【実施例】
【0018】
〔実施例1〕
図1乃至
図6−1,6−2における、既設の並行トンネル50,60の上部を跨いで載置する拡幅シールド機Aは、いわゆる開放型シールド機である。この拡幅シールド機Aは、切羽の自立性の高い地盤又は地盤改良された地盤34など、切羽の安定が保たれる地盤で用いられ、その切羽を直接、あるいは小型の掘削具を用いて人力で掘削し、推進する。そして拡幅シールド機Aには、略弧状の上板1と、両端部をトンネル50,60の既設セグメント14の上部の外径に沿う形状を有する下板2に、また、必要により両端の側板21を含む複数の仕切フレーム3を介在し、拡幅シールド機Aの前部に上板1、下板2、側板21及び仕切りフレーム3で形成された隔壁8前方フード4内の掘進部に掘削室10を形成する。また、フード4にある上板、下板、あるいは側板の先端に、切削刃4’を取り付けることもできる。このシールド機Aの横断面は略弓形である。この例では、上板と下板を仕切フレーム3と、これらの後部にある隔壁8で掘削室10を仕切っているが、上板、下板の構造によっては、仕切フレーム3が不要な場合もある。
図1と2では、上板1と下板2の両端に側板を21を設けているが、上板の端部を湾曲させて、下板と接合して、弓形状断面を形成しても良い。掘削室10の前面の地盤34における切羽5は、掘削室10において人力あるいは、ビックハンマーなどの掘削具を用いて掘削する。前記した掘削室10の後部の隔壁8とその後方にある補強リブ11間の作業室12にジャッキ9を設置して拡幅シールドを推進させる。
【0019】
図4に示すように、前記掘削室10の下部には、断面水平方向両端から中央に掘削土砂を運ぶ1対のベルトコンベア20と、それとクロスした前中央にトンネル軸方向のベルトコンベア6とにより、掘削土砂を後方へ搬送する。ベルトコンベア6は、隔壁8の下部に設けた開口部7を通り、作業室12の下部に設けた土砂ホッパー12’に掘削土砂を落すようにしている。土砂ホッパー12’の下部には、開口12−1があり、前記拡幅シールド機Aの掘進と併行して、シールド機の下部の地山40を既知の掘削手段により掘削して形成した下部掘削部16へ掘削土砂を落す。このために、土砂ホッパー12’の下部に、開口蓋を設けると好適である(図示せず)。下部掘削部16に落された掘削土砂は、既往の土砂積込・運搬装置により、後方へ搬出される(図示せず)。
【0020】
隔壁8とその後方にある補強リブ11間の作業室12にあるシールドジャッキ9を多数本設置し(
図3と
図4では1本の連結セグメント13間に2本づつ14本記載されている)、ジャッキ9のスプレッダー9−1を補強リブ11の後方にある連結セグメント13に当接して、ジャッキ9を伸長しながら、拡幅シールド機Aを推進させ、ジャッキ9を収縮することで、できたスペースに新たな連結セグメント13を拡幅トンネルの天井部として組立てて、拡幅シールド機Aを推進する。
また、前記拡幅シールド機Aの下板2は、前記したように、トンネル50,60の上部にある既設セグメント14の外径(外周面)に沿った形状を有することにより、既設セグメント14を跨いで接触載置して掘進するか、下板2をわずかな未切削土砂を介して載置することにより、拡幅シールド機Aを掘進する。このため、少なくとも2箇所当該並列トンネルのセグメントに支持されるので、拡幅シールドを正しい姿勢で掘進することができ、正確かつ容易に連結セグメントを組立てることができる。なお、拡幅シールド機がトンネル50,60の上部セグメント14から離脱しないように、セグメント14上と下板2下に軌道(図示せず)を設けておくこともできる。
下板2は、掘進する周囲の地盤が自立性が高く、地下水も少なく、漏水もない地盤の場合、全面板状である必要はなく、橇のように部分的に隙間を有する部分板状のものであっても良い。
【0021】
図1乃至
図4に示される、拡幅トンネルの拡幅シールド機Aの下方にある既設トンネル50,60間の下部地盤40に、それより径の小さい先行トンネル15を、拡幅トンネルに先行して設置しておき、この先行トンネル15は、例えば当初実施された地盤改良の効果を確認したり、地盤改良の結果残留した溜り水などを排水するために、
図2に示す地盤40からの出水を導管17で導く。またトンネル内にレールを敷設して掘削土を排出する台車18を設置しておくこともできる(
図3)。
先行トンネル15は、既知のシールド工法あるいは推進工法で、築造しても良い。なお、地盤が自立性が高い場合には、先行トンネルを設けなくても良い。
【0022】
拡幅シールド機Aの前部にある下板2は、
図2に示すように、既設の並行トンネル50,60間に跨いで設置し、後部の下板2下側では、
図3に示すように、並行トンネル50,60のセグメント14にある上部セグメント14−1を取り外し、地盤16を掘削してからセグメント組立装置22で、上部セグメント14−1より大径の連結セグメント13を例えば周知のボルト、ナットによって並行トンネル間に拡幅したトンネルとして架け渡して組立てるようにしている。
【0023】
並行トンネル50,60内には、それぞれのトンネルの両側に縦桁23が予め設置され、又トンネル内の水平方向上下に横桁25、26が設けられている。これらは、連結トンネルを築造するにあたり、並行トンネルのセグメントの取り外しに伴いトンネル形状を維持するための補強材である。また、上側の横桁26上部には作業床版24を取り付ける。
間隔を置いて設置した下側横桁25の直角方向(つまりトンネル軸方向)に、2本のレール28を敷設する。このレール28の上に移動可能な移動台車29をそれぞれ設置する。また、各並行トンネル50,60内には、下側横桁25と間隔を置いて、横桁25と併行する作業床24上に2本づつレール36をトンネル軸方向に敷設して、各並行トンネル50,60に2台の移動台車35を載置する。この移動台車35上には、前記上部セグメント14−1を取り外して並行セグメント50,60間の地盤40を掘削してから、並行トンネル50,60間にレール桁27(レールが設けられた桁)を据えつける。この移動台車35は、レール桁27上に移動可能なセグメント組立装置22を設置する。既存のセグメント組立装置22は、連結セグメント13を把持し、所定の組立位置へ持ち上げて、連結セグメント13を並行トンネル間に組立てることを可能にしたものである。
【0024】
前記並行トンネル50,60間の地盤40を掘削した掘削土砂は、横桁25上のレール28上を走行する鋼車29により、トンネル後方に搬送されるようにしている。
【0025】
なお、
図6−1、
図6−2に示すように、拡幅シールド機Aの後部における上板1と下板2間のトンネル軸方向に設置した裏込注入管30により、連結セグメント13と地盤16間の空隙へコンクリートの裏込材31が注入される。
裏込材を注入する時、連結セグメント13とシールドテール部の内板(2−1)の間から、シールド機内に漏出するのを防止するためにテールシール(31−1)が設けられる。なお、31−2は、テール部の妻板であり、空隙高さが大きい場合に設ける。
【0026】
図7は、本発明の拡幅シールド機Aを用いてトンネル50,60間を拡幅したものである。トンネル50,60間の下部に地盤改良材32を施してから、セグメント14−2を取り外し、トンネル50,60の外周部の掘削区域を既往の手段で掘削する。そして場所打ちコンクリート33を打設してトンネル固定部を築造する。
【0027】
〔実施例2〕
図8は、実施例1の拡幅シールド機Aとは別のセグメント組立体39の後部機構(
図3とは別の実施例)を用いた拡幅トンネルA’の横断面図である。
本発明の拡幅シールド機A’の後部は、上板1と同心円的に形成されたレール36と、これと同心円でやや小径に形成されたレール37を一定間隔で敷設し、その間をセグメント組立装置39の移動空間38とし、この空間38内の前記レール36とレール37に沿って移動自在なセグメント組立装置22’により、連結セグメント13を連結して組立てる。
【0028】
〔実施例3〕
図9乃至
図12は、実施例1の前部機構に掘削装置を付加した、更に別の拡幅シールド機Bの前部機構である。ここでの拡幅シールド機Bに配設された回転型掘削装置により、比較的硬い地盤、あるいは、そこで地下水の多い地盤34の切羽を掘削する。
【0029】
図9は、実施例1の拡幅シールド機Aに後述する前部機構を付加した拡幅シールド機Bの上板1と下板2間の隔壁8の前部中央に、掘削するトンネル軸方向の前面に多数のカッター刃42を設置したカッタヘッド43を回転させる回転軸41を駆動部としてのモーター44で回転させる。このカッタヘッド43の両側には、複数のスクリュー掘削装置46を配置する。このスクリュー掘削装置46は、駆動モーター45で回転し、スクリュー掘削ビット48で地盤を掘削する。そして、スクリュー掘削装置46のスクリュー羽根47の回転により、掘削ズリをシールド断面の中央へ移動させる。
図10は、隣接する左右4個ずつのスクリュー掘削装置46を平面から見て一部重合して並設し(
図10)、これを正面から見ると左右に各3台のスクリュー掘削装置を重合して設置している(
図9)。
このスクリュー掘削装置46は、その一部が重合して設置されているので、両端部からの掘削ズリをスクリュー装置46で中央へ移動させながら掘削が可能である。
【0030】
図11は、前記
図9、
図10の拡幅シールド機Bを用いて地盤40を掘削している状態の縦断面図(実施例1の
図5に対応)である。なお、スクリューコンベア49は、前記実施例のベルトコンベア6に代わるもので、掘削ズリは掘進部と作業室を仕切る隔壁8に取り付けられたスクリューコンベア49から作業室12内に取り込むようにしている。この例では、スクリュー掘削装置46及びカッタヘッド43で掘削した掘削ズリは、添加材の注入と攪拌により、塑性流動性のある泥土に変換されるため、圧力を持っていても水と異なり地山とシールド下板2の間から、前記下部掘削部16へ侵入しない。特に、通常のカッタヘッド43の両側の弧状にしたスクリュー掘削装置46は、
図9のように、下から横方に3台(
図10では4台)を一部重複して支持台48に枢着して設置され、これらにより切羽を掘削する。
なお、
図12は前記スクリュー掘削装置46を横断したもので、スクリュー掘削装置46の外縁に多数のビット48を配置する。このようにして、スクリューの回転と拡幅シールド機の前進によって、切羽を掘削することができる。そして、拡幅シールド機の中央下部には、トンネル軸方向に平行して排土用スクリューコンベア49を配置している。回転モーター49−1の回転により、掘削された掘削ズリは、拡幅シールド機Bの後方へ送られ、下板2に設けた排土口49−2より下方に形成された下部掘削部16へ落下する(
図11)。
これより以降は、実施例1と同様である。
【0031】
図13は、並行トンネルのうち径の大きい方が、道路トンネルにおける本線トンネル300で、径の小さい方がランプトンネル400であり、それぞれのトンネル上部に拡幅する拡幅シールド機Bは、その下板200を各トンネルの上形に沿って載置される。そして拡幅シールド機Bは、6本の仕切フレーム301と両端の側板201を下板2と上板1との間に配置されている。その他は、実施例1と同じである。
【0032】
以下に、実施例1乃至3の拡幅シールド機を用いたトンネルの拡幅方法について説明する。
まず、
図5に示すように、従来技術を用いて、拡幅区間の始点又は終点の端部にある並行トンネル50,60の上部14−1を取り外して、手掘りあるいは掘削重機で地山を掘削し、トンネル拡幅部の発進基地70、反力壁71、周壁71−1、及び坑口コンクリート72を構築して発進基地70が築造される。ついで、拡幅シールド工法の地中発進と同様に、発進基地70内に発進架台を設置し、拡幅シールドA,A’,Bの部品を順次地上より並列シールド内に運搬し、発進架台上で組み立てて連結シールドを製作する(図示せず)。拡幅シールド機後方で連結セグメントを1リング以上組立て、その後方と反力壁に推力伝達枠を組立てる。次いで、坑口コンクリートを研り、地山を露出させて、拡幅シールド機を掘進する。
【0033】
拡幅シールド機は、地山34を掘削しつつ、シールドジャッキ9を伸長することにより推進される。それと併行して、拡幅シールド機の下方の地山40を掘削して、上記シールド掘削土砂が排出されて下部掘削部16を形成し、かつ、各セグメントを搬入、組立てる作業空間が確保される。
【0034】
この際、拡幅シールド機A,A’,Bの前部は地山34中にあるが(
図2)、その後部の下方は、前記したように別に併行して掘削されており、並行トンネル50と60、100と200、又は300と400の上部セグメント14−1を取り外して、連結セグメント13を組み立てる。
【0035】
上部セグメント14−1を取り外してからは、前記伸長したシールドジャッキ9を収縮し、
図3、
図8に見られるように、トンネル拡幅用の連結セグメント13の一端を、セグメント14−1の取り外しにより残された方の残置セグメント14の一端に継合し、上板1に沿って並行トンネル間に連結セグメント13を組立てる。詳しくは、各並行トンネルの後方からレール28上のセグメント台車で搬送された個々の連結セグメント13を、作業床24上にあるトンネル軸方向のレール26上を走行する移動台車35によりセグメント組立装置22、22’まで移動し、セグメント組立装置22、22’で連結セグメント13を持ち上げ、連結セグメント13を弧状に組み立てる。
本実施例において、切羽を掘削する回転型掘削装置は、いずれも回転モーター部分を密閉型にしておくことにより、切羽部分と隔壁8,8’によってシールド後部と区画することで既往の土圧式(泥土圧を含む)拡幅シールド機として使うことができる。これによれば、切羽の安定性も良くなるため、より地盤改良区間を低減することが可能となり、工期短縮、工費低減に資することができる。
【0036】
拡幅シールド機の掘進→下部地盤掘削→並行トンネル上部セグメント取外し→連結セグメント組立→拡幅シールド掘進と順次工程が所要の連結トンネル区間において終了すると、拡幅トンネルの上部を完成するが、その後は両トンネル下方の地盤を改良し、
図7に示すように並行トンネル50と60、100と200、又は300と400との相対する側の上部セグメント14−1を取り外して、両トンネル間の地山16,40を掘削し、場所打ちコンクリート33を打設してトンネル下部固定部を築造する。