(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定手段は、前記認識情報と、前記オブジェクト追跡情報とに基づいて、前記スポーツの進行状態の遷移に係る要因を特定することにより前記イベントを判定する請求項3記載の情報処理装置。
前記判定手段は、前記認識情報と、前記人物の行動が認識された際のタイミングに係るタイミング情報とに基づいて、前記イベントを判定する請求項1乃至5何れか1項記載の情報処理装置。
前記判定手段は、前記認識情報と、スポーツの進行中に集音された音声の音声データとに基づいて、前記イベントを判定する請求項1乃至7何れか1項記載の情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
<実施形態1>
本実施形態では、サッカー場で行われるサッカーのイベント記録システムについて説明する。
図1は、本実施形態におけるイベント記録システムの概要の一例を示す図である。
本実施形態におけるサッカーは、サッカー場で行われる11人対11人の競技であり、互いのチームのプレーヤーは、各々異なる色で構成されるユニフォームを着用している。また、審判及び副審二名によって試合は裁かれ、審判はピッチ内を、副審二名はサイドライン脇を移動する。
本実施形態におけるイベント記録システムは、サッカーの試合が始まると同時に映像の撮影を開始し、試合終了後に、行われた試合のイベント記録を出力する。以降、イベント記録システムが試合等の映像の撮影を開始してから試合終了後にイベント記録を出力するまでの一連の処理のことを、イベント記録処理という。
【0009】
本実施形態では、ピッチ102のサイドライン脇に、2つの魚眼カメラ101が予め定められた高さで設置されている。2つの魚眼カメラ101は、同じ高さで、ピッチのサイドラインからの距離が等距離であり、更に、光軸方向は正面、即ち、ピッチのエンドライン方向と一致させて配置されている。魚眼カメラ101と、ピッチ102との相対位置関係は、予め測定器を用いて測定されており、相対位置関係情報として記憶領域に記憶されている。また、記憶領域には、ピッチのサイズやピッチ上のゴールのサイズ等の情報を含む3次元情報(以下、ピッチ情報という)が予め記憶されている。魚眼カメラ101の映像データ(以下、単に映像という)は、デジタル信号ケーブル等を介して、イベント記録コンピュータ(以下、単にコンピュータという)104に入力される。なお、魚眼カメラ101の映像は、無線によりコンピュータ104に入力されてもよい。
また、サイドライン脇に、集音マイク103が設置されている。集音マイク103で集音された音声データ(以下、単に音声という)は、デジタル信号ケーブル等を介して、コンピュータ104に入力される。なお、集音マイク103で集音された音声は、無線によりコンピュータ104に入力されてもよい。
コンピュータ104は、魚眼カメラ101で撮影した映像に写る人物を追跡し、前記人物の行動を認識する。そして、コンピュータ104は、前記行動の認識結果(以下、認識情報という)に基づいて、撮影しているシーンにおいて生じるイベントを判定する。また、コンピュータ104は、イベントを判定する際に、集音マイク103で集音した音声を利用するようにしてもよい。
【0010】
図2は、本実施形態のイベント記録システムにおけるコンピュータ104のハードウェア構成等の一例を示す図である。
コンピュータ104は、制御部603、トラッキング部604、音声認識部605、行動認識部606、イベント分類部607及び記録部608を有する。
撮影部601は、ピッチ上の映像を撮影する2台の魚眼カメラ101で構成されている。
集音部602は、ピッチ上の音声を集音する集音マイク103で構成されている。
制御部603は、イベント記録システム全体を制御する。制御部603は、撮影部601を介して取得した映像や、集音部602を介して取得した音声に基づいて、各種の処理を実行する。
また、コンピュータ104が有するHD(HardDisk)等には、コンピュータ104が処理を実行する際に要する予め定められた設定値等のデータを含む各種のデータやプログラム等が記憶されている。
【0011】
トラッキング部604は、撮影された映像中のプレーヤー及び球技で用いられるボール(オブジェクト)等を追跡する。トラッキング部604が取得するプレーヤーの追跡情報は、人物追跡情報の一例である。また、トラッキング部604が取得するオブジェクトの追跡情報は、オブジェクト追跡情報の一例である。
音声認識部605は、取り込まれた音声から、審判の笛の音等を認識する。
行動認識部606は、撮影された映像から、ピッチ上のプレーヤー及び審判、サイドライン脇の副審の行動を認識する。行動認識部606による認識結果は、認識情報の一例である。
イベント分類部607は、制御部603を介して取得する各データに基づいて、ピッチ上で起こっているイベント、即ち、スポーツの進行中に生じたイベントの分類(判定)を行う。
記録部608は、撮影された映像や音声を記録したり、ピッチ上で起こっていると判定されたイベント情報を記録したりする。
なお、コンピュータ104の制御部603、トラッキング部604、音声認識部605、行動認識部606、イベント分類部607はソフトウェアで構成されていてもよい。即ち、コンピュータ104のCPUがHD等に記憶されているプログラムを実行することにより、制御部603、トラッキング部604、音声認識部605、行動認識部606、イベント分類部607の機能が実現さるようにしてもよい。また、コンピュータ104のCPUがHD等に記憶されているプログラムを実行することにより、後述するフローチャートに係る処理(情報処理)が実現されるようにしてもよい。
【0012】
図3は、魚眼カメラ101で撮影された映像の一例を示す図である。
範囲201は、コンピュータ104に取り込まれた映像の範囲を示している。また、範囲202は、魚眼カメラを介して撮影された映像の範囲を示している。範囲201と、範囲202との間の空間は、魚眼カメラ101を通した光が到達しない空白の領域であり、何も映っていない領域である。
魚眼カメラ101は、サイドライン脇から、ピッチ102の全体を広角に撮影することができる。
【0013】
次に、
図4の状態遷移図を用いて、サッカーの試合の状態及び各々の状態で起こりうるイベントについて説明する。
図4は、サッカーの進行状態の状態遷移の一例を示す図である。
サッカーの試合は前半、後半からなり、各々の時間は、キックオフによって開始される。キックオフがなされると試合はプレー中であるインプレー状態となり、その状態の中で、シュート、パス、トラップ、ドリブル、クリア、キャッチ、セーブ等、得点の奪取及び防御を目的としたプレーヤーによる様々なイベントが発生する。
インプレー状態から、ゴールやボールがピッチ外に出るアウトオブバウンズ、オフサイド、ファウル、前半終了、後半終了等といったイベントが起こると、試合はアウトオブプレー状態となる。アウトオブプレーの状態ではシュート等といったプレーヤーによるイベントは発生しない。
アウトオブプレーの状態からは、アウトオブプレーとなった際の状況に応じたリスタートがなされることによってインプレー状態へと復帰する。例えば、ゴールが決められてアウトオブプレー状態となった場合には、ゴールを決められたチームのキックオフによって試合がリスタートされ、インプレー状態となる。
このようなインプレー状態、アウトオブプレー状態、リスタートという状態遷移は、サッカーに限らず、他の競技にも多く見られるものである。このような状態遷移が生じるスポーツは、他に、テニス、バドミントン、卓球、柔道、剣道、ボクシング、バスケットボール、フットサル、ラグビー、バレーボール等がある。
【0014】
以下、本実施形態におけるサッカーのイベント記録システムの処理の流れについて説明する。
図5は、本実施形態におけるイベント記録処理の一例を示すフローチャートである。
本実施形態におけるコンピュータ104は、サッカーの試合開始と同時にイベント記録処理を開始する。
S801で、トラッキング部604は、トラッキングを開始する。S801の処理の詳細について、
図6を用いて説明する。
図6は、トラッキング処理の一例を示すフローチャートである。
S901からS904までの処理については、トラッキング部604が1台のカメラの映像を用いて処理を行う。S905の処理については、トラッキング部604が2台のカメラの映像を用いて処理を行う。
【0015】
S901で、トラッキング部604は、撮影部分の切り出しを行う。
図3に示されるように、制御部603に取り込まれる映像には空白の領域が含まれるため、トラッキング部604は、魚眼カメラ101を介して撮影された映像の範囲202を含む最小の矩形を切り出す。
S902で、トラッキング部604は、レンズ歪みの補正を行う。魚眼カメラ101を介して撮影された映像は大きく歪んでいるので、トラッキング部604は、レンズ歪みの補正を行うことで、その歪みをなくすことができる。
S903で、トラッキング部604は、背景差分法により、ピッチ上の人や物を際立たせる処理を行う。トラッキング部604は、予め撮影されて記憶領域に記憶されているピッチ上に何も存在していないときのピッチの画像と、撮影したピッチの映像との色を比較し、差のある部分だけを取り出す。この処理を行うことにより、トラッキング部604は、映像中から、ピッチ上に存在するプレーヤー、審判、ボールの領域だけを取り出すことができる。
【0016】
S904で、トラッキング部604は、プレーヤーの追跡を行う。以下、S904の処理について、
図7を用いて説明する。
図7は、撮影されたピッチの様子の一例を示す図である。
図7の(a)には、ボール301、プレーヤー302からプレーヤー304まで、審判303、副審305が示されている。
まず、トラッキング部604は、S903で際立たされたプレーヤー、審判、ボールを含む領域から、プレーヤー及び審判、即ち、人を検出する。映像領域中に人が含まれているかどうかを検出する方法には様々な方法があるが、本実施形態では、HOG特徴量を用いて人を検出する方法を用いる。HOG特徴量とは、局所領域の輝度の勾配方向と、強度とをヒストグラム化したものであり、人等のテクスチャの多様な物体に有効な特徴量である。
トラッキング部604は、S903で抽出した領域毎にHOG特徴量を用いた人検出を実行し、
図7の(b)のように、ピッチ上の人を囲むバウンディングボックスを定義することができる。
【0017】
次に、トラッキング部604は、定義したバウンディングボックス内の色ヒストグラムをバウンディングボックス毎に作成し、予め記憶領域に記憶しておいた審判及び両チームのプレーヤーの服装の色と比較する。これにより、トラッキング部604は、全てのバウンディングボックスをプレーヤーと、審判とに区別し、また、両チームのプレーヤーを区別することができる。更に、サッカーではゴールキーパーと、フィールドプレーヤーとの服装が異なるため、トラッキング部604は、プレーヤーのうちゴールキーパーと、フィールドプレーヤーとを区別することができる。
トラッキング部604は、以上の処理を映像中のフレーム毎に繰り返すことにより、ピッチ上の22人各々のプレーヤーの位置を画面上で検出することができる。各々のプレーヤーの位置はフレーム毎に少しずつ移動するため、トラッキング部604は、フレーム毎のプレーヤーの位置を追跡することで、プレーヤーの画面上での移動軌跡を描くことができる。
本実施形態では、トラッキング部604がHOG特徴量を用いた映像中からの人検出をフレーム毎に行うことにより映像中のプレーヤーの画面上での位置を求めるものとしたが、プレーヤーの画面上での位置はこれとは異なる方法で求めることもできる。例えば、トラッキング部604は、イベント記録処理が開始された直後のフレームにおいてのみHOG特徴量を用いた映像中の人検出を行う。そして、トラッキング部604は、以降のフレームにおいては、映像中の物体を、その特徴を学習しながら追跡する手法でプレーヤーの画面上での位置の軌跡を求めることができる。また、トラッキング部604は、SVM(Support Vector Machine)と、パーティクルフィルタとを用いてプレーヤーの画面上での軌跡を求めるようにしてもよい。
【0018】
次に、トラッキング部604は、求めたプレーヤーの画面上の位置から、各々のプレーヤーがピッチ上のどの位置にいるのかを算出する。以下、
図8を用いて詳細に説明する。
図8は、プレーヤー位置の算出過程の概要の一例を示す図である。
図8の(a)には、プレーヤーの位置算出に用いられる魚眼カメラ1801、魚眼カメラ1801の画像平面1803が示されている。また、
図8の(a)における座標系1802は、ピッチの端を原点にとり、サイドライン方向をX軸に、垂直情報をY軸に、エンドライン方向をZ軸とした右手系の座標系である。また、
図8の(a)には、画像平面上で検出されたプレーヤーAの位置1804、検出されたプレーヤーAの足元の位置1805が示されている。また、
図8の(a)には、カメラの焦点位置から画像平面上のプレーヤーAの足元の位置1805に向けて伸ばされた半直線1806が示されている。
ここで、半直線1806と、座標系1802のXZ平面との交差点1808は、プレーヤーAの足元の位置1807とほぼ一致する。これは、プレーヤーの跳躍力には限りがあり、その移動は地表面に限定されていることによる。トラッキング部604は、この過程をプレーヤーの数だけ繰り返すことで、プレーヤーが各々ピッチ上のどの位置にいるのかを計算することができる。
【0019】
図6の説明に戻る。
S905で、トラッキング部604は、ボールの追跡を行う。トラッキング部604は、ピッチ上のボールがどの位置にあるのかを算出する。ボールは選手とは異なりピッチ表面から離れることがあるため、トラッキング部604は、S904の処理とは異なる方法でボールの位置を求める。以下、
図8の(b)を用いて詳細に説明する。
S905において、トラッキング部604は、1台のカメラのみを用いたS904の処理とは異なり、2台のカメラを用いてボールの位置を求める。
図8の(b)には、2台の魚眼カメラ1801及び魚眼カメラ1814が示されている。2つの魚眼カメラは同じ高さにあり、光軸方向も一致しているため、トラッキング部604は、ステレオ法の1つである並行ステレオ法を利用することができる。また、
図8の(b)には、魚眼カメラ1801の画像平面1803上で検出されたボールの位置1809、魚眼カメラ1814の画像平面1815上で検出されたボールの位置1810が示されている。また、
図8の(b)には、魚眼カメラ1801の焦点位置から画像平面1803上のボールの位置1809に向けて伸ばされた半直線1811が示されている。また、魚眼カメラ1814の焦点位置から画像平面1815上のボールの位置1810に向けて伸ばされた半直線1812が示されている。トラッキング部604は、半直線1811と、半直線1812との交点1813の位置を求めることにより、ボール1816の位置を求めることができる。
【0020】
図6の説明に戻る。
S906で、トラッキング部604は、トラッキングを終了するか否かを判定する。トラッキング部604は、コンピュータ104がイベント記録処理を実行している限りはトラッキングを続ける。即ち、トラッキング部604は、S901からS905までの処理を繰り返す。
以上の処理により、トラッキングされたプレーヤー及びボールの位置は、
図9のように表現することができる。
図9は、トラッキング結果の一例を示す図である。
図9において、丸印で囲まれた数字401は、あるチームの該当する背番号を付けたプレーヤーのピッチ上での位置を示している。また、四角で囲まれた数字402は、対抗するチームの該当する背番号を付けたプレーヤーのピッチ上での位置を示している。また、黒印403は、ボールのピッチ上での位置を示している。コンピュータ104は、イベント記録処理の実行中、
図9に示されるグラフィック表現をコンピュータ104の画面上に表示する。
以上、S801の処理について説明した。
【0021】
S802で、制御部603は、リスタート判定を行う。サッカーでは、試合は常にリスタートの一種であるキックオフから開始される。S802の処理の詳細について、
図10を用いて説明する。
図10は、リスタート判定に関する処理の一例を示すフローチャートである。
S1501で、制御部603は、アウトオブプレー、即ち、プレー中断のきっかけが何であるかを判定する。全てのスポーツにおいて、プレー中断と、その再開方法とはルールによって定められている。
試合が開始する場合、後半が開始する場合、ゴールが決まった場合には、キックオフから再開となるため、S1502で、制御部603は、キックオフ判定を行う。
ボールがサイドラインを割った場合には、スローインから再開されるため、S1503で、制御部603は、スローイン判定を行う。
ボールがエンドラインを割った場合には、最後にボールに誰が触れたかによってゴールキック又はコーナーキックから再開となる。そのため、S1504で、制御部603は、ゴールキック判定を行う。また、S1505で、制御部603は、コーナーキック判定を行う。
【0022】
ファウルやオフサイドにより試合が中断された場合には、フリーキックから再開されるため、S1506で、制御部603は、フリーキック判定を行う。
ペナルティエリア内での守り手側のファウルで中断された場合には、ペナルティキックから再開されるため、S1507で、制御部603は、PK判定を行う。
以上のリスタート判定方法のうち、S1502のキックオフ判定の処理の流れと、S1503のスローイン判定の処理の流れとについて、
図11及び
図12のフローチャートを用いて説明する。その他のリスタートの判定方法については説明を省略する。
【0023】
図11は、キックオフ判定の処理の一例を示すフローチャートである。
S1601で、制御部603は、ボールがピッチ中央で静止しているか否か判定し、静止していると判定した場合、処理をS1602に進め、静止していないと判定した場合、S1601の処理を繰り返す。より具体的にいうと、制御部603は、トラッキング部604によるトラッキングの結果(以下、トラッキング情報という)に基づいてボールの動きを判定する。
S1602で、制御部603は、審判の笛が吹かれたか否かを判定し、吹かれたと判定した場合、処理をS1603に進め、吹かれていないと判定した場合、S1602の処理を繰り返す。より具体的にいうと、制御部603は、音声認識部605が集音部602を介して審判の笛の音を認識した場合、審判の笛が吹かれたと判定する。なお、ルール上、キックオフ時には必ず審判が笛を吹くものと定められている。
S1603で、制御部603は、ボールがピッチ中央から動き出したか否かを判定し、動き出したと判定した場合、キックオフ判定を終了する。即ち、制御部603は、試合がインプレー状態に移行したと判定し、処理をS803に進める。一方、制御部603は、ボールがピッチ中央から動き出していないと判定した場合、S1603の処理を繰り返す。
【0024】
図12は、スローイン判定の処理の一例を示すフローチャートである。
S1701で、制御部603は、アウトオブバウンズとなった地点、即ち、ボールがサイドラインから飛び出した地点付近に、プレーヤーが出現したか否かを判定し、出現したと判定した場合、処理をS1702に進める。一方、制御部603は、出現しなかったと判定した場合、S1701の処理を繰り返す。より具体的にいうと、制御部603は、トラッキング部604によるトラッキング情報に基づいてプレーヤーの出現を判定する。また、ここでいうボールがサイドラインから飛び出した地点付近とは、ボールがサイドラインから飛び出した地点から予め定められた距離内の位置のことをいう。
S1702で、制御部603は、出現したプレーヤーがスローインを行ったか否かを判定し、行ったと判定した場合、処理をS1703に進め、行っていないと判定した場合、S1702の処理を繰り返す。より具体的にいうと、行動認識部606は、プレーヤーの行動を認識(判定)する。そして、制御部603は、行動認識部606による認識情報から、出現したプレーヤーがスローインを行ったか否かを判定する。プレーヤーがスローインアクションを行った場合にも、プレーヤーがフェイントを行い実際にはボールを投げていない場合がある。そのため、制御部603は、実際のボールの動きに基づいて、実際にスローインが行われたか否かを判定する。より具体的にいうと、制御部603は、トラッキング部604によるボールのトラッキング情報から、実際にスローインが行われたか否かを判定する。行動認識部606による行動判定処理の詳細については、
図15等を用いて後述する。
【0025】
S1703で、制御部603は、ボールがピッチ内で動き出したか否かを判定し、動き出したと判定した場合、スローイン判定を終了する。即ち、制御部603は、試合がインプレー状態に移行したと判定し、処理をS803に進める。一方、制御部603は、ボールがピッチ内で動き出していないと判定した場合、処理をS1702に戻す。
以上、リスタート判定のうち、キックオフ判定と、スローイン判定との処理手順について説明した。なお、制御部603は、説明を省略したゴールキック判定、コーナーキック判定、フリーキック判定及びPK判定についても、予め定められた判定手順によりインプレー状態への移行を判定することができる。
【0026】
図5の説明に戻る。
S803で、制御部603は、インプレー判定を行う。S803の処理の詳細について、
図13を用いて説明する。
図13は、インプレー判定処理の一例を示すフローチャートである。
S1001で、制御部603は、ボールと、人との接触があったか否かを、トラッキング部604によるトラッキング情報から判定し、接触があったと判定した場合、処理をS1002に進め、接触がなかったと判定した場合、処理をS1003に進める。インプレー状態においては、パスやドリブル、シュート等、イベントが起こるのはボールと、プレーヤーとの接触があった場合である。ボールと、プレーヤーとの接触がない時間帯や、ボールが転がっている時間等では、アウトオブプレーとなる場合を除いてイベントは発生しない。
【0027】
上述したように、制御部603は、トラッキング部604によるトラッキング情報に基づいて、ボールと、人との接触があったか否かを判定することができる。まず、トラッキング部604は、
図9のように表現されるピッチ上のプレーヤーの位置と、ボールの軌道とから、ボールがプレーヤーの近辺を通過する瞬間又はプレーヤーに接触する瞬間(タイミング)を割り出す。更に、トラッキング部604は、割り出した瞬間における前後の予め定められた時間において、ボールの動きベクトルに変化があるか否かを判定する。ここで、トラッキング部604は、ボールの動きベクトルを、逐一トラッキングしているボールの位置情報を使って求めることができる。トラッキング部604は、動きベクトルに予め定められた閾値よりも大きな変化がある場合には、ボールと、プレーヤーとの間に接触があったものと認識することができる。
制御部603は、S1001の判定処理の際に、
図14に示されるイベント情報テーブルの時間と、接触者とについて記述し、記録部608に記憶する。
図14は、イベント情報テーブルの一例を示す図である。
【0028】
図13の説明に戻る。
S1002で、イベント分類部607は、イベントの内容を判定する。S1002の処理の詳細について、
図15を用いて説明する。
図15は、イベントの内容判定処理の一例を示すフローチャートである。
S1201で、制御部603は、ボールに接触したのが誰かを判定する。より具体的にいうと、制御部603は、ボールに接触したのがフィールドプレーヤーであるか、ゴールキーパーであるかを判定し、フィールドプレーヤーであると判定した場合、処理をS1202に進める。一方、制御部603は、ゴールキーパーであると判定した場合、処理をS1204に進める。ここで、制御部603は、
図14に示されるイベント情報テーブルの接触者の情報を参照することによって判定する。
S1202で、行動認識部606は、プレーヤーの行動判定を行う。より具体的にいうと、行動認識部606は、ボールがプレーヤーに接触した瞬間、プレーヤーがどのような行動をとっていたかを判定する。サッカーでは、このようなフィールドプレーヤーの行動の種類として、キック、ヘディング、胸トラップ、足トラップ、スライディング等がある。その他、単にフィールドプレーヤーの体にボールが当たり、プレーヤーは何の行動もしていない場合もある。行動認識部606は、上述の行動を判定し、処理をS1203に進める。この際、制御部603は、行動認識部606によるプレーヤーの行動判定結果に基づいて、
図14に示されるイベント情報テーブルの行動種別について記述することができる。
【0029】
上述の行動判定は、以下のような手順で行われる。
上述したように、トラッキング部604は、S904でプレーヤーの位置を追跡し、
図7の(b)に示されるように映像上の人物を囲むバウンディングボックス306、307、308、309を定義している。このバウンディングボックスは、映像上の各人の移動に伴って移動する。
バウンディングボックス内の映像から、その映像の特徴量を求めて、バウンディングボックス内の人がどのような行動を行っているかを求める技術が知られている。この技術は、人を囲んだバウンディングボックス内の映像からオプティカルフローを算出し、その値からモーション記述子を算定する。更に、この技術は、算定した記述子と、記憶領域に記憶されている予め分類された人の行動のモーション記述子とを比較することによって人の行動を分類している。この技術では、予め人が様々な行動を行っている映像を収集し、その映像を使って、様々な行動のモーション記述子を算定しておく必要がある。なお、ここでいう様々な行動としては、人がとり得るあらゆる行動を考慮する必要はなく、サッカーの試合中にとり得る行動のみを対象とすればよい。
【0030】
図16は、プレーヤーがサッカーの試合中にとり得る行動の一例を示した図である。
図16に示される行動に関する情報は、行動情報の一例である。
サッカーでは、フィールドプレーヤーと、ゴールキーパーとのとり得る行動には差がある。即ち、プレーヤーの種別(属性)に応じて、とり得る行動に差がある。そのため、コンピュータ104は、予め
図16に示されるような行動を行っている映像を収集して行動毎に分類し、各々のモーション記述子を算定しておく。これにより、行動認識部606は、S1202の処理においてプレーヤーの行動判定を行うことができる。
行動認識部606によるプレーヤーの行動判定は、上述した方法に限る必要はない。例えば、CHLAC(Cubic High order Local Auto Correlation)特徴量を用いてプレーヤーの行動を判定する技術が知られている。CHLAC特徴量とは物体の動きや形状を表すことができる特徴量であり、人間の動作のように時空間中を連続的に変化する動きに適した特徴量である。また、人の動きのみならず、人の動きに関連するボール等のオブジェクトを認識し、学習することによって人の行動を判定する技術が知られている。行動認識部606は、これらの技術を用いて、映像中から人及びボールを認識し、プレーヤーの行動を判定することができる。
【0031】
S1204で、行動認識部606は、ゴールキーパーの行動判定を行う。ゴールキーパーは、フィールドプレーヤーの行う行動に加えて、ボールをキャッチする行動も行い得る。そのため、行動認識部606は、
図16に示されるように行動判定の選択肢としてキャッチも含めて行動を判定する。
S1203で、イベント分類部607は、フィールドプレーヤーのイベント内容の判定を行う。サッカーでは、例えばプレーヤーがキックを行った場合、その行動内容だけではイベント内容がシュートであるかパスであるかわからない。そのため、イベント分類部607は、S1203においてフィールドプレーヤーの行動以外の情報も参照してフィールドプレーヤーのイベント内容を判定する。S1203の処理の詳細について、
図17を用いて説明する。
図17は、フィールドプレーヤーのイベント内容判定処理の一例を示すフローチャートである。
S1301で、イベント分類部607は、S1202でプレーヤー行動がどう判定されたかについて、
図14のイベント情報テーブルを参照する。そして、イベント分類部607は、参照の結果、プレーヤーの行動がキック若しくはヘディングである場合、処理をS1309に進め、胸トラップ若しくは足トラップである場合、処理をS1307に進める。また、イベント分類部607は、参照の結果、スライディングである場合、処理をS1304に進め、行動が上記の何れでもない場合、処理をS1302に進める。
【0032】
S1302で、イベント分類部607は、1つ前のイベントが何であったかを
図14のイベント情報テーブルの1つ上の行を参照することにより判定する。イベント分類部607が処理をS1302に進める場合というのは、プレーヤーは何の行動もしていないが、ボールには接触していたという場合である。そのような事態が起こり得るのは、ボールがプレーヤーに向かって飛んできて、プレーヤーに当たってしまったという場合である。1つ前のイベントが、敵チーム側のパス若しくはシュートである場合、このようなプレーは有効なプレーの1つであるため、イベント分類部607は、処理をS1303に進め、起こったイベントを「ブロック」と判定する。それ以外の場合、イベント分類部607は、何のイベントが起こったものとも判定せず、イベント内容判定を終了する。
S1304で、イベント分類部607は、プレーヤーの行動後にボールがどこに移動したかを、
図14のイベント情報テーブルの1つ下の行を参照することにより判定する。イベント分類部607が処理をS1304に進める場合というのは、プレーヤーがスライディングを行い、ボールに接触した場合である。プレーヤーがスライディングを行い、ボールを味方チームのものとしたプレーは有効なプレーの1つであるため、イベント分類部607は、処理をS1305に進め、起こったイベントを「成功タックル」と判定する。また、味方プレーヤー以外にボールが渡った場合、イベント分類部607は、処理をS1306に進め、起こったイベントを「失敗タックル」と判定する。
【0033】
S1307で、イベント分類部607は、起こったイベントを「トラップ」と判定し、イベント内容判定を終了する。
S1309で、イベント分類部607は、ボールをキック若しくはヘディングしたプレーヤーにシュートの意図があったか否かを判定するため、キック若しくはヘディング後のボールの軌道をトラッキング部604によるトラッキング情報によりチェックする。イベント分類部607は、キック若しくはヘディング後のボールが、ゴール方向に向かって、予め定められた速度以上で打ち出されていれば、プレーヤーにはシュートの意図があったものと判定する。
図18は、ボールの軌道判定に関する説明の概要の一例を示す図である。
図18に示されるピッチは、上空から見た上面図として描かれている。
図18には、ボール1901と、ゴール1902とが示されている。また、
図18には、ボールか1901からゴール1902の左端に向けて引かれた直線1904、ボールか1901からゴール1902の右端に向けて引かれた直線1905が示されている。
イベント分類部607は、ボールの移動ベクトルのうちピッチ面に平行な成分1903が直線1904及び直線1905の間に収まる場合、又は収まらない場合でも角度のずれが30度以内に収まる場合、ボールの軌道はゴール方向に向かっているものとする。
【0034】
また、サッカーにおけるプレーヤーは、相手ゴールからの距離が遠くなるほど、より早い速度でボールを蹴り出す場合がある。一方、プレーヤーは、相手ゴールの近くでは、ゴールに流し込むようにボールを蹴り出す場合がある。サッカーの場合、トッププレーヤーのキックによって蹴り出されるボールの最高速度は約30〜35m/s程度とされている。
そのため、S1309で、イベント分類部607は、蹴り出された直後のボールの速度が15m/s以上であれば、プレーヤーにシュートの意図があったものと判定する。また、イベント分類部607は、前記ボールの速度が15m/s未満の場合であっても、ゴールラインまで1秒以内に到達する速度で蹴り出された場合には、プレーヤーにシュートの意図があったものと判定する。なお、イベント分類部607が判定を行う際の閾値は上記の値に限る必要はなく、ユーザが任意に設定することができる。
S1309で、イベント分類部607は、プレーヤーの行動後のボールの軌道がゴール方向に向かい、ボールの速度が予め定められた速度以上であり、シュートであるものと判定した場合、処理をS1310に進める。一方、イベント分類部607は、シュートでないものと判定した場合、処理をS1313に進める。
【0035】
サッカーでは、試合内容の統計がとられる場合、シュートの数がカウントされる際に、そのシュートがゴール枠内に飛んだものであるか、ゴール枠外に飛んだものであるかも併せてカウントされる場合が多い。S1310で、イベント分類部607は、シュート後にボールがゴール枠内に飛んだ枠内シュートであるか、ゴール枠外に飛んだ枠外シュートであるかを判定する。
本実施形態において、イベント分類部607は、プレーヤーがボールを蹴り出した直後のボールが、重力加速度を受ける等加速度運動をするものとしてその軌道を推測し、軌道がゴール枠内に向かうか、ゴール枠外に向かうかを判定するものとする。イベント分類部607は、起動が枠内に向かうと判定した場合、処理をS1311に進め、起こったイベントを「枠内シュート」として判定する。また、イベント分類部607は、起動が枠外に向かうと判定した場合、処理をS1312に進め、起こったイベントを「枠外シュート」として判定する。
【0036】
プレーヤーがボールをキック又はヘディングでボールを打ち出した場合であって、その動作がシュートではない場合、イベント分類部607は、S1313の処理を実行する。サッカーでは、このような場合として、パス、ドリブル、クリアの3つの場合がある。
S1313で、イベント分類部607は、プレーヤーの行動後にボールがどこにたどり着いたかを、
図14のイベント情報テーブルの1つ下の行を参照することにより判定する。イベント分類部607は、ボールが味方プレーヤーにたどり着いたと判定した場合、処理をS1314に進め、起こったイベントを「成功パス」として判定する。また、イベント分類部607は、ボールが再びプレーヤー自身に触れたと判定した場合、処理をS1315に進め、起こったイベントを「ドリブル」として判定する。また、イベント分類部607は、ボールが相手のプレーヤーにたどり着いたと判定した場合、処理をS1316に進める。
【0037】
S1316で、イベント分類部607は、プレーヤーの行動地点がどこであるのか判定し、行動地点がペナルティエリア内であると判定した場合、処理をS1318に進める。一方、イベント分類部607は、プレーヤーの行動地点がペナルティエリア内以外であると判定した場合、処理をS1317に進め、起こったイベントを「失敗パス」と判定する。
S1318で、イベント分類部607は、1つ前のイベントが何であったかを、
図14のイベント情報テーブルの1つ上の行を参照することによって判定する。イベント分類部607は、1つ前のイベントが敵チーム側のパス若しくはシュートであったと判定した場合、処理をS1319に進め、起こったイベントを「クリア」と判定する。一方、イベント分類部607は、1つ前のイベントが敵チーム側のパス若しくはシュート以外であったと判定した場合、処理をS1317に進め、起こったイベントを「失敗パス」と判定する。ここで、「クリア」とは、ゴールされないようにボールを跳ね返すというイベントであり、プレーヤーにとってマイナスの評価が付される「失敗パス」とは別のイベントとして区別される。
イベント分類部607は、以上の処理によりイベントを判定することができ、判定したイベントのイベント情報に基づいて、
図14に示すイベント情報テーブルのようなダイジェストとして作成することができる。そして、制御部603は、イベント分類部607で作成されたイベント情報テーブルを記録部608に記録する。これにより、ユーザは、イベント情報を有効利用することができる。
以上、
図17を用いて、S1203のフィールドプレーヤーのイベント内容判定処理について説明した。
【0038】
図15の説明に戻る。
S1205で、イベント分類部607は、ゴールキーパーのイベント内容判定を行う。
図19は、S1205のゴールキーパーのイベント内容判定処理の一例を示すフローチャートである。
S1401で、イベント分類部607は、S1301の処理と同様に、プレーヤーの行動が何であったのかを判定し、キックやヘディングが行われたと判定した場合、フィールドプレーヤーと同等のプレーが行われたものとみなし、処理をS1203に進める。そして、イベント分類部607は、
図17を用いて説明したフィールドプレーヤーのイベント内容判定を行う。また、イベント分類部607は、キャッチが行われたと判定した場合、処理をS1402に進め、イベントを「キャッチ」と判定する。また、イベント分類部607は、その他の行動、例えば敵チームのシュートを体に当ててはじいたような行動であると判定した場合、処理をS1403に進め、イベントを「セーブ」と判定する。
以上、S1002のイベント内容判定処理について説明した。
【0039】
図13の説明に戻る。
S1003で、イベント分類部607は、アウトオブプレーの判定、即ち、インプレーの状態から試合が停止するアウトオブプレーの状態となった際の要因(イベント)を判定する。
図20は、S1003のアウトオブプレー判定処理の一例を示すフローチャートである。
サッカーでは、インプレーの状態から予め定められた条件が満たされると、プレーが止まるアウトオブプレーの状態となる。
S1101で、イベント分類部607は、トラッキング部604によるトラッキング情報と、予め記憶されているピッチ情報とに基づいて、ボールがピッチの外に出たか否かを判定する。そして、イベント分類部607は、ピッチの外に出たと判定した場合、処理をS1108に進め、出ていないと判定した場合、処理をS1102に進める。
【0040】
S1102で、イベント分類部607は、審判の笛が吹かれたか否かを判定する。より具体的にいうと、音声認識部605が集音部602を介してピッチ上の音を認識する。そして、イベント分類部607は、音声認識部605による音声の認識情報に基づいて、審判の笛が吹かれたか否かを判定する。
サッカーでは、アウトオブプレーとなる場合に笛が吹かれる場合があり、反則等の場合には笛が1回吹かれ、前半終了の場合には2回、後半終了の場合には3回吹かれる。S1102で、イベント分類部607は、音声認識部605による音声の認識情報から審判の笛が1回吹かれたと判定した場合、処理をS1105へ進める。また、イベント分類部607は、音声認識部605による音声の認識情報から審判の笛が2回以上吹かれたと判定した場合、処理をS1103に進める。また、イベント分類部607は、音声認識部605による音声の認識情報から審判の笛の音が認識されなかったと判定した場合、アウトオブプレーとならなかったものと判定し、アウトオブプレー判定を終了する。
【0041】
S1103で、イベント分類部607は、時間が終了時間近辺であるか否か判定する。ここでいう終了時間近辺とは、終了時間から予め定められた時間内であることを意味する。サッカーは通常45分ハーフであるため、本実施形態では、試合開始から45分又は後半開始から45分が経過している場合、イベント分類部607は、処理をS1104に進める。一方、イベント分類部607は、試合開始から45分経過していない場合や後半開始から45分経過していない場合、処理をS1109に進める。
S1104で、イベント分類部607は、「前半又は後半終了」によりアウトオブプレーとなったと判定する。このように、イベント分類部607は、対象とする人物が行動を行ったタイミング(タイミング情報)を加味してイベントを判定することができる。
S1105で、イベント分類部607は、行動認識部606による認識情報に基づいて、副審が旗を上げているか否かを判定し、上げていると判定した場合、処理をS1106に進め、上げていないと判定した場合、処理をS1107に進める。サッカーでは、副審はピッチのサイドラインに沿ってサイドライン外側を移動し、目視でオフサイドの判定を行い、オフサイドである場合には手に持っている旗を頭上に上げるジェスチャを行う。
S1106で、イベント分類部607は、「オフサイド」によりアウトオブプレーとなったと判定する。
S1107で、イベント分類部607は、「ファウル」によりアウトオブプレーとなったと判定する。
【0042】
S1108では、イベント分類部607は、トラッキング部604によるトラッキング情報と、予め記憶されているピッチ情報とに基づいて、ボールがゴールの中に入ったか否かを判定する。イベント分類部607は、ボールがゴールの中に入ったと判定した場合、処理をS1109に進め、入っていないと判定した場合、処理をS1111に進める。
S1109で、イベント分類部607は、行動認識部606による認識情報に基づいて、審判の行動を判定する。サッカーの場合、ボールがゴールに入った場合であって必ずしも得点が入ったものになるとは限らず、例えばファウルやオフサイドにより得点が認められない場合がある。審判は、得点が決まった場合にはセンターサークルに向けて片手を上げるジェスチャを行い、センターサークル方向に移動する。イベント分類部607は、行動認識部606による認識情報から、上記のような行動があったと判定した場合、処理をS1110に進め、上記のような行動がなかったと判定した場合、処理をS1105に戻す。
S1110で、イベント分類部607は、「ゴール」によりアウトオブプレーとなったと判定する。
イベント分類部607は、以上の処理により判定したイベントのイベント情報に基づいて、
図14に示すイベント情報テーブルのようなダイジェストとして作成することができる。そして、制御部603は、イベント分類部607で作成されたイベント情報テーブルを記録部608に記録する。これにより、ユーザは、イベント情報を有効利用することができる。
以上、
図20を用いて、S1003のアウトオブプレー判定処理について説明した。また、
図13を用いて、S803のインプレー判定処理について説明した。
【0043】
図5の説明に戻る。
S804で、制御部603は、
図20の判定結果に基づいて、アウトオブプレーとなったか否かを判定し、アウトオブプレーとなったと判定した場合、処理をS802に戻し、アウトオブプレーとなっていないと判定した場合、処理をS805に進める。
S805で、制御部603は、試合終了となったか否かを判定し、試合終了となったと判定した場合、イベント記録処理を終了し、試合終了となっていないと判定した場合、処理をS803に戻す。
以上、本実施形態におけるサッカーのイベント記録システムの構成及び処理の流れについて説明した。本実施形態のイベント記録システムによれば、人の手を介さず、サッカーの競技中におけるイベントを自動で判定することができ、更に、判定したイベントのダイジェストを作成することができる。
【0044】
<実施形態2>
本実施形態では、バスケットボールのイベント記録システムについて説明する。
図21は、本実施形態におけるイベント記録システムの概要の一例を示す図である。
本実施形態におけるバスケットボールは、体育館内で行われる5人対5人の競技であり、互いのチームは各々異なる色で構成されるユニフォームを着用している。また、審判及び副審によって試合は裁かれ、いずれの審判もピッチ内を移動する。
コート2105のコーナーの一角に、2つのカメラ2101、カメラ2102が予め定められた高さで設置されている。カメラ2101及びカメラ2102の2つのカメラは、同じ高さに設置されている。また、カメラ2101及びカメラ2102と、コート2105との相対位置関係は、予め測定器を用いて測定されており、相対位置関係情報として記憶領域に記憶されている。また、記憶領域には、コート2105のサイズやコート2105上のゴールのサイズ等の情報を含む3次元情報(以下、コート情報という)が予め記憶されている。
【0045】
カメラ2101及びカメラ2102の映像は、デジタル信号ケーブル等を介して、コンピュータ104に入力される。なお、カメラ2101及びカメラ2102の映像は、無線によりコンピュータ104に入力されてもよい。
カメラ2101及びカメラ2102は、設置された位置の反対側にあるハーフコートを視界に収めている。また、カメラ2103及び2104は、カメラ2101及びカメラ2102が設置されている同サイドの、反対側のコーナーに配置されており、設置された位置の反対側にあるハーフコートを視界に収めている。
本実施形態におけるイベント記録システムの構成は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。また、本実施形態におけるイベント記録システムの基本的な処理の流れは、
図5と同様である。
【0046】
以下、
図5を用いて、本実施形態における処理について説明する。
S801で、トラッキング部604は、トラッキング処理を行う。本実施形態で、トラッキング部604は、実施形態1のように2台の魚眼カメラによりトラッキングを行うのではなく、4台のカメラにより
図6のトラッキング処理を行う。この際、各々のコーナーに置かれた2台の組となるカメラは、各々反対側のハーフコートが収まるように撮影する。
トラッキング部604は、各々のカメラの組について撮影されているハーフコートを対象として、実施形態1と同様に
図6のフローチャートの処理を行う。即ち、本実施形態で実行されるイベント記録処理では、トラッキング部604が、
図6に示される処理を各々のカメラの組について1つずつ実行する。
図6の処理の詳細については、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0047】
S802以降の処理は、実施形態1で説明した処理をバスケットボールに適用した処理となる。S802以降の処理の詳細については、説明を省略する。
図22は、バスケットボールの進行状態の状態遷移の一例を示す図である。
コンピュータ104は、
図22の状態遷移図に示される項目に従って、
図13のインプレー判定、
図20のアウトオブプレー判定、
図15のイベント内容判定、
図10のリスタート判定を行う。これにより、本実施形態のイベント記録システムにおけるコンピュータ104は、バスケットボールのプレー中に起こるイベントを自動で判定して、記録することができる。
これらの判定の際に、サッカーと大きく異なる点として留意すべき点は、バスケットボールではフィールドプレーヤーが全て同等であり、ゴールキーパーのように他のプレーヤーと異なる行動を行うプレーヤーが存在しないという点である。そのため、行動認識部606は、実施形態1で行っていたようにフィールドプレーヤーと、ゴールキーパーとを区別して行動判定を行う必要がない。
本実施形態のイベント記録システムは、サッカーやバスケットボール等のようにフィールドを2チームのプレーヤーが移動し、ボール若しくはそれに準ずるものを用いて一定時間の間に得点を競い合うスポーツに関して同様に処理をすることができる。そのようなスポーツとしては、他に、フットサル、ラグビー、アイスホッケー、ハンドボール、ホッケー、水球等がある。
以上、本実施形態のイベント記録システムによれば、撮影するスポーツに応じて柔軟にイベント判定し、ダイジェストを作成することができる。
【0048】
<実施形態3>
本実施形態では、バレーボールのイベント記録システムについて説明する。
図23は、本実施形態におけるイベント記録システムの概要の一例を示す図である。
本実施形態におけるバレーボールは、体育館内で行われる6人対6人の競技であり、互いのチームは各々異なる色で構成されるユニフォームを着用している。また、主審及び副審、更に2名若しくは4名の線審によって試合は裁かれ、何れの審判もピッチ外に位置し、移動しない。主審は、コート中央の一方の支柱の近くに設置された審判台に上がる。
図23には、コート2201、ネット2202、アタックライン2203が示されている。
本実施形態では、コート2201のサイドライン脇に、2つの魚眼カメラ101が予め定められた高さで設置されている。2つの魚眼カメラ101は、同じ高さで、コート2201のサイドラインからの距離が等距離であり、更に、光軸方向は正面、即ち、コートのエンドライン方向と一致させて配置されている。魚眼カメラ101と、コート2201との相対位置関係は、予め測定器を用いて測定されており、相対位置関係情報として記憶領域に記憶されている。また、記憶領域には、コート2201のサイズやネット2202のサイズ等の情報を含む3次元情報(以下、コート情報という)が予め記憶されている。魚眼カメラ101の映像は、デジタル信号ケーブル等を介して、コンピュータという104に入力される。なお、魚眼カメラ101の映像は、無線によりコンピュータ104に入力されてもよい。
本実施形態におけるイベント記録システムの構成は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0049】
以下、本実施形態の処理について、
図24を用いて説明する。
図24は、本実施形態における処理の一例を示すフローチャートである。
S2401処理は、S801の処理と同様であるため説明を省略する。
図25は、バレーボールの進行状態の状態遷移の一例を示す図である。
コンピュータ104は、
図25の状態遷移図に示される項目に従って、以降の処理を実行する。
S2402で、制御部603は、サーブ判定を行う。S2402の処理の詳細について、
図26を用いて説明する。
図26は、サーブ判定処理の一例を示すフローチャートである。
S2501で、制御部603は、トラッキング部604によるトラッキング情報と、予め記憶されているコート情報とに基づいて、サービスゾーンにプレーヤーが現れたか否かを判定し、現れたと判定した場合、処理をS2502に進める。一方、制御部603は、サービスゾーンにプレーヤーが現れなかったと判定した場合、S2501の処理を繰り返す。ここで、サービスゾーンとは、コートのエンドラインの後方であり、プレーヤーがサーブを行う位置である。
【0050】
S2502で、制御部603は、プレーヤーがサービスを行う行動を行ったか否かを判定する。より具体的にいうと、行動認識部606は、プレーヤーの行動を認識(判定)する。そして、制御部603は、行動認識部606による認識情報から、プレーヤーがサービスを行う行動を行ったか否かを判定する。バレーボールのサービスには複数の打ち方が存在し、大きく分けて、アンダーハンドサービス、サイドハンドサービス、オーバーハンドサービス、ジャンプサービスがある。S2502で、制御部603は、プレーヤーがこれらの行動を行ったか否かを判定し、行ったと判定した場合、処理をS2503に進め、行っていないと判定した場合、S2502の処理を繰り返す。
S2503で、制御部603は、トラッキング部604によるトラッキング情報から、ボールがコート内で動き出したか否かを判定し、動き出したと判定した場合、サーブ判定処理を終了する。一方、制御部603は、ボールがコート内で動き出していないと判定した場合、処理をS2502に戻す。
【0051】
図24の説明に戻る。
S2403で、制御部603は、インプレー判定を行う。S2403の処理の詳細について、
図27を用いて説明する。
図27は、インプレー判定処理の一例を示す図である。
S2601で、制御部603は、ボールと、人との接触があったか否かを、トラッキング部604によるトラッキング情報から判定し、接触があったと判定した場合、処理をS2602に進め、接触がなかったと判定した場合、処理をS2605に進める。なお、トラッキング部604は、実施形態1で説明したように動きベクトルを用いて前記接触を認識する。
S2602で、行動認識部606は、プレーヤーの行動判定を行う。バレーボールにおけるプレーヤーの行動としては、ブロック、アンダーハンドパス、アンダーハンドレシーブ、オーバーハンドパス、オーバーハンドレシーブ、ワンハンドパス、ワンハンドレシーブ、スパイク等がある。ここで、パスと、レシーブとは、ボールが敵又は味方のどちらから来たかにより、プレーヤーが同じ行動を行っていても違う名称で呼ばれる。
【0052】
S2603で、制御部603は、行動認識部606による認識情報から、プレーヤーがスパイクしたか否かを判定し、スパイクしたと判定した場合、処理をS2604に進め、スパイク以外の他の行動をしたと判定した場合、処理をS2605に進める。
S2604で、制御部603は、スパイクを行ったプレーヤーのトラッキング情報を参照し、プレーヤーがどの位置でジャンプをしたか判定する。バレーでは、ネット2202を正面に見て、アタックライン2203より後方でジャンプしたスパイクは、バックアタックと呼ばれる。即ち、S2604で、制御部603がプレーヤーのジャンプ位置を判定することにより、プレーヤーがバックアタックしたか否かを判定することができる。
S2605で、制御部603は、トラッキング部604によるトラッキング情報と、予め記憶されているコート情報とから、ボールが終着した位置を判定する。バレーボールでは、プレーヤーがボールに触れた後のボールが終着する領域として、敵コート内、敵の体、味方の体、味方コート内、コート外の5つの領域がある。
【0053】
S2606で、イベント分類部607は、イベント内容の判定を行う。より具体的にいうと、イベント分類部607は、S2606までの処理で取得した情報から、イベントをサーブ、レシーブ、パス、ブロック、アタック、バックアタックの6つに分類し、各々のプレーが成功であったか否かを判定する。ここで、レシーブとは、相手側が最後に触れたボールに触れることである。パスとは、味方が最後に触れたボールに触れることである。アタックとは、相手側のコートにボールを打ち込むことである。イベント分類部607は、このような判定を行い、判定結果に基づいて、
図28に示されるようなイベント情報テーブルを作成する。
図28は、イベント情報テーブルの一例を示す図である。また、上述したように、イベント分類部607は、プレーヤーが行動を行った位置(位置情報)を加味してイベントを判定することができる。
S2607で、制御部603は、トラッキング部604によるトラッキング情報と、予め記憶されているコート情報とから、ボールがコート外若しくはコート面に着いたか否かを判定する。ボールがコート外若しくはコート面に着いたら何れかの得点が記録されプレーが終了するため、制御部603は、インプレー判定をいったん終了する。プレーが続行されていれば、制御部603は、処理をS2601に戻し、次のプレーの判定を行う。
以上、
図27を用いて、S2403のインプレー判定について説明した。
【0054】
図24の説明に戻る。
S2404で、制御部603は、行動認識部606による認識情報から、主審の行動を判定する。バレーボールでは、主審は、得点後に次のサーブとなる側に手を上げる。また、主審は、得点後にセットが終了した場合、両手を胸の前で交差する。S2403で、制御部603は、主審がこれらの行動を行ったか否かを判定する。
S2405で、制御部603は、試合が終了したか否か判定し、終了したと判定した場合、
図24のフローチャートの処理を終了し、終了していないと判定した場合、処理をS2402に戻す。より具体的にいうと、制御部603は、S2404で主審がセット終了のジェスチャをしていた場合、処理を終了する。
以上、本実施形態におけるバレーのイベント記録システムの構成及び処理の流れについて説明した。本実施形態のイベント記録システムによれば、人の手を介さず、バレーボールの競技中におけるイベントを自動で判定し、
図27のようなイベント情報テーブルを作成することができる。
本実施形態のイベント記録システムは、バレー等のように、フィールドの区域を2つに分割して境界を作り、ボール若しくはそれに準ずるものを用いて得点を競い合うスポーツに関して同様に処理をすることができる。そのようなスポーツとしては、他に、テニス、バドミントン、卓球等がある。
【0055】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0056】
以上、上述した各実施形態によれば、撮影中のシーンにおいて起こるイベントの情報を自動で判定して関係者に利用可能とするための技術を提供することができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい形態について詳述したが、本実施形態は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。