(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体に駆動信号に基づいて発光した光を照射して潜像を形成する露光手段と、潜像が形成された前記感光体にトナーを付着させる現像手段と、入力された画像データをディザマトリクスに基づいて前記駆動信号に変換する変換手段と、を有する画像形成装置において、
前記ディザマトリクスは、前記感光体にトナーが付着しない程度に前記露光手段を発光させる微小露光領域である第1座標と、前記感光体にトナーを付着させる程度に前記露光手段を発光させる通常露光領域である第2座標と、を備え、
前記第1座標と前記第2座標は走査方向に関して並んで配置され、前記微小露光領域と前記通常露光領域との間には、前記露光手段を発光させない非発光領域があることを特徴とする画像形成装置。
感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体に駆動信号に基づいて発光した光を照射して潜像を形成する露光手段と、潜像が形成された前記感光体にトナーを付着させる現像手段と、階調毎に設けられた複数のディザマトリクスに関する情報を記憶した記憶手段と、入力された画像データを前記ディザマトリクスに基づいて前記駆動信号に変換する変換手段と、を有する画像形成装置において、
前記記憶手段は、第1階調に対応した第1ディザマトリクス、及び前記第1階調よりも一段階高い第2階調に対応した第2ディザマトリクスに関する情報を記憶し、
前記第1ディザマトリクスは、第1座標に配置され、感光体にトナーが付着しない程度に前記露光手段を発光させる微小露光領域と、第2座標に配置され、感光体にトナーを付着させる程度に前記露光手段を発光させる通常露光領域と、を備え、前記第1座標と前記第2座標は走査方向に関して並んで配置され、該微小露光領域と該通常露光領域の間に前記露光手段を発光させない非発光領域があり、
前記第2ディザマトリクスは、前記第1座標に対応する位置に前記非発光領域が配置され、前記第2座標に対応する位置に、前記第1ディザマトリクスの前記第2座標の位置に設けられた通常発光領域よりも大きい通常発光領域が配置されていることを特徴とする画像形成装置。
前記走査方向に関して、前記第1ディザマトリクスの前記第1座標に配置された前記微小露光領域と前記第2座標に配置された前記通常露光領域との間に形成された前記非発光領域の幅は、前記第1ディザマトリクスを構成する画素の幅よりも短いことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
前記走査方向に関して、前記第1ディザマトリクスの前記第1座標に配置された前記微小露光領域と前記第2座標に配置された前記通常露光領域との間に形成された前記非発光領域の幅は、前記第1ディザマトリクスを構成する画素の幅の5%の幅より長いことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
前記露光手段が前記微小露光領域に対応する前記駆動信号によって発光する時間間隔は、前記通常露光領域に対応する前記駆動信号によって発光する時間間隔よりも短いことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
<画像形成装置>
図1は本発明の実施形態1のカラーレーザプリンタ(画像形成装置)に関する概略構成図である。同図に示すように、カラーレーザプリンタ50は、感光体である感光ドラム5(5Y,5M,5C,5K)を有する4連ドラム方式(インライン方式)プリンタである。本画像形成装置は、A4サイズ(210mm×297mm)紙までの出力に対応した、600dpi、20ppmのプリンタである。
【0016】
感光ドラム(感光体)5(5Y,5M,5C,5K)の周りには、帯電ローラ(帯電手段)7(7Y,7M,7C,7K)、現像ローラ(現像手段)8(8Y,8M,8C,8K)、露光手段9(9Y,9M,9C,9K)、一次転写ローラ(一次転写手段)10(10Y,10M,10C,10K)が配置されている。
【0017】
中間転写ベルト3は、無端状のエンドレスベルトであり、駆動ローラ12、テンションローラ13、アイドラローラ17、および二次転写対向ローラ18に懸架され、図中矢印の方向にプロセススピード115mm/secで回転している。中間転写ベルト3の材質としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が用いられる。駆動ローラ12、テンションローラ13、および二次転写対向ローラ18は、中間転写ベルト3を支持する支持ローラである。
【0018】
感光ドラム5(5Y,5M,5C,5K)は、中間転写ベルト3の移動方向に、直列に各色に対応し4本配置されている。
【0019】
感光ドラム5Yは、回転する過程で帯電ローラ7Yにより、所定の極性・電位に一様に帯電処理される。次いで、露光手段9Yによりレーザ光4Yを照射され、目的のカラー画像の第1の色(イエロー)成分像に対応した静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像が現像ローラ8Yにより第1色であるイエロートナー(現像剤)により現像される。このように、画像露光によって静電潜像が形成された部分にトナーが現像される方式のことを「反転現像方式」と称する。感光ドラム5Y上に形成されたイエロー画像は、一次転写ニップ部へ進入する。一次転写ニップ部は、中間転写ベルト3を感光ドラム5Yと一次転写ローラ10Yとで挟むことにより形成されている。一次転写ローラ10Yに一次転写バイアスを印加することで、一次転写ニップ部において、感光ドラム5Y上から中間転写ベルト3上へイエローのトナー像を転写する。一方、感光ドラム5M、5C、5Kに対して、先述した感光ドラム5Yに実行された工程と同様の工程を実行し、感光ドラム5M、5C、5K上にそれぞれマゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する。そして、感光ドラム5M、5C、5Kと一次転写ローラ10M、10C、10Kにより形成した一次転写ニップ部で、中間転写ベルト3上に、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を先に転写したイエローのトナー像に重ねて順次転写する。中間転写ベルト3上に転写されて重なった4色のトナー像は、中間転写ベルト3に伴って同図矢印(時計回り)方向に回転移動する。
【0020】
一方、給紙カセット1内に積載収納された記録材Pは、給紙ローラ2により給送され、レジストローラ対6のニップ部へ搬送されて、一旦停止される。一旦停止された記録材Pは、中間転写ベルト3上に形成された4色のトナー像が二次転写ニップに到達するタイミングに同期してレジストローラ対6によって二次転写ニップに供給される。そして、二次転写ローラ11と二次転写対向ローラ18との間の電圧印加(+1.5kV程度)によって中間転写ベルト3上のトナー像が記録材P上に転写される。トナー像が転写された記録材Pは、中間転写ベルト3から分離されて搬送ガイド19を経由し、定着装置14に送られ、ここで定着ローラ15、加圧ローラ16による加熱、加圧を受けて表面にトナー像が溶融固着される。これにより、4色フルカラーの画像が得られる。その後、記録材Pは排紙ローラ対20から機外へと排出され、プリントの1サイクルが終了する。一方、二次転写部において記録材Pに転写されずに中間転写ベルト3上に残ったトナーは、二次転写部より下流側に配置されたクリーニングユニット21によって除去される。
【0021】
本実施形態の画像形成装置は負極性の感光ドラムとトナーを用いており、感光ドラムの帯電電位(Vd)は−500V、現像電位(Vdc)は−300V、レーザが1画素内の全領域で発光した際の露光電位(Vl)は−100Vとされる。また、バックグラウンド露光のための微小な期間の発光を行うと、その結果バックグラウンド電位(Vbg)として−450Vが得られる。なお、レーザのスポット径は感光ドラム上で約60umであり、感光ドラム上の一画素のサイズは約42μm×約42μmである。
【0022】
露光手段9(9Y,9M,9C,9K)は、不図示のポリゴンミラーとレンズを備え、レーザ光4(4Y,4M,4C,4K)を各感光ドラム5上に照射し、所望のスポット形状で結像させる。ポリゴンミラーが回転することで、レーザ光4のスポットが感光ドラム5の回転軸方向(
図1の紙面を貫く方向)に移動する(偏向)。その際、レーザ光4を、ビデオ信号に基づいてオン(発光)、オフ(消灯)することにより、画像データの主走査方向の1ライン分の走査(主走査)を行う。同時に、感光ドラム5が回転し、レーザ光4のスポットに対する感光ドラム5の表面の位置を副走査方向(感光ドラム5の周方向)にずらしていきながら、上述した1ライン走査を複数回繰り返す。これにより、感光ドラム5の表面上に主走査方向、副走査方向のそれぞれに幅をもった2次元の領域にレーザ光4を照射し走査することができる。
【0023】
上述したレーザ光4をオン(発光)、オフ(消灯)させるビデオ信号は、画像クロックに同期して出力されるパルス信号であり、印刷データに基づいて画像処理によりPWM制御された信号である。このビデオ信号に基づいてレーザ光4が発光することでトナードット像を形成し、印刷データに対応するトナー像を形成する。つまり、レーザ光4のスポットを感光ドラム5の表面上を移動させる過程で、レーザ光4を所望の時間間隔オンする(露光手段9を発光させる)ことで、感光ドラム5の各画素に所望の濃度のトナードット像を形成する(通常露光)。
【0024】
また、本実施形態の画像形成装置は、感光ドラムの非トナー像形成部分(白地部)にも、その部分の電位を適正化するためにバックグラウンド露光を行う。本実施形態ではPWM方式のバックグラウンド露光であり、レーザ光4のスポットを感光ドラム5の表面上を移動させる過程で、上述した通常露光よりも短い時間間隔だけレーザ光4をオンし(露光手段9を発光し)、弱露光を行う。これにより、感光ドラム5の電位をバックグラウンド電位(Vbg)とする。このバックグラウンド電位(Vbg)は、現像過程で人間に目視できる程にトナーを帯電付着させない電位に設定されている。感光ドラムの非トナー像形成部分(白地部)の電位をこのバックグラウンド電位(Vbg)とすることで、非トナー像形成部分の電位を適正化することができる。
【0025】
<PWM方式のバックグラウンド露光における課題>
本実施形態のように、画像クロックに同期したPWM制御されたパルス信号であるビデオ信号により露光手段を発光させトナードット像を形成する構成で、同じくPWM制御したパルス信号でバックグラウンド露光を行う場合について説明する。このようなPWM方式のバッグラウンド露光を行う為には、露光手段が、トナードット像を形成するための発光を行っていない領域(期間)でバックグラウンド露光用の発光を行うようにPWN制御を行う。しかしながら、トナードット像を形成するための発光期間と、トナーを付着させない程度のバックグラウンド露光用の発光期間との配置次第では画像不良が発生する虞がある。
【0026】
図11(c)は、トナードット像を形成するための発光、及びバックグラウンド露光用の発光を行った場合の露光量を示すグラフである。トナードット像を形成するための発光を行う領域(通常発光領域)を領域A、バックグラウンド露光用の発光を行う領域(微小露光領域)を領域Bとする。感光ドラム表面上でのレーザ光4のスポットは、レーザ光4の中心部を基準としたガウス分布で光量が決まる面積を持っている。このため、レーザ光4のスポットを感光ドラム表面上で移動させながら領域Aを露光する際、スポットの中心部が領域A、領域Bを通過する際にレーザ光4を発光させていていても、実際には領域A、Bよりも広い領域を露光している。従って、領域Aと領域Bの間に挟まれたレーザ光4の中心部を発光させない領域(非発光領域)も露光されてしまう。
図11(c)に示すように、領域A、Bが近接して配置されていると、非発光領域の総露光量が大きくなってしまい、感光ドラムにトナーが帯電付着する程度まで感光ドラムの電位が減衰し、現像電位(Vdc)を下回る電位が形成される。その結果、トナードット像のサイズが意図せず大きくなってしまう場合があり、本来は連続的な階調が得られるはずのハーフトーン画像に「階調飛び」が生じる等の画像不良が発生する可能性がある。このように、感光ドラムの領域Aと領域Bの間に挟まれた非発光領域に現像電位(Vdc)を下回る電位が形成される状態を、領域Aと領域Bとが干渉した状態と定義する。
【0027】
そこで本実施形態では、上述した領域A、Bの干渉による画像不良を抑制するよう画像処理を行う。
【0028】
<画像形成システム>
図2は本発明の実施形態1における画像形成システムの構成例を示すブロック図である。
【0029】
カラーレーザプリンタ50に備えられたコントローラ501は、カラーレーザプリンタ50全体の制御を司る。また、コントローラ501は、ネットワーク502を介したサーバ503やクライアントPC 504の要求に従い、ネットワーク502を介して入力される印刷ジョブに従いカラーレーザプリンタ50を制御してプリントを実行する。印刷ジョブは、カラーレーザプリンタ50で形成する画像のデータ(印刷データ)を含み、この印刷ジョブとして受信した情報はまずメモリ510に格納される。
【0030】
コントローラ501はCPU 505、RAM506、ROM507を備える。CPU 505は、RAM 506をワークメモリとしてROM(記憶手段)507に格納したプログラムを実行することで、
図3に示す中間調処理部501aや位置制御部501bやPWM制御部501cとして機能し、以下に説明する画像処理フローを実行する。なお、メモリ510は、RAM 506の一部に割り当ててもよいし、ハードディスクなど別のメモリに割り当ててもよい。
【0031】
<画像処理フロー>
本実施形態では、ディザ法に基づく階調変換を行い連続的なハーフトーン画像を得る画像処理を行う。
図3はプリント時の画像処理フローを説明する機能ブロック図である。中間調処理部501aは、メモリ510から読み出した印刷データとしてのビット深さ8ビット(256階調)の画像データを多値ディザ処理して、ビット深さ5ビット(32階調)の画像データに変換する。位置制御部501bは、中間調処理部501aが多値ディザ処理に用いたディザマトリクスに対応する位置制御マトリクスを用いて、ドットの成長方向を表す2ビットの位置制御データを、中間調処理部501aが出力する画像データに付加する。PWM制御部501cは、位置制御データが付加された7ビットの画像データを、PWM制御を行いパルス信号であるビデオ信号に変換し、レーザ駆動部901へ出力する。レーザ駆動部901は各露光手段9(9Y,9M,9C,9K)にそれぞれ設けられ、上述したビデオ信号も各色の成分ごとに生成され、コントローラ501から対応する露光手段9へそれぞれ出力される。
【0032】
レーザ駆動部901はこのビデオ信号に基づきレーザ光4(4Y,4M,4C,4K)をオン(発光)、オフ(消灯)させる。なお、ビデオ信号は露光手段9を発光駆動させるための駆動信号に相当する。このようなディザ法を用いた画像処理フローにより、印刷データを、画像形成装置において適切に階調表現する為のハーフトーン処理を行った露光用の信号(ビデオ)へ変換する。
【0033】
<多値ディザ処理>
次に、中間調処理部501aによる多値(5ビット)ディザ処理について説明する。なお、カラーレーザプリンタでは一般的に各色毎に異なる設定のディザマトリクスが採用されるが、以下の説明では任意の一色(例えば、ブラック色)に関する構成を代表として説明する。
【0034】
ディザマトリクスは複数の画素の集合体であり、
図4には一例として、主走査方向(図の左右方向)に3画素、副走査方向(図の上下方向)に3画素ずつ計9個の画素(画素a〜i)から構成されるディザマトリクスを示す。なお、主走査方向とは、ポリゴンミラーの回転によるレーザ光のスポットの感光体上での移動方向に対応する方向であり、副走査方向とは感光体表面上における主走査方向に直交する方向に対応する方向である。
【0035】
図5(a)は、ディザマトリクスを構成する画素の成長順を示す図で、各画素には1から9の成長順を示す番号が振られている。
図6は、
図4に示したディザマトリクスを構成する画素毎の階調のレベル(レベル1〜31)とそれに対応して設定された閾値とを示すテーブルである。
【0036】
中間調処理部501aは、各座標に8ビット(256階調:0〜255)の階調値が割り当てられている入力画像データ(印刷データ)の各座標に対して、上述したディザマトリクスを割り当てる処理を行う。
【0037】
中間調処理部501aは、各座標の階調値に基づいて、その座標に割り当てられるディザマトリクスを構成する各画素に5ビットの出力データを付与し、出力画像データを生成する。つまり、階調値が1以上の場合、
図6に示すテーブルに基づいて、入力画像データの各座標の階調値と、ディザマトリクスを構成するそれぞれの画素に設定された閾値を比較する。そして、レベル1〜31の中から、階調値が対応する閾値以上、かつ、1レベル上の閾値未満のレベルを選択し、それを各画素の出力データとする。複数のレベルにまたがり同一の閾値が記載されている場合は、1レベル上の閾値未満であり、且つ同一閾値の中では最も高いレベルを各画素の出力データとするに決定する。また、階調値が0の場合、ディザマトリクスを構成する全ての画素をレベル0のデータとする。レベル0は、バックグラウンド露光を行うためのレベルとして設定されている。出力される画像データは各画素にレベル0〜31のいずれかに対応する5ビットのデータが割り当てられた画像データとなる。
【0038】
<位置制御データ付加処理>
次に、位置制御部501bが位置制御データを付加する処理について説明する。
図5(b)は、位置制御部501bが位置制御データの付加に用いる位置制御マトリクスの一例を示す図である。
【0039】
位置制御マトリクスとは、ディザマトリクスを構成する各画素(画素a〜i)のそれぞれに対応して設定された位置制御データのテーブルである。位置制御データは、「R」「C」「L」の3つの値のいずれかであり、2ビットで表現されるデータである。つまり、R=‘01’、C=‘00’、L=‘10’のように設定されている。
【0040】
「R」「C」「L」は、画素内でのドットの位置、及びその成長方向を表す。「R」は画素の右端に配置され、左端に向う成長を行い、「C」は画素の中央に配置され、両端に向かう成長を行い、「L」は画素の左端に配置され、右端に向かう成長を行うこと意味する。
【0041】
位置制御部501bは、ディザ処理後の画像データの各ディザマトリクスを構成する各画素に、位置制御データのテーブルに基づき2ビットの位置制御データを付加して、各画素に計7ビットのデータが割り当てられた画像データを出力する。なお、位置制御データは、ディザ処理後の画像データのMSB(Most Signigicant Bit)側に付加される。
【0042】
<PWM処理>
次にPWM制御部501cによるPWM処理について説明する。
図7は各画素にわりあてられたデータ(7ビット)と、PWM処理によって生成するパルス信号との関係を示すテーブルの一例を示す。このテーブルには、パルス信号の幅(PWM値)とパルスの位置(
図7では波形で示した)に関する情報を備える。PWM制御部501cは、入力される画像データは各画素に割り当てられた7ビットのデータを、下位5ビットのデータ(レベル値:0〜31)、上位2ビットのデータ(位置制御データ:C、L、R)に分けてPWM処理を行い、パルス信号を生成する。
【0043】
PWM値は、各レベル0〜31に対し、0(非発光)〜255(1画素幅で発光する全発行)の間の整数値が割り当てられる。パルス位置は、パルス信号を同期させる画素間隔を定義する画像クロックの基準位置(例えば1画素の起点)からのパルス立ち上がり位置の遅延量に相当する情報である。
図7に示すテーブルでは、レベル0の場合を除き、レベルが上がる程、位置制御データに対応するパルス位置と成長方向でパルスの幅が太くなるように設定されている。
【0044】
レベル0は、バックグラウンド露光を行うためのレベルであり、各画素はPWM値25の中央発光、左発光、又は右発光とされる。このような発光により感光ドラムをバックグラウンド露光(微小露光)することで、その微小露光された感光ドラムの画素の電位を、後の現像工程において人間が目視できる程にトナーが帯電付着を起こさない(顕像化されない)程度の電位にすることができる。本実施形態の画像形成装置では、PWM値が60程度までであれば、人間が目視できる程に感光ドラム上にトナーが帯電付着しない。
【0045】
このような処理を行うことにより、7ビットの画像データをパルス信号であるビデオ信号に変換する。
【0046】
なお、上述した画像処理に用いられる、
図6に示すテーブル、
図5(b)に示す位置制御マトリクス、
図7に示すテーブルは、階調毎に設けられる複数のディザマトリクスに関する情報であり、ROM 507に保持されている。
【0047】
<出力結果>
図8は本実施形態の画像形成装置で画像形成を行った際の出力結果をディザマトリクス単位で示した図であり、階調値0、51、102、153、204、255に対応するディザマトリクスの発光パターンを示している。図中の一升は一画素である。図中、各升内の灰色部分が露光手段が発光する領域である。同図に示すように、本実施形態の画像形成装置では、階調値が大きくなるにつれ
図5(a)に示した画素順で各画素のPWM値を大きくすることで良好なハーフトーン画像が得られる。
【0048】
なお、階調値0では全画素がレベル0であり、各画素はPWM値25で中央、左、又は右発光している(バックグラウンド露光)。これにより、感光ドラム面の平均的なバックグラウンド電位(Vbg)が得られる。
【0049】
図9は階調値20、21、及び階調値134、135のハーフトーン画像を形成した例である。説明のため、各画素にa〜iの符号を付している。
【0050】
階調値20において、画素eはレベル24であり、PWM値199の中央発光により、感光ドラム上にトナーが帯電付着(顕像化)し、ハーフトーン画像を構成するトナードット像が形成されている。画素a,b,c,d,f,g,h,iはレベル0であり、PWM値25の左又は右発光のバックグラウンド露光により、感光ドラム上の電位が制御されている。なお、PWM値が60未満であるため、バックグラウンド露光が独立して行われる画素c,d,f,iはもちろん、隣接する二画素にまたがって行われる画素a,bにおいても、感光ドラム上に人間が目視できる程のトナーは帯電付着しない。
【0051】
階調値が20から21へアップする際、画素eのレベルは24から25へ変化し、PWM値が199から207に変化する。これにより、感光ドラム上に帯電付着するトナー量が増加し、ハーフトーン画像を構成するトナードット像が成長する。一方、画素d、fのレベルは0から1へ変化させ、PWM値を25から0に変化させる。これにより、PWM値が207に成長したパルスによる画素eの露光と画素d、fの微小パルス幅の露光とが干渉することを防いだ。これにより、階調値が20から21へアップする際に、画素eに設けられるトナードット像(トナーが付着する領域)のサイズが意図せず急激に成長し(大きくなり)、ハーフトーン画像に階調飛びが生じる等の画像不良が防止される。
【0052】
階調値134において、画素bはレベル24であり、PWM値199の左発光により、感光ドラム上にトナーが帯電付着(顕像化)し、ハーフトーン画像を構成するトナードット像が形成されている。画素cはレベル0であり、PWM値25の左発光のバックグラウンド露光により、感光ドラム上の電位が制御されている。画素aはレベル0であり、PWM値25の右発光であるものの、隣接する画素bとの間で発光が結合し、画素bにおけるトナードット像の形成に寄与している。画素gも同様に、隣接する画素hにおけるトナードット像の形成に寄与している。画素iはレベル1であり、非発光である。画素d,e,fは何れもレベル31であり、PWM値255の全発光により、感光ドラム上にトナーが帯電付着(顕像化)し、トナードット像が形成されている。
【0053】
階調が134から135へアップする際、画素bのレベルは24から25へ変化し、PWM値が199から207に変化する。これにより、感光ドラム上に帯電付着するトナー量が増加し、ハーフトーン画像を構成するトナードット像が成長する。一方、画素cのレベルは0から1へ変化させ、PWM値を25から0に変化させる。これにより、PWM値が207に成長したパルスによる画素bの露光と画素cの微小パルス幅の露光とが干渉することを防いだ。これにより、階調値が134から135へアップする際に、画素bに設けられるトナードット像(トナーが付着する領域)のサイズが意図せず急激に成長し(大きくなり)、ハーフトーン画像に階調飛びが生じる等の画像不良が防止される。
【0054】
<一般化>
次に、上述した本実施形態の画像処理により得られる複数階調のディザパターンについて、一般化して説明する。
【0055】
図10は、本実施形態の画像処理フローに用いられる複数の階調値に対応した設けられた複数のディザマトリクス内の、同座標に位置する注目画素を示した図であり、灰色部(ハッチング部)は露光手段を発光させる領域である。
図10(a)は、階調値がN1、N2、N3(N1<N2<N3)へとアップした時のある注目画素を示す図である。
図10(b)は、階調値が、NからN+1へ一段階高くなった時の
図10(a)とは別の2つの注目画素を示す図である。
【0056】
図10(a)の階調値N1の注目画素の灰色部である領域Bはバックグラウンド露光を行うための発光領域(微小露光領域)で、階調値N2、N3の注目画素の灰色部である領域Aはトナーを帯電付着させるための発光領域(通常露光領域)を示す。本実施形態では、ある注目画素では、階調値がアップすることによるトナードット像(通常露光領域)の成長が、バックグラウンド露光のための発光領域(微小露光領域)を起点として行われる。バックグラウンド露光の発光ではPWM値が小さく感光ドラム上にトナーが帯電付着しないものの、PWM値が増して60を超えるとトナードット像の形成が開始され、更に増すにつれトナードット像の成長が進行する。これにより、階調値がN1からN2となって注目画素内に領域Aを形成する際に、注目画素に形成した領域Aは、実質的に階調値N1の領域Bを成長(拡大)させたものに相当する。つまり、階調値N1の時のディザマトリクス(第1ディザマトリクス)の所定の座標に領域Bが設けられ、階調値N2のディザマトリクス(第2ディザマトリクス)の注目画素に配置された領域Aは、該所定の座標に対応する位置に配置されている。このため、注目画素内で領域Aと領域Bとが干渉することが無い。
【0057】
図10(b)の階調値Nでは、ディザマトリクス内の第2座標に領域A、第1座標に領域Bが配置され、領域Aと領域Bとが、間に発光しない領域を挟んで走査方向(左右方向)に関して並んで配置されている。第1座標と第2座標はディザマトリクス内の隣あう2つの画素に渡って配置されている。階調値Nから階調値が一段階上がって(濃度が濃くなる)階調値N+1となると、階調値Nの場合と比べて、第2座標の領域Aは拡大してトナードット像が成長するが、第1座標においては領域Aとの干渉を避ける為に領域Bが消去されている。つまり、階調値Nのディザマトリクス(第1ディザマトリクス)の第1座標には領域Bが配置され、階調値N+1のディザマトリクス(第2ディザマトリクス)の第1座標には非発光領域は配置される。また、階調値N+1のディザマトリクスの第2座標の領域Aは階調値Nのディザマトリクスの第2座標の領域Aよりも大きい。
【0058】
領域A、Bが干渉する距離は、厳密には、画素の大きさ、レーザ光のスポットの光量分布、走査速度等の兼ね合いで決まる。発明者の鋭意検討によれば、一般的な画像形成装置の構成であれば、走査方向における1画素の幅の5%程度が干渉しない限界であることがわかっている。
【0059】
なお、領域A、Bの干渉を避ける為、階調値Nで存在していた領域Bを、階調値N+1で一気に消去していた。領域Bの消去のさせ方はこれに限られない。つまり、領域Bの幅を段階的に短くしていくことにより、領域Bを段階的に消去してもよい。例えば、階調値N+1で領域Bの幅を階調値Nのそれの半分とし、更に1つ階調値がアップした階調値N+2で領域Bを消去してもよい。なおこの場合は、階調値N+1において、領域Aと領域Bとの間には、2つの領域が干渉しないだけの非発光領域が確保されていることが前提である。
【0060】
このように各階調値に対応するディザマトリクスを設計することよって、ある階調値の時に、トナードット像のサイズが意図せず大きくなることが抑制できる。その結果、階調値がアップした際などにトナードット像が急激に成長するようなことがなく、ハーフトーン画像に階調飛びが生じることが防止される。
【0061】
<比較例>
一方、
図11(a)、(b)は画像処理フローにおける複数の階調値に対応した設けられた複数のディザマトリクス内の、同座標に位置する注目画素を示した図である。
【0062】
図11(a)では、ある注目画素において、階調値がアップすることによるトナードット像の成長の起点が、バックグラウンド露光のための発光領域以外の場所にある。注目画素内に領域A、領域Bが間に非発光領域を挟んで配置されることになり、階調値がアップしていき、領域Aが成長していくと、領域A、Bが干渉し、トナードット像のサイズが意図せず大きくなる場合が発生してしまう。
【0063】
図11(b)では、ディザマトリクス内の第1座標に領域A、第2座標に領域Bが配置され、領域Aと領域Bとが、間に発光しない領域を挟んで走査方向(左右方向)に関して並んで配置されている。第1座標と第2座標はディザマトリクス内の隣あう2つの画素に渡って配置されている。階調値がアップすると領域Aは成長するが、領域Bもそのまま消されることなく存在し続けるため、領域A、Bが干渉し、トナードット像のサイズが意図せず大きくなる場合が発生してしまう。
【0064】
このように、比較例の構成では、領域A、Bが干渉する階調値の時に、トナードット像のサイズが意図せず大きくなってしまう。このため、階調値が領域A、Bが干渉する階調値へ変化した際などにトナードット像が急激に成長し、ハーフトーン画像に階調飛びが生じる可能性がある。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のように各階調値に対応するディザマトリクスを設計することよって、ある階調値の時に、トナードット像のサイズが意図せず大きくなることが抑制できる。その結果、階調値がアップした際などにトナードット像が急激に成長するようなことがなく、ハーフトーン画像に階調飛びが生じることが防止される。
【0066】
[第2実施形態]
本発明の実施形態2の画像形成装置の構成について説明する。第1実施形態1と同様のものには、同一部材には同一符号を付し、説明を省略する。また、画像形成システム、画像処理装置、画像処理フロー等に関しては、第1実施形態と同様のため詳細な説明は省略する。本実施形態では、レベル0とレベル1〜31とで異なる位置制御マトリクスを用いて画像処理を行うことで、より均一なバックグラウンド露光を行うことで、画像品位の低下を更に安定して防止する。
【0067】
<画像処理フロー>
図12は、ディザマトリクスを構成する画素の成長順を示す図である。
図13は、ディザマトリクスを構成する画素毎の階調のレベル(レベル1〜31)とそれに対応して設定された閾値とを示すテーブルである。このテーブルに基づき、中間調処理部501aは第1実施形態と同様の処理を行う。
【0068】
図14(a)、(b)は、位置制御部501bが位置制御データの付加に用いる位置制御マトリクスの一例を示す図である。本実施形態では、レベル0とレベル1〜31とで異なる位置制御マトリクスを備える。
【0069】
図15は各画素にわりあてられたデータ(7ビット)と、PWM処理によって生成するパルス信号との関係を示すテーブルの一例を示す。
図15に示すテーブルでは、レベル0の場合を除き、レベルが上がる程、位置制御データに対応するパルス位置と成長方向でパルスの幅が太くなるように設定されている。レベル0は、バックグラウンド露光を行うためのレベルであり、各画素は全てPWM値25の中央発光とされる。
【0070】
なお、
図13に示すテーブル、
図14に示す位置制御マトリクス、
図15に示すテーブルはROM 507に保持される。
【0071】
<出力結果>
図16は本実施形態の画像形成装置で画像形成を行った際の出力結果を説明する図であり、階調値0、51、102、153、204、255における発光パターンを示している。図中の一升は一画素を示し、各升はディザマトリクスの各升に対応する。各升内に表示された灰色部分がレーザの発光領域である。同図に示すように、本実施形態の画像形成装置では、階調値が大きくなるにつれ
図12の画素順で各画素のPWM値を大きくすることで良好なハーフトーン画像が得られる。
【0072】
また、階調値0では全画素がレベル0であり、各画素はPWM値25で中央発光している(バックグラウンド露光)。これにより、感光ドラム面の平均的なバックグラウンド電位(Vbg)が得られる。本実施形態の画像形成装置では、PWM値が60程度までであれば、レーザ発光によって感光ドラム上にトナーが帯電付着しない(顕像化されない)。本実施形態では、レベル0の場合、各画素のバックグラウンド露光はいずれも画素の中央部で発光するため、第1実施形態の画像形成装置に比べ、感光ドラム面の平均的なバックグラウンド電位(Vbg)が空間的により均一化されている。このため、画像のトナー像を形成しない非トナー像形成領域(白地部)の電位を安定させ、この領域の画像品位の低下を抑制することができる。
【0073】
図17は階調値27、28、及び階調値141、142のハーフトーン画像を形成した例である。
【0074】
階調値27において、画素eはレベル31であり、PWM値255の全発光により、感光ドラム上にトナーが帯電付着(顕像化)し、ハーフトーン画像を構成するトナードット像が形成されている。画素a,b,c,d,f,g,h,iはレベル0であり、PWM幅25の中央発光のバックグラウンド露光であり、感光ドラム上の電位が制御されている。なお、PWM値が60未満であるため、各画素において、感光ドラム上にトナーは帯電付着しない。
【0075】
階調値が27から28へアップする際、画素fのレベルは0から2へと変化し、PWM値が25である中央発光から、PWM値が9である左発光に変化する。これにより、隣接する画素eにおけるトナードット像の形成に寄与し、感光ドラム上に帯電付着するトナー量を増加させ、ハーフトーン画像を構成するトナードット像を成長させる。一方、画素fのトナードット像が急激に成長し、ハーフトーン画像に階調飛びが生じることが防止される。
【0076】
階調値141において、画素b,d,e,f,hはレベル31であり、PWM値255の全発光により、感光ドラム上にトナーが帯電付着(顕像化)し、ハーフトーン画像を構成するトナードット像が形成されている。画素a,c,g,iはレベル0であり、PWM幅25の中央発光のバックグラウンド露光であり、感光ドラム上の電位が制御されている。なお、PWM値が60未満であるため、各画素において、感光ドラム上にトナーは帯電付着しない。
【0077】
階調値が141から142へアップする際、画素cのレベルは0から2へと変化し、PWM値が25である中央発光から、PWM値が9である左発光に変化する。これにより、隣接する画素bにおけるトナードット像の形成に寄与し、感光ドラム上に帯電付着するトナー量を増加させ、ハーフトーン画像を構成するトナードット像を成長させる。一方、画素cのトナードット像が急激に成長し、ハーフトーン画像に階調飛びが生じることが防止される。
【0078】
<一般化>
次に、上述した本実施形態の画像処理により得られる複数階調のディザパターンについて、一般化して説明する。
【0079】
図18は、本実施形態の画像処理フローに用いられる複数の階調値に対応した設けられた複数のディザマトリクス内の、同座標に位置する注目画素を示した図であり、灰色部(ハッチング部)は露光手段を発光させる領域である。
図18では、左から右にかけて階調値がM1、M2(M1<M2)へとアップした時のある注目画素を示す図である。
【0080】
階調値M1では、ディザマトリクス内の第1座標に微小露光領域である領域Bが配置されている。階調値M2では第1座標に領域Bと第2座標に通常露光領域である領域Aが配置され、領域Aと領域Bとが、間に発光しない領域を挟んで走査方向(左右方向)に関して並んで配置されている。
【0081】
階調値M2から階調値が一段階上がって(濃度が濃くなる)階調値M2+1となると、階調値M2の場合と比べて、領域Aは拡大してトナードット像が成長するが、領域Bは領域Aとの干渉を避ける為、消去され、非発光領域が配置される。つまり、階調値M2のディザマトリクス(第1ディザマトリクス)の第1座標には領域Bが配置され、階調値M2+1のディザマトリクス(第2ディザマトリクス)の第1座標には非発光領域は配置される。また、階調値N+1のディザマトリクスの第2座標の領域Aは階調値Nのディザマトリクスの第2座標の領域Aよりも大きい。
【0082】
このように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、各階調値に対応するディザマトリクスを設計することよって、ある階調値の時に、トナードット像のサイズが意図せず大きくなることが抑制できる。これにより、階調値がアップした際などにトナードット像が急激に成長するようなことがなく、ハーフトーン画像に階調飛びが生じることが防止される。また本実施形態では、バックグラウンド露光用の微小露光領域を等間隔に配置することにより、感光ドラムの非トナー像形成領域の電位をより均一化でき、この領域の画像品位の低下を抑制することができる。