(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、枠部に遮蔽板を押し付ける際に、膜と、枠部と、遮蔽板とで囲まれる空間部分に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給部を備えることを特徴とする請求項1記載の電子線滅菌装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の滅菌容器内部の洗浄時に、電子線照射装置の膜が滅菌ガスに接触して腐食し、膜の電子線透過能が低下したり、真空筐体内の真空度合いが低下したりするという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、滅菌ガスによる滅菌容器内部の洗浄の際に生じる電子線照射装置における膜の腐食を抑制することが可能な電子線滅菌装置、およびそれを用いた滅菌容器内部の滅菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のとおりである。
[1]内部が真空状態の真空筐体、
真空筐体内に設けられ、電子線を発生させるための電子線発生器、
真空筐体に設けられ、電子線発生器で発生した電子線を真空筐体の外部へ照射するための出射窓、および
真空筐体内の真空状態を維持するために出射窓を覆うように設けられ、電子線を透過する膜を備える電子線照射装置と;
電子線照射装置を収納する滅菌容器と;
滅菌容器内を滅菌ガスで洗浄する際に、膜を滅菌ガスから遮蔽して保護するための遮蔽機構と;を備え、
遮蔽機構が、
出射窓の周りを囲む枠部と、
枠部で囲まれる部分を開閉可能な遮蔽板と、
遮蔽板を、枠部に対向しかつ当該枠部との間を有する位置まで案内するガイド部と、
遮蔽板をガイド部に沿って移動させる移動機構と、
遮蔽板で枠部を閉じる際に、枠部に遮蔽板を押し付けて、膜と、枠部と、遮蔽板とで囲まれる空間部分を密閉し、膜を滅菌ガスから遮蔽するための押付装置と、
を備えることを特徴とする電子線滅菌装置。
【0008】
[2]さらに、枠部に遮蔽板を押し付ける際に、膜と、枠部と、遮蔽板とで囲まれる空間部分に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給部を備えることを特徴とする[1]記載の電子線滅菌装置。
[3]枠部に遮蔽板を押し付ける際、および枠部に遮蔽板を押し付けた後、出射窓より電子線が照射されることを特徴とする[1]記載の電子線滅菌装置。
【0009】
[4]内部が真空状態の真空筐体、
真空筐体内に設けられ、電子線を発生させるための電子線発生器、
真空筐体に設けられ、電子線発生器で発生した電子線を真空筐体の外部へ照射するための出射窓、および
真空筐体内の真空状態を維持するために出射窓を覆うように設けられ、電子線を透過する膜を備える電子線照射装置と;
電子線照射装置を収納する滅菌容器と;
滅菌容器内を滅菌ガスで洗浄する前に膜を予め
滅菌ガスが当該膜に凝着しない温度に加熱して、膜を滅菌ガスから保護するための加熱装置と;
を備えることを特徴とする電子線滅菌装置。
【0010】
[5]
内部が真空状態の真空筐体、
真空筐体内に設けられ、電子線を発生させるための電子線発生器、
真空筐体に設けられ、電子線発生器で発生した電子線を真空筐体の外部へ照射するための出射窓、および
真空筐体内の真空状態を維持するために出射窓を覆うように設けられ、電子線を透過する膜を備える電子線照射装置と;
電子線照射装置を収納する滅菌容器と;
滅菌容器内を滅菌ガスで洗浄する際に、膜を滅菌ガスから遮蔽して保護するための遮蔽機構と;を備え、
遮蔽機構が、
出射窓の周りを囲む枠部と、
枠部で囲まれる部分を開閉可能な遮蔽板と、
遮蔽板で枠部を閉じる際に、枠部に遮蔽板を押し付けて、膜と、枠部と、遮蔽板とで囲まれる空間部分を密閉し、膜を滅菌ガスから遮蔽するための押付装置と、
を備える電子線滅菌装置を用いた、滅菌容器内部の滅菌方法であって、
(1)遮蔽板を枠部と対向する位置に移動させる工程と、
(2)遮蔽板を枠部に押し付ける工程と、
(3)遮蔽板を枠部に押し付けた後、滅菌容器内に滅菌ガスを充填する工程と、
(4)遮蔽板を枠部と対向する位置に移動させてから、遮蔽板を枠部に押し付けるまでの間、および遮蔽板を枠部に押し付けた後、電子線を遮蔽板に向けて照射する工程と、
を含むことを特徴とする滅菌容器内部の滅菌方法。
[6][4]に記載の電子線滅菌装置を用いた、滅菌容器内部の滅菌方法であって、
(1)膜を滅菌ガスが当該膜に凝着しない温度に加熱する工程と、
(2)膜を滅菌ガスが当該膜に凝着しない温度に加熱した後、滅菌容器内に滅菌ガスを充填する工程と、
を含むことを特徴とする滅菌容器内部の滅菌方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、滅菌ガスによる滅菌容器内部の洗浄の際に生じる電子線照射装置における膜の腐食を抑制することが可能な電子線滅菌装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
[実施形態1]
本実施形態の電子線滅菌装置は、
図1および2に示すように、容器(例えば、ボトル)の外面を滅菌する電子線照射装置1と、電子線照射装置1を収納する滅菌容器(図示しない)とを備える。
電子線照射装置1は、内部が真空状態の真空筐体2と、真空筐体2内に設けられ、電子線を発生させるための電子線発生器(図示しない)と、真空筐体2に設けられ、電子線発生器で発生した電子線を真空筐体2の外部へ照射するための出射窓3と、真空筐体2内の真空状態を維持するために出射窓3を覆うように設けられ、電子線を透過する膜4と、を備える。出射窓3は、グリッド3aが有する複数の開口部により形成される。膜4は、例えば、厚み5〜25μmである。膜4は、例えば、チタン箔からなる。
【0014】
さらに、電子線滅菌装置は、滅菌容器内を滅菌ガスで洗浄する際に、膜4を滅菌ガスから遮蔽して保護するための遮蔽機構を備える。滅菌ガスとしては、例えば、過酸化水素ガスが用いられる。
【0015】
遮蔽機構は、出射窓3の周りを囲む枠部5を備える。枠部5は、出射窓3の周りを囲む開口周縁部5aと、開口周縁部5aの下方に設けられ、膜4を滅菌ガスから遮蔽する際に後述する遮蔽板6と密着する当接部5bとにより構成される。
【0016】
また、遮蔽機構は、枠部5で囲まれる部分(当接部5bで囲まれる部分)を開閉可能な遮蔽板6と、遮蔽板6で枠部5を閉じる際に、枠部5の当接部5bに遮蔽板6を押し付けて、膜4と、枠部5と、遮蔽板6とで囲まれる空間部分10を密閉し、膜4を滅菌ガスから遮蔽するための押付装置11と、を備える。
遮蔽板6は、例えば、ステンレス鋼またはアルミニウムからなる。遮蔽板6の厚みは、例えば、3〜10mmである。
【0017】
押付装置11は、遮蔽板6を当接部5bに押し付けるためのピン11aと、ピン11aを駆動するための押付シリンダー11bとを備える。押付装置11は、遮蔽板6を枠部5に十分に押し付けることができるように、遮蔽板6の枠部5との当接部分に沿って複数設けるのが好ましい。
遮蔽板6が枠部5に密着し易いように、当接部5bの遮蔽板6と対向する表面に、ゴム等の弾性体からなるシート状シール部材を設けてもよい。また、枠部5の遮蔽板6と対向する面において、枠部5で形成される開口部分の周りを囲むようにゴム等の弾性体からなる凸状シール部材を設けてもよい。
【0018】
遮蔽機構は、さらに、遮蔽板6による枠部5で囲まれる部分の開閉動作を行うための開閉シリンダー7を備える。遮蔽板6から延びる接続部材6aの端部を、開閉シリンダー7の接続部材12の溝部12aに嵌合させることで、遮蔽板6は開閉シリンダー7に接続される。電子線の照射により容器の外面を滅菌する際には、開閉シリンダー7により膜4と対向する位置から遮蔽板6を遠ざけることができる。
押付装置11により遮蔽板6が押し付けられることで、遮蔽板6(接続部材6a)が枠部5の側へ押し上げられても、その押し上げられる方向に溝部12aで形成される空間が開放されているため、開閉シリンダー7の接続部材12に負荷がかからない。
【0019】
枠部5に遮蔽板6を押し付ける際(開閉シリンダー7で遮蔽板6を枠部5と対向する位置に移動させてから押付装置11で遮蔽板6を枠部5に押し付けるまでの間)に、出射窓3より遮蔽板6に向けて電子線を照射するのが好ましい。滅菌ガスで滅菌されない、枠部5の遮蔽板6との当接面および遮蔽板6の枠部5との当接面を、拡散した電子線で滅菌することができる。
また、枠部5に遮蔽板6を押し付けた状態で、出射窓3より遮蔽板6に向けて電子線を照射するのが好ましい。膜4、枠部5、および遮蔽板6で囲まれる空間部分10において電子線が拡散することで、滅菌ガスで滅菌されない、空間部分10の内部(空間部分10内で露出する膜4、枠部5、および遮蔽板6の表面を含む)を滅菌することができる。
これにより、滅菌ガスによる洗浄の後、遮蔽板6を枠部5から離した際に、空間部分10内に存在する生菌が外部に拡散して、滅菌ガスで洗浄された部分が汚染されるのを防ぐことができる。
上記の遮蔽板6への電子線の照射は、例えば、加速電圧125kVおよび電流値1〜5mA程度で行われる。電子線の照射時間は、例えば、数秒〜数十秒程度である。
遮蔽板6から反射した電子の多くが膜4中に吸収され、その電子のエネルギーにより膜が過度に加熱されることで、膜4が焼損するのを防ぐため、遮蔽板6に向けて照射される電子線は、遮蔽板6で反射した電子線が膜4を透過することができる程度のエネルギーを有するのが好ましい。
【0020】
開閉シリンダー7により当接部5bの下方に遮蔽板6を移動させた際、遮蔽板6の枠部5との当接面と、枠部5の遮蔽板6との当接面との間に、出射窓3より照射された電子線が拡散して、十分に進入できるように、枠部5と、遮蔽板6(押付装置11により枠部5に押し付けられる前の状態)との間の寸法(
図1中のL1)を、5〜10mmに設定するのが好ましい。
【0021】
遮蔽機構は、さらに、開閉シリンダー7により遮蔽板6が移動する方向における遮蔽板6の左右端縁部を支持するガイド部13を備える。遮蔽板6はガイド部13に沿って移動することができる。
遮蔽機構は、ガイド部13の高さを調整するための、スプリングを備えた高さ調節ねじ9を備える。ねじ9により、枠部5と、ガイド部13との間の距離、すなわち枠部5と、遮蔽板4(押付装置11により枠部5に押し付けられる前の状態)との間の寸法(
図1中のL1)を調整することができる。
【0022】
当接部5bは、当接部5bに遮蔽板6を押し付ける際(開閉シリンダー7で遮蔽板6を枠部5と対向する位置に移動させてから押付装置11で遮蔽板6を枠部5に押し付けるまでの間)に、膜4と、枠部5と、遮蔽板6とで囲まれる空間部分10に不活性ガスを供給するための供給路8(不活性ガス供給部)を備える。
供給路8より不活性ガスを供給しながら遮蔽板6を枠部5に押し付けることで、空間部分10が密閉される際に空間部分10内を不活性ガスに置換することができる。空間部分10を不活性ガスで置換することで、電子線の照射時に酸素が存在することで生じるオゾンにより膜4が腐食するのが抑制される。
遮蔽板6を枠部5に押し付けた後に、空間部分10内の気圧が過度に高くならない範囲(膜4やグリッド3aに悪影響を及ぼさない範囲)で不活性ガスを供給してもよい。
不活性ガスは、乾燥した窒素ガスであるのが好ましい。乾燥した窒素ガスを用いることで、オゾンの発生を防止するとともに、膜が腐食し易い硝酸が窒素ガスおよび水分により生成するのを防止することができる。
【0023】
以下、遮蔽機構の動作について説明する。
滅菌容器内部を滅菌ガスで洗浄する際、開閉シリンダー7で遮蔽板6を枠部5と対向する位置に移動させた後、押付装置11のピン11aで遮蔽板6を枠部5に押し付ける。
滅菌容器内部の滅菌ガスによる洗浄が終了した際、押付装置11のピン11aを遮蔽板6から離すことで、遮蔽板6を枠部5から離した後、開閉シリンダー7により枠部5と対向する位置から所定の位置へ遮蔽板6を遠ざける。
また、開閉シリンダー7より枠部5と対向する位置に遮蔽板6を移動させた段階で、遮蔽板6に向けて電子線の照射を開始し、遮蔽板6を枠部5に押し付けてから所定時間(例えば、数秒〜数十秒程度)が経過した後、遮蔽板6への電子線の照射を停止する。
上記の滅菌ガスの充填による滅菌および電子線の照射による滅菌の組み合わせにより、滅菌容器の内壁および滅菌容器内に設置された装置(膜を含む)の外面の全体を滅菌することができる。
【0024】
本実施形態では、遮蔽板6に平板を用いたが、遮蔽板6の形状はこれに限定されない。遮蔽板6の表面の一部(遮蔽板6を枠部5に押し付けた際に空間部分10内で露出する面)に、凸状または凹状に湾曲した面(湾曲部)を設けてもよい。大きな湾曲部を1つ設けてもよく、小さな湾曲部を多数設けてもよい。
湾曲した面に電子線が当たって反射すると、平面の場合よりも効果的に電子線が拡散するため、枠部5に遮蔽板6を押し付ける際に電子線を遮蔽板6に向けて照射することで、枠部5の遮蔽板6との当接面、および遮蔽板6の枠部5との当接面を、拡散した電子線により効率良く滅菌することができる。
【0025】
本実施形態の電子線滅菌装置の変形例として、押付装置11を用いずに、
図3に示すように、接続部材6aの代わりに、接続部材16a、16bを用い、ガイド部13の下部に接続部材16a、16bの端部を収納する収納部17a、17bを設けた押付機構を構成してもよい。
遮蔽板6が枠部5と対向する位置まで移動するとともに、収納部17a、17bに収納されることで遮蔽板6を枠部5に押し付けることができる。
【0026】
開閉シリンダー7により枠部5と対向する位置に遮蔽板6を移動させた際、遮蔽板6の枠部5との当接面と、枠部5の遮蔽板6との当接面との間に、出射窓3より照射された電子線が拡散して、十分に進入できるように、枠部5と、遮蔽板6(枠部5に押し付けられる前の状態)との間の寸法(
図3中のL2)を、5〜10mmに設定するのが好ましい。
【0027】
[実施形態2]
本実施形態の電子線滅菌装置は、
図4および5に示すように、容器(例えば、ボトル)の内面を滅菌する電子線
照射装置21と、電子線照射装置
21を収納する滅菌容器(図示しない)とを備える。
電子線照射装置21は、内部が真空状態の真空筐体22と、真空筐体22内に設けられ、電子線を発生させるための電子線発生器(図示しない)と、真空筐体22に設けられ、電子線発生器で発生した電子線を真空筐体22の外部へ照射するための出射窓23と、真空筐体22内の真空状態を維持するために出射窓23を覆うように設けられ、電子線を透過する膜24と、を備える。出射窓23は、グリッド23aが有する複数の開口により形成される。
【0028】
真空筐体22は、電子線発生器を収納する本体部22aと、本体部22aから延出し、容器の内部へ挿入するためのノズル部22bとを備える。出射窓23および出射窓23を覆う膜24は、ノズル部22bの先端付近に設けられる。出射窓23は、グリッド23aが有する複数の開口部により形成される。膜24は、例えば、厚み5〜25μmである。膜24は、例えば、チタン箔からなる。
本体部22aとノズル部22bとの隔壁30は、滅菌容器の一部を構成する。滅菌ガスによる洗浄時には、壁30で形成されるノズル部22b側の空間内部(滅菌容器内部)に、滅菌ガスが導入される。
【0029】
さらに、電子線滅菌装置は、滅菌容器内を滅菌ガスで洗浄する際に、膜24を滅菌ガスから遮蔽して保護するための遮蔽機構を備える。滅菌ガスとしては、例えば、過酸化水素ガスが用いられる。
【0030】
遮蔽機構は、出射窓23の周りを囲む枠部25aを備える。枠部25aは、ノズル部22bにおける出射窓23(膜24)より突出する先端部分により構成される。
遮蔽機構は、枠部25aで囲まれる部分を開閉可能な遮蔽板25bと、遮蔽板25bで枠部25aを閉じる際に、枠部25aに遮蔽板25bを押し付けて、膜24と、枠部25aと、遮蔽板25bとで囲まれる空間部分を密閉し、膜24を滅菌ガスから遮蔽するための押付装置26と、を備える。押付装置26は、遮蔽板25bを昇降させることが可能な昇降シリンダーで構成される。
遮蔽板25bは、例えば、ステンレス鋼またはアルミニウムからなる。遮蔽板25bの厚みは、例えば、3〜10mmである。
【0031】
図4および5に示すように、遮蔽機構は、さらに、遮蔽板25bによる枠部25aで囲まれる部分の開閉動作を行うための開閉シリンダー29を備える。
開閉シリンダー29により回転軸28を中心として接続部材27を介して押付装置26および当該装置26の上に配される遮蔽板25bを水平方向にて旋回させることができる。これにより、電子線照射による容器内部の滅菌時に、ノズル部22bの先端付近から遮蔽板25bを遠ざけることができ、容器内部にノズル部22bを挿入することができる。
【0032】
遮蔽板25bを枠部25aに押し付ける際(開閉シリンダー29で遮蔽板25bを枠部25aと対向する位置に移動させてから押付装置26で遮蔽板25bを枠部25aに押し付けるまでの間)に、出射窓23より遮蔽板25bに向けて電子線を照射するのが好ましい。滅菌ガスで滅菌されない、枠部25aの遮蔽版25bとの当接面、および遮蔽板25bの枠部25aとの当接面を、拡散した電子線で滅菌することができる。
また、枠部25aに遮蔽板25bを押し付けた状態で、出射窓23より遮蔽板25bに向けて電子線を照射するのが好ましい。膜24、枠部25a、および遮蔽板25bで囲まれる空間部分において電子線が拡散することで、滅菌ガスで滅菌されない、当該空間部分の内部(当該空間部分に露出する膜24、枠部25a、および遮蔽板25bの表面を含む)を滅菌することができる。
これにより、滅菌ガスによる洗浄の後、遮蔽板25bを枠部25Aから離した際に、膜24、枠部25a、および遮蔽板25bで囲まれる空間部分内に存在する生菌が外部に拡散して、滅菌ガスで洗浄された部分が汚染されるのを防ぐことができる。
上記の遮蔽板25bへの電子線の照射は、例えば、加速電圧125kVおよび電流値1〜2mA程度で行われる。電子線の照射時間は、例えば、数秒〜数十秒程度である。
遮蔽板25bから反射した電子の多くが膜24中に吸収され、その電子のエネルギーにより膜24が過度に加熱されることで、膜24が焼損するのを防ぐため、遮蔽板25bに向けて照射される電子線は、遮蔽板25bで反射した電子線が膜24を透過することができる程度のエネルギーを有するのが好ましい。
【0033】
開閉シリンダー29によりノズル部22b(枠部25a)と対向する位置に遮蔽板25bを回転移動させた際、遮蔽板25bの枠部25aとの当接面と、枠部25aの遮蔽板25bとの当接面との間に、出射窓23より照射された電子線が拡散して、十分に進入できるように、枠部25aと、遮蔽板25b(枠部25aに押し付けられる前の状態)との間の寸法(
図4中のL3)を、5〜10mmに設定するのが好ましい。
【0034】
以下、遮蔽機構の動作について説明する。
滅菌容器内部を滅菌ガスで洗浄する際、開閉シリンダー29によりノズル部22b(枠部25a)と対向する位置に遮蔽板25bを回転移動させた後、押付装置26により遮蔽板25bを上方へ(枠部25aに向けて)移動させ、遮蔽板25bをノズル部22bの枠部25aに押し付ける。
滅菌容器内部の滅菌ガスによる洗浄が終了した際、押付装置26により遮蔽板25bを下方に移動させて遮蔽板25bをノズル部22bの枠部25aから離した後、開閉シリンダー29により遮蔽板25bを回転移動させてノズル部22b(枠部25a)と対向する位置から遮蔽板25bを所定の位置へ遠ざける。
また、開閉シリンダー29によりノズル部22b(枠部25a)と対向する位置に遮蔽板25bを回転移動させた段階で、遮蔽板25bに向けて電子線の照射を開始し、遮蔽板25bを枠部25aに押し付けてから所定時間(例えば、数秒〜数十秒程度)が経過した後、遮蔽板25bへの電子線の照射を停止する。
上記の滅菌ガスの充填による滅菌および電子線の照射による滅菌の組み合わせにより、滅菌容器の内壁および滅菌容器内に設置された装置(膜を含む)の外面の全体を滅菌することができる。
【0035】
本実施形態では、遮蔽板25bに平板を用いたが、遮蔽板25bの形状はこれに限定されない。遮蔽板25bの表面の一部(遮蔽板25bを枠部25aに押し付けた際に、膜24、枠部25a、および遮蔽板25bで囲まれる空間部分内で露出する面)に、凸状または凹状に湾曲した面(湾曲部)を設けてもよい。大きな湾曲部を1つ設けてもよく、小さな湾曲部を多数設けてもよい。
湾曲した面に電子線が当たって反射すると、平面の場合よりも効果的に電子線が拡散するため、枠部25aに遮蔽板25bを押し付ける際に電子線を遮蔽板25bに向けて照射することで、枠部25aの遮蔽板25bとの当接面、および遮蔽板25bの枠部25aとの当接面を、拡散した電子線により効率良く滅菌することができる。
【0036】
[実施形態3]
本実施形態の電子線滅菌装置は、
図6に示すように、容器(例えば、ボトル)の外面を滅菌する電子線照射装置1と、電子線照射装置1を収納する滅菌容器(図示しない)とを備える。
電子線照射装置1は、内部が真空状態の真空筐体2と、真空筐体2内に設けられ、電子線を発生させるための電子線発生器(図示しない)と、真空筐体2に設けられ、電子線発生器で発生した電子線を真空筐体2の外部へ照射するための出射窓3と、真空筐体2内の真空状態を維持するために出射窓3を覆うように設けられ、電子線を透過する膜4と、を備える。出射窓3は、グリッド3aが有する複数の開口部により形成される。
膜4は、例えば、厚み5〜25μmである。膜4は、例えば、チタン箔からなる。
【0037】
さらに、電子線滅菌装置は、滅菌容器内を滅菌ガスで洗浄する前に膜を予め加熱して、膜を滅菌ガスから保護するための加熱装置を備える。加熱装置は、出射窓3を囲むように設けられるヒータ14で構成される。滅菌ガスとしては、例えば、過酸化水素ガスが用いられる。
滅菌容器内を滅菌ガスで洗浄する前にヒータ14により膜を加熱しておくことで、滅菌ガスが膜4に凝着するのを防ぐことができる。滅菌ガスによる洗浄が行われる間、ヒータ14により、滅菌ガスが膜4に凝着しない温度に維持される。膜4を加熱する温度は、滅菌ガスが膜4に凝着しない温度以上、かつグリッド3aおよび膜4が熱により損傷しない温度以下(例えば、120〜250℃)であるのが好ましい。
【0038】
ヒータ14を用いずに、電子線発生器が上記の加熱装置を兼ねてもよい。電子線発生器から電子線を膜4に照射して、膜4を加熱してもよい。別途、加熱装置を設ける必要がなく、コスト面で有利である。
電子線の照射による膜4の加熱温度は、例えば、電子線発生器で設定される加速電圧や電流値、または電子線の照射時間を変えることで調整することができる。膜4を加熱するための電子線の照射は、例えば、加速電圧40〜60kV、電流値0.5〜2mA程度で行われる。滅菌ガスによる洗浄が行われる間、滅菌ガスが膜4に凝着しない温度を維持するために、電子線照射装置を連続運転する。
【0039】
[実施形態4]
本実施形態の電子線滅菌装置は、実施形態2と同じ、容器の内面を滅菌する電子線照射装置21と、電子線照射装置21を収納する滅菌容器(図示しない)とを備える。
【0040】
さらに、電子線滅菌装置は、
図7に示すように、滅菌容器内を滅菌ガスで洗浄する前に膜24を予め加熱して、膜24を滅菌ガスから保護するための加熱装置を備える。加熱装置は、ノズル22b(膜24)を囲むように設けられるヒータ15で構成される。滅菌ガスとしては、例えば、過酸化水素ガスが用いられる。
滅菌容器内を滅菌ガスで洗浄する前にヒータ15により膜24を加熱しておくことで、滅菌ガスが膜24に凝着するのを防ぐことができる。滅菌ガスによる洗浄が行われる間、ヒータ15により、滅菌ガスが膜24に凝着しない温度に維持される。膜24を加熱する温度は、滅菌ガスが膜24に凝着しない温度以上、かつグリッド23aおよび膜24が熱により損傷しない温度以下(例えば、120〜250℃)であるのが好ましい。
【0041】
また、ヒータ15を用いずに、電子線発生器が上記の加熱装置を兼ねてもよい。電子線発生器から電子線を膜24に照射して、膜24を加熱してもよい。別途、加熱装置を設ける必要がなく、コスト面で有利である。
電子線の照射による膜24の加熱温度は、例えば、電子線発生器で設定される加速電圧や電流値、または電子線の照射時間を変えることで調整することができる。膜24を加熱するための電子線の照射は、例えば、加速電圧40〜60kV、電流値0.2〜1mA程度で行われる。滅菌ガスによる洗浄が行われる間、滅菌ガスが膜24に凝着しない温度を維持するために、電子線照射装置を連続運転する。
【0042】
[実施形態5]
容器の外面を滅菌した後、容器の内面を滅菌する電子線滅菌装置の一例を、
図8および9を参照しながら説明する。
電子線滅菌装置は、外面滅菌ゾーンZ1を含む遮蔽室R1、R2(滅菌容器)と、内面滅菌ゾーンZ2を含む遮蔽室R3(滅菌容器)と、を有する。遮蔽室R1〜R3には、容器を搬送するための第1〜第3旋回搬送装置M1〜M3が設置されている。
第1〜第3旋回搬送装置M1〜M3は、回転軸51〜53、および容器Bのネック部nを把持する容器保持装置71〜73を備える。
図8中のSM3は、容器の内面を滅菌する電子線照射装置の本体部とノズル部とを隔離する外周遮蔽体である(
図4の隔壁30に相当する)。接続部J1−2およびJ2−3では、遮蔽室R1からR2への容器Bの受渡しおよび遮蔽室R2からR3への容器Bの受渡しが行われる。
【0043】
遮蔽室R1、R2には、それぞれ容器の外面を滅菌する電子線照射装置E1、E2が設置されている。電子線照射装置E1で、容器Bの一方の外半面を滅菌し、電子線照射装置E2で、容器Bの他方の外半面を滅菌する。
【0044】
接続部J1−2の上流側近傍および下流側近傍に2つの電子線照射装置E1、E2が互いに近接して配置される。これにより、一方の外半面を滅菌した後に、短い搬送時間でかつ短時間で他方の外半面を滅菌することができる。その結果、一方の外半面を滅菌した後に、他方の外半面に付着した汚染物が一方の外半面に付着して再汚染されることが抑制される。
【0045】
遮蔽室R1、R2内に設置される電子線照射装置E1、E2には、実施形態1の遮蔽機構を備えた電子線照射装置または実施形態3の加熱装置を備えた電子線照射装置が用いられる。遮蔽室R1、R2内部を滅菌ガスで洗浄する際に、実施形態1の遮蔽機構または実施形態3の加熱装置により膜が保護される。
【0046】
遮蔽室R3内に設置される電子線照射装置(図示しない)には、実施形態2の遮蔽機構を備えた電子線照射装置または実施形態4の加熱装置を備えた電子線照射装置が用いられる。遮蔽室R3内部を滅菌ガスで洗浄する際に、実施形態2の遮蔽機構または実施形態4の加熱装置により膜が保護される。