特許第6249682号(P6249682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249682液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、および、記録装置。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249682
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、および、記録装置。
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20171211BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   B41J2/14 207
   B41J2/14 611
   B41J2/01 451
【請求項の数】21
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-175725(P2013-175725)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-44312(P2015-44312A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】郷田 達人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康雄
【審査官】 村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−076441(JP,A)
【文献】 特開2010−149510(JP,A)
【文献】 特開2009−000833(JP,A)
【文献】 特開2010−131787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出用ヒータ、および、前記複数の吐出用ヒータに電気エネルギーを供給する駆動回路が配された第1の領域と、
前記駆動回路へ電気信号を供給する信号供給回路が配された第2の領域と、
前記第1の領域に配された第1部分、および、前記第2の領域に配された第2部分を含む基板加熱用ヒータと、を備え、
前記第1部分に印加される電流の大きさと、前記第2部分に印加される電流の大きさとが異なることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項2】
前記第1部分は第1の電流経路を構成し、
前記第2部分は前記第1の電流経路とは独立した第2の電流経路を構成することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項3】
前記液体吐出ヘッド用基板は、前記基板加熱用ヒータに電流を印加するための第1、第2、第3、および、第4のパッド電極をさらに備え、
前記第1部分は、第1のパッド電極と第2のパッド電極とを接続し、
前記第2部分は、第3のパッド電極と第4のパッド電極とを接続することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項4】
前記第1、前記第2、前記第3、および、前記第4のパッド電極が、前記液体吐出ヘッド用基板の一辺の側に配されたことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項5】
前記第1、および、前記第2のパッド電極は、それぞれ、前記液体吐出ヘッド用基板の一辺の側、および、前記液体吐出ヘッド用基板の前記一辺と対向する辺の側に配され、
前記第3、および、前記第4のパッド電極は、いずれも、前記一辺の側に配されたことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッド用基板は、前記第1部分と前記第2部分との電気的接続を制御する接続部をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッド用基板は、前記基板加熱用ヒータに電流を印加するための第1、第2、および、第3のパッド電極をさらに備え、
前記接続部は、第1のスイッチ、および、第2のスイッチを含み、
前記第1部分は、前記第1のスイッチと前記第1のパッド電極とを接続し、
前記第2部分は、前記第2のスイッチと前記第2のパッド電極とを接続し、
前記基板加熱用ヒータは、前記第1のスイッチと、前記第2のスイッチと、前記第3のパッド電極とを互いに接続する第3部分を含むことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項8】
前記液体吐出ヘッド用基板は、前記基板加熱用ヒータに電流を印加するための第1、第2、および、第3のパッド電極をさらに備え、
前記基板加熱用ヒータは、前記第1部分と前記第2部分とが互いに接続された接続部分を含み、
前記第1部分は、前記接続部分と前記第1のパッド電極とを接続し、
前記2部分は、前記接続部分と前記第2のパッド電極とを接続し、
前記基板加熱用ヒータは、前記接続部分と前記第3のパッド電極とを接続する第3部分を含み、
前記第3部分の配線抵抗は、前記第1部分の配線抵抗、および、前記第2部分の配線抵抗よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項9】
前記第1、前記第2、および、前記第3のパッド電極が、前記液体吐出ヘッド用基板の一辺の側に配されたことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項10】
前記第2、および、前記第3のパッド電極が、いずれも、前記液体吐出ヘッド用基板の一辺の側に配され、
前記第1のパッド電極が、前記液体吐出ヘッド用基板の前記一辺と対向する辺の側に配されたことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項11】
前記第1部分は、前記第1の領域を蛇行するように配置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項12】
前記第1の領域の温度を計測するための第1の温度センサ、および、前記第2の領域の温度を計測するための第2の温度センサを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項13】
前記第1の温度センサの出力する温度の情報、および、前記第2の温度センサの出力する温度の情報に基づいて、前記第1部分に印加される電流、および、前記第2部分に印加される電流の少なくとも一方が制御されることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項14】
前記第1の温度センサの出力する温度の情報、および、前記第2の温度センサの出力する温度の情報のそれぞれと、基準の温度との比較に基づいて、前記第1部分に印加される電流、および、前記第2部分に印加される電流の少なくとも一方が制御されることを特徴とする請求項13に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項15】
前記第1の温度センサの出力する温度の情報と、前記第2の温度センサの出力する温度の情報との比較に基づいて、前記第1部分に印加される電流、および、前記第2部分に印加される電流の少なくとも一方が制御されることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項16】
前記信号供給回路の供給する前記電気信号は、外部からの情報に基づく、前記駆動回路の制御信号であることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項17】
前記信号供給回路の供給する前記電気信号は、前記駆動回路の電源電圧であることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項18】
前記第1の領域の温度と前記第2の領域の温度との差が、前記基板加熱用ヒータに通電せずに前記吐出用ヒータを動作させた場合に比べて小さくなるように、前記第1部分に印加される電流の大きさと、前記第2部分に印加される電流の大きさとが異なることを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド用基板と、
前記液体吐出ヘッド用基板に記録用のインクを供給するためのインク供給部と、を備えた液体吐出ヘッド。
【請求項20】
請求項19に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを駆動する駆動部と、を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項21】
液体吐出ヘッド用基板、および、制御部を有する記録装置であって、
前記液体吐出ヘッド用基板は、
複数の吐出用ヒータ、および、前記複数の吐出用ヒータに電気エネルギーを供給する駆動回路が配された第1の領域と、
前記駆動回路へ電気信号を供給する信号供給回路が配された第2の領域と、
前記第1の領域に配された第1部分、および、前記第2の領域に配された第2部分を含む基板加熱用ヒータと、を備え、
前記制御部は、前記第1部分に印加される電流、および、前記第2部分に印加される電流の少なくとも一方を他方に対して独立に制御することを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、および、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクなどの液体を記録媒体へ向けて吐出することで記録を行う記録装置において、サーマル型の液体吐出ヘッドが用いられている。特許文献1に開示されたサーマル型の液体吐出ヘッドは、吐出ヒータが配された基板と、吐出ヒータに電流を印加する導電配線と、当該導電配線とは電気的に分離されたサブヒータとを含む。さらに、特許文献1には、導電部材でサブヒータを構成すること、ならびに、当該導電部材に電流を印加することによって、基板を加熱することの開示がある。このような構成により、液体吐出ヘッドに含まれる基板に温度分布が生じることを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−076441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の液体吐出ヘッドでは、基板の全体にわたって1つの電流経路を形成するように、サブヒータの導電部材が配置されている。このような導電部材に電流を印加すると、基板の全体をほぼ均等に加熱することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のサブヒータでは、基板の一部を局所的に加熱したり、基板の場所によってサブヒータの発熱量を異ならせたりすることが困難であった。そのため、例えば、動作時の発熱量が基板の位置によって異なる場合などに、基板に生じる温度分布を十分に抑制できない可能性があった。あるいは、基板の複数の部分の温度を、各部分に応じた適切な温度にすることが困難であった。
【0006】
このような課題に鑑み、本発明者らは、液体吐出ヘッド用基板の場所に応じた温度の制御を可能とする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面に係る実施例の液体吐出ヘッド用基板は、複数の吐出用ヒータ、および、前記複数の吐出用ヒータに電気エネルギーを供給する駆動回路が配された第1の領域と、前記駆動回路へ電気信号を供給する信号供給回路が配された第2の領域と、前記第1の領域に配された第1部分、および、前記第2の領域に配された第2部分を含む基板加熱用ヒータと、を備え、前記第1部分に印加される電流の大きさと、前記第2部分に印加される電流の大きさとが異なることを特徴とする。
【0009】
本発明の別の側面に係る実施例の記録装置は、液体吐出ヘッド用基板、および、制御部を有する記録装置であって、前記液体吐出ヘッド用基板は、複数の吐出用ヒータ、および、前記複数の吐出用ヒータに電気エネルギーを供給する駆動回路が配された第1の領域と、前記駆動回路へ電気信号を供給する信号供給回路が配された第2の領域と、前記第1の領域に配された第1部分、および、前記第2の領域に配された第2部分を含む基板加熱用ヒータと、を備え、前記制御部は、前記第1部分に印加される電流、および、前記第2部分に印加される電流の少なくとも一方を他方に対して独立に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体吐出ヘッド用基板の場所に応じた温度の制御を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】液体吐出ヘッド用基板の平面構造を模式的に示す図。
図2】液体吐出ヘッド用基板の断面構造を模式的に示す図。
図3】液体吐出ヘッド用基板の平面構造を模式的に示す図。
図4】液体吐出ヘッド用基板の平面構造を模式的に示す図。
図5】液体吐出ヘッド用基板の平面構造を模式的に示す図。
図6】液体吐出ヘッド用基板の平面構造を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る1つの実施形態は、インクなどの液体を吐出する素子を備えた液体吐出ヘッド用基板である。本発明に係る別の実施形態は、液体吐出ヘッド用基板と、液体吐出ヘッド用基板に記録用のインクを供給するためのインク供給部を備えた液体吐出ヘッドである。液体吐出ヘッドは、例えば、記録装置の記録ヘッドである。本発明に係るさらに別の実施形態は、液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドを駆動する駆動部とを備えた記録装置である。記録装置は、例えば、プリンタや複写機である。もしくは、本発明に係る1つの実施形態の液体吐出ヘッドは、DNAチップ、有機トランジスタ、カラーフィルタなどの作製に用いられる装置などに適用できる。
【0013】
液体吐出ヘッド用基板には、複数の吐出用ヒータが配置される。液体吐出ヘッド用基板には、複数の吐出用ヒータに対応して駆動回路が配される。それぞれの吐出用ヒータに、1つの駆動回路が配されてもよい。あるいは、複数の吐出用ヒータのからなるグループに対応して、1つの駆動回路が配されてもよい。駆動回路は、複数の吐出用ヒータに電気エネルギーを供給する。駆動回路は、例えば、吐出用ヒータに接続されたトランジスタを含み、そして、当該トランジスタを介して吐出用ヒータに電流を印加する。電流が印加されることによって、吐出用ヒータが発熱し、液体を吐出することができる。また、駆動回路は、吐出用ヒータに接続されたトランジスタと、当該トランジスタに接続されたバッファ、あるいは、レベルシフタとを含んでもよい。複数の吐出用ヒータ、および、駆動回路は、液体吐出ヘッド用基板の第1の領域に配される。
【0014】
液体吐出ヘッド用基板には、駆動回路に電気信号を供給する信号供給回路が配される。信号供給回路が供給する電気信号は、例えば、駆動回路の電源電圧や駆動回路の制御信号である。駆動回路の制御信号は、外部から与えられる情報に基づいて生成されてもよい。この場合、信号供給回路は、外部から与えられる情報を処理する信号処理回路を含む。また、信号供給回路が、外部から与えられる第1の電源電圧から、それとは別の第2の電源電圧を生成する電圧発生回路を含んでもよい。信号供給回路は、液体吐出ヘッド用基板の第2の領域に配される。
【0015】
上述の通り、液体吐出ヘッド用基板には、吐出用ヒータの他に、吐出用ヒータを駆動する駆動回路、信号供給回路等の複数の回路が搭載される。これらの回路においては、動作時の発熱量が互いに異なる可能性がある。あるいは、動作に好適な温度が、互いに異なる場合がある。例えば、吐出用ヒータは高温になるほど、液体の吐出特性がよくなる。そのため、吐出用ヒータはなるべく高温で動作することが好ましい。一方で、信号供給回路はより低温になるほど電気的特性が向上する。しかし、信号供給回路の温度が低すぎる場合には、配線を構成する材料の熱膨張により、断線などが生じやすくなる。そのため、信号供給回路は所定の温度範囲で動作することが好ましい。
【0016】
液体吐出ヘッド用基板には、液体吐出ヘッド用基板を予備的に加熱するための基板加熱用ヒータ(以下、サブヒータと呼ぶ)が設けられる。サブヒータは、第1の領域に配された第1部分と、第2の領域に配された第2部分とを含む。そして、第1部分に印加される電流の大きさと、第2部分に印加される電流の大きさとが互いに異なる。第1部分、および、第2部分の少なくとも一方に印加される電流を制御してもよい。また、第1部分、および、第2部分は、それぞれ独立した電流経路を構成していてもよい。
【0017】
このような構成により、第1の領域と、第2の領域との間で、サブヒータによる発熱量を異ならせることが可能である。具体的には、サブヒータの第1部分を流れる電流の大きさと、サブヒータの第2部分を流れる電流の大きさとが互いに異なることで、発熱量を異ならせることができる。そのため、液体吐出ヘッド用基板の場所に応じた温度の制御が可能になる。例えば、第1の領域と第2の領域との間で動作時の発熱量に差がある場合でも、液体吐出ヘッド用基板に生じる温度分布を低減することができる。あるいは、液体吐出ヘッド用基板に温度分布を生じさせないようにすることができる。または、液体吐出ヘッド用基板の各部が最適な温度で動作することができるように、液体吐出ヘッド用基板の温度分布を大きくすることができる。
【0018】
具体的な例として、信号処理回路の動作周波数が高くなると消費電力も増大するため、信号処理回路の発熱量は増加しやすい。そのため、信号処理回路に近い領域では、信号処理回路から遠い領域と比較して、基板温度が高くなりやすい。そこで、サブヒータの第2部分に印加される電流の大きさを、サブヒータの第1部分に印加される電流の大きさより小さくする。これにより、第1の領域を予備的に加熱しつつ、信号処理回路が配された第2の領域におけるサブヒータの発熱量をゼロにする、あるいは、第1の領域におけるサブヒータの発熱量に比べて小さくすることができる。結果として、基板に生じる温度分布を低減することができる。なお、サブヒータの第2部分に電流が印加されなければ、第2の領域におけるサブヒータの発熱量をゼロにできる。サブヒータの第2部分に電流が印加されないことは、第2部分に印加される電流の大きさがゼロであるということであり、言い換えると、印加される電流の大きさが最小であるということである。
【0019】
また、信号処理回路については、その発熱量が多い時と少ない時とがある。そのため、信号処理回路に近い領域と、信号処理回路から遠い領域との基板温度の差は一定ではない。したがって、サブヒータの第1部分、および、第2部分の少なくとも一方に印加される電流を制御することによって、動作状態に応じて効率的に基板の温度分布を低減することができる。サブヒータの第1部分、および、第2部分がそれぞれ独立した電流経路を構成することで、第1部分、および、第2部分の一方のみの電流の制御が可能である。
【0020】
別の例として、第1の領域に配された吐出用ヒータの発熱量が、第2の領域に配された信号供給回路の発熱量より大きい場合がある。この場合に、サブヒータの第1部分に印加される電流の大きさを、サブヒータの第2部分に印加される電流の大きさより大きくする。これにより、吐出用ヒータはより高温で動作するため、吐出特性を向上させることができる。また、信号供給回路の動作温度も高くできるので、信号供給回路の電気的特性を維持しつつ、液体吐出ヘッド用基板の信頼性を向上させることができる。
【0021】
以下、図面を用いて、いくつかの実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
実施例1について説明する。図1は液体吐出ヘッド用基板101の平面構造を模式的に示す図である。記録装置の記録ヘッドに用いられる液体吐出ヘッドは、液体吐出ヘッド用基板101と、液体吐出ヘッド用基板101に設けられた不図示の吐出口形成部材とを含む。吐出口形成部材には、インクを吐出する複数の吐出口(不図示)が設けられている。
【0023】
液体吐出ヘッド用基板101は、第1の領域(以下、領域A)、および、第2の領域(以下、領域B)を含んでいる。図1の鎖線が、領域Aと領域Bとの境界を便宜的に示している。図1において、液体吐出ヘッド用基板101の領域Aと領域Bとは、各ヒータ列において複数の吐出用ヒータ102の並ぶ方向、つまり、液体吐出ヘッド用基板101の長辺に沿った方向において、互いに隣り合うように並んでいる。領域Aと領域Bとが、吐出用ヒータ102の並ぶ方向に交差する方向、つまり、液体吐出ヘッド用基板101の短辺に沿った方向において、互いに隣り合うように並んでもよい。
【0024】
液体吐出ヘッド用基板101の領域Aには、複数の吐出用ヒータ102が配される。複数の吐出用ヒータ102は、4つヒータ列を構成するように配置されている。各ヒータ列に含まれる複数の吐出用ヒータ102が並ぶ方向は、液体吐出ヘッド用基板101の長辺に沿った方向である。また、4つのヒータ列は、液体吐出ヘッド用基板101の短辺に沿った方向に並んでいる。図1では4つのヒータ列を配置しているが、インクの種類によって列数は適宜変更してよい。液体吐出ヘッドにおいては、複数の吐出用ヒータ102と、複数の吐出口とが対応する位置に設けられている。吐出用ヒータ102にインクを供給する供給口103が、液体吐出ヘッド用基板101を貫通するように設けられている。2つのヒータ列につき1つの割合で、複数の供給口103が設けられている。
【0025】
また、液体吐出ヘッド用基板101の領域Aには、ヒータ駆動回路104が配されている。複数の吐出用ヒータ102の構成する4つのヒータ列のそれぞれに対応して、吐出用ヒータ102を駆動するためのヒータ駆動回路104が配されている。ヒータ駆動回路104は吐出用ヒータ102の列に対して供給口103の列が設けられた側とは反対側の領域に配置されている。
【0026】
ヒータ駆動回路104は、吐出用ヒータ102に電気エネルギーを与えるように構成される。図1には示されていないが、本実施例のヒータ駆動回路104は、吐出用ヒータ102に接続されたトランジスタと、トランジスタに接続されたバッファとを含む。バッファを介してトランジスタに供給される制御信号に応じて、吐出用ヒータ102に電流が印加される。ヒータ駆動回路104が、バッファの代わりに、レベルシフタを含んでもよい。
【0027】
本実施例の液体吐出ヘッド用基板101における、インク吐出の動作について説明する。液体吐出ヘッド用基板101の裏面から、供給口103を介して吐出用ヒータ102の上にインクが供給される。そして、ヒータ駆動回路104により、選択された吐出用ヒータ102が加熱される。これにより、吐出用ヒータ102の上のインクに発泡が生じ、そして、吐出口からインクが吐出される。
【0028】
液体吐出ヘッド用基板101の領域Bには、ヒータ駆動回路104へ電気信号を供給する信号供給回路が配される。本実施例の信号供給回路は、信号処理回路106と、電圧発生回路107とを少なくとも含む。
【0029】
信号処理回路106は、記録装置の本体(不図示)から送られてくる画像情報や制御情報を処理し、ヒータ駆動回路104へ制御信号を供給する。制御信号は、信号処理回路106とヒータ駆動回路104とを接続する信号配線を介して供給される。ヒータ駆動回路104は、制御信号に基づき、複数の吐出用ヒータ102を選択的に駆動する。信号処理回路106は、シフトレジスタ回路、ラッチ回路、論理ゲートなどで構成される。
【0030】
電圧発生回路107は、外部から入力される電源電圧をレベルシフトし、ヒータ駆動回路104に供給する電源電圧を生成する。電源電圧は、電圧発生回路107とヒータ駆動回路104とを接続する電源配線を介して供給される。なお、電圧発生回路107を配置せずに、外部から入力される電源電圧を、直接、ヒータ駆動回路104に供給してもよい。
【0031】
また、液体吐出ヘッド用基板101の領域Bには、記録装置の本体と接続するための複数のパッド電極109が配されている。例えば、パッド電極109を介して、吐出用ヒータ102に電気エネルギーを与えるための電源電圧や、それぞれの回路を駆動するための電源電圧、画像情報、制御情報などが入力される。また、パッド電極109を介して、後述するサブヒータの電源電圧が入力される。
【0032】
液体吐出ヘッド用基板101の形状は、通常、四辺形である。本実施例では、複数のパッド電極109が、液体吐出ヘッド用基板101の4つの辺のうち、一辺の側に配されている。複数のパッド電極109が、液体吐出ヘッド用基板101の一辺の側と、当該一辺とは対向する別の辺の側に、分散して配されてもよい。
【0033】
本実施例の液体吐出ヘッド用基板101には、液体吐出ヘッド用基板101を加熱するサブヒータ(図1の105、108)が配される。サブヒータは、第1部分105と第2部分108とを含む。サブヒータは、金、銅、アルミ、ポリシリコンなどの導電部材で構成される。サブヒータに含まれる導電部材は、吐出用ヒータ102に電気エネルギーを供給するための電源配線から電気的に分離されている。サブヒータに含まれる導電部材は、ヒータ駆動回路104に接続される電源配線、および、信号配線から電気的に分離されている。サブヒータに含まれる導電部材は、信号供給回路に接続される電源配線、および、信号配線から電気的に分離されている。
【0034】
ヒータ駆動回路104に接続される電源配線、および、信号配線は、第1配線層に配される。信号供給回路に接続される電源配線、および、信号配線は、第1配線層に配される。吐出用ヒータ102に電気エネルギーを供給するための電源配線は第2配線層に配される。サブヒータを構成する導電部材は、第1配線層、または、第2配線層に配される。例えば、サブヒータの第1部分105は、第1配線層に含まれる導電部材、または、第2配線層に含まれる導電部材のいずれか一方だけで構成されてもよい。サブヒータの第2部分108は、第1配線層に含まれる導電部材、または、第2配線層に含まれる導電部材のいずれか一方だけで構成されてもよい。あるいは、サブヒータの第1部分105、および、第2部分108のそれぞれが、第1配線層の導電部材と第2配線層の導電部材とを含んでいてもよい。サブヒータが複数の配線層の導電部材を含む場合は、層間絶縁膜に設けられたプラグを介して、第1配線層の導電部材と第2配線層の導電部材とが接続される。
【0035】
第1部分105と、第2部分108とは、それぞれ独立した電流経路を構成する。本実施例では、サブヒータの第1部分105を流れる電流と、サブヒータの第2部分108を流れる電流とが互いに独立して制御される。換言すると、第1部分105、および、第2部分105のうち、一方の電流を変化させたときに、他方の電流が変化しない。または、第1部分105の電流の変化量と第2部分105の電流の変化量との比率が異なるように、第1部分105および第2部分108の電流が変化する。そのため、第1部分105に印加される電流の大きさと、第2部分108に印加される電流の大きさとが異なるように、それぞれの電流を制御することができる。例えば、第1部分105、および、第2部分108の一方のみに電流を印加し、他方には電流を印加しないように制御してもよい。サブヒータの第1部分105または第2部分108に電流が印加されないということは、当該第1部分105または第2部分108に印加される電流の大きさがゼロであるということであり、言い換えると、印加される電流の大きさが最小であるということである。
【0036】
なお、本実施例の変形例では、サブヒータの第1部分105を流れる電流と、サブヒータの第2部分108を流れる電流とが、独立には制御されない。この場合に、第1部分105の電流の変化量と第2部分105の電流の変化量との比率が一定になるように、サブヒータの第1部分105を流れる電流と、サブヒータの第2部分108を流れる電流とが制御されてもよい。
【0037】
液体吐出ヘッド用基板101の領域A、つまり、吐出用ヒータ102、および、ヒータ駆動回路104の配された領域の周辺に、サブヒータの第1部分105が配置されている。これにより領域Aの温度を上昇させることができる。
【0038】
液体吐出ヘッド用基板101の領域B、つまり、信号処理回路106、および、電圧発生回路107の配された領域の周辺に、サブヒータの第2部分108が配置されている。これにより領域Bの温度を上昇させることができる。
【0039】
領域Bに配された信号処理回路106は、記録装置の本体から送られてくる画像情報や制御情報を処理している。信号処理回路106が処理する情報の量が多くなると、信号処理回路106の消費電力が増加し、それに伴い、信号処理回路106の発熱量が増加する。また、信号処理回路106の処理する情報の量が減少した場合には、信号処理回路106の発熱量は低下する。すなわち信号処理回路106の動作状態によって、発熱量が変化する。そのため、液体吐出ヘッド用基板101の発熱量が場所によって異なる。特に、領域Bの近くに配された吐出用ヒータ102においては、信号処理回路106の発熱による影響が大きい。
【0040】
そこで、領域Aに配されたサブヒータの第1部分105と、領域Bに配されたサブヒータの第2部分108とを独立に駆動することによって、液体吐出ヘッド用基板101の温度分布の発生を抑制することができる。
【0041】
サブヒータの第2部分108の制御としては、信号処理回路106の発熱量が大きい場合、サブヒータの第2部分108に印加する電流の大きさをゼロにする。もしくは、サブヒータの第2部分108に印加する電流の大きさを、サブヒータの第1部分105に印加する電流の大きさに比べて小さくする。反対に、信号処理回路106の発熱量が小さい場合、サブヒータの第1部分105に印加する電流の大きさをゼロにする。もしくは、サブヒータの第2部分108に印加する電流の大きさを、サブヒータの第1部分105に印加する電流の大きさに比べて大きくする。このような制御により、液体吐出ヘッド用基板101の温度分布を小さくできる。例えば、サブヒータに全く通電せずに液体吐出ヘッド用基板を動作させた場合の領域Aと領域Bとの温度差に比べて、上述の電流の制御を行った場合の領域Aと領域Bとの温度差を小さくできる。あるいは、サブヒータによって、領域Aと領域Bとの温度差を所定の範囲内に、例えば、当該温度差を50℃以内に収めることができる。
【0042】
サブヒータを制御する方法としては、印加する電圧の大きさを制御する方法がある。サブヒータを制御する別の方法としては、可変抵抗を用いて電流の大きさを制御する方法がある。サブヒータを制御するさらに別の方法としては、電圧、もしくは、電流を印加している時間を制御する方法がある。印加する電圧の大きさ、電流の大きさ、および、電圧、もしくは、電流を印加している時間の複数、あるいは、全部を制御してもよい。
【0043】
また、信号処理回路106の発熱に対してサブヒータの第2部分108を制御する説明をした。電圧発生回路107が発熱する場合、あるいは、その他のヒータを駆動するために必要とされる機能回路が領域Bに配置される場合も、同様にサブヒータの第2部分108を制御することで温度分布の発生を抑制することができる。
【0044】
図1が示す通り、本実施例において、サブヒータの第1部分105は、第1のパッド電極109aと第2のパッド電極109bとを接続している。サブヒータの第2部分108は、第3のパッド電極109cと第4のパッド電極109dとを接続している。これらのパッド電極109は、液体吐出ヘッドや記録装置に接続される。本実施例の液体吐出ヘッド用基板101が液体吐出ヘッドや記録装置に搭載された場合でも、サブヒータの第1部分105と、第2部分108とは1つの電流経路に含まれない。例えば、第1、および、第3のパッド電極109a、109cに電源電圧を入力し、第2、および、第4のパッド電極109b、109dを接地することで、第1部分105と第2部分108とが互いに独立した電流経路を構成しうる。なお、パッド電極へ入力する電圧は、上記の例に限られない。任意の2つの異なる電圧が入力されればよい。
【0045】
本実施例では、サブヒータの第1部分105が、液体吐出ヘッド用基板101の一辺の側に配された2つのパッド電極109a、109bを接続している。しかし、サブヒータの第1部分105が、液体吐出ヘッド用基板101の一辺の側に配されたパッド電極と、当該一辺と対向する別の一辺の側に配されたパッド電極とを接続してもよい。
【0046】
また、本実施例では、サブヒータの第1部分105は、蛇行するように配されている。具体的には、電流の流れる向きが逆方向に折り返される箇所が2つ以上ある。このような構成により、液体吐出ヘッド用基板101の領域Aの全体をほぼ均等に加熱することができる。結果として、記録品位を向上させることができる。
【実施例2】
【0047】
別の実施例を説明する。本実施例は、液体吐出ヘッド用基板が温度センサを含む点で、実施例1と異なる。そこで、実施例1と異なる点のみを説明し、実施例1と同様の部分についての説明は省略する。
【0048】
図2は、液体吐出ヘッド用基板201の平面構造を模式的に示す図である。実施例1と同じ機能を有する部分には、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0049】
液体吐出ヘッド用基板201には、第1の温度センサ202、および、第2の温度センサ203が配置される。液体吐出ヘッド用基板201の領域Aに、第1の温度センサ202が配置される。第1の温度センサ202は、液体吐出ヘッド用基板201の領域Aの温度を計測する。液体吐出ヘッド用基板201の領域Bに、第2の温度センサ203が配置される。第2の温度センサ203は、液体吐出ヘッド用基板201の領域Bの温度を計測する。温度センサとしては、例えば、ダイオードや抵抗など、温度に応じてその電気的特性が変化するものが用いられうる。
【0050】
第1、および、第2の温度センサ202、203によって検知された温度情報は、電気信号に変換され、そして、パッド電極を介して外部の制御部に入力される。制御部は、例えば、記録装置の本体に含まれる。あるいは、第1、および、第2の温度センサ202、203によって検知された温度情報は、電気信号に変換され、そして、信号処理回路106に入力される。
【0051】
第1、および、第2の温度センサ202、203の出力する温度情報に基づいて、サブヒータの第1部分105に印加される電流と、サブヒータの第2部分108に印加される電流とが制御される。液体吐出ヘッド用基板201に含まれる信号処理回路106が電流の制御を行ってもよい。あるいは、記録装置に含まれる制御部が、電流の制御を行ってもよい。
【0052】
制御の方法の一つの例は、まず、検知された領域Aの温度、および、領域Bの温度を、それぞれ、所定の基準温度と比較する。検知された温度が設定温度より低い場合には、サブヒータの第1部分105、および、第2部分108の対応する方に電流を印加する。領域Aの温度、および、領域Bの温度の両方が基準温度より低ければ、サブヒータの第1部分105、および、第2部分108の両方に電流を印加してもよい。一方、検知された温度が設定温度より高い場合には、サブヒータの第1部分105、および、第2部分108の対応する方を停止する。領域Aの温度、および、領域Bの温度の両方が基準温度より高ければ、サブヒータの第1部分105、および、第2部分108の両方を停止してもよい。
【0053】
領域Aに対する基準温度と、領域Bに対する基準温度とを別にしてもよい。また、領域Aと領域Bとに温度差がある場合に、さらに、その温度差を大きくするように、サブヒータの電流を制御してもよい。
【0054】
制御の方法の別の例は、検知された領域Aの温度と、検知された領域Bの温度とを、比較する。そして、サブヒータの第1部分105と第2部分108のうち、温度の低い領域に配された方に電流を印加し、他方には電流を印加しないように制御する。あるいは、温度の低い領域に配された方に印加する電流を、他方に印加される電流に比べて大きくする。2つの領域Aと領域Bとの温度の差に応じて、第1部分105に印加する電流と、第2部分108に印加する電流との差を変化させてもよい。
【0055】
以上に説明した通り、本実施例の液体吐出ヘッド用基板は温度センサを備えている。このような構成によれば、より高い精度での、液体吐出ヘッド用基板の場所に応じた温度の制御が可能である。
【実施例3】
【0056】
別の実施例を説明する。本実施例は、サブヒータの第1部分と第2部分とが互いに接続されている点で、実施例1と異なる。そこで、実施例1と異なる点のみを説明し、実施例1と同様の部分についての説明は省略する。
【0057】
図3は、液体吐出ヘッド用基板301の平面構造を模式的に示す図である。実施例1と同じ機能を有する部分には、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0058】
本実施例のサブヒータは、第1部分302と第2部分303とを含む。第1部分302が、液体吐出ヘッド用基板301の領域Aに配される。第2部分303が、液体吐出ヘッド用基板301の領域Bに配される。さらに、サブヒータは、第1部分302と第2部分303とが互いに接続される接続部分304を含む。サブヒータの第1部分302は、接続部分304と第1のパッド電極305とを接続する。サブヒータの第2部分303は、接続部分304と第2のパッド電極306とを接続する。そして、サブヒータは、接続部分304と第3のパッド電極307とを接続する第3部分を含む。
【0059】
ここで、第3部分の配線抵抗は、第1部分302の配線抵抗、および、第2部分303の配線抵抗のいずれよりも低い。例えば、サブヒータを構成する導電部材の幅と厚みが一定の場合には、第3部分の長さが、第1部分302の長さ、および、第2部分303の長さのいずれよりも短い。
【0060】
第1部分302と、第2部分303とは、それぞれ独立した電流経路を構成する。本実施例では、サブヒータの第1部分302を流れる電流と、サブヒータの第2部分303を流れる電流とが互いに独立して制御される。第1部分302の電流の変化量と第2部分303の電流の変化量との比率が異なるように、第1部分302および第2部分303の電流が変化する。そのため、第1部分302に印加される電流の大きさと、第2部分303に印加される電流の大きさとが異なるように、それぞれの電流を制御することができる。
【0061】
本実施例においては、第1、第2、および、第3のパッド電極305〜307に入力する電圧によって、上述の電流の制御を行う。例えば、第1のパッド電極305に電源電圧を入力し、第2、および、第3のパッド電極306、307を接地する。これにより、サブヒータの第1部分302に選択的に電流を印加することができる。サブヒータの第3部分の抵抗が第2部分303の抵抗に比べて小さいため、接続部分304と、第2のパッド電極306、および、第3のパッド電極307との間の電圧によって生じる電流のほとんどが、第3部分に印加される。そのため、接続部分304と第2のパッド電極306との間、つまり、第2部分303には、電流が流れないか、あるいは、ごく小さな電流しか流れない。
【0062】
また、第2のパッド電極306に電源電圧を入力し、第1、および、第3のパッド電極305、307を接地する。これにより、サブヒータの第2部分303に選択的に電流を印加することができる。サブヒータの第3部分の抵抗が第1部分302の抵抗に比べて小さいため、接続部分304と、第1のパッド電極305、および、第3のパッド電極307との間の電圧によって生じる電流のほとんどが、第3部分に印加される。そのため、接続部分304と第1のパッド電極305との間、つまり、第1部分302には、電流が流れないか、あるいは、ごく小さな電流しか流れない。
【0063】
また、第1、および、第2のパッド電極305、306に電源電圧を入力し、第3のパッド電極307を接地する。これにより、第1部分302、および、第2部分303の両方に電流を印加することができる。
【0064】
上記の例では、一部のパッド電極に電源電圧を入力し、他のパッド電極を接地することを説明した。しかし、パッド電極へ入力する電圧は上記の例に限られない。任意の2つの異なる電圧が入力されればよい。
【0065】
なお、図3では、第1、第2、および、第3のパッド電極305〜307は、いずれも、液体吐出ヘッド用基板301の一辺の側に配される。しかし、第1のパッド電極305が、液体吐出ヘッド用基板301の当該一辺と対向する辺の側に配されてもよい。
【0066】
また、液体吐出ヘッド用基板301が、実施例2で説明された温度センサを含んでいてもよい。この場合の、電流の制御の方法は実施例2と同様である。
【0067】
以上に説明した通り、本実施例では、サブヒータの第1部分と第2部分とが互いに接続されている。サブヒータの2つの部分が互いに接続されていても、印加する電圧によってそれぞれの電流を独立に制御することができる。このような構成によれば、パッド電極の数を削減できる。その結果、液体吐出ヘッド用基板を小型化することが可能である。
【実施例4】
【0068】
別の実施例を説明する。本実施例は、サブヒータの第1部分と第2部分との電気的接続を制御する接続部が設けられた点で、実施例1と異なる。そこで、実施例1と異なる点のみを説明し、実施例1と同様の部分についての説明は省略する。
【0069】
図4は、液体吐出ヘッド用基板401の平面構造を模式的に示す図である。実施例1と同じ機能を有する部分には、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0070】
液体吐出ヘッド用基板401の領域Aには、サブヒータの第1部分402が配されている。液体吐出ヘッド用基板401の領域Bには、サブヒータの第2部分403が配されている。サブヒータの第1部分402は、スイッチ407と第1のパッド電極404とを接続している。サブヒータの第2部分403は、スイッチ408と第2のパッド電極405とを接続している。サブヒータの第1部分402と第2部分403とは、2つのスイッチ407、408を介して互いに電気的に接続されている。2つのスイッチ407、408が、第1部分402と第2部分403との電気的接続を制御する接続部である。スイッチとしては、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタなどが用いられる。また、サブヒータは、2つのスイッチ407、408と第3のパッド電極406とを相互に接続する第3部分を含む。
【0071】
本実施例では、第1のパッド電極404、および、第2のパッド電極405に電源電圧を入力し、第3のパッド電極406を接地する。この状態で、スイッチ407をオンすることにより、サブヒータの第1部分402に電流を印加することができる。また、スイッチ408をオンすることにより、サブヒータの第2部分403に電流を印加することができる。そのため、第1部分105に印加される電流の大きさと、第2部分108に印加される電流の大きさとが異なるように、それぞれの電流を制御することができる。
【0072】
スイッチ407、408を制御する制御信号は、例えば、信号処理回路106が供給してもよい。あるいは、スイッチ407、408を制御する制御信号が、外部から供給されてもよい。この場合、記録装置の制御部が、スイッチ407、408を制御する制御信号を供給する。
【0073】
上記の例では、一部のパッド電極に電源電圧を入力し、他のパッド電極を接地することを説明した。しかし、パッド電極へ入力する電圧は上記の例に限られない。任意の2つの異なる電圧が入力されればよい。
【0074】
なお、図3では、第1、第2、および、第3のパッド電極404〜406は、いずれも、液体吐出ヘッド用基板401の一辺の側に配される。しかし、第1のパッド電極404が、液体吐出ヘッド用基板401の当該一辺と対向する辺の側に配されてもよい。
【0075】
また、液体吐出ヘッド用基板401が、実施例2で説明された温度センサを含んでいてもよい。この場合の、電流の制御の方法は実施例2と同様である。
【0076】
以上に説明した通り、本実施例の液体吐出ヘッド用基板は、サブヒータの第1部分と第2部分との電気的接続を制御する接続部を備える。そして、接続部によって、サブヒータの2つの部分に印加する電流を独立に制御することができる。このような構成によれば、パッドの数を削減することができる。その結果、液体吐出ヘッド用基板を小型化することが可能である。
【0077】
また、本実施例においては、第1のパッド電極404と、第2のパッド電極405とを共通にしてもよい。このような構成により、さらにパッド電極の数を削減することが可能である。その結果、液体吐出ヘッド用基板を小型化することが可能である。
【実施例5】
【0078】
別の実施例について説明する。本実施例は、信号供給回路のレイアウトの点で、実施例1と異なる。そこで、実施例1と異なる点のみを説明し、実施例1と同様の部分についての説明は省略する。
【0079】
図5は、液体吐出ヘッド用基板501の平面構造を模式的に示す図である。実施例1と同じ機能を有する部分には、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0080】
液体吐出ヘッド用基板501は、第1の領域(以下、領域A)と、第2の領域とを含む。本実施例では、第2の領域が、2つの領域B1、B2を含んでいる。領域Aは、領域B1と領域B2との間に配される。領域B1、領域A、領域B2は、液体吐出ヘッド用基板501の長辺に沿った方向に並んでいる。
【0081】
液体吐出ヘッド用基板501の第2の領域には、ヒータ駆動回路104へ電気信号を供給する信号供給回路が配される。本実施例の信号供給回路は、信号処理回路506と、電圧発生回路507とを少なくとも含む。信号処理回路506、および、電圧発生回路507の機能は、それぞれ、実施例1の信号処理回路106、および、電圧発生回路107と同様である。
【0082】
本実施例では、信号処理回路506が領域B1に配される。そして、電圧発生回路507が領域B2に配される。また、液体吐出ヘッド用基板501の領域B1および領域B2のそれぞれに、記録装置の本体と接続するための複数のパッド電極520が配されている。
【0083】
本実施例の液体吐出ヘッド用基板501には、液体吐出ヘッド用基板501を加熱するサブヒータ(図5の505、508、509)が配される。サブヒータは、第1部分505と、2つの第2部分508、509とを含む。サブヒータの第1部分505、第2部分508、および、第2部分509のそれぞれが、独立した電流経路を構成する。本実施例では、サブヒータの第1部分505を流れる電流と、サブヒータの第2部分508を流れる電流と、サブヒータの第2部分509を流れる電流とが互いに独立して制御される。
【0084】
液体吐出ヘッド用基板501の領域A、つまり、吐出用ヒータ102、および、ヒータ駆動回路104の配された領域の周辺に、サブヒータの第1部分505が配置されている。これにより領域Aの温度を上昇させることができる。
【0085】
液体吐出ヘッド用基板501の領域B1、つまり、信号処理回路506の配された領域の周辺に、サブヒータの第2部分508が配置されている。これにより領域B1の温度を上昇させることができる。
【0086】
液体吐出ヘッド用基板501の領域B2、つまり、電圧発生回路107の配された領域の周辺に、サブヒータの第2部分509が配置されている。これにより領域B2の温度を上昇させることができる。
【0087】
サブヒータの第1部分505は、第1のパッド電極520aと、第2のパッド電極とを接続する。第1のパッド電極520は領域B1に配される。一方、第2のパッド電極520bは領域B2に配される。なお、本実施例のサブヒータの第1部分505が、実施例1のサブヒータの第1部分105のようなレイアウトで配置されてもよい。具体的には、サブヒータの第1部分505が、領域B1、もしくは、領域B2のどちらか一方に配された2つのパッド電極を接続するように配されてもよい。
【0088】
サブヒータの第2部分508は、領域B1に配された2つのパッド電極を接続する。サブヒータの第2部分509は、領域B2に配された2つのパッド電極を接続する。
【0089】
実施例1で説明したように、信号処理回路506の動作状態によって、発熱量が変化する。そのため、液体吐出ヘッド用基板501の発熱量が場所によって異なる。特に、領域B1の近くに配された吐出用ヒータ102においては、信号処理回路506の発熱による影響が大きい。
【0090】
そこで、領域Aに配されたサブヒータの第1部分505と、領域B1に配されたサブヒータの第2部分508とを独立に駆動することによって、液体吐出ヘッド用基板501の温度分布の発生を抑制することができる。
【0091】
また、領域B2に配された、電圧発生回路507の発熱も、領域B2の近くに配された吐出用ヒータ102に影響を与える。通常、電圧発生回路507の発熱量は、信号処理回路506の発熱量と異なる。そのため、領域Aのうち、領域B1に近い部分と、領域B2に近い部分とでは、温度が異なる可能性がある。
【0092】
そこで、領域B1の温度と領域B2の温度との差が小さくなる、あるいは、両者が同一になるように、サブヒータの2つの第2部分508、509を互いに独立に制御する。例えば、信号処理回路506の発熱量が、電圧発生回路507の発熱量より大きい場合、サブヒータの第2部分508による加熱を実施しない。もしくは、サブヒータの第2部分508の単位面積あたりの発熱量を、サブヒータの第2部分509の単位面積あたりの発熱量に比べて小さくする。反対に、信号処理回路106の発熱量が、電圧発生回路507の発熱量より小さい場合、サブヒータの第2部分509による加熱を実施しない。あるいは、サブヒータの第2部分508の単位面積当たり発熱量を、サブヒータの第2部分509の単位面積あたりの発熱量より大きくする。このような制御により、液体吐出ヘッド用基板501の温度分布を小さくできる。例えば、サブヒータに全く通電せずに液体吐出ヘッド用基板を動作させた場合の領域B1と領域B2との温度差に比べて、上述の電流の制御を行った場合の領域B1と領域B2との温度差を小さくできる。
【0093】
サブヒータを制御する方法としては、印加する電圧、もしくは、電流の大きさを制御する方法が挙げられる。サブヒータを制御する別の方法としては、電圧、もしくは、電流を印加している時間を制御する方法が挙げられる。印加する電圧、もしくは、電流の大きさ、および、電圧、もしくは、電流を印加している時間の両方を制御してもよい。
【0094】
液体吐出ヘッド用基板501には、第1の温度センサ510、第2の温度センサ511、および、第3の温度センサ512が配置される。液体吐出ヘッド用基板501の領域Aに、第1の温度センサ510が配置される。第1の温度センサ510は、液体吐出ヘッド用基板501の領域Aの温度を計測する。液体吐出ヘッド用基板501の領域B1に、第2の温度センサ511が配置される。第2の温度センサ511は、液体吐出ヘッド用基板501の領域B1の温度を計測する。液体吐出ヘッド用基板501の領域B2に、第3の温度センサ512が配置される。第3の温度センサ512は、液体吐出ヘッド用基板501の領域B2の温度を計測する。温度センサとしては、例えば、ダイオードや抵抗など、温度に応じてその電気的特性が変化するものが用いられうる。
【0095】
第1、第2、および、第2の温度センサ510〜512によって得られた温度情報に基づいて、サブヒータの第1部分505に印加される電流と、サブヒータの第2部分508に印加される電流と、サブヒータの第2部分509に印加される電流とが制御される。この制御の方法は、実施例2と同様である。温度センサにより得られる各領域の温度情報に基づいて、サブヒータに印加する電流を制御することで、精度の良い温度制御が可能となる。
【0096】
領域B1もしくは領域B2に配置された機能回路(信号処理回路506や電圧発生回路507を含む)の発熱量が非常に大きい、あるいは、当該機能回路が常時発熱している場合には、その機能回路の領域には、サブヒータを配置しなくてもよい。すなわち、領域B1、および、領域B2のいずれか一方にのみ、サブヒータの第2部分を配置してもよい。
【0097】
なお、本実施例においても、実施例3と同様に、サブヒータが、サブヒータの第1部分と第2部分とを互いに接続する接続部分を含んでいてもよい。また、本実施例においても、実施例4と同様に、サブヒータの第1部分と第2部分との電気的接続を制御する接続部が配されてもよい。
【実施例6】
【0098】
別の実施例について説明する。本実施例は、サブヒータの第1部分と第2部分とが互いに接続されている点で、実施例1と異なる。そこで、実施例1と異なる点のみを説明し、実施例1と同様の部分についての説明は省略する。
【0099】
図6は、液体吐出ヘッド用基板601の平面構造を模式的に示す図である。実施例1と同じ機能を有する部分には、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0100】
本実施例のサブヒータは、第1部分602と第2部分603とを含む。第1部分602が、液体吐出ヘッド用基板601の領域Aに配される。第2部分603が、液体吐出ヘッド用基板601の領域Bに配される。さらに、サブヒータは、2つの接続部分604、605を含む。サブヒータの第1部分602、および、第2部分603は、それぞれ、接続部分604と接続部分605とを接続する。つまり、サブヒータの第1部分602、および、第2部分603は、並列に電流経路を構成している。
【0101】
接続部分604は、第1のパッド電極109aに接続される。接続部分605は、第2のパッド電極109bに接続される。第1のパッド電極109aに電源電圧が入力される。第2のパッド電極109bは接地される。
【0102】
ここで、第1部分602の配線抵抗は、第2部分603の配線抵抗よりも高い。例えば、サブヒータを構成する導電部材の幅と厚みが一定の場合には、第1部分602の配線長が、第2部分603の配線長よりも長い。
【0103】
第1部分602、および、第2部分603には、同じ電圧が印加される。そのため、それぞれを流れる電流の大きさは、両者の配線抵抗の比によって決まる。本実施例では、第1部分602の配線抵抗のほうが高いため、第1部分602に印加される電流の大きさは、第2部分603に印加される電流の大きさより小さい。したがって、第2部分603の単位面積あたりの発熱量を、第1部分602の単位面積あたりの発熱量より大きくすることができる。このような構成によれば、信号供給回路の発熱量が小さい場合に、液体吐出ヘッド用基板に生じる温度分布を低減することが可能である。
【0104】
なお、第2部分603の幅を狭くする、あるいは、第2部分603にシート抵抗の高い材料を用いるなどにより、第2部分603の配線抵抗を、第1部分602の配線抵抗より高くしてもよい。この場合、第1部分602の単位面積あたりの発熱量を、第2部分603の単位面積あたりの発熱量より大きくすることができる。このような構成によれば、信号供給回路の発熱量が大きい場合に、液体吐出ヘッド用基板に生じる温度分布を低減することが可能である。
【0105】
なお、本実施例において、第1部分602に流れる電流の大きさと、第2部分603に流れる電流の大きさとが、一定の比率を維持したまま変化してもよい。このように、第1部分602と、第2部分603とは、独立した電流経路を構成していなくてもよい。
【0106】
上記の例では、一部のパッド電極に電源電圧を入力し、他のパッド電極を接地することを説明した。しかし、パッド電極へ入力する電圧は上記の例に限られない。任意の2つの異なる電圧が入力されればよい。
【0107】
また、液体吐出ヘッド用基板601が、実施例2で説明された温度センサを含んでいてもよい。この場合の、電流の制御の方法は実施例2と同様である。本実施例においても、実施例4と同様に、サブヒータの第1部分と第2部分との電気的接続を制御する接続部が配されてもよい。
【0108】
以上に説明した通り、本実施例では、サブヒータの第1部分と第2部分とが互いに接続されている。そして、それぞれの電流の大きさを互いに異なる。このような構成によれば、パッド電極の数を削減できる。その結果、液体吐出ヘッド用基板を小型化することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
101、201、301、401、501、601 液体吐出ヘッド用基板
102 吐出用ヒータ
103 供給口
104 ヒータ駆動回路
105 サブヒータの第1部分
106 信号処理回路
107 電圧発生回路
108 サブヒータの第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6