特許第6249634号(P6249634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249634エステル交換油脂組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249634
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】エステル交換油脂組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11C 3/10 20060101AFI20171211BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20171211BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   C11C3/10
   A23D9/00
   A23D7/00
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-107657(P2013-107657)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-55279(P2014-55279A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-178946(P2012-178946)
(32)【優先日】2012年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】桑田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 和明
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄己
(72)【発明者】
【氏名】泉 秀明
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−142012(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/059592(WO,A1)
【文献】 特開昭54−031407(JP,A)
【文献】 特開2010−144158(JP,A)
【文献】 特開平02−163198(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/121010(WO,A1)
【文献】 Noor Lida Habi Mat Dian, Mohd. Suria Affandi Yusoff, Razali Ismail,Trans Fatty Acids Free Food Formulation Based on Palm Oil and its Products: A Review,PORIM Occasional Paper,1997年,No.36,p.1-23
【文献】 A. R. Norizzah, C.L. Chong, C.S. Cheow, O. Zaliha,Effects of chemical interesterification on physicochemical properties of palm stearin and palm kernel olein blends,Food Chemistry,2004年,Vol.86,p.229-235
【文献】 J. Agric. Food Chem.,2001年,Vol.49,p.3363-3369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11C
A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30重量%以上であるラウリン系油脂(A)と、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35重量%以上であるパーム系油脂(B)とのエステル交換油脂組成物であって、総炭素数40〜46のトリグリセリドの割合が15〜35重量%であり、
前記ラウリン系油脂(A)がパーム核油または前記パーム核油の分別油若しくは硬化油であり、かつ、
炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率が0.5〜4.0であることを特徴とするエステル交換油脂組成物。
【請求項2】
総炭素数46のトリグリセリドの割合が7〜15重量%である請求項1記載のエステル交換油脂組成物。
【請求項3】
構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む非対称型トリグリセリド(SSU)と、対称型トリグリセリド(SUS)との重量比率が、SSU/SUS=1.8〜2.2である請求項1又は2に記載のエステル交換油脂組成物。
【請求項4】
全構成脂肪酸中におけるラウリン酸量の、ステアリン酸量に対する比率が0.2〜0.7であり、かつ炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率が0.5〜4.0である請求項1〜3のいずれかに記載のエステル交換油脂組成物。
【請求項5】
5℃におけるSFCが55〜80%である請求項1〜4のいずれかに記載のエステル交換油脂成物。
【請求項6】
35℃におけるSFCが15〜30%である請求項5に記載のエステル交換油脂組成物。
【請求項7】
全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30重量%以上であるラウリン系油脂(A)10〜30重量%(但し、前記ラウリン系油脂(A)がパーム核油または前記パーム核油の分別油若しくは硬化油である)と、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35重量%以上であるパーム系油脂(B)70〜90重量%とをエステル交換して、総炭素数40〜46のトリグリセリドの割合が15〜35重量%であり、かつ、炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率が0.5〜4.0である油脂組成物を得ることを特徴とするエステル交換油脂組成物の製造方法。
【請求項8】
ラウリン系油脂(A)のヨウ素価が2以下である請求項7記載のエステル交換油脂組成物の製造方法。
【請求項9】
パーム系油脂(B)のヨウ素価が30〜48である請求項7又は8記載のエステル交換油脂組成物の製造方法。
【請求項10】
パーム系油脂(B)が、極度硬化油5〜45重量%含有する請求項7〜9のいずれかに記載のエステル交換油脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマーガリンやショートニング等に用いることができるエステル交換油脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マーガリンやショートニング等の可塑性を必要とされる油脂食品は、一般に、高融点油脂と液状の低融点油脂とを組み合わせたり、高融点油脂と中融点油脂と低融点油脂とを組み合わせた可塑性油脂組成物を用いることで、広い温度範囲における可塑性、良好な口溶け感、高温における油脂の滲み出し抑制効果を得ている。この種の可塑性油脂組成物に用いられる高融点油脂としては、従来より、動植物油脂に水素添加して高融点とした硬化油が用いられている。しかしながら高融点油脂が部分水素添加した油脂の場合、心臓疾患が懸念されるトランス酸を生成するという問題があった。一方、極度硬化油はトランス酸生成の虞はないが、高融点油脂として極度硬化油を用いると、可塑性を呈する温度範囲が狭く、口溶け感も悪いという問題があった。
【0003】
このため近年は、エステル交換により調製したトランス酸生成の虞のない可塑性油脂組成物が用いられるようになっている。可塑性を有するエステル交換油脂組成物としては、ラウリン酸を含む油脂と炭素数16以上の飽和脂肪酸を含む油脂混合物を特定のランダム化率にエステル交換したもの(特許文献1)、脂肪酸組成としてパルミチン酸とラウリン酸とが特定の割合となるように混合した油脂をエステル交換した後、更に水素添加したもの(特許文献2)、炭素数12の飽和脂肪酸と、炭素数16〜18の飽和脂肪酸を非選択的にエステル交換した高融点油脂と、特定の油脂を含む中融点油脂とを混合したもの(特許文献3)、構成脂肪酸としてラウリン酸を25〜45重量%含有し、ヨウ素価が0〜25であり、特定のトリグリセリド組成を満たす硬質脂肪(特許文献4)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−212590号公報
【特許文献2】特開2001−152182号公報
【特許文献3】特開2007−174988号公報
【特許文献4】国際公開WO2009/139266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の油脂組成物は、特定のランダム化率となるようにエステル交換する必要があるため、目的とする油脂組成物を得るためのコントロールが難しく、製造コストが高くなるとともに、他の油脂との相溶性が十分ではないため、他の油脂を配合すると保形性が低下するという問題がある。また特許文献2に記載されている油脂組成物は、経時的な硬さの変化が大きいため使用しづらいという問題があり、特許文献3、4に記載の油脂組成物は口溶けが悪く、口溶けを良好にするためには他の油脂との併用が必要であるが、他の油脂との相溶性が悪いという問題があった。
本発明は上記従来の課題を解決したエステル交換油脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、
(1)全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30重量%以上であるラウリン系油脂(A)と、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35重量%以上であるパーム系油脂(B)とのエステル交換油脂組成物であって、総炭素数40〜46のトリグリセリドの割合が15〜35重量%であり、
前記ラウリン系油脂(A)がパーム核油または前記パーム核油の分別油若しくは硬化油であり、かつ、
炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率が0.5〜4.0であることを特徴とするエステル交換油脂組成物、
(3)構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む非対称型トリグリセリド(SSU)と、対称型トリグリセリド(SUS)との重量比率が、SSU/SUS=1.8〜2.2である上記(1)又は(2)のエステル交換油脂組成物
(4)全構成脂肪酸中におけるラウリン酸量の、ステアリン酸量に対する比率が0.2〜0.7であり、かつ炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率が0.5〜4.0である上記(1)〜(3)のいずれかのエステル交換油脂組成物、(5)5℃におけるSFCが55〜80%である上記(1)〜(4)のいずれかのエステル交換油脂成物
(6)35℃におけるSFCが15〜30%である上記(5)のエステル交換油脂組成物、
(7)全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30重量%以上であるラウリン系油脂(A)10〜30重量%(但し、前記ラウリン系油脂(A)がパーム核油または前記パーム核油の分別油若しくは硬化油である)と、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35重量%以上であるパーム系油脂(B)70〜90重量%とをエステル交換して、総炭素数40〜46のトリグリセリドの割合が15〜35重量%であり、かつ、炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率が0.5〜4.0である油脂組成物を得ることを特徴とするエステル交換油脂組成物の製造方法、
(8)ラウリン系油脂(A)のヨウ素価が2以下である上記(7)のエステル交換油脂組成物の製造方法、
(9)パーム系油脂(B)のヨウ素価が30〜48である上記(7)又は(8)のエステル交換油脂組成物の製造方法、
(10)パーム系油脂(B)が、極度硬化油5〜45重量%含有する上記(7)〜(9)のいずれかのエステル交換油脂組成物の製造方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエステル交換油脂組成物は、トランス酸を実質的に含有していなくても、従来のトランス酸を含む硬化油と同等の保形性を有し、口溶けに優れ、経時的な硬さの変化がなく安定性に優れる等の効果を有する。また他の油脂を配合する場合でも他の油脂との相溶性に優れるため、他の油脂と配合してマーガリンやショートニングなどの可塑性油脂として用いた場合、経時的な性状の変化がなく安定性に優れる等の効果を有する。また本発明の製造方法によれば、上記保形性、口溶け、経時安定性等の優れた物性を有するエステル交換油脂組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のエステル交換油脂組成物は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30重量%以上であるラウリン系油脂(A)と、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35重量%以上であるパーム系油脂(B)とをエステル交換して得られる油脂組成物であって、総炭素数40〜46のトリグリセリドの組成物中の割合が15〜35重量%であるが、25〜35重量%が好ましい。総炭素数40〜46のトリグリセリドの割合が15重量%未満であると極端に口溶けが悪くなり、35重量%を超えると他の油脂との相溶性が悪くなる。総炭素数40〜46のトリグリセリドのなかでも、口溶けや保形性、相溶性が良好となるため総炭素数46のトリグリセリドの組成物中の割合が7〜15重量%であることが好ましく、特に10〜15重量%が好ましい。
【0009】
本発明のエステル交換油脂組成物は、構成脂肪酸のうち、2個が飽和脂肪酸(S)で、1個が不飽和脂肪酸(U)であるトリグリセリドのうちの、非対称トリグリセリド(SSU)と対称トリグリセリド(SUS)との重量比率が、SSU/SUS=1.8〜2.2であるものが好ましい。これにより結晶性が良くなり、製造機内での結晶化が速くなり、可塑性の良好な油脂を製造し易くなる。
【0010】
更にトリグリセリドの全構成脂肪酸中、ラウリン酸量の、ステアリン酸量に対する比率(ラウリン酸量/ステアリン酸量)が0.2〜0.7であり、炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率(C18の不飽和脂肪酸量/C18の飽和脂肪酸量)が0.5〜4.0であるものが好ましい。これにより保形性の良好な油脂を得ることができる。ラウリン酸量の、ステアリン酸量に対する比率(ラウリン酸量/ステアリン酸量)が0.4〜0.6であり、炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率(C18の不飽和脂肪酸量/C18の飽和脂肪酸量)が1.0〜2.0であると、口溶けと保形性に優れるので、さらに好ましい。
【0011】
本発明のエステル交換油脂組成物は、5℃におけるSFCが55〜80%であるものが、他油脂との相溶性が良く、結晶核となり固化し易く、マーガリンやショートニングなどの可塑性油脂を製造し易く、また油脂の染みだしなどの経時的な性状の変化がなく、安定性に優れ好ましく、更に35℃におけるSFCが15%以上であると保形性が良好となるが、なかでも15〜30%であるものが、他油脂との相溶性が良く、エステル交換油脂組成物が結晶核となって固化し易く、マーガリンやショートニングなどの可塑性油脂を製造し易く、口溶けが良好で保形性を有するマーガリンやショートニングなどの可塑性油脂を製造し易いため好ましい。35℃におけるSFCは20〜30%であることがより好ましい。
【0012】
本発明のエステル交換油脂組成物は、構成脂肪酸のうち2個が不飽和脂肪酸で1個が飽和脂肪酸であるトリグリセリドと、3個の構成脂肪酸全てが不飽和脂肪酸であるトリグリセリドの合計の割合が、全トリグリセリド中9〜37重量%であるものが好ましい。これによりエステル交換油脂組成物の融点を調整することができる。また他の油脂と混合しマーガリンやショートニングを作る際に、結晶核となって、可塑性の良好な油脂を得ることができる。
【0013】
本発明の総炭素数40〜46のトリグリセリドを15〜35重量%含有するエステル交換油脂組成物は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30重量%以上であるラウリン系油脂(A)10〜30重量%と、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35重量%以上であるパーム系油脂(B)70〜90重量%とをエステル交換して得ることができる。全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30重量%以上であるラウリン系油脂(A)としては、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油、硬化油等の1種又は2種以上が挙げられる。これらのうち、ヤシ油に比べて融点が高く、高融点のエステル交換油を容易に得ることができるパーム核油、その分別油や硬化油が好ましい。硬化油の場合、水素添加量によってトランス酸の含有量が増加する虞があるため、硬化油を用いる場合には微水素添加したものか、低温硬化したもの、完全水素添加した極度硬化油が好ましく、特に極度硬化油が好ましい。ラウリン系油脂(A)はラウリン酸含有量が40〜55重量%のものが好ましく、特に45〜50重量%のものが好ましい。ラウリン系油脂(A)としては、ヨウ素価が2以下のものを用いることが好ましく、特にヨウ素価1以下が好ましい。ヨウ素価が2以下のラウリン系油脂(A)を用いると、トランス酸の生成の虞が少なく、エステル交換油を他油脂と混合する際に結晶核となり、固化し易くかつ口溶けの良い油脂組成物となる利点がある。
【0014】
一方、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35重量%以上であるパーム系油脂(B)としては、パーム油、パーム分別油や、これらの硬化油やエステル交換油等の1種又は2種以上が用いられる。パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部等を用いることができる。硬化油の場合、微水添硬化油、低温硬化油、極度硬化油が好ましいが、特に極度硬化油が好ましい。
【0015】
パーム系油脂(B)としてヨウ素価が2以上のものを用いるとともに、ラウリン系油脂(A)とパーム系油脂(B)の全構成脂肪酸中、ラウリン酸量を14%未満とすることにより、総炭素数40〜46のトリグリセリドの割合が15〜35重量%であって、かつ総炭素数46のトリグリセリドの割合が7〜15重量%であるエステル交換油脂組成物を得ることができるが、パーム系油脂(B)はヨウ素価が30〜48であるものを用いると、口溶けを低下させることなく保形性を確保できるという利点がありより好ましい。パーム系油脂(B)は特にヨウ素価30〜40のものが長期に渡る保形性があるのでより好ましい。またパーム系油脂(B)中には、パーム系油脂の極度硬化油を5〜45重量%含有することが好ましく、特に20〜40重量%含有することが好ましい。5%以上であると、経時的な硬さの変化がなく、また保形性が良好なものを得ることができるが、パーム系油脂(B)中に極度硬化油が5〜45重量%含有されていると、エステル交換油脂組成物の融点を高めることができる利点があり、20〜40重量%であると口溶けと保形性の双方が良好なものを得ることができる。
更にラウリン系油脂(A)とパーム系油脂(B)の全構成脂肪酸中、ラウリン系油脂(A)由来のステアリン酸が0.2〜9重量%、パーム系油脂(B)由来のステアリン酸が6.5〜28.0重量%となるように、ラウリン系油脂(A)を10〜30重量%、パーム系油脂(B)を90〜70重量%の範囲で用いてエステル交換することにより、エステル交換油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるラウリン酸の、ステアリン酸に対する比率が0.2〜0.7であり、かつ炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率が0.5〜4.0であるエステル交換油脂組成物を得ることができる。
またパーム系油脂(B)としてヨウ素価30〜54のものを用いるとともに、ラウリン系油脂(A)としてヨウ素価18以下のものを用いることにより、5℃におけるSFCが55〜80%であるエステル交換油脂組成物を得ることができる。更にパーム系油脂(B)としてヨウ素価30〜48のものを用いるとともに、ラウリン系油脂(A)としてヨウ素価2以下のものを用いることにより、5℃におけるSFCが55〜80%であるとともに、更に35℃におけるSFCが15〜30%のエステル交換油脂組成物を得ることができる。
【0016】
ラウリン系油脂(A)と、パーム系油脂(B)のエステル交換反応には、エステル交換触媒として化学触媒や酵素触媒が用いられる。化学触媒としてはナトリウムメチラートや水酸化ナトリウム等が用いられ、酵素触媒としてはリバーゼ等が用いられる。リパーゼとしてはアスペルギルス属、アルカリゲネス属等のリパーゼが挙げられ、イオン交換樹脂、ケイ藻土、セラミック等の担体上に固定し固定化したものを用いても、粉末の形態として用いても良い。また位置選択性のあるリパーゼ、位置選択性のないリパーゼの何れも用いることができるが、位置選択性のないリパーゼを使用することが好ましい。エステル交換触媒として化学触媒や位置選択性のない酵素触媒を用いた場合、ラウリン系油脂(A)とパーム系油脂(B)とのエステル交換反応が完了すると、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む非対称型トリグリセリド(SSU)と、対称型トリグリセリド(SUS)とのエステル交換油脂組成物中における重量比率が、SSU/SUS=1.8〜2.2となる。
【0017】
エステル交換に化学触媒を用いる場合、触媒を油脂重量の0.05〜0.15重量%添加し、減圧下で80〜120℃に加熱し、0.5〜1.0時間攪拌することでラウリン系油脂(A)とパーム系油脂(B)とのエステル交換反応が平衡状態となって完了し、本発明のエステル交換油脂組成物を得ることができる。また酵素触媒を用いる場合、リパーゼ等の酵素触媒を油脂重量の0.01〜10重量%添加し、40〜80℃でエステル交換反応を行うことによりエステル交換反応が平衡状態となって完了し、本発明のエステル交換油脂組成物を得ることができる。エステル交換反応はカラムによる連続反応、バッチ反応のいずれの方法で行うこともできる。エステル交換反応後、必要に応じて脱色、脱臭等の精製を行うことができる。
【0018】
本発明において、ラウリン系油脂(A)における全構成脂肪酸中のラウリン酸の割合、パーム系油脂(B)における全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量、エステル交換反応の終了は、ガスクロマトグラフ法により確認することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1〜12、比較例1〜5、参考例
表1、表2に示す割合でラウリン系油脂(A)とパーム系油脂(B)とを混合し110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂重量の0.06重量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行ってエステル交換油脂組成物を得た。得られた油脂組成物の性状を、表3、表4に示す。エステル交換に用いたラウリン系油脂(A)、パーム系油脂(B)を以下に示す。尚、参考例としては、下記パーム系油脂(B)のパーム硬化油をそのまま用いた。実施例、比較例のエステル交換油脂組成物における非対称型トリグリセリド(SSU)と、対称型トリグリセリド(SUS)の割合(SSU/SUS)は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「暫7-2003 2位脂肪酸組成」)により求めたSSU型トリグリセリドとSUS型トリグリセリドの重量より算出した。
【0020】
ラウリン系油脂(A)
パーム核極度硬化油 : ラウリン酸含量 45.7重量%(ヨウ素価2)
パーム核油 : ラウリン酸含量 45.7重量%(ヨウ素価18)
パーム系油脂(B)
パーム油 : C16以上の脂肪酸含有量 97.9重量%(ヨウ素価53)
パーム分別油硬質部 : C16以上の脂肪酸含有量 98.8重量%(ヨウ素価43)
パーム分別油軟質部 : C16以上の脂肪酸含有量 97.7重量%(ヨウ素価61)
パーム極度硬化油 : C16以上の脂肪酸含有量 97.9重量%(ヨウ素価2)
パーム硬化油(融点45℃):C16以上の脂肪酸含有量 97.8重量%(ヨウ素価45)
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
※1 ヨウ素価は「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。
【0026】
※2 総炭素数40〜46のトリグリセリド含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.6.1−1996 トリアシルグリセリン組成(ガスクロマトグラフ法)」)により測定した。
【0027】
※3 総炭素数46のトリグリセリド含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.6.1−1996 トリアシルグリセリン組成(ガスクロマトグラフ法)」)により測定した。
【0028】
※4 全構成脂肪酸中のラウリン酸量のステアリン酸量に対する比率(ラウリン酸量/ステアリン酸量)はガスクロマトグラフ法により(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」で測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
【0029】
※5 不飽和脂肪酸を2個含むトリグリセリド(2不飽和トリグセリド)と、不飽和脂肪酸を3個含むトリグリセリド(3不飽和トリグリセリド)の合計割合は、ガスクロマトグラフ法により(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「暫7-2003 2位脂肪酸組成」で測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
【0030】
※6
全構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸量の、炭素数18の飽和脂肪酸量に対する比率(C18の不飽和脂肪酸量/C18の飽和脂肪酸量)はガスクロマトグラフ法により(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」で測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
【0031】
※7 トランス酸含有量はガスクロマトグラフ法により(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」で測定した。
【0032】
※8 5℃のSFC、35℃のSFCは基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.2.9−2003 固体脂含量(NMR法)」により測定した。
【0033】
※9 硬さは、200mlのビーカーにエステル交換油脂組成物を150g入れ、30℃にて2時間保持した後、8時間保持した後にレオメータ(測定条件:プランジャー 直径8mm円柱状、速度 60mm/分 深度 接触面から5mm)により測定し、以下の基準により2時間後の硬さ、8時間後の硬さを評価した。
(2時間後の硬さ)
○・・2000gf/m2未満
△・・2000gf/m2以上、3500gf/m2未満
×・・3500gf/m2以上
(8時間後の硬さ)
○・・3000gf/m2未満
△・・3000gf/m2以上、6000gf/m2未満
×・・6000gf/m2以上
【0034】
※10 上記硬さの試験において、2時間保持した後と8時間保持した後の硬さの増加率を下記式より求め、以下の基準により評価した。
(数1)
増加率=(8時間保持後の硬さ−2時間保持後の硬さ)/2時間保持後の硬さ×100
○・・80%未満
△・・80%以上120%未満
×・・120%以上
【0035】
※11 相溶性は、エステル交換油脂組成物とパーム油を1:1で混合し80℃に溶解し、示差走査熱測定分析(DSC)で60℃から−40℃に冷却するクーリング試験(冷却速度10℃/分)を行い、発熱のピーク温度を測定し、第1ピークと第2ピークの温度差より、以下の基準で評価した。結果を表3.4に示す。
○:温度差が15℃以上〜20℃未満
△:温度差が20℃以上〜25℃未満
×:温度差が25℃以上〜30℃未満
【0036】
※12 口溶けは、各エステル交換油脂組成物をマーガリン・ショートニング製造機にて急冷・捏和によりショートニングを作成し、それらをパネラーにより参考例のパーム硬化油(融点45℃)から作成したショートニングを指標に試食し、その結果から、以下の基準で評価した。結果を表3.4に示す。
◎:良い
○:同等
△:やや劣る
×:劣る
【0037】
※13 保形性は、各エステル交換油脂組成物をマーガリン・ショートニング製造機にて急冷・捏和によりショートニングを作成し、それらを絞り袋にて絞り35℃で24時間置いたものの保形性を観測した、以下の基準で評価した。結果を表3.4に示す。
◎:非常に良く、染みだしない。
○:良く、染みだしない。
△:やや弱く、若干染みだしある。
×:弱く、油の染み出しがある
【0038】
※14 保形性は、各エステル交換油脂組成物をマーガリン・ショートニング製造機にて急冷・捏和によりショートニングを作成し、それらを絞り袋にて絞り35℃で72時間置いたものの保形性を観測した、以下の基準で評価した。結果を表3.4に示す。
◎:非常に良く、染みだしない。
○:良く、染みだしない。
△:やや弱く、若干染みだしある。
×:弱く、油の染み出しがある。