(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記従動回転体は、前記シートの排出方向に直交するシートの幅方向において2つ設けられ、前記従動回転体の回転軸線の方向における外側の端部よりも内側の端部の方が前記シートの排出方向にあるように傾いていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の画像形成装置において、画像形成部により形成されたトナー像(画像)をシートに定着させた後、シートを排出ローラと排出コロとにより構成される排出ローラ対により排出するようにしたものがある。さらに、トナー像が定着されたシートを再度、画像形成部に搬送し、シートの両面に画像形成するようにしたものがある。
【0003】
このような画像形成装置では、シートに画像を形成する場合は、まず画像形成部に設けられた感光体ドラムの表面に静電潜像を形成した後、静電潜像をトナーによって現像することにより、感光体ドラム表面にトナー画像を形成する。次に、トナー画像をシート上に転写し、この後、シートを定着部において加熱及び加圧することによりトナー画像をシートに定着する。そして、トナー像が定着されたシートを、排出ローラ対を正回転させることでシート積載部に排出する。また、シートの両面に画像形成する場合は、排出ローラ対を逆回転させることにより、シートを再搬送通路に搬送し、再度画像形成部へ搬送する。
【0004】
近年、画像形成装置は、高速化、及び装置の小型化が進められてきている。そのため、定着部と排出ローラ対の距離が近くなり、定着部において加熱及び加圧され非常に高温となっているシートが高温のまま排出ローラ対にニップされる。すると、排出コロ表面に高温のトナーが付着してしまうことがある。そして、このようにトナーが付着すると、付着したトナーが次に排出されるシートにコロ痕として付着し、次のシートの画像品位が低下するおそれがある。
【0005】
なお、従来はこのようなコロ痕が生じないように、トナー像表面と圧接する排出コロの材質として、フッ素樹脂などの耐トナー融着性の高い材質を採用している。しかし、画像形成装置の小型化と高速化がさらに進むと、排出コロの表面の耐トナー融着性を高めるというだけでは、コロ痕の発生を抑えることができない。そこで、コロ痕の発生を抑える対策として、排出ローラに圧接する複数の排出コロを、シートのシート搬送方向と直交する幅方向の中央を中心として、対称的にシートの搬送方向に対して傾斜させるようにしたものがある。そして、このように排出コロを傾斜させることにより、排出コロ表面にシートの先端部分のトナーが付着した場合でも、この排出コロ表面に付着したトナーをシートの後端部分により削り取ることができる。
【0006】
ところが、このように排出コロを傾斜させた場合、排出コロの端部と紙が強く接触してしまい、シートにスジ状の跡がついてしまうという問題が生じていた。スジ状の跡は排出ローラ対のニップ圧を下げることで良化する。しかし、シートの両面に画像形成する際、再搬送通路の抵抗やシートのレジ補正を行うシャッター機構の抵抗を受けるため、排出ローラ対のニップ圧を下げることは困難である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるレーザープリンタの概略構成を示す断面図である。
【0014】
シート材1はシート材積載部材2に積載されている。シート材1は給紙部3によって1枚ずつ分離され、搬送ガイド4に沿って搬送部5に搬送される。シート材1は搬送部5によって転写部6に搬送され、レーザーユニット7と転写部6により感光ドラム8上に作成されたトナー像がシート材1に転写される。トナー像が転写されたシート材1は定着部9により熱および圧力が加えられトナー像がシート材1へ定着される。第1の実施形態では、転写部6と定着部9によりシートに画像を形成する画像形成部が構成される。
【0015】
この後、シート材1は排出ガイド10に沿って排出部11に搬送される。排出部11は排出ローラ(駆動回転体)12と排出コロ(従動回転体)13で構成される。排出ローラ12は、不図示の駆動源からの駆動力を受けて、正回転及び逆回転が可能である。排出コロ13は、排出ローラ12に対向した位置に設けられ、排出ローラ12の回転に従動する。
【0016】
排出ローラ12は、正回転することによりシート材1を本体外に排出する。また、シート材1の両面に画像を形成する場合には、シート材1の一部を本体外に排出させ、シート材1の後端が排出ガイド10を抜けたところで、排出ローラ12を逆転させる。これにより、片面に画像が形成されたシート材1は、再搬送ガイド(再搬送経路)14へと進入し、再搬送ローラ対(再搬送部)15へと搬送される。そして、再搬送ローラ対15の近傍に設けられたレジシャッタ(斜行補正部)16によりシート材1の斜行(傾き)が補正される。そして、シート材1は再搬送ローラ対15によって再び搬送部5へと搬送され、裏面に画像を転写、定着され、排出部11から本体外へ排出される。
【0017】
本体外へシート材1を排出する際(排出ローラ12が正回転する際)、排出部11のみでシート材1を排出するのはシート材1の後端が定着部9を抜けてからの定着部9から排出部11までの距離だけである。また、排出ガイド10が直線的であるため、このときシート材1にかかる搬送抵抗は小さい。したがって、本体外へシート材1を排出する際に必要な排出部11のニップ圧は小さい。なお、排出部11のニップ圧とは、排出ローラ12と排出コロ13によりシートを挟持する力をいう。
【0018】
一方、両面に画像を形成する際(排出ローラ12が逆回転する際)には、排出部11のみでシート材1を搬送するのは、排出部11から再搬送部15までの距離である。すなわち、排出部11のみで搬送する距離が長くなる。また、本体の小型のために再搬送ガイド14には曲率があり、排出ガイド10よりもシート材1にかかる搬送抵抗は大きくなる。さらに、シート材1の搬送による傾きを補正するレジシャッタ16を押しあけるための搬送力が必要である。そのため、両面に画像を形成する際に必要な排出部11のニップ圧は、シート材1を本体外へ排出する場合よりも大きくなる。
【0019】
第1の実施形態の排出部11について
図2乃至
図4を用いて説明する。
図2は、排出部11の概略図である。
図3は、排出ローラ12と排出コロ13の回転軸(従動回転軸)の傾きを表す図であり、ニップ方向からみた排出部11の上面図である。
図4(a)は本体外へシート材1を排出する際の排出ローラ軸平面の断面図である。
図4(b)は、排出ローラ12の正回転時のニップ点における排出コロ13にかかる力のつり合いを表す図である。
図4(c)は、排出ローラ12の逆回転時のニップ点における排出コロ13にかかる力のつり合いを表す図である。
【0020】
図4(a)に示すように、排出ローラ12は不図示の駆動により正逆回転可能であり、排出コロ13は排出コロ保持部材(保持部)17に回転可能に保持されている。排出コロ保持部材17は、加圧部材(付勢部)18により加圧され、排出コロ13を排出ローラ12に圧接している。排出コロ保持部材17は、揺動中心(揺動支点)Cを中心として、フレーム19に対して揺動可能である。揺動中心Cは、排出ローラ12の回転中心と排出コロ13の回転中心を結ぶ直線よりも、シート材の排出方向において上流に配置されている。
図3に示すように、排出コロ13を支持する回転軸20は排出ローラの回転軸21に対してαの角度で傾いて配置されている。
【0021】
本体外へシート材1を排出するために、排出ローラ12が正回転している場合のニップ圧を説明する。
図4(b)に排出コロのニップ点Nにかかる力の釣り合いの模式図を示す。排出コロ13には、揺動中心CからLspの距離に加圧部材18による力Fspと、揺動中心CからLnの距離にシート材1との摩擦による力Ffrが働く。排出部11のニップ圧Fnは、排出コロ保持部材17の揺動中心Cのモーメントの釣り合いから、次のように求められる。
Fn・sinθ・Ln+Ffr・cosθ・Ln=Fsp・Lsp
Fn=(Fsp・Lsp−Ffr・cosθ・Ln)/(Ln・sinθ)・・・(1)
ここで、排出ローラ12と排出コロ13には
図3で示されるように角度αで傾いて配置されている。角度αが0度の場合は、排出コロ13とシート材1の摩擦は転がり摩擦となり、摩擦力は小さい。しかし、例えば、角度αが3度の場合は、排出コロ13とシート材1との摩擦はすべり摩擦となり、摩擦力が大きくなる。
【0022】
そのため、ニップ圧Fnは前述の式(1)のように加圧力Fspから摩擦力Ffrの引き算で表されるので、排出ローラ12が正回転して、シート材1を本体外へ排出している場合のニップ圧を小さくすることができる。これにより、排出コロ13がシート材1に強く接圧することによるスジ状の跡を抑制することができる。
【0023】
次に、両面に画像を形成するために、排出ローラ12が逆回転している場合のニップ圧について説明する。
図4(c)に示すように、排出ローラ12の正回転時と同様に、排出コロ13には揺動中心CからLspの距離に加圧部材18による力Fspと、揺動中心CからLnの距離にシート材1との摩擦による力Ffrが働く。ニップ圧Fnは排出コロ保持部材17の揺動中心Cのモーメントの釣り合いから、次のように求められる。
Fn・sinθ・Ln=Fsp・Lsp+Ffr・cosθ・Ln
Fn=(Fsp・Lsp+Ffr・cosθ・Ln)/(Ln・sinθ)・・・(2)
排出ローラ12逆回転時には、排出コロ13とシート材1との摩擦による力Ffrが排出ローラ12正回転とは逆方向に働くため、摩擦力Ffrは加圧力Fspに加算される。(1)式と(2)式を比較すればわかるように、排出ローラ12の逆回転時には、排出ローラ12の正回転時よりもニップ圧が2Ffr・tanθ増加する。
【0024】
ここで、逆回転時にはニップ圧が高いため、シート材1にスジ状の跡がついてしまうことがある。しかし、両面の画像形成プロセスにおいて、再度シート材1のトナー像を定着させるために定着部9を通るため、シート材1には熱と圧が加えられ、スジ状の跡は消失する。なお、本体外へシート材1を排出する際には、前述の説明の通り、ニップ圧は低下しているので、両面に画像形成した場合でもスジ状の跡を抑制することができる。
【0025】
また、角度αが大きいほど排出ローラ12の正逆回転時のニップ圧の差を大きくすることができる。しかし、角度αが大きすぎると、排出コロ13とシート材1との摩擦が大きくなりすぎ、シート材1に定着されたトナー像をはがししてしまう恐れがあるため、角度αは、第1の実施形態のように、概ね2〜3°程度がよい。
【0026】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、排出ローラ12正回転時にはニップ圧を小さくし、排出ローラ12逆回転時にはニップ圧を大きくすることができる。そのため、シート材1を本体外へ排出する際にはシート材1にスジ状の跡を抑制することができ、かつ、両面に画像形成する場合には再搬送ガイド14やレジシャッタ16からの搬送抵抗を受けてもシート材1を搬送することができる。排出部11のローラ対を追加して各ローラ対のニップ圧を低下させることや、再搬送ガイド14の抵抗を小さくするために再搬送ガイド14の曲率を大きくすることによる本体の大型化をすることなく、低コストで本体の小型化と良好な画質を達成することができる。
【0027】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について
図5から
図8に基づいて説明する。なお、以下の第2の実施形態の説明において、第1の実施形態との共通する構成及び動作については、適宜説明を省略する。
【0028】
図5は、第2の実施形態における排出部の斜視図である。
図6(b)は、排出ローラ23が正回転する時のシート材1の搬送方向面(
図5のA矢視)の図である。
図6(a)は排出ローラ23が正回転する時のニップ点における排出コロ24にかかる摩擦力と排出ローラ23と排出コロ24の回転軸の傾きを表す図であり、ニップ方向からみた排出部22の上面図である。
図7(a)は排出ローラ23逆回転時のニップ点における排出コロ24にかかる摩擦力と排出ローラ23と排出コロ24の回転軸の傾きを表す図であり、ニップ方向からみた排出部の上面図である。
図7(b)は排出ローラ23が逆回転する時のシート材搬送方向面(
図5のA矢視)の図である。
図8(a)は排出コロ24と排出コロ保持部材25の排出コロ軸保持部の拡大図である。
図8(b)はシート材排出時とシート材再搬送時の排出個コロ保持部材25の高さの変化を表す図である。
【0029】
第2の実施形態は、排出部22の構成以外は第1の実施形態と同じである。
図6(b)に示すように、排出コロ24の回転軸は、同軸で直径の異なる箇所を有している。DAは、回転軸の直径が細く、DBは回転軸の直径が太い。そして、排出コロ24は、シートの排出方向と直交する方向(以下、幅方向という。)に移動可能に設けられている。
【0030】
排出コロ保持部材25は、排出コロの回転軸29の右側と左側とで同一の直径部を保持する。また、排出コロ保持部材25は、排出コロの回転軸29の直径が、異なる直径でも保持できるように(直径DAでも直径DBでも保持できるように)、例えば
図8(a)に示すように、V字型の溝で排出コロ24を保持する。
【0031】
また、
図5に示すように、排出コロ保持部材24は加圧部材26により押圧され、フレーム27のガイド部30に沿って、排出ローラ23の中心と排出コロ24の中心を結ぶ直線方向に排出コロ24を排出ローラ23に圧接させる。
図6(a)で示されるように、排出ローラ23の回転軸28と排出コロ24の回転軸29は、角度βで傾いて配置されている。
【0032】
本体外へシート材1を排出するために、排出ローラ23が正回転している場合のニップ圧について説明する。
図6(a)および
図6(b)に示すように、排出ローラ23の回転軸28と排出コロ24の回転軸29は角度β傾いて配置されているため、排出コロ24にはシート材1(または排出ローラ23)との摩擦により、F’frの摩擦力の分力であるF’sr=F’fr・sinβの力が働く。
【0033】
そして、排出コロ24は、F’srの力により、シート材1の幅方向において中心方側に、排出コロ保持部材25につきあたるまで移動する。そのため、排出コロ保持部材25は、排出コロ24を直径DAの箇所で保持することになる。加圧部材26の自然長をL、作用長をLA、ばね定数をkとすると、ニップ圧はF’n=k(LA−L)となる。
【0034】
次に両面に画像を形成するために、排出ローラ23が逆回転している場合のニップ圧について説明する。
図7(a)および
図7(b)に示すように、排出ローラ回転軸28と排出コロ回転軸29は角度β傾いて配置されているため、排出コロ24にはシート材1(または排出ローラ)との摩擦により、F”frの摩擦力の分力であるF’sr=F”fr・sinβの力が働く。排出コロ24は、F”srの力により、シート材1の幅方向において端部側に、排出コロ保持部材25につきあたるまで動く。そのため、排出コロ保持部材25は排出コロ24を直径DBの箇所で保持することになる。加圧部材26の自然長をL、作用長をLB、ばね定数をkとすると、ニップ圧はF”n=k(LB−L)となる。
【0035】
図8(a)および
図8(b)に示すように排出コロ保持部材25は角度2θのV字形状で排出コロ24を保持しているので、排出コロ24を直径DAで保持している場合と直径DBで保持している場合では加圧部材26の作用長がΔL=(DB−DA)/(2・sinθ)だけ変化する。加圧部材のばね定数をkとするとニップがkΔL変化する。ここでDA<DBなので、ニップ圧はFA<FBとなる。
【0036】
従って、第2の実施形態によれば、排出ローラ23の正回転時にはニップ圧を小さくし、排出ローラ23の逆回転時にはニップ圧を大きくすることができる。そのため、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、低コストで本体の小型化と良好な画質を達成することができる。