、電極12(A1),12(A2)側にあるそれぞれの溜まり部51,51に溶融した可溶導体13が引き寄せられやすくなるので、より確実に可溶導体を溶断させることができる。
【0050】
[変形例2]
図7に示すように、保護素子60は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。
【0051】
可溶導体13は、内層と外層とからなる積層構造体であり、好ましくは、内層として高融点金属層13a、外層として低融点金属層13bを有する。上述の変形例のように可溶導体13の両端に溜まり部51,51を設けてもよい。
【0052】
この変形例では、高融点金属層13aに多数の開口61を施し、多数の開口がある高融点金属層13aに、たとえばメッキ技術等を用いて低融点金属層13bを成膜する。これにより、溶融する低融点金属層13bに接する高融点金属層13aの面積が増大するので、より短時間で低融点金属層13bが高融点金属層13aを浸食することができるようになる。したがって、より速やか、かつ確実に可溶導体を溶断させることが可能となる。
【0053】
[変形例3]
図8は、上述した可溶導体13の構成をかえたものを用いた場合の変形例である。
【0054】
図8に示すように、保護素子70は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。
【0055】
可溶導体13は、内層が低融点金属層13bであり、外層が高融点金属層13aである。低融点金属層13bには、上述と同様に、Snを主成分とするPbフリーハンダを用いることができ、高融点金属層13aには、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属を用いることができる。図8の変形例の場合では、可溶導体13の表面が酸化するために溶融温度が上昇してしまうのを防止するとともに発熱溶融中のハンダの表面張力維持のために、フラックス17が可溶導体13上に塗布されている。
【0056】
図1に示したような構成例の場合と同様に、内層の低融点金属層13bにメッキ技術等を施すことによって、外層の高融点金属層13aを形成することができ、この変形例における可溶導体13を形成することができる。
【0057】
図9に、図8に示した構成例の動作の様子を概念的に示す。
【0058】
図9(A)には、発熱体電極18(P2)と電極12(A1),(A2)の間に電圧が印加されるように電源をつないで、発熱体14に通電する前、及び通電した当初の様子を示す。
【0059】
図9(B)に示すように、発熱体14の直上にある可溶導体13の内層の低融点金属層13bが溶融を開始して、外層の高融点金属層13aに低融点金属が溶食現象により拡散する。このため、外層の高融点金属層13aが浸食されて消失し、内層の低融点金属層13bが露出し始めた様子を示す。図中の実線の円内が露出した低融点金属層13bであり、他の部分は、外層の高融点金属層13aである。
【0060】
図9(C)に示すように、発熱体14の温度がさらに上昇し、可溶導体13の内層の低融点金属層13bの溶融が進み、高融点金属層13aの浸食領域が拡大する。この状態では、低融点金属層13b全体が溶融状態にあるので、発熱体引出電極16上で高融点金属層13aが完全に浸食された状態になると、図9(D)に示すように、低融点金属層13b、すなわちハンダは、その濡れ性(表面張力)によって、発熱体引出電極16と、2つの電極12(A1),12(A2)のそれぞれに引き寄せられる。結果として、各電極間が遮断される。
【0061】
可溶導体13は、図10(A)に示すように、方形の可溶導体13としてもよく、図10(B)に示すように、丸線状の可溶導体としてもよい。図10では、内層として低融点金属層13bとし、外層として高融点金属層13aとしているが、内層と外層とを逆転してももちろんよい。
【0062】
また、内層として低融点金属層13bとし、外層として高融点金属層13aとした場合においても、可溶導体13の厚さを維持することに留意しつつ、電極12(A1),12(A2)上に可溶導体13の低融点金属層13bよりも厚さの厚い低融点金属層13bからなる溜まり部を設けるようにしてもよい。
【0063】
[変形例4]
図11は、可溶導体13の構成をかえたものを用いた場合の変形例である。
【0064】
図11に示すように、保護素子80は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。
【0065】
可溶導体13は、下層が低融点金属層13b、上層が高融点金属層13aの2層積層構造である。低融点金属層13bには、上述と同様に、Snを主成分とするPbフリーハンダを用いることができ、高融点金属層13aには、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属を用いることができる。
【0066】
図11の変形例の場合では、低融点金属層13bによる電極自体の浸食を抑制して溶断特性の向上を図るために、2ヶ所の電極12及び発熱体引出電極16表面にメッキ処理を施し、Ni/Auメッキ層52が形成されている。また、可溶導体13の表面の酸化によって、可溶導体13の溶融温度が上昇してしまうのを防止するとともに、発熱溶融中のハンダの表面張力維持のために、フラックス17が可溶導体13上に塗布されている。
【0067】
[変形例5]
図12(A)(B)は、可溶導体の構成をさらに変更した場合の変形例である。
【0068】
図12に示す保護素子90の可溶導体91は、内層と外層とからなる積層構造体からなり、内層として低融点金属層91bを、外層として高融点金属層91aを有する。そして、保護素子90の可溶導体91は、低融点金属層91bの全表面が高融点金属層91aによって被覆されている。
【0069】
かかる可溶導体91は、例えば、Ag等の高融点金属のシート上に、Snを主成分とするPbフリーハンダのシートを積層、あるいはSnを主成分とするPbフリーハンダのペーストを塗布し、さらに高融点金属シートを積層し、熱プレスを行うことにより形成することができる。また、可溶導体91は、シート状のPbフリーハンダの全表面にAgメッキを施すことにより形成することができる。
【0070】
この可溶導体91は、Pbフリーハンダ等の低融点金属92を介して、電極12及び発熱体引出電極16上に接続される。また、可溶導体91は、上面のほぼ全面にフラックス17が塗布されている。なお、電極12及び発熱体引出電極16は、電極自体の浸食を抑制して溶断特性の向上を図るために、表面に、Ni/Pd/Auメッキ層93が形成されている。
【0071】
内層の低融点金属層91bの全表面を外層の高融点金属層91aで被覆した可溶導体91を用いることにより、保護素子90は、リフロー温度よりも融点の低い低融点金属層13bを用いた場合にも、リフロー実装時に、内層の低融点金属層91bの外部への流出を抑制することができる。したがって、保護素子90は、発熱体14の熱によって、より短時間で低融点金属層91bが高融点金属層91aを浸食させ、速やか、且つ確実に可溶導体91を溶断することができる。
【0072】
また、保護素子90は、リフロー実装時に、内層の低融点金属層91bの流出を抑制することにより、可溶導体91の変形を抑制することができる。
【0073】
[変形例6]
図13(A)(B)は、図12に示す可溶導体91と、電極12及び発熱体引出電極16との接続構成を変更した場合の変形例である。
【0074】
図13に示す保護素子100は、可溶導体91と電極12及び発熱体引出電極16とを導電性ペースト95によって接続する。導電性ペースト95は、銀ナノペースト等の金属ナノペーストが好適に用いられる。銀ナノペーストは、200℃以上の焼成温度、すなわちリフロー温度程度で高融点金属膜を形成する。また、銀ナノペーストの焼成膜は、バルク銀より50%程度劣る導電性、熱伝導性を有する。
【0075】
保護素子100は、このような金属ナノペーストからなる導電性ペースト95を用いて可溶導体91を接続することにより、リフロー実装時に導電性ペースト95が焼成されて金属膜を形成するため、可溶導体91の外層を構成する高融点金属層91aの溶食を抑えることができる。すなわち、ハンダ等の低融点金属によって可溶導体91を接続する場合、リフロー実装時にハンダが溶融して外層の高融点金属層91aが溶食されてしまうため、外層の高融点金属層91aを厚く形成する必要があった。しかし、高融点金属層91aを厚く形成すると、可溶導体91を溶断するのに多くの時間を要する。
【0076】
一方、保護素子100では、金属ナノペーストからなる導電性ペースト95を用いて可溶導体91を接続するため、外層の高融点金属層91aが溶食されることがなく、高融点金属層91aを薄く形成することができる。したがって、保護素子100は、内層の低融点金属層91bによる溶食によって可溶導体91を短時間で確実に溶断することができる。
【0077】
なお、保護素子100は、可溶導体として、図12に示す内層の低融点金属層91bの全表面が高融点金属層91aによって被覆されている可溶導体91を用いる他にも、図8に示す、内層の低融点金属層13bの上下に高融点金属層13aが積層され、完全には被覆されていない可溶導体13を用いてもよい。
【0078】
[変形例7]
図14(A)(B)は、図8に示す可溶導体13と、電極12及び発熱体引出電極16との接続構成を変更した場合の変形例である。
【0079】
図14に示す保護素子110は、可溶導体13と電極12及び発熱体引出電極16とを超音波等の溶接によって接続する。可溶導体13は、図8に示すように、内層の低融点金属層13bの上下に高融点金属層13aが積層され、完全には被覆されていないものである。
【0080】
保護素子110は、可溶導体13の高融点金属層13aとしてAgメッキ層が形成され、電極12や発熱体引出電極16の表面にNi/Pd/Auメッキ層が形成されていることが好ましい。Ag同士や、AgとAuとは溶接による接着性に優れるため、保護素子110は、可溶導体13と電極12及び発熱体引出電極16とを、確実に接続することができる。また、保護素子110は、溶接によって可溶導体13と電極12及び発熱体引出電極16とを接続するため、リフロー実装によっても、可溶導体13の高融点金属層13aが溶食されることがなく、ハンダ等の低融点金属によって可溶導体13を接続する場合に比して、高融点金属層13aを薄く形成することができる。したがって、保護素子110は、内層の低融点金属層13bによる溶食によって可溶導体13を短時間で確実に溶断することができる。
【0081】
なお、保護素子110は、可溶導体として、図14に示す内層の低融点金属層13bの上下に高融点金属層13aが積層され、完全には被覆されていない可溶導体13を用いる他にも、図12に示す内層の低融点金属層91bの全表面が高融点金属層91aによって被覆されている可溶導体91を用いてもよい。
【0082】
[変形例8]
図15は、可溶導体の構成をさらに変更した場合の変形例である。
【0083】
図15に示す保護素子120の可溶導体121は、内層の低融点金属層121bの全表面に高融点金属層121aが被覆され、該高融点金属層121aの全表面に第2の低融点金属層121cが被覆されている。可溶導体121は、外層の高融点金属層121aがさらに第2の低融点金属層121cによって被覆されることにより、例えば高融点金属層121aとしてCuメッキ層を形成した場合にも、Cuの酸化を防止することができる。したがって、可溶導体121は、Cuの酸化によって溶断時間が長くなる事態を防止することができ、短時間で溶断することができる。
【0084】
また、可溶導体121は、高融点金属層121aとしてCu等の安価だが酸化しやすい金属を用いることができ、Ag等の高価な材料を用いることなく形成することができる。
【0085】
第2の低融点金属層121cは、内層の低融点金属層121bと同じ材料を用いることができ、例えばSnを主成分とするPbフリーハンダを用いることができる。また、第2の低融点金属層121cは、高融点金属層121aの表面に錫メッキを施すことにより形成することができる。
【0086】
なお、可溶導体121は、内層の低融点金属層121bの全表面が高融点金属層121aによって被覆されていてもよく、あるいは内層の低融点金属層121bの上下に高融点金属層121aが積層され、完全には被覆されていないものでもよい。同様に、可溶導体121は、高融点金属層121aの全表面が第2の低融点金属層121cによって被覆されていてもよく、あるいは高融点金属層121aの上下に第2の低融点金属層121cが積層され、完全には被覆されていないものであってもよい。
【0087】
[変形例9]
また、本発明が適用された保護素子の可溶導体13は、内層が低融点金属層13b、外層が高融点金属層13aの被覆構造であり、低融点金属層13bと高融点金属層13aとの層厚比が、低融点金属層:高融点金属層=2.1:1〜100:1としてもよい。これにより、確実に低融点金属層13bの体積を、高融点金属層13aの体積よりも多くすることができ、効果的に高融点金属層13aの溶食による短時間での溶断を行うことができる。
【0088】
すなわち、可溶導体は、内層を構成する低融点金属層13bの上下面に高融点金属層13aが積層されることから、層厚比が、低融点金属層:高融点金属層=2.1:1以上に低融点金属層13bが厚くなるほど低融点金属層13bの体積が高融点金属層13aの体積よりも多くすることができる。また、可溶導体は、層厚比が、低融点金属層:高融点金属層=100:1を超えて低融点金属層13bが厚く、高融点金属層13aが薄くなると、高融点金属層13aが、リフロー実装時の熱で溶融した低融点金属層13bによって溶食されてしまうおそれがある。
【0089】
かかる膜厚比の範囲は、膜厚比を変えた複数の可溶導体のサンプルを用意し、ハンダペーストを介して電極12、発熱体引出電極16上に搭載した後、リフロー炉に投入し、可溶導体が溶断しないかを観察した。その結果、層厚比が、低融点金属層:高融点金属層=2.1:1〜100:1の範囲内であれば、リフロー実装時にも溶断せず、なおかつ発熱体14による加熱が行われると、低融点金属層13bによる高融点金属層13aへの溶食を伴い、速やかに溶断することができることを確認した。
【0090】
なお、内層の低融点金属層91bの全表面が高融点金属層91aに被覆された可溶導体91においても、上記可溶導体13と同じ低融点金属層と高融点金属層との層厚比としてもよい。当該層厚比とすることで、可溶導体91を用いた場合でも、低融点金属層13bの体積を、高融点金属層13aの体積よりも多くすることができ、効果的に高融点金属層13aの溶食による短時間での溶断を行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
10、40、50、60、70、80、90、100、110、120 保護素子、11、41 絶縁基板、12(A1)、12(A2)、42 電極、13、91、121 可溶導体、13a、43a、91a、121a 高融点金属層、13b、43b、91b、121b、121c 低融点金属層、14、44 発熱体、15、45 絶縁部材、16 発熱体引出電極、17、47 フラックス、18(P1),18(P2)、48 発熱体電極、20 バッテリパック、20a 正極端子、20b 負極端子、21〜24 バッテリセル、25 バッテリスタック、26 検出回路、27、31,32 電流制御素子、30 充放電制御回路、33 制御部、35 充電装置、41a ガラス層、51 溜まり部、52 Ni/Auメッキ層、61 開口、92 低融点金属層、93 メッキ層、95 導電性ペースト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15