(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1冷媒を圧縮する圧縮機、前記第1冷媒と熱源との間の熱交換を行う第1熱交換器、および前記第1冷媒の圧力を減圧させる減圧部を含んで構成されるヒートポンプサイクルと、
第2冷媒と熱負荷との間の熱交換を行う第2熱交換器、および前記第2冷媒を圧送するポンプを含んで構成される熱搬送サイクルと、
前記ヒートポンプサイクルを流れる前記第1冷媒、および前記熱搬送サイクルを流れる前記第2冷媒を直接接触させる直接接触熱交換器と、
前記直接接触熱交換器から減圧および移送された前記第1冷媒および前記第2冷媒を分離させる分離器と、を備え、
前記圧縮機から吐出された前記第1冷媒が前記直接接触熱交換器へと流入する向きに前記ヒートポンプサイクルが運転可能とされる、
ことを特徴とする冷媒システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように2つの冷媒を直接接触させると、フィンアンドチューブタイプ等の一般的な間接接触熱交換器を用いる場合のように両者に温度差を持たせなくても熱交換が可能である。そうすると、熱交換を行わせるために余分に低い温度にまで冷媒温度を下げる必要がない。その分、圧縮機への入力を減らすことができるので、ヒートポンプサイクルの効率(性能)が高い。
ここで、ヒートポンプサイクルの圧縮機から吐出された高温・高圧の炭化水素冷媒を直接接触式の熱交換器に導入し、炭化水素冷媒から水に移行させた熱を加熱に利用するのは難しい。熱交換器内の圧力条件により、炭化水素冷媒と水を十分に分離させるのに足りる密度差を確保することが難しい場合が多いためである。多量の水を含む炭化水素冷媒がヒートポンプサイクルを流れると、ヒートポンプサイクルが成立しない。
また、いかなる方法を用いても、水と炭化水素冷媒を完全に分離することは難しい。そのため、外気が氷点下あるいは氷点下に近い温度の場合、冷媒に混入した水分が氷結するリスクが発生するので、ヒートポンプサイクル内の機能品、たとえば膨張弁が故障要因となる。その場合、加熱利用時にはヒートポンプサイクルが成立しない。
【0007】
そこで、本発明は、ヒートポンプサイクルを流れる第1冷媒と、第1冷媒から熱を受け取り熱負荷に搬送される第2冷媒とを直接接触させる熱交換器を備えた加熱利用可能な冷媒システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明である冷媒システムは、第1冷媒を圧縮する圧縮機、第1冷媒と熱源との間の熱交換を行う第1熱交換器、および第1冷媒の圧力を減圧させる減圧部を含んで構成されるヒートポンプサイクルと、第2冷媒と熱負荷との間の熱交換を行う第2熱交換器、および第2冷媒を圧送するポンプを含んで構成される熱搬送サイクルと、ヒートポンプサイクルを流れる第1冷媒、および熱搬送サイクルを流れる第2冷媒を直接接触させる直接接触熱交換器と、直接接触熱交換器から減圧および移送された第1冷媒および第2冷媒を分離させる分離器と、を備え、圧縮機から吐出された第1冷媒が直接接触熱交換器へと流入する向きにヒートポンプサイクルが運転可能とされることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明においては、直接接触熱交換器において第1冷媒と第2冷媒とが直接接触することで熱を授受する。さらに、本発明では、直接接触熱交換器から取り出された第1冷媒および第2冷媒の混合冷媒が分離器に移送されて分離される。そして、第2冷媒が熱負荷まで搬送されて熱利用に供される。熱負荷まで搬送された第2冷媒は、直接接触熱交換器の内部に戻すことができる。
本発明では、圧縮機から吐出された高温・高圧の第1冷媒が直接接触熱交換器へと流入する向きにヒートポンプサイクルが運転可能とされる。このとき、第1熱交換器が蒸発器として機能し、第2熱交換器が凝縮器として機能する。そして、第1冷媒から第2冷媒へと移行した熱が加熱に利用される。
【0010】
ここで、直接接触熱交換器内の圧力条件により、第1冷媒および第2冷媒を十分に分離させるのに足りる密度差を確保することが難しい場合がある。
特に、加熱利用時には第1冷媒および第2冷媒の密度差が小さいため、これらを十分に分離させることができない。直接接触熱交換器内で、第1冷媒および第2冷媒は飽和液として存在する。
そこで、本発明では、直接接触熱交換器から取り出した第1冷媒および第2冷媒の混合液を膨張弁や絞りなどにより減圧させることで、飽和液線上の混合冷媒を二相域に取り込む。それによって第1冷媒および第2冷媒を分離器において十分に分離させることができる。
そうすると、第2冷媒が十分に除去された第1冷媒をヒートポンプサイクルに戻すことができるので、第1冷媒によるヒートポンプサイクルを維持できる。
したがって、直接接触熱交換器による高い熱交換率を享受できる加熱用途の冷媒システムを実現することができる。
また、加熱利用時とは反対向きにヒートポンプサイクルを運転させ、第1冷媒から第2冷媒へと移行した冷熱が冷却に利用される際も、第2冷媒が十分に除去された第1冷媒がヒートポンプサイクルに戻されることにより、サイクル効率の低下や不具合の発生を未然に防止できる。
【0011】
第2の本発明の冷媒システムは、第1冷媒を圧縮する圧縮機、第1冷媒と熱源との間の熱交換を行う第1熱交換器、および第1冷媒の圧力を減圧させる減圧部を含んで構成されるヒートポンプサイクルと、第2冷媒と熱負荷との間の熱交換を行う第2熱交換器、および第2冷媒を圧送するポンプを含んで構成される熱搬送サイクルと、第1冷媒および第2冷媒を直接接触させる直接接触熱交換器と、直接接触熱交換器内の液および第1冷媒を間接的に接触させる間接接触熱交換器と、第1冷媒が流れる向きを切り替える方向切替部と、第1冷媒の流れを直接接触熱交換器および間接接触熱交換器のうちいずれか一方に切り替える熱交換器切替部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
かかる冷媒システムにおいて、方向切替部による切り替えの結果、減圧部から低温・低圧の第1冷媒が直接接触熱交換器に向けて流れる場合は、第1冷媒の冷熱を第2冷媒に伝えて冷却に利用する。
冷却利用時は、熱交換器切替部により直接接触熱交換器を用いる。そうすると、直接接触熱交換器により第1冷媒および第2冷媒を混合して高効率で熱交換を行えるともに、第1冷媒および第2冷媒を密度差に基づいて分離させることができる。
【0013】
一方、加熱利用時は、圧縮機から吐出された高温・高圧の第1冷媒が直接接触熱交換器に向けて流れるように、方向切替部によって第1冷媒の流れの向きを切り替える。加熱利用時は、熱交換器切替部により間接接触熱交換器を用いる。
ここで、間接接触熱交換器を流れる第1冷媒と直接接触熱交換器の内部の液とは、間接接触熱交換器のチューブを介して間接的に接触するので混合されない。
そのため、圧縮機から流入した高温・高圧の第1冷媒により、直接接触熱交換器内が第1冷媒および第2冷媒を十分に分離させるのが難しい圧力条件となっても、そもそも第1冷媒および第2冷媒は混合されないのだから、第1冷媒に第2冷媒が混入するおそれがない。
また、加熱利用時、第1熱交換器は蒸発器として機能するため、第1熱交換器の周辺空気が0度以下となり、第1熱交換器内部で第2冷媒が氷結すると故障原因となるが、第1冷媒に第2冷媒が混入されないために氷結による故障のおそれもない。
したがって、加熱利用時における第1冷媒および第2冷媒の分離、および氷結に関する懸念を払拭できるので、直接接触熱交換器による高い熱交換率を享受できる冷却および加熱に兼用の冷媒システムを提供することができる。
【0014】
第2の本発明の冷媒システムにおいて、直接接触熱交換器の内部では、貯留される液の液位よりも下方に位置する第1冷媒流入口を介して第1冷媒が液中に流入することが好ましい。
この構成は、特に加熱利用時における第1冷媒および第2冷媒の混合促進に寄与する。
【0015】
第1冷媒流入口から気液二相の第1冷媒が混合室内に流入すると、第1冷媒のガスは、貯留された第2冷媒の液中を浮上しつつ拡散される。その過程で、第1冷媒のガスと第2冷媒とが混合し、十分に直接接触する。ここで、直接接触熱交換器の内部に貯留される液の液位よりも下方に第1冷媒流入口が位置するため、第1冷媒のガスが上方へと浮上、拡散し、第2冷媒と接触する領域を、液位または液位よりも上方に第1冷媒流入口が位置する場合と比べて広くとれる。そのため、第1冷媒と第2冷媒とをより十分に接触させることができる。
一方、第1冷媒の液も、直接接触熱交換器内の第2冷媒の液と混合されることで、第2冷媒と十分に直接接触する。そのときの熱の授受によってガス化した第1冷媒も、上記同様、第2冷媒中を拡散され、第2冷媒と十分に直接接触する。
以上により、第1冷媒と第2冷媒とを直接接触させることによる高い熱交換効率を十分に得ることができるので、ヒートポンプサイクルの効率を向上させることができる。
【0016】
第1冷媒との直接接触により第1冷媒の熱が移行された第2冷媒は、直接接触熱交換器から取り出されて熱負荷まで搬送されるなどして熱利用に供される。熱負荷まで搬送された第2冷媒は、直接接触熱交換器の内部に戻すことができる。
【0017】
第2の本発明の冷媒システムにおいて、直接接触熱交換器内は、第1冷媒および第2冷媒が混合される混合室と、第1冷媒および第2冷媒が分離される分離室と、に区分されることが好ましい。
【0018】
第1冷媒および第2冷媒のいずれも混合室に流入し、混合室内で第1冷媒と第2冷媒とが十分に接触することで熱の授受が行われる。その後、混合室内の第1冷媒および第2冷媒は分離室へと流入して分離される。
混合室および分離室の液面の上方に位置するガス溜まり空間から、第1冷媒のガスがヒートポンプサイクルへと流出する。第2冷媒は分離室内から熱搬送サイクルへと流出する。
【0019】
ここで、分離室は、壁体などにより、混合室内における第1冷媒の浮上、拡散、および蒸発に伴う流動に対して隔てられる。そのため、混合室から分離室へと流入した液を静置状態として、密度差に基づいて容易に分離させることができる。
一方、壁体などにより混合室が分離室に対して隔てられているので、第1冷媒流入口から混合室内に流入した第1冷媒が、分離室にある第2冷媒の流出口からすぐには出て行かず、混合室において水冷媒と十分に混合される。
【0020】
第2の本発明の冷媒システムにおいて、貯留される液の液位よりも下方に位置する第1冷流入口を介して第1冷媒が混合室で液中に流入し、混合室と分離室とは、第1冷媒流入口よりも上方で連通することが好ましい。
第1冷媒流入口よりも上方で混合室と分離室とが連通するので、混合室内で第1冷媒流入口から浮上、拡散されることで、第1冷媒流入口の周辺の流れよりも緩慢となった液が、分離室へと注がれる。このため、混合室内の流動が、分離室における第1冷媒および第2冷媒の分離に影響することを極力抑え、密度差に基づいて第1冷媒および第2冷媒を十分に分離させることができる。
【0021】
第1の本発明および第2の本発明において、冷媒システムは、空気調和機として構成され、第2熱交換器は、室内に設置され、直接接触熱交換器から第2熱交換器へと第2冷媒が流れる経路、および第2熱交換器から直接接触熱交換器へと第2冷媒が流れる経路が室内を通り、第2冷媒は、水であることが好ましい。
上記構成によれば、熱搬送サイクルの室内に設けられる配管内、および第2熱交換器内には水が流れる。
そうすると、直接接触熱交換器内の第1冷媒が熱搬送サイクルに流れ込んだとしても、室内において第1冷媒の燃焼が発生するのを水により阻止することができる。
したがって、第1冷媒の燃焼性を問わず、室内における燃焼のリスクを抑えることができる。
また、GWPが顕著に低い(0である)水を第2冷媒に用いることにより、第1冷媒と第2冷媒との封入量の比率に応じて定まる冷媒システムのGWPを低くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ヒートポンプサイクルを流れる第1冷媒と、第1冷媒から熱を受け取り熱負荷に搬送される第2冷媒とを直接接触させる熱交換器を備えた加熱利用可能な冷媒システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示す冷媒システム1は、第1冷媒が循環する熱源サイクル40(ヒートポンプサイクル)と、第2冷媒が循環する熱搬送サイクル20と、第1冷媒および第2冷媒を直接接触させる直接接触熱交換器50と、直接接触熱交換器50から減圧および移送された第1冷媒および第2媒を分離させる分離器55とを備える。
冷媒システム1の全体が、大気に対して密閉されたクローズドサイクルとされる。
【0025】
第1冷媒および第2冷媒には、沸点が極端に相違するものを用いる。第1冷媒の沸点よりも第2冷媒の沸点は高い。
本実施形態では、第1冷媒にはHFO(Hydro Fluoro Olefin)冷媒の一種であるR1234zeを使用し、第1冷媒のことを熱源サイクル側冷媒(以下、Heat Source Cycle、HSC冷媒)と称する。ここで、R1234zeの他に、HFO冷媒R1234yf、HFC冷媒R32などのHSC冷媒も、第1冷媒に好適に用いることができる。
一方、第2冷媒には水を使用し、第2冷媒のことを水冷媒と称する。
大気圧下では、R1234zeの沸点は約−19℃であり、水の沸点は100℃である。
【0026】
冷媒システム1は、外気を熱源とし、熱負荷としての室内空気を加熱するために暖房運転される空気調和機として構成されており、室外機1Aおよび室内機1Bを備える。
室外機1Aは、以下で説明する圧縮機11、第1熱交換器12、第1送風機13、減圧部14、ポンプ23、および直接接触熱交換器50を備える。
室内機1Bは、以下で説明する第2熱交換器21を備える。
【0027】
冷媒システム1の機器構成は、本実施形態に限られず、機器の設置スペース等に応じて任意に構成することができる。
冷媒システム1が備える室外機1Aおよび室内機1Bには、許容される機器筐体サイズ等を考慮して、熱源サイクル40の構成要素、熱搬送サイクル20の構成要素、および直接接触熱交換器50が適宜に配置される。
各サイクル40,20の構成要素および直接接触熱交換器50は、室外機1Aや室内機1Bの筐体に必ずしも収められている必要はない。
例えば、ポンプ23は、室外機1Aに配置された直接接触熱交換器50と、室内機1Bの第2熱交換器21との間で、熱搬送サイクル20の回路を構成する配管に対して取り付けている。ポンプ23は、室外機1Aに配置されていてもよい。また、ポンプ23が室内機1Bに配置されることも本発明は許容する。
【0028】
以下、熱源サイクル40、熱搬送サイクル20、直接接触熱交換器50、および分離器55の各々の構成を順に説明する。
[熱源サイクル]
熱源サイクル40は、HSC冷媒を圧縮する圧縮機11、HSC冷媒と外気との間の熱交換を行う第1熱交換器12、第1熱交換器12に向けて送風する第1送風機13、およびHSC冷媒の圧力を減圧させる減圧部14を備える。
HSC冷媒は、HSC冷媒の圧力・温度の状態変化に伴うヒートポンプ作用により、直接接触熱交換器50および分離器55を介して熱源サイクル40を循環する。
【0029】
熱源サイクル40は、圧縮機11により圧縮された高温・高圧のHSC冷媒が直接接触熱交換器50へと流入する向きで運転される。
【0030】
圧縮機11は、ハウジング内に吸入されるHSC冷媒をスクロール圧縮機構やロータリー圧縮機構などにより圧縮して吐出する。
使用されるHSC冷媒の体積能力に応じて、圧縮機11の押しのけ量を定めることが好ましい。
【0031】
第1熱交換器12は、内部をHSC冷媒が流れるチューブと、チューブに設けられるフィンとを有する。第1熱交換器12は、チューブおよびフィンを介してHSC冷媒と外気との間で間接的に熱交換を行う。第1熱交換器12は、本実施形態では蒸発器として機能する。
第1熱交換器12は、使用されるHSC冷媒の体積能力に応じて、圧力損失を考慮したサイズに設定されることが好ましい。
第1送風機13は、プロペラファン等であり、第1熱交換器12による熱交換を促進させる。
【0032】
減圧部14は、HSC冷媒を減圧させる。
減圧部14としては、冷媒を霧状に噴射して膨張させるとともに、冷媒の流量を制御する膨張弁を好適に用いることができる。また、減圧部14として、絞り作用により冷媒を減圧させるキャピラリーチューブを用いることもできる。
【0033】
[熱搬送サイクル]
次に、熱搬送サイクル20は、水冷媒と室内空気との間の熱交換を行う第2熱交換器21と、第2熱交換器21に向けて送風する第2送風機22と、水冷媒を循環させるポンプ23とを備える。
水冷媒は、ポンプ23により圧送されることで、直接接触熱交換器50および分離器55を介して熱搬送サイクル20を循環する。
【0034】
第2熱交換器21は、内部を水冷媒が流れるチューブと、チューブに設けられるフィンとを有する。第2熱交換器21は、チューブおよびフィンを介して水冷媒と室内空気との間で間接的に熱交換を行う。第2熱交換器21は、水冷媒の凝縮器として機能する。
第2送風機22は、プロペラファン等であり、第2熱交換器21による熱交換を促進させる。
【0035】
ポンプ23は、熱負荷に対応する水冷媒の流量に応じて必要な能力を有する。
ポンプ23としては、容積型、非容積型など、任意の種類のポンプを用いることができる。
本実施形態のポンプ23は、低消費電力で駆動する直流(DC)モータを備え、回転数が制御可能なDCポンプとされる。このようなDCポンプを採用することで、冷媒システム1の作動に必要な動力入力を抑えられるので、冷媒システム1の効率向上に寄与できる。
【0036】
[直接接触熱交換器]
次に、直接接触熱交換器50は、HSC冷媒および水冷媒を混合して直接的に熱交換させる。
直接接触熱交換器50の容量は、内部に貯留する水冷媒に持たせたい熱容量を考慮して定められる。直接接触熱交換器50の内部の高さは、貯留する水冷媒の液とHSC冷媒とを十分に混合させることができる液位を考慮して定められる。
なお、直接接触熱交換器50の内部に貯留される液には、HSC冷媒の液も含まれていてよい。
直接接触熱交換器50内において、貯留された液の液面の上方は、HSC冷媒のガスが溜まるガス溜空間37とされる。
【0037】
直接接触熱交換器50は、熱源サイクル40の圧縮機11から吐出された高圧・高温のHSC冷媒と、熱搬送サイクル20から流入した水冷媒とを混合することで熱交換させる。
直接接触熱交換器50は、熱源サイクル40からHSC冷媒を流入させるHSC流入口501と、熱搬送サイクル20から水冷媒を流入させる水流入口502と、HSC冷媒および水冷媒の混合冷媒を取り出して分離器55に移送するための移送取出口503とを有する。
【0038】
HSC流入口501は、直接接触熱交換器50内に上方から引き込まれる配管H
INの端部に位置する開口である。
水流入口502は、直接接触熱交換器50内に側方から引き込まれる配管W
INの端部に位置する開口である。
移送取出口503は、移送経路45の端部に位置する開口である。移送取出口503を介して、直接接触熱交換器50内にある水冷媒およびHSC冷媒の混合液が取り出される。
【0039】
配管H
IN、配管W
IN、および移送経路45のそれぞれの取り回しは任意である。後述する配管H
OUTおよび配管W
OUTについても同様である。
HSC流入口501および水流入口502は、HSC冷媒と水冷媒とが十分に混合されるように、それぞれの位置および向きを定めることが好ましい。
【0040】
移送取出口503は、直接接触熱交換器50内の液位よりも下方に配置される。それにより、直接接触熱交換器50内で十分に混合されたHSC冷媒および水冷媒の混合液が移送取出口503から取り出されて分離器55に移送されるので、直接接触熱交換器50における直接接触による熱交換、および分離器55における混合冷媒の分離のいずれも十分に行われる。
仮に、移送取出口503が直接接触熱交換器50内の液位よりも上方に配置されているとすれば、直接接触熱交換器50内の液位よりも上方に滞留するHSC冷媒ガスが移送取出口503から流出する。そうすると、熱交換および分離のいずれも十分に行われない。
HSC流入口501から直接接触熱交換器50内に流入したHSC冷媒が、移送取出口503からすぐに出て行かないように、HSC流入口501および水流入口502の双方から移送取出口503を十分に離間させることが好ましい。これにより、HSC冷媒および水冷媒の混合液をより十分に混合させてから取り出すことができる。
【0041】
[分離器]
次に、分離器55は、直接接触熱交換器50から移送されたHSC冷媒と水冷媒とを分離させる。
分離器55は、移送経路45により直接接触熱交換器50と結ばれる。
移送経路45には、直接接触熱交換器50から分離器55へと移送されるHSC冷媒および水冷媒の圧力を減圧させる移送時減圧部44が設けられる。
移送時減圧部44としては、熱源サイクル40の減圧部14と同様に、膨張弁やキャピラリーチューブなどを用いることができる。
【0042】
分離器55は、直接接触熱交換器50から移送経路45を介してHSC冷媒および水冷媒の混合冷媒を取り込むための移送取込口551と、水冷媒を熱搬送サイクル20へと流出させる水流出口552と、HSC冷媒のガスを熱源サイクル40へと流出させるHSC流出口553とを有する。
【0043】
移送取込口551は、移送経路45の端部に位置する開口である。
移送取込口551は、分離器55内の液位よりも下方に配置される。
仮に、移送取込口551が分離器55内の液位よりも上方に配置されているとすれば、移送取込口551から分離器55内に取り込まれたHSC冷媒および水冷媒の混合液が、分離器55内の液位よりも上方に位置するHSC流出口553から直接的に流出するおそれがある。そうすると、熱源サイクル40に水冷媒が混入するので、ヒートポンプサイクルの効率低下や不具合に繋がる。
移送取込口551から分離器55内に取り込まれた混合液は、静置状態におかれ、相互の密度差に基づいて、HSC冷媒ガス、水冷媒(液)、およびHSC冷媒の液に分離される。
【0044】
移送取込口551の付近に、移送取込口551から流れ出る混合液の流れに抵抗を与える抵抗板を設けたり、移送取込口551を分離器55の底部に対向させることにより(
図1参照)、分離器55内に流入する混合液の流れが、分離器55内における混合液の分離に極力影響しないようにすることが好ましい。
【0045】
水流出口552は、水冷媒を流出させる配管W
OUTの端部に位置する開口である。
水流出口552は、移送取込口551から十分に離間し、かつ分離器55内の下部に配置されることが好ましい。水流出口552は、本実施形態では、分離器55内に側方から引き込まれて下方へと向けて屈曲した配管W
OUTの下端に位置し、底311に向けて開口する。
【0046】
HSC流出口553は、HSC冷媒のガスを熱源サイクル40へと流出させる配管H
OUTの端部に位置する開口である。
HSC流出口553は、分離器55内の液位よりも上方のガス溜空間37に配置される。HSC流出口553は、ガス溜空間37の中でも上部に配置されることが好ましい。
【0047】
以上のように構成された冷媒システム1では、暖房運転を行うため、高温・高圧のHSC冷媒が直接接触熱交換器50に流入する。そして、直接接触熱交換器50内において高温・高圧のHSC冷媒の熱が移行された水冷媒を搬送し、搬送先の空気を加熱する。
ここで、直接接触熱交換器50内が高温・高圧となるため、直接接触熱交換器50内には、HSC冷媒の液と水冷媒とが飽和水溶液として存在する。
【0048】
図2は、HSC冷媒の飽和水溶液において温度と液密度との関係を示す。水冷媒の液密度(実線)は、直接接触熱交換器50内の温度が冷房運転時の温度域T1と、暖房運転時の温度域T2とで殆ど変わらない。それに対して、HSC冷媒の液密度(破線)は、温度域T1では水冷媒の液密度よりも大きいが、温度が上昇するにつれて小さくなり、いずれ水冷媒の液密度を下回る。
【0049】
暖房運転時の温度域T2では、水冷媒とHSC冷媒との液密度の差が小さいために、水冷媒とHSC冷媒とを十分に分離させることが難しい。
そのため、本実施形態では、直接接触熱交換器50から、HSC冷媒の飽和水溶液を取り出して移送時減圧部44により減圧させる。それによって飽和液線上の混合冷媒を二相域に取り込み、分離器55に移送して分離させることとする。
【0050】
本実施形態における直接接触熱交換器50および分離器55の作用について説明する。
直接接触熱交換器50内にHSC流入口501からHSC冷媒が流入すると、貯留された液中をHSC冷媒が拡散される。その過程でHSC冷媒と水冷媒とが直接接触し、熱を授受する。直接接触熱交換器50内において、HSC冷媒と水冷媒とは十分に混合され、飽和水溶液となる。
【0051】
直接接触熱交換器50内のHSC冷媒の飽和水溶液は、移送取出口503から移送経路45へと取り出され、移送時減圧部44により減圧される。HSC冷媒の飽和水溶液は、減圧によって二相域に取り込まれる。
【0052】
移送時減圧部44により減圧されたHSC冷媒および水冷媒は、移送取込口551から分離器55内へと気液二相流として流入する。
そして、分離器55内において、HSC冷媒および水冷媒は、密度差に基づいて、HSC冷媒の液と、水冷媒と、HSC冷媒のガスとに十分に分離される。
【0053】
水冷媒と分離されたHSC冷媒のガスはガス溜空間37に溜まる。そして、ガス溜空間37内のHSC冷媒ガスは、HSC流出口553から熱源サイクル40へと戻される。
本実施形態のHSC流出口553はガス溜空間37内の最も上部に位置するので、HSC流出口553から流出するHSC冷媒のガスは、飽和水蒸気圧レベルまでしか水冷媒を含有しない。
一方、HSC冷媒のガスと分離された分離器55内の水冷媒は、水流出口552から流出し、熱搬送サイクル20により搬送される。このとき、水冷媒と共に、HSC冷媒の液が水流出口552から熱搬送サイクル20に流出してもよい。HSC冷媒が熱搬送サイクル20を流れても、共に流れる水により、HSC冷媒の燃焼が阻止される。
【0054】
上述の通り、本実施形態は、直接接触熱交換器50内の圧力条件により、HSC冷媒および水冷媒を十分に分離させるのに足りる密度差を確保することが難しい場合であっても、分離器55においてHSC冷媒および水冷媒を十分に分離させることができる。
特に、暖房運転時には、直接接触熱交換器50の内部にHSC冷媒および水冷媒が飽和水溶液として存在し、そのまま水冷媒とHSC冷媒とが混合された状態で第1減圧部14に突入するとヒートポンプサイクルが成立しない。しかし、本実施形態のように移送時減圧部44および分離器55を用いることにより、水冷媒が十分に除去されたHSC冷媒を熱源サイクル40に戻すことができるので、ヒートポンプサイクルを維持できる。
したがって、直接接触熱交換器50による高い熱交換率を享受できる加熱用途の冷媒システム1を提供することができる。
【0055】
また、HSC冷媒および水冷媒の双方を用いる冷媒システム1では、冷媒システム1への両者の封入量の比に応じてGWPが定まる。
HSC冷媒のGWPは4〜2300である。一方、水冷媒のGWPは0である。GWPが顕著に低い水冷媒と、HSC冷媒とを併用することにより、「5」程度の非常に低いGWPを実現することができる。
【0056】
さらに、熱搬送サイクル20の室内に設けられる配管内、および第2熱交換器21内には水冷媒が流れることにより、熱搬送サイクル20にHSC冷媒が流れたとしても、室内においてHSC冷媒の燃焼が発生するのを水により阻止することができる。
したがって、HSC冷媒の燃焼性を問わず、室内における燃焼のリスクを抑えることができる。
【0057】
ところで、本実施形態の冷媒システム1において、配管を適宜に付加、分岐させるとともに、熱源サイクル40におけるHSC冷媒の流れの向きを切り替える切替弁を設けることにより、冷房・暖房兼用機を構成することもできる。
その冷房・暖房兼用機は、暖房運転時における圧力条件下でヒートポンプサイクルを成立させる意義を有するとともに、冷房運転時も、水冷媒が十分に除去されたHSC冷媒がヒートポンプサイクルに戻されることで、サイクル効率の低下や不具合の発生を未然に防止できる。
【0058】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図3および
図4に示す第2実施形態の冷媒システム2は、冷房運転と暖房運転との双方が可能な空気調和機として用いられる。
以下、第1実施形態で説明した構成と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略または簡略する。
【0059】
冷媒システム2は、第1冷媒としてHSC冷媒が循環される熱源サイクル60と、第2冷媒として水冷媒が循環される熱搬送サイクル20と、HSC冷媒および水冷媒を直接接触させる直接接触熱交換器61と、直接接触熱交換器61内の液およびHSC冷媒を間接的に接触させる間接接触熱交換器62と、熱源サイクル60においてHSC冷媒が流れる向きを切り替える四方切替弁65と、HSC冷媒の流れを直接接触熱交換器61および間接接触熱交換器62のうちいずれか一方に切り替える熱交換器切替弁66,67とを備える。
冷媒システム2は、大気に対して密閉されたクローズドサイクルとされる。
【0060】
以下、直接接触熱交換器61および間接接触熱交換器62の各々の構成を順に説明する。
[直接接触熱交換器]
直接接触熱交換器61は、流入した水冷媒およびHSC冷媒を貯留する。
冷房運転時(
図3)、直接接触熱交換器61内においてHSC冷媒および水冷媒が直接接触することで熱交換される。冷房運転時には、熱源サイクル60から直接接触熱交換器61内にHSC冷媒が流入し、直接接触熱交換器61内のHSC冷媒が熱源サイクル60へと戻される。
【0061】
直接接触熱交換器61は、HSC冷媒を流入させるHSC流入口611と、水冷媒を流入させる水流入口612と、HSC冷媒を流出させるHSC流出口613と、水冷媒を流出させる水流出口614とを有する。
【0062】
HSC流入口611は、直接接触熱交換器61内に引き込まれる配管H
INの端部に位置する開口である。
水流入口612は、直接接触熱交換器61内に引き込まれる配管W
INの端部に位置する開口である。
配管H
INおよび配管W
INのそれぞれの取り回しは任意である。後述する配管H
OUTおよび配管W
OUTについても同様である。
HSC流入口611および水流入口612は、HSC冷媒と水冷媒とが十分に混合されるように、それぞれの位置および向きを定めることが好ましい。
【0063】
HSC流出口613は、HSC冷媒のガスを熱源サイクル60へと流出させる配管H
OUTの端部に位置する開口である。
HSC流出口613は、直接接触熱交換器61内の液位よりも上方のガス溜空間37に配置される。HSC流出口613は、ガス溜空間37の中でも上部に配置されることが好ましい。
水流出口614は、水冷媒を流出させる配管W
OUTの端部に位置する開口である。
【0064】
[間接接触熱交換器]
次に、間接接触熱交換器62は、内部をHSC冷媒が流れるチューブ621と、チューブ621に熱的に接続される図示しないフィンとを有する。なお、間接接触熱交換器62は模式的に図示されている。
間接接触熱交換器62は、直接接触熱交換器61内に貯留された液の液位よりも下方を通過しており、チューブ621内を流れるHSC冷媒と直接接触熱交換器61内の液との間で間接的に熱交換を行う。
【0065】
以上で説明したように構成される直接接触熱交換器61および間接接触熱交換器62は、熱源サイクル60に並列に接続される。
これらの直接接触熱交換器61および間接接触熱交換器62は、熱交換器切替弁66,67を切り替えることによって選択的に用いられる。
【0066】
[冷房運転時の動作]
図3を参照し、冷房運転時の冷媒システム2の動作を説明する。
冷房運転時は、四方切替弁65により、減圧部14から直接接触熱交換器61へとHSC冷媒が流入するように熱源サイクル60のHSC冷媒の流れの向きを切り替える。
加えて、熱交換器切替弁66,67により、間接接触熱交換器62へのHSC冷媒の流れを遮断することで、HSC冷媒の流れを直接接触熱交換器61へと切り替える。
そうすると、直接接触熱交換器61内に流入したHSC冷媒が直接接触熱交換器61内に貯留された水冷媒と混合し、直接接触する。それによってHSC冷媒から水冷媒へと移行した冷熱を搬送し、搬送先の空気を冷却する。
混合したHSC冷媒および水冷媒は、直接接触熱交換器61内で静置状態におかれ、相互の密度差に基づいて、HSC冷媒ガス、水冷媒(液)、およびHSC冷媒の液に分離される。
【0067】
[暖房運転時の動作]
図4を参照し、暖房運転時の冷媒システム2の動作を説明する。
暖房運転時は、四方切替弁65により、圧縮機11から吐出されたHSC冷媒が直接接触熱交換器61へと流入するようにHSC冷媒の流れの向きを切り替える。
加えて、熱交換器切替弁66,67により、直接接触熱交換器61へのHSC冷媒の流れを遮断することで、HSC冷媒の流れを間接接触熱交換器62へと切り替える。
そうすると、間接接触熱交換器62のチューブ621内を流れるHSC冷媒が直接接触熱交換器61内の液と間接的に接触する。それによってHSC冷媒から水冷媒へと移行した熱を搬送し、搬送先の空気を加熱する。
間接接触熱交換器62のチューブ621内のHSC冷媒と直接接触熱交換器61の内部の液とは、チューブ621により隔絶されているために混合されない。
したがって、暖房運転時、圧縮機11から流入した高温・高圧のHSC冷媒により、直接接触熱交換器61内がHSC冷媒および水冷媒を十分に分離させるのが難しい圧力条件となっても、そもそもHSC冷媒および水冷媒は混合されないのだから、HSC冷媒に水冷媒が混入するおそれがない。
【0068】
また、暖房運転時、第1熱交換器12は蒸発器として機能するため、第1熱交換器12の周辺空気が0度以下となり、水冷媒が第1熱交換器12内で氷結すると故障原因となるが、HSC冷媒に水冷媒が混入されないために氷結による故障のおそれもない。
【0069】
本実施形態によれば、上述のように直接接触熱交換器61および間接接触熱交換器62を併用することにより、暖房運転時におけるHSC冷媒および水冷媒の分離、および氷結に関する懸念を払拭できるので、直接接触熱交換器61による高い熱交換率を享受できる冷暖兼用の冷媒システム2を提供することができる。
【0070】
〔本発明の変形例〕
本発明の冷媒システムが備える直接接触熱交換器の構成は、上記の各実施形態に示した直接接触熱交換器の形態には限定されない。
図5に示す本発明の変形例に係る冷媒システム3は、第2実施形態の直接接触熱交換器61に代えて、直接接触熱交換器63を備える点を除いて、第2実施形態の冷媒システム2と同様に構成される。
なお、第1実施形態に直接接触熱交換器63を適用することもできる。
【0071】
直接接触熱交換器63は、特に冷房運転時にHSC冷媒および水冷媒がより十分に混合されるように、貯留する液の液位よりも下方に位置するHSC流入口351を介してHSC冷媒を液中に流入させることと、混合室35と分離室36とに区画されており、混合室35と分離室36とがHSC流入口351よりも上方で連通することを特徴とする。
【0072】
図6に示すように、直接接触熱交換器63は、タンク31と、タンク31の内部を区分する区分壁32と、タンク31内の下部に設置される抵抗板33とを備える。
タンク31は、円筒状に形成されており、底311と、底311の周縁から立ち上がる周壁312と、周壁312の開口を塞ぐ蓋313とを有する。
タンク31の容量は、タンク31内に貯留する水冷媒に持たせたい熱容量を考慮して定められる。タンク31の内部の高さは、貯留する水冷媒の液とHSC冷媒とを十分に混合させることができる液位と、混合したHSC冷媒および水冷媒を十分に分離させることを考慮して定められる。
タンク31内には気液二相のHTC冷媒が流入するため、タンク31の内部には、水冷媒(液)に加え、HSC冷媒の液も貯留される。したがって、「液位」は、水冷媒およびHSC冷媒の液を合わせた液位を意味する。
【0073】
区分壁32は、底311に立設される。タンク31の内部は、区分壁32の一面側に位置する混合室35と、区分壁32の他面側に位置する分離室36とに区分される。
区分壁32は、タンク31の内径に対応する幅で、予め定められたタンク31内の基準液位Lよりも高く、かつタンク31内部の高さよりも低い高さに形成される。
区分壁32において上端32A側の所定領域には、厚み方向に貫通した複数の連通孔320が形成される。これらの連通孔320により、混合室35と分離室36とが連通する。これらのうち1以上の連通孔320は、後述するHSC流入口351よりも上方に位置する。
複数の連通孔320のうち1以上の連通孔320は、基準液位Lよりも下方に位置する。このため、連通孔320を介して、混合室35および分離室36の間の液の往来が許容される。
混合室35および分離室36に貯留された液の液面と蓋313との間は、HSC冷媒のガスが溜まるガス溜空間37とされる。
【0074】
混合室35内に設けられる抵抗板33は、混合室35内に流入するHSC冷媒の流れに対する抵抗として働く。抵抗板33は、区分壁32から水平に突出する。抵抗板33の先端と周壁312との間には、HSC冷媒の流路が確保される。
【0075】
以下、混合室35、分離室36、およびガス溜空間37について説明する。
[混合室]
混合室35は、熱源サイクル40の減圧部14を経て流入したHSC冷媒と、熱搬送サイクル20から流入した水冷媒とを混合することで熱交換させる。熱交換によりHSC冷媒の冷熱が水冷媒に移行すると、HSC冷媒は蒸発(ガス化)する。
混合室35には、HSC冷媒を流入させる配管H
INの開口であるHSC流入口351と、水冷媒を流入させる配管W
INの開口である水流入口352とが配置される。
【0076】
HSC流入口351は、タンク31内の下部に位置する。具体的に、HSC流入口351は、タンク31の下方から混合室35内に引き込まれる配管H
INの上端に位置し、タンク31の底311で上方に向けて開口する。HSC流入口351の位置は、底311よりも上方であってもよいが、タンク31内に貯留される液の液位よりも下方に定められる。
HSC流入口351は、上述の抵抗板33の下面に対向する。
【0077】
水流入口352は、タンク31の上方から混合室35内に引き込まれて下方へと延出する配管W
INの下端に位置する。
水流入口352は、抵抗板33と周壁312との間の付近で、下方に向けて開口する。
【0078】
配管H
INおよび配管W
INの取り回しは任意である。
例えば、配管H
INをタンク31の側方あるいは上方から混合室35内に引き込むこともできる。但し、HSC冷媒と水冷媒とが十分に混合されるように、貯留される液の液位よりもHSC流入口351が下方に位置するように配管H
INを設けることとする。
また、配管W
INをタンク31の側方あるいは下方から混合室35内に引き込むこともできる。
配管H
INおよび配管W
INは、HSC流入口351および水流入口352の各々からの流れが異なる向きから合流するように設けられることが好ましい。
【0079】
間接接触熱交換器62は、混合室35内の液中を通過するように設けられる。
但し、間接接触熱交換器62を、分離室36内の液中を通過するように設けることもできる。
【0080】
[分離室]
次に、分離室36は、互いに混合されることで熱交換が行われたHSC冷媒と水冷媒とを分離させる。水冷媒と分離されたHSC冷媒のガスを熱源サイクル40に戻すことにより、熱源サイクル40に水冷媒が混入することによるサイクル効率の低下、破損および錆の発生などを未然に防止する。
混合室35から分離室36へと流入した液は、分離室36内で密度差に基づいて、HSC冷媒ガス、水冷媒(液)、およびHSC冷媒の液に分離される。
【0081】
分離室36には、水冷媒を流出させる配管W
OUTの開口である水流出口362が配置される。
水流出口362は、分離室36内の下部に配置することが好ましい。本実施形態の水流出口362は、タンク31の側方から分離室36内に引き込まれて下方へと向けて屈曲した配管W
OUTの下端に位置し、底311に向けて開口する。
配管W
OUTの取り回しは任意である。例えば、配管W
OUTをタンク31の下方から分離室36内に引き込むこともできる。
【0082】
分離室36は、区分壁32により、混合室35内におけるHSC冷媒の浮上、拡散、および蒸発に伴う流動に対して隔てられる。そのため、混合室35から分離室36へと流入した液を静置状態として、密度差に基づいて容易に分離させることができる。
一方、区分壁32により混合室35が分離室36に対して隔てられているので、HSC流入口351から混合室35内に流入したHSC冷媒が、HSC流入口351と同じくタンク31内の下部に位置する水流出口362からすぐには出て行かず、混合室35において水冷媒と十分に混合される。
【0083】
[ガス溜空間]
ガス溜空間37には、HSC冷媒のガスを熱源サイクル40へと流出させる配管H
OUTの開口であるHSC流出口371が配置される。
HSC流出口371は、ガス溜空間37内の上部に配置されることが好ましい。
HSC流出口371は、タンク31の上方からガス溜空間37へと引き込まれる配管H
OUTの下端に位置し、下方に向けて開口する。
HSC流出口371は、タンク31内の基準液位Lに対して十分に離間している。
配管H
OUTの取り回しは任意である。例えば、配管H
OUTをタンク31の側方からガス溜空間37に引き込むこともできる。
【0084】
以上のように構成された直接接触熱交換器63による作用について説明する。
冷房運転時、混合室35内の下部に位置するHSC流入口351から、気液二相のHSC冷媒が混合室35内に上方に向けて流入する。そして、HSC冷媒のガスは、混合室35内に貯留された液中を浮上しつつ拡散される。その過程で、HSC冷媒のガスと水冷媒とが混合し、十分に直接接触する。HSC冷媒の一部のガスは、液面を脱してガス溜空間37に溜まる。
一方、HSC冷媒の液も、混合室35内の水冷媒と混合されることで、水冷媒と十分に直接接触する。それによってガス化したHSC冷媒も、上記同様、液中で拡散されながら、水冷媒と十分に直接接触する。
【0085】
ここで、タンク31内の下部にHSC流入口351が位置するため、HSC冷媒のガスが上方へと浮上、拡散し、水冷媒と接触する領域を、タンク31内の上部にHSC流入口351が位置する場合と比べて広くとれる。そのため、水冷媒とHSC冷媒とを十分に接触させ、HSC冷媒の冷熱を水冷媒に十分に移行させることができる。
また、HSC流入口351から流入したHSC冷媒の流れが、HSC流入口351に面して設けられた抵抗板33により圧力損失を生じる。このため、HSC冷媒を上方へとゆっくりと流動させながら水冷媒とより十分に接触させることができる。
【0086】
さらに、水流入口352から流入した水冷媒を、抵抗板33と周壁312との間を通過するHSC冷媒の流れに対して、上方から合流させている。これによって得られる撹拌作用により、水冷媒とHSC冷媒とをより十分に接触させることができる。
【0087】
上述したように、混合室35においてHSC冷媒と水冷媒とが混合されて十分に接触することによって熱交換が行われる。混合室35内には、水冷媒およびHSC冷媒が混合した液が貯留されており、その混合液にはHSC冷媒のガスが溶融されている。
その混合室35内の液を分離室36へと移動させ、分離室36において、HSC冷媒のガスと、水冷媒と、HSC冷媒の液とに、相互の密度差によって分離させる。
【0088】
ここで、混合室35と分離室36とが、区分壁32に形成された連通孔320を介して、あるいは液位によっては区分壁32の上端32Aを介して、混合室35および分離室36の上部で連通するので、混合室35内でHSC流入口351から浮上、拡散されることで、HSC流入口351の周辺の流れよりも緩慢となった液が、分離室36へと注がれる。このため、混合室35内の流動が、分離室36におけるHSC冷媒および水冷媒の分離に影響することを極力抑え、密度差に基づいてHSC冷媒の液、水冷媒、およびHSC冷媒のガスを相互に十分に分離させることができる。
【0089】
水冷媒と分離されたHSC冷媒のガスはガス溜空間37に溜まる。そして、ガス溜空間37内のHSC冷媒ガスは、HSC流出口371から熱源サイクル40へと戻される。
本実施形態のHSC流出口371はガス溜空間37内の最も上部に位置するので、HSC流出口371から流出するHSC冷媒のガスは、飽和水蒸気圧レベルまでしか水冷媒を含有しない。
【0090】
一方、HSC冷媒のガスと分離された分離室36内の水冷媒は、水流出口362から流出し、熱搬送サイクル20により搬送される。このとき、水冷媒と共に、HSC冷媒の液が水流出口362から熱搬送サイクル20に流出してもよい。HSC冷媒が熱搬送サイクル20を流れても、共に流れる水により、HSC冷媒の燃焼が阻止される。
【0091】
本例の冷媒システム3によれば、上述したように、特に冷房運転時において、直接接触熱交換器63の混合室35内の下部へと、HSC流入口351を介してHSC冷媒を流入させることにより、混合室35内の下部から上部までの広い領域に亘り、水冷媒とHSC冷媒とを十分に接触させることができる。このため、直接接触による熱交換作用が存分に発揮されるので、冷媒システム3全体として高い効率を実現することができる。
【0092】
また、直接接触熱交換器63のタンク31の内部を区分壁32により混合室35および分離室36に区分した上で、区分壁32の連通孔320または区分壁32の上端32Aを介して混合室35および分離室36を上部で連通させているので、分離室36内の液を極力静置状態に保つことができる。それにより、密度差に基づいてHSC冷媒および水冷媒を十分に分離させることができる。
【0093】
暖房運転時は、第2実施形態で
図4を参照して説明したように、四方切替弁65により、圧縮機11から吐出されたHSC冷媒が直接接触熱交換器61へと流入するようにHSC冷媒の流れの向きを切り替える。
加えて、熱交換器切替弁66,67により、直接接触熱交換器61へのHSC冷媒の流れを遮断することで、HSC冷媒の流れを間接接触熱交換器62へと切り替える。
そうすると、間接接触熱交換器62のチューブ621内を流れるHSC冷媒が直接接触熱交換器61内の液と間接的に接触する。それによってHSC冷媒から水冷媒へと移行した熱を搬送し、搬送先の空気を加熱する。
間接接触熱交換器62のチューブ621内のHSC冷媒と直接接触熱交換器61の内部の液とは、チューブ621により隔絶されているために混合されないので、HSC冷媒に水冷媒が混入するおそれがない。
【0094】
なお、上記の直接接触熱交換器63において、混合室35および分離室36に区分されていなくても、HSC流入口351が液位よりも下方に位置することによって、HSC冷媒および水冷媒の混合が促進される。
また、上記の直接接触熱交換器63において、HSC流入口351が液位と同等あるいは上方に位置していても、混合室35および分離室36に区分されていることによって、HSC冷媒および水冷媒の混合が促進される。
【0095】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本発明の冷媒システムの機器構成は任意であり、例えば、直接接触熱交換器50,61において熱交換により冷却された水冷媒が分配される複数の室内機1Bを備えるものとしてもよい。その場合、各室内機1Bに分配可能な能力の1台のポンプ23を室内機1Bの外に配置することが経済上好ましい。
本発明における第1冷媒および第2冷媒には、極端に沸点が相違する任意の冷媒、すなわち非共沸の冷媒を用いることができる。例えば、第1冷媒がプロパンで第2冷媒が水冷媒、第1冷媒が二酸化炭素で第2冷媒が水冷媒、第1冷媒がアンモニアで第2冷媒が水冷媒、など種々の冷媒の組み合わせを採用できる。
また、第2冷媒としては、水冷媒に限らず、例えばブラインを用いることも許容される。ブラインとして、エチレングリコール、あるいはプロプレングリコールを主成分とするものを例示できる。
そして、本発明の直接接触熱交換器および冷媒システムは、空気調和機に限らず、冷凍庫、給湯機、チラーなどに適用することもできる。