特許第6249657号(P6249657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249657
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/30 20060101AFI20171211BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H03G3/30 B
   H04B1/04 R
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-153085(P2013-153085)
(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-23561(P2015-23561A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】池畑 和彦
(72)【発明者】
【氏名】徳田 正盛
(72)【発明者】
【氏名】柏木 宏貴
【審査官】 ▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−346134(JP,A)
【文献】 特開2011−071834(JP,A)
【文献】 特開2011−228774(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0298539(US,A1)
【文献】 特開2009−004843(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0087372(US,A1)
【文献】 特開2011−172206(JP,A)
【文献】 特開2001−094349(JP,A)
【文献】 特開2000−183763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 3/30
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号の信号源、および、当該信号源から送信信号を出力するときの送信出力値を設定する設定部を有する無線回路と、
上記送信信号を増幅する電力増幅器と、
上記電力増幅器にバイアス電圧を供給する供給部と、
上記電力増幅器からの送信される送信信号の送信出力値を検出する検出部と、
上記設定部が設定した送信出力値と、当該設定した送信出力値の送信信号を上記電力増幅器において増幅して送信される送信信号を上記検出部が検出した送信出力値とを比較した結果に基づいて、上記バイアス電圧を設定するように制御する制御部とを備え
上記制御部は、
上記設定部が設定した送信出力値と、上記検出部が検出した送信出力値とを比較した結果に基づいて、バイアス電圧と送信出力値とが対応付けられた互いに異なる複数のテーブルから選択されたテーブルを参照して、バイアス電圧を設定するように制御することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
送信信号の信号源、および、当該信号源から送信信号を出力するときの送信出力値を設定する設定部を有する無線回路と、
上記送信信号を増幅する電力増幅器と、
上記電力増幅器にバイアス電圧を供給する供給部と、
上記電力増幅器からの送信される送信信号の送信出力値を検出する検出部と、
上記設定部が設定した送信出力値と、当該設定した送信出力値の送信信号を上記電力増幅器において増幅して送信される送信信号を上記検出部が検出した送信出力値とを比較した結果に基づいて、上記バイアス電圧を設定するように制御する制御部と、
上記バイアス電圧と、送信出力値とが対応付けられた、互いに異なる第一および第二のテーブルが記憶された記憶部とを備え、
上記制御部は、
上記設定部が設定した送信出力値と、上記検出部が検出した送信出力値とに基づいて、上記電力増幅器の出力先の負荷に変動が有るか否かを判定する判定部と、
上記判定部によって上記変動が有ると判定された場合には上記第一のテーブルを選択し、上記変動が無いと判定された場合には上記第二のテーブルを選択する選択部とを有し、
上記制御部は、上記選択部によって選択されたテーブルを参照して上記バイアス電圧を設定するように制御することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
基地局からの送信出力値変更要求を受信する受信部を更に備え、
上記受信部が上記送信出力値変更要求を受信した場合には、上記制御部は、当該送信出力値変更要求に含まれる送信出力値と、上記参照している上記テーブルとから、上記バイアス電圧を設定するように制御することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記検出部により検出した送信出力値が変動した場合には、上記第一のテーブルを参照して上記バイアス電圧を設定するように制御することを特徴とする請求項2または3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
上記電力増幅器から出力された送信信号を外部に出力する送信アンテナを更に備えていることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を増幅する電力増幅器を備えた無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置において、送信信号の電力増幅器の出力値を検出し、歪特性(隣接チャンネル漏洩電力)を基に作られた電力増幅器のバイアス電圧を、出力値との対応表を基に決定するバイアス電圧の制御方法が知られている。
【0003】
特許文献1の無線通信装置では、送信出力に応じて最適なACP(Adjacent Channel Leakage Power:隣接チャンネル漏洩電力)が得られるバイアス設定を対応させた対応表を、変調クラス毎もしくは温度毎に用意しており、当該対応表を用いて、電力増幅器で増幅された変調信号を送信するときの送信出力値に対応するバイアス電圧を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−100446号公報(2009年5月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成は、電力増幅器の出力先(アンテナ等)の負荷の変化は考慮されていないため、無線通信装置を把持したり、鞄や洋服のポケットなどに入れたりすることによる通信中の負荷変動に対して、送信信号の質(波形)が悪くなる、つまり良好な歪特性を維持できない虞がある。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力増幅器に接続された負荷の状態を判断し、出力値の検出値に応じて電力増幅器に適切なバイアス電圧を印加することができる無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る無線通信装置は、
送信信号の信号源、および、当該信号源から送信信号を出力するときの送信出力値を設定する設定部を有する無線回路と、
上記送信信号を増幅する電力増幅器と、
上記電力増幅器にバイアス電圧を供給する供給部と、
上記電力増幅器からの送信される送信信号の送信出力値を検出する検出部と、
上記設定部が設定した送信出力値と、当該設定した送信出力値の送信信号を上記電力増幅器において増幅して送信される送信信号を上記検出部が検出した送信出力値とを比較した結果に基づいて、上記バイアス電圧を設定するように制御する制御部とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力増幅器の出力先の負荷の変化に応じて電力増幅器に適切なバイアス電圧を印加することができ、送信信号の品質を良好に保つことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る無線通信装置のブロック図である。
図2図1に示す無線通信装置の一部のブロック図である。
図3図1に示す無線通信装置においてバイアス電圧を設定するために用いるテーブルについて説明する図である。
図4図1に示す無線通信装置においておこなわれるバイアス電圧設定動作の処理フローを示す図である。
図5図1に示す無線通信装置においておこなわれるバイアス電圧設定動作を説明する図である。
図6】本発明の実施形態2に係る無線通信装置のブロック図である。
図7図6に示す無線通信装置においておこなわれるバイアス電圧設定動作を説明する図である。
図8】本発明の実施形態3に係る無線通信装置においておこなわれるバイアス電圧設定動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る無線通信装置の一実施形態について、図1から図5に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態1の無線通信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態1の無線通信装置1は、例えば、基地局と無線通信をおこなう、あるいは端末同士で無線通信をおこなう携帯電話等の端末に好適に用いられる。そのため、無線通信装置1は、図1に示すように、アンテナ2(送信アンテナ、受信部)と、デュプレクサ3(DUP)と、電力増幅器4(パワーアンプ:PA)と、送信出力検出部5(検出部)と、バイアス回路6(供給部)と、高周波集積回路7(無線回路、制御部)とを備えている。
【0012】
アンテナ2は、信号の送受信をおこない、後述する電力増幅器4により増幅された送信信号を無線通信装置1外部(図1では基地局90)に向けて送信することができる。
【0013】
デュプレクサ3は、入力した信号を送信帯域と受信帯域に分けるフィルタである。
【0014】
電力増幅器4は、バイアス回路6からバイアス電圧の供給を受け、高周波集積回路7の信号源70からの入力信号(送信信号)を増幅させる回路である。増幅して得られる送信信号は、電力増幅器4からデュプレクサ3へ出力される。
【0015】
送信出力検出部5は、電力増幅器4からデュプレクサ3へ出力(送信)される送信信号の送信出力値を検出する。送信出力値とは、送信電力レベルと換言することができる。検出された送信出力値は、高周波集積回路7へ出力される。送信出力検出部5は、例えば方向性結合器と送信出力値検出回路とを組み合わせて構成することができる。なお、送信出力検出部5は、送信出力値の検出することができれば検出方法に制限はない。
【0016】
バイアス回路6は、バイアス電圧を生成し、電力増幅器4へ出力する回路である。また、バイアス回路6は、後述する高周波集積回路7のメモリ73に記憶されたテーブルを元に送られる信号である電圧設定命令に基づいてバイアス電圧を生成する。
【0017】
高周波(RF)集積回路7は、アンテナ2より送信するための送信信号の出力値を設定して、当該送信信号(波形)を出力する回路である。
【0018】
図2は、高周波集積回路7の構成を示すブロック図である。高周波集積回路7は、図2に示すように、信号源70と、送信出力値設定部71(設定部)と、判定部72と、メモリ73(記憶部)と、選択部74とを有している。
【0019】
信号源70は、送信信号を電力増幅器4へ出力する。この送信信号が入力信号として電力増幅器4に入力される。
【0020】
送信出力値設定部71は、アンテナ2より送信する送信信号の送信出力値(送信電力レベル)を設定する。
【0021】
判定部72は、送信出力値設定部71が設定した送信出力値(以下、設定値と記載する)と、上述した送信出力検出部5が検出した送信出力値(以下、検出値と記載する)とを元に比較することにより、電力増幅器4の出力先の負荷に変動が有るか否かを判定する。
【0022】
本来ならば、検出値は、設定値に基づいて想定される範囲内の値であるべきところ、無線通信装置1のユーザーが通信中に例えば無線通信装置を置いたり把持したりなどすることによって、電力増幅器4に接続された負荷(アンテナ2とディプレクサ3および、それらに接続される回路によって形成される)が変動し、検出値が、設定値に基づいて想定される範囲から外れる値となる事態となる。この事態は負荷変動状態であるため、バイアス電圧を適正な値に変更せずに放置すれば、アンテナ2から送信する送信信号の質(波形)の悪化、つまり、歪特性の劣化を招く。
【0023】
そこで、本実施形態1では、検出値と設定値とに基づいてメモリ上のテーブルを元にバイアス電圧を設定することで歪特性の劣化を改善させる。
【0024】
具体的には、判定部72によって電力増幅器4の出力先の負荷に変動が有るか否かが判定される。判定部72は、検出値が、設定値に基づいて想定される範囲内の値であるか否かを判定する。検出値が、設定値に基づいて想定される範囲内の値であるとは、検出値と設定値との差の絶対値が、予め定めた値未満である(|検出値B−設定値A|<α)ことを指す。その判定結果は、選択部74へ出力される。選択部74は、判定部72の判定結果に基づいて、メモリ73に記憶されているテーブルのうちの一つを選択する。
【0025】
メモリ73には、電力増幅器4の出力先に負荷の変動が有る場合に参照すべきテーブル(第一のテーブル)と、電力増幅器4の出力先に負荷の変動が無い場合に参照すべきテーブル(第二のテーブル)とが記憶されている。各テーブルには、検出値とバイアス電圧が対応付けられている。
【0026】
電力増幅器4の出力先に負荷の変動が有る場合に参照すべきテーブルは、負荷の変動を予め想定して作成されるテーブルである。例えば、本実施形態1の無線通信装置1は、ユーザーによって把持されて姿勢が変化したり、無線通信装置1を置く場所を変えたりすることによって負荷変動が生じる。このような負荷変動は意図しないものであるが、実際には想定可能であるため、その想定に基づいたテーブルを予め用意することが可能である。一方、電力増幅器4の出力先に負荷の変動が無い場合に参照すべきテーブルは、アンテナに悪影響を及ぼすものがない状態(自由空間)を想定したテーブルである。
【0027】
電力増幅器4の出力先に負荷の変動が有る場合に参照すべきテーブルは、更に、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)またはLTE(Long Term Evolution)等の通信方式毎に分かれていてもよい。更には、LETのような通信帯域幅やリソースブロック数やリソースブロック配置が可変のものに対しては、それらも考慮してそれぞれにテーブルが用意されていてもよい。図3は、通信方式毎に分けられ、更に通信帯域毎に分けられ、且つ、更に通信周波数毎にテーブルが用意されている状態を示している。これは、図3に示すように電力増幅器4の出力先に負荷の変動が無い場合に参照すべきテーブルにおいても同じである。
【0028】
自由空間を想定したテーブルと、負荷の変動を予め想定して作成されるテーブルとは、検出値に対するバイアス値が異なる。
【0029】
選択部74は、判定部72の判定結果と、通信している通信方式、通信バンドおよび通信周波数とに基づいてテーブルを選択して、その選択情報を送信出力値設定部71へ出力する。
【0030】
送信出力値設定部71は、選択部74から選択情報が入力されると、選択部74が選択したテーブルを参照して、上述した検出値に基づいて、電力増幅器4に供給されるバイアス電圧を設定して、その電圧設定命令をバイアス回路6へ出力する。なお、テーブルは、送信出力値設定部71がメモリ73から取得してもよいし、選択部74がメモリ73から送信出力値設定部71へテーブルを提供してもよい。
【0031】
以下に、本実施形態1の無線通信装置1において行われる電力増幅器4のバイアス電圧決定動作を、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
ステップS1は、送信開始時として、信号源70から出力される送信信号の送信出力値(設定値A)が設定される。また、バイアス回路6から所定の初期電圧が電力増幅器4に供給される。初期電圧とは、送信電力が最大でも送信波形の品質が良好な電圧であり、デバイスの仕様書に記載されている標準電圧であってよく、あるいは、事前に実験で求めた値であってもよく、3.4V付近の電圧に設定することもできる。
【0033】
ステップS2では、信号源70から送信信号が電力増幅器4へ出力される。
【0034】
ステップS3では、電力増幅器4が、入力した送信信号を増幅して送信信号を出力する。なお、電力増幅器の増幅率にバイアス電圧は関係しないため、バイアス電圧は出力レベルとは関係なく任意に設定することが可能である。
【0035】
ステップS4では、電力増幅器4から出力された送信信号の送信出力値を、送信出力検出部5により検出する。検出した送信出力値(上述の検出値)は、高周波集積回路7の判定部72に出力される。
【0036】
ステップS5では、判定部72により、ステップS1において送信出力値設定部71によって設定された送信出力値(上述の設定値)と、ステップS4において検出した検出値とを比較する。具体的には、上述したように検出値が、設定値に基づいて想定される値であるか否かが判断される。検出値が、設定値に基づいて想定される値であれば、ステップS6に移行する。一方、検出値が、設定値に基づいて想定される値でなければ、ステップS7に移行する。
【0037】
ステップS6では、選択部74により、メモリ73に格納されている、電力増幅器4の出力先の負荷に変動が無い場合に参照すべき複数のテーブルの中から、通信している通信方式、通信バンドおよび通信周波数に基づいて或るテーブル(第二のテーブル)が選択される。
【0038】
ステップS7では、選択部74により、メモリ73に格納されている、電力増幅器4の出力先の負荷に変動が有る場合に参照すべき複数のテーブルの中から、通信している通信方式、通信バンドおよび通信周波数に基づいて或るテーブル(第一のテーブル)が選択される。
【0039】
ステップS8では、送信出力値設定部71により、ステップS6またはS7によって選択されたテーブルを参照して、ステップS4において検出した検出値に基づいて、電力増幅器4に供給されるバイアス電圧を設定して、その電圧設定命令をバイアス回路6へ出力する。
【0040】
以上が一連のバイアス電圧決定動作の説明である。続いて、このバイアス電圧決定動作をより具体的に説明する。
【0041】
図5は、本実施形態1の無線通信装置1を用いた送信信号の送信開始時フェーズのバイアス電圧決定動作の具体例を示す図である。
【0042】
まず、図5の(a)に示すように、信号源70から出力される送信信号の送信出力値(設定値A)が設定される。また、バイアス回路6から供給されたバイアス電圧は所定の初期電圧に設定される。なお、この設定値Aとは、基地局からの命令や、圏外/圏内(圏外では最大レベルにする)、基地局からの信号の受信レベルなどによって決定される。
【0043】
続いて図5の(b)に示すように、先に設定された設定値Aとバイアス電圧である所定の初期電圧とに基づいて、電力増幅器4において送信信号が増幅され、増幅された送信信号が電力増幅器4から出力されると、送信出力検出部5がその出力信号の送信出力値(検出値B)を検出する。
【0044】
続いて図5の(c)に示すように、高周波集積回路7に入力された検出値Bと、上の設置値Aとに基づいて負荷変動の有無が判定されて上述したように参照すべきテーブルが選択され、そのテーブルを参照して、検出値Bに基づいてバイアス電圧が決定される。
【0045】
以上のように、本実施形態1の無線通信装置1によれば、電力増幅器の出力先の負荷の変化に応じて電力増幅器に適切なバイアス電圧を印加することができ、送信信号の波形を良好に保つことができる。
【0046】
なお、本実施形態1では、テーブルが高周波集積回路7内のメモリ73に格納されているが、テーブルを格納するメモリは、高周波集積回路7外に配設されていてもよい。
【0047】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図6および図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0048】
図6は、本実施形態2の無線通信装置1のブロック図であり、図1に対応している。なお、本実施形態2は、図6に示すように、無線通信装置1のアンテナ2が、外部からの送信出力値変更要求を受信する点を実施形態1の無線通信装置1に付加した構成であり、実施形態2は実施形態1の図5に続く処理を説明していると換言することができる。
【0049】
本実施形態2では、無線通信装置1が例えば携帯電話である場合に、通信変化から送信変更を基地局が要求する場合を想定している。なお、通信環境の変化とは、車などの移動により、基地局からの距離が変わる場合などをいう。
【0050】
図7は、本実施形態2のバイアス電圧決定動作を説明する図であり、図5の(c)に続くバイアス電圧決定動作を示す。
【0051】
図7の(a)に示す段階は、図5の(c)と同一であり、バイアス電圧は図5の(c)において参照されているテーブルに基づいて設定されている。この段階では基地局は送信出力値変更要求信号を送信していない。
【0052】
続いて、図6に示す基地局90から送信された送信出力値変更要求信号をアンテナ2が受信する(図7の(b))。
【0053】
続いて、送信出力値設定部71は、図7の(a)の段階で参照されているテーブルをそのまま参照し、設定値Cに基づいて、バイアス電圧を設定する(図7の(c))。
【0054】
続いて、図7の(c)において設定したバイアス電圧に応じて電力増幅器4により増幅されて出力された送信信号は、送信出力検出部5によって、その送信出力値が検出値Dと検出される。この段階で、バイアス電圧は、検出値Dと、上の設置値Cとに基づいて実施形態1と同様の方法によって設定される(図7の(d))。
【0055】
本実施形態2によれば、無線通信装置1のアンテナ2が外部からの送信出力値変更要求を受信した場合であっても、先に参照していたテーブルを用いて電力増幅器に供給するバイアス電圧を設定する。そのため、実施形態1と同様に、電力増幅器の出力先の負荷の変化に応じて電力増幅器に適切なバイアス電圧を印加することができる。
【0056】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0057】
図8は、本実施形態3の無線通信装置1のバイアス電圧決定動作を説明する図である。なお、本実施形態3は、実施形態1の図5の(c)に続く動作であり、負荷の変動が生じた場合の動作を説明する。
【0058】
図8の(a)に示す段階は、図5の(c)と同一であり、バイアス電圧は図5の(c)において参照されているテーブルに基づいて設定されている。
【0059】
続いて、負荷の変動によって、送信出力検出部5の検出値が検出値Bから検出値Cに変動する(図8の(b))。この段階で、設置値は設定値Aのままであり、バイアス電圧も図5の(c)において参照されているテーブルに基づいて設定されている値のままである。
【0060】
検出値Cが高周波集積回路7に入力されると、設定値Aが変動していないにもかかわらず検出値が変動したことにより、判定部72は、電力増幅器4の出力先の負荷に変動が有ったと判定し、判定結果を選択部74へ出力し、選択部74では、電力増幅器4の出力先の負荷に変動が有る場合に参照すべきテーブルが選択される。そして、送信出力値設定部71により、選択されたテーブルが参照されて、上述した検出値Cに基づいて、電力増幅器4に供給されるバイアス電圧が設定される(図8の(c))。
【0061】
このように、本実施形態3によれば、送信信号の送信中の負荷変動にも適切に対応して、バイアス電圧を設定することができる。
【0062】
なお、本実施形態3において、電力増幅器4の出力先の負荷に変動が有ったという判定部72の判定は、広義に解釈すれば、送信出力値設定部71の設定値と、送信出力検出部5の検出値とを比較した結果による判定であるといえる。
【0063】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る無線通信装置は、
送信信号の信号源70、および、当該信号源70から送信信号を出力するときの送信出力値を設定する設定部(送信出力値設定部71)を有する無線回路(高周波集積回路7)と、
上記送信信号を増幅する電力増幅器4と、
上記電力増幅器4にバイアス電圧を供給する供給部(バイアス回路6)と、
上記電力増幅器4からの送信される送信信号の送信出力値を検出する検出部(送信出力検出部5)と、
上記設定部(送信出力値設定部71)が設定した送信出力値と、当該設定した送信出力値の送信信号を上記電力増幅器4において増幅して送信される送信信号を上記検出部(送信出力検出部5)が検出した送信出力値とを比較した結果に基づいて、上記バイアス電圧を設定するように制御する制御部(高周波集積回路7)とを備えていることを特徴としている。
【0064】
上記の構成によれば、設定部が設定した送信出力値と、当該設定した送信出力値の送信信号を電力増幅器において増幅して送信される送信信号を検出部が検出した送信出力値とを比較した結果に基づいて、バイアス電圧を設定する。これにより、電力増幅器の出力先の負荷の変化に応じて電力増幅器に適切なバイアス電圧を印加することができ、送信信号の波形(質)を良好に保つことが可能である。
【0065】
なお、上記設定部(送信出力値設定部71)が設定した送信出力値(設定値)と、上記検出部(送信出力検出部5)が検出した送信出力値(検出値)との比較には、上述の実施形態1のように、検出値が、設定値に基づいて想定される範囲内の値であるかを求めて電力増幅器の出力先の負荷に変動が有るか否かが判定すること、および、上述の実施形態3のように、設定値が変化していないにも関わらず、検出値が変化したことによって電力増幅器の出力先の負荷に変動が有ったと判定することを含む。
【0066】
また本発明の態様2に係る無線通信装置は、上記態様1において、
上記バイアス電圧と、送信出力値とが対応付けられた、互いに異なる第一および第二のテーブルが記憶された記憶部(メモリ73)を更に備え、
上記制御部(高周波集積回路7)は、
上記設定部が設定した送信出力値と、上記検出部が検出した送信出力値とに基づいて、上記電力増幅器4の出力先の負荷に変動が有るか否かを判定する判定部72と、
上記判定部72によって上記変動が有ると判定された場合には上記第一のテーブルを選択し、上記変動が無いと判定された場合には上記第二のテーブルを選択する選択部74とを有し、
上記制御部(高周波集積回路7)は、上記選択部74によって選択されたテーブルを参照して上記バイアス電圧を設定するように制御することが好ましい。
【0067】
上記の構成によれば、電力増幅器の出力先の負荷に変動が有るか否かを判定し、それに応じたテーブルを参照することから、電力増幅器の出力先の負荷の変化に応じて電力増幅器に適切なバイアス電圧を印加することができ、送信信号の波形を良好に保つことが可能である。
【0068】
また本発明の態様3に係る無線通信装置は、上記態様2において、
基地局からの送信出力値変更要求を受信する受信部(アンテナ2)を更に備え、
上記受信部(アンテナ2)が上記送信出力値変更要求を受信した場合には、上記制御部(高周波集積回路7)は、当該送信出力値変更要求に含まれる送信出力値と、上記参照している上記テーブルとから、上記バイアス電圧を設定するように制御することが好ましい。
【0069】
上記の構成によれば、送信出力値変更要求があっても、電力増幅器の出力先の負荷の変化に応じて電力増幅器に適切なバイアス電圧を印加することができる。
【0070】
また本発明の態様4に係る無線通信装置は、上記態様2または3において、
上記制御部(高周波集積回路7)は、上記検出部(送信出力検出部5)により検出した送信出力値が変動した場合には、上記第一のテーブルを参照して上記バイアス電圧を設定するように制御することが好ましい。
【0071】
上記の構成によれば、検出部により検出した送信出力値に変動が有ると、電力増幅器の出力先の負荷の変化が有ったとみなして、第一のテーブルを参照してバイアス電圧を設定することができる。
【0072】
また本発明の態様5に係る無線通信装置は、上記態様1から4において、
上記電力増幅器4から出力された送信信号を外部に出力する送信アンテナ(アンテナ2)を更に備えることができる。
【0073】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、携帯電話等の無線通信装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 無線通信装置
2 アンテナ(送信アンテナ、受信部)
3 デュプレクサ
4 電力増幅器
5 送信出力検出部(検出部)
6 バイアス回路(供給部)
7 高周波集積回路(無線回路)
70 信号源
71 送信出力値設定部(設定部)
72 判定部
73 メモリ(記憶部)
74 選択部
90 基地局
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8