特許第6249718号(P6249718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249718ゴム組成物、それを用いたタイヤ部材およびタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249718
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ゴム組成物、それを用いたタイヤ部材およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20171211BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20171211BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20171211BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20171211BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K5/09
   C08K3/36
   B60C1/00 A
   B60C11/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-227085(P2013-227085)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-86316(P2015-86316A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100111279
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】山名 亜由子
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−275311(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/013513(WO,A1)
【文献】 特開2007−238803(JP,A)
【文献】 特開2004−277506(JP,A)
【文献】 特開平08−319376(JP,A)
【文献】 特開2013−177520(JP,A)
【文献】 特開平11−071479(JP,A)
【文献】 特開2011−184501(JP,A)
【文献】 特開2009−046674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
B60C 1/00 − 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シス含量が90質量%以上のブタジエンゴムをゴム成分中の10質量%以上含有するゴム成分ならびにヒドロキシステアリン酸の金属塩を含有するゴム組成物であって、
前記金属塩が、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、またはナトリウム塩であるゴム組成物
【請求項2】
前記金属塩がマグネシウムである請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
さらにシリカを含有する請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
さらにステアリン酸を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
さらにヒドロキシステアリン酸を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のゴム組成物で構成されるタイヤ部材。
【請求項7】
請求項記載のタイヤ部材を備えるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物、当該ゴム組成物で構成されるタイヤ部材、および当該タイヤ部材を備えるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤには耐摩耗性向上への要求が大きくなっている。従来、タイヤの耐摩耗性を向上させるための手段としては、ゴム成分としてハイシスブタジエンゴム(ハイシスBR)を含有するゴム組成物により構成されたトレッドなどのタイヤ部材を備えたタイヤとすることが知られている。しかし、ハイシスBRを含有すると、加工性が低下し、フィラーの分散が悪くなり、転がり抵抗特性(低燃費性)が悪化するという問題がある。
【0003】
また、タイヤを構成するゴム組成物には、ゴム成分との相互作用が容易に得られ、補強効果に優れたカーボンブラックが充填剤として使用されてきたが、近年、低燃費化、環境保護の観点から、シリカなどの白色充填剤がカーボンブラックに代わって使用されるようになっている。
【0004】
しかし、シリカなどの白色充填剤は、カーボンブラックに比べて、タイヤに汎用されている天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムなどとの親和性が低く、耐摩耗性や力学強度(引張強度や破断伸び)の点で劣ることが多い。
【0005】
この点を解決する方法として、ゴム成分およびシリカなどの白色充填剤に対して反応性を有するシランカップリング剤を配合することが提案されているが、白色充填剤との反応を十分に進行させることが難しく、未反応の白色充填剤が分散不良のまま残存し、所望の性能が発揮されないという問題がある。
【0006】
ここで、白色充填剤の分散性を向上させるには、ゴム成分の加工性が重要な課題となっている。加工性の改良方法として、ステアリン酸を含有することが一般的に用いられているが(非特許文献1参照)、ハイシスBRのようなフィラー分散性に劣るゴム成分に対する改良効果は小さく、シリカなどの白色充填剤を含有する場合であっても、耐摩耗性、加工性および低燃費性をバランス良く改善できるゴム組成物は得られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】大貫 毅、日本ゴム協会誌、2009年、第82巻、第2号、「ゴム配合と加工助剤」、P50〜55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、耐摩耗性、加工性および低燃費性をバランス良く向上させることができるゴム組成物、当該ゴム組成物で構成されるタイヤ部材、および当該タイヤ部材を備えるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シス含量が90質量%以上のブタジエンゴムを含有するゴム成分ならびにヒドロキシステアリン酸および/またはその誘導体を含有するゴム組成物に関する。
【0010】
前記ヒドロキシステアリン酸の誘導体がヒドロキシステアリン酸マグネシウム塩であることが好ましい。
【0011】
前記ゴム組成物は、さらにシリカを含有することが好ましい。
【0012】
本発明は、前記ゴム組成物で構成されるタイヤ部材に関する。
【0013】
また、本発明は、前記タイヤ部材を備えるタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定のブタジエンゴムを含有するゴム成分、ならびにヒドロキシステアリン酸および/またはその誘導体を含有することで、耐摩耗性、加工性および低燃費性をバランス良く向上させることができるゴム組成物、当該ゴム組成物で構成されるタイヤ部材および当該タイヤ部材を備えるタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴム組成物は、シス含量が90質量%以上のブタジエンゴムを含有するゴム成分、ならびにヒドロキシステアリン酸および/またはその誘導体を含有することを特徴とする。
【0016】
前記ハイシスBRのシス含量は90質量%以上であり、耐摩耗性が向上するという点から、95質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。
【0017】
ハイシスBRのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は10以上が好ましく、30以上がより好ましい。ムーニー粘度が10未満の場合は、フィラーの分散性が低下する傾向がある。また、ムーニー粘度は120以下が好ましく、80以下がより好ましい。ムーニー粘度が120を超える場合は、押し出し加工時にゴム焼け(変色)が発生するおそれがある。なお、本明細書におけるハイシスBRのムーニー粘度は、ISO289、JIS K6300に準じて測定される。
【0018】
ハイシスBRの分子量分布(Mw/Mn)は1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。Mw/Mnが1.5未満の場合は、加工性が悪化するおそれがある。また、BRのMw/Mnは5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。Mw/Mnが5.0を超える場合は、耐摩耗性が悪化する傾向がある。なお、本明細書におけるハイシスBRのMnおよびMwは、GPCを用いて測定し、標準ポリスチレンにより換算される。
【0019】
ゴム成分中のハイシスBRの含有量は、必要な耐摩耗性能を発揮させる観点から10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、ハイシスBRの含有量は、加工性の観点から90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
前記ゴム成分としては前記ハイシスBR以外にも、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ハイシスBR以外のブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)などが挙げられる。これらのゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、タイヤの各部材において必要な性能を容易に確保できるという理由から、NR、ENR、前記ハイシスBR以外のBR、SBRなどのジエン系ゴムが好ましい。さらに、加工性およびグリップ性が向上するという理由からSBRがより好ましい。
【0021】
前記ハイシスBR以外のゴム成分は、ゴムの主鎖および/または末端が変性剤により変性されたものでもよく、また一部が多官能型、例えば四塩化スズ、四塩化珪素のような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでも良い。また、前記ハイシスBR以外のゴム成分およびその配合量は、適用部材などに応じて適宜選択すれば良い。
【0022】
前記SBRとしては特に限定はなく、溶液重合SBR(S−SBR)、乳化重合SBR(E−SBR)、これらの変性SBR(変性S−SBR、変性E−SBR)などが挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するものなど)などが挙げられる。
【0023】
SBRのスチレン含量は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。SBRのスチレン含量が5質量%未満の場合は、充分なグリップ性能やゴム強度が得られないおそれがある。また、該スチレン含量は60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。SBRのスチレン含量が60質量%を超える場合は、優れた低燃費性が得られないおそれがある。なお、本明細書におけるSBRのスチレン含量は、H1−NMR測定により算出される。
【0024】
SBRのビニル含量は10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。SBRのビニル含量が10質量%未満の場合は、十分なグリップ性能やゴム強度が得られないおそれがある。また、該ビニル含量は65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。SBRのビニル含量が65質量%を超える場合は、優れた低燃費性が得られないおそれがある。なお、本明細書におけるSBRのビニル含量とはブタジエン部のビニル量のことを示し、H1−NMR測定により算出される。
【0025】
シリカなどの白色充填剤を含有するゴム組成物は、一般に充填剤の分散性が低く、所望の性能を得ることが難しい。しかしながら、本発明によればヒドロキシステアリン酸および/またはその金属塩を含有することにより、シリカなどとゴム成分との相互作用が高まり、白色充填剤の分散性が向上し、低燃費性および耐摩耗性を両立できるとともに、良好な加工性も得られ、これらの性能バランスを相乗的に改善できる。
【0026】
前記ヒドロキシステアリン酸および/またはその誘導体としては、ジヒドロキシステアリン酸および/またはその誘導体であることがシリカの分散性がより促進されるという理由から好ましく、1,2−置換体がより好ましい。誘導体としては、エステル、アミド、金属塩がシリカの分散性がより促進されるという理由から好ましく、金属塩がより好ましい。また、金属塩の中でも亜鉛塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩がさらに好ましく、亜鉛塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩が特に好ましく、マグネシウム塩が最も好ましい。
【0027】
ヒドロキシステアリン酸および/またはその誘導体のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。含有量が0.5質量部未満の場合は、ヒドロキシステアリン酸および/またはその誘導体の含有による効果が発揮されない傾向がある。また、含有量が20質量部を超える場合は、粘度低下により加工性が悪化する傾向がある。
【0028】
本発明のゴム組成物は、タイヤの低燃費性を向上させるという理由から、白色充填剤としてシリカを含有することが好ましい。シリカとしては、特に限定はなく、湿式法または乾式法により調製されたものを用いることができる。
【0029】
シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましい。N2SAが50m2/g未満の場合は、ゴム強度が低下する傾向がある。また、シリカのN2SAは250m2/g以下が好ましく、210m2/g以下がより好ましい。N2SAが250m2/gを超える場合は、加工性が悪化する傾向がある。なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037−81に準拠した方法により測定することができる。
【0030】
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、良好な低燃費性が得られるとともに、補強効果が得られるという理由から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、低燃費性および加工性の担保という理由から200質量部以下が好ましく、180質量部以下がより好ましく、150質量部以下がさらに好ましい。
【0031】
シリカ以外の白色充填剤としては特に限定されず、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、クレー、マイカ、アルミナ、タルクなどが挙げられ、これらは必要に応じて適宜含有することができる。
【0032】
本発明のゴム組成物がシリカを含有する場合、さらにシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上がさらに好ましい。含有量が0.5質量部未満の場合は、シリカを良好に分散させることが難しくなるおそれがある。また、該含有量は20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。含有量が20質量部を超える場合は、シリカの分散効果が向上し難く、コストが不必要に増大する傾向や、スコーチタイムが短くなり、混練りや押し出しでの加工性が悪化する傾向がある。
【0033】
シランカップリング剤としては、従来からシリカと併用されている任意のシランカップリング剤を用いることができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。商品名としてはSi69、Si75、Si363(EVONIK−DEGUSSA社製)やNXT、NXT−LV、NXTULV、NXT−Z(モメンティブ社製)などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0034】
本発明のゴム組成物は、良好な補強効果が得られるとともに白色化を防止する効果を高めることができるという理由から、カーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0035】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、80〜280m2/gが好ましく、100〜250m2/gがより好ましい。N2SAが80m2/g未満の場合は充分なウェットグリップ性能が得られ難くなる傾向、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、N2SAが280m2/gを超える場合は、分散性に劣り、耐摩耗性が低下する傾向がある。なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K6217のA法によって求められる。
【0036】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの力学強度を確保できるという理由から、1〜150質量部が好ましく、3〜100質量部がより好ましい。
【0037】
本発明のゴム組成物には、前記の材料以外にも、オイル、ステアリン酸、ワックス、レジン、各種老化防止剤、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などのタイヤ工業において一般的に用いられている各種材料を適宜含有することができる。
【0038】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0039】
本発明のタイヤ部材は、前記ゴム組成物で構成されるタイヤ部材であり、耐摩耗性、加工性および低燃費性をバランス良く優れるゴム組成物であることから、アンダートレッド、キャップトレッドなどのタイヤ部材に用いることが好ましい。
【0040】
また、本発明のタイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階で各タイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明のタイヤを得ることができる。
【0041】
本発明のタイヤは、耐摩耗性、加工性および低燃費性をバランス良く改善できることから、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等として好適に用いられ、特に乗用車用タイヤとして好適に用いられる。
【実施例】
【0042】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0043】
以下、実施例および比較例で使用した各種薬品をまとめて説明する。
SBR:JSR(株)製のHPR850(S−SBR、スチレン含量28質量%、ビニル量56質量%)
BR:JSR(株)製のBR730(シス含量:95質量%、ムーニー粘度:55、Mw/Mn:2.4)
シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックI(ISAFカーボン、平均粒子径23nm、N2SA:115m2/g)
シランカップリング剤:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「桐」
ヒドロキシステアリン酸:日東化成工業(株)製の12−ヒドロキシステアリン酸
ヒドロキシステアリン酸アルミニウム:日東化成工業(株)製の12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム
ヒドロキシステアリン酸マグネシウム:日東化成工業(株)製の12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム
ヒドロキシステアリン酸亜鉛:日東化成工業(株)製の12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0044】
表1および表2の配合処方に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を充填率が58%になるように充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練りして混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加して混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を所定のサイズに成形し、150℃の条件下で20分間プレス加硫することにより加硫ゴム組成物とし、さらに、約2mm×130mm×130mmの加硫ゴムスラブシートを作製した。得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴムスラブシートについて下記の評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0045】
<加工性試験>
JIS K6300−1に基づいて、未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)を130℃で測定し、比較例1の加工性指数を100として、下記計算式により加工性を指数表示した。指数が大きいほど、未加硫時の加工性が良好であることを示す。なお、加工性指数は103以上を性能目標指数とし、110以上の場合は加工性において特に優れることを示す。
(加工性指数)=(比較例1のムーニー粘度)/(各配合のムーニー粘度)×100
【0046】
<粘弾性試験>
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターVESを用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%および周波数10Hzの条件下で加硫ゴムスラブシートの損失正接(tanδ)を測定した。比較例1の転がり抵抗指数を100として、下記計算式により転がり抵抗を指数表示した。指数が大きいほど、転がり抵抗が低減され、低燃費性が優れていることを示す。なお、転がり抵抗指数は105以上を性能目標指数とし、110以上の場合は低燃費性において特に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0047】
<耐摩耗性試験>
ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件で加硫ゴム組成物の摩耗量を測定した。比較例1の耐摩耗性指数を100として、下記計算式により耐摩耗性を指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性が優れていることを示す。なお、耐摩耗性指数は100以上を性能目標指数とし、102以上の場合は耐摩耗性において特に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(比較例1の摩耗量)/(各配合の摩耗量)×100
【0048】
<バランス評価>
前記の加工性試験、粘弾性試験および耐摩耗性試験によって得られた評価結果に基づいて性能のバランスを評価した。評価結果は下記の基準に従い記号で示す。
◎:全評価結果が性能目標指数を満たす
○:2つの評価結果が性能目標指数を満たす
×:2つ以上の評価結果が性能目標指数を満たさない
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1および表2に示す結果より、シス含量が90質量%以上のブタジエンゴムを含有するゴム成分ならびにヒドロキシステアリン酸および/またはその誘導体を含有するゴム組成物とすることで、耐摩耗性、加工性および低燃費性にバランス良く優れたゴム組成物が得られることがわかる。