特許第6249722号(P6249722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249722
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】検査方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20171211BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20171211BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20171211BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20171211BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01L21/66 L
   H01L21/205
   C23C16/44 Z
   H01L29/78 301T
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-230363(P2013-230363)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-90929(P2015-90929A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年9月26日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテク・先端部材実用化研究開発/水素拡散を制御した高信頼性絶縁膜の開発とフラッシュメモリーへの応用」に係る継続研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】張 紫園
(72)【発明者】
【氏名】原 高弘
(72)【発明者】
【氏名】伊東 謙一
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−198526(JP,A)
【文献】 特開平08−148686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
C23C 16/44
H01L 21/205
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された第1膜とを有する検査対象品に対して、1000℃以上まで温度を上げつつTDS(Thermal Desorption Spectrometry)を行い、1000℃以上におけるピークの有無を調べることにより、前記検査対象品の良否を判断する、検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法において、
前記第1膜は、シリコン含有膜である検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の検査方法において、
前記ピークは1200℃以下にある検査方法。
【請求項4】
請求項2に記載の検査方法において、
前記第1膜と前記基板の間に第2膜を有しており、
前記第2膜は酸化シリコン膜又は酸窒化シリコン膜であり、
前記第1膜はポリシリコン膜である検査方法。
【請求項5】
請求項1に記載の検査方法において、
前記第1膜は、CVD法を用いて形成されている検査方法。
【請求項6】
基板上に第1膜を形成する第1膜形成工程と、
第1の前記基板に対して前記第1膜形成工程を行った後、前記基板に対し、処理温度が1000℃以上まで温度を上げつつTDSを行い、1000℃以上におけるピークの有無を調べることにより、前記第1膜の良否を判断する検査工程と、
を備え、
前記検査工程において前記ピークの高さが基準以上の場合、少なくとも1枚の第2の前記基板に対して前記第1膜形成工程を行う半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1膜形成工程の前に、酸化シリコン膜又は酸窒化シリコン膜からなる第2膜を形成する第2膜形成工程を備え、
前記第1膜形成工程は、CVD法を用いて、前記第1膜としてポリシリコン膜を前記第2膜上に形成する工程であり、
前記第1膜形成工程の後に、少なくとも前記第1膜をパターニングするパターニング工程を備え、
前記検査工程において、前記第1の基板に対して前記第2膜形成工程及び前記第1膜形成工程を行った後、前記パターニング工程を行う前に、前記TDSを行って前記ピークの有無を調べ、
前記検査工程において前記ピークの高さが基準以の場合、少なくとも1枚の第2の前記基板に対して前記第1膜形成工程、前記第2膜形成工程、及び前記パターニング工程を行う半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2膜はトンネル絶縁膜又はゲート絶縁膜であり、
前記第1膜はゲート電極である半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ピークは1100℃以上1200℃以下に位置する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法及び半導体装置の製造方法に関し、例えば半導体装置の不良率を低下させる方法として適用可能な技術である。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の不良率を低下させるためには、半導体装置の膜の品質を保証することが重要である。特にその膜の表面の解析が必須である。この解析には、例えば半導体装置を構成する要素(例えば膜)の成分を分析する方法(例えば非特許文献1)や、膜の表面形状を測定する方法(例えば非特許文献2,3)などが用いられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】SCAS News 2004−I pp 11−14
【非特許文献2】日立評論,Vol.88 No.3 pp:65−68 (2006)
【非特許文献3】日立評論,Vol.86,No.7,pp:465〜470(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上に膜を成膜する場合、成膜を終了する瞬間の成膜条件は、成膜を継続しているときの成膜条件とは異なる。また膜の表面は大気に触れるため、膜の表面の組成は、膜の内部の組成と異なる場合が多い。本発明者は、膜の表面に膜中への不純物の侵入を制限する「蓋」のような表面層が存在することを見出した。この新しい知見に基づき、基板上に成膜された膜の表面の組成が、表面「蓋」の"密封性"を影響するため、半導体装置の不良率に大きく影響を与える場合がある、と考えた。しかし、膜表面の形状、または、表面の吸着物を調べる方法があるが、膜の表面の組成が正常な状態になっているか否かを調べることは難しかった。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態によれば、基板と、基板上に形成された第1膜とを有する検査対象品に対して、1000℃以上まで温度を上げつつTDS(Thermal Desorption Spectrometry)を行う。そして、1000℃以上におけるピークの有無を調べることにより、検査対象品の良否を判断する。
【発明の効果】
【0006】
前記一実施の形態によれば、膜の表面の組成が正常な状態になっているか否かを、容易に調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る検査方法を説明するためのフローチャートである。
図2図1に示した検査方法の検査対象品の構成を示すための断面図である。
図3】第1膜FL1がポリシリコン膜の場合における、質量が44の物質に対するTDSの結果を示すチャートである。
図4】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図5】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6図4及び図5に示した半導体装置の製造方法において、第1の実施形態に示した検査方法を適用した場合のフローチャートの一例を示す図である。
図7】ゲート絶縁膜GINS及びゲート電極GEを用いてMOS容量素子を形成した場合における、ゲート絶縁膜GINSの絶縁破壊寿命を測定した結果をワイブル分布で示したものである。
図8】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
図9】第3の実施形態におけるTDSの結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る検査方法を説明するためのフローチャートである。図2は、図1に示した検査方法の検査対象品の構成を示すための断面図である。本実施形態に係る検査方法は、TDS(Thermal Desorption Spectrometry)を用いて行われ、以下の工程を有している。まず、検査対象品を準備する(ステップS20)。検査対象品は、基板SUBと、基板SUB上に形成された第1膜FL1を有している。そして検査対象品の温度を1000℃以上まで上げつつTDSを行い(ステップS40)、1000℃以上におけるピークの有無を調べることにより、検査対象品の良否を判断する(ステップS60)。なお、基板SUBは、例えばシリコン基板などの半導体基板である。また、昇温レートは、例えば0.1℃/分以上120℃分以下である。そしてTDSの温度の上限値は、例えば1300℃である。
【0010】
図2に示す例では、基板SUBの上に直接第1膜FL1を設けている。ただし、基板SUBと第1膜FL1の間には他の膜が存在していてもよいし、デバイスの構造を極力再現するために下層膜を設けてよい。第1膜FL1は、例えばポリシリコン膜、エピタキシャルシリコン膜、又は酸化シリコンを主成分とする膜などのシリコン含有膜である。ただし、第1膜FL1は、他の膜であってもよい。また、第1膜FL1は、例えばCVD法を用いて形成される。この場合、特に、第1膜FL1の表面の組成が、第1膜FL1の内部の組成と異なりやすくなる。第1膜FL1がシリコン含有膜である場合、CVDの原料ガスとしては、例えばシラン系のガスが用いられる。そして、TDSにおける検出対象物の質量(M/e)は、2(H)、17(HO)、18(HO)、44(SiO)、及び45(SiO)、の少なくとも一つを含む。
【0011】
TDSは、一般的に1000℃未満の温度で行われる。これに対して本実施形態では、検査対象品を1000℃以上の温度まで上げる。これにより、第1膜FL1の表面において第1膜FL1に結合している元素は、第1膜FL1から脱離する。これにより、この元素に起因した脱離ピークが、1000℃以上で観測される。従って、このピークの有無に基づいて、第1膜FL1の表面状態が正常か否かを判断することができる。例えば正常な検査対象品において1000℃以上でピークが観測されていた場合、このピークを検出できない検査対象品は、不良品であると判断される。一方、正常な検査対象品において1000℃以上でピークが観測されていなかった場合、このピークが検出された検査対象品は、不良品であると判断される。この検査結果をもって、第1膜FL1の作成プロセスが正常であるかどうかを判断することができる。そして、正常ではない場合、プロセスを最適化することによって、素子の不良率を低減できる。
【0012】
図3は、第1膜FL1がポリシリコン膜の場合における、質量が44の物質(すなわちSiO)に対するTDSの結果を示すチャートである。例えば第1膜FL1がシリコン含有膜である場合、TDSにおいて、SiOに起因したピークが、1000℃以上1200℃以下の範囲、特に1100℃以上1200℃以下の範囲に現れる。また、第1膜FL1の不純物バリア能力は、このピークが観測される場合、観測されない場合と比較して高い。このため、TDSにおいて、1000℃以上1200℃以下の範囲、特に1100℃以上1200℃以下の範囲にピークが現れるか否かを判断することにより、第1膜FL1が正常であるか否かを判断することができる。例えば第1膜FL1がゲート電極として使用される場合、1000℃以上1200℃以下の範囲、特に1100℃以上1200℃以下の範囲にピークが現れる場合に、第1膜FL1が正常であると判断される。
【0013】
なお、TDSにおいて、SiOに起因したピークが、1000℃以上1200℃以下の範囲、特に1100℃以上1200℃以下の範囲に現れる場合、第1膜FL1の表面に、ガスバリア能力(例えば水素バリア能力)を有する極薄い層が形成されている、と考えられる。第1膜FL1がシリコン含有膜である場合、この層は、SiON、かつ表面がH、H2O、又はOHで終端している層である、と考えられる。そしてこの層が熱により分解され、分解後の成分がTDSによって検出される、と考えられる。
【0014】
以上、本実施形態によれば、TDSにおいて、検査対象品を1000℃以上まで昇温している。そして、1000℃以上にけるピークの有無に基づいて、第1膜FL1の表面状態が正常か否かを判断することができる。
【0015】
なお、本実施形態に示した検査方法を半導体装置の製造方法に適用した場合、例えば以下のようになる。まず、この半導体装置の製造方法は、基板SUB基板上に第1膜FL1を形成する第1膜形成工程を備える。そして、第1の基板SUBに対して第1膜形成工程を行った後、第1の基板SUBに対し、処理温度が1000℃以上まで上げつつTDSを行い、1000℃以上におけるピークの有無を調べる。そしてこの結果に従って、第1膜及び第2膜の積層膜の良否を判断する。そして、ピークの高さが基準を満たす場合、少なくとも1枚の第2の基板SUBに対して第1膜形成工程を行う。これにより、第1膜の表面の状態に起因して半導体装置が不良になることを抑制できる。なお、第1の基板SUBはサンプルとして扱われ、第2の基板SUBが製品として扱われる。
【0016】
(第2の実施形態)
図4及び図5は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。まず、図4(a)に示すように、基板SUBに素子分離膜EI及びウェルWELを形成する。素子分離膜EIは、例えばSTI法を用いて形成されるが、LOCOS法を用いて形成されてもよい。また、ウェルWELは第1導電型の不純物領域であり、イオン注入法を用いて形成される。ウェルWELは、素子分離膜EIよりも先に形成されてもよいし、素子分離膜EIの後に形成されてもよい。
【0017】
次いで、基板SUB上及び素子分離膜EI上に、ゲート絶縁膜GINS(第2膜)を形成する(第2膜形成工程)。ゲート絶縁膜GINSは、例えば酸化シリコン膜又は酸窒化シリコン膜である。ゲート絶縁膜GINSの膜厚は、1nm以上200nm以下、例えば5nm以上15nm以下である。本図に示す例では、ゲート絶縁膜GINSは堆積法(例えばCVD法)を用いて形成されているため、素子分離膜EI上にも形成されている。この場合、ゲート絶縁膜GINSは、HTO(High Temperature Oxide)と呼ばれる膜(例えばTEOS膜)、又はHTOを窒素プラズマ(またはNOアニールやNOアニール)で処理した膜である。ただし、ゲート絶縁膜GINSは熱酸化法を用いて形成されてもよい。この場合、ゲート絶縁膜GINSは、基板SUBの表面のうち素子分離膜EIが形成されていない領域に形成される。
【0018】
次いで、ゲート絶縁膜GINS上に、第1膜FL1としてのゲート電極GEを形成する(第1膜形成工程)。ゲート電極GEは、例えばポリシリコン膜であり、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成される。ゲート電極GEの膜厚は、例えば50nm以上1000nm以下である。
【0019】
次いで、ゲート電極GE及びゲート絶縁膜GINSの積層膜を選択的に除去する。この工程は、例えば以下のようにして行われる。まず、ゲート電極GE上にレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、ゲート電極GE及びゲート絶縁膜GINSをドライエッチングする。その後、レジストパターンを除去する。
【0020】
次いで、図5に示すように、ゲート電極GE及び素子分離膜EIをマスクとして、基板SUBに第2導電型の不純物をイオン注入する。これにより、ウェルWELには、ソースSOU及びドレインDRNが形成される。そして、例えば窒素雰囲気で熱処理を行うことにより、不純物を活性化させる。このときの熱処理温度は、例えば900℃以上1100℃以下である。
【0021】
なお、図5には示していないが、ゲート電極GEの側面には、サイドウォールが形成されていてもよい。この場合、ウェルWELのうちサイドウォールの下に位置する領域には、低濃度拡散領域(例えばLDD領域)が形成される。
【0022】
なお、ゲート絶縁膜GINS、ゲート電極GE、ソースSOU、及びドレインDRNは、例えばMOSトランジスタやMOSキャパシタとして使用される。また、ゲート絶縁膜GINS、ゲート電極GE、ソースSOU、及びドレインDRNは、不揮発メモリの一部として使用されてもよい。この場合、ゲート絶縁膜GINSは、不揮発メモリのトンネル絶縁膜として機能する。そして、不揮発メモリの他の構成要素も形成される。
【0023】
その後、少なくとも一層の配線層が形成される。その後、水素雰囲気で熱処理される。このときの熱処理温度は、例えば350℃以上450℃以下である。
【0024】
図6は、図4及び図5に示した半導体装置の製造方法において、第1の実施形態に示した検査方法を適用した場合のフローチャートの一例を示している。本図に示す処理では、ゲート電極GE(第1膜)が正常に形成されたか否かを、定期的にサンプル(第1の基板)を抜き出して検査する。そして、抜き出したサンプルが正常であった場合、所定数の基板SUB(第2の基板)に対して図4及び図5に示した処理を行う。その後、サンプルの抜き出し工程に戻る。一方、抜き出したサンプルが不良であった場合、製造ラインを停止させ、製造装置やプロセス条件のチェックを行った上で、製造ラインの動作を再開する。
【0025】
そして、サンプルとなる基板SUBは、図4(a)に示した状態の基板SUB、すなわち基板SUB上にゲート絶縁膜GINS及びゲート電極GEが形成された後、ゲート電極GE及びゲート絶縁膜GINSがパターニングされる前に抜き出される。このため、ゲート電極GEの面積はパターニング後と比較して大きくなり、従って、ゲート電極GEから脱離するガスの量が増える。このため、検査の精度は高くなる。以下、詳細に説明する。
【0026】
まず、製造ラインの動作を継続し、複数の基板SUBのそれぞれに対して、図4及び図5に示した処理を行う(ステップS12)。そして、サンプルの抜き出し時期になる(ステップS14:Yes)と、サンプルとなる基板SUB(第1の基板)を抜き出す(ステップS22)。次いで、抜き出した基板SUBを1000℃以上まで加熱し、TDSで分析する(ステップS40)。このときの検査対象の物質の質量は、例えば44(すなわちSiO)とする。
【0027】
TDSの結果において、1000℃以上1200℃以下の範囲、特に1100℃以上1200℃以下においてピークがあった場合(ステップS62:Yes)、製造ラインは正常であると判断し、製造ラインの動作を継続させる(ステップS12)。一方、1000℃以上1200℃以下の範囲、特に1100℃以上1200℃以下においてピークが無かった場合(ステップS62:No)、製造ラインで製造されたゲート電極GEは不良である確率が高いと判断し、製造ラインを停止させる。そして、製造装置やプロセス条件のチェック及び修正を行った(ステップS64)上で、製造ラインの動作を再開する(ステップS12)。
【0028】
図7は、ゲート絶縁膜GINS及びゲート電極GEを用いてMOS容量素子を形成した場合における、ゲート絶縁膜GINSの絶縁破壊寿命を測定した結果をワイブル分布で示したものである。Aに示す例では、一部直線に乗らないサンプルがある。これらのサンプルは、ゲート電極GEの表面に、不純物バリア能力を有する膜が十分に形成されていないため、半導体装置の製造工程において水素等の不純物がゲート電極GEを透過してゲート絶縁膜GINSに入り、絶縁膜と基板の界面まで到達し、ゲート絶縁膜GINSの絶縁破壊寿命が極端に低下した、と考えられる。
【0029】
これに対してBに示す例では、ほぼすべてのサンプルが直線に乗っている。これは、ほぼすべてのサンプルにおいて、ゲート電極GEの表面に、不純物バリア能力を有する膜が十分に形成されていたため、と考えられる。
【0030】
従って、本実施形態によれば、ゲート電極GEの表面に、不純物バリア能力を有する膜が十分に形成されていない半導体装置が製造されることを抑制できる。従って、半導体装置において、ゲート絶縁膜GINSの絶縁破壊寿命が極端に低くなることを抑制できる。
【0031】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。まず、基板SUBを準備する。基板SUBには、半導体素子が形成されている。この半導体素子は、例えば第2の実施形態に示したウェルWEL、素子分離膜EI、ゲート絶縁膜GINS、ゲート電極GE、ソースSOU、及びドレインDRNを有している。ただし、基板SUBには、他の構造の半導体素子が形成されていてもよい。そして、図8(a)に示すように、基板SUB上に第1絶縁膜INSL1を形成する。第1絶縁膜INSL1は、例えばPSG(リンドープトシリケートガラス)膜である。その後、第1絶縁膜INSL1を、プラズマを用いてエッチバックし、薄くする。
【0032】
次いで、図8(b)に示すように、第1絶縁膜INSL1上に、第2絶縁膜INSL2を形成する。第2絶縁膜INSL2は、例えばSiO膜である。第1絶縁膜INSL1及び第2絶縁膜INSL2は、例えば一層の層間絶縁膜を形成する。その後、この層間絶縁膜に複数のコンタクトCONを埋め込む。
【0033】
そして本実施形態では、図8(a)に示す状態の基板SUBをサンプルとして、図6に示した処理を行う。ここで、TDSにおける検査対象の物質の質量は、44の物質(すなわちSiO)である。
【0034】
図9は、本実施形態における、TDSの結果を示すチャートである。(a)に示すサンプルでは、成膜後の第1絶縁膜INSL1に対して特別な処理を行ってない。これに対し、(b)に示すサンプルでは、第1絶縁膜INSL1をエッチバックした。また、(c)に示すサンプルでは第1絶縁膜INSL1をエッチバックした後、APM(アンモニア+過酸化水素水)で処理した。
【0035】
(a)のサンプルでは、1200℃付近でピーク(γ2)が見られた。これに対し、(b)及び(c)のサンプルでは、ピーク(γ2)は見られなかった。また、(c)に示すサンプルでは、ピーク(γ2)の代わりに、1050℃付近でピーク(γ1)が見られた。これに対し、(a)及び(b)のサンプルでは、ピーク(γ1)は見られなかった。
【0036】
一方、(a)、(b)、(c)のサンプルのそれぞれについて、第1絶縁膜INSL1と第2絶縁膜INSL2の積層膜に対して隣り合うコンタクトCONの間の耐圧を測定した。(a)と(c)のサンプルでは十分な耐圧を得られたが、(b)に示したサンプルの耐圧は相対的に低かった。このように耐圧の差が生じた理由は、(b)のサンプルの表面は、高温脱離ピーク(γ1とγ2)に由来する基が存在しないため、第1絶縁膜INSL1の表面に不純物が侵入して反応したと考えられる。その結果、第1絶縁膜INSL1の表面と第2絶縁膜INSL2の界面の結合が弱くなり、この界面を、コンタクトCONを構成する物質が拡散したため、と考えられる。
【0037】
従って、本実施形態によれば、TDSで1000℃以上のピーク(γ1とγ2)が見えなかった場合(図6のステップS62:No)に、図6のステップS64に示した処理を行うことで、第1絶縁膜INSL1と第2絶縁膜INSL2の界面の耐圧が低下することに起因して半導体装置の不良率が低下することを、抑制できる。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0039】
FL1 第1膜
INSL1 第1絶縁膜
INSL2 第2絶縁膜
CON コンタクト
DRN ドレイン
EI 素子分離膜
GE ゲート電極(第1膜)
GINS ゲート絶縁膜(第2膜)
SOU ソース
SUB 基板
WEL ウェル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9