特許第6249712号(P6249712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249712非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249712
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20171211BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G01N33/53 N
   G01N33/543 501A
   G01N33/543 501J
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-211813(P2013-211813)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-75395(P2015-75395A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】803000056
【氏名又は名称】公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸利
(72)【発明者】
【氏名】西村 成子
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−524854(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/040798(WO,A1)
【文献】 特表2013−521511(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/110121(WO,A1)
【文献】 高橋幸利,グルタミン酸受容体抗体の意義,脳と発達 テーマ企画4:自己免疫性脳炎Up−to−Date:自己免疫性脳炎の診断と治療,日本,2013年,Vol.45,No.2,Page.99-105
【文献】 Hamano H、外10名,High serumIgG4 concentrations in patients with sclerosing pancretitis.,N Engl J Med.,2001年 3月 8日,Vol.344,No.10,Page.732-738
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非傍腫瘍性急性脳炎患者の血清又は髄液におけるGluN2B-NT2抗体のIgGサブクラス濃度を定量する手段と、
定量されたIgGサブクラス濃度に基づいて前記非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後を示す手段と、を有する、非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法において、
前記IgGサブクラス濃度を定量する手段が、下記の工程a)〜i)を有し、
a)ELISAのプレートの検体用ウェルを、目的とする抗体の抗原を含有する溶液によりコーティングする工程;
b)前記プレートの標準用ウェルを、希釈系列化されたIgG1〜IgG4によりコーティングする工程;
c)プレートを、緩衝剤溶液及び非特異結合部位をブロックし得る溶液により洗浄する工程;
d)プレートを、更に、洗浄緩衝剤により洗浄する工程;
e)生物学的試料を前記検体用ウェルにおいて配置し、前記プレートをインキュベートする工程;
f)プレートを洗浄緩衝剤により繰り返し洗浄する工程;
g)標識二次抗体を含有する溶液を各ウェルに添加し、インキュベートする工程;
h)プレートを洗浄緩衝剤により洗浄した後、発色基質を各ウェルに添加する工程;
i)プレートに停止溶液を添加し、吸光度測定を行う工程;
前記予後を示す手段が、定量されたIgG1濃度が5ng/ml以上且つIgG3濃度が2ng/ml以上の場合に予後不良であると判定する工程を有する、
ことを特徴とする非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法。
【請求項2】
前記非特異結合部位をブロックし得る溶液は、PBS+トゥイーン20からなる溶液であることを特徴とする請求項項に記載の非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N-methyl-D-aspartate型グルタミン酸受容体抗体(NMDAR抗体)の測定方法には主として、イムノブロット法、cell-based assay法、ELISA法の3種類がある。
【0003】
抗NMDAR抗体陽性脳炎は、2007年ペンシルヴェニア大学のDalmauらにより提唱された自己免疫性脳炎である。従来、cell-based assay法によるNMDAR抗体(Dalmau抗体)は、卵巣奇形腫のある抗NMDAR抗体陽性脳炎に特異的なマーカーと考えられていた。
【0004】
しかしながら、今日では、NMDAR抗体は、奇形腫を合併しない脳炎、てんかん、Creutzfeldt-Jakob病、単純ヘルペス脳炎回復期、ミトコンドリア病等でも検出されるようになっている。
【0005】
そこで、これらの症例の臨床特徴や予後の異なる神経疾患に共通して存在するNMDAR抗体の役割を理解するために、抗NMDAR抗体のIgGサブクラス測定方法が求められる。
【0006】
IgGサブクラス測定方法には、免疫比ろう法(immunonephelometry: NIA)や免疫比濁法(immunoturbidimetry)等の比濁分析法(nephelometry)、一元放射状免疫拡散法(single radial immunodiffusionmethod: SRID)等の免疫拡散法、酵素抗体法(enzyme-linked immunosorbentassay: ELISA)等が開発されている。
【0007】
このうち、ELISA法は比較的簡便で感度も良い方法であるため、ELISA法を用いた抗NMDAR抗体の各IgGサブクラスの濃度の定量方法が求められる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hamano H, Kawa S, HoriuchiA, et al. High serum IgG4concentrations in patients with sclerosing pancreatitis. NEngl J Med. 344(10): 732-738, 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法は、非傍腫瘍性急性脳炎患者の血清又は髄液におけるGluN2B-NT2抗体のIgGサブクラス濃度を定量する手段と、定量されたIgGサブクラス濃度に基づいて前記非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後を示す手段と、を有する、非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法において、前記IgGサブクラス濃度を定量する手段が、下記の工程a)〜i)を有し、
a)ELISAのプレートの検体用ウェルを、目的とする抗体の抗原を含有する溶液によりコーティングする工程;
b)前記プレートの標準用ウェルを、希釈系列化されたIgG1〜IgG4によりコーティングする工程;
c)プレートを、緩衝剤溶液及び非特異結合部位をブロックし得る溶液により洗浄する工程;
d)プレートを、更に、洗浄緩衝剤により洗浄する工程;
e)生物学的試料を前記検体用ウェルにおいて配置し、前記プレートをインキュベートする工程;
f)プレートを洗浄緩衝剤により繰り返し洗浄する工程;
g)標識二次抗体を含有する溶液を各ウェルに添加し、インキュベートする工程;
h)プレートを洗浄緩衝剤により洗浄した後、発色基質を各ウェルに添加する工程;
i)プレートに停止溶液を添加し、吸光度測定を行う工程;
前記予後を示す手段が、定量されたIgG1濃度が5ng/ml以上且つIgG3濃度が2ng/ml以上の場合に予後不良であると判定する工程を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非傍腫瘍性急性脳炎患者の予後診断装置の作動方法得られる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgGサブクラスの測定結果を示す図である。
図2】抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgGサブクラスの経時的変動を示す図である。
図3】抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgGサブクラスと急性期入院日数を示す図である。
図4】抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgG1サブクラスと予後を示す図である。
図5】抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgG2サブクラスと予後を示す図である。
図6】抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgG3サブクラスと予後を示す図である。
図7】抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgG4サブクラスと予後を示す図である。
図8】免疫介在性神経疾患の髄液NR2B-NT2抗体のIgGサブクラスの濃度比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0014】
本実施形態にかかる抗NMDAR抗体のIgGサブクラス濃度の定量方法は、下記工程を有することを特徴とする。
a)ELISAのプレートの検体用ウェルを、目的とする抗体の抗原を含有する溶液によりコーティングする工程;
b)前記プレートの標準用ウェルを、希釈系列化されたIgG1〜4によりコーティングする工程;
c)プレートを、緩衝剤溶液及び非特異結合部位をブロックし得る溶液により洗浄する工程;
d)プレートを、更に、洗浄緩衝剤により洗浄する工程;
e)生物学的試料を前記検体用ウェルにおいて配置し、前記プレートをインキュベートする工程;
f)プレートを洗浄緩衝剤により繰り返し洗浄する工程;
g)標識二次抗体を含有する溶液を各ウェルに添加し、インキュベートする工程;
h)プレートを洗浄緩衝剤により洗浄した後、発色基質を各ウェルに添加する工程;
i)プレートに停止溶液を添加し、吸光度測定を行う工程;
ELISAのプレートは、特に制限されるものではなく、市販の種々のELISAプレートを適用することができる。目的とする抗体の抗原を含有する溶液によるコーティングでは、プレートの一部のウェル(検体用ウェル)に抗原を吸着(コーティング)させる。目的とする抗体はNR2B-NT2抗体である。このコーティングは、通常、抗原を含む溶液をウェルに添加することにより行なう。市販のELISAプレートは通常96個のウェルを有するので、このうちの検体用ウェルに抗原を含む溶液を添加し、残りのウェルは溶液を添加しないでおく。
【0015】
次に、プレートの標準用ウェルを、希釈系列化されたIgG1〜IgG4によりコーティングする。
【0016】
次に、抗原がコーティングされたプレートを洗浄し、他の物質がプレートに吸着しないようにブロッキングを行なう。ブロッキングは、検体用ウェルと標準用ウェルの両方にブロッキング剤を含む溶液を添加することにより行なう。ブロッキング剤は、上記抗原と特異的な相互作用をしないものを用い、例えばPBSTに0.5%BSAを加えたものを用いる。
【0017】
次に、プレートを、更に、洗浄緩衝剤により洗浄し、NR2B-NT2抗体の抗原と特異的に相互作用する免疫グロブリンを含む生物学的試料の溶液を検体用ウェルに添加し、抗原に結合させ、プレートを例えば37℃にて2時間インキュベートする。生物学的試料は特に限定されるものではないが、例えば血清又は髄液等である。
【0018】
次に、プレートを例えばPBSTで洗浄し、標識二次抗体を各ウェルに作用させ、プレートを例えば2時間の周囲温度でインキュベートする。
【0019】
次に、プレートを洗浄緩衝剤により洗浄した後、例えばTMB,H2O2等の発色基質を各ウェルに添加する。
【0020】
次に、プレートに1M溶液のH2SO4等の停止溶液を添加し、吸光度測定を行う。吸光度測定は、例えば405nmで反応停止から30分以内に読み取る。
【実施例】
【0021】
cell-based assay法によるNMDAR抗体(Dalmau抗体)又はELISAによるNR2B-NT2抗体陽性の非傍腫瘍性急性脳炎(抗NMDAR脳炎-NP)21例の免疫治療前の髄液を用いて、NR2B-NT2抗体IgGサブクラスを定量した。疾病対照髄液としては、炎症を伴わない部分てんかん症例の髄液を使用した。後遺症の評価については、ADLはBarthel scoreで、てんかん発作、精神症状、認知機能、記憶機能、運動機能は下記表1に示す評価スコアを用いた。
【0022】
【表1】
【0023】
抗NMDAR抗体のうちのNR2B-NT2抗体のIgGサブクラス濃度を定量するELISAは、下記手順により行った。
1.Maxisorb plate(Nalge Nunc International,468667)をPBS300μlで5回洗浄した。
2.Maxisorb plateの検体用ウェルを、NR2B-NT2ペプチド(KERKWERVGKWKDK,100μg/ml)で、コーティングした(200μl well,4℃ 終夜)。
3.Maxisorb plateの標準用ウェルを、希釈系列化されたIgG1〜G4(フナコシ、ABD 5219-3004,5225-3004,5248-3004,5254-3004:1mg/ml)でコーティングした。
4.Maxisorb plateを、PBS 300μlで1回洗浄した。
5.Maxisorb plateを、0.5% BSA in PBST(250μl)で2時間ブロッキングした。
6.Maxisorb plateを、PBST 300μlで1回洗浄した。
7.NR2B-NT2抗体陽性の非傍腫瘍性急性脳炎(抗NMDAR脳炎-NP)の免疫治療前の髄液(10% BSA in PBSTで10倍希釈, 100μl)を検体用ウェルにおいて配置し、37℃、2時間インキュベートした。
8.Maxisorb plateを、PBST 200μlで5回洗浄した。
9.HRP conjugated anti-human IgG sabclass antibodies(Human IgG Subclass Screening Kit, フナコシ、CYGNUS,TECHNOROGIES ♯IM50)(1:100)の希釈液(PBSTで100倍希釈)を100μl/well入れて、2時間室温に置いた。
10.Maxisorb plateを、PBST 200μlで5回洗浄した。
11.TMB,H202を当量混和し(各6ml/枚)、100μl/well添加した。
12.15分後に、1M H3PO4 100μl加えて反応を停止させた。
13.30分以内に、450nmで吸光度測定を行った。
【0024】
図1は、抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgGサブクラスの測定結果を示す図である。図1に示されるように、IgGサブクラスごとの割合では、NR2B-NT2抗体IgG2、IgG4サブクラスが疾病対照髄液に比べて有意に増加し、IgG1サブクラスが有意に減少していた。
【0025】
図2は、抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgGサブクラスの経時的変動を示す図である。図2に示されるように、抗NMDAR脳炎-NPの髄液では、脳炎発病後の経過で見ると、0〜5病日では、NR2B-NT2抗体のIgG1サブクラスは3/9、IgG2サブクラスは9/9、IgG3サブクラスは3/9、IgG4サブクラスは7/9例で、平均+2SDを超えていた。発病後10〜20病日では、NR2B-NT2抗体のIgG1サブクラスは4/6、IgG2サブクラスは5/6、IgG3サブクラスは4/6、IgG4サブクラスは4/6例で、平均+2SDを超えていた。以上より、発病期にはIgG2サブクラスが全例高値で、IgG4サブクラスも約80%の症例で高値であり、その後に低下する経過が推測された。IgG1、IgG3サブクラスは発病初期よりも10〜20病日に高値となる経過が推定された。
【0026】
図3は、抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgGサブクラスと急性期入院日数を示す図である。図3に示されるように、抗NMDAR脳炎-NPの髄液では、NR2B-NT2抗体IgG1サブクラスの濃度とIgG3サブクラスの濃度が急性期入院日数と有意に相関し、IgG1、IgG3サブクラス抗体の濃度が高いほど長期入院となり、重症化することが明らかになった。
【0027】
図4は、抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgG1サブクラスと予後を示す図である。図4に示されるように、抗NMDAR脳炎-NPの髄液では、NR2B-NT2抗体のIgG1サブクラス濃度はBarthelscoreと有意な相関が見られたが、他の予後とは相関が見られなかった。
【0028】
図5は、抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgG2サブクラスと予後を示す図である。図5に示されるように、抗NMDAR脳炎-NPの髄液では、NR2B-NT2抗体のIgG2サブクラス濃度は予後と有意な相関が見られなかった。
【0029】
図6は、抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgG3サブクラスと予後を示す図である。図6に示されるように、抗NMDAR脳炎-NPの髄液では、NR2B-NT2抗体のIgG3サブクラス濃度はBarthelscore、てんかん発作(Epilepsy score)、認知機能(Cognitive score)、運動機能(Motor score)と有意な相関が見られた。
【0030】
図7は、抗NMDAR脳炎-NPの髄液NR2B-NT2抗体のIgG4サブクラスと予後を示す図である。図7に示されるように、抗NMDAR脳炎-NPの髄液では、NR2B-NT2抗体のIgG4サブクラス濃度は予後と有意な相関が見られなかった。
【0031】
図8は、免疫介在性神経疾患の髄液NR2B-NT2抗体のIgGサブクラスの濃度比較を示す図である。なお、図において、NMDAR-E-NPは抗NMDAR脳炎-NPを示し、NMDAR-E-OTは抗NMDAR脳炎-OTを示し、CJDはCreutzfelt-Jakob病を示し、PE-Eは急性脳炎後部分てんかんを示し、Control PEは疾病対照部分てんかんを示す。図8に示されるように、NMDAR抗体の一つであるNR2B-NT2抗体のIgG1サブクラス濃度は、抗NMDAR脳炎-NP、抗NMDAR脳炎-OT、Creutzfelt-Jakob病、急性脳炎後部分てんかん等の種々の疾患で対照に比べて高値となった。NR2B-NT2抗体のIgG2サブクラスは精神症状を主症状とする抗NMDAR脳炎-NP、Creutzfelt-Jakob病等で対照に比べて高値となった。
【0032】
以上、上述の実施例に示したように、NMDAR抗体の一つであるNR2B-NT2抗体のIgG1〜4サブクラスをELISAで定量する方法を確立した。
【0033】
図2に示したように、抗NMDAR脳炎-NPでは、発病初期にNR2B-NT2抗体のIgG1〜4サブクラスのうち、補体活性化に関与しないIgG2サブクラスが著しく増加し、またIgG4サブクラスも増加していた。そのためこれらのIgGサブクラスが発病初期の辺縁系症状に関与していると推測した。IgG2サブクラス抗体はNMDARの内在化を起こし、NMDAR拮抗作用で精神症状をもたらすと推測した。
【0034】
図2に示したように、抗NMDAR脳炎-NPでは、発病後10〜20日でNR2B-NT2抗体のIgG1〜4サブクラスのうち、補体活性化に関与するIgG1、IgG3サブクラスが増加する症例があった。
【0035】
図3に示したように、抗NMDAR脳炎-NPでは、NR2B-NT2抗体のIgG1〜4サブクラスのうち、補体活性化に関与するIgG1、IgG3サブクラスと急性期入院日数(重症度)とが相関し、補体介在性の神経障害が重症化と関連し、予後が不良となる可能性が示唆された。
【0036】
図6に示したように、抗NMDAR脳炎-NPでは、NR2B-NT2抗体のIgG1サブクラス濃度はBarthelscoreと相関し、NR2B-NT2抗体のIgG3サブクラス濃度は、Barthel score、てんかん発作、認知機能、運動機能と有意な相関が見られ、補体介在性の神経障害がてんかん発作、認知機能、運動機能等の予後を規定している可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
抗NMDAR抗体のIgGサブクラス濃度の定量に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]