特許第6249602号(P6249602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249602
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20171211BHJP
   H01H 85/046 20060101ALI20171211BHJP
   H01H 85/11 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01H37/76 F
   H01H37/76 Q
   H01H85/046
   H01H85/11
【請求項の数】24
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-8302(P2013-8302)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2013-229295(P2013-229295A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-76928(P2012-76928)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−057139(JP,A)
【文献】 特開2011−060762(JP,A)
【文献】 特開2009−301964(JP,A)
【文献】 実開昭62−107341(JP,U)
【文献】 特開2012−003878(JP,A)
【文献】 特開2011−175958(JP,A)
【文献】 特開2006−221919(JP,A)
【文献】 特開2008−112735(JP,A)
【文献】 特開平04−365304(JP,A)
【文献】 特開2011−222264(JP,A)
【文献】 特開2004−185960(JP,A)
【文献】 実開昭58−122350(JP,U)
【文献】 特開平09−219138(JP,A)
【文献】 特開平09−161635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00−85/62
H01H 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された発熱体と、
少なくとも上記発熱体を覆うように、上記絶縁基板に積層された絶縁部材と、
上記絶縁部材が積層された上記絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、
上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極と上記第1及び第2の電極との間でまたいで上記絶縁部材と直接密着しないように積層され、加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、少なくとも高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体からなり、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項2】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された発熱体と、
少なくとも上記発熱体を覆うように、上記絶縁基板に積層された絶縁部材と、
上記絶縁部材が積層された上記絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、
上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極から上記第1及び第2の電極にわたって積層され、加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、少なくとも高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体からなり、
上記高融点金属層は、表面に開口を有し、上記低融点金属層が露出しており、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項3】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された発熱体と、
少なくとも上記発熱体を覆うように、上記絶縁基板に積層された絶縁部材と、
上記絶縁部材が積層された上記絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、
上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極から上記第1及び第2の電極にわたって積層され、加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、上層を高融点金属層、下層を低融点金属層の2層構造をなし、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項4】
上記高融点金属層はPb含有ハンダよりも高い熱伝導度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項5】
上記可溶導体の両端において、上記第1及び第2の電極に接続される部分にハンダの溜まり部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項6】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された発熱体と、
少なくとも上記発熱体を覆うように、上記絶縁基板に積層された絶縁部材と、
上記絶縁部材が積層された上記絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、
上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極と上記第1及び第2の電極との間でまたいで上記絶縁部材と直接密着しないように積層され、加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する複数の可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、少なくとも高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体からなり、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項7】
上記複数の可溶導体が積層された上記発熱体引出電極は、上記複数の可溶導体の可溶導体間に絶縁層が形成されている請求項6記載の保護素子。
【請求項8】
上記発熱体引出電極は、上記複数の可溶導体が積層されている部分の幅よりも上記複数の可溶導体の間の部分の幅が狭く形成されている請求項6記載の保護素子。
【請求項9】
絶縁基板と、
上記絶縁基板の内部に内蔵された発熱体と、
上記絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、
上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極と上記第1及び第2の電極との間でまたいで、該第1の電極と該第2の電極が高融点金属層と低融点金属層に挟まれないように積層され、発熱体の加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、少なくとも上記高融点金属層と上記低融点金属層とを含む積層体からなり、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項10】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された発熱体と、
上記絶縁基板の上記発熱体が積層された面の反対面に積層された第1及び第2の電極と、
上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極と上記第1及び第2の電極との間でまたいで、該第1の電極と該第2の電極が高融点金属層と低融点金属層に挟まれないように積層され、発熱体の加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、少なくとも上記高融点金属層と上記低融点金属層とを含む積層体からなり、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項11】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された発熱体と、
上記絶縁基板の上記発熱体が積層された同一面に積層された第1及び第2の電極と、
上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極と上記第1及び第2の電極との間でまたいで、該第1の電極と該第2の電極が高融点金属層と低融点金属層に挟まれないように積層され、発熱体の加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、少なくとも上記高融点金属層と上記低融点金属層とを含む積層体からなり、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項12】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、
上記第1及び第2の電極の間の電流経路上に積層された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極に電気的に接続する様に搭載された発熱素子と、
上記発熱体引出電極と上記第1及び第2の電極との間でまたいで、該第1の電極と該第2の電極が高融点金属層と低融点金属層に挟まれないように積層され、上記発熱素子の加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、少なくとも上記高融点金属層と上記低融点金属層とを含む積層体からなり、
上記低融点金属層は、上記発熱素子が発する熱により溶融することで、上記高融点金属層を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項13】
上記低融点金属層は、Pbフリーハンダからなり、上記高融点金属層は、Ag若しくはCu又はAg若しくはCuを主成分とする金属からなることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項14】
上記高融点金属層の表面には、Au若しくはAuを主成分とする皮膜が形成されている
請求項1〜13のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項15】
上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極に接続される位置において、上記可溶導体は、低融点金属にて接続されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項16】
上記可溶導体は、内層が高融点金属層であり、外層が低融点金属層の被覆構造であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項17】
上記低融点金属層は、少なくとも一部の上記高融点金属層を貫通するように形成されていることを特徴とする請求項16記載の保護素子。
【請求項18】
上記可溶導体は、内層が低融点金属層であり、外層が高融点金属層の被覆構造であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項19】
上記可溶導体は、上層を低融点金属層、下層を高融点金属層とする2層積層体であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項20】
上記可溶導体は、上記高融点金属層、上記低融点金属層を、交互に4層以上積層して形成されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項21】
上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極の表面に、Ni/Auメッキ処理が施されていることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項22】
上記発熱体と上記絶縁基板の間に絶縁部材層を設けることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項23】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層された発熱体と、
少なくとも上記発熱体を覆うように、上記絶縁基板に積層された絶縁部材と、
上記絶縁部材が積層された上記絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、
上記第1及び第2の電極の間の電流経路上で該発熱体に電気的に接続された発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極と上記第1及び第2の電極との間でまたいで、該第1の電極と該第2の電極が高融点金属層と低融点金属層に挟まれないように積層され、加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、上記高融点金属からなり、上記第1の電極、上記第2の電極、及び上記発熱体引出電極上において、上層を高融点金属層、下層を上記低融点金属層の2層構造をなし、
上記低融点金属層は、上記発熱体が発する熱により溶融することで、上記高融点金属からなる上記可溶導体を浸食しながら、上記低融点金属層の濡れ性が高い上記第1及び第2の電極並びに上記発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されることを特徴とする保護素子。
【請求項24】
上記高融点金属層の体積よりも上記低融点金属層の体積の方が多いことを特徴とする請求項1〜23のいずれか1項に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続されたバッテリへの充電を停止し、バッテリの熱暴走を抑制する保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギ密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
【0003】
バッテリパックに内蔵されたFETスイッチを用いて出力のON/OFFを行うことにより、バッテリパックの過充電保護又は過放電保護動作を行う。しかしながら、何らかの原因でFETスイッチが短絡破壊した場合、雷サージ等が印加されて瞬間的な大電流が流れた場合、あるいはバッテリセルの寿命によって出力電圧が異常に低下したり、逆に過大異常電圧を出力した場合であっても、バッテリパックや電子機器は、発火等の事故から保護されなければならない。そこで、このような想定し得るいかなる異常状態において、バッテリセルの出力を安全に遮断するために、外部からの信号によって電流経路を遮断する機能を有するヒューズ素子からなる保護素子が用いられる。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池等向けの保護回路の保護素子として、特許文献1に記載されているように、保護素子内部に発熱体を有し、この発熱体によって電流経路上の可溶導体を溶断する構造が一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−003665号公報
【特許文献2】特開2004−185960号公報
【特許文献3】特開2012−003878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような保護素子においては、リフロー実装を用いた場合に、リフローの熱によって溶融しないように、一般的には、可溶導体には融点が300℃以上のPb入り高融点ハンダが用いられている。しかしながら、RoHS指令等においては、Pb含有ハンダの使用は、限定的に認められているに過ぎず、今後Pbフリー化の要求は、強まるものと考えられる。
【0007】
ここで、「ハンダ喰われ」や「溶食現象」は、電子部品等のAuメッキ、Agメッキが、溶融したハンダ内に溶けだす現象として以前からよく知られており、この現象を利用してPbフリーハンダ材に対応した保護素子が、特許文献2に記載されている。しかしながら、特許文献2に記載されているように、絶縁層に高融点金属層が密着配置された構造では、高融点金属層が低融点金属層の溶融により溶食現象を生じるのみであり、回路の遮断を完全にできない場合があるとの問題がある。また、可溶導体を確実に溶断させるのには、高融点金属層等にスリット及び膜厚段差等を形成するのが好ましいが、スリット及び膜厚段差形成のための工程が増加するとの問題がある(たとえば、特許文献3を参照)。
【0008】
そこで、本発明は、高融点金属層と低融点金属層との積層体を用いて、Pbフリー化を可能にした保護素子を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための手段として、本発明に係る保護素子は、絶縁基板と、絶縁基板に積層された発熱体と、少なくとも発熱体を覆うように、絶縁基板に積層された絶縁部材と、絶縁部材が積層された絶縁基板に積層された第1及び第2の電極と、1及び第2の電極の間の電流経路上で発熱体とに電気的に接続された発熱体引出電極と、発熱体引出電極上記第1及び第2の電極との間でまたいで絶縁部材と直接密着しないように積層され、加熱により、第1の電極と第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備える。そして、可溶導体は、高融点金属層と低融点金属層との積層体からなり、低融点金属層は、発熱体が発する熱により溶融することで、高融点金属層を浸食しながら、濡れ性が高い第1及び第2の電極並びに発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断される。
【0010】
低融点金属層は、Pbフリーハンダからなり、高融点金属層は、Ag又はCuを主成分とする金属からなることが好ましい。
【0011】
また、低融点金属層の体積を高融点金属層の体積よりも多くすることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保護素子では、高融点金属層と低融点金属層との積層体からなる可溶導体を加熱することにより、発熱体が発する熱で低融点金属層が溶融して、高融点金属層を浸食しながら、濡れ性が高い第1及び第2の電極並びに発熱体引出電極側に引き寄せられて溶断されるので、確実に溶断させることができる。また、本発明の保護素子は、可溶導体を有することから通常の電流ヒューズとしても機能する事は明白であり、外部信号および過電流における電流経路遮断の両立を実現することができる。
【0013】
また、低融点金属層は、Pbフリーハンダからなり、高融点金属層は、Ag又はCuを主成分とする金属からなるので、Pbフリーに対応できる。
【0014】
低融点金属層の体積を高融点金属層の体積よりも多くしているので、効果的に高融点金属層の浸食作用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)は、本発明が適用された保護素子の平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図2】本発明が適用された保護素子の応用例を示すブロック図である。
図3】本発明が適用された保護素子の回路構成例を示す図である。
図4】公知例(特開2004−185960号公報)の保護素子の断面図である。
図5】本発明が適用された保護素子の動作を説明するための概念的な平面図である。(A)は、保護素子の動作開始前又は動作開始直後を示す平面図である。(B)は、加熱動作により、熱源近傍の低融点金属層が溶融して高融点金属層を浸食している様子を示す平面図である。(C)は、高融点金属層の浸食が進んだ状況を示す平面図である。(D)は、電極及び発熱体引出電極に低融点金属層が引き寄せられた状態を示す平面図である。
図6】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図7】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図8】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図9図8の変形例に係る保護素子の動作を説明するための概念的な平面図である。(A)は、保護素子の動作開始前又は動作開始直後を示す平面図である。(B)は、加熱動作により、熱源近傍の低融点金属層が溶融して高融点金属層を浸食している様子を示す平面図である。(C)は、高融点金属層の浸食が進んだ状況を示す平面図である。(D)は、電極及び発熱体引出電極に低融点金属層が引き寄せられた状態を示す平面図である。
図10】形状の異なる可溶導体を構成した例を示す斜視図である。(A)は、角型(方形)状に形成した例であり、(B)は、丸線状に形成した例を示す。
図11】(A)は、本発明の保護素子の実施形態のうちの変形例の1つを示す平面図である。(B)は、(A)図のA−A’部の断面図である。
図12】発熱体を絶縁基板に内蔵した保護素子の変形例を示す断面図である。
図13】発熱体を絶縁基板の裏面に形成した保護素子の変形例を示す断面図である。
図14】発熱体を絶縁基板の表面に形成した保護素子の変形例を示す断面図である。
図15】発熱素子を絶縁基板の表面に実装した保護素子の変形例を示す断面図である。
図16】高融点金属層に線状の開口部を設け低融点金属層を露出させた可溶導体を用いた保護素子の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図17】高融点金属層に円形の開口部を設け低融点金属層を露出させた可溶導体を用いた保護素子の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図18】高融点金属層に線状の開口部を設け低融点金属層を露出させた可溶導体を用いた保護素子の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図19】高融点金属層と低融点金属層との2層構造をなす可溶導体を低融点金属によって接続した保護素子の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図20】高融点金属層と低融点金属層とが交互に積層された4層構造の可溶導体を用いた保護素子の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図21】高融点金属層の単層からなる可溶導体を低融点金属によって接続した保護素子の変形例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図22】複数の可溶導体を設けると共に、発熱体引出電極上に絶縁層を形成した保護素子を示す平面図である。
図23】複数の可溶導体を設けると共に、発熱体引出電極上に絶縁層を形成した保護素子において、可溶導体が溶断された状態を示す平面図である。
図24】複数の可溶導体を設けると共に、発熱体引出電極上に幅狭部を形成した保護素子を示す平面図である。
図25】複数の可溶導体を設けると共に、発熱体引出電極上に幅狭部を形成した保護素子において、可溶導体が溶断された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0017】
[保護素子の構成]
図1に示すように、本発明が適用された保護素子10は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)にそれぞれ接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。また、絶縁基板11の裏面には、電極12(A1),12(A2)と接続された外部端子が形成されている。
【0018】
方形状の絶縁基板11は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、ヒューズ溶断時の温度に留意する必要がある。
【0019】
発熱体14は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru等からなる。これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板11上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成する。
【0020】
発熱体14を覆うように絶縁部材15が配置され、この絶縁部材15を介して発熱体14に対向するように発熱体引出電極16が配置される。発熱体14の熱を効率良く可溶導体に伝えるために、発熱体14と絶縁基板11の間に絶縁部材15を積層しても良い。
【0021】
発熱体引出電極16の一端は、発熱体電極18(P1)に接続される。また、発熱体14の他端は、他方の発熱体電極18(P2)に接続される。
【0022】
可溶導体13は、内層と外層とからなる積層構造体であり、好ましくは、内層として高融点金属層13a、外層として低融点金属層13bを有する。なお、後述するように、内層として低融点金属層13b、外層として高融点金属層13aを有するようにしてもよい。また、可溶導体13は、上層と下層の2層積層構造体としても良く、上層として高融点金属層13a、下層として低融点金属層13bを有するようにしてもよい。高融点金属層13aは、好ましくは、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、リフロー炉によって基板実装を行う場合においても溶融しない高い融点を有する。低融点金属層13bは、好ましくは、Snを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である(たとえば千住金属工業製、M705等)。低融点金属層13bの融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層13aと低融点金属層13bとを積層することによって、リフロー温度が低融点金属層13bの溶融温度を超えて、低融点金属が溶融した場合であっても、可溶導体13として溶断するに至らない。高融点金属層13aに低融点金属層13bをメッキ技術を用いて成膜することによって可溶導体13を形成してもよく、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いることによって高融点金属層13aに低融点金属層13bを積層した可溶導体13を形成することができる。また、逆の高融点金属層13aを外層とする場合も同様の成膜技術で形成することができる。なお、可溶導体13の発熱体引出電極16及び電極12(A1),12(A2)への接続は、低融点金属層13bを用いてハンダ接合することにより実現される。
【0023】
外層の低融点金属層13bの酸化防止のために、可溶導体13上のほぼ全面にフラックスを塗布してもよい。
【0024】
このようにして構成された保護素子10の内部を保護するためにカバー部材を絶縁基板11上に載置してもよい。
【0025】
[保護素子の使用方法]
図2に示すように、上述した保護素子10は、リチウムイオン二次電池のバッテリパック内の回路に用いられる。
【0026】
たとえば、保護素子10は、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル21〜24からなるバッテリスタック25を有するバッテリパック20に組み込まれて使用される。
【0027】
バッテリパック20は、バッテリスタック25と、バッテリスタック25の充放電を制御する充放電制御回路30と、バッテリスタック25の異常時に充電を遮断する本発明が適用された保護素子10と、各バッテリセル21〜24の電圧を検出する検出回路26と、検出回路26の検出結果に応じて保護素子10の動作を制御する電流制御素子27とを備える。
【0028】
バッテリスタック25は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル21〜24が直列接続されたものであり、バッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bを介して、着脱可能に充電装置35に接続され、充電装置35からの充電電圧が印加される。充電装置35により充電されたバッテリパック20を正極端子20a、負極端子20bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0029】
充放電制御回路30は、バッテリスタック25から充電装置35に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子31、32と、これらの電流制御素子31、32の動作を制御する制御部33とを備える。電流制御素子31、32は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ。)により構成され、制御部33によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック25の電流経路の導通と遮断とを制御する。制御部33は、充電装置35から電力供給を受けて動作し、検出回路26による検出結果に応じて、バッテリスタック25が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子31、32の動作を制御する。
【0030】
保護素子10は、たとえば、バッテリスタック25と充放電制御回路30との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子27によって制御される。
【0031】
検出回路26は、各バッテリセル21〜24と接続され、各バッテリセル21〜24の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路30の制御部33に供給する。また、検出回路26は、いずれか1つのバッテリセル21〜24が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子27を制御する制御信号を出力する。
【0032】
電流制御素子27は、検出回路26から出力される検出信号によって、バッテリセル21〜24の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子10を動作させて、バッテリスタック25の充放電電流経路を電流制御素子31、32のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0033】
以上のような構成からなるバッテリパック20において、保護素子10の構成について具体的に説明する。
【0034】
まず、本発明が適用された保護素子10は、たとえば図3に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子10は、発熱体引出電極16を介して直列接続された可溶導体13と、可溶導体13の接続点を介して通電して発熱させることによって可溶導体13を溶融する発熱体14とからなる回路構成である。また、保護素子10では、たとえば、可溶導体13が充放電電流経路上に直列接続され、発熱体14が電流制御素子27と接続される。保護素子10の2個の電極12のうち、一方は、A1に接続され、他方は、A2に接続される。また、発熱体引出電極16とこれに接続された発熱体電極18は、P1に接続され、他方の発熱体電極18は、P2に接続される。
【0035】
このような回路構成からなる保護素子10は、低背化とともにPbフリー化を実現しつつ、発熱体14の発熱により、電流経路上の可溶導体13を確実に溶断することができる。
【0036】
なお、本発明の保護素子は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0037】
[保護素子の動作]
まず、比較のために、公知例(特開2004−185960号公報)を従来の保護素子とし、その構成について説明する。
【0038】
図4に示すように、従来の保護素子40は、方形状の基板41上に下地の絶縁層としてガラス層41aが形成され、ガラス層41a上に、発熱体44が積層されている。発熱体44を覆うように絶縁部材45が形成され、絶縁部材45を介して発熱体44に対向するように高融点金属層43aが積層され、さらに低融点金属層43bが積層されている。高融点金属層43a及び低融点金属層43bの両端に電極42が、高融点金属層43aと低融点金属層43bとによってはさまれるようにして積層され接続されている。低融点金属層43b上には、フラックス47が塗布されている。
【0039】
このように、従来の保護素子40においては、高融点金属層43aの全体が絶縁部材45と直接密着して形成されている。この構造においては、発熱体44の発熱により低融点金属層43bが溶融して高融点金属層43aを浸食する作用のみによって回路遮断を行う。遮断状態が完全でなくても、可溶導体が高抵抗となった時点で発熱体44への通電が抑制されるために発熱が停止する。すなわち、完全に回路を遮断できないケースが起こりうる。
【0040】
図1に示すような本発明に係る保護素子10では、高融点金属層13a及び低融点金属層13bは、発熱体引出電極16と電極12との間でまたぐように接続される。このため、低融点金属層13bの溶融による高融点金属層の浸食作用に加え、接続された各電極上で溶融した低融点金属層13bの表面張力による物理的引き込み作用により確実に可溶導体13を溶断させることが可能である。
【0041】
以下、本発明に係る保護素子10の動作について説明する。
【0042】
図5には、図1に示したような保護素子10の発熱体14に通電し、可溶導体13がどのようにふるまうのかを模式的に示す。
【0043】
図5(A)は、発熱体電極18(P2)と電極12(A1),(A2)の間に電圧が印加されるように電源をつないで、発熱体14に通電する前、及び通電を開始した当初の様子を示す図である。発熱体14の発する熱の温度が通常のリフロー温度(〜260℃)よりも高い温度(300℃以上)となるように、印加電圧に従い発熱体14の抵抗値を設定することが望ましい。
【0044】
図5(B)に示すように、発熱体14の直上にある可溶導体13の外層の低融点金属層13bが溶融を開始して、溶融した低融点金属が内層の高融点金属層13aに拡散し、溶食現象を生じて、高融点金属層13aが浸食され、消失する。破線の円内では、高融点金属層13aが消失して、溶融した低融点金属層13bと混じり合った状態となっている。
【0045】
図5(C)に示すように、発熱体14の温度がさらに上昇し、可溶導体13の外層の低融点金属層13bの溶融による高融点金属層13aの浸食領域が拡大する。この状態においては、高融点金属層13aの材料として高い熱伝導度の金属を採用することにより、電極12部を含めて高温となり、低融点金属層13b全体が溶融状態となる。その際、発熱体引出電極16上で高融点金属層13aが完全に浸食された状態になると、図5(D)に示すように、低融点金属層13b、すなわちハンダは、その濡れ性(表面張力)によって、発熱体引出電極16と、2つの電極12(A1),12(A2)のそれぞれに引き寄せられる。その結果、各電極間が遮断状態となる。
【0046】
[変形例1]
図6に示すように、本発明の1つの変形例の保護素子50は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。また、絶縁基板11の裏面には、電極12(A1),12(A2)と接続された外部端子が形成されている。
【0047】
一般的な高融点ハンダ(Pb含有ハンダ)を用いた可溶導体の場合には、熱伝導度が低いので、保護素子の両端の電極部までは短時間で溶融温度に達しない。これに対して、本発明に係る保護素子のように、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属からなる高融点金属層を有する可溶導体の場合には熱伝導度が高いので、保護素子の両端の電極部においても、十分低融点金属層の溶融温度に到達するために、以下に述べるハンダ溜まり部を設けることによって、より安定した溶断特性を得ることが可能になる。
【0048】
可溶導体13は、内層と外層とからなる積層構造体であり、好ましくは、内層として高融点金属層13a、外層として低融点金属層13bを有する。あるいは、内層として低融点金属層13b、外層として高融点金属層13aを有するようにしてもよい。高融点金属層13aは、好ましくは、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、リフロー炉によって基板実装を行う場合においても溶融しない高い融点を有する。低融点金属層13bは、好ましくは、Snを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である(たとえば千住金属工業製、M705等)。融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層13aに低融点金属層13bをメッキ技術を用いて成膜することによって可溶導体13を形成してもよく、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いることによって高融点金属層13aに低融点金属層13bを積層した可溶導体13を形成することができる。また、逆の高融点金属層13aを外層とする場合も同様の成膜技術で形成することができる。
【0049】
ここで、可溶導体13の両端において、電極12(A1),12(A2)に接続される部分に低融点金属層13bと同一の材料からなるハンダの溜まり部51を設ける。保護素子の動作時においては、低融点金属層13bは、溜まり部51も含めてすべて溶融状態となる。高融点金属層13aの浸食が可溶導体13全体で起こることによって、電極12(A1),12(A2)側にあるそれぞれの溜まり部51,51に溶融した可溶導体13が引き寄せられやすくなるので、より確実に可溶導体を溶断させることができる。
【0050】
[変形例2]
図7に示すように、保護素子60は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。また、絶縁基板11の裏面には、電極12(A1),12(A2)と接続された外部端子が形成されている。
【0051】
可溶導体13は、内層と外層とからなる積層構造体であり、好ましくは、内層として高融点金属層13a、外層として低融点金属層13bを有する。上述の変形例のように可溶導体13の両端に溜まり部51,51を設けてもよい。
【0052】
この変形例では、高融点金属層13aに多数の開口61を施し、多数の開口がある高融点金属層13aに、たとえばメッキ技術等を用いて低融点金属層13bを成膜する。これにより、溶融する低融点金属層13bに接する高融点金属層13aの面積が増大するので、より短時間で低融点金属層13bが高融点金属層13aを浸食することができるようになる。したがって、より確実に可溶導体を溶断させることが可能となる。
【0053】
[変形例3]
図8は、上述した可溶導体13の構成をかえたものを用いた場合の変形例である。
【0054】
図8に示すように、保護素子70は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。また、絶縁基板11の裏面には、電極12(A1),12(A2)と接続された外部端子が形成されている。
【0055】
可溶導体13は、内層が低融点金属層13bであり、外層が高融点金属層13aである。低融点金属層13bには、上述と同様に、Snを主成分とするPbフリーハンダを用いることができ、高融点金属層13aには、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属を用いることができる。図8の変形例の場合では、可溶導体13の表面が酸化するために溶融温度が上昇してしまうのを防止するとともに発熱溶融中のハンダの表面張力維持のために、フラックス17が可溶導体13上に塗布されている。
【0056】
図1に示したような構成例の場合と同様に、内層の低融点金属層13bにメッキ技術等を施すことによって、外層の高融点金属層13aを形成することができ、この変形例における可溶導体13を形成することができる。
【0057】
図9に、図8に示した構成例の動作の様子を概念的に示す。
【0058】
図9(A)には、発熱体電極18(P2)と電極12(A1),(A2)の間に電圧が印加されるように電源をつないで、発熱体14に通電する前、及び通電した当初の様子を示す。
【0059】
図9(B)に示すように、発熱体14の直上にある可溶導体13の内層の低融点金属層13bが溶融を開始して、外層の高融点金属層13aに低融点金属が溶食現象により拡散する。このため、外層の高融点金属層13aが浸食されて消失し、内層の低融点金属層13bが露出し始めた様子を示す。図中の実線の円内が露出した低融点金属層13bであり、他の部分は、外層の高融点金属層13aである。
【0060】
図9(C)に示すように、発熱体14の温度がさらに上昇し、可溶導体13の内層の低融点金属層13bの溶融が進み、高融点金属層13aの浸食領域が拡大する。この状態では、低融点金属層13b全体が溶融状態にあるので、発熱体引出電極16上で高融点金属層13aが完全に浸食された状態になると、図9(D)に示すように、低融点金属層13b、すなわちハンダは、その濡れ性(表面張力)によって、発熱体引出電極16と、2つの電極12(A1),12(A2)のそれぞれに引き寄せられる。結果として、各電極間が遮断される。
【0061】
可溶導体13は、図10(A)に示すように、方形の可溶導体13としてもよく、図10(B)に示すように、丸線状の可溶導体としてもよい。図10では、内層として低融点金属層13bとし、外層として高融点金属層13aとしているが、内層と外層とを逆転してももちろんよい。
【0062】
また、内層として低融点金属層13bとし、外層として高融点金属層13aとした場合においても、可溶導体13の厚さを維持することに留意しつつ、電極12(A1),12(A2)上に可溶導体13の低融点金属層13bよりも厚さの厚い低融点金属層13bからなる溜まり部を設けるようにしてもよい。
【0063】
[変形例4]
図11は、可溶導体13の構成をかえたものを用いた場合の変形例である。
【0064】
図11に示すように、保護素子80は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。また、絶縁基板11の裏面には、電極12(A1),12(A2)と接続された外部端子が形成されている。
【0065】
可溶導体13は、下層が低融点金属層13b、上層が高融点金属層13aの2層積層構造である。低融点金属層13bには、上述と同様に、Snを主成分とするPbフリーハンダを用いることができ、高融点金属層13aには、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属を用いることができる。
【0066】
図11の変形例の場合では、低融点金属層13bによる電極自体の浸食を抑制して溶断特性の向上を図るために、2ヶ所の電極12、電極12と接続された外部端子及び発熱体引出電極16表面にメッキ処理を施し、Ni/Auメッキ層52が形成されている。なお、Ni/Auメッキに代えてNi/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等公知のメッキ処理を用いることができる。
【0067】
また、可溶導体13の表面の酸化によって、可溶導体13の溶融温度が上昇してしまうのを防止するとともに、発熱溶融中のハンダの表面張力維持のために、フラックス17が可溶導体13上に塗布されている。
【0068】
[変形例5]
図12は、発熱体14の配置位置を変えたものを用いた場合の変形例である。図12に示すように、保護素子90は、絶縁基板11と、絶縁基板11に内蔵された発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁基板11上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。保護素子90は、発熱体14が絶縁基板11に内蔵された点、及び絶縁部材15が設けられていない点を除いて、上述した保護素子80と同様の構成を有する。
【0069】
なお、絶縁基板11は、裏面11bに電極12(A1),12(A2)と接続された外部端子91が形成されている。また、保護素子90は、絶縁基板11の表面上を保護するカバー部材92が設けられている。
【0070】
可溶導体13は、上層に高融点金属層13aが、下層に低融点金属層13bが設けられた2層の積層構造をなし、それぞれNi/Auメッキ層52が設けられた電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16に当該低融点金属層13bを介して接続されている。また、可溶導体13は、高融点金属層13aの表面上に、フラックス17が塗布されている。
【0071】
この保護素子90は、発熱体14が絶縁基板11に内蔵されることにより、絶縁基板11の表面11aが平坦化され、これにより、発熱体引出電極16を電極12(A1),12(A2)と同一平面上に形成することができる。そして、保護素子90は、発熱体引出電極16を電極12(A1),12(A2)と同じ高さにすることにより、平坦化された可溶導体13を接続することができる。したがって、保護素子90は、可溶導体13の溶断特性を向上させることができる。
【0072】
また、保護素子90は、絶縁基板11の材料として熱伝導性に優れたものを用いることにより、発熱体14によって、ガラス層等の絶縁部材15を介した場合と同等に可溶導体13を加熱することができる。
【0073】
さらに、保護素子90は、絶縁部材15が不要となり、また、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16を構成する導電ペーストを平坦な絶縁基板11の表面11aに塗布することにより、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16を一括して形成することができるため、製造工程の省力化を図ることができる。
【0074】
[変形例6]
図13は、発熱体14の配置位置を変えたものを用いた場合の変形例である。
【0075】
図13に示すように、保護素子100は、絶縁基板11と、絶縁基板11の裏面11bに積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁基板11上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。保護素子100は、発熱体14が絶縁基板11の裏面11bに積層された点を除いて、上述した保護素子80と同様の構成を有する。
【0076】
なお、絶縁基板11は、裏面11bに電極12(A1),12(A2)と接続された外部端子91が形成されている。また、保護素子100は、絶縁基板11の表面上を保護するカバー部材92が設けられている。
【0077】
この保護素子100は、発熱体14が絶縁基板11の裏面11bに積層されることにより、絶縁基板11の表面11aが平坦化され、これにより、発熱体引出電極16を電極12(A1),12(A2)と同一平面上に形成することができる。そして、保護素子100は、発熱体引出電極16を電極12(A1),12(A2)と同じ高さにすることにより、平坦化された可溶導体13を接続することができる。したがって、保護素子100は、可溶導体13の溶断特性を向上させることができる。
【0078】
また、保護素子100は、絶縁基板11の材料として熱伝導性に優れたものを用いることにより、発熱体14によって、絶縁基板11の表面11a上に積層した場合と同等に可溶導体13を加熱することができる。
【0079】
さらに、保護素子100は、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16を構成する導電ペーストを平坦な絶縁基板11の表面11aに塗布することにより、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16を一括して形成することができるため、製造工程の省力化を図ることができる。
【0080】
[変形例7]
図14は、発熱体14の配置位置を変えたものを用いた場合の変形例である。
【0081】
図14に示すように、保護素子110は、絶縁基板11と、絶縁基板11の表面11a上に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の表面11a上に発熱体14と隣接して形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁基板11の表面11a上の電極12(A1),12(A2)間に積層され、発熱体14と電気的に接続された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。保護素子110は、発熱体14が絶縁基板11の表面11aに積層された点を除いて、上述した保護素子80と同様の構成を有する。
【0082】
なお、絶縁基板11は、裏面11bに電極12(A1),12(A2)と接続された外部端子91が形成されている。また、保護素子90は、絶縁基板11の表面上を保護するカバー部材92が設けられている。
【0083】
この保護素子110は、発熱体14が絶縁基板11の表面11aに、電極12(A1)に隣接して積層されることにより、絶縁基板11の表面11aが平坦化され、これにより、発熱体引出電極16を電極12(A1),12(A2)と同一平面上に形成することができる。そして、保護素子110は、発熱体引出電極16を電極12(A1),12(A2)と同じ高さにすることにより、平坦化された可溶導体13を接続することができる。したがって、保護素子110は、可溶導体13の溶断特性を向上させることができる。
【0084】
また、保護素子110は、発熱体14を電極12(A1)に隣接して積層することにより、発熱した熱を効率よく可溶導体13に伝達することができ、絶縁部材15を介して発熱体14と発熱体引出電極16とを重畳させた場合と同等に可溶導体13を加熱することができる。
【0085】
さらに、保護素子110は、電極12(A1),12(A2)、発熱体14及び発熱体引出電極16を構成する導電ペーストを平坦な絶縁基板11の表面11aに塗布することにより、電極12(A1),12(A2)、発熱体14及び発熱体引出電極16を一括して形成することができるため、製造工程の省力化を図ることができる。また、保護素子110は、発熱体14を絶縁基板11の表面11aに形成し、かつ発熱体引出電極16と重畳させていないため、絶縁基板11の厚さ方向の低背化による小型化を図ることができる。
【0086】
[変形例8]
図15は、導電性ペーストを塗布、焼成することにより発熱体14を形成する構成に代えて、発熱素子を用いて、これを電極12(A1),12(A2)の近傍に隣接させた場合の変形例である。
【0087】
図15に示すように、保護素子120は、絶縁基板11と、絶縁基板11の表面11a上に実装された発熱素子121と、絶縁基板11の表面11a上に発熱素子121と隣接して形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁基板11の表面11a上の電極12(A1),12(A2)間に積層され、発熱素子121と電気的に接続された発熱体引出電極16と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。保護素子120は、発熱体14に代えて、発熱素子121が絶縁基板11の表面11aに積層された発熱体引出電極16と接続されるとともに、発熱素子電極122と接続されている点を除いて、上述した保護素子80と同様の構成を有する。発熱素子121は、絶縁基板11の表面11aに形成されたランド部123上に実装されている。
【0088】
保護素子120は、発熱熱素子電極122と上述した電力制御素子27とが接続され、バッテリセル21〜24のいずれかについて異常電圧を検出すると、発熱素子121が動作され、バッテリスタック25の充放電経路を遮断する。
【0089】
この保護素子120においても、発熱素子121が絶縁基板11の表面11aに、電極12(A1)に隣接して積層されることにより、絶縁基板11の表面11aが平坦化され、これにより、発熱体引出電極16を電極12(A1),12(A2)と同一平面上に形成することができる。そして、保護素子120は、発熱体引出電極16を電極12(A1),12(A2)と同じ高さにすることにより、平坦化された可溶導体13を接続することができる。したがって、保護素子120は、可溶導体13の溶断特性を向上させることができる。
【0090】
また、保護素子120は、発熱素子121を電極12(A1),12(A2)に隣接して実装することにより、発熱した熱を効率よく可溶導体13に伝達することができ、絶縁部材15を介して発熱体14と発熱体引出電極16とを重畳させた場合と同等に可溶導体13を加熱することができる。
【0091】
さらに、保護素子120は、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16を構成する導電ペーストを平坦な絶縁基板11の表面11aに塗布することにより、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16を一括して形成することができるため、製造工程の省力化を図ることができる。また、保護素子120は、絶縁基板11の表面11a上に発熱体14を発熱体引出電極16と重畳させて形成するものではないため、絶縁基板11の厚さ方向の低背化による小型化を図ることができる。
【0092】
また、保護素子120は、発熱素子121として、種々のものを選択、実装することができ、可溶導体13の溶断に適した高温を発熱する素子を用いることができる。
【0093】
[変形例9]
図16図18は、可溶導体の構成を代えた保護素子の変形例である。
【0094】
図16(A)(B)に示す保護素子130は、内層となる低融点金属層131の両面に外層として高融点金属層132が形成された3層構造の可溶導体133を用いる。可溶導体133は、外層を構成する高融点金属層132に、長手方向に沿って線状の開口部132aが形成され、この開口部132aから低融点金属層131が露出されている。可溶導体133は、低融点金属層131が開口部132aより露出することにより、溶融した低融点金属と高融点金属層132との接触面積が増え、高融点金属層132の浸食作用をより促進させて溶断性を向上させることができる。高融点金属層132の開口部132aは、例えば、低融点金属層131に高融点金属層132を構成する金属の部分メッキを施すことにより形成することができる。
【0095】
保護素子130は、可溶導体13に代えて可溶導体133を用いた点を除いて、上述した保護素子10と同じ構成を有する。なお、可溶導体133は、それぞれNi/Auメッキ層52が設けられた電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16にハンダ等の低融点金属134を介して接続されている。また、可溶導体133は、高融点金属層132の表面上に、フラックス17が塗布されている。高融点金属層132は、上述した高融点金属層13aと同様の材料を用いて形成することができ、低融点金属層131は、上述した低融点金属層13bと同様の材料を用いて形成することができる。
【0096】
また、可溶導体133は、低融点金属層131を構成する金属としてハンダを用いるとともに、高融点金属層132の表面にAu又はAuを主成分とする皮膜を形成してもよい。これにより、可溶導体133は、低融点金属層131を構成するハンダの濡れ性をさらに向上させ、浸食作用を促進させることができる。
【0097】
図17(A)(B)に示す保護素子140は、内層となる低融点金属層141の両面に外層として高融点金属層142が形成された3層構造の可溶導体143を用いる。可溶導体143は、外層を構成する高融点金属層142に、全面に亘って円形の開口部142aが形成され、この開口部142aから低融点金属層141が露出されている。
【0098】
保護素子140のその他の構成は、上述した保護素子130と同じである。また、高融点金属層142の開口部142aは、例えば、低融点金属層141に高融点金属層142を構成する金属の部分メッキを施すことにより形成することができる。
【0099】
可溶導体143は、低融点金属層141が開口部142aより露出することにより、溶融した低融点金属と高融点金属層142との接触面積が増え、高融点金属層の浸食作用をより促進させて溶断性を向上させることができる。
【0100】
また、可溶導体143においても、低融点金属層141を構成する金属としてハンダを用いるとともに、高融点金属層142の表面にAu又はAuを主成分とする皮膜を形成してもよい。これにより、可溶導体143は、低融点金属層141を構成するハンダの濡れ性をさらに向上させ、浸食作用を促進させることができる。
【0101】
図18(A)(B)に示す保護素子150は、内層となる低融点金属層151の両面に外層として高融点金属層152が形成された3層構造の可溶導体153を用いる。可溶導体153は、外層を構成する高融点金属層152に、幅方向に亘る線状の開口部152aが、長手方向に亘って複数形成され、この開口部152aから低融点金属層151が露出されている。
【0102】
保護素子150のその他の構成は、上述した保護素子130と同じである。また、高融点金属層152の開口部152aは、例えば、低融点金属層151に高融点金属層152を構成する金属の部分メッキを施すことにより形成することができる。
【0103】
可溶導体153は、低融点金属層151が開口部152aより露出することにより、溶融した低融点金属と高融点金属層152との接触面積が増え、高融点金属層の浸食作用をより促進させて溶断性を向上させることができる。
【0104】
また、可溶導体153においても、低融点金属層151を構成する金属としてハンダを用いるとともに、高融点金属層152の表面にAu又はAuを主成分とする皮膜を形成してもよい。これにより、可溶導体153は、低融点金属層151を構成するハンダの濡れ性をさらに向上させ、浸食作用を促進させることができる。
【0105】
[変形例10]
図19は、可溶導体の構成を代えた保護素子の変形例である。
【0106】
図19(A)(B)に示す保護素子160は、上層に低融点金属層161を配し、下層に高融点金属層162が形成された可溶導体163を用いる。可溶導体163は、それぞれNi/Auメッキ層52が設けられた電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16にハンダ等の低融点金属164を介して接続されている。これにより、可溶導体163は、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上において、低融点金属164、高融点金属層162、低融点金属層161の3層構造をなす。
【0107】
なお、可溶導体163は、低融点金属層161の表面上に、フラックス17が塗布されている。また、保護素子160は、可溶導体13に代えて可溶導体163を用いた点を除いて、上述した保護素子10と同じ構成を有する。また、高融点金属層162は、上述した高融点金属層13aと同様の材料を用いて形成することができ、低融点金属層161は、上述した低融点金属層13bと同様の材料を用いて形成することができる。
【0108】
保護素子160は、可溶導体163が、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上において、低融点金属164、高融点金属層162、低融点金属層161の3層構造をなすことから、溶融した低融点金属164及び低融点金属層131による高融点金属層162の浸食作用により、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上における溶融導体の凝集をより促進させ、溶断性を向上させることができる。
【0109】
また、保護素子160は、可溶導体163を低融点金属層161の表面に高融点金属層162を積層する簡易な工程で形成することができる。
【0110】
また、可溶導体163においても、低融点金属層161を構成する金属としてハンダを用いるとともに、高融点金属層162の表面にAu又はAuを主成分とする皮膜を形成してもよい。これにより、可溶導体163は、低融点金属層161を構成するハンダの濡れ性をさらに向上させ、浸食作用を促進させることができる。
【0111】
[変形例11]
図20は、可溶導体の構成を代えた保護素子の変形例である。
【0112】
図20(A)(B)に示す保護素子170は、最上層から順に、第1の高融点金属層171、第1の低融点金属層172、第2の高融点金属層173、第2の低融点金属層174が積層された4層構造をなす可溶導体175を用いる。可溶導体175は、第2の低融点金属層174を介して、それぞれNi/Auメッキ層52が設けられた電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16に接続されている。
【0113】
なお、可溶導体175は、第1の高融点金属層171の表面上に、フラックス17が塗布されている。また、保護素子170は、可溶導体13に代えて可溶導体175を用いた点を除いて、上述した保護素子10と同じ構成を有する。また、第1、第2の高融点金属層171,173は、上述した高融点金属層13aと同様の材料を用いて形成することができ、第1、第2の低融点金属層172,174は、上述した低融点金属層13bと同様の材料を用いて形成することができる。
【0114】
保護素子170は、溶融した第1、第2の低融点金属層172,174による第1、第2の高融点金属層171,173の浸食作用により、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上における溶融導体の凝集をより促進させるとともに、発熱体引出電極16と電極12(A1),12(A2)との各間の溶断性を向上させることができる。
【0115】
また、最下層を第2の低融点金属層174とすることにより、当該第2の低融点金属層174に、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16への接続を図る接着剤層を兼用させることができる。なお、保護素子170は、可溶導体として、高融点金属層と低融点金属層とが交互に積層されていれば、4層以上のものを用いてもよい。
【0116】
[変形例12]
図21は、可溶導体の構成を代えた保護素子の変形例である。
【0117】
図21(A)(B)に示す保護素子180は、高融点金属層181のみからなる単層の可溶導体182を用いる。可溶導体182は、それぞれNi/Auメッキ層52が設けられた電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16にハンダ等の低融点金属183を介して接続されている。これにより、可溶導体182は、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上において、低融点金属183、高融点金属層181の2層構造をなす。
【0118】
なお、可溶導体182は、高融点金属層181の表面上に、フラックス17が塗布されている。また、保護素子180は、可溶導体13に代えて可溶導体182を用いた点を除いて、上述した保護素子10と同じ構成を有する。また、高融点金属層181は、上述した高融点金属層13aと同様の材料を用いて形成することができ、低融点金属183は、上述した低融点金属層13bと同様の材料を用いて形成することができる。
【0119】
保護素子180は、可溶導体182が、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上において、低融点金属183、高融点金属層181の2層構造をなすことから、溶融した低融点金属183による高融点金属層181の浸食作用により、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上における溶融導体の凝集をより促進させ、溶断性を向上させることができる。このため、低融点金属183は、可溶導体182の高融点金属層181よりも厚く形成することが好ましい。
【0120】
また、保護素子180は、可溶導体182を高融点金属層181の単層構造であるため、簡易な工程で形成することができる。
【0121】
なお、可溶導体182においても、低融点金属183を構成する金属としてハンダを用いるとともに、高融点金属層181の表面にAu又はAuを主成分とする皮膜を形成してもよい。これにより、可溶導体182は、低融点金属183を構成するハンダの濡れ性をさらに向上させ、浸食作用を促進させることができる。
【0122】
[変形例13]
図22は、複数の可溶導体を用いた保護素子の変形例である。
【0123】
図22に示す保護素子190は、大電流用途において、保護素子190の定格を上げるために、可溶導体191を大型化したものである。ここで、可溶導体191を大型化すると、溶融時における溶融導体の体積が多くなり、溶融導体が電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16の各間に亘って凝集し、溶断できないおそれがある。
【0124】
そこで、保護素子190は、複数の可溶導体に分割すると共に、発熱体引出電極16上の可溶導体接続部16aの周辺に絶縁層192を形成する。例えば、保護素子190は、図22に示すように、第1、第2の可溶導体191a,191bを設け、全体としての定格を向上させている。第1、第2の可溶導体191a,191bは、電極12(A1)から発熱体引出電極16を経て電極12(A2)に亘って、ハンダ等の低融点金属193によって接続されている。また、第1、第2の可溶導体191a,191bは、所定の距離離間して配設されている。
【0125】
なお、第1、第2の可溶導体191a,191bは、内層を構成する低融点金属層が外層を構成する高融点金属層によって被覆された積層構造をなし、図22に示すように、低融点金属193を介して、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上に接続されている。また、第1、第2の可溶導体191a,191bは、低融点金属層と高融点金属層とが積層された積層構造とし、下層を構成する低融点金属層を介して電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上に接続してもよい。また、第1、第2の可溶導体191a,191bは、高融点金属層のみの単層構造とし、低融点金属193を介して電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上に接続してもよい。また、第1、第2の可溶導体191a,191bは、外層を構成する高融点金属層に開口部を設け、内層を構成する低融点金属層を外方に露出させる構成としてもよい。
【0126】
また、保護素子190は、発熱体引出電極16上の第1、第2の可溶導体191a,191b間の領域に絶縁層192が形成されている。絶縁層192は、溶融した第1、第2の可溶導体191a,191b同士が結合することによる溶融導体の体積の増大を防止するものであり、公知の絶縁材料を用いて公知の方法で形成される。
【0127】
なお、可溶導体191は、表面上に、フラックス(図示せず)が塗布されている。また、保護素子190は、可溶導体13に代えて複数の可溶導体191を用いた点、及び発熱体引出電極16の可溶導体接続部16aの周辺に絶縁層192を形成した点を除いて、上述した保護素子10と同じ構成を有する。また、可溶導体191は、高融点金属層として、上述した高融点金属層13aと同様の材料を用いて形成することができ、低融点金属層として、上述した低融点金属層13bと同様の材料を用いて形成することができる。
【0128】
図23に示すように、保護素子190は、第1、第2の可溶導体191a,191bが溶融した場合にも、絶縁層192によって発熱体引出電極16を伝って溶融導体が結合することが防止される。したがって、保護素子190は、可溶導体191全体の体積を増加させて定格を向上させた場合にも、溶融導体が発熱体引出電極16を伝って一方に引き寄せられ、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16の各間に亘って凝集し、溶断できない事態を防止でき、確実に溶断することができる。
【0129】
なお、保護素子190は、電極12(A1),12(A2)の可溶導体接続部周辺にも絶縁層192を設けてもよい。これにより、保護素子190は、溶融導体が電極12(A1),12(A2)を伝って一方に引き寄せられ、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16の各間に亘って凝集し、溶断できない事態を防止できる。
【0130】
なお、可溶導体191においても、低融点金属層と高融点金属層とが積層された構造を有する場合、低融点金属を構成する金属としてハンダを用いるとともに、高融点金属層の表面にAu又はAuを主成分とする皮膜を形成してもよい。これにより、可溶導体191は、低融点金属を構成するハンダの濡れ性をさらに向上させ、浸食作用を促進させることができる。
【0131】
さらに、保護素子190は、図22に示すように、電極12(A1),12(A2)の長手方向に亘って、絶縁層195を形成してもよい。絶縁層195は、溶融導体が電極12(A1),12(A2)を超えて外部電極に凝集することを防止するものであり、電極12(A1),12(A2)の可溶導体191の接続領域の外側に形成されている。絶縁層195を設けることにより、図23に示すように、保護素子190は、溶融導体が電極12(A1),12(A2)上に凝集し、外部電極まで流れることがない。
【0132】
[変形例14]
図24は、複数の可溶導体を用いた保護素子の変形例である。
【0133】
図24に示す保護素子200は、上記保護素子190と同様に、大電流用途において、保護素子200の定格を上げるために、可溶導体201を大型化したものである。
【0134】
保護素子200においては、複数の可溶導体に分割すると共に、発熱体引出電極16上の可溶導体接続部16aの周辺を、該可溶導体接続部16aよりも細く形成された幅狭部202を有する。例えば、保護素子200は、図24に示すように、第1、第2の可溶導体201a,201bを設け、全体としての定格を向上させている。第1、第2の可溶導体201a,201bは、電極12(A1)から発熱体引出電極16を経て電極12(A2)に亘って、ハンダ等の低融点金属203によって接続されている。また、第1、第2の可溶導体201a,201bは、所定の距離離間して配設されている。
【0135】
なお、第1、第2の可溶導体201a,201bは、内層を構成する低融点金属層が外層を構成する高融点金属層によって被覆された積層構造をなし、図24に示すように、低融点金属203を介して、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上に接続されている。また、第1、第2の可溶導体201a,201bは、低融点金属層と高融点金属層とが積層された積層構造とし、下層を構成する低融点金属層を介して電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上に接続してもよい。また、第1、第2の可溶導体201a,201bは、高融点金属層のみの単層構造とし、低融点金属を介して電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16上に接続してもよい。また、第1、第2の可溶導体201a,201bは、外層を構成する高融点金属層に開口部を設け、内層を構成する低融点金属層を外方に臨ませる構成としてもよい。
【0136】
また、保護素子200は、発熱体引出電極16上の第1、第2の可溶導体201a,201b間の領域に、可溶導体接続部16aよりも細い幅狭部202が形成されている。幅狭部202は、溶融した第1、第2の可溶導体201a,201b同士が結合することによる溶融導体の体積の増大を防止するものであり、発熱体引出電極16を所定パターンに印刷、焼成することにより形成される。また、幅狭部202は、発熱体引出電極16上に絶縁層を設けることにより形成してもよい。
【0137】
なお、可溶導体201は、表面上に、フラックス(図示せず)が塗布されている。また、保護素子200は、可溶導体13に代えて複数の可溶導体201を用いた点、及び発熱体引出電極16の可溶導体接続部16aの周辺に幅狭部202を形成した点を除いて、上述した保護素子10と同じ構成を有する。また、可溶導体201は、高融点金属層として、上述した高融点金属層13aと同様の材料を用いて形成することができ、低融点金属層として、上述した低融点金属層13bと同様の材料を用いて形成することができる。
【0138】
図25に示すように、保護素子200は、第1、第2の可溶導体201a,201bが溶融した場合にも、幅狭部202へは流入せず幅広の可溶導体接続部16aへ凝集し、発熱体引出電極16を伝って溶融導体が結合することが防止される。したがって、保護素子200は、可溶導体201全体の体積を増加させて定格を向上させた場合にも、溶融導体が発熱体引出電極16を伝って一方に引き寄せられ、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16の各間に亘って凝集し、溶断できない事態を防止でき、確実に溶断することができる。
【0139】
なお、保護素子200は、電極12(A1),12(A2)の可溶導体接続部周辺にも幅狭部202を設けてもよい。これにより、保護素子200は、溶融導体が電極12(A1),12(A2)を伝って一方に引き寄せられ、電極12(A1),12(A2)及び発熱体引出電極16の各間に亘って凝集し、溶断できない事態を防止できる。
【0140】
なお、可溶導体201においても、低融点金属層と高融点金属層とが積層された構造を有する場合、低融点金属を構成する金属としてハンダを用いるとともに、高融点金属層の表面にAu又はAuを主成分とする皮膜を形成してもよい。これにより、可溶導体201は、低融点金属を構成するハンダの濡れ性をさらに向上させ、浸食作用を促進させることができる。
【0141】
さらに、保護素子200においても、図24に示すように、電極12(A1),12(A2)の長手方向に亘って、絶縁層205を形成してもよい。絶縁層205は、溶融導体が電極12(A1),12(A2)を超えて外部電極に凝集することを防止するものであり、電極12(A1),12(A2)の可溶導体201の接続領域の外側に形成されている。絶縁層205を設けることにより、図25に示すように、保護素子200は、溶融導体が電極12(A1),12(A2)上に凝集し、外部電極まで流れることがない。
【符号の説明】
【0142】
10、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200 保護素子、11、41 絶縁基板、12(A1)、12(A2)、42 電極、13 可溶導体、13a、43a 高融点金属層、13b、43b 低融点金属層、14、44 発熱体、15、45 絶縁部材、16 発熱体引出電極、17、47 フラックス、18(P1),18(P2)、48 発熱体電極、19 、92カバー部材、20 バッテリパック、20a 正極端子、20b 負極端子、21〜24 バッテリセル、25 バッテリスタック、26 検出回路、27、31,32 電流制御素子、30 充放電制御回路、33 制御部、35 充電装置、41a ガラス層、51 溜まり部、52 Ni/Auメッキ層、61 開口
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