(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249655
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ねじ山付きボルトの伸長用の引張り装置
(51)【国際特許分類】
B25B 29/02 20060101AFI20171211BHJP
F16B 31/04 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
B25B29/02
F16B31/04 A
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-149424(P2013-149424)
(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-18960(P2014-18960A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2016年5月25日
(31)【優先権主張番号】10 2012 106 503.9
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507335023
【氏名又は名称】フランク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Frank Hohmann
(73)【特許権者】
【識別番号】507335012
【氏名又は名称】ヨルク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Joerg Hohmann
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フランク ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク ホーマン
【審査官】
宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−534307(JP,A)
【文献】
特開2009−107114(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0271798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 29/02
B23P 19/06
F16B 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山付きボルトのねじ山端部領域(A)を引っ張ることによる、ねじ山付きボルトの伸長用の引張り装置であって、前記ねじ山端部領域(A)を包囲している支持管(2)と、該支持管(2)の延長上に配置されたシリンダ(1)とが設けられていて、該シリンダ(1)は、該シリンダ内で長手方向(L)に可動であり且つ液圧供給部(6)に接続可能な少なくとも1つのピストン(5)を備えており、前記ねじ山端部領域(A)にねじ締結可能であり且つ前記ピストン(5)によって軸方向に連行可能に形成された交換ソケット(10)と、長手方向(L)に可動に配置されたピン(20)とが設けられており、該ピン(20)のピン端部(22)は長手方向で、前記ねじ山付きボルトの前記ねじ山端部領域(A)を有する端部に支持されるようになっている、ねじ山付きボルトの伸長用の引張り装置において、
前記ピン(20)の長手方向(L)での位置を検出する検出手段(30)と、
該検出手段(30)に接続されていて、前記液圧供給部(6)を解放可能な評価及び制御ユニット(35A,35B)とが設けられており、
前記検出手段(30)は、前記交換ソケット(10)に対する前記ピン(20)の長手方向位置を検出するように形成されており、
前記評価及び制御ユニット(35A,35B)は、前記ピン(20)の長手方向位置が内部で設定された最低限の位置の値に対応する場合にのみ、前記液圧供給部(6)を解放することを特徴とする、ねじ山付きボルトの伸長用の引張り装置。
【請求項2】
前記評価及び制御ユニット(35A,35B)の構成要素は、前記シリンダ(1)に配置された送信モジュール(36)と、前記液圧供給部(6)の領域に配置された受信モジュール(37)とを備えた無線信号経路である、請求項1記載の引張り装置。
【請求項3】
前記ピン(20)の位置を検出する前記検出手段(30)は、誘導式に作動する、請求項1又は2記載の引張り装置。
【請求項4】
前記検出手段(30)は、他方のピン端部(23)の領域に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の引張り装置。
【請求項5】
前記シリンダ(1)に、前記ピン(20)の長手方向(L)での位置を表示するための表示ユニット(50)が配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の引張り装置。
【請求項6】
前記ピン(20)は、信号発生部分又は信号トリガ部分(23)を有していて、該信号発生部分又は信号トリガ部分(23)においてピン(20)の直径が変化している、請求項5記載の引張り装置。
【請求項7】
前記ピン(20)は、前記交換ソケット(10)に設けられた長手方向ガイド(17)内に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の引張り装置。
【請求項8】
前記ピン(20)の下側のピン端部(22)は、ピン横断面に比べて半径方向に拡大された拡大部(25)を備えて形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の引張り装置。
【請求項9】
前記拡大部(25)は、前記ねじ山付きボルトの端面に対向して位置していてセンサとして作用する、前記端面に形成された少なくとも1つの目印を検出する識別部材を備えている、請求項8記載の引張り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ山付きボルトのねじ山端部領域を引っ張ることによる、ねじ山付きボルトの伸長用の引張り装置であって、前記ねじ山端部領域を包囲している支持管と、該支持管の延長上に配置されたシリンダとが設けられていて、該シリンダは、該シリンダ内で長手方向に可動であり且つ液圧供給部に接続可能な少なくとも1つのピストンを備えており、前記ねじ山端部領域にねじ締結可能であり且つ前記ピストンによって軸方向に連行可能に形成された交換ソケットと、長手方向に可動に配置されたピンとが設けられており、該ピンのピン端部は長手方向で、前記ねじ山付きボルトの前記ねじ山端部領域を有する端部に支持されるようになっている、ねじ山付きボルトの伸長用の引張り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これらの特徴を備えた、液圧作動式のボルト引張り装置は、WO2010/054959 A1から公知である。この公知の引張り装置は、ねじ山突出部、即ち、交換ソケットにより把持される、ねじ山付きボルトのねじ山端部領域の長さの制御手段を有している。この目的のために、交換ソケットは長手方向通路を有していて、この長手方向通路内には計測棒が、長手方向に移動可能に装着されている。計測棒の下端部は、長手方向で、引っ張ろうとするねじ山付きボルトの端面に支持されている。計測棒の他方の端部には、着色されたマークが設けられていて、このマークに基づいて、交換ソケットに対してねじ山突出部、つまり交換ソケットにより把持されるねじ山部分の長さが、引張りプロセスのために十分な長さであるかどうかを読み取ることができるようになっている。WO2010/054959 A1に記載の計測棒を用いると同時に、機械オペレータが相応の注意を払うことによって、実際のねじ山突出部の判定が可能である。但し、必要な注意が払われていない状態では、操作ミスは排除されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2010/054959 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ねじ山付きボルトの伸長用の、冒頭で述べた形式の引張り装置において、伸長プロセス用のねじ山係合長さが不十分にならないようにして、安全性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、ねじ山付きボルトのねじ山部分を引っ張って伸長させる、冒頭で述べた形式の引張り装置では、ピンの長手方向での位置を検出する検出手段と、該検出手段に接続されていて、液圧供給部を解放可能な評価及び制御ユニットとが設けられているようにした。
【発明の効果】
【0006】
このような引張り装置では、交換ソケットと、ねじ山付きボルトの端部との間に、客観的に見て十分な長さのねじ山係合部が存在しているということが、あらゆるボルト引張りプロセスの開始前の前提条件となっている。このために本発明では、長手方向でのピンの位置を検出可能な手段が設けられている。信号の流れの下流側に配置された評価及び制御ユニットにより、検出されたピンの長手方向位置が、内部で設定された最低限の位置の値に相応しているか否か、延いては客観的に見て、十分なねじ山係合長さに基づくものであるか否か、について点検が行われる。検出されたピンの長手方向位置が、内部で設定された最低限の位置の値に相応していて、客観的に見て、十分なねじ山係合長さに基づく場合にのみ、評価及び制御ユニットにより液圧供給部が基本的に解放されるので、この場合に初めて、液圧供給部はピストン空間内に液圧を形成するために起動可能になっている。これにより、例えば注意不足のために、不十分なねじ山係合長さで引張り装置を運転させる可能性が排除されて、安全性が向上する。運転開始はむしろ、まず最初に原則として評価及び制御ユニットが液圧供給部を解放した後で、初めて可能になる。
【0007】
引張り装置の1つの構成では、評価及び制御ユニットの構成要素は、シリンダに配置された送信モジュールと、液圧供給部の領域に配置された受信モジュールとを備えた無線信号経路であってよい。この構成は、冒頭で述べた形式の引張り装置では、液圧供給部が、圧力形成を制御する弁も含めて、フレキシブルな圧力導管を介して本来の引張りシリンダに接続されているので、ある程度の間隔が、引張りシリンダと液圧供給部との間に生じる、という事情を考慮したものである。この間隔を架橋し且つ付加的な導線を回避するために、送受信モジュールを用いた信号伝達が有利である。
【0008】
引張り装置の別の構成では、ピンの長手方向位置を検出するための、誘導式に作動する手段が設けられている。
【0009】
更に別の構成では、前記検出手段がピンの他方の端部、つまりピンの、ねじ山付きボルトとは反対の側の端部の領域に配置されていることが提案される。
【0010】
好ましくは、前記検出手段は、交換ソケットに対するピンの長手方向位置を検出するように形成されている。
【0011】
更に別の構成は、シリンダに、ピンの長手方向位置を表示する表示ユニットが配置されていることを特徴とする。好ましくは、この表示ユニットは、交換ソケットに対するピンの長手方向位置を、好ましくは光学表示として表示するように形成されている。
【0012】
更に別の構成では、ピンは信号発生部分又は信号トリガ部分を有していて、この信号発生部分又は信号トリガ部分においてピンの直径が変化している。例えば、この端部においてピンは円錐形に先細になるように構成されていてよく、このことは、ピンに対して横方向に支持された測定ピンによって検知可能である。
【0013】
コンパクトな構成形式のために、ピンは、交換ソケットに設けられた長手方向ガイド内に配置されていることが提案される。このことは、交換ソケットの交換に伴って、同時にピンも交換されるという付加的な利点を有している。それというのも、交換ソケットとピンとは、その幾何学的な寸法を互いに、且つ引っ張ろうとするねじ山付きボルトに合わせられているからである。
【0014】
更に別の構成では、ピンはその下側のピン端部において、ピン横断面に比べて半径方向に拡大されて形成されている。この半径方向の拡大部によって、引っ張ろうとするボルトとピンとの接触が、常に単一の平面内で行われる、つまり、ボルトの端面の平面内であって、延いては一般に引張りプロセスに供与されるボルトの雄ねじ山が到達している平面内で行われる、ということが達成される。この手段は、例えばボルトが中央ねじ凹部を有していて、この中央ねじ凹部にピンの細長い端部が支持されていて、ねじ山付きボルトの本来の端面には支持されていないために、評価及び制御ユニットの評価結果が不正確になる恐れがある場合でも、実際のねじ山係合長さの判定を可能にする。
【0015】
更に別の構成により、前記拡大部は、ねじ山付きボルトの端面に対向して位置して、この端面に形成された少なくとも1つの目印を検出する、センサとして作用する識別部材を備えていることが提案される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ナットにより位置固定されたねじ山付きボルトに載置され且つベースに支持された、液圧作動式のねじ山付きボルト引張り装置の大部分を断面して示した図である。
【
図2】
図1に示したねじ山付きボルト引張り装置の、ベースに支持されていない状態を示した図であって、ねじ山付きボルトに対するねじ山係合部は極端に短くなっている。
【
図3】
図1に符号IIIで示した箇所の縮尺を拡大して示した図である。
【
図4】ねじ山付きボルト引張り装置の一部を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0018】
液圧運転される引張り装置は、大きな荷重がかけられるねじ締結部を締め付けるためや、場合によっては緩めるためにも使用される。引張り装置は、所定の予荷重をボルトの長手方向である程度の時間、ねじ山付きボルト3にもたらし、これにより、ねじ締結部のねじ山付きボルト3に螺合されたナット4を、トルク無しで締め付けるか若しくは締め直す手段を提供する、という課題を有している。この目的のために、以下で詳しく説明する引張り装置の交換ソケットが、ねじ山付きボルト3の、ナット4を越えて突出しているねじ山に螺合され、次いで液圧式に引っ張ることにより、ねじ山付きボルト3が長手方向に伸長するようになっている。
【0019】
ねじ山付きボルト3のねじ込み深さは、ナット4の上側においてボルト突出部として供与されるねじ山端部領域Aの長さに基づいて制限されている。供与されるねじ込み深さは、少なくともボルトのねじ山の直径と等しいことが望ましく、好ましくはボルトのねじ山の直径の1.5倍であることが望ましい。最小ねじ込み深さによってのみ、ねじ山付きボルト3が引張りプロセスによって損傷されないということが保証されている。ねじ山係合長さA1の最小値が確保されない場合は、ねじ山付きボルトの端部がひきちぎられる恐れがある。
【0020】
ボルト引張り装置は、1つ又は複数のシリンダ1から成るケーシングを有している。ケーシング若しくはシリンダ1の長手方向Lに見て下側に続いて支持管2が形成されており、この支持管2の下側は開放されていて、大抵は機械構成部材であるベース8に支持されており、このベース8にナット4も支持されている。複数のシリンダ1から構成されたケーシングの側方には液圧接続部7が位置していて、この液圧接続部7を介して引張り装置が液圧供給部6に接続されている。
【0021】
更に、支持管2の開口を通じて進入し作動する伝動装置15が設けられていてよく、この伝動装置15を用いて、ねじ山付きボルト3に螺合されたナット4を回転させることができる。この回転は当然、引張り装置が作動していて、それゆえナット4に著しい摩擦が作用していない場合にのみ可能である。
【0022】
本実施形態では、ケーシングは複数の液圧シリンダ、この場合は並列接続された2つの液圧シリンダを有しており、これらの液圧シリンダは、液圧接続部7に接続された、耐圧縮性のフレキシブルな液圧導管6Aを介して、外部の液圧供給部6に接続されている。各シリンダ1内には、ピストン5がシリンダ1に対してシールされて、長手方向Lに可動に配置されている。これは本実施形態では、下側のピストン5並びに上側のピストン5であって、これらのピストン5は、一緒にしか運動することができないようになっている。液圧供給部6が起動されると、シリンダの作業室内に液圧が供給されることにより、作業室内に配置されたピストン5は持ち上げられる。このことは、最も上のピストン5に支持されている圧縮ばね16の作用に抗して行われてよい。
【0023】
ピストン5は、その内部の中心に配置された交換ソケット10と固く結合されているので、ピストン5の運動は、交換ソケット10の同じ運動を生ぜしめる。交換ソケット10は適当な手段によって交換可能に構成されている。つまり交換ソケット10は、別の幾何学形状の交換ソケット10と交換することができる。これに対して、ピストン5が別のピストンと交換されることはない。
【0024】
交換ソケット10は、下側の結合部分と、上側のシャフト部分とから一体的に構成されている。結合部分は支持管2内に位置していて、雌ねじ山を有しており、この雌ねじ山は、ねじ山付きボルト3の雄ねじ山とねじ締結可能である。交換ソケット10のシャフト部分は複数のピストン5によって包囲されており、これらのピストンにシャフト部分は、好ましくはねじ締結によって固く結合されている。
【0025】
ねじ山付きボルトを引っ張るために、交換ソケット10は、ねじ山付きボルトのねじ山端部領域Aに螺合させられる。液圧の供給により、ピストン5は交換ソケット10を連行しながら持ち上がり、これによりねじ山付きボルト3は長手方向に伸長される。これはナット4の下面の摩擦低下をもたらすので、ナット4はボルトのねじ山に沿って回転させられる、つまり締め直される。
【0026】
引張り過程に関して重要なのは、ねじ山端部領域Aの長さに基づき供与されているねじ山付きボルト3のねじ込み深さを、対応する交換ソケット10の雌ねじ山が利用することにより、十分なねじ山係合長さA1が確実に得られることである。
【0027】
ねじ山の係合長さを点検するために、交換ソケット10の長手方向孔の中心に、ピン20が位置している。このピン20はカラー又は拡大部21を有していて、このカラー又は拡大部21には、他方を交換ソケット10に支持されたばね21Aが支持されている。このようにして、交換ソケット10の長手方向ガイド17内で長手方向に可動のピン20には常に、このピン20を下方に向かって、即ちねじ山付きボルト3に向かって軽く押圧する力が加えられている。
【0028】
ピン20の下端部22は、軸方向でねじ山付きボルト3の端面3Aに支持されている。ピン20の他方の端部23は、引張り装置の上側部分の領域に位置している。この領域で以下に詳細に説明する技術的な手段が講じられていることにより、ピン端部23の長手方向位置、延いてはピン20の長手方向Lでの位置が検出されるようになっている。この長手方向位置から、下側のピン端部22の位置する高さを検出することができ、このこともやはり、ねじ山端部領域Aにおけるねじ山係合長さA1の直接的な推量を可能にしている。つまり、
図1に示した状態において、ねじ山係合長さA1が、図示した長さよりも短い場合は、ピン20が
図1に示した状態よりも更に下がっているということであり、このことは、上側のピン端部23の、交換ソケット10又はシリンダ1に対する相対位置から検出可能である。
【0029】
ピン20の高さ位置を検出するために、ピン端部23の領域に、交換ソケット10に対するピン20の長手方向位置を検出するための検出手段30が配置されている。この検出手段30は、ピン20の位置を、例えば誘導方式で検出するように形成されている。電気的な位置信号は、信号線路31を介して評価及び制御ユニット35A,35Bに到達する。
【0030】
評価及び制御ユニット35Aは、引張り装置のケーシングの上部に配置されていてよい。しかしながら、別の場所に配置することもでき、評価及び制御ユニット35Bは、例えばやはり
図1に示したように、液圧供給部6の領域に配置され得るか、又は液圧供給部6の構成部材として配置され得る。
【0031】
図3に拡大して示した検出手段30は、電気誘導式に作動する。検出手段30は、交換ソケット10の上部に設けられた、相応する切欠き内に不動に着座している。この検出手段30によって、交換ソケット10に対するピン20の長手方向位置が検出される。
【0032】
誘導方式で検出された位置信号は、信号線路31を介して評価及び制御ユニット35A若しくは35Bに到達する。この評価及び制御ユニット35A若しくは35Bにおいて、検出されたピン20の長手方向位置が、内部規定値及び特に最低値と比較される。この値を下回った場合には、
図2に値A1′として例示したように、極端に短いねじ山係合長さA1′が内部で生じている。この場合(
図2)、評価及び制御ユニット35A若しくは35Bは液圧供給部6を解放しないので、ピストン5に対して液圧が形成されることはない。表示された値の不注意な読取りによる操作ミスは排除されている。
【0033】
評価及び制御ユニットを、シリンダ1に直接に配置することは必須ではない。
図1では、評価及び制御ユニット35Bは、フレキシブルな圧力導管6Aが装置の液圧接続部7に通じている弁制御型の液圧供給部6の領域に位置していてもよい。評価及び制御ユニット35Bが、液圧供給部6に位置しているか、又は液圧供給部6の領域に位置している場合には、検出手段30からの無線信号経路38が有効である。このためにシリンダ1に送信モジュール36が配置されており、液圧供給部6の領域に、対応する受信モジュール37が配置されている。
【0034】
下側のピン端部22は、その他のピン横断面に比べて半径方向に拡大されていてよい。この目的のために、下側のピン端部22はディスク25として形成されていて、このディスク25の半径方向の幅は、ピン20のその他の横断面よりも大きくなっている。このように形成された拡大部25は、ねじ山付きボルト3の端面3Aの大きさよりも大きくなってはならない。半径方向の拡大部25により、ピン20と、引っ張ろうとするボルト3との接触が、常に単一の平面内で、つまりボルト3の端面3Aの平面内で行われるようになっている。このことは、例えばねじ山付きボルト3に中央ねじ凹部が設けられているために、不正確な評価結果となる恐れのある場合でも、実際に係合しているねじ山突出部の長さA1の判定を可能にする。ピン20の下方が細長い状態で終わっていると、ピン20は、ねじ山付きボルト3の端面3A(その端面3Aの高さまで、ねじ山付きボルト3のねじ山は頻繁に到達している)ではなく、前記ねじ凹部に支持される恐れがある。よって、拡大部25の半径方向の幅は、少なくとも前記凹部の大きさを有していることが望ましい。
【0035】
ディスク25内には、ねじ山付きボルト3の端面3Aと向かいあうようにして、識別部材が位置していてよい。識別部材を収納するために、ディスク25には、相応に設計された切欠きが設けられていてよい。識別部材は、ねじ山付きボルト3の端面3Aに形成又は配置された、少なくとも1つの目印を検出するように形成されている。この目印は、ボルト又はねじ締結部を特徴付けるもの、例えばバーコード、又はねじ山付きボルトの材料の品質等級であってよい。しかしまた、端面3Aの領域に位置する別の目印が、識別部材により検出可能であってもよい。識別部材のセンサ信号は、信号ケーブルを介して評価ユニットに到達する。この評価ユニットは、ピン20の長手方向位置を検出する検出手段30の信号も到達する評価及び制御ユニット35A若しくは35Bと同一であってよい。信号ケーブルを収容するために、ピン20は、好ましくはピン軸線に沿って配置された長手方向通路を備えており、ピン20自体は、交換ソケット10の長手方向ガイド17内で軸方向に案内されている。このようにして、識別部材から到来する信号ケーブルは、ピン20に沿って案内されている。評価及び制御ユニット35Aでは、ディスク25内の識別部材から送信される信号も適宜評価され、場合によっては引き続いて処理される。更に、評価及び制御ユニット35A,35Bでは、引張りプロセスの記録の一部として、識別部材によって検出されたデータの電子的な記録が行われてよい。
【0036】
上側の他方のピン端部23は、信号を発生させる又は信号をトリガするピン部分として形成されている。この場合、ピン端部23は、一定の太さを有しているのではなく、ピン端部23の太さ若しくは直径は、例えば
図3に示した、ピン20の端部23に向かって先細りするテーパに基づき、長さと共に変化している。長手方向Lでピン20の位置が変わると、ピン軸線に対して横方向に支持された測定ピン55が相応して、ピン20に対して横方向に移動する。測定ピン55は、一方の端部55Aで以てピン端部23に支持されている。この変化態様では、ピン20の位置が直接に検出されるのではなく、付加的な測定ピン55の位置が機械的に検出される。測定ピン55の他方の端部は、シリンダ1に取り付けられた測定センサケーシング56内で、表示ユニット50(
図4)を備えた距離測定装置に結合されている。表示ユニット50は、機械的に検出されたピン20の高さ位置を、光学式に又は数値で表示し、これにより、機械オペレータがねじ山係合長さを付加的に点検することができるようになっている。
【符号の説明】
【0037】
1 シリンダ、 2 支持管、 3 ねじ山付きボルト、 3A ねじ山付きボルトの端面、 4 ナット、 5 ピストン、 6 液圧供給部、 6A 液圧導管、 7 液圧接続部、 8 ベース、 10 交換ソケット、 15 伝動装置、 16 圧縮ばね、 17 長手方向ガイド、 20 ピン、 21 拡大部、 21A ばね、 22,23 ピン端部、 25 ディスク、拡大部、 30 長手方向位置の検出手段、 31 信号線路、 35A,35B 評価及び制御ユニット、 36 送信モジュール、 37 受信モジュール、 38 無線信号経路、 50 表示ユニット、 55 測定ピン、 55A ピン端部、 56 測定センサケーシング、 A ねじ山端部領域、 A1,A1′ ねじ山係合長さ、 L 長手方向