(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。以下の説明において、「導電性粒子」と言うときには、文脈に応じて個々の粒子を指す場合と、粒子の集合体としての粉体を表す場合とがある。本発明の導電性粒子は、中心域と、該中心域の外側に位置する表面域とに大別される。中心域には、芯材が位置している。そして、この芯材の表面を被覆するように、表面域としての導電性酸化スズからなる表面層が形成されている。導電性酸化スズからなる表面層は、好適には芯材の表面の全域を被覆している。
【0012】
本発明の導電性粒子は、該粒子に外力を加えて分散処理を行った後の電気抵抗の上昇が抑制される点に特徴の一つを有する。詳細には、従来知られているこの種の導電性粒子においては、
図1(b)に示すとおり、芯材Cが凝集した状態で、その表面に導電性酸化スズの表面層Sが形成されていたことに起因して、導電性粒子Pに外力を加えると、凝集していた芯材Cが解砕される結果、芯材Cの表面が外部に露出してしまうことがあった。この露出した部分Eは導電性を有さないので、導電性粒子Pどうしの導電パスが減少してしまい、電気抵抗の上昇の原因となり易い。導電性を有さない露出部分Eは、外力を加えて分散を行う時間が長いほど生じ易く、また芯材の凝集状態が甚だしいほど生じ易い。これに対して本発明の導電性粒子は、
図1(a)に示すとおり、凝集の程度が低い芯材Cの表面に導電性酸化スズの表面層Sが形成されている。したがって、本発明の導電性粒子Pに外力を加えて分散を行っても、芯材Cの解砕の程度が低いことに起因して、芯材Cの表面が外部に露出しづらくなる。その結果、分散処理を長時間にわたって行ったとしても、導電性粒子Pどうしの導電パスが減少することを効果的に抑制することができ、ひいては電気抵抗の上昇を効果的に抑制することができる。
【0013】
以上の説明から明らかなとおり、本発明の導電性粒子は、それを構成する芯材の凝集の程度が低いものである。このことは、本発明の導電性粒子1個当たりに含まれる芯材の数が少ないことを意味している。このような特徴を有する本発明の導電性粒子について本発明者が鋭意検討したところ、導電性粒子の比表面積をSSA(m
2/g)とし、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積90容量%における体積累積粒径をD
90(μm)としたとき、両者の比であるSSA/D
90の値を用いると、本発明の導電性粒子の特徴を首尾よく記述できることが判明した。詳細には、本発明の導電性粒子は、SSA/D
90の値が10以上105以下であると、樹脂等の非導電性材料に該導電性粒子を練り込む分散を長時間行っても、導電性が付与された材料の電気抵抗の上昇を抑制できることが判明した。電気抵抗の上昇の抑制は、SSA/D
90の値が好ましくは25以上95以下、更に好ましくは30以上85以下であると一層効果的なものとなる。
【0014】
導電性粒子のD
90は、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される。測定試料を調製するときには、0.1gの導電性粒子を、ヘキサメタリン酸ナトリウムの20mg/L水溶液100mlと混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US−300T)で10分間分散させる。また、導電性粒子のSSAの値は、例えばユアサアイオニクス社製の「モノソーブ」を用い、BET法(He/N
2混合ガス)で測定することができる。本明細書では、測定粉末の量を0.3gとし、予備脱気条件は大気圧下、105℃で10分間とした。
【0015】
本発明の導電性粒子におけるSSA/D
90の値は、上述の範囲であることが好ましいところ、D
90の値そのものに関しては、0.2μm以上2.1μm以下であることが好ましいことが、本発明者の検討の結果判明した。D
90の値をこの範囲内に設定すると、樹脂等の非導電性材料に本発明の導電性粒子を練り込む分散を長時間行っても、導電性が付与された材料の電気抵抗の上昇を抑制できるので好ましい。この観点からD
90の値は、0.2μm以上1.8μm以下であることが更に好ましく、0.2μm以上1.5μm以下であることが一層好ましい。
【0016】
本発明の導電性粒子は、D
90の値が上述の範囲であることに加えて、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D
50の値が好ましくは0.1μm以上1.2μm以下であることが、分散処理後の電気抵抗の上昇を一層抑制し得る観点から有利である。この観点から、D
50の値は0.1μm以上1.0μm以下であることが更に好ましく、0.1μm以上0.4μm以下であることが一層好ましい。D
50の値は、D
90の値と同様の方法で測定できる。
【0017】
比表面積SSAに関しては、好ましくは5m
2/g以上95m
2/g以下であり、更に好ましくは36m
2/g以上95m
2/g以下であり、一層好ましくは52m
2/g以上95m
2/g以下である。比表面積SSAをこの範囲内に設定することでも、芯材の凝集の程度を低くすることが容易となる。
【0018】
本発明の導電性粒子が比較的狭い粒度分布を有するものであることは上述のとおりであるところ、粒子の粒度分布は一般に、D
50とD
90との比D
50/D
90を尺度として評価できる。具体的には、D
50/D
90が1に近いほど粒子の粒度分布は狭いと言える。本発明の導電性粒子においては、このD
50/D
90が好ましくは0.4以上0.9以下となっている。分散処理を長時間にわたって行っても、電気抵抗の上昇を一層効果的に抑制する観点からは、D
50/D
90の値は、0.4以上0.8以下であることが更に好ましく、0.4以上0.7以下であることが一層好ましい。
【0019】
本発明の導電性粒子におけるSSA/D
90の値やD
50/D
90の値を上述の範囲に設定するためには、導電性粒子を構成する芯材として、特定の粒度分布を有するものを用いることが有利である。詳細には、導電性酸化スズの表面層が形成される前の状態において、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D
50と、累積体積90容量%における体積累積粒径D
90との比D
50/D
90が好ましくは0.4以上0.9以下であり、更に好ましくは0.4以上0.8以下であり、一層好ましくは0.45以上0.8以下である芯材を用いることが好ましい。このような粒度分布を有する芯材は、芯材どうしの凝集の程度が低いことから、このような芯材を用いて導電性粒子を製造することで、個々の導電性粒子を構成する芯材の数を、極力1に近づけることができる。芯材のD
50及びD
90の測定方法は、導電性粒子のD
50及びD
90の測定方法と同様である。
【0020】
芯材のD
50/D
90の値は上述のとおりであるところ、芯材のD
50の値そのものは、極端に小粒径では凝集が起こり、逆に大粒径では沈降が起こるので、両現象を効果的に防止する観点から、導電性酸化スズの表面層が形成される前の状態において、0.1μm以上0.9μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.6μm以下であることが更に好ましく、0.1μm以上0.4μm以下であることが一層好ましい。一方、芯材のD
90の値そのものは、凝集及び沈降の防止の観点から、導電性酸化スズの表面層が形成される前の状態において、0.2μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.25μm以上1.0μm以下であることが更に好ましく、0.25μm以上0.9μm以下であることが一層好ましい。
【0021】
本発明の導電性粒子は、合成された直後の状態で既に分散性が高いものになっているので、その後にこれを分散処理に付しても分散時間によらず粒径がほぼ一定になる。このことは、本発明の導電性粒子を、樹脂や溶剤とともに分散処理に付して導電性組成物を得るときに、短時間で分散が完了するという利点をもたらす。しかも、導電性組成物を得るときの分散時間を長くしても該導電性組成物の電気抵抗の上昇が起こりにくい。例えば樹脂及び溶剤とともに1時間分散処理した後の前記導電性粒子を用いて形成した導電膜の抵抗をR
1(Ω/□)とし、3時間分散処理した後の前記導電性粒子を用いて形成した導電膜の抵抗をR
3(Ω/□)としたとき、log(R
3/R
1)の値が好ましくは0以上3.0以下であり、更に好ましくは0以上1.0以下になる。つまり、導電膜の抵抗が、樹脂組成物を調製するときの分散時間に依存しにくくなる。なお「log」は常用対数を表す。導電膜の抵抗(表面電気抵抗)の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0022】
芯材としては、例えば非導電性の材料から構成されるものを用いることができる。そのような材料としては、例えばアルミナ、二酸化チタン、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、雲母、タルク、ホウ酸アルミニウム、酸化亜鉛(ZnO)及びチタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特に、アルミナ、二酸化チタン、硫酸バリウム又は二酸化ケイ素を用いることが、導電性粒子の白色度を高める観点及び導電性粒子を樹脂等の中に分散し易くする観点から好ましい。とりわけ二酸化チタンを用いることが好ましい。
【0023】
芯材の形状は、その表面に導電性酸化スズを形成することが可能な形状であればよく、導電性粒子の具体的な用途に応じて適宜選択することができる。例えば球状、フレーク状、針状等の形状のものを用いることができる。
【0024】
芯材の表面に位置する導電性酸化スズの表面層は、本発明の導電性粒子に導電性を付与する層である。導電性酸化スズは、四価のスズの酸化物であるSnO
2で表される化合物を主たる構成物質としている。SnO
2で表される酸化スズに所望の導電性を付与するためには、例えば、酸化スズの導電性を高め得るドープ元素(ドーパント)を添加することができる。ドープ元素としては、例えばアンチモン等が挙げられる。ドープ元素を添加することに代えて、酸化スズに酸素欠損を生じさせてもよい。この場合には、酸化スズにはドープ元素は含まれていない。換言すれば、この酸化スズは、ドープ元素を実質的に非含有である。
【0025】
酸素欠損型の導電性酸化スズは、例えば、後述する導電性粒子の製造の際に、水酸化スズを還元焼成することによって得ることができる。なお、ドープ元素を実質的に非含有とは、酸化スズの導電性を高める作用を有する元素を意図して含有させないことを言う。したがって、原料中の不純物や製造工程におけるコンタミネーション等に起因して、導電性酸化スズ中に、酸化スズの導電性を高める作用を有する元素が不可避的に混入している場合には、そのような導電性酸化スズは「ドープ元素を実質的に非含有」のものである。
【0026】
本発明の導電性粒子における酸化スズの割合は、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、22質量%以上58質量%以下であることが更に好ましく、24質量%以上56質量%以下であることが一層好ましい。導電性酸化スズの含有割合を、この範囲内に設定することによって、導電性粒子の導電性を十分に高いものとすることができる。また、芯材と導電性酸化スズからなる表面層との密着性を十分なものとすることができる。更に、導電性粒子の分散性を十分なものとすることができる。
【0027】
導電性粒子における酸化スズの割合は、例えば導電性粒子を酸に溶解して溶液となし、該溶液についてICP発光分光分析装置を行いスズの量を求め、求められたスズの量を酸化スズ(SnO
2)の量に換算することで得ることができる。
【0028】
次に、本発明の導電性粒子の好適な製造方法について説明する。本製造方法においては、芯材を媒体中に分散させたスラリーに、水溶性スズ化合物を添加する。このスラリーの中和反応を行って、芯材の表面が水酸化スズで被覆された導電性粒子の前駆体を生成させる。そして前駆体を焼成して導電性酸化スズを生成させる。
【0029】
以上の工程を有する導電性粒子の製造方法においては、芯材として特定の粒度分布を有するものを用いることが有利である。詳細には、先に述べたとおり、D
50/D
90が好ましくは0.4以上0.9以下であり、更に好ましくは0.4以上0.8以下であり、一層好ましくは0.45以上0.8以下である芯材を用いることが有利である。このような粒度分布を有する芯材としては、市販品を用いてもよく、あるいは解砕処理によって粒度分布を調整したものを用いることもできる。
【0030】
芯材として解砕処理によって粒度分布を調整したものを用いる場合、解砕処理としては例えば、芯材を、メディアミルを用いて湿式解砕処理する方法が挙げられる。メディアミルとしては、例えば所定の粒径を有するビーズを用いることができる。ビーズの材質は、芯材の材質との関係で適切なものを選択すればよい。ビーズの粒径は、好ましくは50μm以上500μm以下であり、更に好ましくは100μm以上300μm以下であり、一層好ましくは100μm以上200μm以下である。芯材をスラリーにするために用いられる液媒体としては、例えば水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液などを用いることができる。
【0031】
芯材の湿式解砕処理は、処理の程度が少なすぎると、凝集状態にある芯材を十分に解砕することができず、D
50/D
90を上述した範囲に設定することができない。逆に処理の程度が多すぎると、解砕された粒子の再凝集が進行してしまうので、やはりD
50/D
90を上述した範囲に設定することができない。したがって湿式解砕処理は、D
50/D
90が上述した範囲内となるように適切に行うことが必要である。
【0032】
このようにして粒度分布が調整された芯材を水と混合してスラリーを得る。スラリー中における水と芯材との配合比率は、水1リットルに対して芯材が、10g以上100g以下であることが好ましく、30g以上80g以下であることが更に好ましい。両者の配合比率がこの範囲内にあると、均一な酸化スズの層が得られ易い。
【0033】
次に、スラリーに、水溶性スズ化合物を添加する。水溶性スズ化合物としては、芯材の表面に水酸化スズからなる被覆層を形成することができるものであればよく特に限定されない。例えば、スズ酸ナトリウムや四塩化スズ等を用いることができる。スラリー中における水と水溶性スズ化合物との配合比率は、水に対する水溶性スズ化合物中のSn濃度が、好ましくは1質量%以上20質量%以下、更に好ましくは3質量%以上10質量%以下である。両者の配合比率がこの範囲内にあると、均一な酸化スズの層が得られ易い。
【0034】
次に、水溶性スズ化合物を添加したスラリーに、酸又は塩基を添加して中和反応を行う。中和反応を行う方法としては、スラリーに酸性物質や塩基性物質を添加する方法が挙げられる。酸性物質としては、例えば硫酸、硝酸、酢酸等が挙げられる。硫酸を用いる場合には、希硫酸の状態で用いると、均一な酸化スズの層が得られ易い。希硫酸の濃度は、通常10〜50容量%である。塩基性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、アンモニア水等が挙げられる。これらのうち、水酸化ナトリウムは濃度を管理し易いため好ましい。
【0035】
中和後のスラリーのpHは、好ましくは0.5以上5以下であり、更に好ましくは2以上4以下であり、一層好ましくは2以上3以下である。中和後のスラリーのpHをこの範囲内に設定することで、水溶性スズ化合物をスラリーに溶解して得られたスズ酸から水酸化スズが生成し、芯材の表面に水酸化スズからなる被覆層が首尾よく形成される。
【0036】
このようにして、芯材の表面が水酸化スズで被覆された導電性粒子の前駆体が得られる。次にこの前駆体を水で洗浄する。洗浄された前駆体を、脱水濾過した後に乾燥させる。
【0037】
乾燥した前駆体は焼成工程に付される。この場合、酸素欠損型の導電性酸化スズを生成させる場合には、焼成雰囲気として非酸化性雰囲気中を用いることが有利である。非酸化性雰囲気としては、例えば、窒素雰囲気、爆発限界未満の濃度の水素を含有した窒素雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気等が挙げられる。このうち、水素を含有した窒素雰囲気は安価なので工業的観点から好ましい。水素を含有した窒素雰囲気を用いる場合、水素の濃度は、爆発限界未満の濃度である好ましくは0.1体積%以上10体積%以下、更に好ましくは1体積%以上3体積%以下である。水素の濃度がこの範囲内にあると、スズを金属に還元させることなく、酸素欠損を有する導電性酸化スズの被覆層を形成し易いためである。
【0038】
焼成温度は、好ましくは600℃超1200℃以下であり、更に好ましくは700℃以上900℃以下である。焼成時間は、焼成温度がこの範囲内であることを条件として、好ましくは5分以上60分以下であり、更に好ましくは10分以上30分以下である。焼成条件が、これらの範囲内にあると、酸化スズの焼結を防止しつつ、酸化スズに効率的に酸素欠損を形成させ易い。
【0039】
以上のようにして、目的とする導電性粒子が得られる。このようにして得られた導電性粒子は、芯材として特定の粒度分布を有するものを用いたことに起因して、該導電性粒子を長時間にわたって分散処理しても、導電性粒子どうしの導電パスが減少することを効果的に抑制することができ、ひいては電気抵抗の上昇を効果的に抑制することができる。
【0040】
このようにして得られた導電性粒子は、例えば紙、プラスチック、ゴム、樹脂、塗料等の非導電性材料と混合されてこれらに導電性を付与する導電性フィラーとして好適に用いられる。また、電池等の電極改質剤として使用することもできる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0042】
〔実施例1〕
(1)芯材の湿式解砕処理
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D
50が0.42μmであり、体積累積粒径D
90の値が1.15μmであり、比表面積SSAが9.1m
2/gである球状の酸化チタン粒子を湿式解砕処理に付した。湿式解砕処理は、150gの酸化チタン粒子と、0.6リットルの水とを混合して得られたスラリーを対象として、ビーズミルを用いて行った。用いたビーズは直径0.5mmのジルコニア製のものであった。これらを含む混合物をペイントシェーカーで60分処理した。湿式解砕処理によって、体積累積粒径D
50の値が0.13μmであり、体積累積粒径D
90の値が0.29μmであり、比表面積SSAが11m
2/gである酸化チタン粒子を得た。この酸化チタン粒子を芯材として用いた。
【0043】
(2)前駆体の製造
水3.5リットルに酸化チタン粒子200gを分散させてスラリーを得た。このスラリーにスズの含有量が41%のスズ酸ナトリウム208gを投入して溶解させた。このスラリーに20%希硫酸を添加して、スラリーのpHが2.5になるまで98分間かけて中和した。中和は、スラリーを循環させながら行った。また、中和操作の間、スラリーに超音波を照射し続けた。中和後のスラリーを温水を用いて洗浄した。洗浄終了後、脱水濾過を行い、目的とする導電性粒子の前駆体からなる濾滓(ケーキ)を回収した。
【0044】
(3)導電性粒子の製造
得られた濾滓を150℃の雰囲気中に15時間放置して乾燥させた。得られた乾燥ケーキを、アトマイザーを用いて解砕した。この解砕物を焼成炉内に載置し、水素を2体積%含有した窒素ガスを流通させながら、700℃で20分間焼成した。このようにして、目的とする導電性粒子を得た。
【0045】
〔実施例2〕
本実施例では、芯材として、実施例1とは異なる球状の酸化チタン粒子を用いた。この酸化チタン粒子は、入手したままの状態での体積累積粒径D
50の値が0.33μmであり、体積累積粒径D
90の値が0.57μmであり、比表面積SSAが8.6m
2/gであった。この酸化チタン粒子を芯材として用いる以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0046】
〔実施例3〕
本実施例では、芯材として、実施例1と同様の球状の酸化チタン粒子を用い、湿式解砕処理によって、体積累積粒径D
50の値が0.39μmであり、体積累積粒径D
90の値が0.82μmであり、比表面積SSAが10m
2/gである酸化チタン粒子を得た。この酸化チタン粒子を芯材として用いる以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0047】
〔実施例4〕
本実施例では、実施例1に従って前駆体粒子を製造、乾燥、解砕を行った。その後、この解砕物を焼成炉内に載置し、窒素ガスのみを流通させながら、700℃で20分間焼成した。このようにして、目的とする導電性粒子を得た。
【0048】
〔実施例5〕
本実施例では、芯材として、実施例1ないし2とは異なる球状の酸化チタン粒子を用いた。この酸化チタン粒子は、入手したままの状態での体積累積粒径D
50の値が0.18μmであり、体積累積粒径D
90の値が0.21μmであり、比表面積SSAが15m
2/gであった。この酸化チタン粒子を芯材として用い、実施例1に従って前駆体粒子の形成、乾燥、解砕処理を行った。その後、焼成のみを実施例4に従って行い、目的とする導電性粒子を得た。
【0049】
〔実施例6〕
本実施例では、実施例5に従って前駆体の形成、乾燥、解砕処理までを行った。その後、この解砕物を焼成炉内に載置し、水素を1体積%含有した窒素ガスを流通させながら、700℃で20分間焼成した。このようにして、目的とする導電性粒子を得た。
【0050】
〔実施例7〕
本実施例では、実施例5に従って前駆体の形成、乾燥、解砕処理までを行った。その後、この解砕物を焼成炉内に載置し、水素を2体積%含有した窒素ガスを流通させながら、700℃で20分間焼成した。このようにして、目的とする導電性粒子を得た。
【0051】
〔実施例8〕
本実施例では、芯材として、実施例1及び2ないし5とは異なる球状の酸化チタン粒子を用いた。この酸化チタン粒子は、入手したままの状態での体積累積粒径D
50の値が0.35μmであり、体積累積粒径D
90の値が0.66μmであり、比表面積SSAが17m
2/gであった。この酸化チタン粒子を芯材として用いる以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0052】
〔比較例1〕
本比較例は、実施例1において、(1)の芯材の湿式解砕処理を行わなかった例である。それ以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0053】
〔比較例2〕
本比較例では、芯材として、実施例1、2及び5ないし8とは異なる球状の酸化チタン粒子を用いた。この酸化チタン粒子は、入手したままの状態での体積累積粒径D
50の値が0.09μmであり、体積累積粒径D
90の値が0.33μmであり、比表面積SSAが10m
2/gであった。この酸化チタン粒子を芯材として用い比較例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0054】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた導電性粒子について、比表面積SSA、体積累積粒径D
50及び体積累積粒径D
90を測定した。また、導電性粒子に占める酸化スズの割合を測定した。更に、得られた導電性粒子を用い、以下の方法で塗膜を形成し、その塗膜の表面電気抵抗を測定した。それらの結果を以下の表1に示す。
【0055】
〔表面電気抵抗の測定〕
5.4gの導電性粒子と、12.4gのバインダー樹脂(三菱レイヨン社製 LR−167)とを容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェーカーを用いて分散処理して塗工液を得た。塗工液は、分散処理を1時間行ったものと、3時間行ったものとの2種類を用意した。このようにして得られた塗工液を、内田洋行製のOHPフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、厚さ3μmの塗膜を形成した。得られた塗膜の表面電気抵抗を、四探針抵抗測定機(三菱化学株式会社製ロレスタGP)を用いて測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた導電性粒子(本発明品)は、比較例1で得られた導電性粒子に比べて、塗工液の調製のための分散処理を1時間行った場合と、3時間行った場合とで、塗膜の表面電気抵抗の上昇が抑制されていることが判る。