(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、
図1を使って本実施の形態の軒天材の支持金具及び防火構造が適用される建物1について説明する。
【0019】
この建物1では、屋根2の張り出した軒先の下面が軒天材21によって覆われている。この軒天材21は、例えば繊維混入けい酸カルシウム板によって形成される。
【0020】
以下では、屋根材22が傾斜した傾斜屋根を例に説明するが、これに限定されるものではない。屋根材22は、垂木23によって支持されており、垂木23は母屋27によって支持される。
【0021】
また、垂木23の先端は鼻隠し部24によって覆われ、鼻隠し部24の下面は見切材25で覆われる。この見切材25に隣接した垂木23の下面側には軒天吊木桟26が配置される。この軒天吊木桟26は、固定金具26aを介して鼻隠し部24に取り付けられる。
【0022】
軒天材21は、軒先側端部21bが軒天吊木桟26に接合され、軒元側端部21aが後述する様々な支持金具3,3A,5,5Aによって支持される。また、軒天材21は、外壁11と隅角部を形成する。
【0023】
外壁11の屋内側には、天井梁や屋根梁などの梁材12が配置されている。以下では、断面視コ字状のC形鋼によって形成される梁材12を使って説明するが、これに限定されるものではない。
【0024】
そして、軒天材21と外壁11とによって形成される隅角部に、本実施の形態の防火構造が形成される。以下では、その防火構造の詳細について、実施例によって説明する。
【実施例1】
【0025】
以下、実施例1では、
図1−
図3を参照しながら、実施例1の支持金具3及びそれが配置された防火構造について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0026】
この実施例1の外壁11は、タイル外壁やシンセライト外壁などの壁材である。このような外壁11は、
図1に示すように、例えば繊維混入けい酸カルシウム板の表面にタイルを貼り付けることによって製作される。また、外壁11の屋内側の上縁には、角形鋼管などの枠材111が水平方向(
図1では紙面奥行き方向)に向けて取り付けられる。
【0027】
図2には、支持金具3の詳細な構成を示した。この支持金具3は、下部金具31と上部金具32とを、リベット33によって接合することによって形成される。下部金具31及び上部金具32は、鋼板などの耐火性の板材を折り曲げ加工することによって成形される。
【0028】
この下部金具31及び上部金具32は、
図3に示すように長尺状に成形されている。すなわち支持金具3は、外壁11の上端面に沿って連続して配置される。ここで、外壁11の上端面には、ブチルゴムなどの防水テープ112が貼り付けられている。
【0029】
支持金具3は、
図2に示すように、外壁11側の上端面に載せられて接合させる固定片部34と、固定片部34の軒先側の縁部から外壁11に沿って下方に突出される見切縁部35と、見切縁部35に隣接して形成される軒天材取付部36と、防火材設置部37とによって主に構成される。ここでは、防火材設置部37に配置される防火材としてのロックウール層4を含めて支持金具3とする。
【0030】
固定片部34は、
図3に示すように外壁11の上端面に貼られた防水テープ112の上に被せられる部分を指す。固定片部34の屋内側の縁部には、枠材111の屋内面に沿って垂下させる垂下壁341が設けられる。
【0031】
一方、固定片部34に連続して形成される見切縁部35は、
図2に示すように下方から帯状の平面に見えるように下面が平らに形成される。また、固定片部34から見切縁部35に移行するL字形断面部分が、軒元側端部21aを挿し込む凹部の下半分を形成することになる。
【0032】
これに対して軒元側端部21aを挿し込む凹部の上半分は、上部金具32の軒先側に張り出された傾斜面によって形成される。この凹部の上面及び下面は、軒元側端部21aの上面及び下面の形状に合わせて成形される。要するに実施例1の支持金具3では、下部金具31と上部金具32とによって軒天材取付部36の凹部が形成される。
【0033】
そして、見切縁部35及び軒天材取付部36の上方となる上部金具32の上面側が、防火材設置部37となる。防火材設置部37の軒先側には、鉛直に立ち上げられた前壁部371が形成される。
【0034】
この前壁部371の高さは、
図1に示すように上端が梁材12の上端面の高さ以上になる位置まで形成される。他方、前壁部371と略平行となるように屋内側(軒元側)に立上り部372が形成される。
【0035】
この立上り部372は、
図2に示すように固定片部34から上方に向けて壁状に形成される。立上り部372は、ロックウール層4の上面よりも高く形成され、上縁からは軒先側に向けて庇部373が張り出される。
【0036】
この立上り部372と前壁部371とに挟まれた上部金具32の上面側の窪みには、耐火接着剤によって接着層41が形成される。耐火接着剤には、例えばけい酸ナトリウム系接着剤などの湿式目地処理材が使用できる。
【0037】
この接着層41の上面は、前壁部371の上端の高さで水平面となるように形成される。そして、その接着層41の上に1層のロックウール層4を設ける。このロックウール層4は、無機材であるロックウールなどによって形成される。
【0038】
ロックウール層4は、ロックウールを立上り部372に押し当てるとともに庇部373の下側に収容することによって形成される。また、ここでは1層でロックウール層4を形成したが、これに限定されるものではなく、複数層とすることもできる。
【0039】
上述してきたように支持金具3の固定片部34と見切縁部35は、下部金具31に設けられる。また、防火材設置部37は、上部金具32に設けられる。そして、軒天材取付部36は、下部金具31と上部金具32との間に設けられる。
【0040】
以上のようにしてロックウール層4が組み込まれた支持金具3は、
図3に示すように外壁11の上端面に被せるように載せられる。そして、支持金具3の上方からドリルねじ38をねじ込み、外壁11の枠材111に定着させる。この結果、支持金具3が外壁11の上端面に接合されたことになる。
【0041】
次に、実施例1の軒天材の支持金具3、並びにそれを使用した防火構造及び建物1の作用について説明する。
【0042】
このように構成された実施例1の軒天材21の支持金具3は、軒天材21の軒元側端部21aを挿し込む軒天材取付部36を有するとともに、層状のロックウール層4を配置することが可能な防火材設置部37を備えている。
【0043】
このため、軒元側の防火性能を確保するために充分な量のロックウールなどの防火材を、容易に配置することができる。また、ロックウール層4の配置と併せて軒天材21の取り付けも容易に行うことができるようになる。
【0044】
すなわち支持金具3には、工場などで予めロックウール層4が組み込まれている。このため、現場で外壁11の上端面に支持金具3を取り付けるだけで、ロックウール層4も同時に配置したことになる。
【0045】
また、外壁11に固定された支持金具3の軒天材取付部36に向けて軒天材21の軒元側端部21aを挿し込むだけで、軒天材21の一端が支持されることになるので、短時間で取付作業を行うことができる。
【0046】
特に、軒天材取付部36の凹部に軒元側端部21aを挿し込む構成であれば、挿し込み量を自由に調整できるので、施工誤差などがあったとしても吸収させることができる。
【0047】
さらに、接着層41を介してロックウール層4を防火材設置部37に固定させる構成であれば、ロックウール層4を支持金具3に容易に固定することができる。
【0048】
なお、後述する他の実施例と略同様である他の構成及び作用効果については、説明を省略する。
【実施例2】
【0049】
以下、前記した実施例1とは別の形態の実施例2について、
図4,5を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0050】
実施例2の外壁13は、鋼板外壁などの壁材の表面にタイルを貼り付けることによって製作される。ここで、鋼板外壁とは、石こうボードの両面を鋼板で挟んで接着剤で一体化させた壁材である。
【0051】
図5には、実施例2の支持金具5の詳細な構成を示した。支持金具5は、下部金具51と上部金具52とを、リベット53によって接合することによって形成される。下部金具51及び上部金具52は、鋼板などの耐火性の板材を折り曲げ加工することによって成形される。
【0052】
この下部金具51及び上部金具52は、実施例1の下部金具31及び上部金具32と同様に長尺状に成形されている。実施例2では、外壁13の上端面に配置された緩衝材131に沿って連続して配置される。この緩衝材131には、ブチルゴムなどのゴム発泡体などが使用できる。
【0053】
支持金具5は、梁材12を含めた外壁13側の上端面に載せられて接合させる固定片部54と、固定片部54の軒先側の縁部から外壁13に沿って下方に突出される見切縁部55と、見切縁部55に隣接して形成される軒天材取付部56と、防火材設置部57と、防火材設置部57に配置されるロックウール層4とによって主に構成される。
【0054】
固定片部54は、
図4に示すように外壁11の上端面に貼られた緩衝材131と梁材12の上端面に跨って架け渡される平板状部分を指す。固定片部54は、ボルト58とナット581によって、外壁13側にある梁材12の上端面に接合される。
【0055】
一方、固定片部54の軒先側の縁部に続いて、外壁13の屋外面に沿って垂下された下縁に見切縁部55が設けられる。この見切縁部55は、下方から帯状の平面に見えるように下面が平らになるように形成される。
【0056】
また、見切縁部55の軒先側が、軒元側端部21aの形状に合わせて凹部となるように折り曲げ加工される。要するに実施例2の支持金具5では、下部金具51のみによって軒天材取付部56が形成される。
【0057】
そして、見切縁部55及び軒天材取付部56の上方が、防火材設置部57となる。防火材設置部57の軒先側には、軒天材取付部56に連続して鉛直に立ち上げられた前壁部571が形成される。
【0058】
この前壁部571の高さは、
図4に示すように上端が梁材12の上端面の高さと同じになる位置まで少なくとも形成される。他方、前壁部571と略平行となるよう屋内側(軒元側)に立上り部572が形成される。
【0059】
この立上り部572は、固定片部54に接合される上部金具52によって壁状に形成される。立上り部572は、ロックウール層4の上面よりも高く形成され、上縁からは軒先側に向けて庇部573が張り出される。
【0060】
この立上り部572と前壁部571とに挟まれた中空部内には、耐火接着剤が充填されて接着層41Aが形成される。この接着層41Aの上面は、梁材12の上端面の高さと略同じ高さの水平面になる。そして、その接着層41Aの上面に1層のロックウール層4を設ける。
【0061】
このように、外壁13が支持金具5を直接接合することができない鋼板外壁の場合でも、隣接する梁材12の上端面に接合させることによって防火性能の高い防火構造を構築することができる。
【0062】
なお、他の構成及び作用効果については、他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0063】
以下、前記した実施例1,2とは別の形態の実施例3について、
図6を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0064】
実施例3の外壁11Aは、実施例1で説明した外壁11と同様にタイル外壁やシンセライト外壁などの壁材である。この外壁11Aは、繊維混入けい酸カルシウム板が2枚重ねられている。
【0065】
また、実施例3の支持金具3Aは、実施例1で説明した支持金具3に類似した構成となっている。すなわち支持金具3Aは、支持金具3と同じ下部金具31を備えている。
【0066】
他方、上部金具32Aについては、支持金具3の上部金具32と一部異なっている。この上部金具32Aには、上部金具32の前壁部371と立上り部372と庇部373が存在しない。
【0067】
要するに上部金具32Aは、リベット33によって下部金具31と接合させる部分と、軒元側端部21aを挿し込む凹部の上半分を形成する傾斜面のみを備えている。
【0068】
この実施例3で説明する外壁11Aの上端面は、
図6に示すように梁材12の上端面と略同じ高さになっている。そして、上部金具32Aの上面に形成される防火材設置部37Aには、耐火接着剤によって層状に接着層41Bが形成される。
【0069】
この接着層41Bは、外壁11Aの枠材111の上方にまで広げられる。さらに、水平面に形成された接着層41Bの上面には、同じ幅で1層のロックウール層4が設けられる。
【0070】
このように上部金具32Aを簡略化した支持金具3Aによって、外壁11Aの上端面を広く覆う防火性能の高い防火構造を構築することができる。
【0071】
なお、他の構成及び作用効果については、他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0072】
以下、前記した実施例1−3とは別の形態の実施例4について、
図7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0073】
実施例4の外壁13Aは、実施例2で説明した外壁13と同様の鋼板外壁である。この外壁13Aは、石こうボードが2枚重ねられている。また、実施例4の支持金具5Aは、実施例2で説明した支持金具5に類似した構成となっている。
【0074】
実施例4の支持金具5Aは、支持金具5の下部金具51と類似した構成の下部金具51Aのみで構成されており、支持金具5の上部金具52に相当する金具は存在しない。
【0075】
この下部金具51Aは、前記した支持金具5の下部金具51とは、前壁部571に相当する部分がない点が異なっている。そして、この支持金具5Aでは、下部金具51Aの上面側が防火材設置部57Aとなる。
【0076】
下部金具51Aの中空部内には、耐火接着剤が充填される。この耐火接着剤は、梁材12の上端面上まで広げられて接着層41Cが形成される。そして、水平面に形成された接着層41Cの上には、同じ幅で1層のロックウール層4が設けられる。
【0077】
このように上部金具を省略した簡略化した支持金具5Aによって、外壁13Aの上端面を広く覆う防火性能の高い防火構造を構築することができる。
【0078】
なお、他の構成及び作用効果については、他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例5】
【0079】
以下、前記した実施例1−4とは別の形態の実施例5について、
図8,9を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0080】
実施例5で使用する支持金具3Aは、実施例3で説明した支持金具3Aと同じである。実施例3と実施例5では、防火材設置部37Aに配置される防火材の構成が異なっている。
【0081】
この実施例5では、
図9に示すように防火材設置部37Aの上面に、耐火接着剤によって形成される接着層41Dを介して防火材としての石こうボード61が設置される。
【0082】
この石こうボード61は、予めその上に載せる木桟62とビス64によって接合されている。また、木桟62は、垂木23,23の間隔に合わせた長さに成形されており、垂木23,23間に架け渡されることになる。
【0083】
工場などで予め一体化された支持金具3Aと石こうボード61と木桟62とは、現場で外壁11Aの上端面にドリルねじ38によって固定される。そして、支持金具3Aの固定片部34から上方に向けて壁状に延伸されるように軒元遮蔽板63を設置する。この軒元遮蔽板63は、例えば石こうボードによって形成することができる。
【0084】
この軒元遮蔽板63の軒先側の側面は、石こうボード61の屋内側の端面に密着させる。そして、軒元遮蔽板63と木桟62とは、ビス64によって接合させる。
【0085】
このように外壁11Aの上端面に載せられて接合させる支持金具3Aの固定片部34から上方に向けて壁状の軒元遮蔽板63を配置することによって、より防火性能を向上させることができる。
【0086】
なお、他の構成及び作用効果については、他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例6】
【0087】
以下、前記した実施例1−5とは別の形態の実施例6について、
図10を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0088】
この実施例6で使用する支持金具5Aは、実施例4で説明した支持金具5Aと同じである。また、実施例5と実施例6とでは、外壁11A,13Aの種類と、母屋27,27Aの下方への突出量とが異なっている。
【0089】
この実施例6では、実施例5よりも高さのある軒元遮蔽板63Aを配置しているので、屋内側への火炎の侵入をより確実に防ぐことができる。
【0090】
なお、他の構成及び作用効果については、他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0091】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0092】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、傾斜した屋根2の下面に配置される軒天材21を例に説明したが、これに限定されるものではなく、建物から水平に張り出される庇や陸屋根の下面を軒天材で覆う場合にも本発明を適用することができる。