特許第6249650号(P6249650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249650ピッチを補正する方法、部品実装装置及び部品実装システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249650
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ピッチを補正する方法、部品実装装置及び部品実装システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20171211BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H05K13/04 M
   H05K13/04 B
   H05K13/08 Q
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-144133(P2013-144133)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-18888(P2015-18888A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100142974
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】石川 一真
(72)【発明者】
【氏名】三治 満
【審査官】 川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−314300(JP,A)
【文献】 特開2001−113421(JP,A)
【文献】 特開2008−10594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って所定のピッチでキャビティが配設されるトレイの前記キャビティから順次部品を取出装置により取り出す処理において前記ピッチ補正する方法であって、
n番目(n≧2の整数)に取り出す前記部品を前記キャビティから取り出し、取り出した前記部品の前記取出装置における前記第1方向でのずれ量をピッチずれ量として検出する工程と、
(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、前記ピッチずれ量に基づいて前記ピッチを補正する工程と、
を有し、
前記ピッチを補正する工程は、
(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、n番目に取り出した部品の前記ピッチずれ量を用いて補正後のピッチを次式、
(補正後のピッチ)=(補正前のピッチ)+(ピッチずれ量/n)
に基づいて演算することを特徴とするピッチ補正する方法。
【請求項2】
前記ピッチは、2番目の部品を取り出す処理に用いる初期値が、前記トレイの種類に応じて設定されることを特徴とする請求項1に記載のピッチ補正する方法。
【請求項3】
前記トレイは、前記第1方向に加えて前記第1方向と直交する第2方向に沿って所定のピッチでキャビティがマトリックス状に配設されるものであり、
前記第1方向に沿って配設される任意の列の前記キャビティから前記部品を取り出し、前記ピッチずれ量を用いて補正した前記ピッチに基づいて、前記第1方向に沿って配設される他の列の前記キャビティから前記部品を取り出す工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピッチ補正する方法。
【請求項4】
第1方向に沿って所定のピッチでキャビティが配設されるトレイの前記キャビティから順次部品を取り出し回路基板に実装する取出装置と、
n番目(n≧2の整数)に取り出す前記部品を前記キャビティから取り出し、取り出した前記部品の前記取出装置における前記第1方向でのずれ量をピッチずれ量として検出する検出手段と、
(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、前記ピッチずれ量に基づいて前記ピッチを補正する補正手段と、
を有し、
前記補正手段は、
(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、n番目に取り出した部品の前記ピッチずれ量を用いて補正後のピッチを次式、
(補正後のピッチ)=(補正前のピッチ)+(ピッチずれ量/n))
に基づいて演算することを特徴とする部品実装装置。
【請求項5】
請求項4に記載の前記部品実装装置が複数接続される部品実装システムであって、
前記ピッチに拘わるデータを前記トレイの種類に応じて保存し、前記部品実装装置の各々に対し前記ピッチに拘わるデータを送信する統括制御装置を備えることを特徴とする部品実装システム。
【請求項6】
第1方向に沿って所定のピッチでキャビティが配設されるトレイの前記キャビティから順次部品を取出装置により取り出す処理において前記ピッチを補正する方法であって、
n番目(n≧2の整数)に取り出す前記部品を前記キャビティから取り出し、取り出した前記部品の前記取出装置における前記第1方向でのずれ量をピッチずれ量として検出する工程と、
(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、前記ピッチずれ量と前記キャビティの前記第1方向における座標位置を用いて前記ピッチを補正する工程と、
を有することを特徴とするピッチを補正する方法。
【請求項7】
前記ピッチを補正する工程は、
前記ピッチずれ量を前記座標位置で除算した値を用いて前記ピッチを補正することを特徴とする請求項6に記載のピッチを補正する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のピッチで配設されるキャビティに部品が収容されたトレイから任意の部品を取り出す処理におけるピッチ補正する方法、そのピッチ補正する方法を用いて部品を取り出す部品実装装置及び部品実装システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、部品実装装置に部品を供給するフィーダとして、テープフィーダ、トレイフィーダやバルクフィーダ等が知られている。このうち、例えばトレイフィーダが有するトレイは、平面視が矩形状のトレイ内にキャビティが所定のピッチでマトリックス状(碁盤目状)に形成され、各キャビティ内にQFP(Quad Flatpack Package)等のパッケージ型の電子部品を収容したものがある(例えば、特許文献1など)。特許文献1に開示される部品実装装置は、吸着ノズルを有するヘッドを移動させキャビティ内の電子部品を吸着ノズルにより吸着して取り出し、回路基板の所定の座標位置まで搬送して実装する。
【0003】
ここで、トレイフィーダが有するトレイは、製造工程における精度等に起因してキャビティがトレイ上を占める領域の全体的な位置やキャビティのピッチ等がバラつく場合がある。そのため、部品実装装置は、トレイの型番などに応じて予め設定された位置情報に基づいて処理を実施したとしても吸着ノズルが電子部品を吸着する位置が大きくずれることがあり、吸着不良等の不具合が生じる。このような不具合に対し、特許文献1に開示される部品実装装置では、ヘッドを制御するコントローラが予めトレイ内の各キャビティの位置情報(文献では、部品配置情報)を備えており、ヘッドによりトレイから電子部品を吸着した後に、パーツカメラにより撮像した電子部品の吸着状態から吸着位置のずれ量を検出し、そのずれ量に応じて他のキャビティの位置情報を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−10594号公報(図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される部品実装装置は、キャビティの位置情報を補正するために、トレイ内のキャビティの各々についてX軸方向及びY軸方向の座標位置に対応付けてずれ量などの各種データを保有する必要がある。このため、部品実装装置は、トレイ内に収容される電子部品の個数や取り扱うトレイの種類等が増加するのにともなってキャビティの位置情報を補正する処理にあたって保有すべきデータ量が増大することが問題となる。
【0006】
本発明は、上記した課題を鑑みてなされたものであり、トレイのキャビティ内から部品を取り出す処理においてピッチ補正することで精度よく部品が取り出せ、且つ取り出し作業に際して保有すべきデータ量の削減を図ることができるピッチ補正する方法、部品実装装置及び部品実装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される技術に係るピッチ補正する方法は、第1方向に沿って所定のピッチでキャビティが配設されるトレイのキャビティから順次部品を取出装置により取り出す処理においてピッチ補正する方法であって、n番目(n≧2の整数)に取り出す部品をキャビティから取り出し、取り出した部品の取出装置における第1方向でのずれ量をピッチずれ量として検出する工程と、(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、ピッチずれ量に基づいてピッチを補正する工程と、を有し、ピッチを補正する工程は、(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、n番目に取り出した部品のピッチずれ量を用いて補正後のピッチを次式、(補正後のピッチ)=(補正前のピッチ)+(ピッチずれ量/n)に基づいて演算することを特徴とする。
【0008】
また、本願に開示される技術に係る部品実装装置は、第1方向に沿って所定のピッチでキャビティが配設されるトレイのキャビティから順次部品を取り出し回路基板に実装する取出装置と、n番目(n≧2の整数)に取り出す部品をキャビティから取り出し、取り出した部品の取出装置における第1方向でのずれ量をピッチずれ量として検出する検出手段と、(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、ピッチずれ量に基づいてピッチを補正する補正手段と、を有し、補正手段は、(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、n番目に取り出した部品のピッチずれ量を用いて補正後のピッチを次式、(補正後のピッチ)=(補正前のピッチ)+(ピッチずれ量/n))に基づいて演算することを特徴とする。
【0009】
また、本願に開示される技術に係る部品実装システムは、部品実装装置が複数接続される。この部品実装装置は、第1方向に沿って所定のピッチでキャビティが配設されるトレイのキャビティから順次部品を取り出し回路基板に実装する取出装置と、n番目(n≧2の整数)に取り出す部品をキャビティから取り出し、取り出した部品の取出装置における第1方向でのずれ量をピッチずれ量として検出する検出手段と、(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、ピッチずれ量に基づいてピッチを補正する補正手段と、を有する。補正手段は、(n+1)番目の部品を取り出すにあたり、n番目に取り出した部品のピッチずれ量を用いて補正後のピッチを次式、(補正後のピッチ)=(補正前のピッチ)+(ピッチずれ量/n))に基づいて演算する。そして、当該部品実装システムは、ピッチに拘わるデータをトレイの種類に応じて保存し、部品実装装置の各々に対しピッチに拘わるデータを送信する統括制御装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示される技術によれば、トレイのキャビティ内から部品を取り出す処理においてピッチ補正することで精度よく部品が取り出せ、且つ取り出し作業に際して保有すべきデータ量の削減を図ることができるピッチ補正する方法、部品実装装置及び部品実装システムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例である実装作業機を含む電子部品実装システムの電子回路組立ラインを示す模式図。
図2図1に示す実装作業機を上方からの視点において示す図。
図3図1に示す実装作業機の側面断面図。
図4図1に示す電子部品実装システムのブロック図。
図5】支持板上に載置された部品トレイを示す図。
図6】コントローラのメモリに記憶される位置情報データを示す図。
図7】部品トレイのキャビティ及び電子部品の配列を説明するための模式図。
図8】画像処理部による位置情報データの補正処理を説明するためのフローチャート。
図9】キャビティ内の電子部品の位置と吸着位置とを比較するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明の実施例の電子部品実装システム(以下、「実装システム」と略す場合がある)10を示す。実装システム10は、複数の実装作業機12が相互に駆動連結された電子回路組立ラインを備え、実装作業機12の各々は個別制御装置14を備える。実装システム10は、各実装作業機12の個別制御装置14と、それら個別制御装置14を統括して制御する統括制御装置16とを含む制御システムにより制御される。実装作業機12の各々は、個別制御装置14が通信ケーブル20を介して統括制御装置16に接続されており、統括制御装置16との間で情報、指令等を送受信可能とされている。
【0013】
実装作業機12の各々は、回路基板22に対して電子部品P(図5参照)の実装作業を行うものであり、図2に示すように、搬送装置24と、作業ヘッド26と、移動装置28と、1対の供給装置30,32とを備えている。搬送装置24は、ベース33上に平行に並んで設けられた1対のガイドレール34を有しており、それら1対のガイドレール34の側方に張架されたコンベアベルト(図示略)を周回させることでガイドレール34に支持される回路基板22を搬送する構造とされている。また、搬送装置24は、所定の位置に昇降台39が設けられており、昇降台39をエアシリンダによって上昇させることで、昇降台39と1対のガイドレール34の各々の上方に設けられた鍔部(図示省略)との間に回路基板22を挟み込んで固定する構造とされている。なお、本実施例では、搬送装置24による回路基板22の搬送方向(図2における左右方向)をX軸方向とし、搬送される回路基板22の基板平面に平行でX軸方向に直角な方向をY軸方向と称し、説明を行う。
【0014】
作業ヘッド26は、搬送装置24によって保持された回路基板22に対して電子部品P(図5参照)を実装するものであり、下面に電子部品Pを吸着する吸着ノズル40を有する。吸着ノズル40は、正負圧供給装置42(図4参照)の電磁制御弁を介して負圧エア,正圧エア通路に通じており、負圧にて電子部品Pを吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持した電子部品Pを離脱する構造とされている。また、作業ヘッド26は、吸着ノズル40を昇降させるノズル昇降装置44(図4参照)及び吸着ノズル40をそれの軸心回りに自転させるノズル自転装置46(図4参照)を有しており、保持する電子部品Pの上下方向の位置及び電子部品Pの保持姿勢を変更することが可能とされている。
【0015】
また、作業ヘッド26は、ベース33上の任意の位置に移動装置28によって移動可能とされている。詳述すると、移動装置28は、作業ヘッド26をX軸方向に移動させるためのX軸方向スライド機構50と、作業ヘッド26をY軸方向に移動させるためのY軸方向スライド機構52とを備えている。X軸方向スライド機構50は、X軸方向に移動可能にベース33上に設けられたX軸スライダ54と、電磁モータ56(図4参照)とを有しており、電磁モータ56によってX軸スライダ54がX軸方向の任意の位置に移動可能とされている。また、Y軸方向スライド機構52は、Y軸方向に移動可能に設けられたY軸スライダ58と、電磁モータ60(図4参照)とを有している。Y軸スライダ58は、X軸スライダ54の側面に設けられた一対のガイドレール59に取り付けられ、電磁モータ60が駆動することによってY軸方向の任意の位置に移動する。そして、Y軸スライダ58に作業ヘッド26が取り付けられることで、作業ヘッド26は、移動装置28によってベース33上の任意の位置に移動可能とされている。
【0016】
供給装置30,32は、ベース33のY軸方向における両側部に搬送装置24を挟むようにして接続されている。供給装置30は、テープフィーダ型の供給装置であり、テーピング化された電子部品Pを1つずつ送り出すテープフィーダ70を複数有しており、作業ヘッド26への供給位置に電子部品Pを供給する構造とされている。供給装置32は、トレイフィーダ型の供給装置であり、Y軸方向に沿って設けられた一対のガイドレール72に嵌合されたスライダ(図示略)により支持板74が着脱可能に支持され、その支持板74により複数の部品トレイ76を支持する構造とされている。部品トレイ76の各々は、複数の電子部品Pが収容されている。供給装置32は、スライダ駆動部78(図4参照)を駆動してスライダをY軸方向に沿って移動させることによって、スライダに装着された支持板74を電子部品Pの供給位置あるいは退避位置に移動させる。なお、供給装置32の構成は一例であり、支持板74を複数備えて昇降装置等により使用する支持板74(部品トレイ76)を切り替える構成でもよい。
【0017】
また、実装作業機12は、マークカメラ80及びパーツカメラ82(図3参照)が設けられている。マークカメラ80は、下方を向いた状態でY軸スライダ58の下面に固定されており、移動装置28によって移動させられることで、回路基板22の表面を任意の位置において撮像することが可能となっている。
【0018】
また、X軸スライダ54には、図2及び図3に示すように反射鏡83A,83Bが図示しないケーシングにより固定されている。反射鏡83Aは、作業ヘッド26のY軸方向の移動経路の真下において、吸着ノズル40の中心線を含む垂直面に対して約45度傾斜させられ、X軸スライダ54に近い側の端部が下方に位置する反射面を有する。また、反射鏡83Bは、X軸スライダ54を挟んだ反対側に、反射鏡83Aの反射面と垂直面に対して対称に傾斜し、X軸スライダ54から近い側の端部が下方に位置する反射面を有する。これら反射鏡83A,83Bは、X軸スライダ54を移動させるボールねじ81の上方の位置であって、供給装置30と回路基板22との間及び供給装置32と回路基板22との間の位置に設けられている。反射鏡83Aの反射面の外面には、ハーフミラー処理が施され、作業ヘッド26側から照射される光の大半を反射する一方、下方から照射された光を透過させるようになっている。
【0019】
そして、X軸スライダ54には、作業ヘッド26の反対側であって反射鏡83Bの上方の位置において、作業ヘッド26に保持された電子部品Pを撮像するパーツカメラ82が固定されている。パーツカメラ82は、例えばCCDカメラであり、反射鏡83A,83Bで反射した電子部品Pを撮像する。なお、作業ヘッド26は、吸着ノズル40に吸着保持された電子部品Pの明るい背景を形成するバックライト85Aが取り付けられている。また、X軸スライダ54は、反射鏡83Aの下側に、電子部品Pの表面像を撮像する際に使用されるフロントライト85Bが取り付けられている。バックライト85Aを明るい背景とする電子部品Pのシルエット像を形成する光、あるいはフロントライト85Bに照らされた電子部品Pの表面の像を形成する光は、反射鏡83A,83Bに反射された後、パーツカメラ82に向かって上方へ反射する。
【0020】
図4に示すように、実装作業機12の個別制御装置14は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラ86と、搬送装置24、上記電磁モータ56,60、正負圧供給装置42、ノズル昇降装置44、ノズル自転装置46、テープフィーダ70、スライダ駆動部78の各々に対応する複数の駆動回路88とを備えている。コントローラ86は、各駆動回路88を介して搬送装置24、移動装置28等の動作を制御することが可能とされている。また、コントローラ86は、マークカメラ80及びパーツカメラ82が撮像した画像データを処理する画像処理部84を備える。画像処理部84は、マークカメラ80によって得られた画像データを処理して回路基板22に関する情報を検出する。また、画像処理部84は、パーツカメラ82によって得られた画像データの処理結果と、メモリ90に保存された位置情報データとに基づいて吸着ノズル40による電子部品Pの保持位置の誤差等の検出、補正等を実施する。また、コントローラ86は、統括制御装置16に接続されており、統括制御装置16との間で検出結果や指令等が送受信される。統括制御装置16は、タッチパネル等の表示装置89を備えており、各種情報を表示して作業者が確認することが可能とされている。
【0021】
上記した構成の実装作業機12は、搬送装置24により保持された回路基板22に対して作業ヘッド26によって電子部品Pの実装作業を行う。具体的には、まず、実装作業機12の各々の個別制御装置14は、コントローラ86が駆動回路88を介して搬送装置24を駆動制御し回路基板22を装着作業位置まで搬送させるとともに、その位置において回路基板22を固定的に保持する。次に、コントローラ86は、駆動回路88を介して移動装置28を駆動し、作業ヘッド26を回路基板22上に移動させマークカメラ80によって回路基板22を撮像する。画像処理部84は、マークカメラ80が撮像した画像データから回路基板22の種類や搬送装置24による回路基板22の保持位置誤差を検出する。コントローラ86は、画像処理部84が検出した回路基板22の種類に応じた電子部品Pを有する供給装置30,32を駆動し、その電子部品Pの供給位置に作業ヘッド26をさせる。作業ヘッド26は、コントローラ86からの制御に基づいて吸着ノズル40の上下位置等を変更して吸着ノズル40によって電子部品Pを吸着保持する。コントローラ86は、電子部品Pを保持した状態の作業ヘッド26を移動装置28によって電子部品Pの供給位置から電子部品Pを実装する回路基板22の実装位置まで移動させる。この際、作業ヘッド26は、供給位置と実装位置との間の位置に設けられた反射鏡83A(図2及び図3参照)の上方を通過することとなる。コントローラ86は、作業ヘッド26が反射鏡83A上を通過する際に、反射鏡83B上に固定されたパーツカメラ82によって電子部品Pを撮像する。画像処理部84は、パーツカメラ82が撮像した画像データから電子部品Pの保持位置の誤差を検出する。そして、コントローラ86は、作業ヘッド26を回路基板22上の実装位置に移動させ回路基板22及び電子部品Pの保持位置の誤差に基づいて吸着ノズル40を自転等させた後に、電子部品Pを回路基板22に実装させる。
【0022】
ここで、本実施例の画像処理部84は、パーツカメラ82の画像データから検出した電子部品Pの保持位置の誤差に基づいて、次回以降に取り出す電子部品Pの位置情報データを補正する処理を実行する。以下に、画像処理部84によるトレイ型供給装置32が供給する電子部品Pの位置情報データを補正する処理について説明する。
【0023】
(支持板74及び部品トレイ76の構造について)
図2に示すように、トレイ型供給装置32の支持板74は、X軸方向が長手方向となる平面視が長方形状をなし、支持板74上には大小様々な部品トレイ76が水平な状態で載置されている。図5に示すように、支持板74は、四辺がガイドバー100により囲われ、そのガイドバー100の内側に複数の部品トレイ76がX軸方向に沿って配設されている。図5は、支持板74上に載置された部品トレイ76を示す図であり、図中の上側がベース33(図2参照)に接続される本体側となっている。部品トレイ76は、平面視において矩形状をなし、収容する電子部品Pの個数等に応じた大きさで形成されている。部品トレイ76は、支持板74上に設けられたL形位置決め部材102により位置決めされている。支持板74は、例えば部品トレイ76を載置する支持面を含む表層部分が磁性材料から形成されており、永久磁石が埋設されたL形位置決め部材102が任意の位置に着脱可能に固定される。L形位置決め部材102は、支持板74上におけるY軸方向に対して一方側(図示例では上側)のガイドバー100に当該L形位置決め部材102の一辺を密着させた状態で位置決めされている。また、図5における上側(本体側)のガイドバー100にはX軸方向に沿って目盛104が設けられている。作業者は、例えば実装作業機12から指示等された数値を目盛104で確認しながらX軸方向における位置を決定し、L形位置決め部材102を取り付ける。また、作業者は、支持板74にL形位置決め部材102を取り付けた後に、部品トレイ76を支持板74に支持させる。作業者は、部品トレイ76の互いに直交する2辺をL形位置決め部材102に当てて位置決めし、永久磁石が埋設された拘束部材107によって部品トレイ76の他の辺を位置決めして固定する。
【0024】
部品トレイ76は、凹設された複数のキャビティ201がX軸方向及びY軸方向に沿って所定のピッチで形成され、キャビティ201がマトリックス状に形成されている。キャビティ201の各々は、電子部品Pが収容され、収容された電子部品Pが部品トレイ76により同一平面上に並んだ状態で支持されている。部品トレイ76の形状、寸法、収容可能な電子部品Pの個数等は適宜変更される。電子部品Pは、例えば電子回路を形成する部品であり、QFP(Quad Flatpack Package)等のパッケージ型の電子部品等である。
【0025】
(画像処理部84について)
図4に示すように、画像処理部84は、演算手段92と補正手段93とを有する。演算手段92は、作業ヘッド26の吸着ノズル40が電子部品Pを吸着した後にパーツカメラ82により撮像された画像データから電子部品Pの保持位置の誤差を演算する。補正手段93は、演算手段92の演算結果に基づいてメモリ90に保存された位置情報データを補正する。演算手段92及び補正手段93は、例えば、画像処理部84が有するCPU上で実行されるプログラムなどのソフトウェアで実現してもよく、あるいは専用の処理回路としてハードウェアで構成してもよい。メモリ90は、電子部品Pに係る位置情報データが記憶されており、例えば図6に示す位置情報データ300がX軸方向及びY軸方向の各々について記憶されている。位置情報Sx,Syは、部品トレイ76内から1番目に取り出す電子部品Pのキャビティ201に係る位置情報である。座標位置Nx,Nyは、次に取り出す電子部品Pのキャビティ201のX軸方向及びY軸方向における座標位置である。ピッチPx,Pyは、X軸方向及びY軸方向の各々において隣り合うキャビティ201の中心間の距離である。部品個数Ex,Eyは、部品トレイ76のX軸方向及びY軸方向の各々に沿って一列に収容される電子部品P(キャビティ201)の個数である。この位置情報データ300は、例えば図7に示すように、部品トレイ76のキャビティ201及びキャビティ201に収容される電子部品PがX軸方向に沿ってピッチPxでEx個、Y軸方向に沿ってピッチPyでEy個だけ並んでいることを表している。
【0026】
(補正処理について)
次に、画像処理部84による位置情報データの補正処理について説明する。
まず、図7に示すように、部品トレイ76は、図中における左上の角部を含む2辺がL形位置決め部材102により位置決めされている。実装作業機12のコントローラ86は、図7に示す電子部品Pを図中の上から下((1,1)〜(1,Ey))に向かって、順番に取り出すように作業ヘッド26を制御する。また、コントローラ86は、Y軸方向に沿った1列が終了するとX軸方向で隣り合う他の列の電子部品Pを同様の順番で取り出すように制御し、図中の左から右((1,1)〜(Ex,1))に向かって取り出す列を変更しながら作業を実施する。L形位置決め部材102は、L字状の2辺が交差する角部に第1基準マーク109が形成され、Y軸方向に沿った辺の先端部に第2基準マーク110が形成されている。作業者は、実装作業機12から指示等された数値に基づいてL形位置決め部材102を取り付けた後に、実際に取り付けた位置の目盛104(図5参照)の値を実装作業機12の操作手段(図示略)によって入力する。コントローラ86は、実装作業が開始して第1基準マーク109を検出する際に、作業者から入力されたL形位置決め部材102の取付け位置の情報に基づいてマークカメラ80により第1基準マーク109を撮像する。また、コントローラ86は、作業者から入力された取付け位置の情報と、L形位置決め部材102の設計上の寸法とから得られる位置に基づいて第2基準マーク110を撮像する。画像処理部84の演算手段92は、マークカメラ80により撮像された第1及び第2基準マーク109,110の画像データから各マークの位置を検出する。なお、複数の部品トレイ76(L形位置決め部材102)がある場合には、実装作業機12は、L形位置決め部材102の各々について第1及び第2基準マーク109,110を撮像する。
【0027】
また、本実施例の実装システム10では、統括制御装置16(図1及び図4参照)が図6に示す位置情報データ300の初期値を、部品トレイ76の型番、ID、電子部品Pの種類等に対応して保有しており、各実装作業機12で必要となる位置情報データ300を集中して管理している。統括制御装置16は、例えば、異なる基板種の回路基板22の生産を生産ジョブごとに管理し、各生産ジョブに応じて実装作業機12の各々に位置情報データ300を送信する。各実装作業機12のコントローラ86は、統括制御装置16から受信した位置情報データ300をメモリ90に記憶する。コントローラ86は、第1及び第2基準マーク109,110の撮像にともなってマークカメラ80により部品トレイ76を撮像する。コントローラ86の画像処理部84は、マークカメラ80が撮像した部品トレイ76の画像データに基づいて部品トレイ76の型番等を検出する。コントローラ86は、画像処理部84が検出した型番等の情報と、メモリ90に記憶された位置情報データ300の整合性を判定する。コントローラ86は、型番等が一致すると、メモリ90に記憶された位置情報データ300を参照及び補正しながら実装作業を実施する。また、統括制御装置16は、例えば、各実装作業機12が実装作業にて補正した位置情報データ300を受信し、保有する位置情報データ300を部品トレイ76の型番ごとに更新する。なお、コントローラ86は、画像処理部84が検出した型番等の情報と位置情報データ300が一致しない場合に、例えば作業者にエラーを報知して確認作業を促す設定でもよい。また、部品トレイ76の型番等の情報は、作業者が実装作業機12などから予め入力する構成でもよい。
【0028】
図8に示すステップS1において、コントローラ86は、画像処理部84の演算手段92が検出した第1及び第2基準マーク109,110の位置を基準として位置情報データ300(図6参照)の位置情報Sx,Syに基づいて1番目のキャビティ201(図7の(1,1))の電子部品Pを取り出すように作業ヘッド26及び吸着ノズル40の動作を制御する。
【0029】
ステップ2において、コントローラ86は、作業ヘッド26を1番目のキャビティ201の位置から回路基板22の実装位置まで移動させる際に反射鏡83A上を通過するとき、吸着ノズル40に吸着保持された電子部品Pをパーツカメラ82により撮像する。演算手段92は、パーツカメラ82が撮像した画像データから吸着ノズル40の中心に対する電子部品Pの中心のずれ量をX軸方向及びY軸方向の各々について演算する。補正手段93は、演算手段92が検出した保持位置のずれ量(ΔX,ΔY)に基づいて位置情報Sx,Syを補正してデータを更新する。
【0030】
ここで、部品トレイ76は、製造工程での精度等に起因してキャビティ201の全体的な位置やピッチPx,Pyが部品トレイ76ごとにバラつく場合がある。例えば、図9に示す部品トレイ76A,76Bは、平面視における外形の大きさ及び形成されているキャビティ201の数が同一である。しかしながら、部品トレイ76Aは、部品トレイ76Bに比べてキャビティ201が形成された領域がY軸方向の両側(図中の上下)に広がっている。このため、Y軸方向の最も外側(図中の上下方向の最も外側に位置する)のキャビティ201と各部品トレイ76A,76BのY軸方向の端部との距離Lyは、部品トレイ76Bに比べて部品トレイ76Aが短い。また、Y軸方向における各キャビティ201の端部間の距離L2yは、部品トレイ76Bに比べて部品トレイ76Aが長い。このため、部品トレイ76Aのキャビティ201のピッチPyは、部品トレイ76Bに比べて大きい。同様に、X軸方向においても最も外側のキャビティ201と端部との距離Lxは、部品トレイ76Bに比べて部品トレイ76Aが短い。また、各キャビティ201の端部間の距離L2x(ピッチPx)は、部品トレイ76Bに比べて部品トレイ76Aが長い。このような距離Lx,Ly及び距離L2x,L2y(ピッチPx,Py)の差異は、外形の大きさ及び形成されるキャビティ201の数が同一となる規格に適合した部品トレイ76A,76Bであっても製造メーカなどが異なることで差異が生じる場合がある。そのため、実装作業機12は、仮に部品トレイ76A,76Bの型番などに応じて予め設定されたピッチPx,Pyに基づいて処理を実施したとしても吸着ノズル40が電子部品Pを吸着する位置がずれる場合がある。
【0031】
図9中の黒丸「●」は、吸着ノズル40が電子部品Pを吸着する位置を示しており、一点鎖線は、部品トレイ76Bの電子部品Pを吸着する位置を示している。部品トレイ76Bの電子部品Pを取り出す位置を補正せずにそのまま利用して部品トレイ76Aの電子部品Pを取り出した場合には、一点鎖線で比較して示すようにY軸方向に沿って(図中の上から下に向かって)順番に電子部品Pを取り出す位置が徐々にずれていき電子部品Pを吸着できない不具合が生じる。そのため、本実施例のコントローラ86は、まず1番目の電子部品Pを吸着して検出したずれ量を用いて位置情報Sx,Syを補正することで、部品トレイ76内の電子部品Pが占める領域の全体的な位置のずれを補正する。
【0032】
コントローラ86は、次の電子部品Pの供給が実施される際に、2番目の電子部品P(図7に示す(1,2)の部品)を取り出す処理を行う。図8のステップS3において、画像処理部84の演算手段92は、ステップS2において1番目に取り出した電子部品Pのずれ量により補正した位置情報Sx,Syと、予め部品トレイ76の型番等に応じて設定されたピッチPx,Pyとを用いて次式(1),(2)により2番目以降に取り出す電子部品PのX軸方向及びY軸方向の位置情報X,Yを演算する。
位置情報X=Sx+Px×(Nx−1)・・・・(式1)
位置情報Y=Sy+Py×(Ny−1)・・・・(式2)
図6に示す座標位置Nx,Nyは初期値として(1,2)が設定されているものとする。また、演算手段92は、統括制御装置16から受信した位置情報データ300のピッチPx,Pyの初期値をメモリ90から読み出して処理する。コントローラ86は、演算手段92の演算結果に基づいて2番目の電子部品Pを取り出すように作業ヘッド26を制御する。また、演算手段92は、座標位置Nyをインクリメントし、座標位置Nx,NyをY軸方向に1個分だけ進んだ値(1,3)に更新する。
【0033】
上記したように、キャビティ201の位置は、部品トレイ76の各々で全体的な位置が異なるだけでなくピッチPx,Pyも異なる。このため、コントローラ86は、2番目以降の電子部品Pを吸着して検出したずれ量を用いてピッチPx,Pyを補正する。
ステップS4において、演算手段92は、吸着ノズル40が2番目の電子部品Pを吸着した状態をパーツカメラ82が撮像した画像データから吸着ノズル40の中心に対する電子部品Pの中心のY軸方向におけるずれ量を演算する。補正手段93は、演算手段92が検出した保持位置のずれ量、この場合Y軸方向におけるずれ量(ΔY)を用いて、次式(4)によりピッチPyを補正する。なお、X軸方向における式(3)については後述する。
補正後のピッチPx=補正前のピッチPx+(ずれ量(ΔX)/(Nx−1))・・・・(式3)
補正後のピッチPy=補正前のピッチPy+(ずれ量(ΔY)/(Ny−1))・・・・(式4)
画像処理部84は、1番目の電子部品Pを取り出して補正した位置情報Sx,Syに基づいて2番目の電子部品Pを取り出し、2番目以降の電子部品Pから検出したずれ量を用いてピッチPyを補正する。従って、図9の部品トレイ76Aに黒丸「●」で示すように、3番目以降に取り出される電子部品Pを吸着ノズル40が吸着する位置の誤差が補正されて電子部品Pを正確に吸着させることができる。
【0034】
次に、ステップS5において、演算手段92は、座標位置Nyと(部品個数Ey+1)の値との大小を比較し、座標位置Nyが小さい場合にはステップS3,ステップS4の処理を繰り返し実行する。演算手段92及び補正手段93は、電子部品Pを取り出すごとに検出されたずれ量(ΔY)を用いて上記式(4)によりピッチPyを補正する。
【0035】
上記したように、演算手段92は、上記式(1),(2)に示すように、位置情報Sx,Sy、ピッチPx,Py及び座標位置Nx,Nyを用いて次に取り出す電子部品Pの位置を演算する。その一方で、補正手段93は、上記(3),(4)に示すように、検出されたずれ量(ΔX,ΔY)と座標位置Nx,Nyを用いてピッチPx,Pyを補正する。その結果、演算手段92による取出位置の演算処理及び補正手段93によるピッチPx,Pyの補正処理の両方を可能としながら、上記した特許文献1に開示されるような技術に比べてメモリ90に保存すべき必要なデータ量が大幅に削減されている(図6参照)。
【0036】
ここで、図7に示すように、キャビティ201の内壁と電子部品Pの外周部分との間には、吸着ノズル40による電子部品Pの取り出しの容易化を図るなどの理由により、極めて小さい隙間203が設けられている。このため、電子部品Pの中心の位置は、キャビティ201の中心の位置から隙間203の大きさ分だけずれる可能性があり、各キャビティ201内の電子部品Pの位置が互いに異なってくる。この隙間203により生じるずれ量は、取り出した電子部品Pと吸着ノズル40とのずれ量(ΔX,ΔY)に含まれ、補正後のピッチPx,Pyに含まれることとなる。そして、比較的小さい電子部品Pを取り扱う場合には、電子部品Pに対して隙間203が相対的に大きくなり隙間203により生じるピッチPx,Pyの誤差の影響が大きくなるため、このようなずれを適切に処理することが好ましい。このため、補正手段93は、電子部品Pを取り出す毎にピッチPx,Pyを補正することで、隙間203によるずれの平均化を図っている。
【0037】
詳述すると、演算手段92は、上記式(1),(2)に示すように、次に取り出す電子部品Pの位置を、ピッチPxと座標位置Nx、あるいはピッチPyと座標位置Nyとの乗算により演算する。つまり、演算手段92は、隙間203により生じるずれ量を含むピッチPx,Pyを乗算する処理を実行する。その一方で、補正手段93は、上記式(4)に示すように、検出されたずれ量(ΔX,ΔY)を座標位置Nx,Nyで除算した値を用いてピッチPx,Pyを補正する。これにより、部品トレイ76のY軸方向に沿って配設される電子部品Pの各々のずれ量を用いてピッチPyを補正することによって、同一列に配設された電子部品Pの隙間203によるずれ量を平均化してピッチPyに反映することが可能となる。つまり、上記式(1),(2),(4)を用いてY軸方向に沿った任意の列に対し補正処理を繰り返しながら同列の電子部品Pのすべてを取り出した後のピッチPyは、隙間203によるずれ量が平均化された値となる。従って、画像処理部84は、図7に示す部品トレイ76の1列目((1,1)から(1,Ex)の部品)を取り出して平均化したピッチPyを、他のY軸方向に沿った列((2,1)から(Ex,1)の各Y軸方向に沿った列など)の電子部品Pの取り出しに適用することで、2列目以降の処理において補正処理を繰り返し実施することなく電子部品Pを正確に吸着させることができる。この場合、後述するX軸方向における2列目以降の処理では、ステップS4のピッチPyを補正する処理を省略する。
【0038】
また、画像処理部84は、上記したY軸方向における処理と同様の処理を、X軸方向においても実施する。演算手段92は、ステップS5において、座標位置Nyが(部品個数Ey+1)に比べて大きい場合、即ち部品トレイ76の1列目((1,1)から(1,Ex)の部品)の電子部品Pの取り出しが終了した場合には、座標位置Nyに「1」を設定し座標位置Nxをインクリメントして、座標位置Nx,Nyに次の列の1番目のキャビティ201の座標(この場合、(2,1))を設定する(ステップ6)。
【0039】
次に、ステップS7において、演算手段92は、上記式(1),(2)を用いて取り出す電子部品PのX軸方向及びY軸方向の位置情報X,Yを演算する。コントローラ86は、演算手段92の演算結果に基づいて2列目の1番目のキャビティ201の電子部品Pを取り出すように作業ヘッド26を制御する。また、演算手段92は、座標位置Nx,NyをY軸方向に1個分だけ進んだ値(2,2)に更新する。
【0040】
また、ステップS7において、演算手段92は、吸着ノズル40が2列目の1番目(2,1)の電子部品Pを吸着した状態をパーツカメラ82が撮像した画像データから吸着ノズル40に対する電子部品PのX軸方向におけるずれ量(ΔX)を演算する。補正手段93は、演算手段92が演算したずれ量、この場合はX軸方向におけるずれ量(ΔX)と上記式(3)とを用いてピッチPxを補正する。ステップS7におけるピッチPxを補正する処理は、Y軸方向に沿った各列の一番目のキャビティ201((1,1)、(2,1)・・・・(Ex,1))内の電子部品Pを取り出すタイミングで実行される。
【0041】
次に、ステップS8において、演算手段92は、座標位置Nxと(部品個数Ex+1)との大小を比較し、座標位置Nxが小さい場合には、ステップS3からステップS7の処理を繰り返し実行する。このようにして実装作業機12は、ピッチPx,Pyを補正する処理を繰り返しながら座標(1,1)から(Ex,Ey)の電子部品Pを順番に取り出す処理を実行する。
【0042】
以上、上記した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
<効果1>コントローラ86が備える演算手段92は、メモリ90に保存される位置情報データ300(位置情報Sx,Sy、ピッチPx,Py、座標位置Nx,Ny)を用いて次に取り出す電子部品Pの位置を演算する(式(1),(2)参照)。また、演算手段92は、吸着ノズル40が2番目以降の電子部品Pを吸着した状態をパーツカメラ82が撮像した画像データから吸着ノズル40の中心に対する電子部品Pの中心のY軸方向におけるずれ量を演算する。コントローラ86の補正手段93は、演算手段92が検出したY軸方向におけるずれ量を用いてピッチPyを補正する(式(4)参照)。このような構成のコントローラ86では、3番目以降に取り出される電子部品Pを吸着ノズル40が吸着する位置の誤差が補正され電子部品Pを正確に吸着できるとともに、演算手段92による取出位置の演算処理及び補正手段93によるピッチPx,Pyの補正処理に必要なメモリ90に保存すべき情報のデータ量が削減できる。
【0043】
<効果2>コントローラ86は、統括制御装置16から部品トレイ76の型番等に応じたピッチPx,Pyの初期値を受信しメモリ90に保存する。演算手段92は、このピッチPx,Pyの初期値をメモリ90から読み出して処理することで、部品トレイ76や電子部品Pの種類の変更に応じて2番目の電子部品Pの位置を精度良く演算できる。
<効果3>補正手段93は、上記式(3),(4)を用いてピッチPx,Pyを補正する設定となっており、補正処理にあたり参照すべきデータ量の低減が図れる。
【0044】
<効果4>演算手段92は、次に取り出す電子部品Pの位置を、隙間203により生じるずれ量を含むピッチPx,Pyを用いて乗算により演算する(式(1),(2)参照)。その一方で、補正手段93は、検出されたずれ量(ΔX,ΔY)を座標位置Nx,Nyで除算した値を用いてピッチPx,Pyを補正する。その結果、Y軸方向に沿った任意の列において補正処理を繰り返しながら同列の電子部品Pのすべてを取り出した後のピッチPyは、隙間203によるずれ量が平均化された値となる。コントローラ86は、図7に示す部品トレイ76の1列目((1,1)から(1,Ex)の部品)を取り出して平均化したピッチPyを、他のY軸方向に沿った列((2,1)から(Ex,1)の各Y軸方向に沿った列など)の電子部品Pの取り出しに適用することで、2列目以降の処理において補正処理を繰り返し実施することなく電子部品Pを正確に吸着させることができる。
【0045】
<効果5>コントローラ86は、部品トレイ76内の1番目のキャビティ201の電子部品Pを吸着して検出したずれ量を用いて位置情報Sx,Syを補正することで、部品トレイ76内のキャビティ201(電子部品P)が占める領域の全体的な位置のずれの補正を図ることができる。
【0046】
<効果6>統括制御装置16は、位置情報データ300の初期値を、部品トレイ76の型番に対応して保有している。統括制御装置16は、実装作業にともなって実装作業機12の各々から受信した部品トレイ76の型番に応じた位置情報データ300を実装作業機12の各々に送信する。実装作業機12のコントローラ86は、統括制御装置16から受信した位置情報データ300をメモリ90に記憶し、この位置情報データ300を参照及び補正しながら実装作業を実施する。また、統括制御装置16は、各実装作業機12が実装作業にて補正した位置情報データ300を受信し、保有する位置情報データ300を型番ごとに更新する。このような構成では、例えば、任意の実装作業機12で使用した部品トレイ76と同一又は対応する型番のものを他の実装作業機12で使用する場合に、補正後の位置情報データ300(ピッチPx,Py)を用いて処理を実施することができる。その結果、補正された位置情報データ300を流用する実装作業機12は、補正処理を実施することなく、適切に電子部品Pの取り出しを実施することが可能となる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記実施形態の補正手段93の補正処理のタイミング、回数等は一例であり、適宜変更してもよい。例えば、補正手段93は、Y軸方向に沿って配設された電子部品Pを取り出すごとにピッチPyを補正する処理を実施したが、2番目(座標(1,2))のキャビティ201内の電子部品Pを取り出す際のみピッチPyを補正する設定でもよい。
【0048】
上記実施形態では、統括制御装置16が位置情報データ300を集中して管理する構成としたが、実装作業機12の各々が必要な位置情報データ300を保有する構成でもよい。
上記実施形態では、位置情報データ300を部品トレイ76の型番に対応付ける構成としたが、他の情報(ID,電子部品Pの種類)と対応付ける構成でもよい。
上記実施形態において、実装作業機12は、供給装置32が備える部品トレイ76の各々に対応する複数の位置情報データ300をコントローラ86のメモリ90に記憶する構成でもよい。
【0049】
また、上記実施形態では電子部品Pを回路基板22に実装する実装システム10について説明したが、本願はこれに限定されるものではなく、他の様々な製造ラインにおいて稼働する自動機などに適用することができる。例えば、二次電池(太陽電池や燃料電池など)等の組立て作業を実施する自動機において、各部品がトレイに規則的に配列された装置に適用してもよい。
【0050】
なお、特許請求の範囲の用語との対応関係は以下の通りである。
実装システム10は、部品実装システムの一例として、実装作業機12は、部品実装装置の一例として、統括制御装置16は、統括制御装置の一例として、回路基板22は、回路基板の一例として、作業ヘッド26及び吸着ノズル40は、取出装置の一例として、部品トレイ76,76A,76Bは、トレイの一例として、パーツカメラ82、画像処理部84及び演算手段92は、検出手段の一例として、補正手段93は、補正手段の一例として、キャビティ201は、キャビティの一例として、ピッチPx,Pyを含む位置情報データ300は、データの一例として、電子部品Pは、電子部品の一例として、ピッチPx,Pyは、ピッチの一例として、X軸方向及びY軸方向は、第1及び第2方向の一例として挙げられる。
【符号の説明】
【0051】
10 実装システム、12 実装作業機、16 統括制御装置、22 回路基板、26
作業ヘッド、40 吸着ノズル、76,76A,76B 部品トレイ、82 パーツカメラ、92 演算手段、93 補正手段、201 キャビティ、Px,Py ピッチ、300 位置情報データ、P 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9