(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249628
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】コンクリート舗装における骨材露出方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/14 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
E01C7/14
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-89082(P2013-89082)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-211062(P2014-211062A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】592179067
【氏名又は名称】株式会社ガイアート
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(72)【発明者】
【氏名】竹井 利公
(72)【発明者】
【氏名】小竹 勇太
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓
(72)【発明者】
【氏名】寺松 淳一
(72)【発明者】
【氏名】池本 義行
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−036154(JP,A)
【文献】
特開平10−102407(JP,A)
【文献】
特開2001−106583(JP,A)
【文献】
特開平10−053444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/14
E01C 5/06
B28B 11/00−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの骨材を表面に露出させる方法であって、
コンクリート打設後、コンクリートが凝結する前に、不飽和ポリエステル、アミン系界面活性剤及び水を混合分散した不飽和ポリエステル分散液を、コンクリート表面上に散布し、コンクリート層に浸透ないし浸入させる工程と、
前記工程の後、前記コンクリートが完全硬化する前に、前記コンクリート表面のモルタル部の一部を除去してコンクリートの骨材を表面に露出させる工程とを具備する
骨材露出方法。
【請求項2】
コンクリートの骨材を表面に露出させる方法であって、
コンクリート打設後、コンクリートが凝結する前に、不飽和ポリエステル、アミン系界面活性剤、被膜養生剤及び水を混合分散した不飽和ポリエステル分散液を、コンクリート表面上に散布しコンクリート層に浸透ないし浸入させる工程と、
前記工程の後、前記コンクリートが完全硬化する前に、前記コンクリート表面のモルタル部の一部を除去してコンクリートの骨材を表面に露出させる工程とを具備する
骨材露出方法。
【請求項3】
コンクリートの骨材を表面に露出させる方法であって、
コンクリート打設後、コンクリートが凝結する前に、不飽和ポリエステル、凝結遅延用助剤及び水を混合分散した不飽和ポリエステル分散液を、コンクリート表面上に散布しコンクリート層に浸透ないし浸入させる工程と、
前記工程の後、被膜養生剤を散布する工程と、
前記工程の後、コンクリートが完全硬化する前に、前記コンクリート表面のモルタル部の一部を除去してコンクリートの骨材を表面に露出させる工程とを具備する
骨材露出方法。
【請求項4】
前記不飽和ポリエステル分散液は、
不飽和ポリエステル100質量部に対して、アミン系界面活性剤が1〜100質量部、水が10〜1000質量部の割合から成る
請求項1の骨材露出方法。
【請求項5】
前記不飽和ポリエステル分散液は、
不飽和ポリエステル100質量部に対して、アミン系界面活性剤が1〜100質量部、被膜養生剤(固形分)が1〜200質量部、水が10〜1000質量部の割合から成る
請求項2の骨材露出方法。
【請求項6】
前記不飽和ポリエステルは、
ポリオールと多塩基酸とが用いられて構成されたものであって、重量平均分子量が300〜25000である
請求項1〜請求項5いずれかの骨材露出方法。
【請求項7】
前記不飽和ポリエステルは、
グリコールと二塩基酸とが用いられて構成されたものであって、重量平均分子量が300〜25000である
請求項1〜請求項6いずれかの骨材露出方法。
【請求項8】
前記不飽和ポリエステルは、スチレン系モノマーで架橋されていないタイプのものである
請求項1〜請求項7いずれかの骨材露出方法。
【請求項9】
凝結遅延用助剤がアミン系界面活性剤である
請求項3〜請求項8いずれかの骨材露出方法。
【請求項10】
前記被膜養生剤はコンクリート面からの水の逸散を防ぐ剤である
請求項2〜請求項9いずれかの骨材露出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート舗装における骨材露出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート舗装の粗面化仕上げ方法としては、ほうき目仕上げ、グルービング仕上げ及び骨材露出仕上げがある。一般道の殆どの工事では、ほうき目仕上げが行われ、高速道路の工事では、骨材露出仕上げが行われている。ほうき目仕上げは、コンクリート打設後、コンクリートが未だ硬化しないうちにシュロほうきや、竹ほうき等でコンクリート仕上げ面を粗面に仕上げる方法である。この方法は、施工が容易であるが、ほうき目が消えやすく、ほうき目が消えてから骨材が露出するまでの間、極端にすべり抵抗が小さくなること、トンネル内で施工した場合はコンクリート面のモルタル分が飛散し、トンネル内の環境を悪化させること等が問題である。なお、ほうき目仕上げは、滑りが問題となることから高速道路では原則として採用されていない。
【0003】
グルービング仕上げは、道路の路面に溝を刻む工法で、進行方向並行に溝を掘るもの(縦溝)と、直角に溝を掘るもの(横溝)の2つの方法がある。グルーピング施工をすることで、施工後の溝へのタイヤの食い込み作用により、すべり抵抗が確保され、急なカーブや高速車線、雨天時のスリップ事故などに有効に作用する。ほうき目仕上げに比べ粗面が持続することから、一時期高速道路で使用されていたが、タイヤ/路面騒音(以下、騒音と記す)が著しくなるために現在では殆ど採用されていない。
【0004】
骨材露出仕上げは、予め、コンクリート打設後、コンクリート表面部のモルタル部を取り除き、粗骨材を露出させる方法である。ほうき目仕上げのようなすべり抵抗の不安定さや、トンネル内環境の粉塵による著しい悪化の問題は生じない。また、グルービング仕上げに比べて騒音低減効果もある。さらにコンクリートの粗骨材最大粒径を小粒径化することにより尚一層の騒音低減効果が期待できる。
【0005】
この骨材露出仕上げ方法は、東・中・西日本の高速道路工事に於ける標準工法となっており、現時点では最も望ましい表面仕上げ工法と考えられている。尚、この工法によりコンクリート表面のモルタル部を取り除き出来た凹凸は、レイタンスや表層部分の脆いモルタル部を取り除き出来たものであり、この凹凸面に新しいコンクリートを打ち足せば十分な付着力を得ることができる。
【0006】
しかし、骨材露出仕上げは、施工が難しく、また施工費が高価という短所がある。骨材露出仕上げは、コンクリート打設後、コンクリート表面に凝結遅延剤(以下、「遅延剤」という。)を散布(噴霧)し、散布後コンクリート表面が完全硬化する前に表面モルタル部を例えばワイヤブラシを備えたブラッシング機械等により取り除き、粗骨材を露出させる工法である。
【0007】
遅延剤に関し、現に使用されているものは、温度、湿度、風等の条件により効果が大きく変動するので、1時間ごとにゴム硬度計でモルタル部の硬さを確認し、硬度が30〜40程度の時を目標に、モルタル部の取り除きを行わなければならない。モルタル部を取り除くタイミングが早すぎると骨材が飛散したり、遅すぎると削れなかったりする。このため、均一な路面とするためには十分な時間的タイミング確保が必要となる(=施工が難しい)。
【0008】
また、市販されている遅延剤は、遅延効果が最大2日間程度までしか持続しない。そのため、モルタル部の取り除き時にコンクリートの強度が十分でないので、作業機械を舗装面へ載せて作業することができず、取り除くには舗装面を跨ぐことのできる大型の特殊機械が必要となるので高価な工法となってしまう。
【0009】
また、遅延剤は、水に溶出し易い為、その機能を効果的に発揮させる為の管理に手間がかかると言う問題がある。例えば、雨水や散水による溶出を防止すべく、散布した遅延剤をビニールシートなどの養生シートで覆い敷設する必要が有る。しかしながら、広大な面積を有する舗装面の全体に養生シートを敷設する作業は極めて煩雑且つ難作業である。
【0010】
このような観点から、コンクリート舗装面を遅延剤によって覆い、養生期間の経過後に、表面のモルタル分を取り除いて骨材を露出させる骨材露出工法が提案されている。(特許文献1)
【0011】
特許文献1に記載の骨材露出工法は、グリコールと二塩基酸とを主成分とし、重量平均分子量が300〜25000の不飽和ポリエステルを、樹脂としての機械特性を向上させるとともに遅延剤としての対水性の制御を目的としてスチレン系モノマーを不飽和ポリエステル100質量部に対して、1〜50質量部を添加し、不飽和ポリエステルを架橋させ、水には溶解せず、アルカリ水に対しては加水分解する形にすることによってセメントの遅延性を発現させるものである。
【0012】
しかしながら、特許文献1の発明でも、経済性、作業性、有害性及び効果等の面から不十分なことが判って来た。
先ず、不飽和ポリエステルをスチレン系モノマーで架橋したものは、遅延剤としては高価である。更に、この遅延剤を使用しての骨材露出工法は作業性が極めて悪い。即ち、特許文献1の段落番号[0011]の記載に基づくと、敷き均したコンクリートの表面を、遅延剤によって覆う方法として、その実施例等では、遅延剤を予め、可撓性を有するシート(或いは紙)に対して固着せしめておき、この遅延剤固着シートをコンクリート表面に敷設する方法が記載されている。
【0013】
上記の方法は、段落番号[0009]にも記載されている通り、未だ固まらない広大な面積を有するコンクリート上全面に遅延シートを敷設する作業は煩雑且つ難作業となるとともに、敷設した遅延シートは風などでめくれ易いという問題、遅延シートとコンクリートの間に空気が入ったり、表面の僅かな凹凸でシートがコンクリートに密着できない所ができたりして、凝結遅延効果を均一に発現させることができない等の問題がある。
【0014】
また、段落番号[0037]においては、「……遅延剤12は、シート状に形成して使用する必要は必ずしもなく、例えば粉体タイプや塗剤タイプのものとして使用することもでき……」の記載が認められるものの、重量平均分子量が300〜25000の不飽和ポリエステルは油状(グリース状)で高粘性であることから散布や、まだ軟らかいコンクリート上に均一に塗布することは実質的には難しい。
【0015】
また、不飽和ポリエステルを架橋する目的で使用するスチレン系モノマーは人的有害性の観点からもその使用は望ましくない。
【0016】
上記方法は、段落番号[0014][0015]の理由から、散布して使用できないので、実際の現場では行えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10−88507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記先行技術は、材齢7日まで洗い出せ、洗い出しのタイミングも日単位であるが、実質シート状にして使用する必要があり、実際の現場ではシート状のものを使用するのは困難である。一方、市販の遅延剤を散布する方法は実際の現場で施工可能であるが、せいぜい材齢3日程度までしか洗い出せず、しかも洗い出しのタイミングも時間単位であり、施工が難しい。
そこで、本発明は、遅延剤を散布する方法で、少なくとも材齢7日位までは余裕をもって洗い出せるようにし、洗い出しのタイミングも日単位とすることができ、低廉なコストで、かつ、簡単に、コンクリートの骨材を表面に露出させる方法を提供するものである。
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、上記方法による遅延効果(少なくとも材齢7日位でも洗い出せる)を散布型の遅延剤(市販の散布型遅延剤はせいぜい材齢3日程度までしか洗い出せない)で実現させ現場に使用できるようにし、現場施工費が低廉で、毒性がなく、且つコンクリート打設後、モルタル部をブラシ等で除去するまでにコンクリート表面層の凝結を遅延させるに必要とする十分な時間的タイミングを確保ができる粗骨材露出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者等は、課題解決の達成手段として、先ず、遅延剤として不飽和ポリエステルを選定し、それを水で希釈し散布できるようにし、遅延効果(モルタル分削出作業性)を検討した。
【0021】
ところが、不飽和ポリエステル水溶液自体では、コンクリート表面層の凝結を遅延させる効果(モルタル分削出作業性)は予想に反し不充分であることが判った。
【0022】
その原因を調べた処、不飽和ポリエステル水溶液をコンクリート表面に散布(例:噴霧)しただけでは、散布した不飽和ポリエステル水溶液がコンクリート上で材料分離し不飽和ポリエステルとコンクリートの間に水が介在するようになり、不飽和ポリエステルの加水分解が阻害されて、遅延成分の溶出が少なくなって、遅延機能が発現されないことが判明した。
【0023】
本発明者等は、コンクリート上に散布した不飽和ポリエステル水溶液が分離せずに、不飽和ポリエステル分がコンクリートと接することができ、しかもコンクリートの凝結を遅延させる方法として、不飽和ポリエステルに凝結の遅延を助長する物質を組み合わせることを着想した。そして凝結遅延を助長する適性物質はどの様なものが適しているかとの観点から、その機能を発現する物質(凝結遅延用助剤)の探索及び適性について検討を行った。その結果、アミン系、反応性系、アルキル硫酸塩型、陽イオン系、陽イオン・両性系等の界面活性剤にその効果が認められるものが確認できた。
【0024】
具体的には、アミン系ではトリエチレンテトラミン(商品名「TETA」)、反応性系では2−ソジウムスルホエチルメタクリレート(商品名「アントックスMS−2N」)、アルコキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名「アントックスLMA−10、アントックスLMA−20、アントックスLMA−27」)、アルキル硫酸塩型では硫酸アルコール硫酸ナトリウム(商品名「アルスコープLS−25B」)、陽イオン系ではポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム(商品名「カチナールSTB−70」)、そして陽イオン・両性系ではアルキルベタイン(商品名「テクスノールR2」)を挙げることが出来る。
【0025】
更に検討を重ねた結果、これらの界面活性剤の中でもアミン系界面活性剤が不飽和ポリエステルとの混和性、混合分散液の安定性、コンクリートの凝結遅延用助剤としての適性等の面からより相性が良いことが確認された。
【0026】
本発明者等は、更にアミン系界面活性剤を検討する中で、トリエチレンテトラミン(商品名「TETA」)がより優れた適性を有することを確認した。
【0027】
本発明は、不飽和ポリエステルに凝結の遅延を助長する凝結遅延用助剤を組み合わせ所望の効果を得ることに特徴がある。従って、前記界面活性剤はその適性を有する物質の例示であり、当該凝結遅延用助剤としての機能を発現する物質は本発明に適合することから、凝結遅延用助剤は前記の界面活性剤に特定されるものではない。
【0028】
本発明者等は、進んで凝結遅延を助長する適性の有る物質について、不飽和ポリエステルとどのように組み合わせると目的に適合するかを検討した。
【0029】
本発明者等は、上記検討において、不飽和ポリエステルに上記の凝結遅延用助剤とを混合させ、この混合分散液を遅延剤として散布した場合、この混合液は材料分離せず、そのため、不飽和ポリエステル分がコンクリートと接することができるようになり確実に加水分解し遅延成分が溶出して、十分な遅延効果を発揮することを確認した。そしてコンクリート板上に大型機械を載せれるようになる材齢7日でもブラッシング機械等で均一にモルタル分を除去できることを確認した。更に、材齢1日から7日まで、ブラッシング機械等による洗い出し深さはほぼ同程度で、洗い出しのタイミングが広範囲であることも確認した。
【0030】
本願発明は、斯かる検討結果を基に完成したものである。
【0031】
解決しようとする課題は、コンクリート打設後、コンクリートが凝結する前に、不飽和ポリエステル、前記凝結遅延用助剤及び水を混合分散した不飽和ポリエステル分散液を、コンクリート表面上に散布する工程と、前記工程の後、前記コンクリートが完全硬化する前に、前記コンクリート表面のモルタル部の一部を除去してコンクリートの骨材を表面に露出させる工程とを具備することを特徴とする骨材露出方法によって解決される。
【0032】
更に解決しようとする課題は、コンクリートの骨材を表面に露出させる方法であって、コンクリート打設後、コンクリートが凝結する前に、不飽和ポリエステル、前記凝結遅延用助剤、被膜養生剤及び水を混合分散した不飽和ポリエステル分散液を、コンクリート表面上に散布する工程と、前記工程の後、前記コンクリートが完全硬化する前に、前記コンクリート表面のモルタル部の一部を除去してコンクリートの骨材を表面に露出させる工程とを具備することを特徴とする骨材露出方法によって解決される。
【0033】
更に解決しようとする課題は、コンクリートの骨材を表面に露出させる方法であって、コンクリート打設後、コンクリートが凝結する前に、不飽和ポリエステル、前記凝結遅延用助剤及び水を混合分散した不飽和ポリエステル分散液を、コンクリート表面上に散布する工程と、前記工程の後、被膜養生剤を散布する工程と、前記工程の後、コンクリートが完全硬化する前に、前記コンクリート表面のモルタル部の一部を除去してコンクリートの骨材を表面に露出させる工程とを具備することを特徴とする骨材露出方法によって解決される。
【発明の効果】
【0034】
従来の散布型遅延剤を使用する場合、遅延の効果はせいぜい3日程度であったが、本発明の骨材露出方法の散布型遅延剤を使用すると、凝結遅延を少なくとも7日程度に延ばすことか出来る。従って大型機械を路面に載せてモルタル分を取り除くことができるようになると同時に、取り除くタイミングの取り方も時間単位では無く日単位となり、低廉なコストで、かつ、簡単に、コンクリートの粗骨材を表面に露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本願発明を実施したコンクリート面の平面写真画像である。セメントコンクリートを打設し、表面の水光が消えた時点で、不飽和ポリエステル、凝結遅延用助剤にトリエチレンテトラミン(商品名「TETA」)、及び水を混合分散した不飽和ポリエステル分散液を散布し、材齢7日目に、ワイヤーブラシを用いてコンクリート表面のモルタル部の一部をで除去した際の、粗骨材の表面露出状態(粗骨材が綺麗に露出している)を示す平面写真画像である。
【
図2】本願発明を実施したコンクリート面の平面写真画像である。セメントコンクリートを打設し、表面の水光が消えた時点で、不飽和ポリエステル、凝結遅延用助剤に2−ソジウムスルホエチルメタクリレート(商品名「アントックスMS−2N」)及び水を混合分散した不飽和ポリエステル分散液を散布し、材齢7日目に、ワイヤーブラシを用いてコンクリート表面のモルタル部の一部をで除去した際の、粗骨材の表面露出状態(粗骨材が綺麗に露出している)を示す平面写真画像である。
【
図3】比較例として実施したコンクリート面の平面写真画像である。セメントコンクリートを打設し、表面の水光が消えた時点で、凝結遅延用助剤を使用しない不飽和ポリエステル分散液を散布し、材齢7日目に、ワイヤーブラシを用いてコンクリート表面のモルタル部の一部の除去を試みたが除去出来なかった。
図3は、そのコンクリート面の状態を示す平面写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本願発明における骨材露出方法における実施形態は、遅延剤としての不飽和ポリエステル分散液は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、前記凝結遅延用助剤が1〜100質量部、水が10〜1000質量部の割合から成る混合分散を使用することを特徴とする。
【0038】
本願発明における骨材露出方法における実施形態は、遅延剤としての不飽和ポリエステル分散液は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、前記凝結遅延用助剤が1〜100質量部、被膜養生剤(固形分)が1〜200質量部、水が10〜1000質量部の割合から成る混合分散を使用することを特徴とする。
【0039】
本願発明における骨材露出方法における実施形態は、遅延剤としての不飽和ポリエステル分散液は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、前記凝結遅延用助剤が1〜100質量部、水が10〜1000質量部の割合から成る混合分散を使用し、更にかかる遅延剤を散布した後に、被膜養生剤を散布することを特徴とする。
【0040】
本願発明の骨材露出方法において、前記不飽和ポリエステルは、ポリオールと多塩基酸で構成され、重量平均分子量が300〜25000のものが好ましく使用し得る。
【0041】
前記不飽和ポリエステルは、好ましくは、グリコール(ジオール化合物)と二塩基酸が用いられて構成されたものが好ましく使用し得る。
【0042】
グリコールは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコールや、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレンクセリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0043】
これらのグリコール成分は単独で又は二種以上を組合せても使用できる。
【0044】
二塩基酸は、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸や、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0045】
これらの多価カルボン酸は単独で又は二種以上の組合せでも使用できる。
【0046】
不飽和ポリエステル樹脂は、強度、伸度、可撓性、柔軟性、耐性などの観点から、前記グリコール成分及びジカルボン酸成分以外の成分により改質されていても良い。例えば、前記グリコール成分及びジカルボン酸成分の少なくとも一方の成分の一部に代えて、多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸など)などを共重合することができる。
【0047】
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸又はこれらの誘導体から選択された芳香族ジカルボン酸又はその誘導体を含む多価カルボン酸成分は、不飽和ポリエステルの強度、伸度、可撓性、柔軟性、耐水性などの特性が調整されるのに有用である。前記不飽和ポリエステルは、好ましくは、その重量平均分子量が300〜25000である。
【0048】
本願発明の骨材露出方法において、前記不飽和ポリエステルは、スチレン系モノマーで架橋されていないタイプのものであることを特徴とする。
【0049】
本願発明で、不飽和ポリエステルと混合する前記凝結遅延用助剤は、不飽和ポリエステルに凝結の遅延を助長する効果のある物質であれば基本的に本発明に適合する。その具体例を挙げるならば、下記物質に限定するものではないが、アミン系、反応性系、アルキル硫酸塩型系、陽イオン系、陽イオン、両性系及び反応性系等の界面活性剤でその効果が認められるものは対象となる。そして、中でもアミン系界面活性剤は不飽和ポリエステルとの混和性、混合分散液の安定性、凝結遅延用助剤としての適性等の面から相性も良く、トリエチレンテトラミンは特に優れた適性を有する。
【0050】
被膜養生剤の使用目的は、コンクリート面からの水の逸散を防ぎ、コンクリートの品質を確保することである。
その使用方法は、不飽和ポリエステル分散液に混合した形態で使用しても良いし、その単独液を遅延剤を散布した後のコンクリート層表面に更に散布する形態で使用しても良い。
【0051】
被膜養生剤としては、種々の被膜養生剤が用いられる。例えば、二液硬化型のエポキシ系の被膜養生剤、パラフィン系の被膜養生剤、水性エマルジョン系の被膜養生剤が用いられる。
【0052】
例えば、末端がエポキシ基であって分子中にビスフェノール骨格を含むエポキシ樹脂のエマルジョンと、水に分散可能なポリアミンやポリアミノアミドを混合して得られるコンクリート膜養生剤を用いることが出来る。
【0053】
セルロース類を含有する水溶液からなるモルタル・コンクリート用塗膜養生剤を用いることが出来る。
【0054】
ポリマーエマルジョンにリチウム塩を混入した被覆養生剤を用いることが出来る。ポリマーエマルジョンとしては、例えばアクリル系樹脂エマルジョン、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンやポリビニルアルコール系樹脂エマルジョン等の合成樹脂エマルジョン、合成ゴム水性ラテックス、天然ゴム水性ラテックス等の水性ポリマーエマルジョンが挙げられる。
【0055】
前記リチウム塩としては、珪酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、亜硝酸リチウム、硝酸リチウム等の吸湿性のリチウム塩を用いることが出来る。
【0056】
前記アクリル系樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、メタクリル酸エステル共重合体樹脂、アクリル酸エステル・スチレン共重合体樹脂等が挙げられる。
【0057】
前記酢酸ビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル・エチレン共重合樹脂、変性酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル・ベオバ共重合樹脂、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合樹脂等が挙げられる。
【0058】
ポリビニルアルコール系樹脂は、完全ケン化型、中間ケン化型、部分ケン化型のいずれの型のものも使用できる。
【0059】
合成ゴム水性ラテックスとしては、SBRラッテクス、NBRラテックス、クロロプレンゴムラテックス等が挙げられる。
【0060】
天然ゴム水性ラテックスも使用できる。
【0061】
前記散布工程の後、前記コンクリートが完全硬化する前に、前記コンクリートの一部(モルタル部)が除去される。この工程は、所謂、グリーンカット工法とか、水を用いて洗い出す工法とか、ワイヤブラシを備えたブラッシング機械によって表面のモルタル部を取り除く方法が、適宜、採用される。勿論、前記手法に限られるものではない。これにより、コンクリートの骨材が表面に露出することになる。
【0062】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
先ず、不飽和ポリエステル分散液を用意した。分散液に用いられた不飽和ポリエステルは、重量平均分子量が300〜25000である。分散液に用いられた凝結遅延用助剤はトリエチレンテトラミン(商品名「TETA」)である。分散液に用いられた被膜養生剤は、アクリルである。分散液に用いられた溶媒は水である。不飽和ポリエステル100質量部に対して、凝結遅延用助剤は15質量部、被膜養生剤(固形分)は13質量部、水は128質量部、腐食防止剤としてアルコゾールが13質量部である。
【0063】
配合が、単位セメント量380kg/m
3、水156
kg/m
3、細砂574 kg/m
3、砕石(20〜5mm)1237kg/m
3のコンクリートを練り混ぜた。このコンクリートを打設した後、そのコンクリート表面に噴霧器で前記不飽和ポリエステル分散液を噴霧量が0.3kg/m
2噴霧した。
【0064】
噴霧後、室温20℃の空気中に放置し、7日経過してから、コンクリート表面に対してワイヤブラシで取り除きを施した。これにより、コンクリート表面層におけるモルタル分が除去され、粗骨材が表面に露出し、コンクリート表面に凹凸が形成された。
このようにして得られたコンクリート表面部分の平面写真画像が
図1である。
【0065】
[実施例2]
凝結遅延用助剤に、反応系界面活性剤である2−ソジウムスルホエチルメタクリレート(商品名「アントックスMS−2N」)を使用した以外は実施例1と同様にコンクリート表面に噴霧器で前記不飽和ポリエステル分散液を噴霧量が0.3kg/m
2噴霧した。
噴霧後、室温20℃の空気中に放置し、7日経過してから、コンクリート表面に対してワイヤブラシでモルタル部の取り除きを施した。これにより、コンクリート表面層におけるモルタル分が除去され、粗骨材が表面に露出し、コンクリート表面に凹凸が形成された。このようにして得られたコンクリート表面部分の平面写真画像が
図2である。
【0066】
[比較例1]
凝結遅延用助剤を混合しない(凝結遅延用助剤を使用しない)以外は実施例1と同様にして不飽和ポリエステル分散液を調整した。
この不飽和ポリエステル分散液を用いて、実施例1と同様に打設したコンクリート表面に噴霧し噴霧後、室温20℃の空気中に放置し、7日経過してから、コンクリート表面に対してワイヤブラシでモルタル部の取り除きを試みた。しかしながらモルタル部は除去出来なかった。そのコンクリート表面部分の状態を示す平面写真画像が
図3である。
【0067】
図1及び
図2と
図3との対比から判る通り、散布された不飽和ポリエステル分散液中に凝結遅延用助剤が含まれてなかった場合、粗骨材の表面露出が良好に行われていないことが判る。
【0068】
又、凝結遅延用助剤の使用により凝結遅延効果が十分に発揮されており、コンクリートを打設してから或る程度の時間(7日程度)が経過してからでも、骨材表面露出作業が可能である。このような場合、コンクリートは強度が発現している。従って、骨材表面露出作業に車両型の大型機械を舗装面に載せて使用できるようになり、作業性が向上する。
【0069】
又、凝結遅延用助剤の使用により凝結遅延効果が十分に発揮されていることから、骨材表面露出作業の時間に対する制約が小さくなり、作業工程の組立自由度が高くなり、かつ、容易に均一な骨材露出路面を施工できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のコンクリート舗装における骨材露出方法によれば、不飽和ポリエステルに凝結遅延用助剤を併用して分散体とすることで、打設後のコンクリートにこの不飽和ポリエステル分散体を散布した場合、コンクリートの凝結を少なくとも材齢7日位までは遅延させ得ることから、骨材表面露出作業の時間に対する制約が小さくなり、作業工程の組立自由度が高くなり、かつ、容易に均一な骨材露出路面を施工できる。従ってコンクリート舗装工事にとってその効用は大きく、しかも低廉なコストで、人体への毒性がなく、環境にも優しく利用するのに有用である。
また、コンクリート面のレイタンスを除去でき骨材を露出させることができるので、打継処理としても利用できる。