【文献】
有限会社なか川, 業務用冷凍麺, Wayback Machine [オンライン], 保存日:2013年4月9日, 審査官検索日:2017年8月22日, <URL: https://web.archive.org/web/20130409082854/http://www.nakagawaseimen.co.jp/dento_men__reitou.htm>
【文献】
有限会社なか川, 麺製造工程, Wayback Machine [オンライン], 保存日:2013年2月23日, 審査官検索日:2017年8月22日, <URL: https://web.archive.org/web/20130223064531/http://www.nakagawaseimen.co.jp:80/koujyoutansaku.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
[原料・調合]−[熟成]−[混練・圧延]−[断裁]−[茹で上げ]−[冷水締め]−[型入れ]−[急速冷凍]−[個装包装]の各工程に於て、前記原料・調合工程で、中力粉相当の小麦粉70重量部に、本質的にNaCl2〜6重量部およびNa2CO30.1〜1.0重量部よりなるうどんの腰を強くする薬剤、水25〜45重量部を加えて良く捏ねてドウを作り、熟成工程でこのドウを20〜30℃の温度下で熟成し、冷水締め工程で5〜0℃の冷水で冷水締めし、型入れ工程で、冷水締めされたうどんの水気を素早く切り、個装包装の形状に合せたトレーに所定の量のうどんをランダムに折り重なるように投入し、急速冷凍工程で、−35℃以下の冷風を吹き付けて30分以内で急速冷凍することを特徴とする包装済み冷凍うどんの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、一度凍結した麺塊に水を付着させて再度凍結しなければならず、冷凍工程が二段工程となりコストがかかる問題や、一度氷った麺塊の中心にまで均一に水を付着できない等の問題がある。
【0006】
また、特許文献2の方法では、一度凍結した冷凍麺塊を包材で脱気包装する手間が増え、又包材が麺塊の凹凸に密着しているため、外観に劣ることや印刷した文字が読みにくいという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、前述の従来技術の問題点を解決し、さらに、腰があってのどごしの良いおいしいうどんの作り方を明確にすることと、茹で上げ直後のおいしいうどんの食感をそのまま維持して冷凍する手段と、冷凍うどんを電子レンジで解凍・調理する際うどん表面の乾きや、うどん同士のくっつきを防止する手段の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、おいしいうどんの腰は、小麦粉を捏ねてドウを作り熟成させた時に小麦粉中のタンパク質(グリアジンとグルテニン)は水を充分に吸ってグリアジンとグルテニンはほどけて糸状になり、互いに絡み合ってグルテンとなるが、このドウに食塩と炭酸ナトリウムを添加しておくと、食塩はグリアジンに作用して粘性を増し、炭酸ナトリウムはグルテニンに作用して伸びを増し、互いに絡み合ったグルテンは粘弾性(腰)のあるグルテンとなって腰のあるうどんとなる。茹で上げ直後のおいしい食感を維持する冷凍方法は、茹で上げ直後に5℃以下の冷水で締めてうどんの中心の水分が外側に移動するのを防ぐとともに、−35℃以下の冷風を吹き付けて30分以内に冷凍すれば、澱粉質やタンパク質の細胞の内外に微細な氷の結晶を作り、細胞を破壊することなく凍結して品質の低下を起こさないことが判明した。電子レンジで解凍・調理する際うどんの表面の乾きやうどん同士のくっつきを防止するには、冷凍したうどんを包装袋に包装し、そのまま、解凍・調理することにより、発生した蒸気が袋内に充満し、蒸らして乾かないようにできることを見出し、これによって前記の先行技術の問題点も解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。さらに、この袋は、適正な調理になった時に破裂して“ポン”という調理終了を知らせるとともに包装袋内の蒸気を外へ逃がすことができる。
【0009】
すなわち、本発明は、
[原料・調合]−[熟成]−[混練・圧延]−[断裁]−[茹で上げ]−[冷水締め]−[型入れ]−[急速冷凍]−[個装包装]の各工程に従って作られ、急速冷凍後、そのまま電子レンジ加熱が可能な包装材料で個装包装されたことを特徴とする包装済み冷凍うどんと、
前記原料・調合工程で、中力粉相当の小麦粉70重量部にNaCl2〜6重量部、Na
2CO
30.1〜1.0重量部、水25〜45重量部を加えて良く捏ねてドウを作り、熟成工程でこのドウを20〜30℃の温度下で熟成することを特徴とする上記の包装済み冷凍うどんと、
前記茹で上げ工程で断裁したうどんを沸騰水で7分〜15分間茹で上げ、冷水締め工程で、直ちに5℃以下の冷水で締めるとともに表面のぬめり等を洗い流すことを特徴とする上記の包装済み冷凍うどんと、
前記型入れ工程で、冷水締めされたうどんの水気を素早く切り、個装包装の形状に合せたトレーに所定の量をランダムに投入し、急速冷凍工程で、−35℃以下の冷風を吹き付けて30分以内で急速冷凍することを特徴とする上記の包装済み冷凍うどんと、
前記個装包装工程で、急速冷凍されたうどんが電子レンジで解凍・加熱されてうどんから発生した蒸気によってうどんが蒸され最適加熱後、その蒸気圧によって包材の一部が局部的に破裂し内圧を逃すとともに破裂音によって終了を知らせる包材で包装されたことを特徴とする上記の包装済み冷凍うどん
に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、腰があってのどごしが良く、電子レンジで解凍・調理する際に、表面の乾きやくっついてほぐれない等の問題のない冷凍うどんを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
原料・調合工程
うどんの原料は、基本的に小麦粉と塩化ナトリウムであり、その外、澱粉、蛋白質、改良剤、殺菌剤などの食品添加物が適宜添加される。
【0013】
主原料である小麦粉は、粗蛋白が7〜15重量%程度、澱粉質が70〜80重量%程度、水分が10〜15重量%程度、その他の成分として、セルロース、灰分、脂質等が合わせて3〜8重量%程度である。この小麦粉は蛋白質の含量等によって強力粉、中力粉、薄力粉に分けられている。強力粉の蛋白質の含量は11.5〜15重量%程度、中力粉は8.5〜11重量%程度、薄力粉は7〜9.5重量%程度である。そして、うどんには腰とのどごしが要求されるため、グルテン(腰)と澱粉質(のどごし)のバランスがとれた中力粉が主に用いられる。
【0014】
小麦粉中の蛋白質は主としてグルテニンとグリアジンであり、塩化ナトリウムはこのグリアジンの粘性を促進するために加えられる。本発明では、さらに炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)も添加しており、この炭酸ナトリウムはグルテニンの伸びを増す働きをする。
【0015】
配合割合としては、中力粉70重量部に対し、塩化ナトリウムが2〜6重量部程度、好ましくは3〜4重量部程度、炭酸ナトリウムが0.1〜1.0重量部程度、好ましくは0.2〜0.5重量部程度、水を25〜45重量部程度、好ましくは30〜40重量部程度が適当である。
【0016】
そして、これらを混合してよく捏ねてドウをつくる。その際、塩化ナトリウムと炭酸ナトリウムは少量なので、予め添加する水に加えて水溶液としておくことによって均一に混合させることができる。
【0017】
熟成工程
次に、このドウの熟成を行う。熟成は小麦粉中に含まれている種々の酵素が水分を与えられることにより活動するようになり、その酵素反応により熟成が進むものである。小麦粉中のタンパク質(主としてグルテニンとグリアジン)は水を充分に吸うとグルテニンとグリアジンはほどけて糸状になり、互いに絡み合ってネットワーク(網目構造)を形成する。これをグルテンと呼び、麺類では腰になる。グルテニンもグリアジンも酵素によってほどけ易くなるから一層、粘るようになる。グリアジンの粘性は食塩の添加によって促進され、グルテニンは炭酸ナトリウムの添加によって伸びるようになり、絡み合ったグルテンは粘弾性(腰)のあるグルテンとなる。又、小麦粉にはアミラーゼも含まれていて、その作用による澱粉質の糖化も起っており、反応が進むと甘味を付与するようになって、これによって与えられるわずかな甘味は味覚に有効である。
【0018】
熟成も酵素反応なので最適温度条件があり、一般的には10℃位から反応が始まり、温度の上昇とともに反応速度が速くなって、30〜40℃位が最大となり、40℃を超えると遅くなるとともに一部酵素の失活が始まる。従って、熟成は30〜40℃の方が速く熟成するが、一方、小麦粉中には土壌由来菌であるバチルス属の細菌が10
2〜10
3個/g存在している。バチルス属は納豆を作るバチルス・ズブチリスに代表されるように中温菌でありその最適生育温度は35℃である。細菌の最適生育温度に於ける増殖は1回/30分に分裂し、30分毎に2
n倍に増殖してゆく。今10
3個/gのバチルスが存在したとすれば3.5時間後には10
3個/g×2
7倍=1.28×10
5個/gとなり、腐敗開始の目安である1.0×10
5個/gに達するようになる。又、バチルス属は耐熱菌であり、次工程以降にある100℃の湯で上げでも死滅殺菌することは出来ない。
【0019】
これらの点から、熟成は腐敗の心配のない10〜30℃で行うのがよく、熟成を短時間で行える点で20〜30℃が特に好ましい。熟成時間は20〜30
℃では1〜3時間程度、通常1時間程度でよく、10〜20℃では3.5時間〜一夜程度の熟成時間が必要になる。
【0020】
混練・圧延工程
次いで、熟成したドウを混練・圧延する。これは、熟成によって糸状になったグルテニンとグリアジンを互いに絡み合わせて網目構造のグルテンを作る手助となるものであり混練は足踏みや竹の棒による押圧作業等であるが、工業的にはドウの伸ばしと練りを合わせたような装置を用いるとよい。
【0021】
圧延は、混練したドウを糸状にカットするために平面状に広げて伸ばすものであり、麺棒等で広げて作られるが、工業的にはローラーで挟んで所定の厚みに伸ばすことによって高い生産性で伸ばすことが出来る。この厚みは2.0〜5.0mm程度、好ましくは2.5〜4.5mm程度が適当である。
【0022】
断裁工程
断裁は、圧延したドウを糸状に切断するものであり、幅は2.0〜5.0mm程度、好ましくは2.5〜4.5mm程度が適当である。また、断裁は、糸状のうどんを切った時の切断面の形状が短辺×長辺の比で1.0×1.0の正方形状から1.0×1.5までの長方形状になるようにするのがよい。これは、次工程で茹でた時の腰のあるうどんの水分状態(麺の中心部の水分は50〜60重量%、外側部の水分は80〜85重量%)になるように麺の外側から中心まである程度等距離であることと、次々工程以降のトレーにランダムに投入し、冷風で急速凍結する時に冷風が通り易いこと、又更に電子レンジで解凍・加熱するときにマイクロ波が通り易くコールドスポット等が起きないためには、折り重なった麺と麺との空隙を設けることが重要であることによる。麺の外側から中心部までの等距離には切断面が丸形状であるが、折り重なった麺と麺との間に空隙を設けるには角形状が良い。又、食べ易さ等から実際の面の太さ等も関係しており、1例を示すと正方形では3.0mm×3.0mm、長方形では2.5×3.5mm位に断裁すると茹で上がった時点では夫々、正方形では4.3mm×4.3mm、長方形では3.5mm×5.0mm位の太さになり、良い食べ易さの太さとなる。断裁は伸ばした麺を包丁等でカットすれば良いが工業的にも包丁切りやスリッター等でカットすれば生産性良く断裁出来る。
【0023】
茹で上げ工程
茹で上げは沸騰水中で7〜15分間行う。麺の太さによって茹で上げる時間が異なるので、茹で上げたうどんを食べてみて、腰があり、のどごしが良い時間を茹で上げ時間とする。その時の中心部の水分は50〜55重量%となり、食感は固めとなる。この中心部の固めがグルテンによって腰のあるうどんとなる。外側の水分は80〜85重量%となり、この水分量とα化された澱粉質とがなめらかなのどごし感を与える。
【0024】
又、グリアジンの粘性を促進するために加えられた食塩とグルテニンの伸びを増すために加えられた炭酸ナトリウムは、茹で上げることによって約80%が溶出し、うどんから除去される。
【0025】
冷水締め工程
次いで、5℃以下、すなわち5℃〜0℃の冷水で表面のぬめりを取りながら温度を急激に下げ、外側から中心部への水分の移動を停止させて茹で上がったうどんの状態をそのまま保持するように締める。この冷水締めの時間は2〜10分間程度で、うどんを5〜15℃程度まで冷却するのがよい。冷水で急冷することにより次々工程での急速冷凍を速やかに行うことができる。
【0026】
型入れ工程
型入れ工程では、冷凍後、個装包装する包材の形状に略合せたトレーに冷水で締めたうどんをランダムに折り重なるように投入する。個装包装する包材の形状は、袋や角形あるいはカップ形の容器などであり、袋の場合は短辺×長辺が8〜10cm×13〜15cm程度であり、収容されるうどんは、
水気を切った重量で180〜220g程度である。トレーは、次工程で急速冷凍しやすいよう、冷風がなるべくうどんに直接当たるようにするのがよく、そのために網目状にするとか、多数の穴を打抜いた板などで形成するのがよい。材質は、例えばステンレスなどでよい。トレーに投入された断面が角形のうどんはその空隙率が約50容積%である。この空隙をもうけることによって次の工程での冷風の通りが良くなって急速凍結され、電子レンジで解凍・加熱する場合にもマイクロ波の通りが良くなりコールドスポット等が起らず均一加熱される。
【0027】
急速冷凍工程
急速冷凍工程では型入れされたうどんに−35℃以下の冷風を吹き付けて−18℃以下に急速冷凍する。食品の組織中にはその基質と何らかの意味で相互作用している水(結合水)と自由水とがあることが知られており、冷凍食品の−18℃近辺では結合水は凍結することがなく、自由水の大部分が凍結している。
図1に結合水のモデル図を示す。
図1はタンパク質と結びついた結合水の3相水和モデル図であって、タンパク質の極性基と直接結合した水分子(A相)は−190℃でも凍らないといわれ、その外側の数分子層(B、C層)までは−25℃まで凍らないといわれている。
【0028】
【表1】
表1はDuckworthが水分含量を色々変えた食品試料を調整し、これを冷却した後低温DTA(示差熱分析)にかけて加熱し、凍結した氷の融解ピークを観測し、このピークが消失したときの水分含量から未凍結水量と最低凍結温度を算出したものである。(R.
B. Duckworth、J. Food Technol.、6、317、1971、食品と水の科学、(株)幸書房、2009年5月20日復刻版第2刷発行、p249。)この最低凍結温度から冷凍食品の−18℃では殆んどの食品で未凍結水が存在することがわかる。
【0029】
自由水は食品の細胞内外に存在している。小麦粉からドウを作る時に食塩水を添加しており、茹で上げの際、80%は溶出するが20%は残って食塩水となって存在している。食塩水は冷却されると純粋な氷を析出して濃縮される。
【0030】
図2にNaCl−水系の状態図を示す。希薄な溶液(組成A)を冷却すると、Aからの垂線と曲線との交点(温度a)で氷が出来る。ここで生じるのは純粋な氷であって溶質は含まれないから、溶液の濃度は上昇し、組成はAより右へ移動するので、より低温でなければ凍結しない。したがって、この溶液は、温度が低下するにつれて組成もだんだん右へ移動しながら氷を析出してゆく。組成がCになる(温度c)と、全体が一様に凍結して氷と固体の溶質とが同時に析出する(共晶または氷晶)。以後は氷と氷晶が冷却されるだけである。このように組成C(濃度22%、温度−22℃)までは液体の食塩水が残ることが解る。
【0031】
自由水は大部分が氷となって凍結するが、凍結するには氷の核が出来る氷晶核形成過程とその核が生長して氷となる氷晶核生長過程とが必要である。−1〜−5℃の温度範囲は最大氷晶生成帯といわれ、この最大氷晶生成帯を通過させる時間が短いと、細胞内外でほぼ一斉に氷晶核が形成され、そこで生長するために、氷は平均的に分散され小さな氷となって凍結する。従って、体積膨張はあっても、大きな氷が偏在するのに比べて局部的な圧力の受け方はずっと軽減され、損傷も受けにくくなる。この温度領域を30分以内に通過させると品質の低下は殆んどないと言われている。これに比べてこの最大の氷晶生成帯を30分以上の緩慢な冷却を行うとまず細胞外の自由水が凍結する。氷の水蒸気圧は水の水蒸気圧より低いから細胞内の水蒸気は細胞膜を通って細胞外の氷の表面に出てくる。氷の表面は、この移動してきた水蒸気の分だけ平衡状態より圧力が高くなるので、その分だけ氷結して圧力を平衡状態まで戻す。細胞内の水上気圧は水蒸気が外へ移動した分だけ平衡水蒸気圧より低くなるので、細胞内の水は蒸発して平衡圧に達する。この過程は次々と細胞の内外で水蒸気圧が等しくなるまで続くから、細胞内では容積が収縮して空隙を生じ、細胞外では氷が生長して大きな氷晶となってその圧力で組織が押しつぶれる等の物理的な損傷を起こし、品質の低下となる。
【0032】
そこで、急速冷凍は−1〜−5℃の最大氷晶生成帯を30分以内に、好ましくは15分以内に通過するように行い、そのために、−35℃以下、好ましくは−35〜45℃の冷風を吹き付けて、少なくとも−18℃までに15分以内、好ましくは20分以内に冷却するようにする。
【0033】
個装包装工程
急速冷凍したうどんは、本発明者らが別途開発した包装袋に個装包装するのがよい。この包装袋で包装することによって、電子レンジで解凍・加熱されると、うどんから発生した蒸気でうどんが蒸され、最適加熱が行われた後に、蒸気圧で包材の一部が局部的に破裂し、内圧を逃すとともに破裂音で調理の終了を知らせることができる。
【0034】
解凍・調理工程
個装包装された冷凍うどんの解凍・調理には、これをそのまま電子レンジに入れて加熱すればよい。冷凍うどんは−18℃では食塩水が残存しており、冷凍うどん内の未凍結水と合わさって、電子レンジで解凍・加熱した時にこれらの水が効率的に発熱して効率的に加温することが出来る。すなわち、家庭用電子レンジ(2,450MHz/s)のマイクロ波の半減深度は氷が780cmと大きく、発熱効率が非常に悪いが、15℃の水は0.9cmと小さく、非常に発熱効率が良い。冷凍食品を電子レンジにかけた時にまず細胞内外の未凍結水と自由水のうち氷にならなかった残存食塩水が効率よく発熱し、凍結
した氷を溶かして解凍した後食品を最適の温度まで加熱するのである。
【0035】
電子レンジで加熱すると、まず、冷凍されたうどんが解凍され、さらに加熱されてうどんから蒸気がでてきて、この蒸気でうどんが蒸される。そして、この蒸気によって袋がふくらんでいき、前記の包装材料を用いた場合には、頂部から局部的に破裂して内圧を逃すとともにその破裂音で調理の終了を知らせることができる。一方、この破裂は局部的にとどまるため、その後も蒸し効果が継続して美味しいうどんになる。袋は発泡層とソリッド層の積層体からなり、断熱性があるため素手で取り出すことができる。また、局部的に破裂しているため、そこから容易に引裂いて内容物のうどんを取り出すことができる。電子レンジの加熱時間は2〜7分程度、好ましくは3〜4分程度がよい。
【実施例】
【0036】
[冷凍うどんの作成]
小麦中力粉70gにNaCl10g
/dlとNa
2CO
31g
/dlを溶かした水溶液35mlを少しずつ加えながらよく捏ねて丸め、饅頭のような形をしたドウを作成した。このドウを清浄なポリエチレン製の袋に入れ、28℃の室で1時間熟成を行った。熟成後、ポリエチレン製の袋の上から足踏みを行ってドウの直径で約3倍まで広げた。
【0037】
次いで、ポリエチレン製の袋の中で元のドウの直径まで折り重ね、更に足踏みを行って約3倍まで広げた。更にこの操作をくり返し、計3回の足踏みを行った。こうして圧延したうどんをステンレス板を張った台の上に広げ、木製の伸ばし棒で厚さ2.5mmくらいになるように伸ばした後、粘着しないように表面と裏面に中力粉をふりかけて、折りたたんで巾3.5mm位になるように包丁で断裁した。この断裁した麺を沸騰水に投入し、時々、食べながら腰があってのどごしが良い状態になるまで茹で上げた。時間は約10分間であった。この茹で上げたうどんを氷水中に投入し、手で流動しながら表面のぬめり等を洗い流し、ざるで掬い上げて水気を切った。この水気を切ったうどんの食感はのどごしが良く、腰があり、非常に良好なものであった。
【0038】
次いで、この水気を切ったうどん200gを2mm間隙の格子状の網で作られたトレー(14cm×9.5cm×3cm)に折り重ねながら投入し、−35℃の冷風を吹き付けながら急速冷凍を行った。冷凍時間は20分間行った。
【0039】
[包装袋の作成]
LDPE(日本ポリエチレン(株)製,LF128)60重量部とLLDPE(日本ポリエチレン(株)製、UF420)40重量部と炭酸水素ナトリウム1重量部からなり発泡層となる発泡性樹脂混合物と、HDPE(日本ポリエチレン(株)製、HY430)70重量部とLLDPE(日本ポリエチレン(株)製、UF420)30重量部からなりソリッド層となる樹脂混合物をサーキュラーダイを備えたインフレーション成膜機(発泡性樹脂混合物の押出機:Φ75mm、L/D=32、ソリッド層の樹脂混合物の押出機:Φ50mm、L/D=28、リップ径:Φ300mm、リップクリアランス:0.8mm)を用いて、ダイ温度200℃で共押出しし、ブロー比2.3、引取速度7m/分でインフレーション共押出しし、発泡層(110μm)/ソリッド層(30μm)の積層フィルムを作成した。発泡層の発泡倍率は2.4倍であった。
【0040】
この積層フィルムを用い、発泡層を内側にしてヒートシール巾5mmで3辺と背貼部をヒートシールし、一方が開口した19cm長辺×15cm短辺のピロータイプの袋を作成した。
【0041】
[解凍・調理]
この包装袋に冷凍したうどんの麺塊を入れヒートシールを行なって密封包装を行った。この包装体を家庭用冷蔵庫の冷凍室に入れ一夜放置した。次いで、冷凍室から取り出し、密封包装体そのままで550wの電子レンジで加熱した。結果、3分30秒後にポンという破裂音が聞こえ蒸気で膨張した袋の天頂部が破れていた。包装体をそのまま素手で掴んで電子レンジから取り出し、中身のうどんを食べたところ、のどどしが良く、腰があって、冷凍前の冷水締め直後の食感を再現していた。このうどんはうどん同士のくっつきもなく箸でよくほぐれた。
【0042】
比較例として、冷凍室から取り出した密封包装体の包装袋を除去して冷凍うどんの麺塊を皿の上に乗せ、実施例と同じ3分30秒間、電子レンジで加熱後、食したところ腰があったが表面がパサついていた。また、うどん同士がくっついており、箸でほぐすのに難があった。これは、電子レンジ加熱は熱伝導加熱に比べて短時間加熱であるにもかかわらず、水分の蒸発が多いと言われている。
【0043】
表2に、食べ頃に調理した電子レンジとガスレンジで調理した時の調理前の重量に対する調理後の重量を示す。
【0044】
【表2】
表2に示すように、タンパク源は電子レンジ加熱とガスレンジ加熱との差はあまりないが、糖質源では水分の蒸発損失量が多く、一方野菜類ではかえってガスレンジの方が水分蒸発が多い。電子レンジ加熱での水分蒸発量を防ぐには耐熱性プラスチックや硫酸紙やぬれたふきん等で包むと良いと言われている。実施例では、うどんも糖質源であり、包装袋がこの役目を担っており発生した蒸気によって蒸し効果が現れているものである。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】