特許第6249698号(P6249698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6249698-圧電アクチュエータ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249698
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/053 20060101AFI20171211BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20171211BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20171211BHJP
   H01L 41/273 20130101ALI20171211BHJP
   H01L 41/43 20130101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01L41/053
   H01L41/09
   H01L41/083
   H01L41/273
   H01L41/43
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-194333(P2013-194333)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-60982(P2015-60982A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】館山 雄一
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−150276(JP,A)
【文献】 特開2003−097418(JP,A)
【文献】 特開2001−211667(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0015939(US,A1)
【文献】 特開平10−284763(JP,A)
【文献】 特開2004−304996(JP,A)
【文献】 特開2001−148521(JP,A)
【文献】 特開平08−252735(JP,A)
【文献】 特開平07−249802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/00−41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により変位する圧電アクチュエータであって、
複数の圧電素子が直列に接続され、一端が固定された圧電アクチュエータ本体と、
前記圧電アクチュエータ本体の変位側の端部に設けられ、前記圧電アクチュエータ本体の変位を伝達する伝達体と、
側面に伸縮可能なベローズ部を有し、前記圧電アクチュエータ本体および前記伝達体を収容する金属製のキャップと、を備え、
前記伝達体は、前記キャップの閉端側に当接する半球部と、前記キャップのベローズ部に対向する位置に設けられ、前記半球部に接着された小径部と、を有し、前記圧電アクチュエータ本体の変位方向に垂直な面による前記小径部の断面積は、前記半球部の断面積より大きく前記圧電アクチュエータ本体の断面積より小さいことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記小径部と前記ベローズ部との間は1mm以上空いていることを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記キャップの閉端側は、前記伝達体の変位に応じて変位するダイヤフラムとして形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧電アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧の印加により変位する圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
積層型の圧電素子を多連化した圧電アクチュエータ本体に金属製のキャップを被せて封管することで、圧電アクチュエータが製造される。このような圧電アクチュエータでは、キャップの先端にダイヤフラムが形成される。圧電アクチュエータ本体の端部にはダイヤフラム内面に当接するように半球が設けられ、ダイヤフラムを変位させる。この半球は、圧電アクチュエータ本体の端部にてセラミックス製のシム板に接着され、シム板は圧電素子と接着されている。
【0003】
これらの圧電アクチュエータは、連続駆動させることでダイヤフラムに亀裂が発生し、封管が保てなくなる場合がある。これに対し、特許文献1記載の圧電アクチュエータでは、側面に伸縮部を設けたキャップを用い、ダイヤフラムに発生する応力を伸縮部で緩和することで、疲労破壊を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−175683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の伸縮部は、側面壁を内側へ入り込ませた溝形状のようなものであり、それを設けるためには、収容される圧電アクチュエータ本体とキャップの伸縮部とが接しないよう、各々の間に十分なクリアランスを確保する必要がある。そして、このようなクリアランスを確保しようとすると圧電アクチュエータが大径形状となってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、大径化させずにコンパクトな設計で、キャップに発生する応力を緩和し連続駆動してもキャップの破損を防止できる圧電アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の圧電アクチュエータは、電圧の印加により変位する圧電アクチュエータであって、複数の圧電素子が直列に接続され、一端が固定された圧電アクチュエータ本体と、前記圧電アクチュエータ本体の変位側の端部に設けられ、前記圧電アクチュエータ本体の変位を伝達する伝達体と、側面に伸縮可能なベローズ部を有し、前記圧電アクチュエータ本体および前記伝達体を収容する金属製のキャップと、を備え、前記伝達体は、前記キャップの閉端側に当接して収容され、前記キャップのベローズ部に対向する位置に小径部を有することを特徴としている。
【0008】
これにより、大径化させずにコンパクトな設計で、キャップに発生する応力をベローズ部で緩和し連続駆動してもキャップの破損を防止できる。その結果、キャップの先端部に発生する引張応力を緩和し、十分な耐久性が得られる。
【0009】
(2)また、本発明の圧電アクチュエータは、前記小径部と前記ベローズ部との間は1mm以上空いていることを特徴としている。これにより、圧電アクチュエータの最大径を大きくせずに、キャップと圧電アクチュエータ本体との間に十分なクリアランスを確保でき、圧電アクチュエータをコンパクトにすることができる
(3)また、本発明の圧電アクチュエータは、前記キャップの閉端側は、前記伝達体の変位に応じて変位するダイヤフラムとして形成されていることを特徴としている。これにより、キャップ先端に発生する引張応力を緩和し、十分な耐久性が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大径化させずにコンパクトな設計で、キャップに発生する応力を緩和し連続駆動してもキャップの破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の圧電アクチュエータを示す断面図である。
図2】比較例の圧電アクチュエータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
[圧電アクチュエータの構造]
図1は、圧電アクチュエータ100を示す断面図である。圧電アクチュエータ100は、圧電アクチュエータ本体105、伝達体130、座140およびキャップ160により構成され、電圧が印加されることで変位する。
【0014】
圧電アクチュエータ本体105は、複数の圧電素子110、リード部材120で構成されている。複数の圧電素子110は、圧電素子110同士が端面で接着されることで互いに直列(電圧印加による伸縮方向)に連結されている。圧電アクチュエータ本体105は、一端に伝達体130を有し、他端は底部として座140に接着されており、多連化された圧電素子110に電圧が印加されることで伸縮する。
【0015】
リード部材120は、金属製で板状に形成されており、圧電素子110の両側面に形成された外部電極115に接着されている。一対のリード部材120は、座140において一対の端子150に接続されている。
【0016】
圧電アクチュエータ本体105は、リード部材120を介して外部電極115に電圧が印加される。座140は、圧電アクチュエータ本体105の一端を固定して支持しており、圧電アクチュエータ本体105の伸縮により伝達体130が変位する。
【0017】
圧電素子110は、圧電層と内部電極とが交互に積層されている。また、圧電素子110の側面には内部電極に接続された外部電極115が設けられている。圧電層は、例えばPZT等の圧電材料で構成されている。内部電極は、Ag−Pd等で構成されている。
【0018】
伝達体130は、圧電アクチュエータ本体105の変位側の端部に設けられ、キャップ160の閉端側に当接して収容されて圧電アクチュエータ本体105の変位をキャップ160の先端に伝達する。伝達体130は、シム板131、小径部132および半球133を有している。
【0019】
シム板131は、圧電アクチュエータ本体105の端面形状に一致する形状の板として形成され、圧電アクチュエータ本体105の変位側の端部に接着されている。シム板131は、アルミナ等のセラミックスで形成されていることが好ましい。
【0020】
小径部132は、圧電アクチュエータ本体105より小径に形成されており、キャップ160のベローズ部162に対向する位置において、シム板131上に接着されて設けられている。これにより、大径化させずにコンパクトな設計で、キャップ160に発生する応力をベローズ部162で緩和できるため、連続駆動してもキャップ160の破損を防止できる。小径部132は、円柱形状であってもよいし、矩形体であってもよい。小径部132は、SUS等の剛性の強い金属で形成されていることが好ましい。
【0021】
小径部132とベローズ部162との間は1mm以上空いていることが好ましい。これにより、圧電アクチュエータ100の最大径を大きくすることなく、キャップ160と圧電アクチュエータ本体105との間に十分なクリアランスを確保でき、圧電アクチュエータ100をコンパクトにすることができる。
【0022】
なお、小径部132を長くすれば、それだけクリアランスの大きい部分も長くとることができ、よりベローズ部162を長く設けられる。ダイヤフラム161が設けられているキャップ160に、径方向の寸法を変化させずに伸縮機構としてベローズ部162を付加できる。その結果、ダイヤフラム161に発生する引張応力を緩和できる。
【0023】
例えば、径寸法7〜10mmかつ500〜700万回でダイヤフラムが破損してしまうキャップに対して、ダイヤフラム161に発生する引張応力の25〜30%を緩和するようにベローズ部162を設けるのが有効である。その場合には、ダイヤフラム161は疲労限度1000万回を超えても疲労破壊が起こらないほどの十分な耐久性を得られる。
【0024】
また、上記の構成においては、半球133より接触面積の大きい小径部132を介して圧電素子110は予圧を受けるために、圧電素子110に発生する予圧起因の圧縮応力も広く分散させるという効果もある。
【0025】
半球133は、例えば金属で形成され、小径部132上に接着されている。半球133は、キャップ160の閉端側のドーム形状部分の内面に当接しており、圧電アクチュエータ本体105の変位をキャップ160の先端部に伝えている。
【0026】
キャップ160は、金属製であり、伝達体130および圧電アクチュエータ本体105に被さって、これらを収容した状態で座140に封止されている。キャップ160の先端部分(閉端側)には、ドーム形状を有するダイヤフラム161が形成されている。
【0027】
ダイヤフラム161のドーム形状の部分には半球133が当接しており、伝達体の変位に応じて変位する。これにより、キャップ160の先端に発生する引張応力を緩和し、十分な耐久性が得られる。キャップ160の側面の直管部分は、円筒に形成されており、伸縮可能なベローズ部162を有している。キャップ160は、SUS等の材質で形成されていることが望ましい。
【0028】
座140は、概略円板状に形成され、圧電アクチュエータ本体105の他端を支持する。座140は、キャップ160の開口端が接合される。座140には、外部から端子150が挿通されており、リード部材120は座140において端子150と接続している。
【0029】
[圧電アクチュエータの製造方法]
まず、圧電層と内部電極とが交互に積層された圧電素子110を作製する。具体的には、圧電セラミックスのグリーンシートにAgやAg−Pd等の電極ペーストを印刷して積層、圧着し、焼成する。次に、圧電素子110の側面に積層方向に沿って、内部電極に接続された外部電極115を形成する。圧電素子110の側面に電極ペーストを印刷して焼成することで外部電極115を形成できる。
【0030】
得られた複数の圧電素子110の積層方向の端面には、エポキシ等の接着剤を塗布して接着し、直列方向に連結する。このようにして多連化を行い、接着剤を硬化させる。そして、金属製で板状のリード部材120を、外部電極115に固着させて、多連化した圧電アクチュエータ本体105を作製できる。
【0031】
一方、伝達体130を作製する。所定厚さのシム板131上に金属製の小径部132を接着する。小径部132の径はあらかじめキャップ160とのクリアランスを考慮して、設計、加工しておく。さらに、金属製の小径部132の上に半球133を接着する。このようにして得られた伝達体130のシム板131側を圧電アクチュエータ本体105の一端に接着する。
【0032】
上記の圧電アクチュエータ本体105の他端側を座140に設置し、キャップ160を伝達体130および圧電アクチュエータ本体105に被せて封止する。リード部材120は、座140に挿通された端子150を介して外部と電気的に接続する。このようにして、圧電アクチュエータ100を作製することができる。
【0033】
[実施例、比較例]
次に、圧電アクチュエータを設計してシミュレーションを行った。実施例として、図1に示す圧電アクチュエータ100を用いた。また、比較例として、以下の通り図2に示す圧電アクチュエータ200を用いた。
【0034】
図2は、比較例の圧電アクチュエータ200を示す断面図である。圧電アクチュエータ200は、圧電アクチュエータ本体205、伝達体230、座240およびキャップ260により構成される。
【0035】
圧電アクチュエータ本体205は、互いに直列に連結された複数の圧電素子210およびリード部材220で構成されている。圧電アクチュエータ本体205は、一端に伝達体230を有し、他端は底部として座240に接着されている。圧電素子210は、圧電層と内部電極とが交互に積層され、側面には外部電極215が設けられている。リード部材220は、外部電極215に接着されるとともに、座240において一対の端子250に接続されている。
【0036】
伝達体230は、シム板231および半球233を有しており、半球233は、シム板231上に接着されている。このように伝達体230は、小径部を有していない。キャップ260は、金属製であり、伝達体130および圧電アクチュエータ本体205に被さって、これらを収容した状態で座240に封止されている。キャップの先端部分(閉端側)には、ドーム形状を有するダイヤフラム261が形成されている。
【0037】
以下の表は、実施例および比較例のいずれにも共通する条件を示している。
【表1】
【0038】
実施例においては、ベローズ部の各々の谷の深さd1を1.0mmとし、比較例においては、ベローズ部の各々の谷の深さd2を0.2mmとして、同じ変位を与えた。その結果、比較例では、ダイヤフラムの引張応力が630MPaであったのに対し、実施例ではダイヤフラムの引張応力が470MPaであった。このように、圧電アクチュエータ100では、ダイヤフラムに生じる引張応力を低減できることが実証された。
【0039】
次に、実際にこれらの形状のキャップを製作し、連続駆動試験を行ったところ、比較例のキャップは平均約500万回で破損が見られたのに対し、実施例のキャップは1000万回を超えても破損が見られなかった。
【符号の説明】
【0040】
100 圧電アクチュエータ
105 圧電アクチュエータ本体
110 圧電素子
115 外部電極
120 リード部材
130 伝達体
131 シム板
132 小径部
133 半球
140 座
150 端子
160 キャップ
161 ダイヤフラム
162 ベローズ部
200 圧電アクチュエータ
205 圧電アクチュエータ本体
210 圧電素子
215 外部電極
220 リード部材
230 伝達体
231 シム板
233 半球
240 座
250 端子
260 キャップ
261 ダイヤフラム
図1
図2