(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249673
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】非接触給電システムおよび受信機器
(51)【国際特許分類】
H04B 5/02 20060101AFI20171211BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20171211BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20171211BHJP
【FI】
H04B5/02
H02J50/10
H02J50/80
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-168015(P2013-168015)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-37228(P2015-37228A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100122910
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 広之
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政考
【審査官】
金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−074950(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/046104(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0083012(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0232201(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/02
H02J 50/10
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電方式で送信機器から受信機器に電力を給電する非接触給電システムであって、
前記送信機器は、
送信コイルと、
前記送信コイルに電磁界の電力信号を発生させるドライバと、
前記送信コイルを介してFSK信号を送信するFSK変調部と
を備え、
前記受信機器は、
受信コイルと、
前記受信コイルに誘起される電流を整流する整流回路と、
前記受信コイルを介して受信されるFSK信号を復調するFSK復調部と、
FSK通信中は前記整流回路の整流モードがダイオード整流モードとなるように制御するコントローラと
を備え、
前記整流回路は、コンデンサとコイルとを備える平滑回路を含むとともに、4つの整流トランジスタを使って整流するブリッジ整流回路であり、前記4つの整流トランジスタのそれぞれのソース・ドレイン間には、ダイオードがそれぞれ形成されており、
前記コントローラは、FSK通信を開始することを検知すると、FSK通信を開始する直前に前記4つの整流トランジスタを全てオンからオフに切り替えることで前記整流回路の整流モードを同期整流モードから前記4つの整流トランジスタのゲート電圧に依存しないダイオード整流モードに切り替えることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
前記コントローラは、FSK通信を開始することを検知すると、FSK通信の開始トリガ信号を前記送信機器に送信するとともに、前記整流回路の整流モードを同期整流モードからダイオード整流モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記コントローラは、FSK通信を終了することを検知すると、FSK通信の終了トリガ信号を前記送信機器に送信するとともに、前記整流回路の整流モードをダイオード整流モードから同期整流モードに切り替えることを特徴とする請求項2に記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記受信機器は、前記開始トリガ信号または前記終了トリガ信号をAM変調するAM変調器を備えることを特徴とする請求項3に記載の非接触給電システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記FSK通信を終了することを検知すると、前記4つの整流トランジスタを全てオフからオンに切り替えることで前記整流回路の整流モードを前記ダイオード整流モードから前記同期整流モードに切り替えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項6】
FSK通信は、前記送信機器と前記受信機器との間の認証・設定フェーズの後、前記送信機器から前記受信機器への送電フェーズの前に行われることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項7】
前記受信機器は、非接触給電IC、携帯電話、タブレット端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器のいずれかに搭載されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項8】
非接触給電方式で送信機器から電力を給電される受信機器であって、
受信コイルと、
前記受信コイルに誘起される電流を整流する整流回路と、
前記受信コイルを介して受信されるFSK信号を復調するFSK復調部と、
FSK通信中は前記整流回路の整流モードがダイオード整流モードとなるように制御するコントローラと
を備え、
前記整流回路は、コンデンサとコイルとを備える平滑回路を含むとともに、4つの整流トランジスタを使って整流するブリッジ整流回路であり、前記4つの整流トランジスタのそれぞれのソース・ドレイン間には、ダイオードがそれぞれ形成されており、
前記コントローラは、FSK通信を開始することを検知すると、FSK通信を開始する直前に前記4つの整流トランジスタを全てオンからオフに切り替えることで前記整流回路の整流モードを同期整流モードから前記4つの整流トランジスタのゲート電圧に依存しないダイオード整流モードに切り替えることを特徴とする受信機器。
【請求項9】
前記コントローラは、FSK通信を開始することを検知すると、FSK通信の開始トリガ信号を前記送信機器に送信するとともに、前記整流回路の整流モードを同期整流モードからダイオード整流モードに切り替えることを特徴とする請求項8に記載の受信機器。
【請求項10】
前記コントローラは、FSK通信を終了することを検知すると、FSK通信の終了トリガ信号を前記送信機器に送信するとともに、前記整流回路の整流モードをダイオード整流モードから同期整流モードに切り替えることを特徴とする請求項9に記載の受信機器。
【請求項11】
前記開始トリガ信号または前記終了トリガ信号をAM変調するAM変調器を備えることを特徴とする請求項10に記載の受信機器。
【請求項12】
前記コントローラは、前記FSK通信を終了することを検知すると、前記4つの整流トランジスタを全てオフからオンに切り替えることで前記整流回路の整流モードを前記ダイオード整流モードから前記同期整流モードに切り替えることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の受信機器。
【請求項13】
FSK通信は、前記送信機器と前記受信機器との間の認証・設定フェーズの後、前記送信機器から前記受信機器への送電フェーズの前に行われることを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の受信機器。
【請求項14】
非接触給電IC、携帯電話、タブレット端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器のいずれかに搭載されることを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の受信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電システムおよび受信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やタブレット等の電子機器に電力を供給する非接触給電方式(ワイヤレス給電方式、無接点電力伝送方式ともいう。)が普及し始めている。異なるメーカーの製品間の相互利用を促進するためにWPC(Wireless Power Consortium)が組織され、WPCにより国際標準規格であるQi(チー)規格が策定された。
【0003】
このような非接触給電システムは、送信機器(TX)と受信機器(RX)とを備える(例えば、特許文献1、2参照)。送信機器(TX)と受信機器(RX)との間は、整流波形を介して通信を行う。送信機器(TX)から受信機器(RX)への通信は、FSK(Frequency Shift Keying)信号で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−38854号公報
【特許文献2】特開2012−80772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、整流波形に歪みが重畳されると、後段の増幅処理において歪み成分も増幅されるため、FSK信号の誤検出が発生する。整流波形の歪みの原因は整流方式にもよるが、FSKによる周波数の変化や、整流回路におけるスイッチングタイミングの微妙なズレ等が影響する。このようなFSK信号の誤検出の問題に対しては、例えば、後段の処理部で所定回数だけ検出処理を繰り返す等の対策が行われるが、根本的な解決には至っていないのが現状である。
【0006】
本発明の目的は、FSK通信を安定して行うことができる非接触給電システムおよび受信機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、非接触給電方式で送信機器から受信機器に電力を給電する非接触給電システムであって、前記送信機器は、送信コイルと、前記送信コイルに電磁界の電力信号を発生させるドライバと、前記送信コイルを介してFSK信号を送信するFSK変調部とを備え、前記受信機器は、受信コイルと、前記受信コイルに誘起される電流を整流する整流回路と、前記受信コイルを介して受信されるFSK信号を復調するFSK復調部と、FSK通信中は前記整流回路の整流モードがダイオード整流モードとなるように制御するコントローラとを備え
、前記整流回路は、コンデンサとコイルとを備える平滑回路を含むとともに、4つの整流トランジスタを使って整流するブリッジ整流回路であり、前記4つの整流トランジスタのそれぞれのソース・ドレイン間には、ダイオードがそれぞれ形成されており、前記コントローラは、FSK通信を開始することを検知すると、FSK通信を開始する直前に前記4つの整流トランジスタを全てオンからオフに切り替えることで前記整流回路の整流モードを同期整流モードから前記4つの整流トランジスタのゲート電圧に依存しないダイオード整流モードに切り替える非接触給電システムが提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、非接触給電方式で送信機器から電力を給電される受信機器であって、受信コイルと、前記受信コイルに誘起される電流を整流する整流回路と、前記受信コイルを介して受信されるFSK信号を復調するFSK復調部と、FSK通信中は前記整流回路の整流モードがダイオード整流モードとなるように制御するコントローラとを備え
、前記整流回路は、コンデンサとコイルとを備える平滑回路を含むとともに、4つの整流トランジスタを使って整流するブリッジ整流回路であり、前記4つの整流トランジスタのそれぞれのソース・ドレイン間には、ダイオードがそれぞれ形成されており、前記コントローラは、FSK通信を開始することを検知すると、FSK通信を開始する直前に前記4つの整流トランジスタを全てオンからオフに切り替えることで前記整流回路の整流モードを同期整流モードから前記4つの整流トランジスタのゲート電圧に依存しないダイオード整流モードに切り替える受信機器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、FSK通信を安定して行うことができる非接触給電システムおよび受信機器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】基本技術に係る非接触給電システムの模式的ブロック構成図。
【
図2】基本技術に係る非接触給電システムの送信機器(TX)の動作シーケンス図。
【
図3】比較例に係る受信機器(RX)においてFSK信号の誤検出が発生することを説明するための図であって、(a)整流波形、(b)矩形波。
【
図4】実施の形態に係る非接触給電システムの模式的ブロック構成図。
【
図5】実施の形態に係る非接触給電システムの送信機器(TX)の動作シーケンス図。
【
図6】実施の形態に係る受信機器(RX)が備える整流回路の模式的回路構成図。
【
図7】実施の形態に係る受信機器(RX)が備える整流回路の整流モードを切り替える動作を示すフローチャート。
【
図8】実施の形態に係る受信機器(RX)においてFSK信号の誤検出が解消することを説明するための図であって、(a)コントロール信号、(b)FSK信号、(c)整流波形。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(基本技術:非接触給電システム)
基本技術に係る非接触給電システム100の模式的ブロック構成は、
図1に示すように表される。
図1に示すように、非接触給電システム100は、Qi規格に準拠したシステムであり、送信機器(TX)200と、受信機器(RX)300とを備える。
【0014】
送信機器(TX)200は、送信コイル(1次コイル)202と、ドライバ204と、コントローラ206と、復調器208とを備える。ドライバ204には、Hブリッジ回路(フルブリッジ回路)またはハーフブリッジ回路が含まれる。ドライバ204は、送信コイル202に駆動信号S1(具体的にはパルス信号)を印加し、送信コイル202に流れる駆動電流により、送信コイル202に電磁界の電力信号S2を発生させる。コントローラ206は、送信機器(TX)200全体を統括的に制御するものであり、具体的には、ドライバ204のスイッチング周波数、またはスイッチングのデューティ比を制御することにより、送信電力を変化させる。
【0015】
Qi規格では、送信機器(TX)200と受信機器(RX)300との間で通信プロトコルが定められており、受信機器(RX)300から送信機器(TX)200に対して制御信号S3による情報の伝達が可能となっている。この制御信号S3は、後方散乱変調(Backscatter modulation)を利用して、AM(Amplitude Modulation)変調された形で、受信コイル(2次コイル)302から送信コイル202に送信される。この制御信号S3には、例えば、受信機器(RX)300に対する電力供給量を指示する電力制御データや、受信機器(RX)300の固有の情報を示すデータ等が含まれる。復調器208は、送信コイル202の電流または電圧に含まれる制御信号S3を復調する。コントローラ206は、復調された制御信号S3に含まれる電力制御データに基づいてドライバ204を制御する。
【0016】
受信機器(RX)300は、受信コイル302と、整流回路304と、コンデンサ306と、変調器308と、負荷回路310と、コントローラ312と、電源回路314とを備える。受信コイル302は、送信コイル202からの電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイル202に対して送信する。整流回路304およびコンデンサ306は、電力信号S2に応じて受信コイル302に誘起される電流S4を整流・平滑化し、直流電圧に変換する。電源回路314は、送信機器(TX)200から供給された電力を利用して図示しない2次電池を充電し、または直流電圧Vdcを昇圧あるいは降圧し、コントローラ312やその他の負荷回路310に供給する。コントローラ312は、受信機器(RX)300が受けている電力供給量をモニタし、それに応じて、電力供給量を指示する電力制御データを生成する。変調器308は、電力制御データを含む制御信号S3を変調し、受信コイル302のコイル電流を変調することにより、送信コイル202のコイル電流およびコイル電圧を変調する。
【0017】
(基本技術:動作シーケンス)
基本技術に係る非接触給電システム100の送信機器(TX)200の動作シーケンスは、
図2に示すように表される。
図2に示すように、送信機器(TX)200の状態は、選択フェーズ(Selection Phase)φ1と、送電(Power Transfer)フェーズφ2と、認証・設定フェーズ(Identification & Configuration Phase)φ3とに大別される。
【0018】
はじめに、送電フェーズφ2について説明する。送信機器(TX)200から受信機器(RX)300への送電が開始されると(S100)、現在の送電状態を示す制御信号S3が受信機器(RX)300から送信機器(TX)200にフィードバックされる(S102)。これにより、送信機器(TX)200は、制御信号S3に基づいて送電量を調節する(S104)。送電中は、制御信号S3のフィードバックと送電量の調整が繰り返される(S102→S104→S102→…)。充電完了を示す制御信号S3が受信機器(RX)300から送信機器(TX)200に送信されるか(S106)、または、送信機器(TX)200の給電範囲から受信機器(RX)300が取り外されたことにより通信のタイムアウトエラーが発生すると(S110)、そのことを送信機器(TX)200が検知して送電を停止し(S108)、選択フェーズφ1に移行する。
【0019】
次に、選択フェーズφ1について説明する。送信機器(TX)200は、所定の時間間隔(Object detection interval、例えば500msec)毎に電力信号S2を送信し、受信機器(RX)300の有無を確認する(S200)。これをアナログピンフェーズ(Analog Ping Phase)と称する。受信機器(RX)300が検出されると(S202)、認証・設定フェーズφ3に移行する。
【0020】
最後に、認証・設定フェーズφ3について説明する。送信機器(TX)200は、デジタルピンフェーズ(Digital Ping Phase)を実行し(S204)、受信機器(RX)300の個体情報を受信する(S206)。続いて、送電条件に関する情報が受信機器(RX)300から送信機器(TX)200に送信され(S208)、送電フェーズφ2に移行する。
【0021】
(比較例)
比較例に係る受信機器(RX)300においてFSK信号Sfの誤検出が発生することを説明するための図は、
図3に示すように表される。
図3(a)は、整流波形(電圧波形)V
AC1/AC2であり、
図3(b)は、整流波形V
AC1/AC2に基づいて生成される高振幅の矩形波V
RECTである。
図3(a)(b)に示すように、比較例によると、整流波形V
AC1/AC2に歪みが重畳される場合がある。既に説明した通り、整流波形の歪みの原因は整流方式にもよるが、FSKによる周波数の変化や、整流回路304におけるスイッチングタイミングの微妙なズレ等が影響する。ここでは、時間t3〜t4において閾値V
Tを越える歪みが重畳されている。このような歪みが重畳されると、
図3(b)に示すように、後段の増幅処理において歪み成分も増幅されるため、FSK信号の誤検出が発生する。
【0022】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を基本技術または比較例と異なる点を中心に説明する。
【0023】
本実施の形態でも、
図4に示すように、送信機器(TX)200と受信機器(RX)300との間でFSK通信を行う非接触給電システム100を前提としている。送信機器(TX)200側のFSK変調部240は、FSK信号Sfの元になるFSK元信号Sf0をFSKの方式で変調し、送信コイル202を介してFSK信号Sfを送信する。受信機器(RX)300側のFSK復調部340は、受信コイル302の電流または電圧に含まれるFSK信号Sfを復調してコントローラ312に入力する。本実施の形態では、このような非接触給電システム100においてFSK通信を安定して行うことができるようにするため、以下の構成を採用している。
【0024】
(非接触給電システム)
実施の形態に係る非接触給電システム100は、非接触給電方式で送信機器(TX)200から受信機器(RX)300に電力を給電する非接触給電システム100であって、送信機器(TX)200は、送信コイル202と、送信コイル202に電磁界の電力信号を発生させるドライバ204と、送信コイル202を介してFSK信号Sfを送信するFSK変調部240とを備え、受信機器(RX)300は、受信コイル302と、受信コイル302に誘起される電流を整流する整流回路320と、受信コイル302を介して受信されるFSK信号Sfを復調するFSK復調部340と、FSK通信中は整流回路320の整流モードがダイオード整流モードとなるように制御するコントローラ312とを備える。
【0025】
具体的には、コントローラ312は、FSK通信を開始することを検知すると、FSK通信の開始トリガ信号St1を送信機器(TX)200に送信するとともに、整流回路320の整流モードを同期整流モードからダイオード整流モードに切り替えても良い。例えば、コントローラ312から整流回路320に入力されるコントロール信号Scがローレベルからハイレベルになると、整流回路320の整流モードが同期整流モードからダイオード整流モードに切り替わる。
【0026】
また、コントローラ312は、FSK通信を終了することを検知すると、FSK通信の終了トリガ信号St2を送信機器(TX)200に送信するとともに、整流回路320の整流モードをダイオード整流モードから同期整流モードに切り替えても良い。例えば、コントローラ312から整流回路320に入力されるコントロール信号Scがハイレベルからローレベルになると、整流回路320の整流モードがダイオード整流モードから同期整流モードに切り替わる。
【0027】
また、受信機器(RX)300は、開始トリガ信号St1または終了トリガ信号St2をAM変調するAM変調器308aを備えても良い。AM変調器308aの機能は、基本技術に係る変調器308と同様である。すなわち、AM変調器308aは、開始トリガ信号St1または終了トリガ信号St2をAM変調し、受信コイル302のコイル電流を変調することにより、送信コイル202のコイル電流およびコイル電圧を変調する。
【0028】
また、整流回路320は、4つの整流トランジスタ321・322・323・324を使って整流するブリッジ整流回路であり、コントローラ312は、整流トランジスタ321・322・323・324のオン・オフを切り替えることで整流回路320の整流モードを切り替えても良い。
【0029】
また、FSK通信は、送信機器(TX)200と受信機器(RX)300との間の認証・設定フェーズφ3の後、送信機器(TX)200から受信機器(RX)300への送電フェーズφ2の前に行われても良い。
【0030】
また、受信機器(RX)300は、非接触給電IC、携帯電話、タブレット端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器のいずれかに搭載されても良い。
【0031】
なお、送信機器(TX)200が備えるAM復調器208aの機能は、基本技術に係る復調器208と同様である。すなわち、AM復調器208aは、送信コイル202の電流または電圧に含まれるAM変調された信号(例えば、開始トリガ信号St1や終了トリガ信号St2)を復調してコントローラ206に渡す。コントローラ206は、開始トリガ信号St1が復調された場合はFSK通信を開始し、終了トリガ信号St2が復調された場合はFSK通信を終了する。
【0032】
(動作シーケンス)
実施の形態に係る非接触給電システム100の送信機器(TX)200の動作シーケンスは、
図5に示すように表される。例えば、
図5に示すように、FSK通信は、送信機器(TX)200と受信機器(RX)300との間の認証・設定フェーズφ3の後、送信機器(TX)200から受信機器(RX)300への送電フェーズφ2の前に行われても良い。
【0033】
すなわち、送電条件に関する情報が受信機器(RX)300から送信機器(TX)200に送信されると(S208)、FSK通信フェーズφ4に移行する(S210)。その後、FSK通信が終了すると、送電フェーズφ2に移行して、送信機器(TX)200から受信機器(RX)300への送電が開始される(S100)。その他の動作については基本技術と同様である。
【0034】
(整流回路)
実施の形態に係る受信機器(RX)が備える整流回路320の模式的回路構成は、
図6に示すように表される。
図6に示すように、整流回路320は、4つの整流トランジスタ321・322・323・324を使って整流するブリッジ整流回路である。整流回路320には、コンデンサ325とコイル326からなる平滑回路が含まれる。
【0035】
コントローラ312は、整流トランジスタ321・322・323・324のオン・オフを切り替えることで整流回路320の整流モードを切り替える。すなわち、整流トランジスタ321・322・323・324のソース・ドレイン間には、それぞれ、寄生ダイオード(内蔵ダイオード)321D・322D・323D・324Dが形成されている。そのため、整流トランジスタ321・322・323・324を全てオンからオフに切り替えると、整流回路320の整流モードを同期整流モードからダイオード整流モードに切り替えることができる。逆に、整流トランジスタ321・322・323・324を全てオフからオンに切り替えると、整流回路320の整流モードをダイオード整流モードから同期整流モードに切り替えることができる。
【0036】
(整流モードの切り替え動作)
実施の形態に係る受信機器(RX)300が備える整流回路320の整流モードを切り替える動作は、
図7に示すように表される。
【0037】
まず、受信機器(RX)300のコントローラ312は、FSK通信を開始することを検知すると(S11:YES)、FSK通信の開始トリガ信号St1を送信機器(TX)200に送信するとともに(S12)、整流回路320の整流モードを同期整流モードからダイオード整流モードに切り替える(S13)。これにより、送信機器(TX)200において開始トリガ信号St1が復調され、送信機器(TX)200から受信機器(RX)300にFSK信号Sfが送信される(S14)。
【0038】
FSK通信中、整流回路320の整流モードはダイオード整流モードに固定される。ダイオード整流は、整流トランジスタ321・322・323・324のゲート電圧に依存しないため、整流波形V
AC1/AC2に歪みが重畳されない。すなわち、整流回路320におけるスイッチングのタイミング等に関係なく、安定してFSK通信を行うことができる。
【0039】
その後、受信機器(RX)300のコントローラ312は、FSK通信を終了することを検知すると(S15:YES)、FSK通信の終了トリガ信号St2を送信機器(TX)200に送信するとともに(S16)、整流回路320の整流モードをダイオード整流モードから同期整流モードに切り替える(S17)。これにより、送信機器(TX)200において終了トリガ信号St2が復調され、FSK通信が終了する。
【0040】
(波形例)
実施の形態に係る受信機器(RX)300においてFSK信号Sfの誤検出が解消することを説明するための図は、
図8に示すように表される。
図8(a)は、整流回路320に入力されるコントロール信号Scである。
図8(b)は、FSK復調部340に入力されるFSK信号Sfである。
図8(c)は、整流回路320の整流波形V
AC1/AC2である。
【0041】
図8(a)(b)に示すように、整流回路320に入力されるコントロール信号Scがローレベルからハイレベルになり、整流回路320の整流モードが同期整流モードからダイオード整流モードに切り替わった直後、FSK復調部340にFSK信号Sfが入力される。その後、FSK復調部340にFSK信号Sfが入力されなくなった直後、整流回路320に入力されるコントロール信号Scがハイレベルからローレベルになり、整流回路320の整流モードがダイオード整流モードから同期整流モードに切り替わる。
【0042】
これにより、
図8(c)に示すように、FSK復調部340にFSK信号Sfが入力されない期間T1およびT3は、整流波形V
AC1/AC2に歪みが重畳される可能性がある。それに対して、FSK復調部340にFSK信号Sfが入力される期間T2は、整流波形V
AC1/AC2に歪みが重畳されない。その結果、受信機器(RX)300においてFSK信号Sfの誤検出が発生する問題を解消することが可能である。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、非接触給電システム100においてFSK通信を安定して行うことができる。すなわち、FSK通信をする/しないは、受信機器(RX)300側でコントロールすることができるため、FSK通信を開始する直前に受信機器(RX)300が備える整流回路320の整流モードを同期整流モードからダイオード整流モードに切り替えるようにしている。これにより、FSK通信中は整流波形V
AC1/AC2に歪みが重畳されないため、非接触給電におけるFSK復調を安定して行うことが可能となる。もちろん、FSK通信中でなければ、ダイオード整流モードよりも高性能な同期整流モードが選択されるという効果もある。
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、FSK通信を安定して行うことができる非接触給電システムおよび受信機器を提供することが可能である。
【0045】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0046】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る非接触給電システムは、非接触給電方式で電力を供給する様々なシステムに利用することができる。また、本発明に係る受信機器は、非接触給電IC、携帯電話、タブレット端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器等の電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
100…非接触給電システム
200…送信機器(TX)
202…送信コイル
204…ドライバ
240…FSK変調部
300…受信機器(RX)
302…受信コイル
308a…AM変調器
312…コントローラ
320…整流回路
321・322・323・324…整流トランジスタ
340…FSK復調部
St1…FSK通信の開始トリガ信号
St2…FSK通信の終了トリガ信号
φ1…選択フェーズ
φ2…送電フェーズ
φ3…認証・設定フェーズ
φ4…FSK通信フェーズ