特許第6249700号(P6249700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249700有機層をインクジェット印刷するためのアリールオキシアルキルカルボキシレート溶媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249700
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】有機層をインクジェット印刷するためのアリールオキシアルキルカルボキシレート溶媒組成物
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20171211BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171211BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 B
   B05D7/00 H
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-195075(P2013-195075)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-75344(P2014-75344A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】13/644,480
(32)【優先日】2012年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】グァンオク・チョン
(72)【発明者】
【氏名】アンガン・ドン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・インバセカラン
(72)【発明者】
【氏名】スーマン・レイエク
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−256129(JP,A)
【文献】 特表2012−517673(JP,A)
【文献】 特開2010−219508(JP,A)
【文献】 特開2005−093428(JP,A)
【文献】 特表2012−531012(JP,A)
【文献】 特開平09−199744(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0268517(US,A1)
【文献】 米国特許第06402986(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
B05D 7/00
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01質量%〜10質量%の濃度の低分子有機半導体材料と、
25℃以下の融点を有する溶媒であって、前記溶媒の化合物が、
【化1】

(式中、Rは、アルキルまたはC3−6アルキルであり、Rは、C1−6アルキルであり、Rは、C1−6アルキル及びアリールから独立して選択される1以上の任意の置換基である)
によって表される溶媒とを含むことを特徴とする液体組成物。
【請求項2】
溶媒が、1atmで260℃以下の沸点を有する請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
溶媒が、1atmで150℃〜260℃の沸点を有する請求項2に記載の液体組成物。
【請求項4】
溶媒の化合物が、166〜400の分子量を有する請求項1に記載の液体組成物。
【請求項5】
低分子有機半導体材料が、リン光発光化合物である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項6】
低分子ホスト化合物を更に含む請求項5に記載の液体組成物。
【請求項7】
有機半導体材料が、電荷輸送材料である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項8】
液体組成物が、23℃で5cPs〜15cPsの粘度を有する請求項1に記載の液体組成物。
【請求項9】
溶媒が、23℃で5cPs〜15cPsの粘度を有する請求項1に記載の液体組成物。
【請求項10】
溶媒が、フェノキシ酢酸メチルである請求項1に記載の液体組成物。
【請求項11】
有機半導体材料が、3,000以下の分子量を有する請求項1に記載の液体組成物。
【請求項12】
溶媒ブレンドを形成するために別の溶媒を更に含む請求項1に記載の液体組成物。
【請求項13】
別の溶媒が、3−フェノキシトルエンである請求項12に記載の液体組成物。
【請求項14】
溶媒が、1atmで150℃〜260℃の沸点、23℃で5cPs〜15cPsの粘度、及び166〜400の分子量を有する請求項1に記載の液体組成物。
【請求項15】
有機電子デバイス用の有機層を形成する方法であって、
請求項1に記載の液体組成物を表面に付着させる工程と、
前記液体組成物を乾燥させて、前記表面上に有機層を形成する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
有機電子デバイスが、有機発光デバイスであり、有機層が、発光層である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
表面が、電子デバイスの別の有機層又は電極の表面である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に存在する有機層であって、請求項15に記載の方法によって作製される前記有機層とを含むことを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項19】
有機層が、発光層である請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
低分子有機半導体材料が、リン光発光化合物である請求項19に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光デバイス等の有機電子デバイスにおける有機層を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機発光デバイス(OLED)は、低分子材料を真空蒸着したり、高分子材料をスピンコーティング又はディップコーティングしたりすることによって製造されている。より最近では、OLEDの製造において有機薄膜層を直接成膜するためにインクジェット印刷が用いられている。高分子材料をインクジェット印刷する場合、トルエン又はキシレン等の様々な従来の溶媒を用いることができる。しかし、これら高分子材料をインクジェット印刷するために従来用いられている溶媒は、低分子材料を付着させる場合には同様に機能しないことが多い。その理由は、沸点が比較的低いので、溶媒が早く乾燥しすぎて印刷ノズルが詰まるためである。また、付着時に溶媒の乾燥が早すぎると、膜の形態が劣る場合がある。
【0003】
したがって、低分子材料のインクジェット印刷には、比較的高沸点の溶媒の使用が必要とされることが多い。しかし、より高い沸点の溶媒を使用すると、溶媒自体の問題が生じる。沸点が高いことから、かかる溶媒は、成膜された有機層から除去することが困難である場合がある。高温で焼成すれば、溶媒の除去を加速することはできるが、デバイスの熱劣化を引き起こす場合がある。また、高温で焼成したとしても、成膜された有機層から溶媒残渣を完全に除去することはできない。溶媒材料は、一般的に、電気絶縁性であるので、成膜された有機層に残存する溶媒残渣が電子デバイスの性能に干渉する場合がある。また、多くの溶媒は、粘度が低すぎて、インクジェット印刷によって優れた膜を形成することができない。したがって、有機層を形成するために低分子材料をインクジェット印刷するのに適した改善されたインクジェット流体製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた膜形成を促進する特徴(例えば、沸点、粘度等)を有する溶媒を用いて、溶液処理(例えば、インクジェット印刷)によって有機層を形成する改善された方法を提供する。前記方法によって成膜された有機層を用いたOLED等の有機電子デバイスは、改善されたデバイス性能を有し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態では、本発明は、0.01質量%〜10質量%の濃度の低分子有機半導体材料と、25℃以下の融点を有する溶媒であって、前記溶媒の化合物が、以下の式(式中、Rは、C1−6アルキルであり、Rは、C1−6アルキルであり、Rは、C1−6アルキル及びアリールから独立して選択される1以上の任意の置換基である)によって表される溶媒とを含む液体組成物を提供する。
【化1】
【0006】
別の実施形態では、本発明は、有機電子デバイス用の有機層を形成する方法であって、本発明の液体組成物を表面に付着させる工程と、前記液体組成物を乾燥させて、前記表面上に有機層を形成する工程とを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間の有機層であって、本発明の液体組成物を用いて作製される有機層とを含む有機電子デバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態に係るOLEDの構造を示す。
【0008】
図2図2は、実施例及び比較例のデバイスの発光効率のグラフである。
【0009】
図3図3は、時間に対して発光強度をプロットした、実施例及び比較例のデバイスの動作寿命を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、溶液処理技術による有機層の形成に関する。1つの態様では、本発明は、溶液処理技術によって有機層を形成するために用いることができる液体組成物を提供する。前記液体組成物は、溶媒に混合された低分子有機半導体材料を含み、前記溶媒の化合物は、
【化2】
(式中、Rは、C1−6アルキルであり、Rは、C1−6アルキルであり、Rは、C1−6アルキル及び低級アリールから独立して選択される1以上の任意の置換基である)によって表される。用語「アルキル」は、アルキル部分を意味し、直鎖状及び分枝状のアルキル鎖を含み、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル等である。用語「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を含有するヒドロカルビルを意味し、例えば、置換フェニルである。用語「低級アリール」は、3個〜15個の炭素原子を含有するアリールを意味する。この式を有する溶媒の具体例としては、以下が挙げられる:
【化3】
【0011】
本発明で用いられる溶媒は、前記溶媒をインクジェット印刷等の溶液処理技術によって有機層を形成するのに有用たらしめる様々な化学的/物理的性質を有し得る。例えば、溶媒は、25℃以下の沸点を有していてよい。一部の場合、溶媒の化合物は、166〜400の分子量を有する。一部の場合、溶媒は、1atmで260℃以下の沸点を有し、一部の場合、1atmで150℃〜260℃の沸点を有するが、他の沸点範囲も可能である。この範囲の沸点は、インクジェット印刷ヘッドのノズルの詰まりを防ぐのに十分な程度高いが、デバイス製造中に乾燥/焼成によって除去するのに十分な程度低い場合がある。
【0012】
有機半導体材料は、半導体の性質を示すことができる、即ち、伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップが0.1eV〜4eVである低分子有機化合物(有機金属化合物を含む)である。低分子有機半導体材料は、有機発光デバイス等の有機電子デバイスの製造において用いられることが知られているか又は提案されているいずれの低分子有機半導体材料であってもよい。例えば、有機半導体材料は、電荷輸送化合物(正孔若しくは電子の輸送、又は正孔若しくは電子の注入)又は発光リン光化合物であってよい。
【0013】
用語「低分子」とは、高分子ではない任意の化合物を指し、「低分子」は、実際には比較的大きくてもよい。低分子は、一部の状況では反復ユニットを含んでいてもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を使用することによって、その分子が「低分子」から除外されるものではない。一般的に、低分子は、単一の分子量を有するはっきりと定義された化学式を有するが、高分子は、分子によって異なり得る化学式及び分子量を有する。低分子有機半導体材料の分子量は、典型的に、3,000以下である。
【0014】
一部の場合、有機半導体材料は、リン光発光化合物である。米国特許第6,902,830号明細書(Thompsonら);米国特許出願公開第2006/0251923号明細書(Linら)、米国特許出願公開第2007/0088167号明細書(Linら)、米国特許出願公開第2006/0008673号明細書(Kwongら)、及び米国特許出願公開第2007/0003789号明細書(Kwongら)(これらは全て参照により全文が本明細書に援用される)に記載の遷移金属の有機金属錯体を含む様々な種類のリン光発光化合物はいずれも好適であり得る。
【0015】
液体組成物中の有機半導体材料の濃度は、具体的な用途に応じて変動する。特定の実施形態では、有機半導体材料は、インクジェット印刷に適した濃度で提供される。有機半導体材料の濃度は、一部の場合は0.01質量%〜10質量%、一部の場合は0.01質量%〜2質量%、一部の場合は0.1質量%〜1質量%である。液体組成物の粘度は、具体的な用途に応じて変動する。インクジェット印刷に使用する場合、液体組成物に適した粘度は、23℃で5cPs〜15cPs又は7cPs〜12cPsであってよい。低分子材料の液体組成物については、溶媒の粘度が液体組成物の粘度を主に決定し得る。したがって、一部の場合、液体組成物で用いられる溶媒の粘度は、23℃で5cPs〜15cPs又は7cPs〜12cPsであってよい。一部の場合、溶媒は、3−フェノキシトルエンよりも低い沸点を有し、且つ3−フェノキシトルエンよりも高い粘度を有する。
【0016】
溶媒と有機半導体材料との相互作用が液体組成物の粘度に影響を与える場合がある。したがって、液体組成物の粘度は、選択する溶媒及び/又は有機半導体材料を変更することによって、或いは、各々の相対量を変化させることによって調整することができる。また、液体組成物は、OLED等の有機電子デバイスの製造において用いられる様々な他の種類の材料のいずれかを含有していてもよい。有機層は、OLEDで用いられるいずれの層であってもよい(例えば、OLEDにおける発光層、正孔注入層、又は正孔輸送層)。
【0017】
OLEDの発光層を作製するために液体組成物を用いる場合、一部の場合において、液体組成物は、発光層におけるドーパントとして低分子ホスト化合物及び低分子リン光発光化合物を含んでいてもよい。ホストは、正孔/電子再結合エネルギーを受け取り、次いで、発光/吸光エネルギー転移プロセスによって、励起エネルギーをリン光ドーパント化合物に転移させる成分として機能する発光層中の化合物である。リン光ドーパントは、典型的に、ホスト化合物よりも低い濃度で存在する。ホスト化合物の例としては、Alq[アルミニウム(III)トリス(8−ヒドロキシキノリン)]、mCP(1,3−N,N−ジカルバゾール−ベンゼン)、及びCBP(4,4’−N,N−ジカルバゾール−ビフェニル)が挙げられる。リン光発光化合物又はホスト化合物として用いることができる他の物質を以下の表2に示す。
【0018】
液体組成物は、当技術分野において公知である任意の適切な溶液処理技術を用いて表面上に付着させる。例えば、液体組成物は、インクジェット印刷、ノズル印刷、オフセット印刷、トランスファー印刷、又はスクリーン印刷等の印刷処理を用いて、或いは、スプレーコーティング、スピンコーティング又はディップコーティング等のコーティング処理を用いて付着させることができる。液体組成物を付着させた後に溶媒を除去するが、前記溶媒は、真空乾燥又は加熱等の任意の従来の方法を用いて除去してよい。
【0019】
一部の場合、液体組成物は、溶媒のブレンドを有していてもよい。例えば、液体組成物は、米国特許第8,174,000号明細書に開示されている溶媒、又は本発明の溶媒ではない溶媒を更に含んでいてもよい。かかる場合、本発明の溶媒は、液体組成物中の溶媒の体積の少なくとも10(体積)%を占める。かかるブレンドされた溶媒は、膜形成を促進する及び/又は成膜された有機層の欠陥を低減することができる。この第2の溶媒は、例えば、アリールオキシ−アルキルカルボキシレート溶媒よりも高い又は低い沸点を有していたり、アリールオキシ−アルキルカルボキシレート溶媒よりも有機半導体材料との相互作用の程度が高かったりする等、本発明のアリールオキシ−アルキルカルボキシレート溶媒を補完する様々な性質を有していてよい。ブレンドに用いることができる溶媒の例は、3−フェノキトルエンであり、これは、比較的高い沸点及び比較的低い粘度を有する。したがって、3−フェノキトルエンとブレンドすることによって、液体組成物の沸点を上昇させたり粘度を低下させたりすることができる。
【0020】
本発明は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2005/0072021号明細書(Steigerら)に開示されているもの等の有機発光デバイス、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機光起電力デバイス、及び有機太陽電池を含む様々な有機電子デバイスの製造において用いることができる。例えば、図1は、本発明を用いて製造することができるOLED100を示す。OLED100は、当技術分野において周知である構造を有する(例えば、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2008/0220265号明細書(Xiaら)を参照されたい)。図1から分かる通り、OLED100は、基板110、アノード115、正孔注入層120(HIL)、正孔輸送層125(HTL)、電子ブロッキング層130(EBL)、発光層135(EML)、正孔ブロッキング層140(HBL)、電子輸送層145(ETL)、電子注入層150(EIL)、保護層155、及びカソード160を有する。カソード160は、第1の伝導層162及び第2の伝導層164を有する複合カソードである。発光層で用いることができるドーパント又はホストの例を以下の表2に示す。
【0021】
第1の層が第2の層「上」にあると記載する場合、第1の層は、基板から更に離れて配置されている。第1の層が第2の層と「物理的に接触している」と記載されていない限り、第1の層と第2の層との間に他の層が存在していてもよい。例えば、様々な有機層が間に存在していたとしても、カソードがアノード「上」に配置されていると記載する場合がある。
【実施例】
【0022】
次いで、本発明の特定の例示的実施形態について、かかる実施形態を製造できる方法と共に説明する。具体的な方法、材料、条件、工程パラメータ、装置等は、必ずしも本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
以下の順次成膜された有機層:HIL/HTL/EML/HBL/ETLを用いて実施例及び比較例のデバイスを作製した。テトラロン溶媒中化合物Aと化合物Bとの混合物(重量比80:20)(濃度0.15質量%)を用いて厚み1,200ÅのITO(酸化インジウムスズ)アノード上にインクジェット印刷によって正孔注入層を成膜した。3−フェノキトルエン(3−PT)溶媒中化合物C(0.2質量%)を用いて正孔注入層上にインクジェット印刷によって正孔輸送層を成膜した。実施例のデバイスについては、フェノキシ酢酸メチル(MPA)溶媒中化合物D:化合物混合物E(比88:12)(濃度0.85%)を用いてインクジェット印刷によって発光層を成膜した。比較例のデバイスについては、MPAの代わりに溶媒として3−フェノキトルエン(3−PT)を用いた。MPAは、約245℃の沸点及び23℃で約9cPsの粘度を有し、一方、3−PTは、約275℃の沸点及び23℃で約4.8cPsの粘度を有する。
【0024】
これらインクジェットによって成膜される層は、材料を確実に完全に溶解させるために攪拌しながら窒素グローブボックス内で調製した。インクジェット溶液を付着させた直後に、HILについては250℃で30分間、HTLについては200℃で30分間、EMLについては100℃で60分間真空乾燥及び焼成した。化合物Fを含有するブロッキング層、Alq[アルミニウム(III)トリス(8ヒドロキシキノリン)]を含有する電子輸送層、及びカソード用の10Å LiF/1,000Åアルミニウムを、従来の方法で真空熱蒸着によって順次成膜した。製造直後に、全てのデバイスを窒素グローブボックス(1ppmのHO及びO)内においてガラスの蓋を用いてエポキシ樹脂で封止して封入し、水分ゲッタをパッケージ内に入れた。
【化4】
【化5】
【表1】
【0025】
上記表1は、電流密度10mA/cmの一定電流を駆動するのに必要な電圧(V)、電流密度10mA/cmで作動したときの発光効率(LE)、初期輝度4,000ニトの80%まで輝度が減衰するのにかかる時間によって測定されたデバイス寿命、及び放出された光のCIE色空間座標を示す。実施例及び比較例のOLEDの発光効率は、図2にグラフとしても示す。実施例及び比較例のOLEDの動作寿命は、図3に時間に対する発光効率のグラフとしても示す。
【0026】
これらデータは、実施例のデバイスが、比較例のデバイスよりも高い発光効率を有していたことを示す。即ち、溶媒にMPAを用いるとより高い効率を得ることができる。更に、これらデータは、実施例のデバイスが比較例のデバイスよりも長い寿命を有していたことを示す。即ち、溶媒にMPAを用いるとデバイスの安定性を改善することができる。この改善されたデバイス性能は、MPAの3−PTに比べて低い沸点及び/又は高い粘度に起因している可能性がある。これら性質は、インクジェット印刷中の膜形成に有益であり得る。これら結果は、溶液処理によって有機層を成膜するために本発明の溶媒を使用することによってデバイス性能を強化できることを示す。
【0027】
前述の記載及び実施例は、単に本発明を例示するために記載したものであって、本発明を限定するものではない。本発明の開示された各態様及び実施形態は、個々に、又は本発明の他の態様、実施形態、及び変形例と組み合わせて検討してよい。更に、特に指定しない限り、本発明の方法の工程はいずれも、任意の特定の実施順序に限定されるものではない。本発明の趣旨及び本質が組み込まれた開示した実施形態は、当業者によって改変することができ、かかる改変も本発明の範囲内である。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
図1
図2
図3