(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在する吸液性の吸収体とを有する吸収要素、及び、前記吸収要素の長手方向にそれぞれ延びる、前記吸収要素の短手方向両側に設けられた1対の防漏壁を備える使い捨てオムツであって、
前記防漏壁は、前記吸収要素に固定された固定端と、該固定端とは反対側に位置していて固定されていない自由端と、前記自由端を含む自由端部とをそれぞれ有しており、
少なくとも前記自由端部において、互いに重ね合わされた第一のシート部分及び第二のシート部分と、前記第一のシート部分と前記第二のシート部分との間に配置された弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、それぞれの前記防漏壁の前記自由端部に、前記自由端に沿って配置されており、
前記第一のシート部分及び前記第二のシート部分がそれぞれ、前記自由端部において、
前記防漏壁の長手方向に沿って交互に繰り返されると共に前記防漏壁の短手方向に延びる凸部及び凹部を備える複数の凹凸領域と、
これら凹凸領域を前記防漏壁の短手方向に互いに離間させる少なくとも1つの非凹凸領域と、
を備え、
前記自由端には、前記非凹凸領域が位置しており、
前記凹凸領域はさらに、前記自由端部以外の前記防漏壁にも形成されており、
前記防漏壁の前記固定端は、前記非凹凸領域とは異なる第2の非凹凸領域からなっていて、前記吸収要素の長手方向に伸びる形で形成されており、
前記第一のシート部分の前記凹凸領域と前記第二のシート部分の前記凹凸領域とが互いに隣接しかつ前記第一のシート部分の前記非凹凸領域と前記第二のシート部分の前記非凹凸領域とが互いに離間するように、かつ前記防漏壁の短手方向に関し、前記第一のシート部分の前記凹凸領域及び前記第二のシート部分の前記凹凸領域が互いに整列すると共に、前記第一のシート部分の前記非凹凸領域及び前記第二のシート部分の前記非凹凸領域が互いに整列するように、前記第一のシート部分及び前記第二のシート部分が重ね合わされており、
前記第一のシート部分の前記凸部が前記第二のシート部分の前記凹部の内部に入り込むと共に、前記第二のシート部分の前記凸部が前記第一のシート部分の前記凹部の内部に入り込んでおり、かつ
前記第一のシート部分及び前記第二のシート部分が、前記非凹凸領域において、前記弾性部材に適用された接着剤により互いに接合されている、
使い捨てオムツ。
前記防漏壁は、前記自由端部においてのみ前記第一のシート部分及び前記第二のシート部分を備えていて、前記自由端部以外の、前記固定端を含む部分において、前記第一のシート部分又は前記第二のシート部分を備える、
請求項1に記載の使い捨てオムツ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は上述の図面を参照しつつより詳細に記載される。なお、図面は、本発明の理解を容易にすると共に図面の記載を簡略化するために、実際の構成要素の大きさ、縮尺、形状と同一に描かれていない場合があることに留意されたい。
【0011】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る使い捨てオムツ1を示す斜視図である。第一の実施形態に係る使い捨てオムツはいわゆるパンツ型の使い捨てオムツである。
図1を参照すると、使い捨てオムツ1は、1つの胴回り開口WOと一対の脚回り開口LOを備える。使い捨てオムツ1は、その外表面に外装シート2を備える。外装シート2は、着用時において、腹側に位置する腹側部2Sと背側に位置する背側部2Bを含む。腹側部2S及び背側部2Bは、使い捨てオムツ1の側部1Sのそれぞれにおいて互いに、例えばヒートシールによって接合されている。
【0012】
図2Aは、本発明の第一の実施形態に係る使い捨てオムツ1を示す展開平面図である。
図2Aに示されている使い捨てオムツ1は、その両側において側部1Sを胴回り開口WOから脚回り開口LOまで切断した上で、使い捨てオムツ1を構成するシートに過剰に張力を付与しない程度に皺を伸ばすように展開された状態で示されている。
【0013】
図2Aを参照すると、外装シート2は、腹側部2Sと背側部2Bとの間に位置すると共に、脚回り開口LOを形成するために幅が狭くなっている股部2Cとをさらに含む。ここでは、外装シート2は、腹側部2S、背側部2B及び股部2Cが一体に形成されている。
【0014】
第一の実施形態の使い捨てオムツ1は、外装シート2上に配置されている吸収要素3をさらに備える。吸収要素3は、外装シート2の腹側部2Sから背側部2Bにわたって股部2Cを通って延びている。
【0015】
第一の実施形態では、使い捨てオムツ1は、吸収要素3の短手方向DS3両側において、吸収要素3の長手方向DL3にそれぞれ延びる1対の防漏壁4を備える。防漏壁4は、一般的に「立体ギャザー」と呼ばれる、排泄された尿などの体液が使い捨てオムツ1から漏出することを防止する部材である。第一の実施形態では、防漏壁4は、後述する複合伸縮性部材5から形成されている。
【0016】
図2Bは、
図2AのIIB−IIB線に沿った、本発明の第一の実施形態に係る使い捨てオムツ1の構造を示す概略断面図である。なお、本図及び後出する概略断面図では、シート状の部材はそれぞれ、1本の線で表されていることに留意されたい。
【0017】
第一の実施形態では、吸収要素3は、着用時に着用者側の表面3STに位置する透液性のトップシート3Tとその反対側の裏面3SBに位置する液不透過性のバックシート3Bと、これらトップシート3Tとバックシート3Bとの間に介在する吸液性の吸収体3Cとを有する。さらに、吸収体3Cは、吸液性コアをコアラップシート(図示しない)で包んだものである。コアラップシートは、吸液性コアの保形性及び液拡散性の向上のために吸液性コアを被覆するシートである。なお、トップシート3T及びコアラップシートは、別々としてもよいし、トップシート3T及びコアラップシートを1枚のシートとして形成してもよい。
【0018】
第一の実施形態に係る使い捨てオムツ1では、腹側部2S及び背側部2Bには、吸収要素の短手方向DS3に延びる弾性部材(図示しない)が取り付けられている。当該弾性部材は、製造時に伸長した状態で取り付けられていて、通常は収縮して、腹側部2S及び背側部2Bは、従来の使い捨てオムツのように、胴回り開口WO側に位置するウエストギャザーと、脚回り開口LO側に位置するフィットギャザーを構成している。
【0019】
図2Bを参照すると、防漏壁4は、防漏壁4が吸収要素3の側縁部に固定された固定端4Sと、固定端4Sとは反対側の縁部に位置していて固定されていない自由端4Fとを有する。防漏壁4はさらに、自由端4Fを含む自由端部4FPを有する。防漏壁4を構成する複合伸縮性材料5はそれぞれ、第一の実施形態では不織布であるシート6と、自由端部4FPに自由端4Fに沿って取り付けられている弾性部材7とから形成されている。
【0020】
図2Cは、(A)に
図2AのIIC−IIC部の拡大図と、(B)にこの拡大図の断面図とを示す。
図2Cを参照すると、防漏壁4は、自由端部4FPにおいて、互いに重ね合わされた、使い捨てオムツ1の吸収要素3の側に位置する内側シート部分6U及びその反対側に位置する外側シート部分6Lを備える。第一の実施形態では、内側シート部分6U及び外側シート部分6Lは単一のシートから形成されている。また、弾性部材7は内側シート部分6Uと外側シート部分6Lとの間に配置されている。
【0021】
図3は
図2CのIII線部の切断部分拡大斜視図であり、
図4は
図3の分解図である。
図3及び4を参照すると、内側シート部分6U及び外側シート部分6Lがそれぞれ、防漏壁の長手方向DL4に沿って交互に繰り返されると共に防漏壁4の短手方向DS4に延びる凸部53及び凹部51を備える凹凸領域41と、これら凹凸領域41を防漏壁4の短手方向DS4に互いに離間させる非凹凸領域43とを備える。
【0022】
第一の実施形態では、凹凸領域41において、外側シート部分6Lの凸部53Lが内側シート部分6Uの凹部51Uに入り込み、内側シート部分6Uの凸部53Uが外側シート部分6Lの凹部51Lに入り込んでいる。したがって、内側シート部分6U及び外側シート部分6Lの凹凸領域41は互いに隣接している。これに対して、内側シート部分6U及び外側シート部分6Lに形成されている非凹凸領域43L、43Uは、互いに防漏壁の厚さ方向DT4に離間されている。
【0023】
図5は弾性部材7の断面周辺を拡大した
図3の正面図である。
図5を参照すると、2つのシート部分6U、6Lが、非凹凸領域43U,43Lにおいて、弾性部材7を介して接着剤によって接着部45で互いに接合されていることが理解できる。なお、
図5を参照すると、第一の実施形態では、接着部45は、弾性部材2の周囲全体を覆うように分布している。別の実施形態では、弾性部材7と非凹凸領域43U,43Lとが接合する箇所にのみ接着剤が適用されている。
【0024】
なお、第一の実施形態では、外装シート2は、疎水性又は不透液性を有する公知の各種の不織布から構成され、例えば、目付約10〜40g/m
2の範囲にある、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、SMS(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド)不織布、不透液性のプラスチックフィルム、それらのラミネートなどから形成できる。
【0025】
吸収要素3のトップシート3Tには、透液性を有する各種の繊維不織布、例えば、目付約15〜45g/m
2のエアスルー繊維不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布等を用いることができる。
【0026】
吸収要素3のバックシート3Bは、不透液性であり、防漏性(液不透過性)プラスチックフィルムや難透液性繊維不織布、これらのラミネート等から形成することができ、例えば、主にはプラスチックフィルムや、不織布とプラスチックフィルムのラミネートなどから形成できる。
【0027】
吸収要素3に含まれる吸液性の吸収体3Cの吸収コアは、超吸収性ポリマー粒子(SAP)とフラッフパルプもしくは熱可塑性合成繊維(ステープルファイバー)とを混合して所定の形状に形成されているものである。または、熱可塑性剛性繊維にポリマー粒子を散布したものや、コアラップシート上にポリマー粒子を散布し接着剤にて固定したもの等の、各種公知の吸収コアを用いることができる。
【0028】
吸収体3Cのコアラップシートには、少なくともその肌面側の一部に透液性を有する各種の繊維不織布もしくはティッシュシートを用い、例えば、目付が10〜30g/m
2のエアスルー繊維不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、ティッシュシートを用いることができる。
【0029】
第一の実施形態では、シート6は秤量15g/m
2のSMS不織布を使用している。しかしながら、本発明はこれに制限されるものではない。シート6に使用される不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ヒートロール不織布、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを組み合わせたSMS不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、エアーレイド不織布等を使用することができる。また、シート6の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル等を使用することができる。
【0030】
その他にも、シート6の素材としては、防漏性(液不透過性)プラスチックフィルム、や難透液性繊維不織布、これらのラミネート等を使用することができる。例えば、自由端部4FPだけではなく、防漏壁4の全体を別々の素材からなる2つのシートを重ねて形成して、内側シート6Uに防漏性(液不透過性)プラスチックフィルム、や難透液性繊維不織布、これらのラミネート等からなるシート部分を使用することもできる。
【0031】
しかしながら、シート6には、繊維を切らずに直接紡糸することによって形成される長繊維不織布、例えばSMS不織布又はスパンボンド不織布等を使用することが好ましい。賦形処理するために必要なシートの強度の低下が起こりにくいという観点から、伸度が高く、さらには、シート自体6が短繊維不織布を使用するよりも薄くなりかつ平面性(フラットネス)の高い布地を作ることができるからである。
【0032】
また、第一の実施形態では、弾性材料7には、Lycra(登録商標)470dtexが使用されている。しかしながら、本発明はこれに制限されるものではない。この弾性材料7に、ウレタンスパンデックス等の弾性糸を使用することができる。繊度としては、30〜1500dtex程度の弾性糸を複数本使用し、同一の繊度、または互いに異なる繊度の弾性糸を使用することが好ましい。30dtex以下となると、単位幅あたりの弾性糸使用本数が増加して製造設備が大きくなるおそれがあり、1500dtex以上となると、隣接する弾性糸同士の間隔が大きくなり、シート部分6U,6L同士の噛合いが不均一になるおそれがあるからである。また、弾性部材7の素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、SIS、SEBS、SEPS、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を使用することができる。
【0033】
次いで、第一の実施形態における、防漏壁4を構成する複合伸縮性材料5の製造方法の例について、図面を参照しつつ説明する。
【0034】
図6は、複合伸縮性材料5を製造するための装置10の概略図である。最初にこの製造方法の例の概要を説明すると、装置10では、賦形装置15によってシート6に凹凸領域41及び非凹凸領域43が形成され、これら凹凸領域41及び非凹凸領域43賦形されたシート6に接着剤適用部19において接着剤が適用された弾性部材7が組付けられる。次いで、折り重ね装置23によってシート6及び弾性部材7からなる組付体が折り重ねられて、最後に貼り合わせプレス25によって組付体に対してその厚さ方向に圧力が付与されることにより、複合伸縮性材料5が製造される。
【0035】
図6を参照すると、まず、複合伸縮性材料5を構成するシート6は、シート繰り出し部11に巻き付けられて保持されており、そこから資材搬送方向MDに巻き出すことによって予熱ロール13に移送される。予熱ロール13は、巻き出したシート6Aを変形し易いように予熱するものであり、この例では50〜130℃に設定されている。予熱温度はシートの種類、材質等に応じて定められるものである。別の製造方法の例では、装置10は予熱ロール13を含まず、賦形装置15に直接移送される。
【0036】
予熱されたシート6Bは次いで賦形装置15に移送される。賦形装置15は、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bから構成され、この例では、予熱ロール13と同様に賦形し易いように50〜130℃に温度設定されている。
【0037】
図7は、複合伸縮性材料5を製造する装置10の賦形装置15に係る欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの斜視図である。
図7に示されているように、連続ギヤロール15Bは周方向に離間された複数の連続歯27を有し、これらの連続歯の各々は幅方向に連続している。また、欠歯ギヤロール15Aは、周方向に離間された複数の不連続歯29を有し、これらの不連続歯29の各々は少なくとも1つの欠歯部分31によって幅方向に不連続になっており、これらの欠歯部分31は周方向に整列されている。
【0038】
図8は、
図7の欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの正面図を示している。この製造方法の例では、後述する折り曲げ線FL(
図11)が位置する非凹凸領域43(
図11)を形成する欠歯部分31fの幅Wvfは、その他の欠歯部分31sの幅Wvsよりも広く、不連続歯29の連続している部分の幅Wgは全て共通である。この製造方法の例では、Wvfは2mmであり、Wvsは1mmであり、そしてWgは4mmである。しかしながら、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの各構成要素の寸法は上記寸法に限定されない。
【0039】
なお、この製造方法の例では、各不連続歯29は第二の方向D2に9列設置されている。しかしながら、不連続歯29の列数は、防漏壁4のサイズや、賦形装置15の各箇所の寸法等に応じて変更することができる。
【0040】
図9は、
図7の欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの部分側面図を示している。この例では、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの歯27,29の高さTHは約1mmであり、隣り合う歯27,29の頂部同士の間隔TPは約1mmである。また、各歯27,29の頂部には平坦部があり、その平坦部の周方向の長さTLは約0.1mmである。しかしながら、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの各構成要素の寸法は上記寸法に限定されない。
【0041】
予熱されたシート6Bは、
図7〜9で説明された、互いに噛み合いかつ互いに逆方向に回転する欠歯ギヤロール15Aと連続ギヤロール15Bとの間を通過する。これより、
図10A及び
図10Bを用いて、シート6Bが、欠歯ギヤロール15Aと連続ギヤロール15Bとの間を通過するときに賦形される機構について説明する。
図10A及び
図10Bは、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bの周囲方向を直線状に展開した、欠歯ギヤロール15A及び連続ギヤロール15Bとこれらの間に配置され変形されているシート1との、噛み合わせ部分周辺の拡大断面イメージ図を示す。
図10Aは、欠歯ギヤロール15Aの欠歯部分31における断面図を示し、
図10Bは、欠歯ギヤロール15Aの不連続歯29部分における断面図を示すものである。
【0042】
図10A及び
図10Bを参照すると、一方では、
図10Aに示されているように、欠歯ギヤロール15Aの欠歯部分31に導入されるシート6Bは、連続ギヤロール15Bに、連続ギヤロール15Bの半径方向外側に押されるものの変形せず、非凹凸領域43を形成することになる。他方では、
図10Bに示されているように、欠歯ギヤロール15Aの不連続歯29と連続ギヤロール15Bの連続歯27との間に噛み込まれるシート6Bは、歯先端部分33Bに位置決めされることになる。そうすることによって、三点曲げ状に隣り合う歯先端部分33Bと歯先端部分33Aと別の歯先端部分33Bとの間で延伸されて、その歯先端部分33Aを頂部とする凸部53を形成する。
【0043】
さらに、三点曲げ状に隣り合う歯先端部分33Aと歯先端部分33Bと別の歯先端部分33Aとの間で延伸されて、その歯先端部分33Bを底部とする凹部51を形成する。このとき欠歯ギヤロール15Aの欠歯部分31において連続ギヤロール15Bに押されるシート6の非凹凸領域43と、欠歯ギヤロール15Aの不連続歯29部分において連続ギヤロール15Bの歯先端部分33Bで位置決めされることになるシート6Bの凹部51の底部との、各ギヤロール15A,15Bにおける半径方向の位置がほぼ同じになる。すなわちこれらのシート6Bにおける厚さ方向位置がほぼ同じになる。よって、シート6Bに凹凸領域41及び非凹凸領域43が形成された後も、非凹凸領域43とシート6Bの凹部51の底部とはほぼ同一の面上に存在することになる。ここで、前記面を各シート部分6U,6Lについての仮想の基準面RPと定義する。ここでは、基準面RPは平面状であり、非凹凸領域43はこの基準面RP上で拡がることとなる。なお、各シート部分6U,6Lはそれぞれ柔軟性を備えているので、基準面RPは必ずしも平面状ではない。
【0044】
したがって、凸部53と基準面RPとの間の関係でいうと、凸部53は、基準面RPから、つまり非凹凸領域43から厚さ方向に突出している。
【0045】
そして、賦形装置15を通過したシート6Cは、合流部21に移送される。
【0046】
その一方で、再び
図6を参照すると、弾性部材7は、弾性部材繰り出し部17に巻き付けられて保管されており、そこから巻き出すことによって接着剤適用部19に移送される。弾性部材7には、あらかじめ一定の張力が付与されており、その張力が維持されたまま後の工程が行われることになる。
【0047】
第一の実施形態に係る使い捨てオムツ1では、上述のようにシート6に凹凸領域41が賦形されていて、弾性部材7の収縮する方向に、
図3に示されているような断面波形状の折り目が付けられていることにより、シート6が収縮し易いことから弾性部材7の弾性部材貼り合わせ倍率(=(シートと貼り合わせるときの伸長状態にある弾性材料の長さ)÷(弾性部材の収縮状態長さ))を従来よりも低く設定することができる。
【0048】
接着剤適用部19は、接着剤を弾性部材繰り出し部17から移送されてきた弾性部材7Aに適用する。
【0049】
なお、この製造方法の例では、接着剤適用部19ではスリット連続塗工を行い、スリットノズル(図示しない)から接着剤を吐出した部分に弾性部材7Aを沿わせることで、弾性部材7Aの周囲に接着剤を適用する。ここでは、接着剤はホットメルト接着剤であるが、これに限定されるものではない。
【0050】
そして、シート6C及び弾性部材7Bが合流する合流部21において、防漏壁4の自由端部4FPに対応する箇所に位置することになるシート6Cの非凹凸領域43上に、接着剤が適用された弾性部材7Bを配置する。このときのシート6Cに弾性部材7Bが組付けられた組付体5Aが
図11に示されている。
【0051】
次いで、
図11の状態の組付体5Aは折り重ね装置23に移送される。この製造方法の例では、折り重ね装置23は巻き込みセーラである。巻き込みセーラにおいて、組付体5Aは、折り曲げ線FLで折り曲げられて、シート6の重ねる側である上側シート部分6Uが、シート6の重ねられる側である下側シート部分6Lに、互いの非凹凸領域43が整列するように重ね合わせられる。ひいては、シート部分6U、6Lの凹凸領域41も互いに整列する。その結果、
図11の状態の組付体5Aは折り重ね装置23を通過すると
図12の状態の組付体5Bになる。別の製造方法の例では、2つのシートを別個に上述のように賦形装置15を用いて賦形して、その後にこれらのシート同士を重ね合わせることによって、組付体5Bを製造する。
【0052】
この製造方法の例では、折り重ね装置23は、折り曲げ線FLに沿って組付体5Aを折り重ねている。しかしながら、上側シート部分6Uの凹凸領域41及び下側シート部分6Lの凹凸領域41が整列するように、かつ、上側シート部分6Uの非凹凸領域43及び下側シート部分6Lの非凹凸領域43が整列するように、シート6が折り重ねられていれば、必要に応じてどの位置を中心に折り重ねてもよい。あるいは、必要に応じて複数箇所で折り曲げてもよい。
【0053】
ここで、折り重ね装置23において組付体5Aを折り重ねる際に、
図3及び
図4に示されるように凸部53が凹部51に入り込む機構について説明する。
【0054】
不織布やプラスチックシート等のシート6は一般的に柔らかく変形し易いので、製造工程をとおしてシート6を搬送するために、通常は一定の張力が資材搬送方向MD、すなわち第一の方向D1に付与されている。
【0055】
これに加えて、組付体5Aが折り重ね装置23を通過するときに、シート部分6Uには折り重ね装置23により張力が第一の方向D1にさらに付与される。具体的には、この張力は、折り重ね装置23の1つの具体的実施態様である巻き込みセーラのセーラエッジ(図示しない)により付与されたものである。これにより、上側シート部分6Uが下側シート部分6Lよりも第一の方向D1に伸びることとなる。ひいては上側シート部分6Uの凹凸領域41の凹凸ピッチ(凹部51及び凸部53の第一の方向の1周期当たりの長さ)が下側シート部分6Lの凹凸領域41の凹凸ピッチよりもわずかに拡がることになる。
【0056】
その後に、上側シート部分6Uが、下側シート部分6Lに重ねられるときに、張力が解放されて、折り重ね装置23に導入される以前より付与されていた張力が付与されている状態に戻ることになる。次いで、凹凸ピッチが、組付体5Aが折り重ね装置23に導入される以前の状態に戻る。したがって、上側シート部分6Uの凹部51U及び凸部53Uと下側シート部分6Lの凸部53L及び凹部51Lとの相対的な位置が変化することになる。その結果、凹部51及び凸部53が重なっていた部分において凸部53が凹部51に入り込み、上側シート部分6Uに付与されていた張力が解放されて互いに同じになるときに、凸部53が凹部51に入り込んだ部分を起点として、シート部分6U、6Lの凹凸ピッチが半ピッチ分オフセットすることによって、凸部53が凹部51に入り込むこととなる。
【0057】
上記では、折り重ね装置23を使用した場合の製造方法の例が示されている。別の例では、2つのシートを別々に同形状に賦形処理して重ね合わることによって、折り重ね装置23を使用することなく、上述したような複合伸縮性材料5を製造する。この場合、シート同士を重ね合わせるときに、一方のシートに他方のシートよりも高い張力を第一の方向に付与しておく。それにより、1つのシート6の2つのシート部分6U,6Lを重ねる場合と同じ構成を取ることができる。上述した理由により、シート部分6U,6Lの凸部53U,53Lが、シート部分6L,6Uの凹部51L,51U内部に入り込むことになるからである。ただし、2つのシートの秤量や繊維の太さなどが互いに異なる場合には、互いの凹凸ピッチを適合させるように各シートに付与する張力を調節する必要があることに留意されたい。
【0058】
図6に戻って、最後に、折り重ね装置23を通過した組付体5Bは、貼り合わせプレス25に移送され、その厚さ方向DTに圧力が付与される。それにより、シート部分同士6U,6Lが非凹凸領域43において弾性部材7を介して接合されて、最終的な複合伸縮性材料5Cが完成する。
【0059】
この製造方法の例では、シート部分同士6U,6Lが非凹凸領域43において弾性部材7を介して接合されている。しかしながら、別の例では、シート部分同士6U,6Lは、少なくとも一部では、凹凸領域41において弾性部材7を介して接合されている。さらに別の例では、シート部分同士6U,6Lは、少なくとも一部では、弾性部材7を介さずに接合されている。
【0060】
また、この複合伸縮性材料5では、凹凸領域41においてシート6が断面波形状になっているという構成により、弾性部材7が収縮状態になると、凹凸領域41における複合伸縮性材料5の厚さが、非凹凸領域43における厚さよりも厚くなる。したがって、複合伸縮性材料5に着用者が触れたときの感触が良い。これは、弾性部材7の周囲に適用された接着剤によって固くなっている非凹凸領域43が凹凸領域41よりも突出して、凹凸領域41よりも先に非凹凸領域43が着用者の肌面に触れて着用者に異物感を感じさせることを妨げるからである。なお、着用者に異物感を感じさせないために、弾性部材7の直径が、互いに整列している、上側シート部分6Uの非凹凸領域43と下側シート部分6Lの非凹凸領域43との間隔よりも小さいとさらに好ましい。
【0061】
ところで、本発明の第一の実施形態に関する記載の冒頭で説明したように、第一の実施形態の使い捨てオムツ1は、上述の製造方法を用いて製造された複合伸縮性材料5を防漏壁4として備える。このとき、第一の実施形態では、複合伸縮性材料5は、複合伸縮性材料5の第一の方向D1が吸収要素3の長手方向DL3とほぼ整列するように使い捨てオムツ1に配置される。つまり、複合伸縮性材料5の第二の方向D2が防漏壁4の短手方向と一致するように、複合伸縮性材料5が配置される。なお、ここでは、防漏壁4の短手方向とは、防漏壁4の長手方向に対して垂直の方向であって、防漏壁4に沿った自由端4Fから固定端4Sに又は固定端4Sから自由端4Fに向かう方向である。
【0062】
第一の実施形態では、上記折り曲げ線FLで折り曲げた部分である、複合伸縮性材料5の第二の方向D2の端部が、防漏壁4の自由端4Fとなり、その反対側の端部が、外装シート2と吸収要素3との間で、例えばホットメルト接着剤によって接着されることによって、使い捨てオムツ1に取り付けられている。
【0063】
また、第一の実施形態に係る使い捨てオムツ1のように、防漏壁4の自由端4Fに、非凹凸領域43が位置していると好ましい。これにより、防漏壁4が自由端4Fを支点として、シート6の賦形形状によって発生する力に影響されることなく防漏壁4を吸収要素の長手方向DL3に沿って折ることができるからである。その結果、製造時に予期しない防漏壁4の折れが発生することを抑制でき、ひいては生産性に優れるので好ましい。別の実施形態では、防漏壁4の自由端4Fには、凹凸領域41が形成されている。
【0064】
これより、第一の実施形態の使い捨てオムツ1における、複合伸縮性材料5から形成される防漏壁4の作用について説明する。
【0065】
上述したように、複合伸縮性材料5は、凹凸領域41において、凹部51及び凸部53が第一の方向に交互に形成されているという形状を有する。
図3の手前側の断面からも理解できるように、凹凸領域41の第一の方向に沿った断面が波形を有しており、この形状が例えば、一般的な段ボールの内側に配設されている、断面波形の中芯のような全体構造の剛性を補強する働きをする。さらに、2つのシート部分6U,6Lの凹凸領域41が互いに隣接しており、より具体的にはシート部分6U,6Lの凸部53U,53Lが、シート部分6L,6Uの凹部51L,51U内部に入り込んでいることから、2つのシート部分6U,6Lが互いを支え合い協働する。その結果、複合伸縮性材料5の第二の方向D2、ひいては防漏壁4の短手方向の圧縮力に対する剛性が、賦形されていない2つのシート部分から形成される複合伸縮性材料よりも高いものとなる。
【0066】
図13A及び
図13Bはそれぞれ、複合伸縮性材料5が、第二の方向D2に圧縮される前及び後の形状の一例を示す線図である。
図13A及び
図13Bは使い捨てオムツ1の着用時であって弾性部材7がある程度収縮した状態を示しており、上述したように、凹凸領域41は、賦形装置15により延伸されていることから、その厚さは、非凹凸領域43よりも厚くなる。そして、
図14A及び
図14Bはそれぞれ、賦形されていない2つのシート部分6’から形成される複合伸縮性材料5’が、第二の方向に圧縮される前及び後の形状の一例を示す線図である。複合伸縮性材料5は、第二の方向に圧縮力が付与された場合でも、凹凸領域41ではその賦形形状及び構成に起因する圧縮剛性によって、折れ曲がりにくく、すなわち座屈しにくくなっている。
図13Bを参照すると、この複合伸縮性材料5は、凹凸領域41では曲がらずに、非凹凸領域43のところで若干折れ曲がっている様子が示されている。これに対して、
図14Bを参照すると、賦形されていない複合伸縮性材料5’では、第二の方向に圧縮力が付与されると、弾性部材7同士の間に位置するシート部分6’は、形状による力を発生することなく自由に動くので、弾性部材7同士の間隔が短くなる。それに伴い、シート部分6’が厚さ方向に突出するので、賦形されていない複合伸縮性材料5’では、大きな皺が発生しやすい。以上により、複合伸縮性材料5は、従来の複合伸縮性材料5’よりも第二の方向D2の圧縮強度が高いことが理解できる。
【0067】
さらに、複合伸縮性材料5の圧縮剛性が高いことを確認するために以下に説明する圧縮強度試験が行われた。
【0068】
−試験方法−
このために実施された圧縮強度試験は、紙及び板紙の圧縮強さ試験に使用されるリングクラッシュ試験(JIS P8126)に類する試験である。この圧縮強度試験では、
図15Aに示されるように、第一の方向に100mmかつ第二の方向に20mmの長さの形状の試験片61を用意する。次いで、試験片61は、
図15Bに示されるように、リング状にされて、その端部同士が2mmの重複部分をもって、ステープラー(
図15Bにはステープラーの針63が示されている。)によって略中央で1箇所のみ接合されることによって、形成される。
【0069】
この圧縮強度試験を実施するには、この試験片61が試験台上に載置されて、試験片61の上方縁部全体に対して鉛直方向下方に圧縮力が、試験片61が座屈するまで付与される。
図16は、圧縮強度試験における時間T[s]と圧縮力Fc[N]の推移の一例を示すグラフである。
図16を参照すると、試験片61に徐々に圧縮力を付与し、その後、
図16の参照番号65が示す時点で試験片61が圧縮力に耐えられなくなり座屈したのが理解できる。この座屈した時点に付与されていた圧縮力を圧縮強度試験の評価基準とする。
【0070】
以下に示すサンプルについて、この圧縮強度試験が実施された。
【0071】
(実施例)
実施例の試験片61は、上述の製造方法によって製造された複合伸縮性材料5から作成されたものであり、上述の試験片61のサイズにしたものを使用した。実施例の試験片61では、弾性部材7同士の間隔は5mmであり、秤量15g/m
2のSMS不織布が使用された。
【0072】
(比較例)
賦形されていないシート部分6’使用している以外は、複合伸縮性材料5と全く同じように作成した複合伸縮性材料5’を、上述の試験片61のサイズにしたものを使用した。
【0073】
以下に、圧縮強度試験の結果を示す。なお、以下の測定結果は、実施例及び比較例共に3つの試験片における測定結果の平均値である。
【0075】
表1に示されているように、第一の実施形態における複合伸縮性材料5は、賦形されていない従来の複合伸縮性材料よりも第二の方向の圧縮強度が十分に高いことが確認された。
【0076】
また、第一の実施形態における複合伸縮性材料5は、50%伸長状態において複合伸縮性材料に3gf/cm
2(0.3kPa)の圧力を厚さ方向に付与したときに、測定装置によって計測される厚さが2.0mm以下である。
【0077】
さらに、第一の実施形態における複合伸縮性材料5は、50%伸長状態における断面曲線要素の密度Dが8から15個/cmである。
【0078】
ここで、上述の50%伸長状態は、伸長率が50%になるように複合伸縮性材料を伸縮方向に伸長させた状態を指す。伸長率は次式で定義される。
伸長率(%)=(LM−LM0)/LM0・100
ここで、LM:伸長させた複合伸縮性材料部分の伸縮方向長さ
LM0:自然状態にある当該複合伸縮性材料部分の伸縮方向長さ
【0079】
上述の断面曲線要素の密度Dは、以下のようにして求められる。まず、複合伸縮性材料5の凹凸領域41における伸縮方向に沿った断面曲線が形状測定機により測定される。なお、断面形状は互いに隣接する2本の弾性部材同士間のほぼ中央で測定される。次いで、この断面曲線から、基準長さにおける断面曲線要素の高さZ(x)及び長さXsが求められる(JIS B0601:2001(ISO4287:1997)、JIS B0651:2001(ISO3274:1996)及び
図17参照)。最後に、断面曲線要素の密度Dは、上述の断面曲線要素の長さXsの平均値PSmから、算出される(D=1/PSm)。
【0080】
上述したように、第一の実施形態における複合伸縮性材料5は、50%伸長状態において複合伸縮性材料に3gf/cm
2(0.3kPa)の圧力を厚さ方向に付与したときに、測定装置によって計測される厚さが2.0mm以下であると好ましい。この場合には、この複合伸縮性材料5は、十分に薄くて大きな皺がなく、ひいては肌触りがよい。
【0081】
また、上述したように、第一の実施形態における複合伸縮性材料5はさらに、50%伸長状態における断面曲線要素の密度Dが8から15個/cmであると好ましい。この場合には、皺がより均一となり、ひいては収縮状態にあるときでも全体的に薄く表面がより平滑になる複合伸縮性材料が提供される。それにより、より優れた感触及び審美性を有する複合伸縮性材料5が提供される。しかも、皺が過度に小さくないので、複合伸縮性材料5の製造が容易である。
【0082】
これより、第一の実施形態の使い捨てオムツ1の作用効果について説明する。
【0083】
(1)
図18は、本発明の第一の実施形態の使い捨てオムツ1の作用を示す部分概略縦断面図である。
図18では、第一の実施形態に係る使い捨てオムツ1を着用しているときの、着用者の鼠径部(腿の付け根部分)IR及びその肌面SIと、防漏壁4の自由端部4FPとが、これら鼠径部IR及び防漏壁4の一方側において、概略的に記載されている。防漏壁4は、使い捨てオムツ1の着用時に、自由端部4FPに設けられた弾性部材7の収縮力によって、着用者の鼠径部IRに向かって起立することにより、吸収要素3及び防漏壁4によって包囲されるポケットが形成される。それにより、排泄された尿などの体液をこのポケット内に留めて、体液を吸収要素3に吸収させることができる。第一の実施形態に係る使い捨てオムツ1では、上述のように、防漏壁4の自由端部4FPは、第二の方向D2の圧縮剛性が高いという複合伸縮性材料5の特徴から、防漏壁4の短手方向に圧縮変形されづらく、さらには座屈しにくい。したがって、ポケットの容量を維持することができる。その結果、体液がポケットから漏出することを抑制することができる。
【0084】
(2) 防漏壁4の自由端部4FPは、
図18に示すように、着用者の鼠径部の肌面SIに面で当接する。このとき、自由端部に、従来の複合伸縮性材料5’が形成するような大きな皺が形成されると(
図14B参照)、着用者の肌面と防漏壁の自由端部とが点で接することになり、これらの間に隙間が発生してしまい、その隙間から体液が漏出するおそれがある。これに対して、複合伸縮性材料5は、上述のように全体的に薄くかつ表面が平滑であるという特徴を有する。したがって、弾性部材7が配置されている自由端部4FPにおいて、従来の複合伸縮性材料5’が形成するような大きな皺は形成されにくい。その結果、自由端部4FPを着用者の鼠径部の肌面SIに平面で当接させることによってより密着させることができる。ひいては、着用者の鼠径部の肌面SIと自由端部4Pとの間から体液が漏出することを抑制することができる。
【0085】
(3) 第一の実施形態の使い捨てオムツ1の防漏壁4の自由端部4FPは、複合伸縮性材料5から形成されており、上述のように十分に薄くて、従来の複合伸縮性材料5’に見られるような大きな皺が形成されにくい。したがって、防漏壁4の自由端部4FPは肌触りがよい。
【0086】
(4) 複合伸縮性材料5では、弾性部材7が収縮する場合に、シート6に凹凸領域41が賦形されており、弾性部材7の収縮方向にシート6が断面波形状に賦形されているので、シート6が収縮し易い。それにより、弾性部材7の弾性部材貼り合わせ倍率を従来よりも低く設定することができる。よって、弾性部材7が収縮することによる着用者の肌面SIへの締め付けを弱くすることができる。その結果、肌面に弾性部材7の跡が付きづらく、ひいては使い捨てオムツ1の着心地がよい。
【0087】
(5) 複合伸縮性材料5は、シート6に賦形装置15によって賦形した後に弾性部材7を取り付けるので、弾性部材7が賦形装置15に噛み込まれてダメージを受ける心配がない。よって、使用の際に弾性部材7が切れて、防漏壁4の機能が失われるおそれが低下する。
【0088】
(6) 第一の実施形態では、長繊維不織布を複合伸縮性材料5の素材として使用しているので、短繊維不織布を素材として使用するよりも薄く、平面性の高い複合伸縮性材料5を形成することができる。
【0089】
なお、第一の実施形態では、欠歯ギヤロール15Aの寸法により、弾性部材7同士の間隔は5mmである。この間隔は、上記の防漏壁4の自由端部4FPにおける作用を発揮できるものであればどのような間隔であってもよい。しかしながら、弾性部材7同士の間隔は5〜10mmであると好ましい。弾性部材7同士の間隔が10mmよりも長いと、第二の方向D2の圧縮剛性が低下することから、上記作用効果を十分に発揮できないおそれがある。また、弾性部材7同士の間隔が5mmよりも短いと、弾性部材7による着用者の肌面SIへの締め付けが強くなることから、肌面SIに弾性部材7の跡が付いてしまい、ひいては使い捨てオムツ1の着心地が悪化するおそれがある。
【0090】
なお、第一の実施形態では、自由端部4FPのみに弾性部材7が配置されており、自由端部4FPよりも固定端4S側の防漏壁4の部分では、防漏壁4は1つのシート部分6Lから構成されている。しかしながら、防漏壁4の全体を2つのシート部分6U、6Lから構成し、非凹凸領域43の全てに弾性部材7を配置することによって、防漏壁4の全体において、上記、防漏壁4の自由端部4FPにおける作用効果を発揮するようにしてもよい。このような使い捨てオムツ1も本発明の範囲に含まれる。しかしながら、第一の実施形態に係る使い捨てオムツ1は、コストの観点から、使用する弾性部材7の数を抑制することができるので有利である。
【0091】
また、第一の実施形態では、自由端部4FPに3本の弾性部材7が配置されているが、これは2本以上であれば何本でもよい。これら弾性部材7同士間の領域、つまり自由端部4FPにおいて、上記の作用効果が発揮されるからである。
【0092】
また、第一の実施形態では、防漏壁4の自由端部4FP以外の箇所にも凹凸領域41が形成されているので、その形状により防漏壁4の短手方向の圧縮剛性が向上する。別の実施形態では、防漏壁4の自由端部4FP以外の箇所に、凹凸領域41が形成されていない。
【0093】
(第二の実施形態)
これより
図19を参照しつつ、本発明の第二の実施形態に係る使い捨てオムツ1について説明する。なお、第二の実施形態については、第一の実施形態との差異点のみを説明する。また、第一の実施形態における第二の実施形態との差異点以外の構成要素は、第二の実施形態に適用可能であり、当業者は自明の範囲内でこれら構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0094】
図19は、本発明の第二の実施形態に係る使い捨てオムツ1の構造を示す概略断面図である。第二の実施形態に係る使い捨てオムツ1は、吸収要素3の長手方向DL3に延びる1対の股下弾性部材8をさらに備える。股下弾性部材8は、製造時に伸長した状態で取り付けられる。第二の実施形態では、股下弾性部材8の長さは吸収要素3の長手方向の長さと同じである。別の実施形態では、股下弾性部材8の長さは吸収要素3の長手方向DL3の長さよりも短い。
【0095】
図19を参照すると、吸収要素3は、着用時に着用者側を向く表面3STと、表面3STの反対側の裏面3SBとを有する。股下弾性部材8は、吸収体3Cのそれぞれの側部から吸収要素3の短手方向の外側又は内側に10mm以内の位置に配置されると好ましく、5mm以内の位置に配置されるとさらに好ましい。
【0096】
ここで、「吸収要素3の短手方向の内側」とは、吸収要素3の短手方向の中央Cに向かう方向の側をいう。また、「吸収要素3の短手方向の外側」とは、その反対に吸収要素3の短手方向の中央Cから離れる方向の側をいう。
【0097】
従来の使い捨てオムツでは、排泄された尿などの体液を吸収することにより、吸収要素3がその重量を増して着用者の股下部分から垂れ下がると、防漏壁4の自由端部4FPが着用者の鼠径部の肌面SIから離れて密着しなくなる場合がある。この場合、体液が使い捨てオムツ1から漏出するおそれがある。第二の実施形態に係る使い捨てオムツ1では、股下弾性部材8が上述のように配置されて、その収縮力によって吸収要素3を持ち上げる力を付与することにより、重量が増加した吸収要素3が垂れ下がることを抑制することができる。その結果、吸収要素3がその重量を増して場合でも、防漏壁4が着用者の肌面SIに密着した状態が維持されるため、体液が使い捨てオムツ1から漏出することを抑制することができるので好ましい。
【0098】
また、股下弾性部材8は、吸収要素3の短手方向両側に位置しており、かつ前記吸収要素の表面よりも裏面に近い位置に配置されるとさらに好ましい。股下弾性部材8が、重量の増した吸収要素3をその鉛直方向下側から支え、かつ持ち上げるように力を付与することができるからである。
【0099】
あるいは、股下弾性部材8は、それぞれの防漏壁4の固定端4Sから吸収要素3の短手方向の外側又は内側に10mm以内の位置に配置されると好ましく、5mm以内の位置に配置されるとさらに好ましい。これにより、股下弾性部材8の収縮力によって防漏壁4を固定端4Sから持ち上げる力を付与することにより、防漏壁4を着用者の鼠径部IRに向かって付勢することができる。その結果、防漏壁4の自由端部4FPが着用者の鼠径部の肌面SIから離れることを抑制し、ひいては、体液が使い捨てオムツ1から漏出することを抑制することができる。
【0100】
(第三の実施形態)
これより、
図20を参照しつつ、本発明の第三の実施形態に係る使い捨てオムツ1について説明する。なお、第三の実施形態については、第一の実施形態との差異点のみを説明する。また、第一の実施形態における第三の実施形態との差異点以外の構成要素は、第三の実施形態に適用可能であり、当業者は自明の範囲内でこれら構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0101】
図20は、本発明の第三の実施形態に係る使い捨てオムツ1の構造を示す概略断面図である。第三の実施形態では、防漏壁4に加えて、複合伸縮性材料5によって脚回りギャザー9が形成されている。
図20を参照すると、吸収要素3の短手方向両側において、1対の防漏壁4と脚回りギャザー9が、1つのシート6から形成されている。
【0102】
図20を参照すると、脚回りギャザー9の固定端9Sは、防漏壁4の固定端4Sと共通している。脚回りギャザー9の自由端9Fを含む自由端部9FPには、防漏壁4の自由端部4FPと同様に、吸収要素3の長手方向に延びる弾性部材7’が取り付けられている。弾性部材7’は、弾性部材7と同様に、製造時に伸長した状態で取り付けられ、通常は収縮しており、それによりギャザーを形成している。第三の実施形態では、弾性部材7’の弾性部材貼り合わせ倍率は、弾性部材7の弾性部材貼り合わせ倍率と同じである。
【0103】
第三の実施形態におけるシート6では、第一の実施形態におけるシート6と同様の凹凸領域41及び非凹凸領域43がその全体にわたって第二の方向D2に交互に形成されるように、凹凸領域41の、ひいては欠歯ギヤロール15Aの不連続歯29の列数が増加されている。
【0104】
また、第三の実施形態では、第二の実施形態と同様に、股下弾性部材8が設けられている。ここでは、股下弾性部材8は、防漏壁4及び脚回りギャザー9の固定端4S、9Sに、例えばホットメルト接着剤によって取り付けられている。第三の実施形態においても、第一の実施形態と同様に、シート6には凹凸領域41及び非凹凸領域43が形成されており、自由端4F、9Fには、非凹凸領域43が形成されている。別の実施形態では、自由端4F、9Fには凹凸領域41が形成されている。
【0105】
第三の実施形態の使い捨てオムツ1は、脚回りギャザー9、つまり防漏壁4とは別にもう1つの防漏壁を備えることから、体液が漏出するおそれがさらに低減される。さらに、脚回りギャザー9の自由端部9FPでは、防漏壁4の自由端部4FPと同様に、弾性部材7’が収縮するときに、シート6に賦形した通りの規則的な皺が形成されることができることから、十分に薄く、大きな皺が形成されにくい。したがって、第三の実施形態に係る使い捨てオムツ1は、脚回り部分において肌触りがよいので好ましい。
【0106】
なお、上記の実施形態の使い捨てオムツ1は、いわゆるパンツ型の使い捨てオムツであるが、本発明は、テープ型、サイドパネル型などの、あらゆる形状及び構造の使い捨てオムツを含むものとする。
【0107】
本明細書、図面及び特許請求の範囲の記載から当業者によって理解できるような全ての特徴は、本明細書において、これらの特徴が特定の他の特徴に関連してのみ組み合わされて説明されたとしても、それらの特徴が明確に除外されない限り、又は技術的な態様が不可能な若しくは意味のない組み合わせにならない限りにおいて、独立して、またさらに、ここで開示された他の1又は複数の特徴と任意に組み合わせて、結合することができるものとする。
【0109】
(1) 透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在する吸液性の吸収体とを有する吸収要素、及び、前記吸収要素の長手方向にそれぞれ延びる、前記吸収要素の短手方向両側に設けられた1対の防漏壁を備える使い捨てオムツであって、
前記防漏壁は、自由端及び固定端と前記自由端を含む自由端部とをそれぞれ有しており、少なくとも前記自由端部において、互いに重ね合わされた第一のシート部分及び第二のシート部分と、前記第一のシート部分と前記第二のシート部分との間に配置された弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、それぞれの前記防漏壁の前記自由端部に、前記自由端に沿って配置されており、
前記第一のシート部分及び前記第二のシート部分がそれぞれ、
前記防漏壁の長手方向に沿って交互に繰り返されると共に前記防漏壁の短手方向に延びる凸部及び凹部を備える複数の凹凸領域と、
これら凹凸領域を前記防漏壁の短手方向に互いに離間させる少なくとも1つの非凹凸領域と、
を備え、
前記第一のシート部分の前記凹凸領域と前記第二のシート部分の前記凹凸領域とが互いに隣接しかつ前記第一のシート部分の前記非凹凸領域と前記第二のシート部分の前記非凹凸領域とが互いに離間するように、かつ前記防漏壁の短手方向に関し、前記第一のシート部分の前記凹凸領域及び前記第二のシート部分の前記凹凸領域が互いに整列すると共に、前記第一のシート部分の前記非凹凸領域及び前記第二のシート部分の前記非凹凸領域が互いに整列するように、前記第一のシート部分及び前記第二のシート部分が重ね合わされている、
使い捨てオムツ。
【0110】
(2) 前記自由端には、前記非凹凸領域が位置している、
(1)に記載の使い捨てオムツ。
【0111】
(3) さらに、前記吸収要素の長手方向に延びる、前記吸収要素の長手方向に伸縮自在の1対の股下弾性部材を備え、
前記股下弾性部材は、前記吸収体のそれぞれの側部から前記吸収要素の短手方向の外側又は内側に10mm以内の位置に配置される、
(1)又は(2)に記載の使い捨てオムツ。
【0112】
(4) 前記吸収要素は着用者側の表面とその反対側の裏面を有し、
前記股下弾性部材は、前記吸収要素の短手方向両側に位置しており、かつ前記吸収要素の表面よりも裏面に近い位置に配置される、
(3)に記載の使い捨てオムツ。
【0113】
(5) さらに、前記吸収要素の長手方向に延びる、前記吸収要素の長手方向に伸縮自在の1対の股下弾性部材を備え、
前記股下弾性部材は、前記防漏壁の前記固定端のそれぞれから前記吸収要素の短手方向の外側又は内側に10mm以内の位置に配置される、
(1)又は(2)に記載の使い捨てオムツ。
【0114】
(6) 前記第一のシート部分及び前記第二のシート部分が、前記非凹凸領域において、前記弾性部材に適用された接着剤により互いに接合される、
(1)〜(5)のいずれか1つに記載の使い捨てオムツ。
【0115】
(7) 前記第一のシート部分の前記凸部が前記第二のシート部分の前記凹部の内部に入り込むと共に、前記第二のシート部分の前記凸部が前記第一のシート部分の前記凹部の内部に入り込んでいる、
(1)〜(6)のいずれか1つに記載の使い捨てオムツ。