特許第6249721号(P6249721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西松建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6249721-サンプル採取方法 図000002
  • 特許6249721-サンプル採取方法 図000003
  • 特許6249721-サンプル採取方法 図000004
  • 特許6249721-サンプル採取方法 図000005
  • 特許6249721-サンプル採取方法 図000006
  • 特許6249721-サンプル採取方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249721
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】サンプル採取方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 49/00 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   E21B49/00
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-230289(P2013-230289)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-90027(P2015-90027A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将義
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 透
(72)【発明者】
【氏名】石渡 寛之
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−155495(JP,A)
【文献】 特開平11−081846(JP,A)
【文献】 特開2000−248877(JP,A)
【文献】 特開平10−213526(JP,A)
【文献】 実開昭55−172839(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/052054(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0006201(US,A1)
【文献】 特開昭60−003385(JP,A)
【文献】 特開昭55−092499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 49/00
E02D 1/00−3/115
E21D 1/00−9/14
G01N 1/00−1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山または地盤に含まれる汚染物質を評価するために使用するサンプルを採取する方法であって、
削孔部材が先端に取り付けられた中空の棒状部材を備える削孔装置により、トンネルを掘削する際に使用するトンネル軸方向に延びる孔を形成する段階と、
前記削孔装置により形成された前記孔内に、側面に孔を有しない中空の枠部材を挿入する段階と、
前記枠部材内に前記棒状部材を挿通させ、流体供給装置により前記棒状部材内を通して水または空気を供給し、前記枠部材内を通して前記孔内に残留する掘削ずりを取り除く段階と、
前記削孔装置により前記地山または地盤を削孔することにより、サンプルとしての掘削ずりを発生させる段階と、
前記流体供給装置により前記棒状部材内を通して水または空気を供給し、前記枠部材内を通して前記孔内から前記掘削ずりを排出させる段階と、
分離装置により、前記水または空気とともに排出された前記掘削ずりから、前記水または空気を分離して除去する段階とを含む、サンプル採取方法。
【請求項2】
前記排出させる段階では、前記孔から突出する前記枠部材の一端に連結された連結管へ排出させ、
前記除去する段階では、前記空気については、一端が前記枠部材に連結された前記連結管の開放された他端から放出させることにより、もしくは前記他端が閉鎖された前記連結管内および該連結管の側部から下方へ延びる下降管内を介して該下降管の下端に連結された袋状のふるいへ送出した後、前記ふるいが有する複数の小孔から放出させることにより分離して除去し、前記水については、前記連結管内および前記下降管内を介して前記ふるいへ送出した後、前記ふるいが有する複数の小孔から流出させることにより分離して除去する、請求項に記載のサンプル採取方法。
【請求項3】
前記排出させる段階では、前記孔から突出する前記枠部材の一端の下部に設置される樋状部材へ向けて排出させ、
前記除去する段階では、前記空気については、前記樋状部材へ向けて排出した際に分離して除去し、前記水については、前記樋状部材および該樋状部材から下方へ延びる下降管内を介して該下降管の下端に連結される袋状のふるいへ送出した後、前記ふるいが有する複数の小孔から流出させることにより分離して除去する、請求項に記載のサンプル採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山または地盤に含まれる重金属等の汚染物質を評価するために使用するサンプルを採取するためのシステムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事や地下トンネル工事では、地山や地盤を掘削した際、岩石や土砂等の掘削ずりが発生する。掘削ずりは、人工的な合成物ではなく、自然由来のものであり、この中には、環境汚染の原因となる重金属等が含まれていることがある。
【0003】
近年、掘削ずりに含まれる重金属等が問題視されるようになってきており、上記工事において発生した掘削ずりは、重金属等の定量測定によりスクリーニング判定が行われ、問題となるものについては、最終処分場に搬出して管理、保管される。これに対し、問題とならないものについては、トンネル坑内の充填材、道路の床材、コンクリートの骨材等として利用することができる。
【0004】
スクリーニング判定は、通常、所定の1バッチの掘削ずりの山から、例えば5点といった複数点のサンプルを採取し、そのサンプルの中から重金属等が溶出する絶対量等を測定し、管理基準値と照合することにより行われる(非特許文献1参照)。非特許文献1では、評価する重金属等として、カドミウム、六価クロム、水銀、セレン、鉛、砒素、フッ素、ほう素が挙げられている。
【0005】
この掘削ずりの山からサンプルを採取する方法では、スクリーニング判定が得られるまで、その掘削ずりの山を処分することができず、一時保管しなければならない。工事用地が広く、その掘削ずりの山を保管できるスペースがある場合は問題ないが、そのようなスペースを確保できないほど工事用地が狭い場合は、この方法を採用することはできない。
【0006】
そこで、非特許文献1では、工事用地が狭い場合でもスクリーニング判定を行うことができるように、掘削前に切羽前方に対してコアボーリングを行い、このコアボーリングにより取得したコアをサンプルとして用い、スクリーニング判定を掘削前に先取りする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル(暫定版)”[online]、平成22年3月、建設工事における自然由来重金属等含有土砂への対応マニュアル検討委員会、[平成25年9月19日検索]、インターネット<URL:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/pdf/recyclehou/manual/sizenyuraimanyu_zantei_honbun.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の掘削前に先取りする方法では、別途、コアボーリングを実施する必要があり、その工期と費用の負担が大きいという問題があった。
【0009】
このため、工事用地が狭い場合でも実施可能という、この掘削前に先取りする方法の利点を維持しつつ、より早く、安価に実施することができるシステムや方法の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、コアボーリングを、トンネル掘削に使用する削岩機による削孔に置き換えれば、サンプルを採取することができ、また、削孔により形成された孔はトンネル工事にそのまま利用することができ、別途コアボーリングマシンを用意する必要がないので、より早く、安価に実施することができると考えた。しかしながら、この置き換えのみでは、下記(a)、(b)に示す2つの問題があった。
【0011】
(a)粉砕されたずりをサンプルとして回収するため、孔深部の採取地点から孔口の回収地点までの移送中に、液相と固相、固相内の粒度の多様さに起因して、サンプルが元来の組成とは異なる組成に分離しやすい。このため、元来の組成でサンプルを取得することが難しい。
(b)孔深部の採取地点と孔口の回収地点との間に、岩石片や湧水が混入することで、サンプルとしての品質が劣化しやすい。
【0012】
そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、上記(a)、(b)の問題も考慮し、上記の置き換えに加えて、削岩機で削孔した孔内に無孔ケーシング管を挿入した後、無孔ケーシング管内に削岩機の削孔ロッドを通し、その削孔ロッドによりサンプル掘削を行い、発生した掘削ずりを、削孔ロッド内を通して供給した水または空気とともに無孔ケーシング管内を通して孔内から排出させ、その水または空気を分離し、残った掘削ずりをサンプルとして回収することにより、サンプル元来の組成として回収することができることを見出した。本発明は、このことを見出すことによりなされたものであり、上記課題は、本発明のサンプル採取システムおよびサンプルの採取方法を提供することにより解決することができる。
【0013】
本発明のサンプル採取システムは、地山または地盤に含まれる汚染物質を評価するために使用するサンプルを採取するためのシステムであって、削孔部材が先端に取り付けられた中空の棒状部材を備える削孔装置と、削孔装置により形成された孔内に挿入される中空の枠部材と、枠部材内に棒状部材を通して削孔することにより発生したサンプルとしての掘削ずりを、棒状部材内を通して水または空気を供給することにより枠部材内を通して孔内から排出させる流体供給装置と、水または空気とともに排出された掘削ずりから、水または空気を分離して除去する分離装置とを含む。
【0014】
本発明のサンプル採取方法は、地山または地盤に含まれる汚染物質を評価するために使用するサンプルを採取する方法であって、削孔部材が先端に取り付けられた中空の棒状部材を備える削孔装置により孔を形成する段階と、削孔装置により形成された孔内に中空の枠部材を挿入する段階と、枠部材内に棒状部材を挿通させ、削孔装置により地山または地盤を削孔することにより、サンプルとしての掘削ずりを発生させる段階と、流体供給装置により棒状部材内を通して水または空気を供給し、枠部材内を通して孔内から掘削ずりを排出させる段階と、分離装置により、水または空気とともに排出された掘削ずりから、水または空気を分離して除去する段階とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明のサンプル採取システムおよびサンプル採取方法を提供することにより、工事用地が狭い場合でも元来の組成でサンプルを採取してスクリーニング判定を行うことができ、また、そのスクリーニング判定をより早く、安価に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】汚染物質の評価の流れを例示したフローチャート。
図2】本発明のサンプル採取システムの構成例を示した図。
図3】削孔装置としてのドリルジャンボを使用して削孔を行っているところを示した図。
図4】サンプル回収装置の一例を示した図。
図5】サンプル回収装置の別の例を示した図。
図6】サンプル採取システムにより実施される処理の流れを例示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のサンプル採取システムおよび方法は、地山や地盤を実際に掘削する前に、それらに含まれる重金属等の汚染物質が管理基準値を超えているかどうかを判定するために、評価用のサンプルとして採取するためのシステムおよび方法である。本発明のシステムおよび方法を説明する前に、その汚染物質の評価の流れについて簡単に説明しておく。
【0018】
図1は、その流れを例示したフローチャートである。ステップ100から開始し、まず、ステップ105では、資料等の調査を行う。この調査では、工事実施区域の地形や地質、水質、土地利用履歴等の既存の資料の収集、整理を行う。
【0019】
ステップ110では、地質調査、水文調査、試料採取、地質試料の調製を行う。地質調査では、対応が必要な岩石や土壌を特定するための資料収集を行い、必要に応じて、ボーリング調査や物理探査等を実施する。水文調査では、工事実施区域に存在する地下水の流れの状況やその利用状況等の資料収集を行う。試料採取では、スクリーニング判定を行うためのスクリーニング試験、溶出試験等を実施するために、工事実施区域内の地山や地盤から評価用のサンプルを採取する。地質試料の調製では、採取したサンプルについて乾燥、粉砕、ふるい分け等を行い、サンプルを調製する。
【0020】
ステップ115では、スクリーニング試験が不要かどうかを判断し、必要な場合、ステップ120へ進み、スクリーニング試験を行う。スクリーニング試験では、サンプル中の自然由来の重金属等の全含有量を測定する。具体的には、湿式分析法あるいは蛍光X線分析法によりその全含有量を測定する。ステップ125では、測定した全含有量が所定の基準値(検出下限値)以下かどうかを判断し、基準値以下の場合、ステップ130へ進み、管理対象外と判定する。管理対象外と判定された場合、その部分の掘削ずりは、最終処分場で管理、保管する必要はなく、コンクリートの骨材等として利用可能とされる。
【0021】
一方、ステップ115でスクリーニング試験が不要と判断した場合、ステップ125で基準値を超える場合は、ステップ135へ進み、短期溶出試験を行う。スクリーニング試験が不要な場合としては、上記の調査した資料等により、重金属等の全含有量が基準値を超えていることが明らかな場合、工事が小規模で排出される土量が少ない場合が挙げられる。これらに該当しない場合、必要と判断される。短期溶出試験は、環境省告示第18号に示される環境省告示第46号の付表に掲げる方法に従って実施される。この試験では、サンプルとして、2mm以下のふるいを全量通過するまで粉砕したものを用い、検液への重金属等の溶出量を測定する。
【0022】
ステップ140では、短期溶出試験の結果から専門家の総合評価を行う。この総合評価では、地下水等の摂取によるリスクがあるか否かを判断する。リスクがある場合、ステップ145へ進み、酸性化可能性試験を行う。そして、ステップ150で、その試験結果から専門家の総合評価を行う。酸性化可能性試験は、過酸化水素溶液を用い、サンプルを強制的に酸化させ、溶液のpHの測定を行う。この総合評価でも、リスクがあるか否かを判断する。リスクがある場合、ステップ155へ進み、実現象再現溶出試験を行う。この試験は、現場条件を想定した上で、湿乾繰り返し溶出や浸漬等の適切な試験方法により行う。ステップ160では、実現象再現溶出試験の結果から専門家の総合評価を行う。この総合評価でも、リスクがあるか否かを判断する。リスクがある場合、ステップ165へ進み、管理対象と判定する。一方、リスクがない場合、ステップ170へ進み、直接摂取のリスクを把握するための試験を行う。なお、ステップ140およびステップ150で、リスクがないと判断された場合も、ステップ170へ進む。
【0023】
直接摂取のリスクを把握するための試験は、環境省告示第19号の土壌含有量調査に係る測定方法を定める件による方法で行う。この試験で、土壌含有量基準を下回れば、直接摂取リスクがないと見なすことができ、上回れば、リスクがあると見なすことができる。ステップ175で、直接摂取のリスクがあるかを判断し、リスクがない場合、ステップ130へ進み、リスクがある場合、ステップ165へ進む。そして、ステップ180でこの処理が終了する。なお、各ステップの詳細な処理内容については、上記の非特許文献1を参照されたい。
【0024】
ここでは、ステップ140でリスクがある場合、ステップ145へ進んでいるが、直接ステップ165へ進み、管理対象と判定することも可能である。また、ステップ150やステップ160も同様に、直接ステップ165へ進み、管理対象と判定することもできる。ステップ135の短期溶出試験、ステップ145の酸性化可能性試験、ステップ155の実現象再現溶出試験、ステップ140およびステップ150の専門家の総合評価を合わせたものは、溶出試験と呼ばれる。
【0025】
本発明のサンプル採取システムおよび方法は、図1に示したステップ110の試料採取において使用されるシステムおよび方法である。図2は、サンプル採取システムの構成例を示した図である。サンプル採取システムは、削孔装置と、枠部材と、流体供給装置と、分離装置とを含んで構成される。
【0026】
削孔装置は、先端に削孔部材が取り付けられた中空の棒状部材を備え、その棒状部材を一定方向に回転させることにより、地山や地盤を削孔する。削孔部材は、例えば、先端に向けて先鋭とされた削孔ビットであり、中空の棒状部材は、例えば、削孔ロッドである。削孔装置としては、これに限られるものではないが、この削孔ビットが先端に取り付けられた削孔ロッドを回転可能に挟持するドリルジャンボ10を用いることができる。以下、削孔装置を、ドリルジャンボ10として説明する。
【0027】
ドリルジャンボ10は、削孔ビットが取り付けられた削孔ロッド11と、削岩機とを備え、削孔ロッド11が、削岩機内のシャンクロッドと呼ばれる一定方向に回転する回転部材に、スリーブと呼ばれる連結部材を介して連結されている。また、ドリルジャンボ10は、削孔ロッド11を、その長手方向に送り出すためのガイドセル12を備え、削孔作業において削孔ロッド11をスライドさせながら送り出しを行い、地山や地盤を削孔する。削岩機は、削孔ロッド11に対して回転力と推進力および打撃力を与え、先端の削孔ビットにより削孔する。
【0028】
ドリルジャンボ10は、ガイドセル12が延びる方向を、水平方向に対する角度を変えることにより所定の傾斜角度で削孔し、孔を形成することができる。また、削孔ロッド11の長さに応じ、所定の長さの孔を形成することができる。削孔ロッド11は、複数本を継ぎ足して使用することができ、この継ぎ足したものを用いて、切羽前方に所定の長さの孔を形成することもできる。
【0029】
枠部材は、例えば、削孔ロッド11の外径より大きい内径を有する所定長さの円管を用いることができる。この円管としては、これに限られるものではないが、側面に1つの孔も有しない無孔ケーシング管13が好ましい。なお、枠部材は、断面が円形のものでなくてもよく、楕円形、矩形、多角形のものであってもよい。枠部材の長さは、内部に削孔ロッド11が挿通され、その削孔ロッド11により地山や地盤を削孔することができるようにするため、削孔ロッド11の長さより短く形成される。削孔ロッド11を、複数本を継ぎ足して使用する場合は、削孔ロッド11と同じ長さの枠部材を継ぎ足して使用する。また、枠部材は、鋼製、プラスチック樹脂製のいずれであってもよい。以下、枠部材を、無孔ケーシング管13として説明する。
【0030】
流体供給装置は、水または空気を供給するため、水を供給する場合はポンプを、空気を供給する場合はエアコンプレッサを用いることができる。なお、ここでは、水または空気を使用するものとしているが、所定の圧力に圧縮された炭酸ガスや窒素等を用いてもよい。なお、これらのガスは、カードルやボンベ等により供給することができる。水を供給する場合、ポンプを貯水槽に接続し、貯水槽内の水を供給することができる。流体供給装置は、ドリルジャンボ10により削孔されることにより発生した掘削ずりを、ポンプ14やエアコンプレッサにより削孔ロッド11内を通して水や空気を供給し、その水や空気の力により押し出し、孔内から排出させる。以下、流体供給装置を、水を供給するポンプ14として説明する。
【0031】
分離装置は、水や空気とともに排出された掘削ずりから、水や空気を分離して除去するために使用される。分離装置としては、後述する、簡易な脱水ふるい15を含むサンプル回収装置を用いることができる。脱水ふるい15のメッシュサイズは、掘削ずりをすべてふるい上に残し、水のみを透過させることができる孔サイズのものを使用することができる。脱水ふるい15に限定されるものではなく、遠心脱水装置等を用いることも可能である。
【0032】
サンプル回収装置は、水を回収するための液回収容器16を備え、脱水ふるい15を透過した水を回収することができる。回収された水は、フィルタ等によってゴミ等を取り除いた後、貯水槽へ戻し、再利用することができる。
【0033】
図3は、地山を途中まで掘削し、その地山に形成されたトンネル100坑内にドリルジャンボ10を設置し、そのドリルジャンボ10により孔101を形成しているところを示した図である。ドリルジャンボ10は、削孔ロッド11と、ガイドセル12とを含んで構成される。その他、走行手段や回転部材、スリーブ等を備えるが、ここでは詳述しない。
【0034】
ドリルジャンボ10は、例えば、途中まで掘削して出来たトンネル100坑内の切羽102から所定深さ位置(サンプル採取地点)にあるサンプルを採取するため、無孔ケーシング管13内に削孔ロッド11を通した状態で、削孔ロッド11を回転し、サンプル採取地点まで通常と同様の削孔を行う。なお、サンプル採取地点は、図1のステップ105、110に示した調査した資料等に基づき決定される。
【0035】
削孔中、削孔ロッド11の中空の内部に図示しないポンプから水を供給し、削孔ロッド11の先端から吐出させながら行うことができる。このように吐出させながら行うことにより、削孔ビットの発熱を抑え、削孔ビット間への掘削ずりの詰まりを防止し、掘削ずりを削孔ロッド11と無孔ケーシング管13との間の隙間へ適切に取り込むことができる。掘削ずりは、削孔により発生し、掘り出される岩石や土砂等である。削孔しながら無孔ケーシング管13を、形成された孔101内へ挿入するため、削孔ロッド11の先端は、拡径されたものを用いることができる。
【0036】
削孔ロッド11から削孔時に水が吐出されると、無孔ケーシング管13と孔壁との間にはほとんど隙間がないため、発生した掘削ずりは、削孔ロッド11と無孔ケーシング管13との間の隙間へ取り込まれ、削孔が進むにつれて、次々に掘削ずりがその隙間へ取り込まれ、削孔ロッド11が進む方向とは反対の後方へ押し出されていく。
【0037】
ドリルジャンボ10によりサンプル採取地点に到達したら、無孔ケーシング管13の先端もサンプル採取地点に到達しているので、削孔ロッド11内に水を所定の圧力で供給し、先端から吐出させ、削孔ロッド11と無孔ケーシング管13との間の隙間に取り込まれ、残留している掘削ずりを後方へ押し込み、掘削ずりをすべて排出させる。このようにして、これから採取するサンプルの不純物となり得る、孔101内に残留する掘削ずりをすべて取り除く。
【0038】
なお、水は、削孔時と同様に、先端から削孔方向に吐出させてもよいが、削孔ロッド11の径方向、すなわち無孔ケーシング管13の内壁に向けて吐出させるように構成されていてもよい。また、削孔ロッド11の外表面にその長手方向に沿って、あるいは無孔ケーシング管13の内面にその長手方向に沿って、別途、水を吐出させるための配管を設け、その配管を通して水を供給してもよい。また、無孔ケーシング管13は、削孔が進むたびに、形成された孔101内に挿入することに限らず、孔101を形成した後に挿入してもよい。
【0039】
サンプルを採取するために、ドリルジャンボ10によりサンプル掘削を行うが、それに先だって、サンプル掘削により得られるサンプルの取りこぼしがないように回収するべく、脱水ふるい15と液回収容器16とを備えるサンプル回収装置を、例えば、無孔ケーシング管13の切羽102から吐出した一端に取り付ける。
【0040】
図4は、サンプル回収装置の1つの構成例を示した図である。図4(a)は、サンプル回収装置を拡大して示した図で、図4(b)は、無孔ケーシング管13の一端に、そのサンプル回収装置を取り付けたところを示した図である。サンプル回収装置は、孔101から突出する無孔ケーシング管13の一端に、図示しないフランジ等により連結される連結管17と、連結管17の側部から下方に延びる下降管18と、下降管18の下端に連結され、複数の小孔を有する袋状の脱水ふるい15と、脱水ふるい15の下部に設置される液回収容器16とを含んで構成されている。
【0041】
削孔ロッド11と無孔ケーシング管13との間の隙間に取り込まれた掘削ずりが、水とともに無孔ケーシング管13から排出されると、連結管17内へ送られる。連結管17の途中には、その下部に下降管18が連結されているため、連結管17内へ送られた掘削ずりおよび水は、下降管18を通して脱水ふるい15へと落下する。連結管17の一端は、無孔ケーシング管13の一端と連結されるが、他端は、掘削ずりおよび水が下降管18を通して脱水ふるい15へ適切に落下するのであれば、開放されていてもよいし、閉鎖されていてもよい。
【0042】
なお、連結管17の他端が開放されていて、空気により掘削ずりを排出させる場合、この連結管17の他端から放出させ、掘削ずりから分離することができる。また、当該他端が閉鎖されている場合は、袋状の脱水ふるい15へ送出した後、その脱水ふるい15の複数の小孔から放出させることにより、掘削ずりから空気を分離することができる。
【0043】
脱水ふるい15は、複数の小孔を有する袋状のものとされていて、掘削ずりのみがこの中に残留し、水は複数の小孔から流出し、その下部に設置される液回収容器16に回収される。この脱水ふるい15は、固相回収容器を兼ね備えた固相液相分離のための簡易脱水ふるいである。したがって、脱水ふるい15内に残留した固相を回収することで、掘削ずりのみをサンプルとして採取することができる。なお、脱水ふるい15は、内部が閉鎖された袋状のものに限定されるものではなく、上部が開放された筒状体の底に張られたシート状のものとされ、上部が開放されていてもよい。ふるいは、ステンレス等の金属製、ゴム製、ポリ塩化ビニルやポリプロピレン等のプラスチック樹脂製のいずれであってもよい。
【0044】
図4に示したサンプル回収装置は一例であり、そのほか、図5に示すような構成とすることもできる。図5(a)は、サンプル回収装置を拡大して示した図で、図5(b)は、無孔ケーシング管13の一端の下部に、そのサンプル回収装置を設置したところを示した図である。このサンプル回収装置は、図4に示した構成と同様、下降管18と、脱水ふるい15と、液回収容器16とを含んでいる。
【0045】
図5に示すサンプル回収装置は、図4に示したサンプル回収装置の連結管17に代えて、無孔ケーシング管13の一端から排出され、落下して落ちてきた掘削ずりおよび水を受ける樋状部材19が設けられている。樋状部材19は、一方向に長く形成された上部が開放され、底浅の容器であれば、図5に示すような底部断面が半円形のものに限らず、U字形やV字形のものであってもよい。例えば、鋼管やプラスチック樹脂製の管をその長手方向に半分に切断したものを用いることができる。下降管18は、この樋状部材19から下方に延びるように設けられる。下降管18は、図4に示す装置も同様であるが、鋼管、プラスチック樹脂製の管のほか、ゴムホースを用いることができる。各連結は、フランジ接続、溶接、溶着、ソケット接続等により行うことができる。
【0046】
図4および図5に示したようなサンプル回収装置を取り付けた後、ドリルジャンボ10により、さらに被削孔物を削孔し、サンプルとなる掘削ずりを発生させる。発生した掘削ずりは、削孔しながら無孔ケーシング管13を挿入していくと、上記のように削孔ロッド11と無孔ケーシング管13との間の隙間に取り込まれる。この削孔は、削孔ロッド11から水を吐出させつつ行うことで、効率的に行うことができる。サンプル採取地点からさらに堀り進め、所定の深さ位置まで達したところで、サンプル掘削を終了する。
【0047】
その後、削孔ロッド11から水を供給し、孔内へ吐出させ、削孔ロッド11と無孔ケーシング管13との間の隙間に取り込まれた掘削ずりをその水により押し込み、孔101内から排出させる。
【0048】
排出された掘削ずりおよび水は、サンプル回収装置へ導かれ、脱水ふるい15により水が透過して液回収容器16へ回収され、脱水ふるい15内に掘削ずりのみが回収される。この回収された掘削ずりは、スクリーニング試験、溶出試験において使用する評価用のサンプルに供される。
【0049】
なお、ドリルジャンボ10は、削岩機を油圧式のものとし、さらに、穿孔探査システムを備え、各種作動油圧や削孔速度の変化等から、切羽前方の削孔区間の地山あるいは地盤の性状を定量的に評価し、予測することも可能である。このようなドリルジャンボ10を使用し、地中の重金属等の濃縮部と地山の脆弱部との相関性を別途確認しておくことで、リアルタイムで地中にある未知の重金属等の濃縮部を発見することができる。これにより、トンネル区間内の要注意箇所を集中的にサンプリングし、スクリーニング試験や溶出試験を実施することができる。
【0050】
穿孔探査システムの詳細な構成を、ここに簡単に説明するが、詳細については、特開平9−317372号公報を参照されたい。このシステムは、計測システムと、解析システムとを備える。計測システムは、削岩機の打撃圧、回転圧、フィード圧およびダンピング圧を測定する油圧センサと、油圧センサにより得られた油圧データを記録するデータレコーダとを備える。また、計測システムは、削岩機のガイドセル12に設置された傾斜計を備え、削孔角度を測定し、そのデータもデータレコーダに記録する。
【0051】
解析システムは、PCと、印刷装置とから構成され、記録された油圧データおよび削孔角度のデータを用い、上記の切羽前方の削孔区間の地山あるいは地盤の性状を定量的に評価し、予測するためのデータ解析を行う。
【0052】
これまで、サンプル採取システムの全体構成、そのシステムが備える個々の装置の構成や機能について詳細に説明してきた。以下、このシステムを使用して実施されるサンプル採取方法について、図6に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。サンプル採取方法は、地山を掘削してトンネルを構築する際、その地山表面に、または掘削したトンネル坑内の切羽に孔を形成するために、ドリルジャンボ10を、ドリルジャンボ10が備える走行手段により所定位置に配置し、削岩機を起動することにより、ステップ600から開始する。
【0053】
ステップ605では、削孔ロッド11を回転させ、ガイドセル12により削孔ロッド11を地山表面あるいは切羽に向けて送り出し、サンプル採取地点に達するまで削孔する。サンプル採取地点に達したところで、削孔ロッド11の回転を停止させ、削孔を終了する。ステップ610は、ステップ605と同時に実施することができ、削孔して形成された孔101内に無孔ケーシング管13を挿入していき、孔101内に設置する。なお、この無孔ケーシング管13は、削孔した後に挿入し、設置することも可能である。
【0054】
ステップ615では、削孔がサンプル採取地点に達し、無孔ケーシング管13を設置したところで、ポンプ14により削孔ロッド11内に水を供給し、削孔ロッド11の先端から吐出させる。そして、削孔ロッド11と無孔ケーシング管13との間の隙間へ取り込まれた掘削ずりを、吐出された水の圧力により無孔ケーシング管13の後方、すなわち地山表面側もしくは切羽側へ向けて押し出し、排出させる。これにより、無孔ケーシング管13内に残留する掘削ずりを取り除く。なお、残留する掘削ずりをすべて取り除いたところで、ポンプ14を停止する。
【0055】
ステップ620では、サンプルを回収するためのサンプル回収装置を設置する。図4に示す構成では、連結管17を無孔ケーシング管13に連結して取り付ける。図5に示す構成では、無孔ケーシング管13から落下する掘削ずりおよび水を、樋状部材19が受けるように、無孔ケーシング管13の一端の下部に設置する。ステップ625では、削孔ロッド11を再度回転させ、ガイドセル12により一定の距離だけスライドさせて削孔する。この削孔により一定量の掘削ずりが発生し、削孔ロッド11と無孔ケーシング管13との間の隙間に取り込まれる。このとき、ポンプ14を起動させ、削孔ロッド11の先端から水を吐出しながら削孔することができる。
【0056】
ステップ630では、削孔ロッド11の回転およびガイドセル12によるスライドを停止させる。そして、ポンプ14が起動していない場合は起動させ、削孔ロッド11の先端から水を吐出させる。この水により、削孔ロッド11と無孔ケーシング管13との間の隙間に取り込まれた掘削ずりが、孔101内から排出される。このとき、無孔ケーシング管13内に残留する掘削ずりのすべてが、この水により押し出され、無孔ケーシング管13内から排出される。
【0057】
ステップ635では、サンプル回収装置が備える脱水ふるい15へ、排出された掘削ずりおよび水が送られ、脱水ふるい15によって掘削ずりと水とを分離する。分離された水は、脱水ふるい15の下部に設置された液回収容器16内に回収され、掘削ずりのみが、脱水ふるい15内に残留する。分離された水は、サンプル掘削において吐出した水や、無孔ケーシング管13内に残留する掘削ずりを押し出すために使用した水である。ステップ640では、脱水ふるい15内に残留した掘削ずりを、サンプルとして回収し、そのサンプルをスクリーニング判定のための試料として供し、この処理を終了する。
【0058】
脱水ふるい15は、回転させたり、振動させたりして、掘削ずりに付着した余分な水分を払い落とすことができる。ここでは、水を使用して削孔を行い、無孔ケーシング管13内に残留する掘削ずりを押し出しているが、空気を使用して削孔を行い、掘削ずりを押し出すようにしてもよい。なお、空気は、連結管17の他端から放出することにより、または樋状部材19を採用する場合は無孔ケーシング管13内から排出した際に、掘削ずりから分離して除去される。流体は、これらに限定されるものではなく、所定の圧力の炭酸ガスや窒素等を使用することも可能である。
【0059】
本発明のシステムおよび方法では、掘削ずりの山を築き、その山からサンプルを採取するものではないので、工事用地が狭い場合でも、サンプルを採取し、スクリーニング判定を行うことができる。また、コアボーリングを実施する必要がないので、より早く、安価にサンプルを採取し、スクリーニング判定を実施することができる。さらには、無孔ケーシング管を使用することで、サンプルを搬送する途中で、岩石片や湧水等の混入を防止することができ、異なる組成に分離することなく、元来の組成のサンプルを採取することができる。
【0060】
これまで本発明のサンプル採取システムおよびその方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
10…ドリルジャンボ、11…削孔ロッド、12…ガイドセル、13…無孔ケーシング管、14…ポンプ、15…脱水ふるい、16…回収容器、17…連結管、18…下降管、19…樋状部材、100…トンネル、101…孔、102…切羽
図1
図2
図3
図4
図5
図6